JP4416472B2 - 新規p−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼおよびその製造法 - Google Patents
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Description
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸が欠失、置換または追加されたアミノ酸配列からなるp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ。
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ。
(3)配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ。
(4)以下の理化学的性質を有する、(1)から(3)のいずれかに記載のp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ:(A)熱安定性:トリス-マレイン酸緩衝液(pH8.0)中で40℃、15分の熱処理において少なくとも80%以上の残存活性、
(B)pH安定性:トリス-マレイン酸緩衝液(pH8.0)中で4℃、7日間において少なくとも80%以上の残存活性。
(5)(1)から(4)のいずれかに記載のp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子。
(6)(5)に記載のp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ遺伝子を含有することを特徴とする組換えベクター。
(7)(6)に記載の組換えベクターを含むことを特徴とするE.coli形質転換体。
(8)(7)に記載のE.coli形質転換体を用いることを特徴とするp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼの製造方法。
(pHBH遺伝子の調製)
Comamonas testosteroni染色体DNAからのpHBH遺伝子は、常法(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, Vol.1, 2.4.1-2.4.2)に記載の方法)に従いComamonas testosteroniの菌体から染色体DNAを抽出し、例えばこの染色体DNAを鋳型として、PCR法(Science, 239, 487-491(1988))を用いて増幅することにより得ることができる。なお、使用するComamonas testosteroniの菌株としては、特にIAM1123株の使用が望ましい。
本発明の変異型pHBHを作製する為に、野生型pHBHをコードする遺伝子に変異を導入する方法は既知のいかなる方法でも用いることができる。すなわち、野生型pHBHをコードする遺伝子と変異源となる薬剤を接触させる方法、紫外線照射による方法、また遺伝子修復機構が欠損しているために高頻度に遺伝子に変異が生じる大腸菌を用いる方法がある。あるいは部位特異的変異を導入する方法として合成オリゴヌクレオチドを用いたPCR法や市販のキットを用いてもよい。
上記のようにして得られる遺伝子断片は、常法に従って各種発現ベクターのプロモーターの下流に挿入され、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞宿主等の細胞内に導入することが可能である。しかしながら当該タンパク質の大量生産を簡便に行なうという本発明の目的を考慮すると、当該タンパク質遺伝子を大腸菌において発現させることが望ましい。
次に変異型pHBHの調製方法につき説明する。発現ベクターとしては、上記のようにして得られた変異型pHBHをコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に使用される。例えば大腸菌を宿主とするときには、発現ベクターはプロモーター、シャインダルガノ(SD)配列、当該タンパク質をコードする遺伝子、転写終結(ターミネーター)配列およびプロモーターを制御する遺伝子よりなることが好ましい。
Comamonas testosteroni IAM1123株の染色体DNAの単離は、Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1 2.4.1-2.4.2)に記載の方法に従い行った。
次に、上記のように調製したComamonas testosteroni IAM1123株の染色体DNAを鋳型とし、配列番号4及び5に記載のプライマーを基に、TaKaRa Ex TaqTM(宝酒造社製)を用いてdegenerate PCRを行った。反応条件はデナチュレーションステップが95℃5分、アニーリングステップが50℃0.5分、ポリメラーゼ反応ステップが72℃1分で、30サイクル行った。反応後、アガロースゲル電気泳動により約1.2kbのpHBH遺伝子の増幅を確認した。
発現ベクターは、トリプトファンプロモーター、シャインダルガルノ配列(SD配列)、EcoRI、BamHIを含むマルチクローニングサイトを有する2928bpのpTRP(Clinica Chimica Acta 237, 43-58(1995))を用いた(図1及び図2)。得られたPCR産物及びpTRPをそれぞれ制限酵素EcoRI及びBamHI(宝酒造社製)を用いて切断処理後、それぞれ約1.2kb及び2.9kbのDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分画し、アガロースゲル中より抽出精製した。
pTRP-HBHcで市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli JM109 宝酒造社製)を形質転換し、形質転換体JM109/pTRP-HBHcを得た。
形質転換体JM109/pTRP-HBHcを50μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、1.2%寒天、pH7.4)に塗布した後、30℃で一晩培養して得られたコロニーを更に50μg/mLアンピシリンを含んだ30mLのLB液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.4)に接種し、30℃で15時間振とう培養後、3LのLB液体培地に移した。37℃で10時間培養後、対数増殖期後期に達したところで遠心操作(10,000×g、10分)により集菌した。得られた湿菌体をその重量の5倍量の0.3mM EDTAを含む50mM リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、超音波破砕により菌体を破砕したあと、遠心操作(10,000×g、10分)により粗酵素液を調整した。粗酵素液を超純水で2倍に希釈後、DEAE-Cellulofine(10mM リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化済み)に通液し、同緩衝液で洗浄後、0
M〜350mM NaClのリニアグラジエントで溶出を行った。DEAE-Cellulofineでの活性画分をBlue-Sepharose(5mM リン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化済み)に通液し、同緩衝液で洗浄後、0M〜300mM NaClのリニアグラジエントで溶出を行った。最終的に得られたpHBH標品は比活性44.5U/mg蛋白質を示した。また上記精製酵素をpHBHcと命名した。
野生型pHBHの理化学的性質の測定は、以下の通り行った。
1.Km値:NADPH、FAD、p-ヒドロキシ安息香酸に対するKm値を求めた。
2.熱安定性:野生型pHBH(pHBHc)を酵素濃度0.9U/mLにて、表1の緩衝液を50mM トリス-マレイン酸緩衝液(pH8.0)又は50mM リン酸緩衝液(pH7.0)とした場合の、25℃、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃及び70℃の各温度における15分間の熱処理を行った後の酵素活性を測定した。なお、未処理のサンプルにおける酵素活性を100%とした場合の各々の活性を残存活性率(%)とした。
3.pH安定性:野生型pHBH(pHBHc)を酵素濃度0.9U/mLにて、表1の緩衝液を50mM
酢酸緩衝液(pH4.5〜6.0)、50mM リン酸緩衝液(pH5.5〜8.0)、50mM トリス-マレイン酸緩衝液(pH7.5〜8.9)又は50mM グリシン-NaOH緩衝液(pH8.5〜9.5)とした場合の、4℃の条件下で1週間静置した後の酵素活性を測定した。なお、50mM リン酸緩衝液(pH7.0)における静置前のサンプルの酵素活性を100%とした場合の各々の活性を残存活性率(%)とした。
野生型pHBH遺伝子を含む組換えプラスミドpTRP-HBHcと配列番号6及び7に記載の合成オリゴヌクレオチドを基にDiversifyTM PCR Random Mutagenesis Kit(CLONTECH製)を用いて、そのプロトコールに従って変異処理を行った。
得られたPCR産物及びpTRPをそれぞれ制限酵素EcoRI及びBamHI(宝酒造社製)を用いて切断処理後、それぞれ約1.2kb及び2.9kbのDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分画し、アガロースゲル中より抽出精製した。
制限酵素処理により得られた約1.2kbの変異型pHBH遺伝子及び約2.9kbのpTRPをそれぞれ10ng混合し、DNAライゲーションキット(宝酒造社製)により変異型pHBH遺伝子とpTRPを連結させた。
上記で調整したプラスミドで市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli JM109 宝酒造社製)を形質転換し、得られた形質転換体を50μg/mL アンピシリンを含むLB寒天培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、1.2%寒天、pH7.4)に塗布した後、30℃で一晩培養して得られたコロニーを更に50μg/mL アンピシリンを含んだ5mLのLB液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl、pH7.4)に接種し、37℃で一晩振とう培養した。その培養液から遠心分離によって菌体を回収し、0.3mM EDTAを含む50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を添加後、超音波破砕し粗酵素液を調製した。得られた粗酵素液のpHBH活性を、表1の条件にて測定した。また同粗酵素液を45℃で15分熱処理後、再びpHBH活性を測定した。熱処理前に対し、熱処理後のpHBH活性の残存活性率が野生型pHBHよりも高い菌株をスクリーニングした結果、熱安定性の向上したpHBHを発現する2クローンを取得した。
スクリーニングで得られた2クローンについてDNAシーケンサー(ABI PRISM 3100 Genetic Analyzer)でpHBHをコードする塩基配列を決定した。その結果、それぞれ異なる配列を持つことが確認され、それぞれpTRP-HBHc1、pTRP-HBHc2と命名した。配列番号2に記載のpTRP-HBHcm1では1178番目の塩基の欠損が生じており、フレームシフト変異によってベクターの塩基配列に由来したアミノ酸をC末端に持つことが確認された。配列番号3に記載のpTRP-HBHcm2では1174番目の塩基の欠損が生じており、フレームシフト変異によってベクターの塩基配列に由来したアミノ酸をC末端に持つことが確認された。さらに、130番目のアミノ酸がバリンからメチオニンに置換されていることが確認された。
pTRP-HBHcm1、pTRP-HBHcm2で市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli JM109 宝酒造社製)を形質転換し、それぞれの形質転換体を得(JM109/pTRP-HBHcm1、JM109/pTRP-HBHcm2)、それぞれに関し野生型pHBH(pHBHc)と同様に精製を行い、得られた精製酵素標品それぞれpHBHcm1及びpHBHcm2と命名した。更に比活性を測定した結果、それぞれ58.0U/mg蛋白質、48.0U/mg蛋白質であり、野生株と比較し4倍以上の比活性の向上が見られた。
次に、Km値、熱安定性、pH安定性に関し、野生型pHBHと同様に解析を行い、比較を行った。その結果、変異型pHBHではNADPHに対するKm値が、野生型と比較し低下していることが明らかとなった(表2)。
Claims (5)
- 配列番号2に記載のアミノ酸配列からなり、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼとしての酵素活性を示すポリペプチド。
- 請求項1に記載のポリペプチドをコードする遺伝子。
- 請求項2に記載のポリペプチドの遺伝子を含有することを特徴とする組換えベクター。
- 請求項3に記載の組換えベクターを含むことを特徴とするE.coli形質転換体。
- 請求項4に記載のE.coli形質転換体を用いて請求項1のポリペプチドを製造することを特徴とするポリペプチドの製造方法。
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