以下、本発明の第1の実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる表面処理装置の構成を示す斜視図である。図2は、図1に示された表面処理装置の収容槽などの断面図である。
表面処理装置1は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置に用いられる現像ローラや帯電ローラなどの円筒状の加工対象物2(図2に示す)の外表面を粗面化する装置である。加工対象物2の外径は、17mm〜18mm程度であるのが望ましい。加工対象物2の軸芯P(図2中に一点鎖線で示す)方向の長さは、300mm〜350mm程度であるのが望ましい。
表面処理装置1は、図1に示すように、ベース3と、固定保持部4と、移動手段としての電磁コイル移動部5と、移動保持部6と、移動チャック部7と、磁場発生部としての電磁コイル8と、収容槽9と、回収部10と、冷却部11とを備えている。
ベース3は、平板状に形成されて、工場のフロアやテーブル上等に設置される。ベース3の上面は、水平方向と平行に保たれる。ベース3の平面形状は、矩形状に形成されている。
固定保持部4は、ベース3の長手方向(以下、矢印Xで示す)の一端部から立設した複数の支柱12と、保持ベース13と、立設ブラケット14と、円筒保持部材15と、保持チャック16と、を備えている。
保持ベース13は、平板状に形成され、支柱12の上端に取り付けられている。立設ブラケット14は、平板状に形成され、保持ベース13から立設している。円筒保持部材15は、円筒状に形成され、立設ブラケット14と保持ベース13とに取り付けられている。円筒保持部材15は、その軸芯が水平方向と矢印Xとの双方と平行な状態でかつ前記立設ブラケット14よりベース3の中央部寄りに配置されている。円筒保持部材15は、内側に収容槽9の後述する一端部9aに取り付けられた後述するフランジ部材51b,51c,51d(即ち一端部9a)を収容する。
保持チャック16は、前述した円筒保持部材15即ち保持ベース13の近傍に配され、前述したベース3に取り付けられている。保持チャック16は、円筒保持部材15内に一端部9aが収容された収容槽9をチャックして、該収容槽9の一端部9aを保持する。前述した構成の固定保持部4は、収容槽9の一端部9aを保持する。
電磁コイル移動部5は、一対のリニアガイド17と、電磁コイル保持ベース18と、電磁コイル移動用アクチュエータ19と、を備えている。リニアガイド17は、レール20と、スライダ21とを備えている。レール20は、ベース3上に設置されている。レール20は、直線状に形成されているとともに、その長手方向がベース3の長手方向即ち矢印Xと平行に配されている。スライダ21は、レール20に該レール20の長手方向即ち矢印Xに沿って移動自在に支持されている。一対のリニアガイド17は、レール20がベース3の幅方向(以下、矢印Yで示す)に沿って互いに間隔をあけて配されている。なお、矢印Xと矢印Yとは、勿論、互いに直交しているとともに、それぞれ水平方向と平行である。
電磁コイル保持ベース18は、平板状に形成され、前述したスライダ21上に取り付けられている。電磁コイル保持ベース18の上面は、水平方向と平行に配されている。電磁コイル保持ベース18は、電磁コイル8を表面上に設置する。電磁コイル移動用アクチュエータ19は、ベース3に取り付けられているとともに、前述した電磁コイル保持ベース18を矢印Xに沿って、スライド移動させる。前述した電磁コイル移動部5は、電磁コイル移動用アクチュエータ19により電磁コイル保持ベース18即ち電磁コイル8を矢印Yに沿ってスライド移動させる。また、電磁コイル移動部5による電磁コイル8の移動速度は、0mm/秒〜300mm/秒の間で変更可能である。さらに、電磁コイル移動部5の電磁コイル8の移動範囲は、600mm程度である。
移動保持部6は、一対のリニアガイド22と、保持ベース23と、第1アクチュエータ24と、第2アクチュエータ25と、移動ベース26と、軸受け回転部27と、保持チャック28と、を備えている。
リニアガイド22は、レール29と、スライダ30とを備えている。レール29は、ベース3上に設置されている。レール29は、直線状に形成されているとともに、その長手方向が矢印X即ちベース3の長手方向と平行に配されている。スライダ30は、レール29に該レール29の長手方向即ち矢印Xに沿って移動自在に支持されている。一対のリニアガイド22は、レール29が矢印Y即ちベース3の幅方向に沿って互いに間隔をあけて配されている。
保持ベース23は、平板状に形成され、前述したスライダ30上に取り付けられている。保持ベース23の上面は、水平方向と平行に配されている。第1アクチュエータ24は、ベース3に取り付けられているとともに、前述した保持ベース23を矢印Xに沿って、スライド移動させる。
第2アクチュエータ25は、保持ベース23に取り付けられているとともに、移動ベース26を矢印Yに沿って、スライド移動させる。移動ベース26は、平板状に形成され、その上面が水平方向と平行に配されている。
軸受け回転部27は、一対の軸受31と、中空保持部材32と、回転手段としての駆動用モータ33と、チャック用シリンダ34とを備えている。一対の軸受31は、矢印Xに沿って、互いに間隔をあけて配置されているとともに、移動ベース26上に設置されている。中空保持部材32は、円筒状に形成されているとともに、前述した軸受31により軸芯回りに回転自在に支持されている。中空保持部材32は、その軸芯が前述した矢印X即ち固定保持部4の円筒保持部材15の軸芯と平行に配置されている。中空保持部材32は、一端部32aが収容槽9内に位置するように移動ベース26上から固定保持部4に向かって突出した格好で、かつ、他端部32cが移動ベース26上に位置した状態に配されている。中空保持部材32は、図2に示すように、円筒状の加工対象物2内に通される。また、中空保持部材32の移動ベース26上に位置付けられた他端部32cには、プーリ35が固定されている。プーリ35は、中空保持部材32と同軸に配置されている。
駆動用モータ33は、移動ベース26に設置されているとともに、その出力軸にプーリ36が取り付けられている。駆動用モータ33の出力軸の軸芯は、矢印Xと平行である。前述したプーリ35,36には、無端状のタイミングベルト37が掛け渡されている。駆動用モータ33は、中空保持部材32を軸芯回りに回転させる。駆動用モータ33は、中空保持部材32を軸芯回りに回転させることで、加工対象物2を収容槽9の長手方向と平行な中空保持部材32の軸芯回りに回転させる。
チャック用シリンダ34は、移動ベース26に設置されたシリンダ本体38と、該シリンダ本体38にスライド自在に設けられたチャック軸39とを備えている。チャック軸39は、円柱状に形成されその長手方向が矢印Xと平行に配されている。チャック軸39は、中空保持部材32内に収容されているとともに、該中空保持部材32と同軸に配置されている。チャック軸39には、一対のチャック爪40が複数取り付けられている。
一対のチャック爪40は、チャック軸39の外周面から該チャック軸39の外周方向に突出する格好で、該チャック軸39に取り付けられている。また、チャック爪40は、中空保持部材32の外周面から該中空保持部材32の外周に向かって突出可能となっている。チャック爪40は、チャック軸39及び中空保持部材32からの突出量が変更自在に設けられている。複数対のチャック爪40は、前述したチャック軸39の長手方向即ち矢印Xに沿って、間隔をあけて配置されている。一対のチャック爪40は、チャック用シリンダ34のチャック軸39がシリンダ本体38に近づく方向に縮小すると、前述したチャック軸39及び中空保持部材32からの突出量が増加する。
前述したチャック用シリンダ34は、チャック軸39がシリンダ本体38に縮小することで、チャック爪40をよりチャック軸39の外周方向に突出させて、該チャック爪40を中空保持部材32の外周に取り付けられた加工対象物2の内周面に押圧させて、チャック軸39と中空保持部材32と加工対象物2とを固定する。このとき、勿論、チャック軸39と中空保持部材32と加工対象物2と後述の円筒部材50即ち収容槽9は、同軸になる。
前述したチャック用シリンダ34とチャック爪40は、中空保持部材32と収容槽9と同軸となるように加工対象物2を保持する。即ち、チャック用シリンダ34とチャック爪40は、加工対象物2を収容槽9の中心に保持する。前述したチャック用シリンダ34とチャック爪40は、特許請求の範囲に記載された保持手段をなしている。
保持チャック28は、前述した移動ベース26上に設置されている。保持チャック28は、収容槽9の他端部9bに取り付けられた後述のフランジ部材51aをチャックして、該収容槽9の他端部9bを保持する。保持チャック28は、収容槽9がその軸芯回りに回転することを規制する。
前述した構成の移動保持部6は、保持チャック28及び中空保持部材32などをアクチュエータ24,25により互いに直交する矢印X,Yに沿って移動させる。即ち、移動保持部6は、保持チャック28で保持した収容槽9を矢印X,Yに沿って移動させる。
移動チャック部7は、保持ベース41と、リニアガイド42と、保持チャック43とを備えている。保持ベース41は、リニアガイド22のレール29の固定保持部4寄りの端部に固定されている。保持ベース41は、平板状に形成され、その上面が水平方向と平行に配されている。
リニアガイド42は、レール44と、スライダ45とを備えている。レール44は、保持ベース41上に設置されている。レール44は、直線状に形成されているとともに、その長手方向が矢印Y即ちベース3の幅方向と平行に配されている。スライダ45は、レール44に該レール44の長手方向即ち矢印Yに沿って移動自在に支持されている。
保持チャック43は、スライダ45上に設置されている。保持チャック43は、前述した保持チャック16,28間に位置付けられている。保持チャック43は、収容槽9の他端部9b寄りの箇所をチャックして、該収容槽9を保持する。前述した移動チャック部7は、保持チャック43が収容槽9を保持することで、該収容槽9を位置決めする。また、移動チャック部7は、保持チャック43が収容槽9を保持することで、収容槽9が軸芯に沿って移動する際に、前述した保持チャック28と協働して収容槽9を保持して、該収容槽9が軸受け回転部27即ち表面処理装置1から脱落することを防止する。
電磁コイル8は、図2に示すように、円筒状に形成された外皮46と該外皮46内に配された複数のコイル部47とを備えて、全体として円環状に形成されている。電磁コイル8の内径は、収容槽9の外径より大きい。即ち、電磁コイル8の内周面と収容槽9の外周面との間には、空間が形成されている。また、電磁コイル8の軸芯方向の全長は、収容槽9の軸芯方向の全長より十分に短い。電磁コイル8の軸芯方向の全長は、収容槽9の軸芯方向の全長の2/3以下であるのが望ましい。図示例では、電磁コイル8の内径は、90mmであるとともに、電磁コイル8の軸芯方向の長さは、85mmである。
外皮46は、その軸芯即ち電磁コイル8自身の軸芯が矢印Xと平行な状態で前述した電磁コイル保持ベース18に取り付けられている。電磁コイル8は、中空保持部材32、チャック軸39及び収容槽9と同軸に配置されている。複数のコイル部47は、外皮46即ち電磁コイル8の周方向に沿って互いに並設されている。コイル部47は、図2に示す三相交流電源48により印加される。複数のコイル部47には互いに移送のずれた電力が印加されて、これらの複数のコイル部47が互いに位相のずれた磁場を発生する。そして、電磁コイル8は、これらの磁場を合成して形成される該電磁コイル8の軸芯回りの回転方向の磁場(回転磁場)を内側に生じさせる。
前述した電磁コイル8は、三相交流電源48から印加されて、回転磁場を発生するとともに、電磁コイル移動部5によりその軸芯即ち収容槽9の長手方向に沿って移動される。そして、電磁コイル8は、前述した回転磁場により、後述の磁性砥粒65を加工対象物2の外周に位置付け、該磁性砥粒65を収容槽9及び加工対象物2の軸芯回りに回転(移動)させる。そして、電磁コイル8は、前述した回転磁場により磁性砥粒65を加工対象物2の外表面に衝突させる。
また、三相交流電源48と電磁コイル8との間には、磁場変更手段としてのインバータ49が設けられている。インバータ49は、三相交流電源48が電磁コイル8に印加する電力の周波数、電流値、電圧値を変更自在である。インバータ49は、電磁コイル8に印加する電力の周波数、電流値、電圧値を変更することで、三相交流電源48が電磁コイル8に印加する電力を増減させて、該電磁コイル8が発生する回転磁場の強さを変更する。
収容槽9は、図2に示すように、外壁が一重構造(外壁が一枚の壁からなること)の円筒部材50と、複数のフランジ部材51と、一対の削り屑封止ホルダ52と、一対の削り屑封止板53と、一対の位置決め部材54と、複数の仕切手段としての仕切部材55と、一対の封止板56とを備えている。
円筒部材50は、円筒状に形成されており、収容槽9の外殻を構成している。このため、収容槽9は、円筒部材50が一重構造に形成されていることで、外壁が一重構造に形成されているとともに、円筒状に形成されている。円筒部材50即ち収容槽9の外径は、40mm〜80mm程度であるのが望ましい。さらに、円筒部材50の肉厚は、0.5mm〜2.0mm程度であるのが望ましい。円筒部材50の軸芯方向の長さは、600mm〜800mm程度であるのが望ましい。円筒部材50は、非磁性体で構成されている。
円筒部材50には、複数の砥粒供給孔57が設けられている。砥粒供給孔57は、勿論、円筒部材50を貫通して、該円筒部材50の内外を連通している。砥粒供給孔57には、封止キャップ58が取り付けられている。砥粒供給孔57は、内側に磁性砥粒65を通して、該磁性砥粒65を円筒部材50即ち収容槽9に出し入れする。また、封止キャップ58は、砥粒供給孔57を塞いで、磁性砥粒65が円筒部材50即ち収容槽9の外部に流出することを規制する。
複数のフランジ部材51は、円環状又は円柱状に形成されている。複数のフランジ部材51のうち一つを除く大多数のフランジ部材51(図示例では、三つ)は、円筒部材50の一端部9aに取り付けられ、一つのフランジ部材51(以下、符号51aで示す)は、円筒部材50の他端部9bに取り付けられている。
円筒部材50の一端部9aに取り付けられた複数のフランジ部材51のうち一つのフランジ部材51(以下、符号51bで示す)は、円環状に形成され、かつ円筒部材50の外周に嵌合している。他の一つのフランジ部材51(以下、符号51cで示す)は、円環状に形成され、かつ前述したフランジ部材51bの外周に嵌合している。残りのフランジ部材51(以下、符号51dで示す)は、円環状のリング部59と、円柱状の円柱部60とを一体に備えている。リング部59は、円柱部60の外縁から立設した格好となっている。フランジ部材51dは、リング部59がフランジ部材51cの外周に嵌合している。
前述した一つのフランジ部材51aは、円環状に形成され、かつ円筒部材50の他端部9bの外周に嵌合している。フランジ部材51aは、内側に中空保持部材32を通している。なお、円筒部材50の一端部9aは、収容槽9の一端部をなしているとともに、円筒部材50の他端部9bは、収容槽9の他端部をなしている。
一対の削り屑封止ホルダ52は、それぞれ、円環状に形成されている。一方の削り屑封止ホルダ52は、円筒部材50の一端部9aの内周に嵌合し、他方の削り屑封止ホルダ52は、円筒部材50の他端部9bの内周に嵌合している。該他方の削り屑封止ホルダ52は、内側に中空保持部材32を通している。
一対の削り屑封止板53は、それぞれ、メッシュ状に形成されている。一方の削り屑封止板53は、円板状に形成され、かつ円筒部材50の一端部9aの内周に配されているとともに、前述した一方の削り屑封止ホルダ52に取り付けられている。他方の削り屑封止板53は、円環状に形成され、かつ円筒部材50の他端部9bの内周に配されているとともに、前述した他方の削り屑封止ホルダ52に取り付けられている。他方の削り屑封止板53は、内側に中空保持部材32を通している。削り屑封止板53は、後述の磁性砥粒65が加工対象物2の外表面に衝突して、該加工対象物2から削りとられて形成される削り屑が円筒部材50即ち収容槽9外に漏れ出ることを規制する。
一対の位置決め部材54は、円筒状に形成されている。一方の位置決め部材54は、中空保持部材32の自由端である一端部32aの外周に嵌合している。他方の位置決め部材54は、円筒部材50内に位置しかつ他端部9b寄りの中空保持部材32の中央部32bの外周に嵌合している。一対の位置決め部材54は、互いに間に加工対象物2を挟んで、該加工対象物2を中空保持部材32に位置決めする。なお、一端部32aは、中空保持部材32の固定保持部4寄りでかつ移動保持部6から離れた側の端部をなしている。中央部32bは、収容槽9内でかつ中空保持部材32の固定保持部から離れた側であるとともに移動保持部6寄りの端部をなしている。
仕切部材55は、円環状に形成された本体部61と、メッシュ部62とを備えている。本体部61即ち仕切部材55は、円筒部材50の内周に嵌合して、該円筒部材50に取り付けられているとともに、内側に中空保持部材32を通している。本体部61即ち複数の仕切部材55は、一対の削り屑封止板53間に配されている。また、本体部61即ち複数の仕切部材55は、円筒部材50の軸芯P即ち長手方向に沿って、互いに間隔をあけて、並設されている。図示例では、仕切部材55は、7つ設けられている。
本体部61には、貫通孔63が設けられている。メッシュ部62は、貫通孔63を塞ぐ格好で本体部61に取り付けられている。メッシュ部62は、メッシュ状に形成されており、気体と削り屑が通ることを許容するとともに、磁性砥粒65が通ることを規制する。
前述した複数の仕切部材55は、円筒部材50内即ち収容槽9内の空間を、該円筒部材50即ち収容槽9の軸芯即ち加工対象物2の軸芯Pに沿って、仕切っている。また、軸芯Pは、収容槽9の軸芯と中空保持部材32の軸芯との双方をなしているとともに、収容槽9の長手方向をなしている。即ち、軸芯Pと収容槽9の長手方向とは、互いに平行である。さらに、前述した本体部61とメッシュ部62との双方即ち仕切部材55は、非磁性体で構成されている。
一対の封止板56は、円環状に形成されている。また、封止板56は、メッシュ状に形成されているとともに、気体と削り屑が通ることを許容するとともに、磁性砥粒65が通ることを規制する。一方の封止板56は、最も一端部9a寄りの仕切部材55に取り付けられているとともに、他方の封止板56は、最も他端部9b寄りの仕切部材55に取り付けられている。封止板56は、内側に加工対象物2の両端に取り付けられた後述するキャップ64を通す。封止板56は、仕切部材55間に位置付けられた磁性砥粒65を通すことを規制して、該磁性砥粒65の円筒部材50即ち収容槽9の外部への流出を規制する。
前述した構成の収容槽9は、複数の仕切部材55間に磁性体で構成される砥粒(以下、磁性砥粒と呼ぶ)65を収容するとともに、中空保持部材32に取り付けられた加工対象物2を円筒部材50内に収容する。即ち、収容槽9は、加工対象物2と磁性砥粒65との双方を収容する。また、磁性砥粒65は、前述した回転磁場により加工対象物2の外周を回転(移動)するなどして、加工対象物2の外表面に衝突する。磁性砥粒65は、加工対象物2の外表面に衝突して、加工対象物2の外表面から該加工対象物2の一部を削り取り、該加工対象物2の外表面を粗面化する。なお、図示例では、磁性砥粒65の大きさは、0.8mm〜1.0mm×0.5mm〜1.0mm程度である。
回収部10は、図2に示すように、気体流入管66と、気体排出用孔67と、メッシュ部材68と、気体排出用ダクト69と、集塵機70(図1に示す)とを備えている。気体流入管66は、他方の削り屑封止ホルダ52より円筒部材50即ち収容槽9の端(移動保持部6)寄りに設けられ、円筒部材50即ち収容槽9の内部に開口している。気体流入管66は、図示しない加圧気体供給源から加圧された気体などが供給される。気体流入管66は、加圧された気体を円筒部材50即ち収容槽9内に導く。
気体排出用孔67は、円筒部材50を貫通して、収容槽9の内外を連通しているとともに、一方の削り屑封止ホルダ52より円筒部材50即ち収容槽9の端寄り(移動保持部6から離れた側)に設けられている。メッシュ部材68は、気体排出用孔67を塞いだ格好で、円筒部材50に取り付けられている。メッシュ部材68は、削り屑と気体とが通ることを許容し、磁性砥粒65が通ることを規制する。メッシュ部材68は、磁性砥粒65が円筒部材50即ち収容槽9の外部に流出することを規制する。
気体排出用ダクト69は、配管であるとともに、気体排出用孔67の近傍に取り付けられている。気体排出用ダクト69は、気体排出用孔67の外縁を囲んでいる。気体排出用孔67及び気体排出用ダクト69は、気体流入管66から円筒部材50即ち収容槽9内に供給された気体を、円筒部材50即ち収容槽9の外部に導く。
集塵機70は、気体排出用ダクト69に接続しているとともに、該気体排出用ダクト69内の気体を吸引する。集塵機70は、気体排出用ダクト69内の気体を吸引することで、円筒部材50即ち収容槽9内の気体を前述した削り屑とともに吸引する。集塵機70は、削り屑を回収する。前述した回収部10は、気体流入管66を通して円筒部材50即ち収容槽9内に気体を供給し、該気体と集塵機70により気体排出用孔67と気体排出用ダクト69を通して、削り屑を円筒部材50即ち収容槽9の外部に導く。そして、回収部10は、集塵機70に削り屑を回収する。
冷却部11は、図1に示すように、冷却用ファン71と、冷却用ダクト72とを備えている。冷却用ファン71は、加圧された気体を冷却用ダクト72に供給する。冷却用ダクト72は、配管である。冷却用ダクト72は、冷却用ファン71から供給された加圧された気体を電磁コイル8に導く。冷却用ダクト72は、冷却用ファン71から供給された加圧された気体を、電磁コイル8に吹き付ける。冷却部11は、加圧された気体を電磁コイル8に吹き付けて、該電磁コイル8を冷却する。
次に、前述した構成の表面処理装置1を用いて加工対象物2の外表面を処理(粗面化)する工程を、以下説明する。
まず、加工対象物2の長手方向の両端の外周に円筒状のキャップ64を嵌合させる。そして、前述した他方の位置決め部材54を中空保持部材32の外周に嵌合させる。そして、両端にキャップ64が取り付けられた加工対象物2内に中空保持部材32を通す。その後、前述した一方の位置決め部材54を中空保持部材32の外周に嵌合させる。そして、チャック用シリンダ34のチャック軸39を縮小させて、中空保持部材32に加工対象物2を固定する。このとき、中空保持部材32と加工対象物2などが同軸になる。こうして、加工対象物2を中空保持部材32に取り付ける。
そして、収容槽9内に加工対象物2及び中空保持部材32を収容するとともに、収容槽9の円筒部材50内に磁性砥粒65を供給する。こうして、収容槽9内に磁性砥粒65及び加工対象物2を収容する。さらに、収容槽9を保持チャック28,43でチャックする。こうして、移動保持部6に加工対象物2と収容槽9とを取り付ける。すると、収容槽9の円筒部材50と中空保持部材32と加工対象物2などが同軸になる。
前述した作業は、勿論、アクチュエータ24,25で移動ベース26の位置を調整しながら行われる。さらに、前述した作業は、勿論、保持ベース41の位置を調整しながら行われる。保持チャック16で収容槽9の一端部9aをチャックさせるなどして、固定保持部4に収容槽9の一端部9aを保持させる。
そして、回収部10の気体流入管66を通して収容槽9内に気体を供給するとともに、集塵機70で収容槽9内の気体を吸引するとともに、冷却部11に加圧された気体を電磁コイル8に吹き付けさせる。
そして、駆動用モータ33で中空保持部材32とともに加工対象物2を軸芯P回りに回転させる。その後、電磁コイル8に三相交流電源48からの電力を印加して、電磁コイル8に回転磁場を発生させる。すると、電磁コイル8の内側に位置する磁性砥粒65が自転しながら軸芯P回りに公転(回転即ち移動)して、該磁性砥粒65が加工対象物2の外表面に衝突して、該加工対象物2の外表面を粗面化する。
そして、電磁コイル移動部5が、適宜、電磁コイル8を軸芯Pに沿って移動する。すると、電磁コイル8の内側に侵入した磁性砥粒65が前述した回転磁場により移動(自転及び公転)するとともに、電磁コイル8の内側から抜け出た磁性砥粒65が停止する。また、仕切部材55が収容槽9内の空間を仕切っているので、磁性砥粒65が仕切部材55を越えて移動することが規制され、電磁コイル8の内側から抜け出た磁性砥粒65が前述した回転磁場内から抜け出ることとなる。さらに、電磁コイル移動部5が予め定められた所定の回数電磁コイル8を矢印Xに沿って往復移動させると、加工対象物2の外表面の粗面化が終了する。
前述した加工対象物2の外表面の粗面化が終了すると、電磁コイル8への電力の印加を停止するとともに、駆動用モータ33を停止する。さらに、回収部10と冷却部11とを停止する。そして、固定保持部4の保持チャック16の収容槽9の保持を解除するとともに、移動チャック部7の保持チャック43と移動保持部6の保持チャック28とが収容槽9を保持したまま、第1アクチュエータ24で移動ベース26を矢印Xに沿って固定保持部4から離す。すると、収容槽9が固定保持部4から離れる。そして、収容槽9内から外表面の粗面化が終了した加工対象物2を取り出して、新たな加工対象物2を収容槽9内に収容する。こうして、加工対象物2の外表面の粗面化を行う。
本実施形態によれば、電磁コイル8が移動することにより、加工対象物2の加工を行うと同時に、磁性砥粒65が回転磁場内から急激に抜け出ることととなる。このため、磁性砥粒65に作用する磁場の強さが急激に変化(減少)して、磁性砥粒内で揃っていた磁区が、不揃いになることにより磁化が弱まり、加工対象物2の加工と同時に磁性砥粒65の残留磁化を取り除く効果を奏でる。
この結果、表面処理装置1と別体の磁性砥粒65の残留磁化を取り除く消磁装置などが不要となる。したがって、容易に磁性砥粒65の消磁を行うことが可能になり、加工対象物2の長時間に亘る連続した加工が可能になって、表面処理の加工効率を向上させることができる。したがって、加工対象物2の大量生産を前提とした量産装置としての表面処理装置1を得ることができる。
加工対象物2を収容槽9の中心に保持するので、該加工対象物2の外表面に略一様に磁性砥粒65を衝突させることができる。したがって、加工対象物2の外表面を一様に加工することができる。
磁性砥粒65が加工対象物2の外周で移動(公転)することで、該磁性砥粒65を確実に加工対象物の外表面に衝突させることができ、該加工対象物2の加工を確実に行うことができる。
加工対象物2を回転させるので、該加工対象物2の外表面により一様に磁性砥粒65を衝突させることができ、加工対象物2の外表面をより一様に加工することができる。
電磁コイル8が収容槽9より短いので、電磁コイル8が収容槽9と略同等の長さの表面処理装置を用いるよりも、回転磁場を強くすることが可能となり、収容槽9内に発生させる回転磁場の損失を少なくすることが出来る。したがって、加工対象物2の加工効率を向上させることが可能となるとともに、さらに消費電力を抑えることができる。
また、電磁コイル8が収容槽9より短いので、収容槽9の両端を支持することが可能となる。これにより、磁性砥粒65の移動などで収容槽9が振動(移動)することを防止でき、加工対象物2の外表面により一層一様に磁性砥粒65を衝突させることができ、加工対象物2の外表面をより一層一様に加工することができる。
インバータ49が回転磁場の強さを任意に可変すること(例えば、回転磁場を徐々に強くしたり徐々に弱くしたりすること)により加工対象物2の外表面が円周方向及び長手方向により一様になるように、加工することができる。
収容槽9が円筒状であるので、磁性砥粒65に回転磁場を作用させた時の該磁性砥粒65の円周方向の挙動を収容槽9が妨げることがない。したがって、安定した加工が可能となる。
仕切部材55が収容槽9内の空間を長手方向に仕切っている。このため、仕切部材55により、磁性砥粒65の移動可能な領域(自転・公転領域)を限定することとなり、より効率的に加工することが可能になる。
また、磁性砥粒65が仕切部材55を越えて移動することを規制できるので、磁性砥粒65と回転磁場とを確実に相対的に移動でき、該磁性砥粒65を確実に消磁させることができる。
非磁性体で構成されているので、仕切部材55が磁化されることがなく、該仕切部材55が磁性砥粒65の挙動を妨げたり、削り屑などが磁化されて仕切部材55に張り付くことがない。このため、安定して加工を行うことが可能となる。
仕切部材55が複数設けられているので、加工対象物2の外表面の粗面化する範囲を区切ることができる。このため、仕切部材55により、磁性砥粒65の移動可能な領域(自転・公転領域)を確実に限定することとなり、より効率的に加工することが可能になる。
また、磁性砥粒65が仕切部材55を越えて移動することを規制できるので、磁性砥粒65の消磁を確実に行うことができる。
収容槽9の円筒部材50の外壁が一重構造であるため、電磁コイル8から加工対象物2までの距離を短くすることが可能となり、電磁コイル8が発生する回転磁場をより効率的に加工に使用することが可能となる。
封止板56により磁性砥粒65の収容槽9外への流出を防ぐことが可能となり加工時の作業性、生産性の向上が可能となり、連続加工することでその効果はさらに高くなり、表面処理装置1は、大量生産を前提とした量産装置としての加工対象物2の生産(処理)が可能となる。
次に、本発明の第2の実施形態を、図3を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、表面処理装置1は、図3に示すように、中空保持部材32とともに回転するとともに、該中空保持部材32の自由端としての一端部32aを支持する従動軸73を備えている。従動軸73は、円柱状に形成されかつ軸受74により前述したフランジ部材51dに回転自在に支持されている。従動軸73は、収容槽9の円筒部材50と同軸に配されている。さらに、一方の削り屑封止板53は、円環状に形成されており、内側に従動軸73を通している。本実施形態では、中空保持部材32を従動軸73の端面に押し付けた状態で、中空保持部材32を収容槽9に固定する。
このように、本実施形態では、電磁コイル8が収容槽9より短いので、従動軸73などで収容槽9内の中空保持部材32即ち加工対象物2を両端で支持することが可能となる。磁性砥粒65の移動などで収容槽9が振動(移動)することを防止でき、加工対象物2の外表面により一層一様に磁性砥粒65を衝突させることができ、加工対象物2の外表面をより一層一様に加工することができる。
次に、本発明の発明者らは、前述した実施形態の表面処理装置1の効果を確かめた。結果を表1に示す。
(比較例1)
表1中の比較例1は、パルス状に印加される専用の消磁装置を用いて、磁性砥粒の消磁を行うときの効果を示している。
(比較例2)
表1中の比較例2は、収容槽と略等しい長さの電磁コイルを備えた従来の表面処理装置で発生する回転磁場の強さ(加工効率)と、収容槽を移動させる専用の消磁装置を用いて、磁性砥粒の消磁を行うときの効果を示している。
(本発明品)
本発明品は、前述した実施形態に記載された表面処理装置1で発生する回転磁場の強さ(加工効率)と、表面処理装置1を用いて磁性砥粒65の消磁を行うときの効果を示している。
なお、発生磁場が○とは、比較例2と同じ回転磁場の強さであることを示し、発生磁場が◎とは、比較例2より20%増の回転磁場の強さであることを示し、消磁効果が○とは、比較例1及び2と同じ消磁効果を示している。
表1によれば、消磁効果に関しては、いずれの場合も○であるので、磁性砥粒65の消磁を確実に行えることが明らかとなった。したがって、本発明品が、加工対象物2の連続生産(加工)に適することが明らかとなった。
また、発生磁場に関しては、比較例1は専用の消磁装置を示しているので−となり、比較例2では○であるのに対し、本発明品が◎であるので、本発明品が比較例1及び2より回転磁場を強くすることができ、粗面化の加工効率が高いことが明らかとなった。このように、表1によれば、本発明品では、専用の消磁装置を用いることなく、確実に磁性砥粒65の消磁を行えるとともに、粗面化の加工効率を高くすることができることが明らかとなった。
さらに、本発明の発明者らは、前述した第1及び第2の実施形態の表面処理装置1の電磁コイル8と中空保持部材32の軸芯間のずれを測定した。結果を表2に示す。
表2中の本発明品1では、前述した第1の実施形態に示された表面処理装置1であり、該表面処理装置1の中空保持部材32の一端部32aでの軸芯と電磁コイル8の軸芯との位置ずれと、中空保持部材32の中央部32bでの軸芯と電磁コイル8の軸芯との位置ずれとの平均値を示している。
表2中の本発明品2では、前述した第2の実施形態に示された表面処理装置1であり、該表面処理装置1の中空保持部材32の一端部32aでの軸芯と電磁コイル8の軸芯との位置ずれと、中空保持部材32の中央部32bでの軸芯と電磁コイル8の軸芯との位置ずれとの平均値を示している。
表2によれば、第2の実施形態に示された表面処理装置1が、第1の実施形態に示された表面処理装置1より電磁コイル8と中空保持部材32を同軸に保つことができることが明らかとなった。即ち、第2の実施形態に示された表面処理装置1が、第1の実施形態に示された表面処理装置1より、加工対象物2の外表面をより一様に粗面化できることが明らかとなった。
前述した実施形態では、加工対象物2の外径と、磁性砥粒65の大きさと、収容槽9の円筒部材50の外径を適宜変更しても良いことは勿論である。また、加工対象物2の両端の形状に関しても、面取りの曲率半径や面取りの形状の大きさなども目標とする粗面の粗さ、加工時間(加工条件)、電磁コイル8の往復回数及び磁性砥粒65の耐久性などから適切な形状を選定するのが望ましい。また、収容槽9内に収容する磁性砥粒65の総量も、目標とする粗面の粗さ、加工時間(加工条件)、電磁コイル8の往復回数及び磁性砥粒65の耐久性などから適切な量に定められるのが望ましい。
また、前述した実施形態では、仕切部材55を設けている。しかしながら、本発明では、磁性砥粒65の質量と電磁コイル8の発生する回転磁場の強さなどにより、該回転磁場に磁性砥粒65が吸引されることなく、電磁コイル8の移動により磁性砥粒65が回転磁場から抜け出るのであれば、仕切部材55を設けなくても良い。さらに、本発明では、封止板56を収容槽9の円筒部材50の少なくとも一端に設ければ良い。また、本発明では、例えば板状などの円筒状以外の種々の形状の加工対象物2の外表面の粗面化を図っても良い。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。即ち、保持手段と回転手段と磁場変更手段は、実施形態に記載された構成及び配置に限定されることなく、種々の構成及び配置にしても良い。