JP4412687B2 - 仕上用エンドミル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、主として工作機械で使用する仕上げ用のエンドミルに関し、詳しくは金型および部品等の曲面の仕上げ加工で、とくに底面、底面付近の仕上げ加工に使用したとき後加工の磨き工程を省略ないしは短縮できる仕上げ用のエンドミルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金型および部品等の曲面の仕上げ加工には一般に図1に示すボールエンドミルが用いられる。これは半球面の軌跡が得られる円弧切れ刃を有していて、切削条件を細かく制御することによって、曲面のみでなく、平面仕上げも行なうことができるという優れた作用を有するものである。ボールエンドミルにおいて、ボール刃の回転中心部分は切削に際し水平面を創成する重要部分であるにもかかわらず、切削速度を発生しないため切削性がもっとも劣る部分である。これを改良したものに、回転中心近傍においてボール刃がわずかの幅をもって重なり、切れ刃が回転中心線より前方に突出するいわゆる心上り刃とされたものがあって、切れ刃強度に優れチッピングを防止できて切削精度を向上できる。例えば、特開平10−249623号には図2に示すように心上がりと親子刃との組み合せによって切れ刃欠損を抑え、加工面粗度を向上させている。また、他の例として特開平9−267211号があって、これは回転中心部分に略V字状の中底勾配を設けたものである。すなわち、回転中心部分を底刃で離間させることによって切削速度を発生しない部分が切削に関与しないようにして切削性を確保できる。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
ボールエンドミルは回転中心付近が切削面を生成するから、心上がりとして回転中心付近を強化しチッピングを防いでもが、切れ刃をもたないチゼルエッジが切削作用を負うことになり、切削性が犠牲となって摩耗の生成を助長し、工具寿命が相変わらず短いという問題があった。またチゼルエッジが生成した切り屑を円滑に排出できずに再び切削面に付着させて仕上げ精度を損い、底面仕上げ用としては使えないという問題点があった。底刃を設けて離間したものは、底刃を形成するために離間距離が長くなり、かつ中底勾配を設けたためにボール刃と底刃の連接点がシャープになって、摩耗が集中しやすいという問題があった。この部分に丸みを設けて滑らかにしても離間距離が長いために真円からの寸法誤差が無視できなく、曲面を含む狭い底面の仕上げには適さないと云う問題があった。
【0004】
本発明は以上のような背景のもとになされたものであり、回転中心付近の強度を高め、かつ切り屑排出性を向上することによってチッピングを防止するとともに、仕上げ面を生成する切れ刃を回転中心からわずかに離間させて仕上げ面粗さを向上し、とくに後加工である磨き工程を省略ないしは短縮できるほど切削表面に光沢のある美しい金属表面を長時間にわたって得ることができる仕上げ用エンドミルを提供することを目的とする。
【0005】
【問題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、本体から凸状の曲率を有し、回転中心に向かう2以上の切れ刃を備えた仕上げ用エンドミルにおいて、該2以上の切れ刃を心上がりに配し、該エンドミルの正面図で、該2以上の切れ刃の回転中心側の端部を軸方向最突出点とし、該軸方向最突出点より回転中心側には、少なくとも回転中心に対称の切れ刃の逃げ面だけを延ばして、該逃げ面を交叉させた稜を、該エンドミルの回転軌跡より凹状に設け、該軸方向最突出点の間隔が0.3mm以上としたものである。
【0006】
【作用】
本発明を適用することにより、ボールエンドミルのように本体から凸状の曲率を有し、ノーズで交わる2刃の切れ刃を備えたエンドミルにおいて、切れ刃は回転中心近傍において心上がりの位置に配するようにしたから、仕上げ面を生成する回転中心付近の切れ刃が厚くなって強化され、切削中のチッピングを防止し、高送りを可能にする。
該2刃の切れ刃の回転中心側は、該2刃の切れ刃の逃げ面で構成される稜で連続したから、該稜は心上がり量と逃げ角に応分してわずかに凹状に屈曲する。その結果、回転中心から離間した位置に軸方向最突出端が存することとなり、これ以内の低速域で切削されることがない。この凹状に屈曲する稜は、切れ刃が心上がりに配することによってのみ得られるものである。
2刃の切れ刃の軸方向最突出点の間隔を0.3mm以上離間し、逃げ面で構成される稜は、該回転中心に対称の切れ刃と連接し、かつ、該エンドミルの回転中心と該軸方向最突出点とを結んだ線分に対して、15度以下の傾きで連続させたから、心上がり量は小さな値に制限される。また、離間距離がわずかであるから底刃を設けるまでもなく、切れ刃と稜が方向を変えずに連続しように作用して切り屑が刃溝方向に流出するから、切り屑が切れ刃と切削面とに挟まって切削仕上げ面を傷つけることがない。
【0007】
本発明はボール形状のエンドミルにとどまらず、楕円、放物線等任意曲線でよいのであって、回転中心近傍において2刃の切れ刃の逃げ面で構成される稜は、該切れ刃と軸方向最突出点以内で連接していればよい。すなわち軸方向最突出点は凸状の曲率を有する切れ刃内に存するのである。従って、適正なすくい角とチップポケットを備えた切れ刃で良質の仕上げ面が生成できるのである。
凸状の曲率は切削する平面の大きさに応じて適宜に選択すればよく、ボール刃にこだわらないからエンドミル直径も随意に選択できる。
【0008】
ところで、ボールエンドミルをはじめ、曲率を有するエンドミルにおいて底面切削を行なう場合、切り込みの大きさに連動して、関与する切れ刃の長さが決まる。そしてピック送りに相当する幅のみが仕上げ面として切削後にまで残ることになる。本発明において、2刃の切れ刃の軸方向最突出点の間隔が0.3mm以上としたのは、作業性と仕上げ面とを両立するピック送りとして0.3mm程度が望ましいためであって、間隔をピック送り以上の値としておくことによって、平坦な底面のみが仕上げ面として残るのである。1刃送りに関しては該間隔が大きいから送りを大きくした場合、切り屑が1刃送りごとに明瞭に分離して生成されて、能率のよい仕上げ切削が可能となる。これはまた大きな切り屑を作ることになり、切削熱は切り屑とともに排除されるから、切削油を用いない乾式切削にも応用できるのである。このように本発明によれば心上がり刃として回転中心付近の切れ刃を強化し、最突出部を離間して切削速度を得ると同時にチップポケットを確保し、さらには切れ刃の軌跡にも配慮することによって、滑らかで光沢のある仕上げ面を得ることができかのである。以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0009】
【実施例】
図3、図4は本発明をボールエンドミルに適用した実施例を表わす。このエンドミルは刃径10mm、ボール刃半径5mm、2刃の超硬合金製ストレートシャンクボールエンドミルであって、その先端形状は心上がりの量が片側0.06mm、2刃の切れ刃の軸方向最突出点の間隔が0.4mm、該エンドミルの回転中心と該軸方向最突出点とを結んだ線分に対する傾き角が10゜である。本発明品と、従来のわずかなチゼルエッジを有するものとを比較切削に供した。加工材料はHRC40に調質したプリハードン金型用鋼である。回転中心が切削加工面を形成する平面送り切削に用い、このとき得られる切削面粗さを評価対象として、切削速度110m/min、1刃送り0.1mm、切り込みは上下、ピック送りとも0.3mmの切削条件で切削した。エアブローを使用した乾式切削である。
結果は、本発明品は切削初期において仕上げ面粗さが2.5〜2.7μmRy、約270m切削後においても粗さの劣化はなく、さらに仕上げ切削を継続することができた。従来品は切削初期で8〜10μmRyであって、切削とともに粗さが劣化し、270m切削後は15μmRy以上であった。3μmRy以下であると磨き工程がはかどるとされていて、本発明の効果が実証された。この相違は仕上げ面を観察することによって一層明白であって、本発明品ではエンドミル回転中心が通過するパス上においても規則正しい切れ刃マークを示しているのに対して、比較品には磨き加工を難しくする不規則なむしれが切削面全面に観察された。このような結果は切り屑状態からも類推することができ、本発明品では常時切り屑が飛散していたのに対して、比較品は飛散する切り屑が少なく、また切削音が高くて切削性に劣ることを窺わせた。すなわち本発明品においてチップポケットを大きくしたことが奏効したものにほかならない。
【0010】
図5のピック送りの説明図より、従来例のボールエンドミルにより平面を形成する場合はボール刃の半径によって図6に示すように幾何学的な凹凸が生じ、これは理論値が計算できる。図6の実線はエンドミルの回転軌跡で、破線は1刃当たりの送り前の回転軌跡を示している。上記実施例の切削条件の場合は2.3μmと計算された。通常の切削においては切削中の振動、切削面のむしれ等が重畳してこれの数倍の数値を示すことも珍しくない。
本発明品は、軸方向最突出点の間隔を、ピック送り以上に離間したから、図7で解るように理論値ですでに凹凸がなく、切削粗さのみが計測されたものである。以上は2刃のボールエンドミルに適用した実施例を示したが、凸状の曲率を有していればボール刃に限るものでなく、図8に例示するように楕円、放物線等任意曲線でよく、また回転中心に向かう2刃の切れ刃を備えていれば外周刃、曲線刃とも3刃以上であっても差し支えない。
【0011】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、切れ刃の構成を改良することによって回転中心部分の強度を高め、切り屑処理を適正にして仕上げ面粗さを向上し、とくに後加工である磨き工程を省略ないしは短縮できるほど切削表面に光沢のある美しい金属表面を長時間にわたって達成できる仕上げ用エンドミルを得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来のボールエンドミルの正面図を示す。
【図2】図2は、図1の側面図を示す。
【図3】図3は、本発明の実施例の側面図を示す。
【図4】図4は、図3の要部拡大した正面図を示す。
【図5】図5は、ピック送りの説明図を示す。
【図6】図6は、従来例における図5の部分拡大図を示す。
【図7】図7は、本発明例における図5の部分拡大図を示す。
【図8】図8は、本発明の他の実施例の要部拡大した正面図を示す。
【符号の説明】
1 本体
2 ボール刃
3 凸状の曲率をもつ刃
4 凸状の曲率をもつ刃3の逃げ面
5 回転中心に対称の切れ刃の逃げ面が作る稜
6 エンドミルの回転中心と該軸方向最突出点とを結んだ線分に対する傾き角
7 軸方向最突出点
8 軸方向最突出点の間隔
9 ピック送り
Claims (2)
- 本体から凸状の曲率を有し、回転中心に向かう2以上の切れ刃を備えた仕上げ用エンドミルにおいて、該2以上の切れ刃を心上がりに配し、該エンドミルの正面図で、該2以上の切れ刃の回転中心側の端部を軸方向最突出点とし、該軸方向最突出点より回転中心側には、少なくとも回転中心に対称の切れ刃の逃げ面だけを延ばして、該逃げ面を交叉させた稜を、該エンドミルの回転軌跡より凹状に設け、該軸方向最突出点の間隔が0.3mm以上であることを特徴とした仕上げ用エンドミル。
- 請求項1記載のエンドミルにおいて、該稜は、該回転中心に対称の切れ刃と連接し、かつ、該エンドミルの回転中心と該軸方向最突出点とを結んだ線分に対して、15度以下の傾きで連続させたことを特徴とする仕上げ用エンドミル。
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