JP4406318B2 - 遮熱コーティング材料およびそれを用いたガスタービン部材、ガスタービン - Google Patents

遮熱コーティング材料およびそれを用いたガスタービン部材、ガスタービン Download PDF

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Description

本発明は、発電用ガスタービンや航空機用ガスタービンの高温部材に用いられる遮熱コーティング材料およびそれを用いたガスタービン部材、ガスタービンに関する。
エネルギー資源の枯渇や、温暖化ガス排出量抑制、運転コスト削減の流れを受けて、ガスタービンの高効率化の流れが加速している。ガスタービンの熱効率向上には燃焼ガス温度の増加が有効であることから、タービン入口での燃焼ガス温度は1500℃に達しつつあり、高温部材を構成するニッケルやコバルトを主成分とする超合金単体での耐熱温度の限界を超えている。
このような状況の中で高温部材の最表面に低熱伝導率のセラミックスをコーティングし、部材内部を冷却する「遮熱コーティング」の技術が不可欠となりつつあり、この性能がガスタービン全体の信頼性を決定する重要な因子となっている(例えば、非特許文献1参照。)。
従来、遮熱コーティング材料は、ニッケル、コバルト、鉄のいずれかを主成分とした合金を基材とし、その表面に形成されたMCrAlY合金(Mはニッケル、コバルト、鉄から選ばれる少なくとも1つの元素)コーティング層、もしくはアルミニウム、白金−アルミニウムの拡散コーティング層等の中間層と、この中間層の表面に形成された低熱伝導率の酸化物セラミックス層とから構成されている。
酸化物セラミックス層は熱伝導率が低く、熱膨張係数がセラミックスの中では大きく、靭性が高いなどの理由から、イットリウム酸化物(Y)で安定化した正方晶ジルコニウム酸化物(ZrO)が多く用いられている(例えば、非特許文献2参照。)。
酸化物セラミックス層の形成方法には、高温のプラズマ流内にセラミックス粉末を投入して溶融し、基材表面に吹き付ける「溶射法」と、電子ビームによってセラミックスインゴットを溶解し、発生した蒸気中に基材を暴露して成膜する「電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)法」とが一般的に用いられる。
溶射法による酸化物セラミックス層の形成は施工コストが安く、また層内の欠陥が基材表面水平方向に入る(いわゆるラメラー構造)を形成できることから、熱伝導率を低く(0.8〜1W/mK)することができる。
しかしながら、熱サイクル負荷環境では、この欠陥の方向性によって、熱応力によって皮膜内部に発生した欠陥が初期に内在していた欠陥を連結するように伝播し、深刻な剥離を生じることが報告されている(例えば、非特許文献3参照。)。
これに対して、EB−PVD法による酸化物セラミックス層の形成では、基材表面垂直方向に柱状の組織が成長し、柱状粒間のすきまによって熱応力が緩和されることから、溶射法によるものに比べ耐熱サイクル性が約8倍も向上することが報告されている(非特許文献4)。
しかしながらEB−PVD法による酸化物セラミックス層では、熱流の大部分が密な柱状粒の中心部を通り、初期に内在する欠陥が有効な熱抵抗とならないため、熱伝導率が溶射法に比べ2倍ほど高い(1.5〜2W/mK)欠点が指摘されている。
従って、EB−PVD法による遮熱コーティング材料の開発では、材料組成の最適化による本質的な熱伝導率を低減することと、成膜パラメータによる柱状構造の制御の両面から、耐熱サイクル性を損なうことなく、酸化物セラミックス層の熱伝導率を下げる多くの試みがなされている(例えば、特許文献1〜11、非特許文献5〜6参照。)。
材料組成に関する試みでは、ジルコニウムをハフニウムなどの原子量の大きく重い元素へ置換することや、安定化剤をイットリウム酸化物(Y)からエルビウム酸化物(Er)、イッテルビウム酸化物(Yb)、ネオジウム酸化物(Nd)、ガドリニウム酸化物(Gd)等に置換する試みがなされ、熱伝導率を1W/mKにまで低減できることが報告されている(例えば、非特許文献1、2参照。)。
また、構造制御による低熱伝導化の試みとしては、特殊なEB−PVD装置による柱状組織のジグザグ化(例えば、非特許文献5参照。)や、揮発成分の取り込みによる多孔質化等が報告されている(例えば、非特許文献6参照。)。
しかしながら、遮熱コーティング材料の最表面層となる酸化物セラミックス層には、熱伝導率以外にも、高温安定性、耐焼結性、耐エロージョン性や、異物の衝突に対する抵抗性等、総合的な特性が要求され、上述したような酸化物セラミックス層は未だ幅広く利用されるには至っていない。
European Patent EP0825271 A1. European Patent EP0628090 B1. 特開平11−50226 特開平11−256304 特開2002−294428 特開2002−69607 特開2003−129210 特開2003−160852 特開2003−201803 特開2003−239086 特開2003−277952 吉葉正行:日本ガスタービン学会誌, vol.30, No.6 (2002), 1-5. D. R. Clarke et al.: Annu. Rev. Mater. Res., 33 (2003), 383-420. L. Singheiser et al.: Materials at High Temperature, 18(4) (2001), 249-259. P. Morrell et al.: Paper presented at an AGARD SMP Meeting on "Thermal Barrier Coatings", (1997), 20-1−20-9. D. D. Hass et al.: Acta Mater., 49 (2001), 973-983. B. A. Movchan et al.: Surf. Coat. Technol., 165 (2003), 90-100.
以上述べたように、従来の遮熱コーティング材料、特に酸化物セラミックス層においては、低熱伝導率と耐熱サイクル特性とを両立することが困難となっている。本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、新規な柱状組織を有し、実機使用環境下で優れた遮熱特性を発揮し、信頼性に優れた遮熱コーティング材料を提供することを目的としている。
本発明の遮熱コーティング材料は、ニッケル、コバルトおよび鉄の少なくとも1種から選ばれる元素を主成分とする金属基材と、前記金属基材上に形成されるアルミニウムおよびクロムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する金属中間層と、前記金属中間層上に形成されるジルコニウムを主成分とする酸化物セラミックス層とを有する遮熱コーティング材料であって、前記酸化物セラミックス層の表面部の組織が、平均幅10μm以下の微細な1次柱状組織と、この1次柱状組織が凝集してなる平均幅15μm以上の2次柱状組織とからなり、前記2次柱状組織どうしが1μm以上の隙間を持って離間していることを特徴とする。本発明の遮熱コーティング材料については、前記2次柱状組織どうしが1μm以上5μm以下の隙間を持って離間していることが好ましい。
前記酸化物セラミックス層は、初期の段階で立方晶を含むことが好ましく、前記金属基材表面垂直方向に<100>または<311>方向に配向していることが好ましい。前記酸化物セラミックス層の気孔率は、15%以上30%以下であることが好ましく、前記酸化物セラミックス層の初期の熱伝導率は1.2W/mK以下であることが好ましい。
前記酸化物セラミックス層は、ジルコニウム酸化物およびセリウム酸化物を含有するもの、または、ジルコニウム酸化物およびセリウム酸化物ならびにイットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物およびユーロビウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化物安定化剤を含有するものであることが好ましい。
前記酸化物セラミックス層は前記イットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物およびユーロビウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化物安定化剤を2mol%以上8mol%以下含有し、前記ジルコニウム酸化物の含有量に対する前記セリウム酸化物の含有量のモル比が10%以上60%以下であることが好ましい。
前記酸化物セラミックス層はランタン酸化物およびハフニウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの高温安定性向上用の酸化物を5mol%以下含有するものであることが好ましい。
前記酸化物セラミックス層は電子ビーム物理蒸着法によって作製されることが好ましい。そして、本発明のガスタービン部材はこのような遮熱コーティング材料を用いてなるものである。また、本発明のガスタービンはこのようなガスタービン部材を用いてなるものである。
本発明においては、酸化物セラミックス層を有する遮熱コーティング材料において、酸化物セラミックス層の表面部の組織を平均幅10μm以下の微細な1次柱状組織と、この1次柱状組織が凝集してなる平均幅15μm以上の2次柱状組織とからなるものとし、かつ2次柱状組織どうしが1μm以上の隙間を持って離間するものとすることにより、酸化物セラミックス層の熱伝導率を低減させると共に、耐熱サイクル性を向上させ、信頼性に優れた遮熱コーティング材料とすることができる。
また、本発明ではガスタービン部材あるいはガスタービンの製造においてこのような遮熱コーティング材料を用いることで、信頼性に優れたガスタービン部材あるいはガスタービンとすることができる。
以下、本発明について説明する。
図1は、本発明の遮熱コーティング材料1の一例を模式的に示した断面図である。本発明の遮熱コーティング材料は金属基材2と、この金属基材2の上に形成される金属中間層3と、この金属中間層3の上に形成される酸化物セラミックス層4とからなるものである。
金属基材2は、ニッケル、コバルトおよび鉄の少なくとも1種から選ばれる元素を主成分とするものである。このような金属基材2としては、使用用途等に応じて各種公知の耐熱合金を適宜選択して使用することができる。実用上は、IN738、IN939、Mar−M247、RENE80等のNi基超合金や、FSX414、Mar−M509等のCo基超合金を用いることが有効である。
金属中間層3は、アルミニウムおよびクロムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有するものである。具体的には、耐食、耐酸化性に優れると共に、金属基材2と後述する酸化物セラミックス層4との中間の熱膨張係数を有するM−Cr−Al−Y合金(MはFe、NiおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素を示す)、もしくはアルミニウムと合金基材に含まれるニッケルやコバルトとの化合物等を利用することができる。
M−Cr−Al−Y合金による金属中間層3は、金属基材2の耐食、耐酸化性を保証すると同時に、金属基材2と酸化物セラミックス層4との間の熱膨張係数の違いによる熱応力の緩和を図ることを目的としており、総合的にこれらの性能を考慮して、一般的には0.1〜20重量%のAl、10〜35重量%のCr、0.1〜5重量%のYを含み、残部がNiおよびCoから選ばれる少なくとも1種の元素から実質的になる組成の合金が好ましく用いられる。なお、金属基材1上に直接に酸化物セラミックス層4を形成することも可能であるが、上述したような理由から金属中間層3を設けておくことが好ましい。
M−Cr−Al−Y合金による金属中間層3は、プラズマ溶射法、HVOF法、PVD法、CVD法等の成膜方法によって形成することができるが、実用上はプラズマ溶射法が最も有効である。また、この金属中間層3の厚さは10μm以上500μm以下程度の範囲から用途に応じて選択することができる。
また、アルミニウムとニッケルやコバルトとの化合物による金属中間層3も適用目的はM−Cr−Al−Y合金による金属中間層と同様、耐食・耐酸化性の改善と、熱応力の緩和であるが、この層は拡散浸透処理によってアルミニウム等の元素を直接、金属基材2に浸透させて形成することが有効である。また、拡散浸透処理前に白金等のめっき処理を施して、さらなる耐酸化性の向上を図ることもできる。なお、この型の金属中間層はM−Cr−Al−Y合金によるものに比べやや薄く、1μm以上100μm以下の範囲から用途に応じて選択することが可能である。
酸化物セラミックス層4は、このような金属中間層3上に形成されるものである。酸化物セラミックス層4はジルコニウムを主成分とし、その少なくとも表面部の組織が、平均幅10μm以下の微細な1次柱状組織5と、この1次柱状組織5が凝集してなる平均幅15μm以上の2次柱状組織6とからなるものである。図2に、このような1次柱状組織5と2次柱状組織6とからなる酸化物セラミックス層4の表面部の断面組織の一例を示す。
図2に示す酸化物セラミックス層4では、その表面と平行な方向においておよそ1μm以上といった比較的広めの間隔をおいて、幅35μm〜40μm程度の2次柱状組織6が3つ形成されている。また、この2次柱状組織6においては、上記間隔よりも狭い、およそ1μm未満といった間隔で、幅およそ10μm以下の複数の1次柱状組織5が凝集している。
図2に示す断面組織からも明らかなように、2次柱状組織6を構成する1次柱状組織5は、必ずしも長さ方向の一端から他端へ向けて連続的に形成されている必要はなく、途中で枝分かれするように形成されていてもよい。また、1次柱状組織5の幅は必ずしも一端から他端へ向けて同じでなくてもよく、一方の側に向けて幅が広くなっていてもよいし、反対に幅が狭くなっていても構わない。
本発明では遮熱コーティング材料1に要求される低熱伝導率と耐熱サイクル性との2つの特性に関し、低熱伝導率については2次柱状組織6を構成する1次柱状組織5間に形成されている狭い間隔による熱抵抗によって達成し、耐熱サイクル性については2次柱状組織6間に形成されている幅の広い間隔による熱応力緩和効果によって達成することにより、低熱伝導率と耐熱サイクル性との両方に優れる遮熱コーティング材料1を提供することができる。
一般的な酸化物セラミックス層における柱状組織は金属基材あるいは金属中間層側からその反対側の表面に近づくにつれて徐々に幅が広がるためその平均の幅を規定することが難しいが、本発明では酸化物セラミックス層4の表面直下にその表面と平行な直線を仮想し、この直線と交わる1次柱状組織5または2次柱状組織6の幅および数を測定し、1次柱状組織5または2次柱状組織6の平均の幅を算出する。
なお、図2に示す断面組織からも明らかなように、表面付近、例えば表面から10μm程度までの範囲では、2次柱状組織6の角部に1次柱状組織5が発達していない場合があるため、平均幅を算出するための仮想の直線はこのような範囲を避けて行うことが好ましい。また、金属中間層3側から50μmまでの範囲では2次柱状組織6の幅が一定していないため、このような範囲での測定も避けることが好ましい。上述したような範囲を除けば、仮想の直線の位置は特に限定されるものではないが、例えば酸化物セラミックス層4の表面から20μm以上30μm以下の範囲に仮想の直線を引くことが好ましい。
1次柱状組織5の平均幅は10μm以下であればよく、細いほど柱状組織間の欠陥を多く含み、熱伝導率の低減に有効であるが、あまりに細いと高温での使用時に焼結によって著しく形態が変化する可能性があるため、平均幅は0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。
2次柱状組織6の平均幅は15μm未満であると柱状組織の機械強度が低下するため、15μm以上とする。しかしながら、2次柱状組織6の平均幅が過度に大きくなると酸化物セラミックス層4全体の応力緩和効果が消失するため、2次柱状組織6の平均幅は50μm以下とすることが好ましい。
このような2次柱状組織6間に存在し、主として耐熱サイクル性の向上を担う幅の広い間隔の平均間隔は好ましくは1μm以上、より好ましくは1μm以上5μm以下程度である。さらに、この2次柱状組織6を構成する1次柱状組織5間に存在し、主として熱伝導率の低下を担う幅の狭い間隔の平均間隔は1μm未満であることが好ましい。なお、このような平均間隔は、上述したような1次柱状組織5または2次柱状組織6の平均幅の算出と同様な方法で行うことができる。
酸化物セラミックス層4の厚さは、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。酸化物セラミックス層4の厚さが50μm未満であると十分な遮熱特性を得ることが難しく、また500μmを超えると形成に長時間を要するなどの問題がある。
このような酸化物セラミックス層4は、初期の段階で立方晶を含むことが好ましい。正方晶単相で皮膜を生成すると高温使用時に単斜晶に相変態を生じ、これによる体積変化が皮膜剥離を促進する。また、立方晶は正方晶に比べて結晶の対称性が高いことから、初期にランダムに向いた結晶が次第に配向性を持つようになる電子ビーム物理蒸着法や化学蒸着法において、特定の配向性を有する結晶粒子の密度を増加する効果があり、1次柱状組織の幅を細くする上で効果的に働く。
含有する立方晶量の目安としては、立方晶の(400)面と正方晶(004)面のX線強度をI(400)、I(400)、I(004)としたときに次式で表される因子F(正方晶に対する立方晶のモル比)が0.7以上であることが好ましい。
F=0.88×I(400)/(I(400)+I(004))。
酸化物セラミックス層4は、金属基材2の表面垂直方向に<100>または<311>方向に配向していることが好ましい。酸化物セラミックス層4の組織は成膜条件によって<111>、<110>、<100>、<311>等に配向するが、一般に良好な柱状組織を形成するためには、<100>または<311>に配向すること好ましい。酸化物セラミックス層4の柱状組織が金属基材2の表面等に対して直角をなす<100>配向だけで構成されていればより好ましい。
酸化物セラミックス層4の初期熱伝導率は1.2W/mK以下であることが好ましい。初期熱伝導率が1.2W/mK以上であると従来の電子ビーム物理蒸着法による遮熱コーティング材料と違いが少なく、遮熱性能が十分でない。
また、酸化物セラミックス層4の気孔率は、材料の理論密度の15%以上30%以下であることが好ましい。気孔率が低下すると熱伝導率は線形的に低下することが知られているが、あまりに気孔率が高いと酸化物セラミックス層4の機械強度が低下する。このため酸化物セラミックス層4の気孔率は15%以上30%以下、さらには20%以上30%以下の範囲に制御されていることが好ましい。
本発明の遮熱コーティング材料1における酸化物セラミックス層4は、上述したような所定の平均幅を有する1次柱状組織5と2次柱状組織6とからなるものであれば特にその組成は限定されるものではないが、ジルコニウム酸化物(ZrO)およびセリウム酸化物(CeO)を含有するもの、または、これらジルコニウム酸化物およびセリウム酸化物に加えて、イットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物およびユーロビウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化物安定化剤を含有するものであることが好ましい。
セリウム酸化物はジルコニウム酸化物と同様の蛍石構造を作ることから、結晶構造を変化させることなく添加することが可能である。またセリウムは、ジルコニウム酸化物の立方晶の安定化剤としても作用するため、高温で安定な立方晶を形成することが容易にできる。さらに、セリウムの原子量はジルコニウムより大きいため、熱振動を抑制し、材料本来の熱伝導率も低減できるなど、数多くの利点がある。
なお、前述したようにセリウム酸化物はそれ自体が相安定化剤として働くため、他の安定化剤の併用は必ずしも必要でないが、目的に応じて、イットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物、ユーロビウム酸化物等の安定化剤を混合し、さらなる特性改善を図ることも可能である。
イットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物およびユーロビウム酸化物から選ばれる酸化物安定化剤の含有量は、酸化物セラミックス層4全体の2mol%から8mol%であることが好ましい。酸化物安定化剤の安定化剤の含有量が2mol%未満では正方晶から単斜晶への変態が生じることがあり、8mol%を超えると機械強度の低下を助長するため、2mol%以上8mol%以下であることが好ましい。
また、酸化物セラミックス層4におけるジルコニウム酸化物の含有量に対するセリウム酸化物の含有量のモル比(=(セリウム酸化物のモル数/ジルコニウム酸化物モル数)×100)は10%以上60%以下であることが好ましい。
セリウム酸化物の添加量が少ないと微細な1次柱状組織5の凝集による2次柱状組織6の形態をなすことが困難であり、セリウム酸化物の添加量が過剰であると機械強度の低下や、電子ビーム物理蒸着用のインゴットの作製が困難になるなどの問題が生じる。このため、ジルコニウム酸化物に対するセリウム酸化物のモル比は10%以上60%以下であることが好ましい。
酸化物セラミックス層4には、さらにランタン酸化物およびハフニウム酸化物から選ばれる少なくとも1種の高温安定性向上用の酸化物が5mol%以下含有されていることが好ましい。ハフニウム酸化物およびランタン酸化物は酸化物セラミックス層4の高温使用時の焼結による構造変化を抑制するのに効果を発揮するものである。
従って、本発明の酸化物セラミックス層4に適量添加すれば、高温使用時の2次柱状組織6間等の間隔の消失を抑制し、低熱伝導率と高い耐熱サイクル性とを長期間にわたって維持することができる。
しかしながら、ランタン酸化物またはハフニウム酸化物をあまりに多量に添加すると、特にランタン酸化物についてはランタンジルコネート(LaZr)等の異相を形成し、酸化物セラミックス層4内にひずみが生じることなどから、これらの高温安定化用酸化物の添加量は5mol%以下に制御されることが好ましい。
このような酸化物セラミックス層4は、少なくともジルコニウム酸化物を含み、その他に上述したようなセリウム酸化物、酸化物安定化剤、高温安定性向上用の酸化物等を所定量含むインゴットを作製し、これを用いて電子ビーム物理蒸着法を行うことにより作製することができる。
電子ビームによる物理蒸着法による酸化物セラミックス層4の形成は、例えば電子ビーム出力を10kW〜200kW、成膜時の圧力を10Pa〜10−4Pa、成膜温度を500℃〜1200℃、基板回転数を0rpm〜30rpmとすることにより行うことができる。
酸化物セラミックス層4における1次柱状組織5、2次柱状組織6の平均幅、配向性、厚さ等の調整は、電子ビームによる物理蒸着法を行う際の電子ビーム出力、圧力、成膜温度、基板回転数等を適宜変更することにより行う。
なお、酸化物セラミックス層4の形成においては、平均幅10μm以下の微細な1次柱状組織が凝集してなる平均幅15μm以上の2次柱状組織を有する酸化物セラミックス層4を形成可能な成膜法であれば、溶射法、物理蒸着法、化学蒸着法、めっき法等の方法を用いることも可能であるが、上述したような1次柱状組織5および2次柱状組織6からなる酸化物セラミックス層4を容易に形成しうる観点から電子ビームによる物理蒸着法を用いることが好適である。
本発明のガスタービン部材は、上述したような遮熱コーティング材料を用いたことを特徴とするものである。本発明の遮熱コーティング材料は、ガスタービンの高温構造用部材のいかなる部分にも適用可能であるが、とりわけ過酷な高温環境にさらされる燃焼器、トランジションピース、動翼、静翼、シュラウドセグメント等の部品に適用するのが最も効果的である。
また、本発明のガスタービンは、上述したようなガスタービン部材を用いたことを特徴とするものである。本発明のガスタービンは航空機用、舶用、陸用、発電用のいずれのガスタービンにも適用可能であるが、遮熱コーティング材料への依存度の高い航空機用エンジンと、発電用コンバインドサイクルプラントにおけるガスタービン部への適用が好ましい。
本発明では優れた応力緩和効果により耐熱サイクル性を損なうことなく、低熱伝導率で遮熱効果の高い遮熱コーティング材料を実現することができ、上述したようなガスタービンに用いることでその熱効率向上と長寿命化を達成することができる。
以下、実施例を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の各実施例では、金属基材としてニッケル基超合金IN738LC(16Cr−2Mo−3Ti−4Al−9Co−2Ta−1Nb−3W−Ni、数字は重量%を示す)を用い、この金属基材表面に金属中間層としてCoNiCrAlY合金(Co−32Ni−21Cr−8Al−0.5Y)を減圧プラズマ溶射法で積層したクーポン状サンプル(□55×20×2.5mm、以下基板と呼ぶ)を用い、この基板の表面に酸化物セラミックス層を形成して各種の評価試験に供した。
(実施例1)
を3mol%、CeOを30mol%、残部をZrOとしたインゴットを用いて電子ビーム物理蒸着法(EB−PVD)により蒸着を行い、図1に示すような酸化物セラミックス層が形成された遮熱コーティング材料を作製した(実施例1−1)。
なお、酸化物セラミックス層の形成は、基板を950℃まで加熱し、電子ビーム出力を45kW、真空度を1Paに制御し、10rpmで基板を回転させながら、酸素を逐次導入して蒸着を行った。
このようにして形成された実施例1−1の遮熱コーティング材料における酸化物セラミックス層は厚さはおよそ300μmであり、表面から30μmの距離における1次柱状組織の幅が平均2.5μm、2次柱状組織の幅が平均35μmであった。
さらに、比較例として、Yを4mol%、残部をZrOとしたインゴットを用いて実施例1−1と同様にして遮熱コーティング材料を作製した(比較例1−1)。比較例1−1の遮熱コーティング材料における酸化物セラミックス層は単一の柱状組織からなり、その柱状組織の平均幅は10μmであり、一般的な構造となっていた。
次に、実施例1−1、比較例1−1の遮熱コーティング材料から金属基材と金属中間層とを酸溶液によって溶解し、酸化物セラミックス層だけを取り出し、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。
その結果、実施例1−1に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.8W/mKであったのに対し、比較例1−1に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は1.5W/mKであり、実施例1−1に係る酸化物セラミックス層のように1次柱状組織および2次柱状組織からなるものとすることにより、極めて高い遮熱効果を得られることが明らかとなった。
また、実施例1−1、比較例1−1の遮熱コーティング材料の酸化物セラミックス層の表面をバーナーによって加熱し、酸化物セラミックス層の表面温度を1200℃(ボンド層表面温度950℃)と室温とに10分づつ加熱冷却する試験によって耐久性を評価した。
その結果、実施例1−1、比較例1−1の遮熱コーティング材料はいずれも剥離まで約500回の熱サイクル負荷に耐えることがわかり、本発明の遮熱コーティング材料は従来の遮熱コーティング材料と遜色ない耐久性も備えることも明らかとなった。
(実施例2)
酸化物セラミックス層の相の違いによる影響を調べるため、Yを3mol%、CeOを30mol%、残部をZrOとしたインゴットを用い、上記(実施例1)と同様の条件でEB−PVD法を行い、基板上に酸化物セラミックス層が形成された遮熱コーティング材料を作製した(実施例2−1)。また、Yを3mol%、CeOを3mol%、残部をZrOとしたインゴットを用い、同様に遮熱コーティング材料を作製した(比較例2−1)。なお、酸化物セラミックス層の厚さはいずれも約300μmであった。
実施例2−1、比較例2−1に係る酸化物セラミックス層の断面組織を観察したところ、実施例2−1に係る酸化物セラミックス層は表面から30μmの距離で、1次柱状組織の幅が平均2.5μm、2次柱状組織の幅が平均35μmであったのに対し、比較例2−1に係る酸化物セラミックス層は単一の柱状組織からなり、その柱状組織の幅は平均8μmであった。
次に、実施例2−1、比較例2−1に係る酸化物セラミックス層の表面をX線回折法によって結晶相を同定したところ、実施例2−1に係る酸化物セラミックス層は立方晶単層であったのに対し、比較例2−1に係る酸化物セラミックス層は正方晶に対する立方晶のモル比(前述した因子F)は0.1以下であった。
これらの結果から、酸化物セラミックス層内に立方晶が含まれることが、本発明のような1次柱状組織および2次柱状組織からなる酸化物セラミックス層を形成する上で重要であることが明らかとなった。
(実施例3)
酸化物セラミックス層の柱状組織の形成に対する配向の影響を調べるために、Yを3mol%、CeOを30mol%、残部をZrOとしたインゴットを用い、このインゴット直上(実施例3−1)と、直上から100mmずれた位置(実施例3−2)にそれぞれ基板を設置し、上記(実施例1)と同様の条件でEB−PVD法を行い、基板上に酸化物セラミックス層が形成された遮熱コーティング材料を作製した。
また、同様のインゴットを用い、基板を回転させずに酸化物セラミックス層を形成して遮熱コーティング材料を作製した(比較例3−1)。なお、酸化物セラミックス層の厚さはいずれも約300μmであった。
その結果、実施例3−1に係る酸化物セラミックス層は表面から30μmの距離で、平均幅2.5μmの1次柱状組織と平均幅35μmの2次柱状組織を有し、実施例3−2に係る酸化物セラミックス層は平均幅2.8μmの1次柱状組織と平均幅33μmの2次柱状組織を有していた。
さらに、実施例3−1、実施例3−2に係る酸化物セラミックス層の配向性を調べるため表面をX線回折により回折パターンを調べた。その結果、実施例3−1に係る酸化物セラミックス層は主に<100>配向、実施例3−2に係る酸化物セラミックス層は主に<311>配向していることが明らかとなった。
これに対して、比較例3−1に係る酸化物セラミックス層は柱状組織が発達せず、結晶配向は<111>を示していた。従って、良好な柱状組織形成のためには、<100>または<311>配向していることが重要であることがわかった。
さらに、実施例3−1〜3−2、比較例3−1の遮熱コーティング材料の酸化物セラミックス層の表面をバーナーによって加熱し、酸化物セラミックス層の表面温度を1200℃(ボンド層表面温度950℃)と室温とに10分づつ加熱冷却する試験によって、耐久性を評価した。
その結果、実施例3−1の遮熱コーティング材料は670回の熱サイクル負荷に耐えたが、実施例3−2に係る遮熱コーティング材料は520回の熱サイクル負荷で剥離した。一方、比較例3−1の遮熱コーティング材料は35回の熱サイクルで剥離した。
以上の結果から、遮熱コーティング材料における酸化物セラミックス層は、<311>配向よりも、<100>配向の方が、より優れた耐熱サイクル性を有することが明らかとなった。
(実施例4)
酸化物セラミックス層の気孔率と熱伝導率との関係を調べるため、Yを3mol%、CeOを30mol%、残部をZrOとしたインゴットを用い、基板を950℃まで加熱した後、電子ビーム出力を45kW、真空度を1Paに制御し、酸素を逐次導入してEB−PVD法を行い、基板上に酸化物セラミックス層が形成された遮熱コーティング材料を作製した。
なお、この酸化物セラミックス層の形成の際、基板回転数を1、5、10rpmに変化させて3種類の遮熱コーティング材料を作製した(それぞれ実施例4−1、4−2、4−3)。これらの酸化物セラミックス層の厚さはいずれも約300μmであった。
実施例4−1〜4−3に係る酸化物セラミックス層は、表面から30μmの距離で、1次柱状組織の幅が平均2.5〜3.5μm、2次柱状組織の幅が平均25〜30μmであった。
次に、実施例4−1〜4−3の遮熱コーティング材料から酸溶液によって金属基材と金属中間層とを溶解して、酸化物セラミックス層だけを取り出し、重量と体積から酸化物セラミックス層の理論密度と気孔率とを測定した。その結果、実施例4−1〜4−3の気孔率は、それぞれ、13%、18%、23%となっていた。
さらに、取り出された酸化物セラミックス層の熱伝導率をレーザーフラッシュ法により測定した。各酸化物セラミックス層の熱伝導率は、1.3W/mK(実施例4−1)、1.0W/mK(実施例4−2)、0.8W/mK(実施例4−3)となっており、気孔率が高い酸化物セラミックス層ほど熱伝導率が低下する傾向にあった。
これらの結果から、従来の溶射法による酸化物セラミックス層の熱伝導率(1.0W/mK)に相当する低熱伝導率を実現するためには、気孔率を約15%以上とすることが必要であることが明らかとなった。
(実施例5)
酸化物セラミックス層における1次柱状組織および2次柱状組織の形成に対するCeOの有効性を調べるため、蒸着源であるインゴットのCeO含有量を以下の表1に示すような組成として、他の条件は(実施例1)と同様として遮熱コーティング材料を作製した(実施例5−1〜5−2、比較例5−1〜5−3)。
その結果、実施例5−1〜5−2に係る酸化物セラミックス層は1次柱状組織と2次柱状組織とからなり、比較例5−1〜5−3に係る酸化物セラミックス層は単一の柱状組織からなることが認められた。
これら実施例5−1〜5−2、比較例5−1〜5−3に係る酸化物セラミックス層の表面をX線回折法によって結晶相を同定したところ、比較例5−1に係る酸化物セラミックス層は正方晶単相、実施例5−1に係る酸化物セラミックス層は正方晶と立方晶の2相、実施例5−2、比較例5−2〜5−3に係る酸化物セラミックス層は立方晶単相から構成されていた。
また、実施例5−1〜5−2、比較例5−1〜5−3の遮熱コーティング材料から酸化物セラミックス層だけを取り出し、レーザーフラッシュ法によって熱伝導率を測定した結果、比較例5−1に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は1.5W/mK、実施例5−1に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.9W/mK、実施例5−2に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.8W/mK、比較例5−2に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.8W/mK、比較例5−3に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は1.2W/mKであった。
これらのことから、ZrOの含有量に対するCeOの含有量のモル比がおよそ10%以上60%以下であれば、酸化物セラミックス層を1次柱状組織と2次柱状組織とからなるものとし、酸化物セラミックス層の熱伝導率も低減できることが明らかとなった。
さらに、実施例5−1〜5−2、比較例5−1〜5−3の遮熱コーティング材料の酸化物セラミックス層の表面をバーナーによって加熱し、酸化物セラミックス層の表面温度を1200℃(ボンド層表面温度950℃)と室温とに10分づつ加熱冷却する試験によって、耐久性を評価した。
その結果、比較例5−1、実施例5−1〜5−2の遮熱コーティング材料は剥離まで500回以上の熱サイクル負荷に耐えたが、比較例5−2の遮熱コーティング材料では320回、比較例5−3の遮熱コーティング材料では180回で剥離を生じた。
これらのことから、酸化物セラミックス層を1次柱状組織と2次柱状組織とからなるものとし、その熱伝導率を低減するためにはCeOを添加することが有効であるが、過剰に添加すると遮熱コーティング材料としての耐久性が低下するため、ZrOの含有量に対するCeOの含有量の比として、およそ10%以上60%以下とすることが好ましいことが明らかとなった。
(実施例6)
酸化物セラミックス層に対する安定化剤の影響を調べるため、以下の表2に示すようなイットリウム酸化物(Y)、エルビウム酸化物(Er)、イッテルビウム酸化物(Yb)、ネオジウム酸化物(Nd)、ガドリニウム酸化物(Gd)のいずれかを3mol%、CeOを30mol%、残部をZrOとしたインゴットを作製し、上記(実施例1)と同様の条件で5種類の遮熱コーティング材料(実施例6−1〜6−5)を作製した。なお、酸化物セラミックス層の厚さはいずれも約300μmであった。
走査型電子顕微鏡によって、これら実施例6−1〜6−5に係る酸化物セラミックス層の断面組織の観察を行ったところ、表面から30μmの距離で、いずれの遮熱コーティング材料も平均幅2.0〜3.2μmの1次柱状組織と、平均幅20〜35μmの2次柱状組織とからなることが認められた。
また、実施例6−1〜6−5の遮熱コーティング材料から金属基材と金属中間層とを酸によって溶解し、酸化物セラミックス層だけを取り出し、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。その結果、実施例6−1〜6−5に係るいずれの酸化物セラミックス層についても1.0W/mK以下の熱伝導率を示し、安定化剤の種類によらずに熱伝導率を低減できることが確認された。
(実施例7)
遮熱特性の維持に対するLa、HfO添加の有効性を調べるために、以下の表3に示すように、Yを3mol%、CeOを30mol%、LaまたはHfOを1mol%、残部をZrOとした2種類のインゴットを用いて、上記(実施例1)と同様の条件で遮熱コーティング材料を作製した(実施例7−1〜7−2)。
また、La、HfOのいずれも含まないインゴットを用いて、同様に遮熱コーティング材料を作製した(実施例7−3)。なお、酸化物セラミックス層の厚さはいずれも約300μmであった。
走査型電子顕微鏡によって、これら実施例7−1〜7−3に係る酸化物セラミックス層の断面組織の観察を行ったところ、表面から30μmの距離で、Laを添加した実施例7−1に係る酸化物セラミックス層は平均幅2.2μmの1次柱状組織と平均幅32μmの2次柱状組織を有し、HfOを添加した実施例7−2に係る酸化物セラミックス層は平均幅2.5μmの1次柱状組織と平均幅33μmの2次柱状組織を有することが認められた。
また、La、HfOのいずれも含まないインゴットを用いて作製された実施例7−3に係る酸化物セラミックス層は、平均幅2.5μmの1次柱状組織と平均幅35μmの2次柱状組織を有することが認められた。
次に、実施例7−1〜7−3の遮熱コーティング材料から金属基材と金属中間層とを酸によって溶解し、酸化物セラミックス層だけを取り出し、レーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。
その結果、Laを添加したインゴットを用いて作製された実施例7−1に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.8W/mK、HfOを添加したインゴットを用いて作製された実施例7−2に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.75W/mK、La、HfOのいずれも含まないインゴットを用いて作製された実施例7−3に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.8W/mKとなった。
また、酸化物セラミックス層について重量と体積から理論密度に対する気孔率を算出した結果、Laを添加したインゴットを用いて作製された実施例7−1に係る酸化物セラミックス層の気孔率は25%、HfOを添加したインゴットを用いて作製された実施例7−2に係る酸化物セラミックス層の気孔率は21%、La、HfOのいずれも含まないインゴットを用いて作製された実施例7−3に係る酸化物セラミックス層の気孔率は23%であった。
さらに、実施例7−1〜7−3に係る酸化物セラミックス層を1200℃×100hの高温中で保持し、高温処理による気孔率と熱伝導率の変化を測定した。
その結果、Laを添加したインゴットを用いて作製された実施例7−1に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.9W/mK、HfOを添加したインゴットを用いて作製された実施例7−2に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は0.95W/mK、La、HfOのいずれも含まないインゴットを用いて作製された実施例7−3に係る酸化物セラミックス層の熱伝導率は1.2W/mKとなり、LaあるいはHfOの添加が長時間遮熱特性を維持する上で有効であることが明らかとなった。
本発明の遮熱コーティング材料の一実施形態を示す模式図 本発明に係る酸化物セラミックス層の表面部を走査型電子顕微鏡により断面観察した結果の一例を示した図
符号の説明
1…遮熱コーティング材料、2…金属基材、3…金属中間層、4…酸化物セラミックス層、5…1次柱状組織、6…2次柱状組織

Claims (12)

  1. ニッケル、コバルトおよび鉄の少なくとも1種から選ばれる元素を主成分とする金属基材と、前記金属基材上に形成されるアルミニウムおよびクロムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する金属中間層と、前記金属中間層上に形成されるジルコニウムを主成分とする酸化物セラミックス層とを有する遮熱コーティング材料であって、
    前記酸化物セラミックス層の表面部の組織が、平均幅10μm以下の微細な1次柱状組織と、この1次柱状組織が凝集してなる平均幅15μm以上の2次柱状組織とからなり、前記2次柱状組織どうしが1μm以上の隙間を持って離間していることを特徴とする遮熱コーティング材料。
  2. 前記2次柱状組織どうしが1μm以上5μm以下の隙間を持って離間していることを特徴とする請求項1記載の遮熱コーティング材料。
  3. 前記酸化物セラミックス層は、初期の段階で立方晶を含むことを特徴とする請求項1または2記載の遮熱コーティング材料。
  4. 前記酸化物セラミックス層は、前記金属基材表面垂直方向に<100>または<311>方向に配向していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の遮熱コーティング材料。
  5. 前記酸化物セラミックス層の気孔率は、15%以上30%以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の遮熱コーティング材料。
  6. 前記酸化物セラミックス層の初期の熱伝導率が1.2W/mK以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の遮熱コーティング材料。
  7. 前記酸化物セラミックス層は、ジルコニウム酸化物およびセリウム酸化物を含有するもの、または、ジルコニウム酸化物およびセリウム酸化物ならびにイットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物およびユーロビウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化物安定化剤を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の遮熱コーティング材料。
  8. 前記酸化物セラミックス層は前記イットリウム酸化物、エルビウム酸化物、イッテルビウム酸化物、ネオジウム酸化物、ガドリニウム酸化物およびユーロビウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの酸化物安定化剤を2mol%以上8mol%以下含有し、前記ジルコニウム酸化物の含有量に対する前記セリウム酸化物の含有量のモル比が10%以上60%以下であることを特徴とする請求項項記載の遮熱コーティング材料。
  9. 前記酸化物セラミックス層はランタン酸化物およびハフニウム酸化物から選ばれる少なくとも1つの高温安定性向上用の酸化物を5mol%以下含有することを特徴とする請求項または記載の遮熱コーティング材料。
  10. 前記酸化物セラミックス層は電子ビーム物理蒸着法によって作製されたことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載の遮熱コーティング材料。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項記載の遮熱コーティング材料を用いたことを特徴とするガスタービン部材。
  12. 請求項11記載のガスタービン部材を用いたことを特徴とするガスタービン。
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