JP4406262B2 - 感光性樹脂組成物 - Google Patents
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高耐熱性要求に応え得る感光性樹脂として、共重合体骨格にN−置換マレイミドを導入した樹脂が検討されている(特許文献3)。しかしながら、この系においても、耐熱性に重きを置き過ぎると、硬化物に脆さが発現したりアルカリ現像性が低下するということになりかねない。また、この文献に開示されている樹脂は、N−置換マレイミド系共重合体を得た後、二重結合導入反応を約24時間、さらにその後に、アルカリ現像性発現のためのカルボキシル基導入反応を約3時間行って得られており、製造に長時間を要するものであった。
(B)ヒドロキシル基含有単量体
ヒドロキシル基含有単量体は重合体中にヒドロキシル基を導入して、後の工程で多塩基酸無水物との反応によりカルボキシル基に変換してアルカリ現像性を付与するための必須単量体成分である。
上記各成分であるN−置換マレイミド成分(A)、ヒドロキシル基含有単量体(B)、および併用してもよい単量体の重合時における仕込量は、目的とする重合体の性質、および各単量体の転化率(単量体から重合体へ転化する重合分率)を考慮して、重合体中の各成分が上記好適範囲となるよう適宜決定すればよい。
樹脂組成物としての特性、アルカリ現像性、硬化塗膜物性、耐熱性等を考慮すれば、重合体(I)の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値として、ポリスチレン換算値で1,000〜200,000が好ましい。Mwが1,000未満では、加熱乾燥による塗膜形成の際のタックフリー性や硬化塗膜の耐熱性が不充分となることがある。一方、Mwが200,000を越えると、アルカリ現像性が低下するおそれがある。Mwのより好ましい下限は3,000、さらに好ましい下限は5,000である。また、より好ましい上限は100,000、さらに好ましい上限は50,000である。
変性時の溶媒としては特に限定されず、重合溶媒として用いることのできる溶媒として前記した溶媒がいずれも使用可能である。工業的には、溶液重合に引き続いて、反応溶液中に多塩基酸無水物(C)を添加して変性反応を行うのが簡便である。
本発明では、変性重合体(II)と後述のエポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性化合物等と共に構成した樹脂組成物を、アルカリ現像型の画像形成用感光性樹脂組成物として用いることができるが、変性重合体(II)が有するヒドロキシル基および/またはカルボキシル基に対して、これらの基と反応し得る官能基を有する単量体(D)を反応させて得たラジカル重合性二重結合を有する変性重合体(III)を用いることもできる。
ヒドロキシル基と単量体(D)を反応させる場合は、多塩基酸無水物(C)との反応の前後で、あるいは同時に、任意の段階で行うことができる。ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基と単量体(D)との反応条件は、各々の官能基について、公知の手法で触媒、反応温度を適宜選択して行えばよい。
ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基に対する単量体(D)の使用量は、単量体(D)中のこれらと反応し得る官能基が0.9モル以下、より好ましくは0.8モル以下となるように反応させることが好ましい。
本発明では、変性重合体(II)および/またはラジカル重合性二重結合を有する変性重合体(III)と公知のラジカル重合性化合物とを混合してアルカリ現像型の画像形成用感光性樹脂組成物として用いる。このようなラジカル重合性化合物には、ラジカル重合性樹脂とラジカル重合性モノマーとがある。ラジカル重合性樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が使用できる。これらのラジカル重合性樹脂を用いる場合、本発明の感光性樹脂組成物の成分として用いられる変性重合体(II)あるいは(III)由来の耐熱性向上効果等を有効に発揮させるために、樹脂固形分(本発明の変性重合体固形分と上記ラジカル重合性樹脂固形分との総量)を100質量%としたとき、ラジカル重合性樹脂を80質量%以下で使用することが好ましい。より好ましい上限値は70質量%、さらに好ましい上限値は60質量%である。
ラジカル重合性モノマーの具体例としては、重合体(I)を得る際の原料であるN−置換マレイミド成分、ヒドロキシル基含有単量体、および併用してもよい共重合可能な前記した単量体(単官能モノマー)に加え、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリアジン等の(メタ)アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のラジカル重合性二重結合を有するビニル(チオ)エーテル化合物;トリアリルシアヌレート等、ラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能モノマーが挙げられる。これらは、感光性樹脂組成物の用途や要求特性に応じて適宜選択され、1種または2種以上を混合して用いることができる。
[重量平均分子量]
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により下記条件で測定した。試料溶液は、重合体(I)を固形分濃度が約0.5%となるようにテトラヒドロフラン(溶離液)に溶解して調製した。Mwは、標準ポリスチレン(東ソー製)を用いて作製した検量線から求めた。
・カラム:TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperHM-M、TSKgel Super2000各1本ずつ直列に連結(いずれも東ソー製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・溶離液流量:0.6ml/分
[転化率]
重合体(I)を得る際の各単量体成分の転化率は、LC(液体クロマトグラフィー)を用いて下記条件で求めた。試料溶液は、精秤した重合体溶液(0.5g程度)と、精秤したN,N−ジメチルホルムアミド(30mg程度;内部標準として使用)とを、下記溶離液で100mlに希釈して調製した。
・カラム:TSK−gel ODS−80Ts(25cm)(東ソー製)
・溶離液:0.05%リン酸二水素アンモニウム水溶液/アセトニトリル=50/50(質量比)
・溶離液流量:0.5ml/分
・検出波長:210nm
により算出した。
[耐熱性]
変性重合体(II)あるいは(III)の耐熱性を、熱重量分析(TGA)装置「Shimadzu DTG-50H」によって評価した。変性重合体の溶液(1g程度)をペンタン(30g程度)に加え、変性重合体を再沈殿させて回収し、10時間減圧乾燥を行って揮発成分を除去した後、熱重量分析を行った。温度プログラムは、100℃で10分間保持した後、10℃/分で昇温し、1.0%減少温度(試料の質量が1.0%減少したときの温度)と、5.0%減少温度(試料の質量が5.0%減少したときの温度)とを求めた。質量の減少は、重合体の熱分解に起因するので、これらの温度が高いほど耐熱性が高いこととなる。
[現像性]
イルガキュアー907(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の光重合開始剤)を変性重合体(II)あるいは(III)溶液とカルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)の溶液との混合物の固形分に対して5%添加して均一溶液とし、銅板上に乾燥後の膜厚が50μmとなるように塗布した後、80℃で30分間加熱した。その後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中に浸漬し、塗膜が溶解除去されるまでの時間によって、現像性(アルカリ溶解性)を評価した。
[光硬化性]
現像性評価と同様にして得た乾燥塗膜に対し、紫外線露光装置を用いて2J/cm2の露光を行った後、30℃の1%炭酸ナトリウム水溶液中に90秒浸漬し、塗膜の残存度合いによって光硬化性を評価した。
[耐屈曲性]
変性重合体(II)あるいは(III)溶液とカルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)の溶液との混合物の固形分に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「YDPN−638P」;東都化成製;エポキシ当量177)を30%、前記イルガキュアー907を5%、硬化剤としてジシアンジアミドを2%添加して均一溶液とし、ポリエチレンテレフタレートフィルムに乾燥後の膜厚が100μmになるように塗布した後、80℃で30分間加熱した。次いで、紫外線露光装置を用いて2J/cm2の露光を行った後、さらに、160℃で1時間加熱した。試験片を室温まで冷却し、10mmφの心棒を用いて、JIS K 5400-1990の8.1に準じて耐屈曲性の評価を行った。目視でクラックの発生の有無を評価した。
実施例1、2及び比較例1、2
実施例1
1)重合体(I−1)の合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた容器に、溶媒としてDBE−5(商品名;デュポン社製、グルタル酸ジメチル主成分)120部を仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が115℃になるまで加熱した。
2)変性重合体(II−1)の合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容器に、上記重合体(I−1)溶液100部、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸14.5部、触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド0.343部を仕込み、撹拌しながら115℃で6時間反応させた。その結果、酸価が123mgKOH/g、固形分が36.4%の変性重合体(II−1)溶液が得られた。
3)変性重合体(III−1)の合成、耐熱性評価
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容器に、上記変性重合体(II−1)溶液70部、グリシジルメタクリレート4.5部、重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル0.018部を仕込み、撹拌しながら105℃で6時間反応させた。その結果、酸価が51mgKOH/g、二重結合当量が1018g/eq、固形分が40.0%の変性重合体(III−1)溶液が得られた。
4)カルボキシル基含有エポキシアクリレートの合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、ガス導入管を備えた容器に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名「YDCN−704A」;東都化成製;エポキシ当量205)410部、アクリル酸145部、前記DBE−5を299部、エステル化触媒としてベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド1.7部、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン0.5部を仕込み、120℃で15時間反応させ、反応物の酸価が1.5mgKOH/gになったことを確認した。次いで、DBE−5を76部とテトラヒドロ無水フタル酸142部を加えて、100℃で4時間反応させ、酸価77mgKOH/gのカルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)を65%含むDBE−5溶液を得た。
5)感光性樹脂組成物の調製、現像性、光硬化性、耐屈曲性評価
前記変性重合体(III−1)の溶液10部と上記カルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)の溶液6.2部とを混合した樹脂組成物を用いて、前記した方法で現像性、光硬化性、耐屈曲性を評価した。
現像性は良好であり、60秒の浸漬によって塗膜は溶解除去されていた。光硬化性も良好であり、露光後の塗膜は炭酸ナトリウム水溶液に90秒浸漬した後も変化が認められなかった。耐屈曲性評価でも、クラックの発生は認められなかった。
実施例2
1)重合体(I−2)の合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた容器に、溶媒としてDBE−5を40部仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が115℃になるまで加熱した。
滴下ロートを2つ用意し、その1つに、N−フェニルマレイミド20部、スチレン4部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部および溶媒としてDBE−5を40部混合して得た溶液(A液)を仕込み、滴下ロート内を5分間窒素ガス置換した。また、他の1つに、重合開始剤として1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)[V−40]0.54部および溶媒としてDBE−5を20部混合して得た溶液(B液)を仕込み、滴下ロート内を5分間窒素ガス置換した。
2)変性重合体(II−2)の合成、耐熱性評価
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容器に、上記重合体(I−2)溶液100部、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸14.7部、触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド0.344部を仕込み、撹拌しながら115℃で6時間反応させた。その結果、酸価が101mgKOH/g、固形分が42.7%の変性重合体(II−2)溶液が得られた。
この変性重合体(II−2)のTGA結果によれば、1.0%減少温度は220℃、5.0%減少温度は270℃であった。
3)感光性樹脂組成物の調製、現像性、光硬化性、耐屈曲性評価
前記変性重合体(II−2)の溶液9.4部と実施例1で合成したカルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)の溶液6.2部とを混合した樹脂組成物を用いて、前記した方法で現像性、光硬化性、耐屈曲性を評価した。
現像性は良好であり、60秒の浸漬によって塗膜は溶解除去されていた。光硬化性も良好であり、露光後の塗膜は炭酸ナトリウム水溶液に90秒浸漬した後も変化が認められなかった。耐屈曲性評価でも、クラックの発生は認められなかった。
比較例1
1)比較用重合体(I−3)の合成
撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入管および滴下ロートを備えた容器に、溶媒としてDBE−5を40部仕込み、容器内を10分間窒素ガス置換した後、撹拌しながら内温が115℃になるまで加熱した。
滴下ロートを2つ用意し、その1つに、スチレン16部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部および溶媒としてDBE−5を30部混合して得た溶液(A液)を仕込み、滴下ロート内を5分間窒素ガス置換した。また、他の1つに、重合開始剤である1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)[V−40]0.46部および溶媒としてのDBE−5を20部混合して得た溶液(B液)を仕込み、滴下ロート内を5分間窒素ガス置換した。
容器と滴下ロートの窒素ガス置換を行った後、容器内の温度を115℃に維持して撹拌を続けながら、2つの滴下ロート内の溶液(A液とB液)を各々2時間かけて滴下して重合し、滴下終了後、115℃でさらに3時間熟成させた。
熟成終了後、各単量体の転化率を算出したところ、スチレンの転化率は100%、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの転化率は100%であった。この結果より、得られた比較用重合体(I−3)の組成はスチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=40:60(モル比)であり、固形分が33.8%の比較用重合体(I−3)溶液が得られた。また、得られた比較用重合体(I−3)のMwは27000であった。
2)比較用変性重合体(II−3)の合成、耐熱性評価
撹拌装置、温度計、還流冷却器を備えた容器に、上記比較用重合体(I−3)溶液100部、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸15.3部、触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド0.346部を仕込み、撹拌しながら115℃で6時間反応させた。その結果、酸価が107mgKOH/g、固形分が41.9%の比較用変性重合体(II−3)溶液が得られた。
この変性重合体(II−3)のTGA結果によれば、1.0%減少温度は176℃、5.0%減少温度は202℃であり、実施例に比べて耐熱性が低いことが確認できた。
3)感光性樹脂組成物の調製、現像性、光硬化性、耐屈曲性評価
前記比較用変性重合体(II−3)の溶液9.5部と実施例1で合成したカルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)の溶液6.2部とを混合した樹脂組成物を用いて、前記した方法で現像性、光硬化性、耐屈曲性を評価した。
現像性は良好であり、60秒の浸漬によって塗膜は溶解除去されていた。光硬化性も良好であり、露光後の塗膜は炭酸ナトリウム水溶液に90秒浸漬した後も変化が認められなかった。耐屈曲性評価でも、クラックの発生は認められなかった。
比較例2
実施例1で合成したカルボキシル基含有エポキシアクリレート(IIII)溶液12.3部を用いて(変性重合体は使用せず)、前記した方法で現像性、光硬化性、耐屈曲性を評価した。
Claims (4)
- アルカリ現像可能な塗膜を形成し得る感光性樹脂組成物であって、
N−置換マレイミド成分(A)と、ヒドロキシル基含有単量体(B)とを必須成分としてラジカル重合させて得られた重合体(I)の有するヒドロキシル基の少なくとも一部に対し、多塩基酸無水物(C)を反応させて得られたカルボキシル基を有する変性重合体(II)の有するカルボキシル基の少なくとも一部に対し、カルボキシル基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性単量体(D)を反応させて得られたラジカル重合性二重結合を有する変性重合体(III)が含まれていることを特徴とする感光性樹脂組成物。 - エポキシ(メタ)アクリレートが含まれている請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
- さらに、一分子中に2個以上のカルボキシル基と反応し得る官能基を有する化合物が含まれている請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
- N−置換マレイミド成分(A)と、ヒドロキシル基含有単量体(B)とを必須成分としてラジカル重合させて得られた重合体(I)の有するヒドロキシル基の少なくとも一部に対し、多塩基酸無水物(C)を反応させることを特徴とするカルボキシル基を有する変性重合体(II)を得、上記カルボキシル基含有変性重合体(II)の有するヒドロキシル基および/またはカルボキシル基の少なくとも一部に対し、これらの基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性単量体(D)を反応させることを特徴とするラジカル重合性二重結合を有する変性重合体(III)の製造方法。
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