JP4402569B2 - 再生多層ポリエステルシート - Google Patents
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また、PET樹脂は、溶融粘度が低くメルトテンシヨンが低いため、溶融押出によってシ−トを成形することが容易ではないが、使用済みPET樹脂の場合、加水分解によってさらに低粘度となっているため、溶融押出によるシート成形はより一層難しいものとなる。
しかし、ポリカーボネート樹脂を用いた場合、ガラス転移温度が高くなるために成形温度域を高くする必要があり、シート成形が容易でなく、熱成形に要する時間や成形サイクルが長くなるという課題があった。また、滑り性に劣るため、印刷機や加工機への給紙性が充分でないという課題も抱えていた。さらにまた、2軸延伸PETフィルムの場合には特に成形性が問題となり、APETシートの場合には特に耐熱性が問題となることが多かった。
基体層(A)は、市場回収ポリエステル系樹脂1〜60質量%と、ポリカーボネート樹脂を、或いは、ポリカーボネート樹脂とポリエステル系樹脂とのポリマーアロイ樹脂を99〜40質量%含有してなり、
被覆層(B)は、ジオール成分、ジカルボン酸成分及び共重合成分からなる共重合ポリエステル系樹脂と、屈折率1.4〜1.7の不活性粒子とを含有し、被覆層(B)を構成する樹脂の合計量に対して前記共重合成分を4モル%以上含有し、且つ被覆層(B)の全質量100質量部に対して前記不活性粒子を0.05〜1質量部含有してなることを特徴とする再生多層ポリエステルシートを提案する。
基体層(A)は、市場回収ポリエステル系樹脂とポリカーボネート樹脂との混合樹脂組成物、或いは、市場回収ポリエステル系樹脂とポリカーボネート樹脂及びポリエステル系樹脂からなるポリマーアロイ樹脂との混合樹脂組成物から形成することができる。
市場回収ポリエステル系樹脂は、市場から回収されたプラスチックボトル、プラスチックシート、カップやトレイを含むプラスチック容器など、使用済プラスチック製品として市場から回収されたプラスチック製品から得られるポリエステル系樹脂であり、その樹脂組成としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とが等モルで縮重合してなる樹脂であればよい。
中でも好ましいエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルとしては、ジカルボン酸成分の60モル%以上がテレフタル酸であり、残りのジカルボン酸成分が他のジカルボン酸成分で置換されたジカルボン酸成分と、ジオール成分の60モル%以上がエチレングリコールで、残りのジオール成分が他のジオール成分で置換されたジオール成分とが縮合重合してなるポリエステルが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂は、例えばビスフェノール化合物を原料として周知の方法で製造されたものを使用することができるが、その平均分子量は15000〜30000の範囲のものが好ましい。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、市場回収ポリエステル系樹脂より20℃以上高いもの、特に25℃以上高いものが好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂の熱変形温度(荷重たわみ温度ともいう)は、市場回収ポリエステル系樹脂より20℃以上高いもの、中でも25℃以上高いものが好ましい。この際のガラス転移温度又は熱変形温度の測定方法は、ガラス転移温度についてはJIS K7121に準拠し、熱変形温度については、荷重たわみ温度JIS K7191に準拠して測定することができる。
基体層(A)は、市場回収ポリエステル系樹脂と、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル系樹脂からなるポリマーアロイ樹脂とを混合して得られる樹脂組成物から形成することもできる。ただし、ポリカーボネート樹脂成分が基体層(A)の40質量%、特に50質量%以上、中でも特に60質量%以上を占めるようにポリマーアロイ樹脂を配合するのが好ましい。
このようなポリマーアロイ樹脂は、市場回収PET樹脂との相性が良いため、通常のポリエステル系樹脂の押出温度である270℃前後で溶融押出しても透明性を良好にすることができる。
被覆層(B)は、基体層(A)のいずれか一方の片面又は両面に積層してなる層であって、ジオール成分、ジカルボン酸成分及び共重合成分からなる共重合ポリエステル系樹脂と不活性粒子とを含有する樹脂組成物から形成することができる。例えば、共重合ポリエステル系樹脂及び不活性粒子からなる樹脂組成物から被覆層(B)を形成してもよいし、また、共重合ポリエステル系樹脂、市場回収ポリエステル系樹脂及び不活性粒子からなる樹脂組成物から被覆層(B)を形成してもよい。
被覆層(B)の主成分をなす共重合ポリエステル系樹脂としては、ジオール成分、ジカルボン酸成分及び共重合成分(前記ジオール成分及びジカルボン酸成分とは異なる成分)からなる共重合ポリエステル系樹脂を用いることができる。
この場合、二種類以上のジオールを含有するか、或いは、二種類以上のジカルボン酸を含有することになるが、本発明においては、二種類以上のうちの含有量の多い成分をジオール成分又はジカルボン酸成分とし、残りの成分を共重合成分とするものである。
この共重合ポリエステル系樹脂の分子量は10000以上、特に15000以上であるのが好ましい。
不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミノシリケート、タルクなどの無機系粒子やスチレン系樹脂の架橋粒子などを使用することができる。
不活性粒子の平均粒径は2μm〜15μm、特に5μm〜10μmであるのが好ましい。平均粒径2μm以上であれば、シート表面の凹凸が小さ過ぎることがなく、印刷等などの2次加工時の給紙性を良好に維持することができる。また、15μm以下であれば、シート表面の凹凸が大きくなり過ぎることがなく、シートの外観や透明性を悪くすることがない。なお、不活性粒子の平均粒径とは、コールカウンター(日本化学機械社製)を使用して計測し、累積質量分率が50%なる時の平均粒径である。
なお、複数種類の不活性粒子を組み合わせて使用することもできる。
被覆層(B)には、共重合ポリエステル系樹脂及び不活性粒子のほかに、市場回収ポリエステル系樹脂を配合することもできる。この際、市場回収ポリエステル系樹脂は、基体層(A)の成分として説明した市場回収ポリエステル系樹脂を好ましく用いることができる。
被覆層(B)において、市場回収ポリエステル系樹脂は、質量割合で上記共重合ポリエステル系樹脂:市場回収ポリエステル系樹脂=100:0〜15:85、好ましくは100:0〜30:70の割合となるように配合するのが好ましい。
基体層(A)及び被覆層(B)のいずれの層においても、上記の成分を主成分とし、それらの機能を妨げない範囲において、他の成分を配合してもよい。
好ましい一例を挙げれば、基体層(A)、被覆層(B)の何れか或いは両方の層に、酸化防止剤、エステル交換防止剤のいずれか或いは両方を配合することができる。本発明のシートは、ポリエステル系樹脂とポリカーボネート樹脂から成る層を有するため、押出条件や熱履歴によっては、ポリエステル系樹脂とポリカーボネート樹脂がエステル−カーボネート交換反応を起こし、着色したり、分子量が低下したりするおそれがある。これに対し、酸化防止剤やエステル交換防止剤を添加することで、例えばシートの耳を粉砕して原料として練り返し使用する際などに特に効果がある。
この際、酸化防止剤及びエステル交換防止剤の種類は、特に規定はしないが、リン系又はフェノール系の物が好ましく、2種類以上の物を併用しても構わない。
本実施形態の再生ポリエステル多層シートの厚さは、用途により異なるから特に規定するものではないが、例えば50μm〜2000μm、用途により100μm〜1000μmの範囲で選択するのが好ましい。
但し、基体層(A)の厚さは、シート全体の厚さに対して30%以上、中でも50%以上、その中でも特に70%以上を占めるように設計するのが好ましい。該基体層の厚さが30%以上であれば、どのような使用環境下であってもシートの変形を生じ難くすることができる。
本実施形態の再生多層ポリエステルシートの各層は、例えば、押出機に供給しTダイより押出し、キャストロールで急冷固化することにより得ることができる。
また、各層を積層する方法としては、(1)予め各層をシート成形した後、熱又は接着剤により貼り合わせる方法、(2)予めシート成形した表面被覆層を、基体層シートを押出機のTダイから押出した直後に熱接着する方法、(3)各層をそれぞれ別の押出機で溶融押出し、ニップロールで溶融接着する方法、(4)各層をそれぞれ別の押出機で溶融し、多層ダイを用いて、溶融積層し複層シートとして押し出す方法などの方法により行うことができる。
なお、透明性をより高めるためには、押出機として2軸押出機等を使用して混練、分散をより十分に行うことが好ましい。
こうして得られた再生多層ポリエステルシートは、カット装置を通して枚葉状にカットしてもよいし、コイル状に巻き取っても良い。
以上のようにして得られた再生多層ポリエステルシートは、シート表面(被覆層の表面)に絵柄層を形成して広告表示用シート、例えば、耐熱性が要求される自動販売機内の電飾POP用の広告用基材シートを形成することができる。
また、再生多層ポリエステルシートのシート表面に絵柄層を形成し、折り曲げ加工してディスプレイ用ケースとすることができる。
また、再生多層ポリエステルシートのシート表面に絵柄層を形成し、熱成形してディスプレイ用成形加工品とすることができる。但し、熱成形する際、シート厚さにより条件も異なるが、一般にシート表面温度が120℃〜160℃となるような予熱条件範囲で真空成形または圧空成形する。シートの加熱はできるだけ短時間とし、シートの結晶化が著しくならないよう配慮することが好ましい。
以下に示す原料を用意し、押出温度270℃に設定した1台又は2台の2軸ベント式押出機にて、それぞれの原料を溶融混合して、2種3層のTダイを用いて押出した後、40℃の鏡面のキャストロールで急冷し、無延伸の非結晶性樹脂シートを得た。その後、カット装置へ供給し枚葉状のシートを作製した。
各シートの構成、各層の組成、厚さ、並びに各シートについての各種評価結果を表1に示した。
a:市場回収PETボトル再生原料(再生リサイクル業者にて、粉砕洗浄した再生原料) (固有粘度0.68)
b:テレフタル酸(:ジカルボン酸成分)と、エチレングリコール(:ジオール成分)7 0モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール(:共重合成分)30モル%の混 合物と、を縮重合させて得られた共重合ポリエステル(固有粘度0.8)
c:ポリカーボネート樹脂成分50重量%と、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸と、 ジオール成分としてエチレングリコール30モル%及び1,4−シクロヘキサンジメ タノール70モル%であるポリエステル樹脂成分50重量%とからなるポリマーアロ イ樹脂
d:ポリカーボネート樹脂 (平均分子量25,000)
e:テレフタル酸(:ジカルボン酸成分)80モル%及びイソフタル酸(:共重合成分) 20モル%の混合物と、エチレングリコール(:ジオール成分)と、を縮重合させて 得られた共重合ポリエステル (固有粘度0.72)
ア:アルミノシリケート (屈折率1.50 平均粒径 8μm)
イ:アルミノシリケート (屈折率1.50 平均粒径 1.5μm)
ウ:アルミノシリケート (屈折率1.50 平均粒径18μm)
エ:シリカ (屈折率1.46 平均粒径 8μm)
オ:スチレン架橋粒子 (屈折率1.59 平均粒径 8μm)
「被覆層における樹脂種類の比率(例えば実施例1のa/b)」は、樹脂のモル比率であり、「被覆層における共重合成分のモル%」とは、被覆層を構成する樹脂のモル数に対する共重合成分のモル数割合である。例えば実施例1においては、被覆層中に、共重合成分を含む樹脂bが30モル%含まれ、当該樹脂bには30モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノール(:共重合成分)が含まれているから、被覆層における共重合成分のモル%は30%×30%で9%となる。
また、「被覆層における不活性粒子の添加部数」は、被覆層を構成する樹脂の質量100部に対しての不活性粒子の添加部数である。
1.環境性
シート全体に対する再生原料の質量割合を計算し(表1)、25%以上のものを環境性「○」、それ未満のものを環境性「×」と評価した。
得られたシートの透明性をJIS K−7105に準拠し、ヘーズメーターにより確認し、下記基準で評価した。
「○」・・・ ヘーズ15%未満
「△」・・・ ヘーズ15%以上30%未満
「×」・・・ ヘーズ30%以上
なお、「○」及び「△」の評価レベルは、実用可能レベルである。
得られたシートを印刷機へのUVオフセット印刷の自動機にかけ、自動給紙性を下記基準で評価した。なお、「○」及び「△」の評価レベルは、実用可能レベルである。
「○」・・・印刷機への給紙がスムーズで、給紙トラブルが発生しなかった。
「△」・・・印刷前に入念にシートを捌けば、給紙がスムーズであった。
「×」・・・印刷前に入念にシートを捌いても、スムーズな給紙ができないか、給紙ト ラブルが頻発した。
「○」・・・テープ剥離試験で、インキが全く剥がれないか、剥離試験面の10%未満
が剥がれた。
「△」・・・テープ剥離試験で、インキが剥離試験面の10%以上、30%未満が剥が
れた。
「×」・・・テープ剥離試験で、インキが剥離試験面の30%以上が剥がれた。
真空成形機において、ディスプレイ缶状に熱成形を行い下記基準で評価した。
「○」及び「△」の評価レベルは、実用可能レベルである。
シートの予熱は、170℃にして行った。
「○」・・・成形に問題がなかった。
「△」・・・ドローダウンはあるが、成形可能であった。
「×」・・・ドローダウンが大きく成形が困難であった。
「○」・・・成形後、シートの透明性に変化がなかった。
「△」・・・成形後、シートの透明性がやや低下した。
「×」・・・成形後、シートが白濁し、透明性が低下した。
ディスプレイ缶状の半円筒の成形品を100℃に保持したオーブンに8時間放置し、変形度合いを下記基準で評価した。
「○」の評価レベルは、実用可能レベルである。
「○」・・・変形なし。
「×」・・・変形あり。
この際、シート耳の練り返しをしながら、長時間の製膜を行ったところ、エステル−カーボネート交換反応による、着色や発泡もなく良好なシートが採取可能であった。また、このシートの評価結果も全ての項目で、良好な結果であった。
さらに、実施例1以外の実施例においても行ったが、同等な結果が得られた。
Claims (7)
- 市場から回収された市場回収ポリエステル系樹脂をシート全体の25質量%以上使用してなり、基体層(A)と当該基体層(A)の少なくとも片面に積層してなる被覆層(B)とを備えた再生多層ポリエステルシートであって、
基体層(A)は、市場回収ポリエステル系樹脂1〜60質量%と、ポリカーボネート樹脂を、或いは、ポリカーボネート樹脂とポリエステル系樹脂とのポリマーアロイ樹脂を99〜40質量%含有してなり、
被覆層(B)は、ジオール成分、ジカルボン酸成分及び共重合成分からなる共重合ポリエステル系樹脂と、屈折率1.4〜1.7の不活性粒子とを含有し、被覆層(B)を構成する樹脂の合計量に対して前記共重合成分を4モル%以上含有し、且つ被覆層(B)の全質量100質量部に対して前記不活性粒子を0.05〜1質量部含有してなることを特徴とする再生多層ポリエステルシート。 - 被覆層(B)の不活性粒子の平均粒径が2μm〜15μmであることを特徴とする請求項1に記載の再生多層ポリエステルシート。
- 基体層(A)の厚さは、シート全体の厚さの30%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の再生多層ポリエステルシート。
- 基体層(A)及び被覆層(B)の少なくともいずれかの層は、酸化防止剤又はエステル交換防止剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の再生多層ポリエステルシート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の再生多層ポリエステルシートのシート表面に絵柄層を形成してなる広告表示用シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の再生多層ポリエステルシートのシート表面に絵柄層を形成し、折り曲げ加工してなるディスプレイ用ケース。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の再生多層ポリエステルシートのシート表面に絵柄層を形成し、熱成形してなるディスプレイ用成形加工品。
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