JP4399347B2 - 強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。 - Google Patents

強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。 Download PDF

Info

Publication number
JP4399347B2
JP4399347B2 JP2004363862A JP2004363862A JP4399347B2 JP 4399347 B2 JP4399347 B2 JP 4399347B2 JP 2004363862 A JP2004363862 A JP 2004363862A JP 2004363862 A JP2004363862 A JP 2004363862A JP 4399347 B2 JP4399347 B2 JP 4399347B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
thermoplastic resin
weight
resin composition
reinforced thermoplastic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004363862A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005206802A (ja
Inventor
義博 倉沢
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Engineering Plastics Corp
Original Assignee
Mitsubishi Engineering Plastics Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Engineering Plastics Corp filed Critical Mitsubishi Engineering Plastics Corp
Priority to JP2004363862A priority Critical patent/JP4399347B2/ja
Publication of JP2005206802A publication Critical patent/JP2005206802A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4399347B2 publication Critical patent/JP4399347B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、強化熱可塑性樹脂組成物及び該組成物を用いて成形された成形品に関し、詳しくは、樹脂組成物の製造及び成形工程における溶融混練機器のスクリューやシリンダー内壁、金型のゲートやキャビティーの摩耗が小さく、低反りで、剛性、強度、セルフタップ特性、難燃性などに優れた強化熱可塑性樹脂組成物と該樹脂組成物から成形された成形品に関するものである。
非晶性熱可塑性樹脂は、設計の自由度や生産性等に優れているので、種々の分野で広く使用されており、さらに強度や剛性を改良するために、繊維状無機強化材や板状無機充填材、粒子状無機充填材などを配合する方法が多数開示されている。例えば、特許文献1には、ポリカーボネート系樹脂とABS樹脂からなる樹脂組成物に難燃剤とガラス繊維、ガラスフレークまたはガラスビーズを配合したガラス強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物が開示されている。特許文献1記載の組成物に配合されているガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズはいずれも硬度が高いので、ガラス強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物の製造及び成形工程における押出機や成形機のシリンダー内壁及びスクリューの摩耗が激しく、さらには金型のゲートやキャビティーの摩耗も激しく、高品質のガラス強化難燃ポリカーボネート系樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いて成形された成形品を安定して生産することが困難であった。
また、特許文献2には、ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ゴム状弾性体と、表面処理タルク及び/又は表面処理マイカからなる樹脂組成物、特許文献3には、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂に嵩比重が0.4〜0.9のタルクを配合した樹脂組成物が開示されている。特許文献2及び特許文献3に開示されているいずれの樹脂組成物もそれなりに剛性と反りは改良され、溶融混練機器や成形機のスクリュー、シリンダー及び金型のゲートやキャビティーの摩耗も小さいが、セルフタップネジによる締結が必要な成形品では、セルフタップ強度が低く実用性の乏しいものであった。
特許文献4には、ポリカーボネート系樹脂又はポリカーボネート系樹脂と他の熱可塑性樹脂との混合物に、ワラストナイト(繊維状珪酸カルシウム)等の繊維状無機充填材を配合した樹脂組成物が開示されている。また、特許文献5には、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂とリン酸エステル化合物で表面処理された繊維状β−ワラストナイトとを混合してなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献6にはポリカーボネート系樹脂等からなる樹脂成分に、特定の粒子形状を有するワラストナイトを配合した樹脂組成物が開示されている。特許文献4〜6に開示された樹脂組成物には、いずれの樹脂組成物にも繊維状のワラストナイトが配合されているので、剛性及びセルフタップ強度は向上しているが、異方性が大きく、反りの大きい成形品しか得られないという欠点があった。
特開平06−172611号公報 特開平08−127711号公報 特開平08−176339号公報 特開平08−073728号公報 特開2000−230124号公報 特開2002―265769号公報
本発明が解決しようとする課題は、強化熱可塑性樹脂組成物の製造及び成形工程における溶融混練機器と成形機のシリンダー内壁やスクリュー、金型のゲートやキャビティーの摩耗が小さく、低反りで、剛性、強度、セルフタップ特性、難燃性などに優れた強化熱可塑性樹脂組成物、及び該樹脂組成物からなる成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート系樹脂またはポリフェニレンエーテル系樹脂に難燃剤、繊維状珪酸カルシウム、タルク及び/又はマイカを、特定量含有することにより、成形品の反り低減と、セルフタップ強度向上を共に達成することができ、結果として、上記すべての点に於いて優れた、バランスの良い強化熱可塑性樹脂組成物、及び該樹脂組成物よりなる成形品を完成させた。
すなわち本発明は、少なくとも非晶性熱可塑性樹脂(A)、難燃剤(B)、繊維状珪酸カルシウム(C)、およびタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)を含有する強化熱可塑性樹脂組成物であり、非晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリカーボネート系樹脂またはポリフェニレンエーテル系樹脂であり、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する、難燃剤(B)の含有量が0.01〜30重量部であり、該組成物における、繊維状珪酸カルシウム(C)の含有量が3〜30重量%、かつタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)の含有量が3〜30重量%である強化熱可塑性樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いて成形された成形品に存する。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物及び該樹脂組成物から成形された成形品は、樹脂組成物の製造及び成形工程で使用する溶融混練機器と成形機のシリンダー内壁やスクリュー、金型のゲートやキャビティーの摩耗が小さいので、品質の安定した成形品を得ることができる。また、低反りで、剛性、強度、セルフタップ特性、難燃性などに優れているので、例えば電気・電子・OA機器等のシャーシとして好適に使用できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される非晶性熱可塑性樹脂(A)としては耐熱性、難燃性、成形性のバランスのとれたポリカーボネート系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂が用いられる
本発明におけるポリカーボネート系樹脂とは、ポリカーボネート樹脂50〜100重量%と他の熱可塑性樹脂50〜0重量%の混合物であり、ポリカーボネート樹脂と混合して用いられる他の熱可塑性樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート ポリブチレンテレフタレート等があるが、AS樹脂、ABS樹脂が好ましい。ポリカーボネート系樹脂100重量%中における、他の熱可塑性樹脂の含有量は、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。50重量%を越えると、荷重撓み温度が低下する場合がある。また、耐熱性および難燃性の点からは、他の熱可塑性樹脂の含有量は少ない方が好ましく、組成物の流動性の点からは多い方が好ましい。両者のバランスを考慮すると、他の熱可塑性樹脂の含有量の上限は30重量%程度が特に好ましく、また下限は通常10重量%程度である。
本発明におけるポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂から選択して用いることができるが、中でも耐熱性と難燃性の点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
該芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって作られる、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体が挙げられる。
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。
さらに、難燃性をさらに高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、及び/又は、シロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有の、ポリマーあるいはオリゴマーを使用してもよい。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン)−3,1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどを、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよい。これらの使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物中、通常0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上であり、また通常10モル%以下、好ましくは2モル%以下である。
分子量を調節するには、芳香族モノヒドロキシ化合物を用いればよい。このような化合物として、具体的にはm−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂として、特に好ましくは、2,2ービス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート重合体、および2,2ービス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。
なお、本発明の非晶性熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート系樹脂である場合、該ポリカーボネート系樹脂は、2種以上のポリカーボネート樹脂を含有していてもよい。
該ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、通常14,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは16,000以上であり、また通常30,000以下、好ましくは28,000以下、より好ましくは26,000以下である。粘度平均分子量が14,000未満だと機械的強度が不足する場合があり、30,000を越えると成形性に難を生じやすい。
このようなポリカーボネート樹脂の製造方法については、限定されるものでは無く、ホスゲン法(界面重合法)あるいは、溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。さらに、溶融法で製造され、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル系樹脂とは、ポリフェニレンエーテル樹脂30〜100重量%と他の熱可塑性樹脂70〜0重量%の混合物である。ポリフェニレンエーテル樹脂と混合して用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂が好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量%中の、他樹脂が70重量%を越えると、荷重撓み温度が低下する場合がある。他樹脂の含有量として、より好ましくは50重量%以下であり、また含有量の下限値は好ましくは10重量%程度である。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記一般式(1)
Figure 0004399347
(式中、Qは各々独立に、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、アルコキシ基、又はハロアルコキシ基を表す。Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、アルコキシ基、又はハロアルコキシ基を表す。mは10以上の整数を表す。)で示される構造(繰り返し単位)を有する、単独重合体又は共重合体である。
前記一般式(1)において、Qがハロゲン原子の場合、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
前記一般式(1)において、Qが第一級アルキル基である場合の好適な例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2,3−ジメチルブチル基、2−、3−若しくは4−メチルペンチル基、又はヘプチル基などの、炭素数1〜10のアルキル基である。
第二級アルキル基である場合の好適な例は、イソプロピル基、sec−ブチル基または1−エチルプロピル基などの、炭素数4〜10のアルキル基である。
がアリール基である場合の好適な例はフェニル基であり、アミノアルキル基である場合の好適な例はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基などの、炭素数1〜5程度のアルキル鎖を有するアルキルアミノ基である。アルコキシ基である場合の好適な例としては、アルキル基の好適な例として上述した各基に対応するアルコキシ基が挙げられ、ハロアルコキシ基の例としては、該アルコキシ基における1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてなる基が挙げられる。
前記一般式(1)において、Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、第一級若しくは第二級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、アルコキシ基、又はハロアルコキシ基を表す。これらの内、第一級および第2級アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基である場合の好適な例としては、Qにおけると同様の基が挙げられる。またQがハロアルキル基である場合の好適な例としては、アルキル基の好適な例として上述した各基の、1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されてなる基が挙げられる。
前記一般式(1)において、Qはアルキル基又はフェニル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。Qとしては水素原子が特に好ましい。
好適なポリフェニレンエーテル樹脂の、単独重合体としては、例えば2,6―ジメチル―1,4―フェニレンエ−テル由来の繰り返し単位(前記一般式(1)を満たす。)からなるものが挙げられる。また、好適な共重合体としては、上記繰り返し単位と2,3,6―トリメチル―1,4―フェニレンエ−テル由来の繰り返し単位(前記一般式(1)を満たす。)との組合せからなる、ランダム共重合体が挙げられる。
なお、本発明の性能を損なわない範囲で、分子量を調節したり、溶融粘度及び/又は耐衝撃強度等の各種特性を改良するために、前記一般式(1)で表される構造以外の繰り返し構造を含む、ポリフェニレンエーテルもまた好適である。
本発明で使用するポリフェニレンエーテル樹脂は、クロロホルム中で測定した、30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gであるものが好ましい。より好ましくは固有粘度が0.2〜0.7dl/gのものであり、とりわけ好ましくは0.25〜0.6dl/gのものである。固有粘度が0.2dl/g未満では組成物の耐衝撃性が不足するおそれがあり、0.8dl/gを越えると成形性が不十分である場合がある。
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂とは、芳香族ビニル化合物から誘導される繰り返し単位を50重量%以上含む重合体または共重合体、またはこれらがゴム変性されたものを意味する。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン;α−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン;p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、ビニルトルエン、o−p−ジクロロスチレンなどの核アルキル置換スチレン、などが挙げられる。
芳香族ビニル化合物以外のモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;アクリル酸及びメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、n−ヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物;、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル及びメトキシポリエチレングリコールメタクリレート等、各種ビニル化合物が挙げられる。ポリスチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、AS樹脂、MS(メチルメタクリレート−スチレン)共重合体などが挙げられる。 これらポリスチレン系樹脂(上述した各重合体)の重量平均分子量は、通常50,000以上、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上であり、また通常500,000以下、好ましくは400,000以下、より好ましくは300,000以下である。
本発明で使用されるポリスチレン系樹脂は、上述した各種重合体を、さらにゴムで変性したものであってもよく、ゴムとしては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。具体的には、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、MBS樹脂、AES樹脂などが挙げられる。
本発明におけるABS樹脂としては、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)、ABS樹脂のブタジエンを主成分とするゴム成分を他のゴム成分、例えば、エチレンープロピレンラバー、アクリルラバー等で置換した樹脂も含まれ、さらにはABS樹脂におけるスチレン及び/又はアクリロニトリルを他のモノマーで置換した樹脂等も含まれる。
ポリスチレン系樹脂として特に好ましくは、ポリスチレン、ゴムで変性したポリスチレン系樹脂およびこれらの混合物などが挙げられる。
本発明に使用される難燃剤(B)は、公知のものが使用でき特に限定されないが、リン酸エステル化合物、有機スルホン酸金属塩、シリコーン化合物が好ましく、流動性向上の観点から、リン酸エステル化合物が特に好ましい。
本発明で用いるリン酸エステル化合物としては、たとえば、下記一般式(2)
Figure 0004399347
(式中、R、R、RおよびRは互いに独立して、置換されていても良いアリール基を示し、Xは置換されていてもよいアリーレン基を示す。nは0〜5の数を示す。)で示される化合物が挙げられる。
上記一般式(2)においてR〜Rで示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、Xで示されるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基や、ビスフェノール系化合物由来の2価の基等が挙げられる。これら芳香族環が有しうる置換基としては、炭素数1〜8程度のアルキル基、炭素数1〜8程度のアルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。なお、前記一般式(2)で表される化合物は、nが0の場合はリン酸エステルであり、nが1以上の場合は縮合リン酸エステル(混合物)である。
本発明においては、nが1以上の縮合燐酸エステルが好ましい。
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮縮合体などを例示できる。
かかる成分として好適に用いることができる市販の縮合リン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業(株)製「CR733S」(レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート))、「CR741」(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、旭電化工業(株)製「FP500」(レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート))などの商品名で販売されており、容易に入手可能である。
本発明において、難燃剤(B)であるリン酸エステル系化合物の含有量は、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、通常1重量部以上、好ましくは3重量部以上、とくに好ましくは5重量部以上であり、また通常30重量部以下、好ましくは25重量部以下、特に好ましくは20重量部以下である。リン酸エステル系難燃剤の含有量が下限値を下回ると難燃性が不十分となるおそれがあり、上限値を越えると耐熱性が低下する場合がある。
本発明で用いられる有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩および芳香族スルホン酸金属塩のいずれであっても良い。
有機スルホン酸金属塩を構成する金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等が挙げられる。中でも、難燃性の点からナトリウム、カリウムが好ましい。
有機スルホン酸金属塩は、2種以上を混合して使用することもできる。
本発明で用いる脂肪族スルホン酸塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸金属塩、より好ましくは、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩が挙げられる。
フルオロアルカン−スルホン酸金属塩としては、好ましくは、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、フルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられ、より好ましくは、炭素数4〜8のフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
フルオロアルカン−スルホン酸塩の具体例としては、パーフルオロブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パーフルオロオクタン−スルホン酸カリウム、およびパーフルオロブタン−スルホン酸のテトラエチルアンモニウム塩などが挙げられる。
芳香族スルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホン酸アルカリ土類金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。なお、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
芳香族スルホン酸金属塩の具体例としては、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、4,4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
有機スルホン酸金属塩の含有量は、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.03重量部以上であり、また通常30重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、最も好ましくは2重量部以下である。有機スルホン酸金属塩の含有量が下限値を下回ると充分な難燃性が得られにくく、上限値を越えると熱安定性が低下しやすい。
本発明で難燃剤として用いられるシリコーン化合物としては、直鎖状あるいは分岐構造を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンが有する有機基は、炭素数が1〜20の置換基を有していてもよいアルキル基、炭素数2〜20程度の置換基を有していてもよいアルケニル基、炭素数3〜20程度のシクロアルキル基、ならびにフェニル基、ベンジル基のような炭素数6〜20程度の芳香族炭化水素基などの中から選ばれる。該アルキル基およびアルケニル基が有しうる置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
またポリジオルガノシロキサンは、官能基を含有していてもよい。官能基を含有しているポリジオルガノシロキサンの場合、該官能基はメタクリル基、アルコキシ基またはエポキシ基であることが好ましい。
シリコーン化合物の含有量は、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、通常0.2重量部以上、好ましくは0.3重量部以上、より好ましくは0.4重量部以上であり、また通常30重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4.5重量部以下、最も好ましくは4.0重量部以下である。シリコーン樹脂の添加量が下限値を下回る場合では、最終的に得られる強化熱可塑性樹脂組成物の難燃性が不十分となるおそれがあり、上限値を越えると強化熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下する場合がある。
本発明における難燃剤(B)は、単独で使用しても、複数種併用してもよい。難燃剤(B)の含有量は、その合計が、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜30重量部である。好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.03重量部以上であり、また好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。下限値を下回ると難燃性が不十分となるおそれがあり、上限値を超えると耐熱性や熱安定性の低下を招く場合がある。
また、本発明では燃焼時の滴下防止を目的として、フッ素樹脂を含むことができる。
ここでフッ素樹脂としては、フルオロエチレン構造を含む重合体または共重合体を意味し、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくは500,000〜10,000,000である。本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在、本発明組成物と同様の用途に通常使用されている、任意の重合体を使用することができる。
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン(登録商標)6−J(三井・デュポンフロロケミカル(株)製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製)等が挙げられる。
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス(株)製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業(株)製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
ポリフルオロエチレンの含有量は、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部程度である。ポリフルオロエチレンが0.01重量部未満であると難燃性が不十分である場合があり、5重量部を越えると外観が低下しやすい。ポリフルオロエチレンの含有量は、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上であり、また好ましくは4重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。
本発明で使用される繊維状珪酸カルシウム(C)は、CaO・SiOで示されるワラストナイト及び6CaO・6SiO・HOで示されるゾノトライト等を例示できる。
ワラストナイトは天然に産出する白色針状結晶性鉱物であり、形状としては繊維状のものや塊状のものがあり、本発明では繊維状のものが好ましく、また合成したものであってもよい。繊維状物は、粉砕方法及び産地によりアスペクト比に差異を生じるが、一般にアスペクト比の大きなβ型のワラストナイトが補強性能の点から望ましい。ワラストナイトの初期の繊維径は平均径2μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上、とりわけ好ましくは4μm以上であり、また好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、とりわけ好ましくは15μm以下である。平均繊維径が2μm未満では加工中に破断しやすく、30μmを超えると補強効果が小さい。
また、ワラストナイトの初期の繊維長は平均長20μm以上が好ましく、より好ましくは25μm以上、とりわけ好ましくは30μm以上であり、また400μm以下が好ましく、より好ましくは300μm以下、とりわけ好ましくは250μm以下である。平均繊維長が20μm未満では補強効果が小さく、400μmを超えると加工中に破断しやすい。
更に、初期の平均繊維長を初期の平均繊維径で除した値(=初期の平均アスペクト比)が、4以上であることが好ましく、より好ましくは5以上、とりわけ好ましくは6以上であり、また50以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、とりわけ好ましくは30以下である。平均アスペクト比が4未満では補強効果が小さく、50を超えると加工中に破断しやすい。
本発明で使用される繊維状珪酸カルシウム(C)の一種であるゾノトライトは、既に平均繊維径0.5〜1μm、平均繊維長2〜5μm、アスペクト比2〜15程度のものが合成されている。本発明に使用する場合、できるだけアスペクト比の大きい(6以上が好ましい)ものが、機械的物性及び耐熱性(熱変形温度)を向上する効果に優れているため望ましい。
本発明で使用するタルク(D)とは天然滑石を粉砕、分級したものであって、その組成式は3MgO・4SiO・HOである。タルク(D)の平均粒径は特に制限はないが、通常0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、とりわけ好ましくは1.5μm以上であり、また通常20μm以下、より好ましくは15μm以下、とりわけ好ましくは10μm以下である。平均粒径が0.5μm未満だと補強効果が小さく変形やソリが大きいおそれがあり、20μmを越えるとセルフタップ特性が低下する傾向がある。
本発明で使用されるマイカ(D)は珪酸アルミニウム系の鉱物であり、例えばKAl(AlSi10)(OH)(白マイカ)、K(Mg,Fe)(AlSi10)(OH)(黒マイカ)、KMg(AlSi10)(OH)(金マイカ)、KLiAl(Si10)(OH)(鱗マイカ)、NaAl(AlSi10)(OH)(ソーダマイカ)、KMg(AlSi10)F(フッ素金マイカ)の化学式で示される種々のマイカが知られ、いずれも、へき開性を有している。本発明では、剛性の向上の点から白マイカおよび金マイカが好ましい。本発明で使用されるマイカ(D)は、樹脂組成物の剛性、反り改良、セルフタップ特性の点から平均粒径が3μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上、とりわけ好ましくは10μm以上であり、また200μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下、とりわけ好ましくは100μm以下である。平均粒径が3μm未満では補強効果が小さく変形やソリが大きいおそれがあり、200μmを越えるとセルフタップ特性が低下する傾向がある。
なお、コスト面からはタルクが好ましく、剛性の点からはマイカが好ましい。
本発明で使用される繊維状珪酸カルシウム(C)、タルク及び/またはマイカ(D)は、非晶性熱可塑性樹脂(A)との親和性あるいは界面結合力を高める目的で、種々のカップリング剤を用いて表面処理されていても良い。カップリング剤としては、通常はシラン系、クローム系、チタン系等のカップリング剤等を含む。中でもγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリクロロシラン;γ―アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン等のシラン系カップリング剤を含むものが好ましい。この際、非イオン・陽イオン・陰イオン型等各種の界面活性剤や脂肪酸・金属石鹸・各種樹脂などの分散剤による処理を合わせて行うことが、機械的強度及び混練性の向上の点で好ましい。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも非晶性熱可塑性樹脂(A)、難燃剤(B)、繊維状珪酸カルシウム(C)、およびタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)を含有し、非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する、難燃剤(B)の含有量が0.01〜30重量部であり、該組成物における、繊維状珪酸カルシウム(C)の含有量が3〜30重量%、かつタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)の含有量が3〜30重量%である。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物中で、繊維状珪酸カルシウム(C)が3重量%未満である場合は、セルフタップ特性や剛性が低下するおそれがあり、30重量%を越えると反りが大きくなる可能性がある。また、強化熱可塑性樹脂組成物中で、タルク及び/又はマイカからなる無機物(D)が3重量%未満では反りが大きくなるおそれがあり、30重量%を越えるとセルフタップ強度が低下する場合がある。
本発明は、互いに相反する効果を有する成分(C)および(D)を、組成物中に特定量含有させることにより、成形品の反り低減と、セルフタップ強度向上を、ともに実現することができ、結果としてバランスの良い特性を有する強化熱可塑性樹脂組成物を提供することが可能となった。
繊維状珪酸カルシウム(C)とタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)の比が、重量比で、1/10〜10/1であり、好ましくは1/6〜6/1、とりわけ好ましくは1/4〜4/1である。
繊維状珪酸カルシウム(C)がこの範囲より少ないと、セルフタップ特性や剛性が低下し、逆にタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)がこの範囲より少ないと反りが大きくなる。
また、非晶性熱可塑性樹脂組成物(A)と難燃剤(B)の合計量は、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物中で50〜90重量%であることが好ましい。合計量が50重量%未満の場合は、流動性が低下する傾向があり、逆に90重量%を越えると強度や剛性が不十分となるおそれがある。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記各種成分の他に、衝撃強度向上の為にエラストマーを含むことができる。エラストマーとしては、種々の公知の物を用いることができ、特に限定されるものではない。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、帯電防止剤、流動性改良剤等の添加剤、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカーといった強化材を添加することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための方法としては、各種混練機、例えば、一軸および多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で、上記成分を混練した後、冷却固化する方法や、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素およびその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志あるいは、溶解する成分と不溶解成分を懸濁状態で混ぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは溶融混練法が好ましいが、これに限定されるものではない。
溶融混練においては、単軸や二軸の押出機を用いることが好ましく、中でも二軸押出機を用いて、繊維状珪酸カルシウム(C)を押出機の途中からフィードする方法が好ましい。かかる方法により、繊維状珪酸カルシウム(C)の破砕を防止しつつ、安定した生産が可能となる。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を得る方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押し出し成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。後述するように、円筒形ボス部を有する成形品を成形する場合は、射出成形が好ましい。
円筒形ボス部は、例えば該円筒形ボス内部に直接金属ネジをねじ込むことにより、簡便に接合できることから、有用な接合構造である。セルフタップ特性とは、円筒形ボス内部に直接金属ネジをねじ込んだときの強度であり、金属ネジをねじ込んでいった時にボス部が破壊に至るトルク(破壊トルク)で評価することができる。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、優れたセルフタップ特性を有しており、このように円筒形ボス部を有する成形品に適用したときに、その特徴がより有効に生かされる。
破壊トルクは、用いる金属ネジの種類や形状、ボス部の寸法によって変化するが、本発明における強化熱可塑性樹脂組成物は、一例を挙げれば、呼び径4mm/長さ8mmのBタイトネジを、内径3.5mm/肉厚2.5mm/高さ10mmのボス部にねじ込んだ時の破壊トルクが、1.0N・m以上であることが好ましく、1.5N・m以上であることがとりわけ好ましい。
以下に本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。
(A−1)ポリカーボネート系樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロン(登録商標)S−3000、粘度平均分子量21,000(以下、PCと略記する)
(A−2)ポリフェニレンエーテル樹脂:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(三菱エンジニアリングプラスチックス社製 30℃クロロホルム中で測定した固有粘度が0.40dl/gのもの)
(A−3)AS樹脂:アクリロニトリル−スチレン共重合体、テクノポリマー社製、商品名:SAN−C (分子量:150,000)
(A−4)ABS樹脂:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、日本A&L社製、商品名:サンタックUT61
(A−5)ポリスチレン樹脂:ポリスチレン、PSジャパン社製、商品名:HF77 (分子量:220,000)
(B−1)リン酸エステル化合物:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、大
八化学社製、商品名:CR733S
(B−2)リン酸エステル化合物:ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、大八化学社製、商品名:CR741
フッ素樹脂:ポリテトラフルオロエテレン、ダイキン工業(株)製、商品名:ポリフロンF−201L (分子量:5,000,000)
(C)繊維状珪酸カルシウム:平均繊維径8μm、平均繊維長136μm(平均アスペクト比17)のワラストナイト、ナイコ社製、商品名:ナイグロス8
(D−1)マイカ:平均粒径40μmの白マイカ、山口雲母社製、商品名:A−41
(D−2)マイカ:平均粒径30μmの金マイカ、クラレ社製、商品名:325HK
(D−3)タルク:平均粒径2μmのタルク、林化成社製、商品名:ミクロンホワイト5000S
(比較として他の充填材)
ガラスフレーク:平均粒径600μm、厚み2〜6μmのガラスフレーク、日本板硝子社製、商品名:REFG−101
ガラス繊維:直径13μm、長さ3mmのチョップドストランド
[実施例1〜8、比較例1〜8]
表1に示す割合にて、繊維状珪酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク以外の成分を配合した樹脂組成物を、タンブラーミキサーにて均一に混合した。その後、二ヶ所のフィード口を有する二軸押出機(30mmφ)を用いて、シリンダー温度280℃で、該樹脂組成物をメインホッパーより、繊維状珪酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレークを下流のホッパーよりフィードし、ペレット化した。
次に、このペレットを用い、射出成形機(住友重機械工業製、サイキャップM−2、型締め力75T)にて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、ISO多目的試験片を作成した。
得られた各試験片につき、下記のような方法で評価を行った。結果を表1に示す。
[評価方法]
(1)曲げ弾性率
ISO178による曲げ試験法に従い、三点曲げ試験を行った。
(2)難燃性
UL94垂直燃焼性試験に基づき、1.5mm厚みでの燃焼性を試験した。
(3)セルフタップ特性
樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械製、型締め力150T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、円筒形ボス部を有する試験片を成形した(ボス部の寸法:内径3.5mm/肉厚2.5mm/高さ10mm)。
次いで、得られた試験片のボス部に、呼び径4mm/長さ8mmのBタイトネジをねじ込み、ボス部が破壊に至るトルクを測定し、破壊トルクとした。
(4)反り
樹脂組成物を、射出成形機(東芝機械製、型締め力150T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、150mm×150mm/高さ20mm/厚み2mmの箱型の試験片を成形した。
次いで、この試験片の天面の反りを、ミツトヨ社製三次元測定機を用いて測定した。測定は、天面の中心線に沿って10mm間隔で15点測定し、両端を結んだ基準線からの最大落ち込み量を反りとした。
(5)金型磨耗性
樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製、型締め力40T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度40℃の条件で、ランナー部に径2mmのピンを立てた試験片を10,000shot成形した。該ピンはNAK80製で替えピンとなっており、材料変更の都度、新品を用いた。
次いで、10,000shot成形後のピンを、ミツトヨ社製三次元測定機を用いてピン径を測定し、成形前に測定しておいたピン径との差を測り、磨耗量とした。
成形前後のピン径の差が小さいほど、金型磨耗性が小さく良好である。
Figure 0004399347
Figure 0004399347

Claims (10)

  1. 少なくとも非晶性熱可塑性樹脂(A)、難燃剤(B)、繊維状珪酸カルシウム(C)、およびタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)を含有する強化熱可塑性樹脂組成物であり、
    非晶性熱可塑性樹脂(A)が、ポリカーボネート系樹脂またはポリフェニレンエーテル系樹脂であり、
    非晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する、難燃剤(B)の含有量が0.01〜30重量部であり、
    該組成物における、繊維状珪酸カルシウム(C)の含有量が3〜30重量%、かつタルク及び/又はマイカからなる無機物(D)の含有量が3〜30重量%である、強化熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記ポリカーボネート系樹脂が、ポリカーボネート樹脂、または、ポリカーボネート樹脂と、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂から選択される少なくとも1種とを含む樹脂であり、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が、ポリフェニレンエーテル樹脂、または、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む樹脂である、請求項1に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  3. 繊維状珪酸カルシウム(C)と、タルク及び/又はマイカからなる無機物(D)の重量比が(C):(D)=1/10〜10/1である、請求項1または2記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  4. 難燃剤(B)がリン酸エステル化合物である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  5. 無機物(D)がタルクである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  6. 無機物(D)がマイカである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  7. 無機物(D)がタルクとマイカの混合物である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
  8. 請求項1ないし7のいずれか一項に記載の強化熱可塑性樹脂組成物を用いて成形された成形品。
  9. 円筒形ボス部を有している、請求項8記載の成形品。
  10. 円筒形ボス部が、その内部に直接、金属ネジをねじ込むための構造である、請求項9記載の成形品。
JP2004363862A 2003-12-24 2004-12-16 強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。 Active JP4399347B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004363862A JP4399347B2 (ja) 2003-12-24 2004-12-16 強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003427965 2003-12-24
JP2004363862A JP4399347B2 (ja) 2003-12-24 2004-12-16 強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005206802A JP2005206802A (ja) 2005-08-04
JP4399347B2 true JP4399347B2 (ja) 2010-01-13

Family

ID=34914025

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004363862A Active JP4399347B2 (ja) 2003-12-24 2004-12-16 強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4399347B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170052828A (ko) * 2015-11-05 2017-05-15 주식회사 엘지화학 폴리카보네이트 수지 조성물 및 이를 포함하는 성형품

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006049263A1 (ja) * 2004-11-01 2006-05-11 Teijin Chemicals Ltd. 樹脂組成物およびフラットパネルディスプレイ固定枠
KR20140144083A (ko) * 2013-06-10 2014-12-18 제일모직주식회사 폴리에스테르 수지 조성물 및 이를 이용한 성형품
KR101854012B1 (ko) * 2015-08-31 2018-05-03 롯데첨단소재(주) 열가소성 수지 조성물 및 이를 포함하는 성형품
JP6774329B2 (ja) * 2016-12-28 2020-10-21 住友化学株式会社 液晶ポリエステル樹脂組成物
JP6899258B2 (ja) * 2017-05-17 2021-07-07 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 樹脂組成物および成形品
JP2018193472A (ja) * 2017-05-17 2018-12-06 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 樹脂組成物および成形品
KR102227120B1 (ko) * 2017-11-30 2021-03-12 롯데첨단소재(주) 수지 조성물 및 이로부터 제조된 성형품
CN115232406A (zh) * 2022-09-23 2022-10-25 广州仕天材料科技有限公司 一种硅酸钙矿物纤维改性的聚丙烯复合材料及其制备方法与应用

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20170052828A (ko) * 2015-11-05 2017-05-15 주식회사 엘지화학 폴리카보네이트 수지 조성물 및 이를 포함하는 성형품
KR102058913B1 (ko) * 2015-11-05 2019-12-24 주식회사 엘지화학 폴리카보네이트 수지 조성물 및 이를 포함하는 성형품

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005206802A (ja) 2005-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5419916B2 (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP4817784B2 (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP4817785B2 (ja) 高熱伝導絶縁性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
JP5073203B2 (ja) ポリカーボネート樹脂組成物、その成形品並びにフィルム及びシート
JP2007091985A (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
KR101293789B1 (ko) 난연성 열가소성 수지 조성물
US7642305B2 (en) Reinforced thermoplastic resin composition and molded products thereof
TWI398463B (zh) An aromatic polycarbonate resin composition and a molded body using the same
JP2005320515A (ja) 熱伝導性ポリカーボネート系樹脂組成物および成形体
KR101256261B1 (ko) 폴리카보네이트 수지 조성물 및 이를 이용한 성형품
JP4768302B2 (ja) 高熱伝導絶縁性ポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形体
JP4399347B2 (ja) 強化熱可塑性樹脂組成物、およびこれを用いた成型品。
WO2007061038A1 (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
JP2003049077A (ja) 充填材含有難燃樹脂組成物および製法
JP2011168633A (ja) ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法、およびそれからなる成形品
JP2005112994A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP4001741B2 (ja) ポリカーボネート系難燃樹脂組成物
US6495621B1 (en) Molding material for OA machine parts with improved vibration damping properties
JP2005146219A (ja) 強化ポリカーボネート樹脂組成物および成形品
JP2007169616A (ja) 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
JP5073892B2 (ja) 耐衝撃性に優れたポリカーボネート系難燃樹脂組成物
JP2003041112A (ja) ポリカーボネート系難燃樹脂組成物及び薄肉成形体
KR20220161918A (ko) 열가소성 수지 조성물 및 이를 이용한 성형품
JPH0711119A (ja) 難燃性熱可塑性樹脂組成物
JP5017889B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070110

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20070110

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090528

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090602

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090721

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091020

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091026

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121030

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4399347

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121030

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131030

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250