JP4398831B2 - チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面処理方法 - Google Patents

チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面に、ショット材を噴射して表層部の結晶粒を微細化することにより硬化させることのほか、別の層を造り込む表面処理方法に関するものである。
従来から、ばねや鋳鋼品、鍛造品等の金属製品の疲労強度を向上させるために、金属製品における表層部を硬化させる表面硬化方法が用いられている。このような表面硬化方法として、例えば、焼き入れ・焼き戻しなどの処理を施した鉄鋼製品や非鉄金属製品の表面の一部または全部に対して冷間加工を施すショットピーニング処理や、マルテンサイト変態を生じさせることができる程度の炭素を含有する鉄鋼製品に対して、微粒子ショットピーニングを行うことにより、鉄鋼製品の表面温度をA3変態点以上に上昇させてマルテンサイト変態を生じさせる表面加工熱処理方法などが知られている。
また、金属製品の表面の硬度を高めるための表面硬化処理方法として、特許文献1には、金属製品の表層部における硬化組織の形成を、マルテンサイト変態によらず、所定の条件下にてショット材を噴射するショットピーニング処理によって、表層部の金属組織結晶粒をナノ結晶化することで実現する方法が開示されている。この方法によれば、上述した表面加工熱処理方法よりも材料選択の幅が広がるとともに、表層部がナノ結晶化されて極めて高い表面硬度を有する金属製品を得ることができる。
特開2004−124227号公報
しかしながら、金属製品の表面にショットピーニング処理を施すことによって表層部の金属組織をナノ結晶化する方法を用いた場合には、金属製品の表面硬度が極めて高くなるために、その金属製品からは高周波数の騒音が発生する場合があるので問題であった。すなわち、例えば自動車用のエンジンバルブの表面にショットピーニング処理を施すことによって表層部の金属組織をナノ結晶化した場合には、そのエンジンバルブは摩擦や衝撃に対する耐久性が非常に高くなるという利点が得られるものの、そのエンジンバルブが駆動されることによって周囲の部品と接触等する際に、そのエンジンバルブからは高周波数の騒音が発生する場合があるので問題であった。
そこで本発明は、表層部の金属組織がナノ結晶化されて表面の硬度が極めて高いのみならず、エンジンバルブなどの駆動部品に適用した場合であっても、高周波数の騒音が発生しにくくなるチタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施すことによって表層部の金属組織をナノ結晶化させた後に、その金属材料に加熱処理を施すことによって、表層部に形成されたナノ結晶層と基材との間に中間層としてβ層が形成されること、及び、このβ層が高周波数の騒音低減に特に有効であることを見出して、以下の発明を完成した。
(1)チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施して、表層部の金属組織をナノ結晶化させるショットピーニング工程と、前記ショットピーニング工程と同時もしくはその後に前記金属材料を加熱する加熱工程と、を有し、
前記加熱工程では、金属材料を加熱することにより、ショットピーニング工程において金属材料の表面に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層を形成し、
前記ショットピーニング工程において用いられるショット材は、β安定化元素を含むショット材であり、前記ショットピーニング工程では、前記ショット材に含有されているβ安定化元素を金属組織の内部に侵入させながら、金属材料の表層部の金属組織をナノ結晶化させることを特徴とする金属材料の表面処理方法。
(2)金属材料は、α+β型のチタン合金であることを特徴とする(1)に記載の金属材料の表面処理方法。
(3)(1)または(2)に記載の金属材料の表面処理方法であって、
加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
(4)(1)から(3)のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、
加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で0.5時間以上加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
)(1)から()のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
)(1)から()のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなるエンジンバルブ。
)表面に形成された結晶粒径が100nm以下のナノ結晶層と基材との間にβ層が形成されていることを特徴するチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。

本発明によれば、表層部の金属組織がナノ結晶化されて表面の硬度が極めて高いのみならず、エンジンバルブなどの駆動部品に適用した場合であっても、高周波数の騒音が発生しにくくなるチタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面処理方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の方法によって表面処理される金属材料としては、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料が用いられる。ここでいう「チタンあるいはチタン合金」とは、チタン単体の金属であってもよく、チタンと他の金属元素との合金であってもよい趣旨である。したがって、本発明において表面処理される金属材料としては、チタン単体金属(例えば、JIS1種〜4種の純チタン金属)のみならず、例えば、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-2Mo、Ti-3Al-2.5V、Ti-6Al-2Sn-4Zr-6Moなどの各種のチタン合金を採用することができる。なお、チタン合金は、α型、β型、α+β型の3つの合金系に分類することができるが、本発明において表面処理される金属材料としては、強度と靭性のバランスが良く耐食性に優れるα+β型のチタン合金を特に好ましく採用することができる。α+β型のチタン合金としては、前述した各種のチタン合金をその例として挙げることができる。
本発明に係る金属材料の表面処理方法は、大別すると次の2つの工程により構成される。1つ目の工程は、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施す「ショットピーニング工程」である。このショットピーニング工程により、金属材料の表層部には金属組織の結晶粒径が100nm以下のナノ結晶層が形成される。このナノ結晶層は、熱的に安定でしかも極めて硬度の高い層である。2つ目の工程は、ショットピーニング工程と同時もしくはその後に前記金属材料を加熱する「加熱工程」である。この加熱工程により、表層部におけるナノ結晶層と基材との間には、中間層としてのβ層が形成される。このβ層は、加熱前の金属組織よりもβ型チタン合金を相対的に多く含む層である。β型のチタン合金は、α型やα+β型のチタン合金よりもヤング率が小さいために、金属材料の反発係数を小さくして高周波数の騒音の発生を防止することができる。
図1は、ショットピーニング工程及び加熱工程についての模式的な説明図である。
図1(a)に示すように、ショットピーニング工程においては、例えばエア噴射式のショットピーニング装置を用いて、金属材料の表面10に対して金属粉末等からなるショット材12を吹き付ける。これにより、金属材料の表層部に高ひずみ速度で大きな変形を起こさせることができる。そして、金属材料の表層部の転位密度が臨界に達すると、その表層部の結晶組織は再結晶(温度を上げないで強加工中に生じる再結晶)により結晶粒径が100nm以下のナノ結晶粒組織に変化するとともに、同時に硬さが、例えば、ビッカース硬度で2倍程度に上昇する。このショットピーニング工程により、図1(b)に示すように、金属材料の表層部には100nm以下のナノ結晶粒組織からなるナノ結晶層14が形成される。
ショットピーニング工程における各種の条件は、金属材料の表層部をナノ結晶化させることができるのであれば、特に制限するものではない。例えば、ショット材の噴射速度は、100m/秒以上に設定することができる。ショット材の直径は、40μm以上200μm以下(より好ましくは40μm以上100μm以下)の範囲内に設定することができる。ショットピーニング処理を施す時間は、30秒から60秒の範囲内に設定することができる。ショット材の材質は、例えば鋳鉄、鋼等を採用することができる。ショットピーニング工程における各種の条件をこのような範囲に設定することによって、表層部における金属組織をより確実にナノ結晶化させて硬化させることが可能である。また、ショットピーニング工程における各種の条件(例えばショットピーニング処理の時間)を調節することによって、ナノ結晶層14の厚みや硬度を調節することも可能である。
図1(b)に示すように、金属材料の表面に対してショットピーニング処理が施されることによって、金属材料の表層部にはナノ結晶層14が形成される。このナノ結晶層14は、金属組織の結晶粒径が100nm以下の層であり、金属材料の表層部に対して新たに形成される層である。このナノ結晶層において、金属組織の結晶粒径が「100nm以下」とあるのは、例えば電子顕微鏡で金属組織の状態を観察したときに、その金属組織の50%以上の領域(好ましくは80%以上の領域)において、短軸方向の結晶粒径が概ね100nm以下の範囲内に分布していることを意味している。
本発明の金属材料の表面処理方法では、上述したショットピーニング工程と同時もしくはその後に加熱工程が実施される。より好ましくは、ショットピーニング工程によってナノ結晶層14が形成された後に加熱工程が実施される。この加熱工程においては、図1(c)に示すように、ショットピーニング処理が施された後の金属材料が所定の条件下で加熱されることによって、金属材料の基材16とナノ結晶層14との間に中間層としてβ層18が形成される。このβ層18が形成される機構について説明すると、ナノ結晶領域は、通常の加工硬化領域や基材16側の領域に比べて加熱による粒成長が極めて遅い。これに対して、チタンあるいはチタン合金からなる基材16側の領域では、加熱(焼きなまし)による再結晶により金属組織がβ型チタン合金への変態を開始する。これにより、表層部に形成されているナノ結晶層14と基材16との間には、加熱による再結晶により新たにβ層18が形成されるとともに、微細な結晶粒径を維持しているナノ結晶層14とβ層18との境界が電子顕微鏡等により明確に認識されるようになる。
このように、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施した後に加熱処理を施すことによって、表層部に形成されたナノ結晶層14と基材16との間には、加熱される前よりもβ型のチタン合金をより多く含む層であるβ層18が新たに形成される。なお、加熱工程において新たに形成される「β層」とは、例えば電子顕微鏡でこのβ層の金属組織を観察したときに、β層の全ての領域がβ型チタン合金で構成されていることを意味するものではない。本発明にいう「β層」とは、所定温度以上の加熱によりβ型チタン合金への変態が促進されることによって、加熱工程において加熱される前よりもβ型のチタン合金をより多く含むこととなった層のことを意味している。したがって、加熱工程において新に形成されるβ層の金属組織内には、β型のチタン合金が相対的に多く含まれていることは勿論であるが、β層の一部の領域においてα型のチタン合金が若干含まれている場合もあり得るということである。
本発明に係る金属材料の表面処理方法において、加熱工程における金属材料の加熱温度は、700℃以上であることが好ましく、より好ましくは800℃以上、さらに好ましくは850℃以上である。この温度範囲で金属材料を加熱することによって、表層部に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層をより確実に形成することができる。また、加熱工程における金属材料の加熱時間は、700℃以上の温度を維持したまま0.5時間以上加熱することが好ましく、より好ましくは、700℃以上の温度を維持したまま1時間以上加熱する。加熱工程における加熱手段は特に制限するものはないが、例えば電熱式のヒータによってチタンあるいはチタン合金からなる金属材料を加熱することができる。
金属材料の表層部に硬度の高いナノ結晶層が形成されることによって、この金属材料の耐衝撃性や耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。例えば、α+β型のチタン合金からなる金属材料を用いて自動車のエンジン部品(例えばエンジンバルブ)を製造した後に、このエンジン部品の表面に対して本発明の表面処理方法を施すことによって、このエンジン部品の耐摩耗性や耐衝撃性等を飛躍的に向上させることができる。
本発明において、ショットピーニング工程で使用するショット材は、β安定化元素を含むショット材であることが好ましい。例えば、Fe、Mo、Nb、V、Ta、Cr、Ru等のβ安定化元素を含むショット材を使用することが好ましい。
ショットピーニング工程におけるショット材としてこれらのβ安定化元素を含むショット材を使用することによって、ショット材に含有されているβ安定化元素を金属組織の内部に侵入させることができる。これにより、ショットピーニング工程の後に実施される加熱工程において、表層部に形成されたナノ結晶層と基材との間に中間層としてのβ層をより安定的に形成することが可能になる。
これとは反対に、ショットピーニング工程におけるショット材としてα安定化元素を含むショット材を使用することによって、ショット材に含有されているα安定化元素を金属組織の内部に侵入させることができる。α安定化元素としては、Al、C、O、N、Sn等をその例として挙げることができる。その後、熱処理をすることで、α層の形成をすることができる。つまり、α安定化元素を含むショット材及びβ安定化元素を含むショット材を選択的に使用することによって、金属材料の内部に侵入させる元素の種類を任意に選択することができる。
本発明に係る金属材料の表面処理方法によれば、チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表層部に極めて硬度の高いナノ結晶層を形成することができる。また、ナノ結晶層と基材との間には、硬度がそれほど高くないβ層を形成することができる。したがって、表層部の硬度が高いので耐摩耗性や耐衝撃性に優れるとともに、硬度の低いβ層が他の部材と衝突したときの反発係数を小さくすることによって、高周波数の騒音が発生しにくい金属材料を得ることが可能となる。
本発明の金属材料の表面処理方法は、高周波数の騒音を低減したい部品に対して特に好ましく適用することが可能である。特に、チタン合金製の自動車用エンジンバルブに対して本発明の表面処理方法を適用することによって、このエンジンバルブの駆動に伴って発生する高周波数の騒音を低減することが可能になる。
また、本発明の表面処理方法は、その他のエンジン部品の表面処理方法に適用することも可能であり、例えば、エンジンに使用されるシャフトやカム、ハウジング等の表面処理方法に適用することが可能である。
また、本発明の金属材料の表面処理方法は、自動車用部品以外の他の部品の表面処理方法としての適用可能性をも有している。例えば、ゴルフクラブのヘッドに対して本発明の表面処理方法を適用することによって、β層により反発係数が小さくなることを利用して、フェース面にボールが当たったときの反発係数を調節することも可能である。
〔ショットピーニング工程〕
図2は、ショットピーニング装置の概略構成図である。本実施例では、図2に示すように、φ13mm×L5mm、Ti-6Al-4V合金製のテストピース22(金属材料)の表面に対して、エア噴射式のショットピーニング装置20を用いてショット材を吹き付けた。ショット材としては、φ0.05mm、Fe-1.0C(鋳鉄)製のショット材を使用した。ショット材の噴射速度は、190m/sに設定した。ショットピーニングの加工の程度を示すカバレージ(C)は、6000%(噴射時間60秒)に設定した。カバレージ(C)は、テストピース22の加工全面積(A)とショットピーニングにより生じた圧痕の総面積(B)より、C=B/A×100%と定義される。本実施例では、テストピース表面でのショット材の衝突回数をより分り易く表現するために、カバレージ50%の加工に要する噴射時間を基準にして、噴射時間に比例してカバレージを表現している。例えば、カバレージ50%のショットピーニング加工に要する時間が0.5秒の場合には、噴射時間が10秒の場合をカバレージ1000%と表現している。
〔加熱工程〕
ショットピーニング装置20によりショットピーニング処理を施したテストピース22に対して、電熱式のヒータにより加熱処理を施した。このときの加熱温度は850℃、加熱時間は1時間に設定した。
〔電子顕微鏡による組織観察とEDXによる組成分析〕
ショットピーニング処理及び加熱処理を施したテストピース22の表面近傍の状態を電子顕微鏡により観察するとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)によるテストピース22の元素分析を行った。この結果を図3に示す。
また、比較例として、ショットピーニング処理のみを施して加熱処理を施す前のテストピース22の表面近傍の状態を電子顕微鏡により観察するとともに、エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDX)によるテストピース22の元素分析を行った。この結果を図4に示す。
図3に示すように、ショットピーニング処理及び加熱処理を施したテストピース22の表面近傍には、ナノ結晶層(丸付き番号1,2)と基材(丸付き番号5,6)との間に、β型のチタン合金のβ層(丸付き番号3,4)が新たに形成されていることが確認された。また、各層(ナノ結晶層、β層、基材層)の境界線が明瞭に現れていることを確認することができた。また、EDXによる元素分析の結果により、ナノ結晶層と基材との間に形成されている層がβ型のチタン合金の層であることの裏付けをとることができた(丸付き番号3,4)。
これに対して、図4に示すように、ショットピーニング処理のみを施したテストピース22の表面近傍には、ナノ結晶層(丸付き番号1)と基材(丸付き番号2〜9)との間に、β層が全く形成されていなかった。
〔反発係数測定試験〕
ナノ結晶層と基材との間にβ層が形成されることによって反発係数が小さくなることを確認するために、以下の要領で反発係数測定試験を行った。
まず、以下の表1に示すように、表面処理方法が異なる5種類のテストピースを準備した。テストピースの材質、形状は、実施例1のテストピース22と同様である。
表1において、テストピース番号1は、表面に何らの処理も施していないテストピースである。このテストピース番号1については、表面粗さがそれぞれ異なる3種類のテストピースを準備した。テストピース番号2は、ショットピーニング処理(カバレージ6000%)のみを施したテストピースである。テストピース番号3は、ショットピーニング処理(カバレージ6000%)を施した後に、表面にバフ研磨を施したテストピースである。テストピース番号4は、ショットピーニング処理を施した後に(カバレージ6000%)、加熱処理(820℃で1時間)を施したテストピースである。テストピース番号5は、加熱処理(820℃で1時間)のみを施したテストピースである。
表1における5種類のテストピースの表面(上面)の粗さ([Rz])を測定した後に、表1における5種類のテストピースを水平に置いて、そのテストピースの上面を基準として1mの高さからSUSJ2(高炭素クロム軸受鋼)のボールを落下させた。そして、このボールの1回目の跳ね返りの高さ([m])を反発係数(=h1/h0:h0は落下高さ、h1は跳ね返り高さ)として測定した。この結果を図5に示す。
図5に示す結果からわかるように、表面にショットピーニング処理及び加熱処理を施したテストピース(テストピース番号4)については、ショットピーニング処理のみを施したテストピース(テストピース番号2)及び加熱処理のみを施したテストピース(テストピース番号5)と比較すると、反発係数が1/2以下程度にまで小さくなることが確認された。つまり、この実施例2の結果より、本発明に係る金属材料の表面処理方法によって、金属材料の反発係数を小さくすることができる(換言すれば、他の部材との衝突時の騒音を小さくすることができる)ことが実証された。
ショットピーニング工程及び加熱工程についての模式的な説明図である。 ショットピーニング装置の概略構成図である。 ショットピーニング処理及び加熱処理を施したテストピースの表面近傍の状態の電子顕微鏡写真である。また、EDXによるこのテストピースの元素分析の結果である。 ショットピーニング処理のみを施して加熱処理を施す前のテストピースの表面近傍の状態の電子顕微鏡写真である。また、EDXによるこのテストピースの元素分析の結果である。 反発係数測定試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
10 表面
12 ショット材
14 ナノ結晶層
16 基材
18 β層
20 ショットピーニング装置
22 テストピース

Claims (7)

  1. チタンあるいはチタン合金からなる金属材料の表面にショットピーニング処理を施して、表層部の金属組織をナノ結晶化させるショットピーニング工程と、前記ショットピーニング工程と同時もしくはその後に前記金属材料を加熱する加熱工程と、を有し、
    前記加熱工程では、金属材料を加熱することにより、ショットピーニング工程において金属材料の表面に形成されたナノ結晶層と基材との間にβ層を形成し、
    前記ショットピーニング工程において用いられるショット材は、β安定化元素を含むショット材であり、前記ショットピーニング工程では、前記ショット材に含有されているβ安定化元素を金属組織の内部に侵入させながら、金属材料の表層部の金属組織をナノ結晶化させることを特徴とする金属材料の表面処理方法。
  2. 金属材料は、α+β型のチタン合金であることを特徴とする請求項1に記載の金属材料の表面処理方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の金属材料の表面処理方法であって、
    加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
  4. 請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法であって、
    加熱工程では、金属材料を700℃以上の温度で0.5時間以上加熱することを特徴とする金属材料の表面処理方法。
  5. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
  6. 請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の金属材料の表面処理方法によって表面処理されたチタンあるいはチタン合金からなるエンジンバルブ。
  7. 表面に形成された結晶粒径が100nm以下のナノ結晶層と基材との間にβ層が形成されていることを特徴するチタンあるいはチタン合金からなる金属材料。
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