JP4398821B2 - 雨水排水制御システム - Google Patents
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Description
このポンプ場への雨水流入量や雨水の流入タイミング等の情報を把握するために、レーダ雨量計、地上雨量計、流入渠水位計等から得られる計測値が用いられ、これらの計測値に基づいて雨水流出解析、雨水流入量予測が行われており、当該雨水流出解析、雨水流入量予測に基づいて雨水排水ポンプの運転制御が行われる。
しかしながら、従来の雨水排水制御システムでは、自動的に自家発電設備を適切なタイミングで起動させることができず、このため設定台数を超えた台数分の雨水排水ポンプの起動動作が遅れ、このことによりポンプ場からの雨水の排水が遅れて浸水被害を引き起こすおそれがあった。
また、自家発電設備の起動動作はオペレータにより手動で行われることが多く、オペレータに負担がかかるとともに、ヒューマンエラー等によって適切なタイミングで自家発電設備を起動することができない場合があった。
このことにより、雨水排水ポンプの運転制御を行うとともに、この雨水排水ポンプに電
力を供給する自家発電設備の運転制御を適切なタイミングで自動的に行うことができ、ポ
ンプ場に流入する雨水を河川等へ確実かつ効率的に排出させることができる。
また、一のポンプ運転制御部を用いて各雨水排水ポンプの運転制御を行っている際に、このポンプ運転制御部に故障等のトラブルが生じて正常に動作しなくなった場合においても、切換手段によって自動的に他のポンプ運転制御部に切り換えることにより、雨水排水ポンプの運転制御を中断することなく続行することができる。
このことにより、流域の降雨状態の変化に追従して流入量予測モデルの更新がなされ、雨水流入量の予測精度の劣化を抑えることができる。
また、雨水排水制御装置の評価手段は、制御操作量、雨水排水ポンプ運転時間、雨水排水ポンプ運転コストの少なくともいずれか1つを指標とする最適制御問題を解くことにより複数のポンプ運転制御部の各々の制御性能の評価を行うことが好ましい。
このことにより、雨水排水プロセスの制御問題を定量的に評価することができ、このため、各雨水排水ポンプの運転時間を平準化し、これらの雨水排水ポンプの運転切換回数を少なくすることができ、また、雨水排水制御の高信頼性を得ることができ、安定した自動制御運用を行うことができる。
このことにより、雨水排水制御装置における雨水排水制御問題を、制約条件を含む最適化問題に帰着させることができる。
このことにより、雨水排水ポンプの運転制御を行うとともに、この雨水排水ポンプに電
力を供給する自家発電設備の運転制御を適切なタイミングで自動的に行うことができ、ポ
ンプ場に流入する雨水を河川等へ確実かつ効率的に排出させることができる。
また、続時間系と離散時間系との間の混在部分が原因で生じうる雨水排水ポンプの運転および停止の繰り返しや回転数制御の不安定化を抑止することができ、また、オペレータが自動制御モードを手動操作モードに切り換えて雨水排水ポンプ等を操作する必要がなくなる。
図1および図2は、本発明の雨水排水制御システムの実施の形態を示す図である。このうち、図1は、雨水排水制御システムの全体構成を示す概略図であり、図2は、図1の雨水排水制御システムにおける雨水排水制御装置の構成を示す概略図である。
また、ポンプ井3は、流入幹線1から流入渠2を介して送られてくる雨水10が貯留されるようになっている。
また、この雨水排水制御装置11は、ポンプ運転制御部43から雨水排水ポンプ5に出力される雨水排水ポンプ5の運転台数および/または運転タイミングに関する情報が分岐点11aで分岐して入力される自家発電設備予測部45と、自家発電設備予測部45による予測に基づいて自家発電設備30を制御して当該自家発電設備30の運転タイミングを調整する自家発電設備運転制御部46とを有している。
ここで、ポンプ予測部42とポンプ運転制御部43とによりポンプ予測制御部41が構成され、また、自家発電設備予測部45と自家発電設備運転制御部46とにより自家発電設備予測制御部44が構成されている。
また、ポンプ予測制御部41には、このポンプ予測制御部41に雨水排水ポンプ起動・停止水位、雨水排水ポンプ5の運転順序等の信号を送るヒューマンインタフェース部47が電気的に接続されている。図2に示すように、このヒューマンインタフェース部47は自家発電設備予測制御部44にも電気的に接続されており、当該自家発電設備予測制御部44に自家発電設備制御パラメータ等の信号を送るようになっている。
流入量予測モデルは、地上雨量計7からの降雨量信号12、雨水排水ポンプ5の運転状況に係わる信号5a、吐出弁6の開度等を示す信号6a、流入渠水位計8からの流入渠水位信号13、ポンプ井水位計9からのポンプ井水位信号14、流入ゲート4の運転状況を示す信号4aなどの各プロセス信号に基づいてオフラインで予め決定される。ここで、これらのプロセス信号を出力する地上雨量計7等を一括して測定部35とする。
このように測定部35から送られた情報に基づいてオンラインで逐次的に流入量予測モデルを更新する方法を用いることにより、流域の降雨状態の変化に追従して流入量予測モデルの更新がなされ、雨水流入量の予測精度の劣化を抑えることができる。
ここで、雨水排水ポンプ5の制御方法は、雨水流入量の予測値に基づいて直接的に雨水排水ポンプ5の運転台数および/または運転タイミングを調整する方法を用いてもよく、また、雨水流入量の予測値を入力としポンプ井水位予測値を出力とするポンプ井水位予測モデルを構築し、このポンプ井水位予測モデルから出力されたポンプ井水位予測値に基づいて雨水排水ポンプ5の運転台数および/または運転タイミングを調整する方法を用いてもよい。
さらに別の制御方法としては、予め設定されたポンプ井設定水位を用いた設定水位自動制御に対して、雨水流入量の予測値に基づいて設定水位補正値を演算し、その値に基づいて設定水位を変更することにより、雨水排水ポンプ5の運転台数および/または運転タイミングを調整する方法を用いてもよく、また、さらに別の制御方法としては、汎用流出解析ソフトのポンプ制御機能を用いて雨水排水ポンプ5の運転台数および/または運転タイミングを調整する方法を用いてもよい。
なお、上記の雨水排水ポンプ5の制御方法において、各種の設定水位および雨水排水ポンプ5の運転順序等はヒューマンインタフェース部47より与えられる。
自家発電設備予測部45は、後述の自家発電設備運転制御部46による自家発電設備30の制御に用いられる運転タイミングを前述の入力された情報に基づいて演算し、演算結果をこの自家発電設備運転制御部46に送る。
自家発電設備運転制御部46は、自家発電設備予測部45で演算された演算結果に基づいて、自家発電設備30を制御して当該自家発電設備30の運転タイミングを調整する。また、自家発電設備運転制御部46から自家発電設備30に出力される自家発電設備30の運転タイミングに関する信号が、分岐点11bで分岐して再びポンプ予測部42に入力される。
なお、上記の自家発電設備30の制御方法において、自家発電設備30の制御パラメータ等はヒューマンインタフェース部47より与えられる。
例えば、ポンプ運転制御部43において、ポンプ井設定水位に基づいて雨水排水ポンプ5の運転台数等の制御が行われている場合には、自家発電設備30から電力が供給されて最初に起動する雨水排水ポンプ5の起動設定水位(A)から、自家発電設備30の起動開始から起動完了までの時間をポンプ井水位に換算した値(B)を引いて、この差の水位値(=A−B)に基づいて自家発電設備30の起動が行われる。
これにより、自家発電設備30の起動が間に合わずに雨水排水ポンプ5の起動が遅れるという現象を回避することができる。
なお、この例における自家発電設備30の起動開始から起動完了までの時間をポンプ井水位に換算した値(B)は、ヒューマンインタフェース部47で予め設定されたものであってもよく、また、自家発電設備予測部45においてポンプ井水位の過去のデータに基づいて統計的に演算されたものであってもよい。
なお、この例における自家発電設備30の起動開始から起動完了までの時間(D)は、ヒューマンインタフェース部47で予め設定されたものであってもよく、また、自家発電設備予測部45において過去の自家発電設備30の起動時間データに基づいて統計的に演算されたものであってもよい。
この変形例においては、図3に示すように雨水排水制御装置11が複数のポンプ運転制御部43を有している点が異なるのみであり、他は図1に示す雨水排水制御装置11とほぼ同様の構成となっている。なお、図3においてはポンプ予測部42の個数は一個であるが、このポンプ予測部42が複数設けられていてもよく、また、ポンプ予測部42とポンプ運転制御部43とを有するポンプ予測制御部41が複数設けられていてもよい。
この変形例における雨水排水制御装置11には、さらに運転中の一のポンプ運転制御部43が正常に動作しなくなった場合にこの異常事態を検知し、自動的に他のポンプ運転制御部43に運転を切り換える切換手段48が設けられている。
そして、評価手段49からの評価結果に基づいて、切換手段48によって最適な制御性能を有するポンプ運転制御部43に切り換えられ、このポンプ運転制御部43の出力信号が各雨水排水ポンプ5に送られることとなる。
また、雨水排水制御装置11において、ポンプ運転制御部43による運転制御のうち雨水排水ポンプ5の回転数の制御やポンプ予測部42による予測は連続時間系である。一方、ポンプ運転制御部43による運転制御のうち雨水排水ポンプ5の運転台数の制御は離散時間系である。
このような連続時間系と離散時間系が混在する系はハイブリッド系とよばれる。すなわち、雨水排水制御装置11による雨水排水制御系はハイブリッド制御系とよばれるものである。
例えば、雨水流入量の予測値から直接的に雨水排水ポンプ5の運転台数を判定する場合において、下記式(1)および式(2)により表されるシステムについて以下に検討する。
N(t)= 1 (if Q(t)≦3)
2 (if 3<Q(t)≦6)
3 (if 6<Q(t) ・・・ 式(2)
u(t)は降雨等の雨水流入量の予測モデルの入力であり、Q(t)は雨水流入量の予測値であり、N(t)は雨水排水ポンプの運転台数である。また、a、bは雨水流入量予測モデルのパラメータであり、オフラインで予め設定されるかあるいはオンラインで逐次的に決定されるものである。
具体的には、混合論理動的モデル(MLDシステム:Mixed Logical Dynamical)が導入される。このMLDシステムは、論理記述を含んだ動的システムの表現方法であって、プロセスに含まれる離散的事象を論理変数で表しており、その定式化においては論理式を線形不等式で表すことを特徴としている。
具体的には、上記式(1)(2)により表されるシステムをMLDシステムとして表現すると、下記式(3)(4)となる。
〔δ2(t)=1〕←→〔Q(t)≦6〕
δ3(t)=1 ・・・式(3)
N(t)=1・δ1(t)+2・(δ2(t)−δ1(t))+3・(δ3(t)−δ2(t))
・・・式(4)
δi(i=1、2、3)は離散値補助変数である。
図1に示すように、雨水排水制御装置11に伝送路20を介して運転支援装置17を接続し、この運転支援装置17に、伝送路20を介して雨量レーダデータ処理装置19を接続してもよい。なお、雨量レーダデータ処理装置19には、雨量レーダ18から降雨量観測データ18aが送られる。
そして、一定時間先における降雨量および降雨強度の最大値を予測した予測データ19aが、雨量レーダデータ処理装置19から伝送路20を介して運転支援装置17に送られる。
運転支援装置17では、雨量レーダデータ処理装置19から送られた予測データ19aに基づいて、一定時間先の降雨に対する雨水排水ポンプ5の必要運転台数等を決定する。このようにして運転支援装置17により決定された雨水排水ポンプ5の必要運転台数等に係わる情報は伝送路20を介して雨水排水制御装置11に送られる。
このことにより、早い段階で一定時間先の雨水排水ポンプ5の必要運転台数等を決定することができる。
図1に示すように、運転支援装置17に、気象情報が得られる気象情報端末21を、伝送路20を介して接続してもよい。
このことにより、早い段階で一定時間先の雨水排水ポンプ5の必要運転台数等を決定することができる。
雨水排水制御システムにおいて、上述の降雨予測や気象情報、流入量予測、水位予測などの各種予測情報またはそれらの現在値を用いて、天候モードを判定し、この天候モードに基づいて雨水排水の制御を行ってもよい。
具体的には、各種情報から小雨モードと判定された場合には、各雨水排水ポンプ5の運転を行わずに流入ゲート4を制御して、初期の雨水を予め設置してある増補幹線もしくは貯留管に送るようにする。このことにより汚濁濃度の高い初期の雨水が処理場やポンプ場に流入することを抑止することができる。
一方、小雨モードではない場合やポンプ井3の水位が規定値以上に達した場合には、ただちに各雨水排水ポンプ5の運転を行って雨水の排水処理を行う。
このように上述した各種予測情報を用いて天候モードを切り換えて雨水排水制御を行うことによって、近年重要視されている合流改善問題にも対処することができる。
2 流入渠
3 ポンプ井
4 流入ゲート
4a 信号
5 雨水排水ポンプ
5a 信号
6 吐出弁
6a 信号
7 地上雨量計
8 流入渠水位計
9 ポンプ井水位計
10 雨水
11 雨水排水制御装置
11a、11b 分岐点
12 降雨量信号
13 流入渠水位信号
14 ポンプ井水位信号
17 運転支援装置
18 雨量レーダ
18a 降雨量観測データ
19 雨量レーダデータ処理装置
19a 予測データ
20 伝送路
21 気象情報端末
21a 予測データ
30 自家発電設備
35 測定部
41 ポンプ予測制御部
42 ポンプ予測部
43 ポンプ運転制御部
44 自家発電設備予測制御部
45 自家発電設備予測部
46 自家発電設備運転制御部
47 ヒューマンインタフェース部
48 切換手段
49 評価手段
Claims (6)
- 雨水が流入するポンプ場に設置され、このポンプ場からの排水を行う複数の雨水排水ポンプと、
自家発電を行って、この自家発電により発生する電力を各雨水排水ポンプに供給する自家発電設備と、
ポンプ場へ流入する雨水の予測流入量を求める予測部と、この予測部で求めた予測流入量に基づいて、複数の雨水排水ポンプを制御して当該雨水排水ポンプの運転台数および/または運転タイミングを調整するポンプ運転制御部と、ポンプ運転制御部から雨水排水ポンプに出力される雨水排水ポンプの運転台数および/または運転タイミングに関する信号が分岐して入力され、この信号に基づいて自家発電設備を制御して当該自家発電設備の運転タイミングを調整する自家発電設備運転制御部とを有する雨水排水制御装置と、
を備え、
雨水排水制御装置においてポンプ運転制御部が複数設けられており、
雨水排水制御装置は各ポンプ運転制御部の運転の切り換えを行う切換手段を更に有することを特徴とする雨水排水制御システム。 - 雨水排水制御装置は、複数のポンプ運転制御部の各々の制御性能を予め定められた方法および周期で評価する評価手段を有しており、
雨水排水制御装置の切換手段は、評価手段による各ポンプ運転制御部の制御性能の評価結果に基づいて、最良の制御性能を有するポンプ運転制御部に切り換えることを特徴とする請求項1記載の雨水排水制御システム。 - 雨水排水制御装置の評価手段は、制御操作量、雨水排水ポンプ運転時間、雨水排水ポンプ運転コストの少なくともいずれか1つを指標とする最適制御問題を解くことにより複数のポンプ運転制御部の各々の制御性能の評価を行うことを特徴とする請求項2記載の雨水排水制御システム。
- 雨水排水制御装置の評価手段は、複数のポンプ運転制御部の各々の制御性能の評価における最適制御問題を解く際に、非線形モデル予測制御を適用することを特徴とする請求項3記載の雨水排水制御システム。
- 雨水が流入するポンプ場に設置され、このポンプ場からの排水を行う複数の雨水排水ポンプと、
自家発電を行って、この自家発電により発生する電力を各雨水排水ポンプに供給する自家発電設備と、
ポンプ場へ流入する雨水の予測流入量を求める予測部と、この予測部で求めた予測流入量に基づいて、複数の雨水排水ポンプを制御して当該雨水排水ポンプの運転台数および/または運転タイミングを調整するポンプ運転制御部と、ポンプ運転制御部から雨水排水ポンプに出力される雨水排水ポンプの運転台数および/または運転タイミングに関する信号が分岐して入力され、この信号に基づいて自家発電設備を制御して当該自家発電設備の運転タイミングを調整する自家発電設備運転制御部とを有する雨水排水制御装置と、
を備え、
雨水排水制御装置のポンプ運転制御部は、運転制御における連続時間系と離散時間系とが混在するハイブリッド系を、変換係数を用いることにより連続時間系のみの系とみなしてこの運転制御を行うことを特徴とする雨水排水制御システム。 - 雨水排水制御システムの測定部を更に備え、
雨水排水制御装置の予測部において、ポンプ場へ流入する雨水の予測流入量を求めるために流入量予測モデルが構築され、この流入量予測モデルは測定部から送られた情報に基づいてオンラインで逐次的に更新されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の雨水排水制御システム。
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