JP4398083B2 - 歯付ベルト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車の内燃機関のオーバーヘッドカムシャフトの駆動に用いられる歯付ベルトに関し、特に高負荷伝達性と耐屈曲疲労性、しかも耐摩耗性及び耐熱性に優れた歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンのカム軸及びインジェクションポンプの駆動用歯付ベルト(タイミングベルト)においては、エンジンの高出力化やエンジンルームのコンパクト化に伴い使用条件が従来より一層厳しくなり、更なる耐久性の向上が要求されてきている。また、一般産業用機械の同期伝動を必要とする動力伝達用歯付ベルト、小型機械に用いられる正確な位置決め精度を要求される搬送用歯付ベルトにおいては、ベルトの取り替え周期の延長が要求されるようになっている。
【0003】
このような歯付ベルトの故障形態は、心線の疲労によるベルトの切断と過負荷や歯布摩耗による歯欠けに大別される。心線の疲労による切断に対しては、アラミド心線や高強度ガラスの細径心線の使用、耐熱性に優れる水素化ニトリルゴム(H−NBR)組成物の使用、エンジン側の改良としてベルト張力を始動時及び走行時共に一定に保つオートテンショナーの使用などにより改良され、切断故障の発生は減少している。
【0004】
しかし、歯欠けの発生については、高強力タイプのナイロン6−6、アラミド繊維を使用した歯布の使用などの対策が施されているものの、未だ十分ではない。そこで、歯布を被覆した歯付ベルトの耐歯欠け性を更に向上させるために、歯布表面の低摩擦係数化を図ることが有力視されている。EP0662571B1には、歯布の織物層の外側にフッ素樹脂を含むポリマーマトリックス層を吹き付け又は塗布によりコーティングする歯付ベルトが提案されている。このフッ素樹脂は、特殊なポリマーマトリックス内に境界層無しに結合されている。そして、このポリマーマトリックスを歯布に結合させる。しかしながら、フッ素樹脂がポリマーマトリックスに強固に結合されているため、フッ素樹脂がマトリックスに囲われたままになって、フッ素樹脂による摩擦係数低減作用が十分発揮できなくなるという問題点があった。また、ポリマーマトリックスの材質的制限から、含有できるフッ素樹脂量が少なく、ポリマーマトリックス層の厚みも薄くなり、フッ素樹脂による耐歯欠け性の向上が十分ではないという問題点があった。
【0005】
また、特開平7−151190号には、歯布の表面及び内部に繊維化したフッ素樹脂を含むゴム混合物を含浸させ、歯布の裏面を接着層を介してベルト本体のゴム層に結合する歯付ベルトが提案されている。ゴム混合物中のフッ素樹脂を混練工程等により繊維化するのは、ゴム混合物中のフッ素樹脂が異物化してゴム混合物の強度を低下させないためである。しかし、ゴム混合物中で繊維化したフッ素樹脂は、摩擦面に露出する機会が少なく、フッ素樹脂による摩擦係数低減作用が十分ではなくなるという問題点があった。また、フッ素樹脂を繊維化して異物化させずに強度を維持するために、歯布に含浸させるゴム100質量部に対して1〜30質量部程度のフッ素樹脂しか含有させることができず、耐歯欠け性の向上が十分ではないという問題点があった。
【0006】
また、OHC軸駆動用の歯付ベルトは、自動車のエンジンルームという高温下において、高速でかつ高負荷で走行される。しかも、内燃機関の高性能化に伴い、歯付ベルトは、狭小なスペースに配置され、小径のプーリに巻き掛けられて走行されている。歯付ベルト内には、通常、幅方向に所定の間隔をあけて、心線が配設されているが、プーリ径が小さくなると、該心線はプーリに沿うように屈曲されて走行される為、十分な可撓性及び柔軟性を有していないと短時間の走行により破断するおそれがある。従来、歯付ベルトの心線は、例えば特開昭62−159827号公報に開示されているように、Eガラス繊維(汎用性無アルカリガラス繊維)フィラメントを束ねて撚り合わせて使用されている。従来の心線は通常、直径9μmのEガラス繊維フィラメントを、通常、レゾルシン・ホルマリン樹脂ラテックス混合物(以下RFLという)にて含浸処理して得たストランドを、撚り合わせ条件3/13(ガラス繊維フィラメントを束ねたストランド3本を下撚りして子縄を形成し、13本の子縄を上撚りすること)で撚り合わせたもの等が使用されている。
【0007】
このような従来の心線を用いた歯付ベルトでは、近年の内燃機関の高性能化による厳しい条件に対応できなくなりつつあり、歯付ベルトの寿命が短くなる傾向にある。このため、近時、内燃機関自体の性能が向上し、寿命も長くなりつつあるのに対し、歯付ベルトは寿命がそれほど向上せず、例えばOHC駆動用に用いられる歯付ベルトの取り替えは従来よりも頻繁に行わなければならない。また、歯付ベルトを高温下で、径が小さいプーリの外径に沿って高速回転させれば、心線を構成する繊維同士の摩擦による発熱が歯付ベルト内部に蓄積し、帆布とゴムの接着、帆布自体への悪影響、ゴム自体への悪影響を与える為、歯付ベルトの寿命を著しく低下させるという問題もある。
【0008】
そこで、実公平5−44607にあるように、直径6〜8μmの直径の高強度ガラス繊維フィラメントをEガラス繊維と同様にRFL処理した後、束ねてストランドを形成し、所定本のストランドを7.2〜8.8回/10cmの撚り数にて上撚りしてなる心線を有する歯付ベルトが見出された。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近年内燃機関がより高性能となり、さらに高負荷となるとともに歯付ベルトはより狭小なスペースに配置されるようになってきた。このことより上記6〜8μmの直径の高強度ガラス繊維フィラメントを束ねてストランドを形成した後、所定本のストランドを7.2〜8.8回/10cmの撚数にて下撚りして500〜800本のフィラメントを有する子縄を形成し該子縄9〜12本を逆方向へ7.2〜8.8回/10cmの撚り数にて上撚りしてなる心線を用いた歯付ベルトを使用しても、高負荷で使用された場合心線の伸びが発生し、ベルトが伸びることでプーリとのかみ合いが悪くなり、ベルト歯の異常摩耗により早期歯欠けが発生した。さらに通常の負荷でもベルト幅を細くした場合、単位幅当りに掛かる負荷が大きくなり、同様に早期歯欠けが発生した。
さらに、歯布として従来ナイロン製の歯布を使用していたが、高負荷で使用する場合、ベルトの初張力を高張力で設定するためにナイロン製では耐摩耗性が不足し、早期に歯底摩耗が発生し、やがて歯欠けによるベルト寿命となっていた。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部を有し、上記歯部の表面に繊維材料からなる歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、前記繊維材料に、フッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を摩擦係数低減作用が発揮されやすい形態にして大量に含有させ、前記繊維材料の摩擦抵抗を長期にわたって低減させる歯付ベルトを提供することを目的とする。
また、ベルトに高負荷がかかる場合、又、エンジンルームのコンパクト化の為にベルト幅を小さくする場合等に、ベルトの歯とプーリの歯溝がかみ合い不良を起こさず、耐久性の優れた歯付ベルトを提供することも目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ベルト本体に被覆される繊維材料に、樹脂系接着成分と、ゴム成分と、フッ素樹脂粉末を含む粉末減摩材との混合物を含浸付着させて、フッ素樹脂粉末を前記繊維材料の表裏面及び繊維間に集束させ、多量のフッ素樹脂粉末を含有させることができるとともに、フッ素樹脂粉末が摩擦面に対して露出する機会が増大し、フッ素樹脂粉末による摩擦係数低減作用を確実に発揮できる、という知見を得て完成されたものである。
【0012】
すなわち、本件発明は、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部を有し、上記歯部の表面に繊維材料からなる歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、前記繊維材料の表裏面及び繊維間に、少なくともフッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材が集束するように、樹脂系接着成分と、ゴム成分と、前記フッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材とが前記繊維材料の表裏面及び繊維間に含浸付着されており、前記繊維材料の表面にイソシアネート化合物を含んだゴム配合物を第1ゴム層として形成し、更にその表面にフッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を配合した第2ゴム層を形成し、そして前記心線が直径5〜10μmの高強度ガラス繊維フィラメントを束ねてストランドを形成し、ストランドを集めて下撚した子縄を形成したのち、該子縄を集めて逆方向へ所定の撚数にて上撚してなる直径が1.1〜1.5mmである心線を有することを特徴とする歯付ベルトである。
【0013】
請求項1に記載された発明によると、前記繊維材料の表裏面及び繊維間に、少なくともフッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材が集束するように、樹脂系接着成分と、ゴム成分と、前記フッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材とが前記繊維材料の表裏面及び繊維間に含浸付着されており、さらに前記心線が直径5〜10μmの高強度ガラス繊維フィラメントを束ねてストランドを形成し、ストランドを集めて下撚した子縄を形成したのち、該子縄を集めて逆方向へ所定の撚数にて上撚してなる直径が1.1〜1.5mmである心線を有する歯付ベルトとすることによって、前記歯布の繊維材料の内部迄大量のフッ素樹脂粉末を含んだゴム成分及び樹脂系接着成分を位置させることができ、ベルト走行中の摩擦係数を走行中継続して低減させることができ、さらにベルトの引張り強さ及びベルトの引張弾性率が上昇し高負荷又はベルト幅に対して過剰な負荷で走行させてもベルト伸びが発生することなく、長時間走行してもベルトとプーリの良好なかみ合いを保ち、早期寿命となることはない。
【0021】
更に、請求項1に記載の発明によると、前記第1ゴム層を含浸形成した前記繊維材料に、さらにフッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を配合した第2ゴム層を形成させた歯付ベルトであることから、第2ゴム層は摩擦係数低減効果を有する表層として機能する。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記減摩材がグラファイトである請求項1に記載の歯付ベルトにある。
【0023】
請求項2に記載の発明によると、前記減摩材としてグラファイトを使用することにより、グラファイトはゴム成分との馴染みも良く、耐久性を有した減摩材として有効である。
【0024】
請求項3に記載の発明は、前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層のゴム成分が、前記ベルト本体の前記ゴム配合物と同種である請求項1または2に記載の歯付ベルトにある。
【0025】
請求項3に記載の発明によると、前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層のゴム成分が、前記ベルト歯部の前記ゴム配合物と同種であることから、第1ゴム層と第2ゴム層間の接着性が良く、剥離等を起こさない。
【0026】
請求項4に記載の発明は、ベルトの歯底面から心線の中心に到る距離であるPLDが0.75〜1.00mmである請求項1〜3のいずれかに記載の歯付ベルトである。
【0027】
請求項4に記載の発明によると、PLDを0.75〜1.00mmに保つことによって心線の直径が大きくなった場合でも歯布の厚みを薄くする必要が無く、歯布が早期に摩滅するという不具合は発生しない。
【0028】
請求項5に記載の発明は、上記歯布が少なくとも緯糸中にアラミド繊維を含んだ請求項1〜4のいずれかに記載の歯付ベルトにある。
【0029】
請求項5に記載の発明によると、上記歯布が少なくとも緯糸中にアラミド繊維を含んだ歯付ベルトにあることから、歯布が早期に摩滅することはなく、早期寿命となることはない。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、歯付ベルトの歯面に被覆された繊維材料(歯布)の拡大断面図であり、図2は、歯付ベルトの構造を示す斜視図であり、図3は歯付ベルトの歯面に被覆された繊維材料(歯布)の断面の拡大写真を示す図である。
【0033】
図2において、歯付ベルトAは、長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部3と、歯部3と連続する背部2と、背部2に埋設された心線1と、歯部2の表面に被覆された歯布4とを有する構造である。背部2と歯部3は、ゴム配合物9で形成されたベルト本体を構成する。また、歯布4は、ベルトの長手方向に延在する緯糸7と、ベルトの幅方向に延在する経糸8とを織成して成る繊維材料を基材として構成される。
【0034】
図1に示されるように、歯付ベルトに於ける歯布4は、緯糸7と経糸8とを織成してなる繊維材料の表面と裏面と繊維間にフッ素樹脂粉末が集束するように、ゴム成分21と、樹脂系接着成分22と、フッ素樹脂粉末23とからなる混合物24が含浸形成され、好ましくは第1層として第1ゴム層5が更に形成され、より好ましくは第2層として第2ゴム層6が更に形成されてなる。
【0035】
心線1は、従来使用されているEガラス繊維フィラメント(汎用性無アルカリガラス繊維フィラメント)に替えて、高強度ガラス繊維フィラメントを所定条件に撚り合わせて使用される。高強度ガラス繊維は、Eガラス繊維に比べ、SiO2成分、Al2O3成分、MgO成分の含有割合を増加させて、CaO成分、B2O3成分の含有割合を減少させたガラス繊維である。その成分表は表1に示す。その結果、表2に示すように、Eガラス繊維に比べて、引張り強さ、引張り弾性率が著しく向上する。このようなガラス繊維を高強度ガラス繊維という。高強度ガラス繊維としては、Uガラス繊維(日本硝子(株))、Tガラス繊維(日東紡績(株))、Rガラス繊維(Vetrotex Saint Gobain社)、Sガラス繊維(Owens Corning Fiberglass社)等が挙げられる。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
本発明の歯付ベルトにおける心線1は、このような高強度ガラス繊維を用いた比較的細径である直径5〜10μm、好ましくは7μmのフィラメントを500〜800本程度束ねて6〜16回/10cmで下撚りすることにより子縄を製造した後、このようにして得られた子縄を、15〜25本束ねて、5〜10回/10cmの撚り数にて上撚りして直径1.1〜1.5mmの心線が形成される。上撚り数は、下撚り数の0〜10%減が好ましい。
ここで、高強度ガラス繊維のフィラメント径が5μm未満では紡糸や接着処理をしにくく工数が増える。一方上記フィラメント径が10μmを越えるとベルト走行時に耐屈曲疲労性が極端に低下する。
上記下撚り数が6回/10cm未満ではガラス繊維間に水が入り易くなる為耐水性が劣り、一方16回/10cmを越えると心線強力が低下する。
上撚り回数は、5回/10cm未満ではベルトの耐屈曲疲労性に劣り、10回/10cmを越えると高負荷で走行させた場合、心線の伸びが大きくなる為、プーリとのかみ合いが悪くなり、歯欠けを起こし易くなる。一方、心線径が1.5mmを越えると、プーリのPLDに比べてベルトのPLDが大きくなりすぎベルトのかみ合い状態が多角形となりベルトの耐屈曲疲労性が低下し、ベルト寿命が短くなる。
【0039】
また、自動車用歯付ベルトでは所定の張力を受けて走行している時の仮想ピッチライン上で通常8.0mmと9.525mmの長さの歯部ピッチを有している。そのときの仮想ピッチラインとは、ベルト歯部とプーリ溝部とがかみ合った状態で、ベルト歯底面からピッチライン迄の距離(PLD値)が0.686mmに設定された仮想の距離である。
【0040】
ここで、PLDは下記のように測定される。
ベルトを幅方向に歯と平行にかつ歯底部の中央に沿って鋭利な刃物でカットして投影機等により拡大して歯底面からの心線の下端と上端までの距離を求め次式によりPLDを求める。
ベルトの幅方向に打ち込まれている全ての心線(両端の部分的にカットされている心線を除く)の位置にて測定し、その平均値をそのベルトの測定位置でのPLDとする。さらにベルトの長さ方向でベルト1本の中のPLDの値に差がある場合を考慮すると、少なくとも等分に分割される3箇所を同様に測定して総平均値で測定するベルトのPLDとすることが望ましい。
【0041】
そこで、ベルトの断面寸法では、PLDである歯底面から心線中心迄の距離が走行時に0.686mmになるように設定されるのが通常で、無張力下では上記PLDは0.68〜0.72mmであった。
【0042】
しかし、本発明における直径が1.1〜1.5mmの高強度ガラス心線を使用すると、上記のようにPLD値を0.68〜0.72mmに設定するよりもさらにPLD値を0.75〜1.00mmに設定する方が歯布の厚みが薄くなることがない為に歯布が摩滅しにくくなり歯付ベルトの寿命も延びる。ここで、PLD値が0.75mmよりも小さい場合は、歯布が薄くなり歯布摩滅が起こり歯付ベルトの寿命が短くなる可能性がある。一方、PLD値が1.00mmを越えると、ベルト歯とプーリ溝とのかみ合いが悪くなり、歯欠け或いは歯部亀裂等の不具合が発生する。
【0043】
ゴム成分21は乳化重合で得られたゴムラテックスを加熱し乾燥して得られたゴム固形物であり、樹脂系接着成分22はレゾルシンとホルマリンの初期縮合物である。前記ゴム成分21と樹脂系接着成分22は、レゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス(RFL)処理液を乾燥、加熱した後に残る固形分である。
【0044】
樹脂系接着成分22は緯糸7及び経糸8の繊維に接着している。また、ゴム成分21と樹脂系接着成分22とで構成されるマトリックス中にはフッ素樹脂粉末23が分散して混合されている。そして、フッ素樹脂粉末23とゴム成分21及び樹脂系接着成分22とは結合されておらず、フッ素樹脂粉末23の周囲の全部又は一部に隙間が形成されている。
【0045】
図3は、本発明の歯付ベルトの歯布の一部の拡大写真を示す図である。この図3により、フッ素樹脂粉末が各繊維の回りに集束している状態を詳細に説明する。図3より、フッ素樹脂粉末23を含むゴム成分21と樹脂系接着成分22とからなる混合物24が各繊維の表面に付着しているのが判る。この結果、フッ素樹脂粉末23が繊維材料の表裏面及び繊維間に集束することができ、歯布4の摩擦係数を低減させることができる。なお、符号5は第1ゴム層を示す。
【0046】
歯布4の緯糸7、経糸8等を形成する繊維材料の材質としては、それぞれナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、綿等の何れか又はこれらの組み合わせが採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良い。混合物24のフッ素樹脂粉末23、ゴム成分21や樹脂系接着成分22が各繊維の間にまで含浸できる程度の太さのものが集まった繊維が好ましい。歯付ベルトの場合、使用環境と要求寿命により、ナイロン、アラミド等が使用される。VベルトやVリブドベルトの場合、通常綿糸、綿とポリエステルの混紡糸が使用されるが、特に高い使用温度又は及び高負荷である場合には、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリエチレンナフタレート等も使用される。
【0047】
また、織成構成は綾織り、繻子織り、平織り等何れでもフッ素樹脂粉末23を大量に含ませることができる。フッ素樹脂粉末23が分散した混合物24が繊維材料の表裏面及び内部に効果的に含浸付着するためには、混合物24が繊維材料の表裏面及び内部で互いに連通状態になる程度に、糸の太さや密度を選択する。
【0048】
ゴム成分21と樹脂系接着成分22とフッ素樹脂23とからなる混合物24は、レゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス(以下、RFLと略記する)処理液に、フッ素樹脂粉末を分散混合したものを、繊維材料を浸漬し、乾燥後加熱することにより形成することが好ましい。
【0049】
前記RFL処理液は、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものであり、この場合レゾルシンとホルマリンのモル比は3/1〜1/3にすることが接着力を高めるうえで好適である。また、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物は、これをゴムラテックスのゴム分100重量部に対してその樹脂分が5〜50重量部になるようにゴムラテックスと混合したうえ、フッ素樹脂粉末を含む全固形濃度を10〜40%濃度に調節する。
【0050】
ゴム成分21を形成するゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体(VP)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム等の一種又は二種以上のブレンド物が使用される。
【0051】
自動車用歯付きベルトであって、使用環境が100℃以上の高温で、150,000km以上の長寿命を要求される場合、ベルト本体にH−NBRが使用されるが、歯布に含浸付着されるRFL処理液には、H−NBRとCSMのラテックスと、VPラテックスとの通常のブレンド物を使用すると、長寿命を達成できる。一方、一般産業用Vベルトであって、ベルト本体に天然ゴム及びSBRを使用している場合、ベルト背面を被覆する背布に含浸被覆されるRFL処理液には、VPラテックス、SBRラテックス及びこれらのブレンド物を使用することができる。
【0052】
前述したゴム成分21や樹脂系接着成分22とも結合しないフッ素樹脂粉末23は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルコキシエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体の一種以上である。フッ素樹脂粉末23中のフッ素原子数の割合が多い程、摩擦係数低減効果は大きい。そのため、同量の繊維材料への付着量を前提とした場合、上記フッ素樹脂粉末23の中ではポリテトラフルオロエチレンが最も摩擦係数低減の効果が大きく歯欠け寿命が長い。しかし、他のフッ素樹脂粉末も分子内のフッ素原子数の割合にほぼ比例してその効果がある。
【0053】
このようなフッ素樹脂粉末23は、前記RFL処理液中のゴム成分100重量部に対して30〜200重量部(より好ましくは50〜200重量部)添加し、均一に分散させた処理液とすることが好ましい。また、処理液に繊維材料を浸漬し乾燥させ、浸漬前の繊維材料の重量に対して、フッ素樹脂粉末を含む固形の混合物24が5〜40%の付着量となるように調整することが好ましい。30重量部未満又は5%未満のフッ素樹脂粉末であると、繊維材料に絡むフッ素樹脂粉末の総量が少なく、摩擦係数低減効果が認められにくくなる。300重量部を越える又は40%を越えるフッ素樹脂粉末であると、繊維材料に絡むフッ素樹脂粉末の総量が多すぎ、繊維材料のベルト本体等への接着性が低下し、ベルト性能の低下を来す。
【0054】
また、前記RFL処理液中には、フッ素樹脂粉末以外の粉末状減摩材も同時に使用してもよい。前記粉末状減摩材としては、層状構造のグラファイト、二硫化モリブデン、ガラスビーズ、セラミック粉末、球状フェノール樹脂粉末及びアラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、繊維のカット糸又は粉末の一種以上が例示できる。特にグラファイトはゴム成分との馴染みもよく、ベルトの耐久性をより向上させる。
そして、前記粉末状減摩材は、前記RFL処理液中のゴム成分100重量部に対して30〜200重量部であり、フッ素樹脂粉末の添加量を多くすることが好ましい。しかし、フッ素樹脂粉末と粉末状減摩材の混合比率には、特に制限はない。
【0055】
前記混合物の繊維材料への付着量を測定する方法は、浸漬処理前の繊維材料の質量を秤量し質量(W1)を計り、次にフッ素樹脂粉末を分散させたRFL処理液に繊維材料を浸漬し、その後繊維材料をオーブンに入れ質量が一定になる迄乾燥を続け、最終質量(W2)を計り、式((W2−W1)/W1)×100(%)で算出する方法である。
【0056】
繊維材料の内部まで大量のフッ素樹脂粉末23を絡ませるためには、粉砕又は造粒により粉粒状となったフッ素樹脂粉末を用い、その平均粒子径が100μm以下(より好ましくは10μm以下)になったものを用いることが好ましい。100μmを越えると、RFL処理液中にフッ素樹脂粉末が沈降し均一に分散しにくくなり、更に混合物内におけるフッ素樹脂粉末の表面積が減少して摩擦係数低減効果が少なくなるからである。このような観点から、フッ素樹脂粉末は出来るだけ小さい粒径のもの例えば10μm以下のものが好ましい。
【0057】
フッ素樹脂粉末を分散させたRFL液にて処理された繊維材料の表面に対して、必要に応じてゴム糊を付着させることができる。図1の例では、イソシアネート化合物を含んだゴム配合物の第1ゴム糊を第1ゴム層5として付着させ、更にフッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を配合したゴム配合物の第2ゴム糊を第2ゴム層6として付着させている。なお、前記第1ゴム層5は省略可能であり、第2ゴム層6をフッ素樹脂粉末を含むRFL処理液で処理された繊維材料の表面に形成することもできる。
或いは第2ゴム糊としてイソシアネート化合物さらにはフッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を配合したゴム配合物の第2ゴム層6をフッ素樹脂粉末を含むRFL処理液で処理された繊維材料の表面に形成することもできる。
【0058】
第1ゴム層5は、接着力を高める中間層として機能し、イソシアネート化合物が接着成分として作用する。そのため、ベルト本体と同種のゴム成分を有する第1ゴム糊を採用できる。この第1ゴム糊は、ベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解させ、イソシアネート化合物を添加して処理液とし、この処理液を塗布した後乾燥固化することにより形成される。前記処理液で使用するイソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物もトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
【0059】
第2ゴム層6は、摩擦係数低減効果を有する表層として機能し、フッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材が配合されている。この第2ゴム層6は、第1ゴム層5と同様に、ベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解させ、フッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を添加して処理液とし、この処理液を塗布した後乾燥固化することにより形成される。フッ素樹脂粉末以外の減摩材としては、層状構造のグラファイト、二硫化モリブデン、ガラスビーズ、セラミック粉末、球状フェノール樹脂粉末及びアラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、繊維のカット糸又は粉末の一種以上が例示できる。特にグラファイトはゴム成分との馴染みもよく、耐久性を有した減摩材として有効である。
【0060】
なお、ベルト本体を形成するゴム配合物の材質には特に制限はなく、使用条件に応じて適切なものが適宜選択される。自動車エンジン用及び各種エンジン用歯付ベルトの場合、耐熱性と耐油性を備えたH−NBR、CR、CSM等が使用される。一般産業用機械に用いる歯付ベルトには、H−NBR、CR、CSM以外に、NBR、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、SBR、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、フッ素ゴム、シリコンゴム等何れの場合も使用可能である。このような歯付ベルトの場合、図1で説明した歯布の使用が有効である。
【0061】
また、一般産業用、自動車用のVベルト、Vリブドベルトには、CR、H−NBR、CSM、NR、SBR等のゴム配合物が使用される。このようなVベルト又はVリブドベルトでは、背面に背布が被覆される。この背布は、歯布と同様のRFL含浸付着処理を経た後、更にその表面にゴム糊にて処理、又はゴム用カレンダーロールで表面処理用ゴムをすり込むかコートすることにより作製される。その効果は、ベルト背面が駆動されるプーリ又はアイドラプーリと接触することによる磨耗性の改良による寿命の延長、更にベルト背面がプーリと接触するときの摩擦力が低減されることによる異音の低減である。
【0062】
また、ベルト本体の内部に埋設される心線1に制限はなく、一般にはガラス心線及びアラミド心線が使用される。また、ポリベンゾオキサゾール、ポリパラフェニレンナフタレート、ポリエステル、アクリル、カーボン、スチールを組成とする撚コードの何れでも使用できる。ガラス心線の組成はEガラス、Sガラス(高強度ガラス)何れでも良く、フィラメントの太さ及びフィラメントの収束本数及びストランド本数に制限されない。また、接着処理剤及び屈曲時のガラスフィラメントの保護材として使用されるサイジング剤、RFL、オーバーコート剤等にも制限されない。一方、アラミド心線においても、材質の分子構造の違いや心線構成及びフィラメントの大きさや接着処理剤の違いによっても制限されない。他の組成からなる心線の撚コードについても同様に特別の制限はない。
【0063】
上述した構成を有するベルトは、ベルトの歯面又は及び背面に被覆される繊維材料に、ゴム成分、樹脂系接着成分及びこれらと結合しないフッ素樹脂粉末を繊維材料の表裏面及び内部の繊維に極近い位置に位置させることにより、大量のフッ素樹脂粉末を繊維材料に分散させることができる。また、繊維材料中の樹脂系接着成分は、ベルト本体等の接着性を向上させるとともに、ゴム成分及び樹脂系接着成分と結合しないフッ素樹脂粉末の保持を確実にするという作用を有する。そのため、繊維材料に含浸付着させるゴム成分は、ベルト本体と同種である必要がなく、それぞれ使用条件に応じて適切なものに選択できる。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、目的を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
表3に示す組成と構成の被覆用繊維材料として準備した。また表4に示すゴム配合物を混練した。また、表5に示すRFL処理液を調合した。また、表6に示すゴム糊の溶液を調合した。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
実施例A
表1の繊維材料を、フッ素樹脂粉末を含むRFL処理液に浸漬し、120℃にて乾燥後180℃にて2分間熱処理した。次に、表4のゴム配合物を、MEK、トルエンに溶かした後にイソシアネート化合物としてポリアリールポリイソシアネート(商品名PAPI)を添加した処理液に、RFL処理後の繊維材料を浸漬し、第1ゴム層を形成した。更に、表6の処理液配合表に従って、表4のゴム配合物にゴム配合物100に対してノクラックNBC(老化防止剤)を20重量部加え、MEK、トルエンに前記ゴム配合物とノクラックNBCとが前記混合液に対して約15%となるような処理液とした上に、フッ素樹脂粉末又はグラファイト、二硫化モリブデン等を添加混合した処理液とした。この処理液に第1ゴム層を形成した繊維材料を浸漬し乾燥して第2ゴム層を形成してベルト本体被覆用の歯布とした。
【0071】
次に、ベルト作製用金型に上記の歯布を巻き付け、表7のSZ撚一対のRFL及びイソシアネートにて接着処理された心線(ガラス繊維)を一定ピッチ(1.4mm)でスパイラルに一定張力で巻き付け、その上に表4の配合からなる2.5mmのゴムシートを貼り付けた。更に、加硫缶に投入して通常の圧入方式により歯形を形成させた後160℃にて30分加圧加硫して、ベルト背面を一定厚さに研磨し一定幅にカットして走行用歯付きベルトを得た。
【0072】
【表7】
【0073】
作製したベルトのサイズは、ベルト幅15mm、ベルト歯形Y(8.0mmピッチ)、歯数105であり、通常105Y15と表示される。走行試験装置として、図4に示す駆動プーリ歯数19、従動プーリ歯数38にて駆動プーリ回転数7200rpm、従動プーリ負荷7.5kWとし、初張力を350N、雰囲気温度を130℃に設定した高負荷、高張力、高温条件での耐久走行試験を実施した。その耐久試験における寿命時間と故障形態をベルトの構成と共に表8〜10に示す。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
実施例1〜3と比較例1とにおいて、ナイロン織物をH−NBRラテックスを使用しフッ素樹脂粉末(商品名 フルオンAD1)を添加したRFL処理液にて処理した場合、高負荷走行寿命時間が大幅に延びていることが判る。また、実施例1〜3において、繊維材料中のゴム成分100重量部に対しフッ素樹脂粉末を30〜200重量部添加した場合、効果が顕著である。また、実施例1〜5、実施例16と比較例1において、RFL処理液に添加されるフッ素樹脂粉末の粒径は小さいものほど効果が大きく、実施例16のように350μmになると、何も添加しない比較例1よりも若干の効果が見られるが、RFL処理液の分散が不十分となってその効果が粒径の小さい実施例1〜5に比べると小さくなる。また、実施例9と実施例15において、フッ素樹脂粉末を含むRFL処理液の濃度を下げて含浸被覆、乾燥、熱処理後の歯布重量を処理前歯布の重量と比較して得られる付着量を6%及び4%に調整したが、6%では顕著な効果が得られるが、4%では若干の効果に留まることから、5%以上が好ましいことが判る。
【0079】
実施例6〜8は、RFL処理液のゴム成分を変更したものである。歯布のゴム成分がVP、CR、CSMの何れであっても、効果が認められる。実施例10〜13は、フッ素樹脂粉末を含む歯布に更に、H−NBR配合のゴム糊中に添加剤としてフッ素樹脂粉末とその他の減摩材を添加したゴム糊処理を施したものの効果を確認したものである。ゴム糊の添加物として、フッ素樹脂粉末、二流化モリブデン、グラファイト、アラミド繊維粉末を添加したものは、更にベルト寿命向上の効果がある。実施例14〜16と比較例2〜4については、歯布用織物の組成はアラミド、ポリエステル、PBOの何れの織物も、フッ素樹脂粉末を含むRFL処理液を含浸付着させたものは効果がある。また、ベルト本体のゴム配合物のゴム成分は、CR、CSM、EPTの何れのゴム配合物でも効果が認められる。
【0080】
また、心線径が大きい比較例5では心線劣化による切断が発生し、子縄数の少ない心線を用いた比較例6では心線の伸びが発生し、ベルト伸びからプーリとのかみ合いが悪くなり、異常摩耗が発生した。比較例7は子縄数が少なく、さらに心線径が小さい心線を使用した為に心線が伸び、さらにベルト伸びが発生しプーリとのかみ合いの悪さからベルトの異常摩耗、さらには歯欠けに到った。
【0081】
【発明の効果】
上記構成の本件発明によると、前記繊維材料の表裏面及び繊維間に、少なくともフッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材が集束するように、樹脂系接着成分と、ゴム成分と、前記フッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材とが前記繊維材料の表裏面及び繊維間に含浸付着されており、さらに前記心線が直径5〜10μmの高強度ガラス繊維フィラメントを束ねてストランドを形成し、ストランドを集めて下撚した子縄を形成したのち、該子縄を集めて逆方向へ所定の撚数にて上撚してなる直径が1.1〜1.5mmである心線を有する歯付ベルトとすることによって、前記歯布の繊維材料の内部迄大量のフッ素樹脂粉末を含んだゴム成分及び樹脂系接着成分を位置させることができ、ベルト走行中の摩擦係数を走行中継続して低減させることができ、さらにベルトの引張り強さ及びベルトの引張弾性率が上昇し高負荷又はベルト幅に対して過剰な負荷で走行させてもベルト伸びが発生することなく、長時間走行してもベルトとプーリの良好なかみ合いを保ち、早期寿命となることはないという効果が有る。
【0085】
更に、請求項1に記載の発明によると、前記第1ゴム層を含浸形成した前記繊維材料に、さらにフッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を配合した第2ゴム層を形成させた請求項5に記載の歯付ベルトであることから、第2ゴム層は摩擦係数低減効果を有する表層として機能するという効果が有る。
【0086】
請求項2に記載の発明によると、前記減摩材としてグラファイトを使用することにより、グラファイトはゴム成分との馴染みも良く、耐久性を有した減摩材として有効である。
【0087】
請求項3に記載の発明によると、前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層のゴム成分が、前記ベルト歯部の前記ゴム配合物と同種である請求項6又は7に記載の歯付ベルトであることから、第1ゴム層と第2ゴム層間の接着性が良く、剥離等を起こさないという効果が有る。
【0088】
請求項4に記載の発明によると、PLDを0.75〜1.00mmに保つことによって心線の直径が大きくなった場合でも歯布の厚みを薄くする必要が無く、歯布が早期に摩滅するという不具合は発生しないという効果が有る。
【0089】
請求項5に記載の発明によると、上記歯布が少なくとも緯糸中にアラミド繊維を含んだ歯付ベルトにあることから、歯布が早期に摩滅することはなく、早期寿命となることはないという効果が有る。
【0091】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歯付ベルトの要部の構造を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の歯付ベルトの全体構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の歯付ベルトの歯布の一部の拡大写真を示す図である。
【図4】歯付ベルトの耐久性能測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1 心線
2 背部
3 歯部
4 歯布
5 第1ゴム層
6 第2ゴム層
7 緯糸
8 経糸
9 ゴム配合物
11,12 境界面
15 心線
21 ゴム成分
22 樹脂系接着成分
23 フッ素樹脂
24 混合物
Claims (5)
- 長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部を有し、上記歯部の表面に繊維材料からなる歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、前記繊維材料の表裏面及び繊維間に、少なくともフッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材が集束するように、樹脂系接着成分と、ゴム成分と、前記フッ素樹脂粉末を含む粉末状減摩材とが前記繊維材料の表裏面及び繊維間に含浸付着されており、前記繊維材料の表面にイソシアネート化合物を含んだゴム配合物を第1ゴム層として形成し、更にその表面にフッ素樹脂粉末又はフッ素樹脂粉末以外の減摩材を配合した第2ゴム層を形成し、そして前記心線が直径5〜10μmの高強度ガラス繊維フィラメントを束ねてストランドを形成し、ストランドを集めて下撚した子縄を形成したのち、該子縄を集めて逆方向へ所定の撚数にて上撚してなる直径が1.1〜1.5mmである心線を有することを特徴とする歯付ベルト。
- 前記減摩材がグラファイトである請求項1に記載の歯付ベルト。
- 前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層のゴム成分は、前記ベルト本体の前記ゴム配合物と同種である請求項1または2記載の歯付ベルト。
- ベルトの歯底面から心線の中心に到る距離であるPLDが0.75〜1.00mmである請求項1〜3のいずれかに記載の歯付ベルト。
- 上記歯布が少なくとも緯糸中にアラミド繊維を含んだ請求項1〜4のいずれかに記載の歯付ベルト。
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