JP4398014B2 - 排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去方法及びその除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気ガス中に含まれるパティキュレートを燃焼除去するフィルタに関し、特にはその燃焼の繰り返しによりフィルタに付着した燃焼残存物を除去する残存物除去方法及びその除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の排気ガス浄化装置の再生システムは、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるパティキュレート等を除去するために、排気ガス浄化用フィルタを備えている。これらのフィルタを長時間使用した場合、パティキュレートの堆積によりエンジンの負荷が大きくなる。こうした現象は、例えば、フォークリフト等のディーゼル車で顕著である。このため、再生システムに付随するヒータに通電をすることにより、フィルタを加熱してパティキュレートを燃焼除去している。その結果、フィルタが再生される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、パティキュレートを燃焼すると、その灰分等が燃焼残存物としてフィルタに堆積する。このため、燃焼残存物がフィルタ内に徐々に堆積した場合には、フィルタの許容する捕集量が少なくなり、再生までに至る時間間隔が短くなり、再生処理の頻度が高くなる。よって、トータルの電気量が増えて効率が悪い。又、連続燃焼のシステムでは、捕集時間が再生時間を下回り、再生ができなくなるおそれがある。車両においても常に排気圧力が高いので燃費が悪くなる。又、燃焼用の助燃空気が十分に供給されなくなり、フィルタの再生が十分行われなくなる。
【0004】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルタに付着した燃焼残存物をほぼ完全に除去することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、内燃機関の排気流路上に設けられたケーシング内に収容され、内燃機関から排出されるパティキュレート等を捕集し燃焼除去するフィルタであって、その燃焼の繰り返しにより同フィルタに堆積する燃焼残存物を除去する残存物除去方法において、前記フィルタの一端に高圧流体としての温度を20℃〜80℃に設定した水を吹き付け、前記フィルタに付着している燃焼残存物を洗浄するようにしたことをその要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去方法において、前記フィルタは、複数のハニカム焼結体を用いてそれらの外周面同士を接着剤により接着したものであって、前記フィルタの一端に高圧流体を吹き付けるときに、前記ハニカム焼結体同士の接着部分を保護するようにしたことをその要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、内燃機関の排気流路上に設けられたケーシング内に収容され、内燃機関から排出されるパティキュレート等を捕集し燃焼除去するフィルタであって、その燃焼の繰り返しにより同フィルタに堆積する燃焼残存物を除去する残存物除去装置において、前記フィルタの一端に高圧流体としての温度を20℃〜80℃に設定した水を吹き付ける流体噴出手段を備え、前記フィルタに付着している燃焼残存物を洗浄するようにしたことをその要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置において、前記フィルタは、複数のハニカム焼結体を用いてそれらの外周面同士を接着剤により接着したものであって、前記流体噴出手段と前記フィルタの一端との間に、前記ハニカム焼結体同士の接着部分を保護するための保護部材を設けたことをその要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項3又は4に記載の排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置において、前記保護部材は、前記フィルタの一端に嵌合される筒状の胴体部と、その胴体部に形成された開口部に設けられた線材とを含んで構成され、前記線材は接着部分に対応して配置されていることをその要旨とする。
【0013】
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1に記載の発明によると、フィルタの一端に高圧流体が吹き付けられることにより、フィルタに付着している燃焼残存物が洗浄除去される。そのため、内燃機関から排出されるパティキュレート等を燃焼除去してフィルタを再生する際に、生成される灰分等の燃焼残存物による車両の燃費悪化、再生率低下を防止することが可能となる。また、高圧流体は水であるため、例えば酸系の溶剤を用いる場合と比較して低コストで済むとともに、フィルタ洗浄の作業性がよく、環境にも優しいものとなる。さらに、高圧流体の水温は20℃〜80℃に設定されているため、燃焼残存物にカルシウム等の成分を含む場合には、高圧流体に溶かすことができる。従って、洗浄効果をいっそう高めることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によると、ハニカム焼結体同士の接着部分が保護されているため、外部からの高圧流体に耐えることが可能になる。従って、ハニカム焼結体同士が剥離することなく、十分な洗浄効果を得ることができ、フィルタ機能を確実に回復させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によると、流体噴出手段からフィルタの一端に高圧流体が吹き付けられることにより、フィルタに付着している燃焼残存物がほぼ完全に除去される。そのため、内燃機関から排出されるパティキュレート等を燃焼除去してフィルタを再生する際に、再生のための煤量がフィルタに対して適量(許容最大値)であり、効率的に再生できる。また、高圧流体は水であるため、例えば酸系の溶剤を用いる場合と比較して低コストで済むとともに、フィルタ洗浄の作業性がよく、環境にも優しいものとなる。さらに、高圧流体の水温は20℃〜80℃に設定されているため、燃焼残存物にカルシウム等の成分を含む場合には、高圧流体に溶かすことができる。従って、洗浄効果をいっそう高めることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によると、ハニカム焼結体同士の接着部分が保護部材により保護されているため、外部からの高圧流体に耐えることが可能になる。従って、ハニカム焼結体同士が剥離することなく、十分な洗浄効果を得ることができ、フィルタ機能を確実に回復させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によると、ハニカム焼結体同士の接着部分に対応して配置された線材の間に形成された部分から高圧流体を容易に通過させることができる。そのため、高圧流体の圧力をほとんど低下させることなく、フィルタを洗浄することが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、この排気ガス浄化装置11は、フォークリフト等に用いられる内燃機関としてのディーゼルエンジン12から排出される排気ガスを浄化するための装置である。ディーゼルエンジン12は、図示しない複数の気筒を備えている。各気筒には、金属材料からなる排気マニホールド13の分岐部14がそれぞれ連結されている。各分岐部14は1本のマニホールド本体15にそれぞれ接続されている。従って、各気筒から排出された排気ガスは一箇所に集中する。
【0021】
排気マニホールド13の下流側には、金属材料からなる第1排気管16及び第2排気管17が配設されている。第1排気管16の上流側端は、マニホールド本体15に連結されている。第1排気管16と第2排気管17との間には、排気ガス浄化装置11が配設されている。そして、第1排気管16、排気ガス浄化装置11及び第2排気管17の内部領域が互いに連通し、その中を排気ガスが流れるようになっている。
【0022】
この排気ガス浄化装置11は、インレットユニットA、フィルタユニットB及びアウトレットユニットCから構成されている。フィルタユニットBの上流端は、インレットユニットAを介して第1排気管16の下流側端に連結されている。フィルタユニットBの下流端は、アウトレットユニットCを介して第2排気管17の上流側端に連結されている。
【0023】
各ユニットA〜Cは、それぞれ金属材料からなるケーシング18a,18b,18cを備えている。インレットユニットAのケーシング18aと、フィルタユニットBのケーシング18bとの境界部には、フランジ部26a,26bが形成されている。そして、各フランジ部26a,26bに設けられた図示しないクリップバンドにより、インレットユニットA及びフィルタユニットBは着脱可能になっている。又、フィルタユニットBのケーシング18bと、アウトレットユニットCのケーシング18cとの境界部には、フランジ部26c,26dが形成されている。そして、各フランジ部26c,26dに設けられた図示しないクリップバンドにより、フィルタユニットB及びアウトレットユニットCは着脱可能になっている。
【0024】
フィルタユニットBのケーシング18b内には、フィルタ19が収容されている。フィルタ19の外周面とケーシング18bの内周面との間には、断熱材層20が配設されている。断熱材層20はセラミックファイバを含んで形成されたマット状物である。又、インレットユニットAのケーシング18a内には、フィルタ19を加熱するための電気ヒータ21が設けられている。この電気ヒータ21によって、フィルタ19が加熱されることにより、同フィルタ19に付着したパティキュレートが燃焼される。
【0025】
図2,図3に示すように、本実施形態において用いられるフィルタ19は、上記のごとくディーゼルパティキュレートを除去するものであるため、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)とも呼ばれる。本実施形態において用いられるフィルタ19は、複数個のハニカム焼結体Fを組み合わせて一体化したものである。フィルタ中心部に位置するハニカム焼結体Fは四角柱状であって、その外形寸法は33mm×33mm×167mmである。四角柱状のハニカム焼結体Fの周囲には、四角柱状でない異型のハニカム焼結体Fが複数個配置されている。その結果、フィルタ19を全体としてみると円柱状になっている。
【0026】
これらのハニカム焼結体Fは、セラミックス焼結体の一種である多孔質炭化珪素(SiC)焼結体製である。炭化珪素以外の焼結体として、例えば窒化珪素、サイアロン、アルミナ、コーディエライト等の焼結体を選択することもできる。ハニカム焼結体Fには、断面略正方形状をなす複数の貫通孔22がその軸線方向に沿って規則的に形成されている。各貫通孔22はセル壁23によって互いに隔てられている。各貫通孔22の開口部は一方の端面19a,19b側において封止体24(ここでは多孔質炭化珪素焼結体)により封止されており、端面19a,19b全体としては市松模様状になっている。その結果、ハニカム焼結体Fには、断面四角形状をした多数のセルが形成されている。多数あるセルのうち、約半数のものは上流側端面19aにおいて開口し、残りのものは下流側端面19bにおいて開口している。
【0027】
図2,図3に示すように、複数のハニカム焼結体Fは、接着剤によりその外周面同士が接着されている。なお、図2,図3中に示す部材番号「25」は、その接着部分を示している。接着剤はハニカム焼結体Fが熱膨張するのを和らげる役目を担うものである。つまり、接着剤により、炭化珪素製のフィルタ19に熱応力によるクラックが生じるを防止できるようになっている。接着剤としては、セラミック繊維が分散されたセラミック耐熱接着剤が用いられている。接着剤中には、セラミック繊維に加えて炭化珪素粉末が分散されていることがよい。
【0028】
フィルタ19には、上流側端面19aの側から排気ガスが供給される。第1排気管16を経て供給されてくる排気ガスは、まず、上流側端面19aにおいて開口するセル内に流入する。次いで、この排気ガスはセル壁23を通過し、それに隣接しているセル、即ち下流側端面19bにおいて開口するセルの内部に到る。そして、排気ガスは、同セルの開口を介してフィルタ19の下流側端面19bから流出する。しかし、排気ガス中に含まれる煤はセル壁23を通過することができず、そこにトラップされてしまう。その結果、浄化された排気ガスがフィルタ19の下流側端面19bから排出される。浄化された排気ガスは、さらに第2排気管17を通過した後、最終的には大気中へと放出される。その後、電気ヒータ21によりフィルタ19を加熱し、煤着火温度まで達したら、燃焼空気を送ることにより、煤が燃えてフィルタ19が再生される。
【0029】
次に、燃焼した後にフィルタ19に残った燃焼残存物を除去する残存物除去装置について説明する。
図4,図5に示すように、残存物除去装置31は、フィルタユニットBを支持するための基台32を備えている。この基台32は、4つの脚部33と、それらの上端部設けられた格子状をなす網座34とから構成されている。そして、網座34上に前記フィルタユニットBが立てられる。
【0030】
フィルタユニットBの上端部には、保護部材としての保護マスク36が設けられている。保護マスク36は、円筒状の胴体部37を備えており、この胴体部37の内径は、フィルタ19の内径とほぼ同じになっている。胴体部37の外周下端縁には、環状のフランジ部37cが突設され、このフランジ部37cはケーシング18bのフランジ部26cに当接支持されている。
【0031】
保護マスク36とフィルタユニットBとの境界部には、断面チャンネル状をなす締付けバンド27が設けられている。又、締付けバンド27は、その一部が切り離されており、全体としてみるとほぼ環状に形成されている。そして、締付けバンド27は、前記両フランジ部37c,26c同士をその周方向に沿って挟持するようになっている。締付けバンド27の両端には、取付片28a,28bが締付けバンド27の径方向に沿って突設されている。各取付片28a,28bにはネジ29が進退可能に螺合されている。そして、ネジ29により、締付けバンド27を自在に締め付けることが可能になっている。
【0032】
図4〜図6に示すように、胴体部37の内周上端縁には、環状の係止部37aが突設されている。係止部37aには等間隔をおいて複数の圧縮バネ38の上端部が掛止されている。胴体部37の内側にはステンレス製のメッシュ39が配設されている。このメッシュ39は前記圧縮バネ38の下端に固定されている。そして、メッシュ39は圧縮バネ38の弾性力により、ハニカム焼結体Fの上端面に押圧される。
【0033】
メッシュ39は、リング枠39aと、そのリング枠39aの内側に格子状に配列された複数の線材39bとから構成されている。各線材39bの間隔を具体的にいうと、ハニカム焼結体Fの外形寸法と同じ33mmピッチとなっている。従って、各線材39bは、各ハニカム焼結体Fの接着部分25と対応する位置に配置することが可能となっている。このため、各線材39bは、接着部分25の上端部を覆うことにより、同接着部分25を保護する役目を果たしている。
【0034】
図4に示すように、保護マスク36の上方位置には、流体噴出手段としてのノズル43が設けられている。このノズル43は保護マスク36のほぼ中央に配置されている。そして、ノズル43の先端からフィルタ19の端面に向けて高圧流体としての洗浄水が高圧で吹き付けられる。ノズル43からの洗浄水がフィルタ19の上端面全体に均一かつ垂直に吹き付けられるように、ノズル43の位置を調節できるようになっている。
【0035】
本実施形態において、洗浄水の温度は20℃〜80℃であって、その水圧は3〜15MPaとなっている。洗浄水の圧力は、9〜12MPaにした方がいっそう好ましい。これは、水圧が高すぎると、ハニカム焼結体Fの捕集能力が低下し、反対に低すぎると、フィルタ19の洗浄を十分に行えなくなるからである。なお、洗浄水の圧力は高い方が短時間で、燃焼残存物の除去を行うことが可能になる。
【0036】
次に、上記のように構成された残存物除去装置31を用いて、パティキュレートの燃焼によってフィルタ19に堆積した燃焼残存物を除去する方法について説明する。なお、本実施形態において燃焼残存物とは、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、鉄分等をいう。これ以外にも、フォークリフトが使用される環境によっては、シリカ、セリウム等といったものもある。
【0037】
排気ガス浄化装置11からフィルタユニットBを取り外し、そのフィルタユニットBを図示しない取付ネジ等により網座34上に立てた状態で固定する。このとき、フィルタ19の上側に位置させるのは、下流側端面19bである。その後、フィルタユニットBの上部に保護マスク36を載せる。そして、メッシュ39の各線材39bをフィルタ19の各接着部分25と一致させるために、フィルタユニットBと保護マスク36とを位置合わせする。
【0038】
続いて、締付けバンド27を両フランジ部37c,26cに装着し、ネジ29を締め付けると、保護マスク36とフィルタユニットBとが固定される。この状態では、圧縮バネ38の弾性力により、各線材39bの下面はフィルタ19の接着部分25に押圧される。
【0039】
ノズル43から高圧洗浄水が噴出されると、その洗浄水は胴体部37の上端開口部37b、メッシュ39を通過してフィルタ19の上端面に達する。そして、各ハニカム焼結体Fにおける各貫通孔22に付着した燃焼残存物は、洗浄水の圧力によりほぼ完全に除去される。洗浄中において、各ハニカム焼結体Fの界面にある接着部分25は、各線材39bによって保護されている。そのため、10MPaという極めて高圧で洗浄水を噴出しても、フィルタ19の接着部分25の上端部にある接着剤が剥がれ落ちることはない。又、メッシュ39の線材39bは、圧縮バネ38の弾性力により強固に押圧されているため、水圧の影響等によってがたついたりすることはない。燃焼残存物を含む排水は、網座34を通過して図示しない排水処理部に流れる。
【0040】
ちなみに、新品のフィルタ19と、高圧洗浄を施したフィルタ19との圧損特性を比較した結果を図7のグラフに示す。ここで、「圧損」とは、ケーシング18bに収容されたフィルタ19上流側の圧力値から、下流側の圧力値を引いたものをいう。排気ガスがフィルタ19を通過する際に抵抗を受けることが、圧損をもたらす最大の要因である。従って、燃焼残存物は、フィルタ19の圧損特性に大きな影響を与える。
【0041】
図7のグラフにおいて、フィルタ19の使用時間(h)を示し、縦軸は圧損(KPa)を示す。実線は新品のフィルタ19を示し、二点鎖線は洗浄した後のフィルタ19を示し、一点鎖線は洗浄前のフィルタ19を示す。なお、この場合の洗浄には、洗浄水の圧力を10MPaに設定し、洗浄時間を約10分行った。この結果、高圧洗浄によってフィルタ19に付着した燃焼残存物を、新品のフィルタ19と同じ程度にまで完全に除去できた。そのため、洗浄を施したフィルタ19は、新品のフィルタ19に対して同等の圧損特性を得ることができた。よって、再生処理の繰り返しによって燃焼残存物が堆積し、稼働時間が短くなったフィルタ19でも、洗浄処理によりフィルタ機能が十分に回復した。
【0042】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) フィルタ19の上方にはノズル43が設けられている。そして、ノズル43から高圧流体(洗浄媒体)としての洗浄水が、フィルタ19の一端に吹き付けられるようになっている。そのため、パティキュレートの燃焼によってフィルタ19に付着した灰等の燃焼残存物をほぼ完全に除去することができる。従って、車両の燃費悪化、電気効率の低下、フィルタ19の再生率の低下を防ぐことができる。それとともに、燃焼残存物をほぼ完全に除去することができるので、パティキュレート燃焼用の助燃空気をフィルタユニットB内に十分に供給することができる。従って、フィルタ19の再生を確実に行うことができる。
【0043】
(2) フィルタ19に洗浄水を吹き付けることにより、灰分等の燃焼残存物に限らず、煤がフィルタ19内に許容量以上堆積した場合にも煤を効率よく除去することができる。
【0044】
(3) ノズル43とフィルタ19との間には、ハニカム焼結体F同士の接着部分25を保護するための保護マスク36が設けられている。そのため、ノズル43から噴出される洗浄水が接着部分25が直接当たることはない。従って、フィルタ19の接着部分25の上端部にある接着剤が剥がれ落ちるのを防止でき、高圧洗浄水に十分に耐えることできる。言い換えれば、洗浄水の圧力を高くする(10MPa以上)ことができ、今まで洗浄することが困難であった燃焼残存物についても十分な洗浄効果を得ることができる。よって、燃焼残存物が堆積して稼働時間が短くなった排気ガス浄化装置(マフラー)11でも、十分なフィルタ機能回復が可能となる。加えて、フィルタ19を高圧洗浄水による処理を多数回施しても、ハニカム焼結体F同士が剥離することはない。
【0045】
(4) 保護マスク36は、フィルタ19の一端に嵌合される筒状の胴体部37と、その胴体部37の内側に設けられた複数の線材39bとを含んで構成されている。そして、各線材39bは、接着部分25に沿って配置されている。これにより、各線材39b間の隙間から、洗浄水が圧力低下することなく通過する。従って、高い洗浄力を発揮することができる。それとともに、簡単な構成にも拘わらず、高圧洗浄水に対して十分に耐えることができる。
【0046】
(5) 圧縮バネ38の弾性力により、各線材39bがフィルタ19に押さえ付けられている。そのため、極めて高圧で洗浄水を噴出しても、フィルタ19は圧縮バネ38の弾性力により強固に固定されているため、洗浄中における線材39bのがたつきを防止することができる。従って、ムラなく均一に燃焼残存物を除去することができる。
【0047】
(6) 洗浄液として水を使用しているため、フィルタ19に付着した灰等の燃焼残存物を低コストで除去することができる。それとともに、洗浄液に例えば酸系の溶剤等を使用した場合に比べて、洗浄した後の廃液処理が環境に優しいものとなる。
【0048】
(7) 洗浄水は温水であるため、燃焼残存物にカルシウム等の成分を含む場合でも、洗浄水中に簡単に溶かすことができる。従って、環境に優しい洗浄媒体を使用しているにも拘わらず、洗浄効果をいっそう高めることができる。
【0049】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、圧縮バネ38によりフィルタ19に線材39bを押さえ付けた。これ以外にも、圧縮バネ38以外の弾性体、例えばゴム材等により、線材39bをフィルタ19に押さえ付けてもよい。
【0050】
・ 前記実施形態では高圧流体として洗浄水を使用した。これ以外にも、酸系(フッ素酸化物)の液体を洗浄に使用してもよい。更に、高圧流体を液体ではなくエア等の気体に変更し、その気体を高圧でフィルタ19に吹き付けてもよい。
【0051】
・ フィルタ19の洗浄効果を更に高くするために、複数のノズル43を均等配置してもよい。ノズル43を複数設けた場合には、各ノズル43から噴出される洗浄水の吹き付け範囲を狭くすることができるので、フィルタ19にできるだけ接近させることができる。
【0052】
・ 前記実施形態では、洗浄水の温度を20℃〜80℃の温水を使用した。これ以外にも、洗浄水を20℃よりも低い温度、又は80℃よりも高い温度に設定してもよい。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項1又は2において、前記高圧流体の圧力は10MPa以上であることを特徴とする排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去方法。この方法によれば、十分な洗浄力を発揮することができる。
【0054】
(2) 請求項3〜5のいずれかにおいて、前記流体噴出手段は、フィルタの一端面から所定の距離をおいて配置されていることを特徴とする排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置。
【0055】
(3) 請求項3〜5、前記(2)のいずれかにおいて、前記線材の幅は、前記ハニカム焼結体同士の接着部分の幅よりも大きいことを特徴とする排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置。この構成にすれば、ハニカム焼結体間の接着部分の保護を確実に図ることができる。
【0056】
(4) 請求項3〜5、前記(2)、(3)のいずれかにおいて、前記線材はステンレスであることを特徴とする排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1、3に記載の発明によれば、フィルタに付着した燃焼残存物をほぼ完全に除去することができる。また、パティキュレートを燃焼することの繰り返しによりフィルタに堆積する残存物を低コストでほぼ完全に除去することができる。さらに、燃焼残存物にカルシウム等の成分を含む場合でも、洗浄水中に簡単に溶かすことができる。従って、洗浄効果をいっそう高めることができる。
【0059】
請求項2、4に記載の発明によれば、ハニカム焼結体同士が剥離することなく、十分な洗浄効果を得ることができ、フィルタ機能を確実に回復させることができる。
【0062】
請求項5に記載の発明によれば、高圧流体の圧力をほとんど低下させることなく、フィルタを洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態における排気ガス浄化装置の概略図。
【図2】フィルタを一端からみた図。
【図3】フィルタの断面図。
【図4】残存物除去装置の正断面図。
【図5】残存物除去装置を分解して示す斜視図。
【図6】保護マスクの平面図。
【図7】新品のフィルタと高圧洗浄処理を施したフィルタの圧損を比較した結果を示すグラフ。
【符号の説明】
12…ディーゼルエンジン(内燃機関)、18b…ケーシング、19…フィルタ、11…排気ガス浄化装置、25…接着部分、31…残存物除去装置、36…保護マスク(保護部材)、37…胴体部、37b…上端開口部、39b…線材、43…ノズル(流体噴出手段)、F…ハニカム焼結体。
Claims (5)
- 内燃機関の排気流路上に設けられたケーシング内に収容され、内燃機関から排出されるパティキュレート等を捕集し燃焼除去するフィルタであって、その燃焼の繰り返しにより同フィルタに堆積する燃焼残存物を除去する残存物除去方法において、
前記フィルタの一端に高圧流体としての温度を20℃〜80℃に設定した水を吹き付け、前記フィルタに付着している燃焼残存物を洗浄するようにした排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去方法。 - 前記フィルタは、複数のハニカム焼結体を用いてそれらの外周面同士を接着剤により接着したものであって、前記フィルタの一端に高圧流体を吹き付けるときに、前記ハニカム焼結体同士の接着部分を保護するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去方法。
- 内燃機関の排気流路上に設けられたケーシング内に収容され、内燃機関から排出されるパティキュレート等を捕集し燃焼除去するフィルタであって、その燃焼の繰り返しにより同フィルタに堆積する燃焼残存物を除去する残存物除去装置において、
前記フィルタの一端に高圧流体としての温度を20℃〜80℃に設定した水を吹き付ける流体噴出手段を備え、前記フィルタに付着している燃焼残存物を洗浄するようにしたことを特徴とする排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置。 - 前記フィルタは、複数のハニカム焼結体を用いてそれらの外周面同士を接着剤により接着したものであって、前記流体噴出手段と前記フィルタの一端との間に、前記ハニカム焼結体同士の接着部分を保護するための保護部材を設けたことを特徴とする請求項3に記載の排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置。
- 前記保護部材は、前記フィルタの一端に嵌合される筒状の胴体部と、その胴体部に形成された開口部に設けられた線材とを含んで構成され、前記線材は接着部分に対応して配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の排気ガス浄化装置用フィルタの残存物除去装置。
Priority Applications (1)
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