本発明の請求項1に記載の発明は、内部空間と、この内部空間と外部空間をつなぐ開口部を有する構造体と、構造体の任意の位置に設けられた構造体伸縮部と、構造体の内部空間に配置されたループアンテナを備え、ループアンテナは導体と、導体に設けられた屈曲部と、構造体伸縮部と同じ位置に設けられた導体伸縮部と、導体に信号電流を供給する給電部を有し、導体が給電部を基点としてループ状に周回し、構造体伸縮部が導体伸縮部と連動して伸縮することを特徴とする無線通信媒体処理装置であって使用態様に対応した無線通信媒体処理装置の形状、サイズ変更を容易に実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
なお、本発明における無線通信媒体とは、例えば、非接触ICカード、ICタグ、IDタグ、識別ラベル、RF−IDタグ等の非接触で処理装置との通信を行うことができる媒体であり、その処理装置とは、これら無線通信媒体と通信を行う装置であり、いわゆる、リーダー、リーダーライター、読取/書込装置のことを示す。
(実施の形態1)
図1、図2、図3、図4、図5、図6、図11は本発明の実施の形態1におけるループアンテナの斜視図、図7、図8、図9、図10は本発明の実施の形態1における導体伸縮部の構成図である。
1はループアンテナ、1bはゲートアンテナ、2は導体、3は屈曲部、4は導体伸縮部、5は給電部、6は給電ループアンテナ、7は無給電ループアンテナ、8は共振回路、9は整合回路、10は終端抵抗、11は電磁波漏洩防止板、12は磁性体板、13は継ぎ部、14はスライド部、15は内導体、16は外導体、17はスライド穴、18は止めねじ、19は折り曲げ可動部、20は折り畳み部、21、22は回転軸である。
最初に、図1〜図6を用いて、その大きさや形状が自在に可変であるループアンテナ1について説明する。
まず、図1、図2を用いて、ループアンテナ1について説明する。
ループアンテナ1は、後に述べるICタグ、ICカードなどの無線通信媒体との通信を行う読み書き部と無線通信媒体との中継となり、無線通信媒体に磁界を付与するアンテナである。ループアンテナ1は、給電部5を基点として、ループ形状となっており、開口部を有している。このループ形状を実現するために、屈曲部3が導体2の任意の箇所に設けられ、図1〜図4では、すべての屈曲部3が二次元的に形成され、ループ形状により形成される開口部が二次元空間の面となっている。これに対して図5、図6では、屈曲部3が三次元的に形成されて、ループ形状により形成される開口部が、三次元に渡って存在する。すなわち、三次元空間に仮想空間が形成されるループアンテナ1となっている。
導体2は、ループアンテナ1を形成する導体であり、各種の金属などの磁性体などで形成され、断面形状は円柱、楕円中、角柱、多角柱、面取りされた角柱などさまざまで、強
度と加工性のバランスの取れたものである。また、導体2は信号電流が導通するものであり、信号電流が流れることにより、導体2を基点として磁界、および電界を発生するものである。
なお、導体2は単一金属から形成されてもよく、合金でもよく、セラミックや樹脂などに金属コーティングなどを施したものなど、さまざまなものであってよい。スチール、ステンレス、アルミニウムなどが好適であるが、他の材料であってもよい。
屈曲部3は導体2の任意の位置に設けられ、導体2を折り曲げて、ループ形状を実現するために設けられたものである。屈曲部3は、その強度確保などのために直角性ではなく、Rを有して形成されていることが好ましい。屈曲部3により導体2が適宜折り曲げられて、給電部5を基準とするループ形状が構成される。
給電部5は信号電流が導体2に給電され、ループアンテナ1において、信号電流により磁界が発生して、無線通信媒体に磁界が付与される。あるいは、無線通信媒体との間での相互インダクタンスにより発生した誘導電流を受信して、読み書き部へと出力する信号受信の役割も担うものである。また、ループアンテナ1は給電部5を基点としてループするものである。
導体伸縮部4は、導体2の任意の位置に設けられた、導体2を伸張、短縮、折り曲げする部位であり、導体伸縮部4の動作により、事後的に任意にループアンテナ1の大きさ、形状を変更することができるものである。
また、導体伸縮部4は開口部変更手段(図示せず)と同様のものであり、導体伸縮部4により、導体2の長さの伸長、短縮、あるいは折り曲げなどにより、ループ形状をしたループアンテナが形成する開口部の面積、あるいは形状、あるいは開口部の作る仮想空間の体積が変更されるものである。すなわち、開口部変更手段として、導体伸縮部4や後で述べる折り曲げ可動部19などがあるものである。
まず、図1、図2を用いて単体のループアンテナ1の大きさが変更されることについて説明する。
図1、図2では、導体伸縮部4が導体の任意の箇所に設けられているので、これにより導体2を伸張、もしくは短縮することで、結果としてループアンテナ1の大きさが変更される。開口部も変更される。
ここで、導体伸縮部4は図1に示されるように導体の対向する一組の辺の箇所にのみ設けられてもよく、図2に示されるように二組の辺の箇所に設けられても良い。前者の場合には給電部5を基準とした上下方向に導体2の長さが拡張し、後者ではこれに加えて横方向にも長さが拡張する。
このように導体伸縮部4の存在により、導体2の長さが伸張して、ループアンテナ1の開口部面積が拡大する。すなわち、ループアンテナ1が発生する磁界のおよぶ領域が拡張される。逆に、導体伸縮部4により、導体2の長さを短縮させて、ループアンテナ1の大きさを縮小すれば、狭い場所や装置内部にループアンテナ1を設置するのが容易となるメリットがあり、これらはループアンテナ1の使用される状況に応じて、適宜フレキシブルに変更できるものである。
次に、図3、図4を用いて複数のループアンテナ1を対向して組み合わせたゲートアンテナ1bについて説明する。
ゲートアンテナ1bは複数のループアンテナ1を対向して組み合わせることで、ゲートが構成されたアンテナであり、これに後で述べる読み書き部を接続することで、例えば商店の入り口での万引き防止や、商品チェック、空港や倉庫での商品出荷チェックなどに用いられるものである。図3、図4では2つのループアンテナ1が対向して配置されたゲートアンテナ1bが示されているが、3以上のループアンテナ1が組み合わされてもよい。
また、ループアンテナ1同士の対向は略平行であることが好ましいが、多少の交差角を有していても良いものである。
このとき、ループアンテナ1はそれぞれに給電部5が接続され、信号電流が給電される給電ループアンテナの組み合わせでもよく、一方が、給電ループアンテナ6であり、他方が非給電の無給電ループアンテナ7であってもよい。
図3では、給電ループアンテナ6と無給電ループアンテナ7とが組み合わされたゲートアンテナ1bが示されている。
給電ループアンテナ6の発生する磁界が、無給電ループアンテナ7の導体において誘導電流を発生させ、この誘導電流を基点として無給電でありながらあたかも給電ループアンテナであるかのように無給電ループアンテナ7からも磁界が発生される。これにより、非常に低消費電力で、ゲートアンテナ1bの通信範囲を拡大することが可能となるものである。更に、無給電ループアンテナ7で生じる磁界は、給電ループアンテナ6からの誘導電流によるものである。このため、無給電ループアンテナ7で発生する磁界と給電ループアンテナ6で発生する磁界との位相差がなく、いずれのループアンテナからの磁界が無線通信媒体に対して及んでも、位相差による書き込み、読み出しエラーが生じないメリットもある。
共振回路8は無給電ループアンテナ7に接続され、無給電ループアンテナ7の共振周波数が調整される。
整合回路9は、無給電ループアンテナ7に接続され、無給電ループアンテナ7のインピーダンス整合が調整される。
同じく終端抵抗10もインピーダンス整合での調整を行う役割を担う。
このように、二つのループアンテナ1の組み合わせから構成されるゲートアンテナ1bにより、対向する対向領域をはじめとして、その近傍に存在する無線通信媒体への磁界付与が可能となり、単一のループアンテナ1を用いる場合に比べて、非常に広い領域をカバーして、通信を行うことが可能となる。
更に、図1、図2と同じように、導体2には導体伸縮部4が設けられているので、ループアンテナ1の大きさ(すなわちその開口部の面積)を拡張すること、あるいは縮小することが容易に行える。もちろん、縦方向、横方向のいずれであっても同様である。これにより、例えば無線通信媒体が付された荷物が非常に大きい場合には、これに合わせてループアンテナ1を拡張し、逆の場合には縮小するなどして、無線通信媒体との通信の確実性を向上させることができる。
あるいは、このようなゲートアンテナ1bを用いる場所の大きさに合わせて、導体伸縮部4での伸張、短縮、折りまげを行うことで、最適なゲートアンテナ1bの大きさ、形状を実現することができる。
図4も同様であり、図4では、ループアンテナ1の外側(二つのループアンテナの対向する領域の外側)に、電磁波漏洩防止板11と磁性体板12を配置したものである(なお、図4では、ループアンテナ1のそれぞれは給電部5から信号電流が給電される給電ループアンテナ6である場合が示されているが、一方の給電部を停止状態にして、図3と同じく、給電ループアンテナ6と無給電ループアンテナ7との組合せとすることができる)。
電磁波漏洩防止板11により、ループアンテナ1から発生する電磁波の遠方への漏洩防止が可能となり、電波法などにより規制される遠方電界などを低減させることが可能となる。
また、磁性体板12の存在により、ループアンテナ1と磁性体板12との間に磁界の閉回路を形成することができて、ループアンテナ1同士の対向領域に磁束密度を集中させて、無線通信媒体への磁界付与の度合いを高めることが可能となる。
図4であっても、同じように導体伸縮部4により、縦方向や横方向へのループアンテナの大きさの拡張や短縮が可能であり、使用態様や、設置場所の状態に合わせた適切なゲートアンテナ1bとすることが可能となる。
これらにより、あらかじめ多数のサイズや形状のループアンテナ1を用意しておく必要がなく、コストメリットも高く、取替え処理の手間も低減でき、使用態様の変化に対するフレキシブルな対応が可能となる。
次に、図5、図6を用いて三次元空間に形成されたループアンテナ1について説明する。
ループアンテナ1は屈曲部3が導体2の任意の箇所に複数存在し、更にこれら複数の屈曲部3がそれぞれ三次元的に屈曲していることで、導体2の外周が作る仮想空間が三次元空間となっている。すなわち、三次元的屈曲により、ループアンテナ1の作る開口部が、三次元空間に渡って存在することになる。
これは、開口部において、ある第一の面23の両端において相互に対抗する第二の面24が存在する形態であり、導体2の部分がそれぞれ相互に直交するX軸、Y軸、Z軸のすべての軸に沿うように存在する形態のループアンテナ1となっている。
また、導体2の任意の点から導体2の他の部分に対して直線を引くことを、導体2の全長に渡って行われることで形成される仮想空間の重心が、この仮想空間内部に存在する形態のループアンテナ1である。
このように三次元空間に渡る仮想空間を形成する導体2からなるループアンテナ1により、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸のすべてに対して磁界を発生させることができる。X軸に沿った導体2の一部はその垂直方向に磁界を発生させ、Y軸に沿った導体2の一部がその垂直方向に磁界を発生させ、Z軸に沿った導体2の一部がその垂直方向に磁界を発生させることで、全方向に磁界が発生するものである。
すなわち、X軸方向の磁界HX、Y軸方向の磁界HY、Z軸方向の磁界HZに沿った磁界がループアンテナ1から発生し、無線通信媒体の位置や向きに係わらず、磁界を及ぼすことができて、確実な通信ができるようになる。
これは図6に示されるループアンテナ1であっても同様であり、その強度や製造上の都
合などで、いずれかの形状が選択されるものである。
また、図5、図6ではいずれも略直方体となる仮想空間を持つループアンテナ1が示されているが、これ以外であっても、略多角形や略楕円球などの仮想空間をもつループアンテナ1であっても良いものである。
ここで、図5、図6にあらわされるループアンテナ1も導体伸縮部4を有していることで、その導体2の長さを伸張、短縮することが自在に可能である。このとき、導体伸縮部4が導体2の複数の部位に存在することで、X軸方向に沿う導体部分、Y軸方向に沿う導体部分、Z軸方向に沿う導体部分のいずれか、あるいはすべてを伸張、短縮することが可能であり、必要や用途に応じて、所望のベクトル方向におけるループアンテナ1の大きさを拡張し、あるいは縮小することができる。
すなわち、用途に応じてある場合には、Z軸方向のみを拡張したループアンテナ1とし、別の場合にはX軸方向のみを拡張したループアンテナ1とすることができるなどである。
ここで、図5、図6に示される三次元空間に形成されるループアンテナ1を、箱状体や棚状体などの構造体に格納する場合に、これらの構造体の大きさや形状に合わせて、ループアンテナ1の大きさ、形状を変更することが容易にできる。このため、あらかじめ多種多様なループアンテナ1を大量に所有する必要がなく、コスト低減が図られるものである。
例えば、三次元形状のループアンテナ1の作る内部空間に存在する無線通信媒体が付された物品が非常に大きければ、導体伸縮部4を伸張させてループアンテナ1を拡張して対応し、逆に、狭い空間で使用しなければならない場合、あるいは非常に小型の構造体に組み込む必要がある場合には、導体伸縮部4を短縮させて、ループアンテナ1を縮小させて対応するなどである。これらは状況に応じて、フレキシブルに対応することができるものである。
次に、図7〜図10を用いて、導体伸縮部4および開口部変更手段の構成について説明する。
この導体伸縮部4および開口部変更手段により、導体2の伸張、短縮、折り曲げが可能となり、ループアンテナ1の形状、大きさの変更が、ユーザーにおいて容易かつ任意にできるものである。
なお、導体伸縮部4により、導体2の伸縮により開口部の面積や体積が変更されることにより、開口部変更が実現される開口部変更手段となるものでもある。
図7には、継ぎ部13が導体伸縮部4として適用される場合が、図8にはスライド部14が導体伸縮部4として適用される場合が、図9には折り畳み部20が導体伸縮部4として適用される場合が、図10には折り曲げ可動部19が導体伸縮部4として適用される場合が示されている。
継ぎ部13は導体2の長さを変更できるように、導体2の任意の部位に設けられた継ぎ部13に継ぎ導体13bをはめ込んで、その長さを伸張することができる。逆に導体2の長さを短縮したい場合には、継ぎ部13に嵌め込まれている継ぎ導体13bを取り外して継ぎ部13同士を接続させればよい。
まず、図7に示される継ぎ部13を用いる場合を説明する。
図7では継ぎ部13の間に一つの継ぎ導体13bが存在する場合が示されているが、継ぎ部13を更に増やして、継ぎ導体13bを別途の箇所に複数取り外し可能として、ループアンテナ1の大きさの変更範囲を更に拡大することも好適である。もちろん、ループアンテナ1の導体2の複数の箇所に継ぎ部13を設けて、上下方向、水平方向などの各方向に沿って、伸張、短縮を可能とし、ループアンテナ1の拡張、縮小範囲を広げることも好適である。図5、図6に示されるような三次元空間に渡って形成されるループアンテナであれば、X軸、Y軸、Z軸方向の全てにおいて拡張、縮小が可能となるように、継ぎ部13を導体2の複数の箇所に形成しておくことで、単一のアンテナのみでさまざまな使用態様に幅広く応用できることになり、好適である。
また、継ぎ導体13bを継ぎ部13に嵌め込んだり、取り外したりするのではなく、釣竿の継ぎ手のように、継ぎ部13に挟まれた継ぎ導体13bが収納され、継ぎ導体13bが継ぎ部13に挟まれてスライドすることで導体2の長さが伸張、短縮するようにすることでも良い。
次に、図8に示されるスライド部14が用いられる場合を説明する。
スライド部14は導体2の任意の箇所に設けられる。導体2の一部をスライドさせてその長さを伸張、短縮して調整し、ループアンテナ1の大きさの拡張、縮小が実現されるものである。
導体2の任意の箇所に設けられたスライド部14は内導体15と外導体16とがスライド穴17により接続されており、スライド穴17には止めねじ18が設けられている。このスライド穴17により、内導体15と外導体16がスライドして伸縮し、止めねじ18により、その止め位置が決定される。これにより、導体2の長さを伸張、あるいは短縮してループアンテナ1の拡張、縮小を実現するものである。
このとき、スライド穴17を大きくとることで、導体2の伸張、短縮の余地を大きくして、ループアンテナ1の拡張範囲を大きくすることも好適である。
もちろん、導体2の複数の箇所に設けることで、上下方向、あるいは水平方向のいずれにも拡張することができ、三次元空間に形成されるループアンテナ1であれば、X軸、Y軸、Z軸のいずれの方向にも拡張、縮小ができるようにすることも可能である。
また、止めねじ18をビスに置き換えてもよく、蝶ねじにしてユーザーによる措置を容易とすることも好適である。
更に、スライド穴17を櫛形形状として、止めねじ18がくし型の凹部に引っかかって任意の位置で止まるようにすることも好適である。これにより、段階的な複数の位置において導体2の長さを微調整することが容易にできるようになり、ユーザーにとってより容易な対応が可能となる。
次に、図9に示される、折り畳み部20が用いられる場合について説明する。
折り畳み部20は回転軸21、22により導体2の一部が挟まれる構造からなり、導体2の任意の箇所に設けられるものである。また、設けられる折り畳み部20は1箇所でも複数箇所でもよく、複数箇所に設けられることで、広い範囲でのループアンテナ1の拡張や縮小が実現されるものである。
折り畳み部20により、導体2の一部を二つの回転軸21、22ではさむことで、折り畳んだ状態(図9の左端に表される状態)から、この二つの回転軸21、22を基点としてはさまれる導体2の一部を回動させて(図9の中央に表される状態)、最後にはさまれる導体2の一部を伸ばしきることで導体2の長さを伸張する(図9の右端の状態)ことができる。
図9の左端にあらわされるように、折り畳まれた状態では導体2の全体長は短く、ループアンテナ1の大きさは縮小されている。これに対して、図9の右端に表される様に、伸ばされた状態では導体2の全体長が長くなり、ループアンテナ1の大きさが拡張されている。もちろん、折り畳み部20における、回転軸21、22によりはさまれる導体2の一部の長さを変えることで、導体の変化する量を増減させることもでき、また、多数の折り畳み部20を設けて、これらの一部のみを伸張する、あるいは全部を伸張するなどを切り替えることで、ループアンテナ1の大きさの拡張の度合いを変化させるのも好適である。
もちろん、図5、図6などに表されるように三次元空間に仮想空間が形成されるループアンテナ1であれば、X軸方向のみを伸縮する、あるいはY軸方向のみを伸縮する、あるいはZ軸方向のみを伸縮する、あるいはこれらの複数もしくは全部を伸縮するということを切り替えることで、三次元空間において、必要なベクトル方向のみのループアンテナ1の拡張などを実現することが可能となり、よりフレキシビリティの高い大きさや形状の可能なループアンテナが実現される。
次に、図10、図11に表されている折り曲げ可動部19が用いられる場合について説明する。
折り曲げ可動部19は導体2の任意の箇所に設けられた、屈曲可能とする折り曲げ可動部である。関節部材などにより実現される。折り曲げ可動部19により開口部の形状が容易に変化させられるものである。例えば二次元平面に存在する開口部を三次元空間に変化させたり、四角形状の開口部を三角形状の開口部に変化させたりなどである。
折り曲げ可動部19により、導体2の任意の箇所を屈曲させることができるため、例えば図1などに表される二次元平面である開口面をもつ平面状のループアンテナ1を図11に示されるように三次元的な形状と変更することが可能である。
このようにすることで、無線通信媒体の向きによってはループアンテナ1からの磁界付与が困難である場合にも、磁界発生のベクトル方向を変えることができるため、磁界付与を可能とし、無線通信媒体との通信が可能となる。
例えば、図3に示されるようなゲートアンテナ1bなどでは、これの間を通過する荷物において、ループアンテナ1同士のほぼ中央に位置する部分に無線通信媒体が付加されている場合には、磁界のヌル点となるため、通信が困難となる場合がある。このような場合に、折り曲げ可動部19を用いて導体2の一部を屈曲させることで、磁界発生のベクトルを変化させて、無線通信媒体との通信を可能とすることができるようになる。
また、完全に折り曲げることで、導体2を半分の長さにすることなども好適である。
また、折り曲げ可動部19は導体2の任意の箇所の複数に設けることで、垂直方向、水平方向などさまざまな方向に折り曲げることで、よりフレキシビリティの高いループアンテナ1の形状変化を容易に実現することができる。
このような無線通信媒体との通信を行う動作の構成要素の一つであるループアンテナ1に関して、以上に説明したとおり、その大きさ、形状が任意に変化されるものである。
以上のように、ループアンテナ1の導体2の任意の箇所に、導体伸縮部4を設けることで、導体の長さを伸張、短縮し、結果としてループアンテナ1の大きさを拡張、縮小したり、あるいは折り曲げにより形状を変化させたりすることで、通信対象となる無線通信媒体が付された物品の大きさや形状の変化に、単一のループアンテナで容易に対応することができるメリットがある。また、使用される使用態様の変化にも応じることができ、ループアンテナ1を組み込む構造体や場所の大きさや広さ、形状の都合に合わせて対応することも可能となる。これらにより、あらかじめ種々の大きさや形状を有するループアンテナ1を用意することなく、使用態様や使用場所の状況に応じて無線通信媒体との通信を行うループアンテナ1を最適な大きさ、形状とできることで、コストの削減、手間の削減、処理手順の削減を可能とすることができる。
(実施の形態2)
図12、図13、図14、図15、図16、図17は本発明の実施の形態2における無線通信媒体処理装置の構成図である。
29、31は無線通信媒体処理装置、30は読み書き部、32は構造体、33は内部空間、34は開口部、35は間隔、36はシールド、37は内板、38は外板、39はスライド穴、40は止めねじ、41は構造体伸縮部、42は通信部、43は無線ユニット、44はホスト、45は通信路である。
まず、図12を用いて単一のループアンテナ1が用いられた無線通信媒体処理装置29について説明する。
読み書き部30はループアンテナ1と接続されている。
ここで、読み書き部30は、ループアンテナ1に必要な信号電流を与えて、ループアンテナ1から信号電流の変化に応じた磁界を発生させ、無線通信媒体に対して必要な電力とデータを与える。更に、無線通信媒体から発生する磁界を受けてループアンテナ1に発生する誘導電流が受信され、これが受信信号として周波数復調、振幅復調、位相復調などの手段で復調され、デジタルデータが取り出される。この取り出されたデジタルデータから、無線通信媒体の有するIDコードなどが認識される。また、読み書き部30においては、必要に応じて、誤り検出や誤り訂正などがなされ、巡回符号検査、パリティ検査、ビタビ複合などが用いられる。
図12に示される無線通信媒体処理装置29では、図12に表されるように、導体2に設けられた導体伸縮部4によりループアンテナ1の大きさが拡張、もしくは縮小されることが可能である。これは実施の形態1で説明されたとおりである。
このようにループアンテナ1の大きさが任意に変化できることで、より大きな荷物に付された無線通信媒体との通信を行う場合にはループアンテナ1を拡張し、逆の場合には縮小するなどのフレキシブルな対応が可能である。
また、無線通信媒体処理装置29を設置する場所の大きさや形状などに対応して、ループアンテナ1の大きさ、形状を変化させることで、確実な無線通信媒体との通信を実現し、あるいは、あらかじめ種々の多数のループアンテナを用意することなく、使用態様や設置場所の変更にフレキシブルに対応する無線通信媒体処理装置29を実現することができる。
次に、図13を用いてゲートアンテナ1bを用いた無線通信媒体処理装置29について説明する。
二つのループアンテナ1(図13においては、一方は信号電流が給電される給電ループアンテナ6であり、他方は信号電流が非給電の無給電ループアンテナ7である)が対向したゲートアンテナ1bに読み書き部30が接続されている。
読み書き部30は上記で説明したとおり、給電ループアンテナ6に対して信号電流を給電し、無給電ループアンテナ7にも磁界を与えて双方から磁界が発生して無線通信媒体に対して磁界を付与して、通信を可能とする。
この場合であっても、導体伸縮部4によりループアンテナ1の大きさや形状を変化させることができるので、例えば、空港や商店のゲートに設置する場合に、そのゲートの場所、大きさ、位置などに応じてフレキシブルに対応することが可能となり、余分なループアンテナを用意する必要がなく、コストや手間の低減が図られるものである。
なお、図13では二つのループアンテナ1を対向させたゲートアンテナ1bが表されているが、3以上のループアンテナが用いられても良いものである。
ループアンテナ1を拡大して、ゲートアンテナ1bの対向領域を拡大した場合には、大きな荷物が通過する場合に好適であり、逆の場合には小さな荷物が通過する場合に好適である。
また、図11に示されたように、折り曲げ可動部19により、ループアンテナ1を屈曲させて磁界の発生ベクトルをさまざまにすることで、ゲートアンテナ1bの間に存在する無線通信媒体の位置や向きに依存せず通信を可能とすることも好適である。
なお、このようなゲートアンテナ1bを用いた無線通信媒体処理装置29は、例えば、空港ゲートの荷物チェックや、倉庫の検品、商店入り口の万引き防止、コンサート会場などの入場制限確認などに好適に応用されるものである。
次に図14、図15、図16を用いて、内部空間33と外部空間をつなぐ開口部を有する構造体にループアンテナ1を組み込んだ無線通信媒体処理装置31について説明する。
構造体32は、例えば棚や箱などの箱状体、棚状体などであり、商品棚や商品かごなどに適用されるものである。構造体32は内部空間33と外部空間を結ぶ開口部34を有しており、この開口部34から内部空間33へ無線通信媒体の付された商品などの納入、取り出しが行われる。なお、開口部34には開閉可能なドア、窓、カーテン、仕切りなどがつけられていても良いものである。
構造体32は、樹脂、木材、FRP、その他の材料により形成され、軽量化や強度などのバランスの基で、その材料が選択される。また、図14では直方体の構造体32が表されているが、これ以外に立方体や楕円球、球、多角形体などであってもよい。
ループアンテナ1は構造体32の内部に格納されており、構造体32を形成する壁材と一体に形成されてもよく、後から付けられてもよく、内部に埋め込まれても良い。また、読み書き部30は構造体32に埋め込まれてもよく、外部、もしくは内部に配置されてもよく、あるいは接続線により、外部に接続されても良いものである。
また、図15に示されるように、構造体32の外周はシールド36で覆われていてもよく、この場合には、構造体32の外部へループアンテナ1の発生する磁界が漏洩しないものである。このように外部への磁界漏洩が防止されることで、同様の構造体32を用いた無線通信媒体処理装置31を複数重ねたり、並べた場合であっても、他の構造体32の内部空間33に存在する無線通信媒体を誤認識するなどの問題が発生しないメリットがある。これにより、図17に示されるように、多数の構造体32を並べた、無線通信媒体処理装置が積層された、商品管理システムなどが容易に形成されるものである。
なお、シールド36は、金属性の素材などで形成され、例えば構造体32をすっぽりと格納する金属ケースなどにより容易に実現される。あるいは、構造体32の外周面に、金属膜を形成し、金属ペーストの塗布を行うなどにより実現される。
なお、金属ケースを用いる場合には、構造体32の形状、大きさの変化に連動する伸縮可動部を有していることが好ましい。
また、ループアンテナ1とシールド36との間には任意の間隔35が存在することが好ましい。これは、金属材料からなるシールド36へループアンテナ1から発生する磁界が伝達されて、内部空間33に及ぼす磁界密度が低下することを防止するためである。なお、間隔35に代えて磁性体板などをシールド36とループアンテナ1との間に配置することも好適である。
なお、ループアンテナ1は、実施の形態1で説明したように、導体伸縮部4を任意の箇所に有しており、これによりループアンテナ1の大きさ、形状を変化させることが可能である。
ここで、このループアンテナ1の大きさなどの変化に対応するように、構造体32についてもその大きさを変化させる構成について図16を用いて説明する。
構造体32には、任意の箇所において構造体伸縮部41が設けられている。構造体伸縮部41は、構造体32の大きさを任意に変化させることができる部位であり、これを活用して、使用態様などに応じて、構造体32を拡大したり、縮小したりすることが可能となる。
特に、ループアンテナ1を拡張する場合には、これに合わせてループアンテナ1を格納する構造体32も拡張する必要があり、縮小の場合にもこれに合わせて縮小することが好ましい。もちろん、構造体32の内部空間33にループアンテナ1が収まればよいのであるから、構造体32の内部空間33に比べてループアンテナ1の大きさが小さい場合には、構造体32の大きさを変化させる必要は無いが、連動して変化させることで、ユーザーの手間を省き、内部空間33の使用可能領域を十分に確保することが可能となる。
構造体伸縮部41はスライド式などのものが用いられる。
内板37と外板38をスライド穴39により可動可能に接続して、止めねじ40により、任意の位置で固定することで構造体32の拡張、縮小を実現することができる。
また、止めねじ40ではなく、止めビスや蝶ねじ、プッシュボタンなどを使うことでもよく、櫛形形状のスライド穴39の凹部を止めねじ40で固定することで、数段階での微調整を可能とすることも好適である。
なお、スライド穴39を用いるもの以外でも、構造体32を形成する壁材の継ぎ足し、
壁材の折り畳み、引き出し、折り曲げなどの構造により構造体伸縮部41を構成することも公的であり、用途や素材に応じて適宜選択されれば良いものである。
なお、これらの構造体伸縮部41は構造体32の複数の箇所に設けることで、構造体32の縦方向、横方向、幅方向など複数の方向における拡張、縮小を実現することもできる。
また、構造体伸縮部41をループアンテナ1の導体伸縮部4と同じ位置に設けて、双方を連動して伸張、短縮できる構成とすることで、ユーザーが一つの動作で、構造体32とループアンテナ1とを連動してその大きさ、形状を変化させることが可能となる。
このように、構造体32にループアンテナ1や読み書き部30を接続、もしくは組み込みした無線通信媒体処理装置31において、ループアンテナ1と構造体32の大きさ、形状を、変化させることが可能となる。これは、例えば、構造体32内部に置かれる無線通信媒体が付された商品の大きさや量、形状に合わせて対応することができ、あるいはこのような無線通信媒体処理装置31が設置される場所の状況に対応することもでき、種々のサイズの無線通信媒体処理装置31をあらかじめ用意することなく、フレキシブルに状況対応ができるものである。
また、実施の形態1の図5、図6で説明したように、ループアンテナ1のみが形状、大きさが可変のものであっても、格納する構造体32がさまざまである場合にも、それぞれに対応することが容易にでき、やはり、コストを低減させて、ユーザーフレンドリーな対応が可能なものである。
次に、ループアンテナ1の無線通信媒体との通信動作について説明する。
読み書き部30から必要な信号電流がループアンテナ1へ供給される。供給された信号電流により導体2から磁界が発生する。このとき、ループアンテナ1の形状に従って、X軸、Y軸、Z軸のいずれか、あるいはそれぞれのベクトルに沿った、あるいはこれらの合成ベクトル方向に対して磁界が発生している。
ここで、ループアンテナ1により囲まれる空間やその周辺にICタグやICカードなどの無線通信媒体が存在する場合には、この導体2から発生する磁界を受けて、無線通信媒体に組み込まれている内部アンテナに誘導起電力が生じる。これにより無線通信媒体に組み込まれているICに電力と信号データが供給される。電力が供給された無線通信媒体などでは搭載メモリからのデータに応じてスイッチと負荷回路からなる変調回路において負荷変動が発生し、この負荷変動が相互インダクタンスによりループアンテナ1へ伝達される。ループアンテナ1ではこの負荷変動を信号として受信して、受信信号として読み書き部に伝達される。読み書き部30においてはこの信号を復調し、必要に応じて誤り検出なども行って信号を解析する。解析の結果、無線通信媒体が有しているIDコードなどを認証することが可能となる。
このとき、単一のループアンテナ1からなる無線通信媒体処理装置29では、そのループアンテナの近傍に存在する無線通信媒体との通信からIDコードの取得などが行われる。あるいは二つ以上のループアンテナ1からなるゲートアンテナ1bが用いられた無線通信媒体処理装置29においては、空港ゲート、商店ゲートなどを通過する荷物や人間に付された無線通信媒体との通信が可能となり、商品のID認証や入場者のID認証などが容易に行われる。
更に、構造体32にループアンテナ1が組み込まれた無線通信媒体処理装置31では、
商品棚や商品かごとして利用して、内部空間33に存在する無線通信媒体との通信により、自動で商品管理や自動棚卸、出納管理ができるようになるものである。構造体32にループアンテナ1が組み込まれた無線通信媒体処理装置31においては、ループアンテナ1が相互に直交するX軸、Y軸、Z軸のいずれの方向にも磁界を及ぼすため、無線通信媒体の位置や向きに係わらず通信が可能となるため、自動管理が更に確実なものとなる。
更に、これら無線通信媒体処理装置29、31はループアンテナ1や構造体32の大きさや形状が可変であり、ユーザーにおいて容易に変更できるため、対象とする物品の大きさや形状、使用態様、設置場所などの変化や都合に応じて、フレキシブルに対応することができるメリットがある。しかも、単一の装置でできるため、ユーザーにおいてあらかじめ余分に無線通信媒体処理装置やループアンテナ1を用意する必要がないため、低コストであり、手間を削減できるメリットも高いものである。
また、図17に示されるように、読み書き部30に通信部42を接続し、これとホスト44を、無線ユニット43などを介した無線通信、あるいは有線通信により、多数の無線通信媒体処理装置29,31を分散方式、集中方式で管理するシステムを構成することも可能となる。この場合には、商品の自動管理などを、多種多様な商品に分別するなどして集中処理することが可能となり、非常に効果的なものである。
あるいはゲートアンテナ1bを用いた無線通信媒体処理装置29の読み書き部30のそれぞれに通信部を設けて、多数のゲートに対して集中命令処理を行い、あるいは同時並列に多数の情報を収集して処理することが可能となり、大型店舗などでは非常に有用なものとすることができる。
更に、このように多数の無線通信媒体処理装置29、31を用いたシステムを構成する場合には、設置場所や、処理する物品の種類もさまざまになり、それぞれのループアンテナ1あるいは構造体32の大きさ、形状が、ユーザー側で事後的に任意に変更できることが好ましく、この点でも、本発明の優位性が高いものである。
以上のように、ループアンテナ1や構造体32に導体伸縮部4、構造体伸縮部41を設けた無線通信媒体処理装置により、低コストで状況変化にフレキシブルに対応することが可能となるメリットがあるものである。