JP4387221B2 - 皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、天然皮革調のオイル感を有しながら、油状物質の移行が極めて少ない皮革様シートに関するものである。
従来、人工皮革に天然皮革のもつ柔らかくかつ充実感のある風合いを再現する為に、従来から人工皮革に対し各種添加剤による処理が行われている。しかしながら未だ天然皮革に近い物は得られていない。例えば、人工皮革を天然皮革並みに柔軟にするために従来からある柔軟剤を用いて柔軟化をはかる方法は公知である。すなわち柔軟剤としてシリコンエマルジョン処理、ワックス処理等を付加して天然皮革に近い風合いを求めることが行われているが天然皮革の持つ柔らかさと充実感のある風合いは充分に出すことが出来なかった。また、本発明者らは、本発明同様油状物質及びその保持体を表面に立毛を有する皮革様シート表面に付与する方法を提案している(特許文献1参照)。しかしこの方法は、立毛面のタッチ・オイル感の改良を行ったものであって、基本的には表面の立毛部分に油状物質及び保持体からなる組成物を付着させる技術であり、本発明のような皮革様シート全体の柔らかさ、充実感は得られない。つまりこれら従来の方法では、表面のタッチは改良されるものの、柔らかさと充実感を兼ね備えた天然皮革本来の風合いを再現するまでには至っていない。
一方、天然皮革で処理している加脂剤、例えば魚油、植物油を用いて柔軟処理すると風合いは天然皮革に近い物が得られるが、油脂や油の表面への移行が顕著に見られる。また、衣料等に縫製し着用した後に洗剤等で水洗すると、加脂剤が脱落することでパサツキ感が生じ、以前の風合いを持続させることはできない。従って油脂や油等の油状物質の移行が無く、かつ柔軟性と充実感に優れた天然皮革に近い風合いの物は未だ得られていない。
そこで、本発明者らは、かかる問題を解決するため、皮革様シートの少なくとも内部に30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質とその保持体からなるゲル状物質が存在していることを特徴とする皮革様シートを提案している(特許文献2参照)。ここで得られる皮革様シートは、油状物質の移行が少なく水洗によってもオイル感が保持されるという特徴を有していた。しかし、市場からの要望に応え更なるオイル感を得るためにゲル状物質の充填量を増加させていくと、皮革様シート内部に充填されたゲル状物質が繊維質基材内部の構成成分を膠着させ風合いの硬化を引き起こしてしまうという問題点があった。
特開2001-131880号公報(第2頁、第2欄、第5行−第26行) 特願2003−138463号公報
本発明は、天然皮革の持つ柔軟で充実感のある風合いとオイル感を有する皮革様シートに関して、油状物質の移行が極めて少ないままで風合い硬化を招くことなくオイル感を制御可能な皮革様シートを提供することを課題とする。
上記課題を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ね、以下に示す皮革様シートを見出した。すなわち本発明は、極細繊維束からなる絡合不織布、該絡合不織布と他の繊維からなる絡合不織布もしくは編織布とが複合されたもの、またはそれらに高分子弾性体が含浸されたものから選ばれる繊維質基材において、少なくとも該極細繊維束内部の繊維間にゲル状物質が存在し、極細繊維束が隣接する他の繊維質基材構成成分と該ゲル状物質によって実質的に膠着していないことを特徴とする皮革様シートである。そして、ゲル状物質が、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質とその保持体からなることが好ましい。また、極細繊維束が、単繊維繊維径0.1〜5μmの極細繊維が10本以上集束したものであることが好ましく、絡合不織布内部の極細繊維束同士が形成する空間もしくは極細繊維束表面に沿って高分子弾性体が含有されていることが好ましい。
また、本発明は、以下の(1)から(4)の工程を順次行うことを特徴とする皮革様シートの製造方法である。
(5)極細繊維束発生型繊維からなるウェブを作製する工程
(6)ウェブを積層してニードルパンチを行い絡合不織布とする工程
(7)極細繊維束発生型繊維から極細繊維束を発生させる工程
(8)下式(1)を満足するゲル状物質の分散液をゲル状物質の固形分質量が極細繊維
質量に対して3〜20質量%となるよう含有させた後、分散媒を除去する工程
d > r 式(1)
但し、d:極細繊維束を構成する単繊維の平均単繊維径(μm)
r:ゲル状物質の粒子径(μm)
そして、含有させるゲル状物質が、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質とその保持体からなる皮革様シートの製造方法が好ましく、極細繊維束発生型繊維が、単繊維繊維径0.1〜5μmの極細繊維束を発生させうる皮革様シートの製造方法であることが好ましい。さらに、絡合不織布に高分子弾性体の溶液または分散液を含浸して凝固させる工程を含む皮革様シートの製造方法であることが好ましい。
本発明の皮革様シートは、天然皮革と同等の柔らかな風合い、オイル調のタッチ感を兼ね備えたものであるだけでなく、油状物質の移行が極めて少ないままで風合い硬化を招くことなくオイル感を制御可能であり、靴、衣料、グローブ等あらゆる人工皮革に適したものであり、特に肌への触感、フィット感に優れる点からスポーツ用手袋への応用に有用である。
本発明で使用する繊維質基材は、極細繊維束からなる絡合不織布を構成成分として含むものであれば、公知の繊維質基材が使用でき、発明の効果発現の程度は異なるものの前記構成成分以外は特に限定されるものではない。例えば他の繊維からなる絡合不織布、あるいは編織布と複合された繊維質基材、またはそれらに繊維質基材の一構成成分として高分子弾性体を含浸したもの等が、本発明で使用することのできる公知の繊維質基材として例示することができる。以下、繊維質基材の構成成分とは、極細繊維束からなる絡合不織布、あるいはこの絡合不織布を構成する個々の極細繊維束のことであり、他の繊維からなる絡合不織布、あるいは織編物と複合された繊維質基材にあってはそれら絡合不織布あるいは織編物をも指し、さらにそれらに高分子弾性体が含浸されたものにあってはその含浸された高分子弾性体のことをも指す。
極細繊維束としては、単繊維繊維径0.1〜5μmの極細繊維が集束したものが、発明の効果がより得られやすい点で好ましい。また、少なくとも極細繊維束からなる絡合不織布に高分子弾性体が含浸することにより、絡合不織布内部の極細繊維束同士が形成する空間もしくは極細繊維束表面に沿って高分子弾性体が含有された繊維質基材を用いることが、風合いとして一般的に好まれやすいような天然皮革調の柔軟性を有する点で好ましい。極細繊維の単繊維繊維径が5μmを越えて太くなると、スエード調繊維質基材とした場合、立毛面の触感がざらざらとした感じとなり、外観が低下する。また極細繊維の単繊維繊維径が0.1μm未満では、繊維の破断強力が低下し、繊維質基材の剥離強力や破断強力が低下し、さらに充分な発色性が得られない傾向があるとともに、単繊維間空隙が小さくなり油状物質と保持体からなるゲル状物質の微粒子を充填することが困難となるため好ましくない。
極細繊維束の製造方法としては、溶融状態で相溶性を有しておらず、溶解性または分解性の異なる2種類以上のポリマーを使用して混合紡糸法、海島型複合紡糸法等により海島構造繊維を製造する方法、複合紡糸法により分割型複合繊維を製造する方法等により極細繊維束発生型繊維を得たのち、その一部(例えば海成分)を抽出除去または分解除去して極細繊維束とする方法、あるいは分割型複合繊維の異種ポリマー同士の界面を剥離させて極細繊維束とする方法等が代表例として挙げられる。これらの方法以外に、溶融紡糸ノズルから繊維形成性ポリマーを吐出した直後に高速気体で吹き飛ばし繊維を細くする、いわゆるメルトブロー法などの方法を用いることもできる。しかしながら、繊維太さの管理や極細繊維束の品質安定性から、上記極細繊維束発生型繊維を経由する方法が好ましい。
極細繊維束の一つの束に存在する極細繊維の数は、10〜5000本の範囲が好ましく、15〜1000本の範囲であることが特に好ましい。繊維束中の単繊維が5000本を越える場合には、結果として単繊維繊度の低下が必須であることより油状物質とその保持体からなるゲル状物質を繊維束内部に充填することが困難となる上に、安定して極細繊維束発生型繊維を得ることが困難となるため好ましくない。また、繊維束中の単繊維が10本未満の場合には、繊維束内部に充分な空隙が確保し難いため油状物質とその保持体からなるゲル状物質を繊維束内部に充填することが困難となりやすい。
本発明の極細繊維束を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートあるいはポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、さらにこれらを主体とする共重合ポリエステル等の芳香族ポリエステル類や、ナイロン−6,ナイロン−66,ナイロン−610等のポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類などが挙げられ、繊維質基材の構成成分としてこれらを併用させても構わない。なかでも、上記芳香族ポリエステル類やポリアミド類を主体とすると、天然皮革調の人工皮革が得られること、さらに染色性も優れていることから好ましい。またこれらの樹脂には、紡糸の際の安定性を損なわない範囲でカーボンブラックで代表される顔料、染料等の着色剤や紫外線防止剤等で代表される公知の安定剤等が添加されていてもよい。
また極細繊維束発生型繊維を構成する抽出除去または分解除去される樹脂成分の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン−エチレン共重合体、および共重合ポリエステル等のポリマーから選ばれた少なくとも1種のポリマーが挙げられる。なかでも、ポリエチレンやポリスチレンまたはこれらを主体とする共重合体等が抽出の容易さの点で好ましい。
次に上記極細繊維束からなる絡合不織布、または該絡合不織布と他の繊維からなる不織布や織編物と複合したもの、あるいはそれらの内部に弾性重合体が含浸された繊維質基材は、公知の種々の方法を組み合わせることにより製造可能であるが、極細繊維束発生型繊維からなる絡合不織布を製造する工程、および極細繊維束発生型繊維を極細繊維束に変性する工程を少なくとも含み、必要に応じて極細繊維束への変性の前または後でその絡合不織布に弾性重合体溶液を含浸し凝固する工程を行うことにより得ることができる。
極細繊維束発生型繊維を用いて絡合不織布を製造する方法としては、まず極細繊維束発生型繊維を従来公知の方法により、紡糸、延伸、熱固定、捲縮、カット等の処理を行って同繊維のステープルを作製し、次いでかかるステープルをカードで解繊し、ウェバーでランダムウェブまたはクロスラップウェブを形成し、得られたウェブを必要に応じて複数枚積層し、また、必要に応じて他の繊維からなる不織布や織編物とも種々の組み合わせで積層して、所望の重さにする。この際の重さは目的とする最終的な用途分野に応じて適宜選択され、一般的に100〜3000g/mの範囲が好ましい。また低コスト化などの目的で、必要とする質量の約2倍の絡合不織布に弾性重合体溶液を含浸・凝固させた後にバンドナイフなどにより厚さ方向に分割することにより、効率よく1度に2枚の繊維質基材を製造することもできる。
ウェブの積層に次いで、公知の方法、たとえばニードルパンチング法や高圧水流噴射法等を用いて絡合処理を施して絡合不織布を形成する。ニードルパンチング法の場合には、使用針の形状やウェブの厚みにより異なるが、一般的には200〜2500パンチ/cmの範囲の条件で設定するのがよい。
絡合不織布には、弾性重合体の含浸処理に先立って、必要に応じて熱プレスなどの公知の方法により表面の平滑化処理を行うこともできる。絡合不織布を構成する繊維が、たとえばポリエチレンを海成分とし、ポリエステルやポリアミドを島成分とする海島構造繊維である場合には、熱プレスにより海成分のポリエチレンを融着させ、繊維同士を接着固定することによりきわめて表面平滑性に優れた絡合不織布とすることが出来る。また絡合不織布を構成する繊維が一成分を溶解除去して極細繊維束に変性することのできる海島構造繊維でない場合には、含浸させる弾性重合体が繊維に固着して風合いが硬くなることを防止するために、弾性重合体の含浸処理に先立ってポリビニルアルコールなどの仮充填物質で繊維表面を覆っておき、弾性重合体を付与した後に仮充填物質を除去することが好ましい。また1成分を溶解除去又は分解除去することにより極細繊維束とすることができる海島構造繊維の場合にも、絡合不織布の段階で上記仮充填物質を付与して多成分繊維の表面を覆い弾性重合体を付与した後に仮充填物質を除去することにより、より一層柔軟なシートとすることができる。そしてこのように海島構造繊維等で代表される極細繊維束発生型繊維から極細繊維束を発生させることが好ましい。すなわち、繊維質基材を構成する繊維が極細繊維束であることが、本発明の油状物質とその保持体からなるゲル状物質が選択的に極細繊維束の内部に含有されやすく、より天然皮革調の柔軟な風合いと充実感に優れたものとなる。
次に絡合不織布に含浸させる樹脂としては、天然ゴム、スチレンーブタジエン共重合体、アクリロニトリルーブタジエン共重合体、ポリウレタンエラストマー、その他の合成ゴム或いはこれらの混合物等公知の弾性重合体を用いることが可能である。中でも風合いが優れる点からポリウレタン樹脂を主体としたものが好ましく用いられる。好ましいポリウレタン樹脂としては、ソフトセグメントとして、ジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを反応させて得られるポリエステル系ジオール、ポリラクトン系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオール、およびポリエーテルエステル系ジオール等からなる群から選ばれた数平均分子量が500〜5000の少なくとも1種類のポリマージオールを使用し、これとジイソシアネート化合物と低分子鎖伸長剤とを反応させて得られる、いわゆるセグメント化ポリウレタンが挙げられる。
ソフトセグメントを構成する上記ポリマージオールの合成に用いられるジオール化合物としては、耐久性あるいは皮革様の風合いの点で炭素数6以上10以下の脂肪族化合物が好ましく、たとえば、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。またジカルボン酸の代表例としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
ポリマージオールの数平均分子量が500未満の場合には、柔軟性に欠け、天然皮革様の風合いが得られないため好ましくない。またポリマージオールの数平均分子量が5000を越える場合には、ウレタン基濃度が減少するため柔軟性及び耐久性、耐熱性、耐加水分解性においてバランスのとれた皮革様シートが得られにくい。ジイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香族、脂肪族、脂環族系のジイソシアネート化合物が挙げられる。
また低分子鎖伸長剤としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、N−メチルジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどの分子量が300以下の活性水素原子を2個有する低分子化合物が挙げられる。
ポリウレタンの合成方法としては、ワンショット法であっても、プレポリマー法であってもよい。
また必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲でポリウレタンには、凝固調節剤、安定剤などを添加してもよく、更に他のポリマーを併用しても構わない。さらに、カーボンブラックや染料などの着色剤を添加してもよい。
絡合不織布にポリウレタンを含有させる方法については特に限定されないが、風合いのバランスの点から絡合不織布にジメチルホルムアミド等で代表されるポリウレタンの良溶媒で希釈するポリウレタン溶液、あるいはポリウレタンの水分散液を直接含浸させ、必要によりマングルで絞る方法や、ポリウレタン溶液、あるいはポリウレタンの水分散液をコーターでコーティングしながらしみ込ませる方法などが好ましい。含浸させたポリウレタン液を湿式凝固又は乾式凝固させることによりポリウレタンを絡合不織布に含有させるが、特に天然皮革様の風合いや触感が得られることから湿式凝固法が好ましい。そして、天然皮革様の柔軟な風合いの点から、繊維質基材を構成する繊維とポリウレタンとの質量比率は、30/70〜90/10の範囲が好ましく、更に好ましくは35/65〜80/20の範囲内である。この範囲より繊維の比率が低くなりすぎると、皮革様シートがゴムライクな風合いとなり、繊維の比率が高くなりすぎるとペーパーライクな風合いになるため、目標とする天然皮革様の風合いが得られない。
海島構造繊維を用いた場合には、絡合不織布にポリウレタンを含浸した後に、ポリウレタン及び極細繊維束発生型繊維の島成分に対しては、非溶剤でかつ極細繊維束発生型繊維の海成分に対しては溶剤または分解剤として働く液体で処理することにより極細繊維束発生型繊維を極細繊維束に変成し、極細繊維束絡合不織布とポリウレタンからなる繊維質基材とする。もちろん、ポリウレタンを含浸するに先立って、極細繊維束発生型繊維を極細繊維束に変成する方法を用いて繊維質基材とすることもできる。また剥離性の分割型複合繊維を用いた場合には、剥離を促進する液で処理することにより繊維構成ポリマーの界面で剥離させ、極細繊維束とする方法も可能である。
そして、得られた繊維質基材は、そのままの状態で使用することも可能であるし、少なくとも片面が起毛されたスエード調繊維質基材や高分子弾性体で造面された銀付調繊維質基材等の公知の仕上げ技術で表面加工を施して使用することも可能である。得られた極細繊維の絡合不織布とポリウレタンからなる繊維質基材の起毛は、サンドペーパーや針布によるバフ、整毛等で代表される公知の方法により行うことができる。起毛する毛羽長は、油状物質と保持体殻なるゲル状物質を充填させた後の外観に影響するため、バフや整毛の条件、例えばバフに用いるサンドペーパーの番手や研削速度や押し当てる圧力等を選択することにより毛羽長を調整する。立毛はシートの片面の全面に存在していても、あるいは両面とも全面に存在していても、あるいは片面あるいは両面の一部にスポット状に存在していてもよい。
また、得られた繊維質基材は所望の色に染色して用いることも可能である。染色方法は編織布または不織布を染める公知の染色方法が使用でき、特に限定されるものではない。また使用染料は公知の染料を用いれば良く、一例として繊維質基材の立毛部の樹脂がポリエステルであれば分散染料、ポリアミドであれば酸性染料、硫化染料、建染染料、アクリルであればカチオン染料等を用いれば良い。また染色機はサーキュラー、ウインス、ダッシュライン、ワッシャー染色機、タイコ染色機、連続染色機等の公知の染色機が用いることができ、特に限定されるものではない。
次に本発明に用いられるゲル状物質の例としては、寒天等の天然ゲル状物質、シリコーンゲルなどの合成ゲル状物質など種々の公知のゲル状物質が挙げられるが、皮革様シートのオイル感および風合いの制御が容易に達成できることより、油状物質と保持体からなるゲル状物質が特に好適である。この油状物質と保持体からなるゲル状物質について説明する。まず、保持体とは、常温においてエラストマーの性質を示す高分子物質、いわゆる厚さ0.5mmのシートにした場合に常温で伸び100%以上で、外力を与えると容易に変形するが、除くと直ちにほぼ原形に回復する高分子物質である。さらに、該高分子物質の粉末をそれと組み合わせて用いる油状物質中に浸漬して24時間常温で放置した後に自然濾過した後の該粉末の質量増加が油状物質を吸収して200%以上となるものである。なかでも、ビニル芳香族エラストマーが油状物質の保持性の点で好ましく用いられる。
次に本発明を保持体の好適例であるビニル芳香族系エラストマーについて説明する。ビニル芳香族系エラストマーとはビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックAおよび0℃以下のガラス転移点を持つ重合体ブロックBを有するブロック共重合体である。
ブロック共重合体における重合体ブロックAと重合体ブロックBの数に関しては特に制限はない。ここで重合体ブロックAを単にA、重合体ブロックBを単にBと表示すると、好適なブロック共重合体の構造は、A−B、(A−B)n 、(A−B)n −A、(B−A)n−B(但し、これら構造式においてnは1〜10の整数を表す)、(A−B)m X(Xはm価のカップリング剤の残基を表し、mは2〜15の整数を表す)等の構造式で示すことができる。なかでもA−B−Aで表されるトリブロック共重合体が油状物質の保持性の点で特に好ましい。ブロック共重合体においては、ビニル芳香族化合物の含有率は5〜75質量%であることが油状物質の保持性の点で好ましく、10〜65質量%であることがより好ましい。
ブロック共重合体における重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、若しくはp−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンまたはα−メチルスチレンが柔軟性の点で好ましい。ビニル芳香族化合物は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、ブロック共重合体における重合体ブロックBを構成する重合体は0℃以下のガラス転移点を持つ物であれば特に限定は無いが、柔軟性の面から共役ジエンの重合物もしくはその水添物が特に好ましい。かかる共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、イソプレン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物が柔軟性および油状物質の表面への移行を防止する点で好ましい。共役ジエンは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、一般にSBS(スチレン重合体ブロック−ブタジエン重合体ブロック−スチレン重合体ブロックからなるトリブロック共重合体)、SEBS(スチレン重合体ブロック−エチレン・ブタジエン共重合体ブロック−スチレン重合体ブロックからなるトリブロック共重合体)、SEPS(スチレン重合体ブロック−エチレン・プロピレンン共重合体ブロック−スチレン重合体ブロックからなるトリブロック共重合体)、SIS(スチレン重合体ブロック−イソプレン重合体ブロック−スチレン重合体ブロックからなるトリブロック共重合体)、SEEPS(スチレン重合体ブロック−エチレン・エチレン・プロピレン共重合体ブロック−スチレン重合体ブロックからなるトリブロック共重合体)等の樹脂が油状物質の保持力および皮革様シートの風合いの点で好適なブロック共重合体として用いることができる。
ブロック共重合体の数平均分子量は特に限定されるものではないが、好ましくは5万〜50万であり、より好ましくは10万〜40万である。5万未満の場合には油状物質の保持性が低下し、また50万を越えると柔軟性が低下する。
このようなブロック共重合体は既に公知であるが、その製造方法としては、例えば、次のような公知のアニオン重合法を用いることができる。すなわち、アルキルリチウム化合物等を開始剤としてn−ヘキサン、シクロヘキサン等の不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物および共役ジエンを重合させてブロック共重合体を形成する。この際、所望により、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロルシラン等のカップリング剤を使用してもよい。
ブロック共重合体が上記ブロック共重合体の水素添加物である場合には、公知の方法に従って不活性有機溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して水添ブロック共重合体を得ることができる。
本発明において、保持体として、上記ブロック共重合体またはその水素添加物である水添ブロック共重合体が用いられるが、耐熱性、耐候性の観点から水添ブロック共重合体がより一層好ましく、水素添加前のブロック共重合体における共役ジエンに由来する炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたものであることがより好ましい。水素添加ブロック共重合体における重合体ブロックB中の炭素−炭素二重結合の含有量は、ヨウ素価測定、赤外分光光度計、核磁気共鳴法等により決定することができる。また上記の2種類のブロック以外に本発明を損なわない範囲で他のモノマーがブロック状にまたはランダムに共重合されていてもよい。なおスチレン系エラストマーには、上記したようなブロック共重合体のほかに、SBR(スチレンブタジエンゴム)などのスチレン含有ゴムを含んでも良い。
さらに、本発明で用いる保持体を構成する樹脂に関しては、本発明の趣旨を損なわない限り、分子鎖中または分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基などの官能基を含有していてもよい。
このような保持体に配合される油状物質としては、好ましくは30℃における粘度が50〜10000mPa・sの液状物質であり、常温において水とは実質的に相溶性がなく相分離する物質が用いられる。粘度が50mPa・s未満の場合には、繊維質基材に塗布した後に油状物質の移行が発生する。また10000mPa・sを越える場合には、保持体と混ざらずにオイル感の希薄なものとなり柔軟性に欠けるものとなるため不適である。
油状物質の種類の具体例としては、パラフィン系またはナフテン系のプロセスオイル、ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、シリコンオイル、植物油、芳香油などが挙げられ、これらは単独または混合して用いられる。中でもパラフィン系プロセスオイルが天然皮革のオイル感に類似する点で好ましい。
次に得られた保持体(1)と油状物質(2)を配合する方法について説明する。保持体と油状物性を乳化配合する方法については特に限定されることはないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(手法1)保持体、油状物質及び炭化水素系溶媒からなる混合溶液を、乳化剤を溶解
した水中に投入し、高剪断力下、混合乳化する方法、
(手法2)保持体、油状物質及び炭化水素系溶媒からなる混合溶液に乳化剤を混合し
、次いで水を添加し、撹拌・転相し、必要に応じて、高剪断力下で、乳化
する方法、
(手法3)保持体、油状物質及び炭化水素系溶媒からなる混合溶液、乳化剤、及び水
を一括して添加し、撹拌・転相し、必要に応じて、高剪断力下で、乳化す
る方法。
本発明に用いられる炭化水素系溶媒としては、特に制限されることはなく、具体的に、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルシクロヘキサン、デカリン、炭素数C8留分の芳香族溶媒、炭素数C8留分の芳香族溶媒を核水素化した溶媒、炭素数C9留分の芳香族溶媒、炭素数C9留分の芳香族溶媒を核水素化した溶媒、炭素数C10留分の芳香族溶媒を核水素化した溶媒、及びこれらの混合物などの炭素数10以下の炭化水素系溶媒が例示される。これらのうち、低価格で溶解性が優れているトルエン、キシレンが好ましい。また、自然環境の保護並びに作業環境安全性や人体に対する安全性の観点からは、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの非芳香族系溶媒が好ましい。上記溶媒は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらのうち、(手法2)及び(手法3)の転相乳化する方法(以下、「転相乳化法」という)が熱可塑性エラストマーの粒径が一定水準以下の乳化分散液が得られる点から好ましい。混合乳化や転相乳化は、ホモミキサー、ホモジナイザー、フリミックス、ナノマイザー、キャビトロン、ラインミキサー、万能攪拌機、ボトムリボン翼式撹拌装置等の当該分野で慣用されている公知の乳化装置を使用することができる。また、連続的に製造する場合は、ラインミキサーにより効率良く生産する方法が好ましく、一方、バッチ式で製造する場合は、コンデンサとボトムリボン翼式撹拌装置を具備した製造装置により簡便に生産する方法が好ましい。
乳化時の温度は、特に限定されるものではなく、通常、10℃〜200℃程度、好ましくは20〜150℃程度、さらに好ましくは25〜100℃程度の範囲である。
このようにして得られた炭化水素系溶媒を含有する乳化分散液は、例えば、80〜100℃、常圧〜300kPaの条件下で水と共沸させることにより炭化水素系溶媒を除去することができる。
用いる乳化剤の種類によっては有機溶媒を留去する際、発泡のため脱溶媒に長時間を要したり、更に発泡が激しい場合は留去が困難になるおそれがあるため抑泡剤・消泡剤を添加することが推奨される。上記の抑泡剤・消泡剤としては、特に制限されることはなく、例えば、アマイド系、シリカ・シリコーン系、シリコーン系、ワックス系等の抑泡剤・消泡剤が挙げられる。かかる抑泡剤・消泡剤としては、具体的に、SNデフォーマー477、SNデフォーマー475−L、SNデフォーマー5013、SNデフォーマー5016(以上サンノプコ(株)製)等が例示される。その添加量は、乳化分散液の質量を基準として、0.01〜0.5質量%程度、好ましくは0.02〜0.3質量%程度である。
さらに必要に応じて水分を留去又は添加して所望の固形分濃度に調製した本発明の熱可塑性エラストマー水性乳化分散液を得ることができる。かかる固形分濃度としては、通常、10〜90%程度、好ましくは20〜60%程度である。
このようにして得られるスチレン系熱可塑性エラストマー乳化物中の分散状態、即ち粒子径(メジアン径)は、通常、0.05〜50μm、好ましくは0.1〜30μm程度の範囲である。0.05μm未満だと、粘度が高く取り扱いが困難になり、50μmを越えると機械的安定性(攪拌やポンプ移送時の剪断力に対する安定性)や静置安定性が低下する傾向が見られる。
本発明において、保持体(1)と油状物質(2)との質量比は、(2)/(1)=1〜20が好ましい。この質量比が1未満の場合には、油状物質と保持体との配合物は通常固体状となるため、繊維質基材内部に充填した場合に柔らかな風合いが発現されにくく、また20を越える場合には、配合物は通常液状となるため繊維質基材内部に充填した場合に油状物質の移行が起こりやすい。より好ましくは、(2)/(1)=3〜12の範囲である。この範囲では油状物質と保持体との配合物は通常ゲル状物質となる。
本発明においては、保持体(1)の種類及び分子量と、油状物質(2)の種類と2種以上の油状物質を混合使用する場合の質量比、そして(2)/(1)の割合、及び繊維質基材内部への付与量を変更することにより、所望の天然皮革の柔軟性と充実感を再現することが可能である。
こうして得られたゲル状物質を繊維質基材内部へ付与することにより、天然皮革並みの風合いとオイル感を有する皮革様シートを得ることができる。ゲル状物質を付与する方法としては、例えばゲル状物質を良溶剤に溶解した溶液を作製して繊維質基材に含浸し、溶剤を除去し固着する方法が挙げられる。しかしながら、ゲル状物質を水分散液にして繊維質基材に含浸、乾燥処理し固着する方法を、環境面で近年の要求に沿った方法である点はもちろんのこと、含浸した場合に、後述する理由によって、連続的な皮膜形成がされにくく、天然皮革並みの柔軟性に優れ、充実感のある風合いに仕上がるといった品質上の観点から、選択する必要がある。ゲル状物質を前述の繊維質基材の内部に付与する方法としては、マングルでの含浸―搾液方法、コーティング方法、スプレー方法等が挙げられ、中でもマングルでの含浸―搾液方法が容易性、制御性と安定性とのバランスから好ましく用いられる。ここでいうマングルでの含浸−搾液方法とは、所望の固形分濃度に調整したゲル状物質の水分散液を繊維質基材内部に浸透させた後、マングルを用いて所望の搾液率となるよう加圧搾液したのち、乾燥機中で乾燥させるものである。これらの操作により、繊維質基材内部に充填されたゲル状物質の分散液が、後述する関係式を満足することで、乾燥時に毛管凝縮現象により、より狭い空隙である極細繊維束の内部に選択的に偏在することで、本発明の皮革様シートを達成することができる。繊維質基材内部に付与する順序としては特に限定されるものではないが、染色処理を実施する繊維質基材を使用する場合染色後に処理する方が染色中の油状成分の脱離が少なく工程管理がしやすい点で好ましい。
本発明の目的はゲル状物質が皮革様シート内部の極細繊維束内部の繊維間もしくは極細繊維束表面に含有されていることで初めて達成される。また、束の内部もしくは表面にゲル状物質が含有された極細繊維束が、ゲル状物質によって他の極細繊維束や高分子弾性体と膠着していると繊維質基材の風合いの硬化につながるため、極細繊維束は他の極細繊維束や高分子弾性体とは実質的に膠着していないことも必要である。ここでいう極細繊維束は他の極細繊維束や高分子弾性体とは実質的に膠着していない状態とは、極細繊維束と隣接する他の極細繊維束または高分子弾性体がゲル状物質により全く膠着していない状態、ゲル状物質が糸をひいたように繊維状のゲル状物質となって極細繊維束と隣接する他の極細繊維束または高分子弾性体の間を結んだ状態、より好ましくはこの繊維状のゲル状物質の最も小さい部分の直径が極細繊維束の単繊維径の1/10未満である状態および極細繊維束と他の極細繊維束または高分子弾性体の接触部分が極細繊維束の見掛けの外周長(ゲル状物質が極細繊維束内部および/またはその表面に存在している状態で極細繊維束を1本の繊維として見たときの外周の長さ)の10分の1未満の状態いずれかが支配的であることを指し、それらの状態が80%以上であることがオイル感と柔軟性の両立の点で好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
極細繊維束内部へ選択的にゲル状物質を充填するためには、水分散液中のゲル状物質と極細繊維が下式(1)を満足していることが必要であり、極細繊維束を構成する単繊維の平均単繊維径とゲル状物質の粒子径との組み合わせを選択する必要がある。乳化分散により得られるゲル状物質は、通常粒度分布を有しており、本発明でいう前記の膠着状態を工業的な意味で効率よく得るためには、下式(1)を満足するゲル状物質水分散液中の分散粒子の割合をより多くする必要がある。使用する水分散液の粘度やゲル状物質の濃度、あるいは繊維質基材自体の見掛け密度や厚さなどの要因の他、水分散液付与後の乾燥方法や乾燥温度などの乾燥条件などの要因にもよるが、概して全分散粒子の5質量%以上が式(1)を満足することが、ゲル状物質を選択的に極細繊維束内部に存在させる充填量を上げ、皮革様シートのオイル感を増大させた場合に皮革様シートの風合いの硬化が抑制されることにより好ましく、全分散粒子の15質量%以上が式(1)を満足することがより好ましい。
d > r 式(1)
但し、d:極細繊維束を構成する単繊維の平均単繊維径(μm)
r:ゲル状物質の粒子径(μm)
また、本発明の繊維質基材と前述のゲル状物質の比率は繊維質基材に対して5〜80質量%の範囲が天然皮革調の柔軟性および風合いの点から好ましく、10〜50質量%がより好ましい。5質量%未満の場合、オイル感が不足し硬い風合いとなる傾向があり、80質量%を越えた場合オイルのべとつき感が強くなる傾向がある。
特に式(1)を満足するゲル状物質の粒子は、繊維質基材内部の極細繊維質量に対して3〜20質量%充填されていることが、風合い、オイル感のバランスの点から好ましい。従って、準備できるゲル状物質の水分散液中の式(1)を満足する粒子比率や濃度が不足する場合には、前記した水分散液の付与操作を複数回繰り返すことにより上記の充填率を満足させることが可能である。式(1)を満足するゲル状物質の繊維質基材への充填率が20質量部を超えた場合には、極細繊維束内部へ充填しきれなくなったゲル状物質が極細繊維束表面に過剰に付着することとなり、結果として極細繊維束同士もしくは極細繊維束と高分子弾性体との間の膠着が促進されるため好ましくない。
一方、充填率が3質量%に満たなくなるような場合としては、水分散液中の式(1)を満足するゲル状物質の粒子の割合は少なくとも5質量%あったとしてもゲル状物質全体の繊維質基材への付着量自体が少ない場合と、水分散液中のゲル状物質全体の中で式(1)を満足するゲル状物質の粒子の割合自体が少ない場合とが考えられる。前者の場合には即ち付着したゲル状物質の量に応じて得られる皮革様シートとしてのオイル感自体が不足する傾向にあるため好ましくなく、後者の場合には本発明において好ましい状態である極細繊維束内部へのゲル状物質の浸透が少ない上に極細繊維束内部に充填されないゲル状物質の相対的な増加を意味しており、ゲル状物質は繊維質基材中で構成成分同士を膠着させるために皮革様シートとしては風合いが硬くなるため好ましくない。
d > r 式(1)
但し、d:極細繊維束を構成する単繊維の平均単繊維径(μm)
r:ゲル状物質の粒子径(μm)
次に、本発明を具体的な実施例で説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。そして実施例中の部は断りのない限り質量に関するものである。
各物性は下記のようにして求めた。
(i)極細繊維の繊維径
繊維断面を電子顕微鏡で撮影し、その写真から任意に選び出した50本の極細繊維の繊維径をノギスを使って測定しその平均値から算出した。
(ii)厚さ
JIS L1096に従って、240g/cm荷重時の厚さを測定した。
(iii)オイルのブリード(移行)の評価方法
製品を手で握って手にオイルが付着するかどうかで判定し、それらの評価結果を、
非常に良好:◎、良好:○、やや良好:△、不良:× で表現した。
(iv)風合い、外観、オイル感
皮革様シート表面の目視、触感により発明者らが判定した。それらの評価結果を、
非常に良好:◎、良好:○、やや良好:△、不良:×で 表現した。
(v)水性乳化分散液の粘度
東機産業(株)製BL型粘度計を使用して測定した。
(vi)乳化物の粒径(メジアン径)
(株)堀場製作所製 レーザー散乱・回折粒度分布計LA−910を用いて測定した。
(vii)水性乳化分散液の固形分濃度(%)
水性乳化分散液をシャーレに取り、105℃で2時間乾燥し、固形分の質量を求め、下記式から固形分濃度(%)を求めた。
固形分濃度(%)=[蒸発乾燥後の質量(g)/サンプル採取量(g)]×100
繊維質基材の製造例
ナイロン−6とポリエチレンをチップの状態で50:50の質量比で混合して押出機により溶融紡糸を行い、ポリエチレンが海成分でナイロン−6が島成分となっている海島構造繊維を紡糸し、延伸、捲縮、カットして、4dtex、51mm長のステープルを作製し、ウェバーでクロスラップを作りニードルパンチング機を用いて700パンチ/cmのニードルパンチングを施して絡合不織布を得た。この不織布に、平均分子量2000のポリ3メチルペンタンアジペートジオールとポリエチレングリコールをソフトセグメント用のポリマージオールとするポリウレタン樹脂のジメチルホルムアミド(以下DMFと略すこともある)溶液を含浸し、湿式凝固させた後、繊維の海成分であるポリエチレンをパークロルエチレンで抽出し、目付450g/m、厚み1.3mm、ポリウレタン樹脂と繊維の比率が40/60の繊維質基材を得た。得られた基材のナイロン極細繊維の繊度は、平均で0.006dtexであった。得られた基材の片面をサンドペーパーにてバフして該ナイロン極細繊維からなる立毛表面を有した繊維質基材を得た。このシート状物をサーキュラー染色機を用いて次の条件で染色すると茶色の立毛繊維質基材が得られた。得られた繊維質基材の拡大断面写真を図1に示す。
染色条件
染料:Lanacron Brown S−GR(Ciba−Geigy(株)製) 5%owf
Irgalan Yellow GRL(Ciba−Geigy(株)製) 2%owf
浴比: 1:30
染色温度: 90℃
ゲル状物質合成例1
ホモミキサー(特殊機化工業(株)製、商品名「TKホモミキサー マークII」)を備えた乳化釜に、水 1119g及びドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩(松本油脂製薬(株)製、商品名「ハイマール2号」)71gを入れ、90℃まで昇温した。次にビニル芳香族エラストマー((株)クラレ製、商品名「セプトン4055」)75g、パラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」)600gをトルエン750gに溶解した溶液を添加し、ホモミキサーの翼周速8m/sで90℃で5分間攪拌混合し予備乳化を行った。次いで、この予備乳化液を90℃、50MPaでホモジナイザー(Gaulin製、商品名「LAB40−10RBFI型」)処理後、冷却し、トルエン含有乳化分散液2561gを得た。得られたトルエン含有乳化分散液、及び消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名「SNデフォーマー5013」)1.0gをコンデンサー、デカンター、滴下ロートを備えた5L四つ口フラスコに入れ、常圧下、プロペラ攪拌しながら昇温し、共沸してくる水と同質量の水を補充しながらトルエンを留去した。ガスクロマトグラフィーにて乳化分散液中のトルエン含有量が500ppmになった時点で加熱を中止し、室温まで冷却して水性乳化分散液Aを得た。得られた水性乳化分散液Aの性状を表1に記す。
ゲル状物質合成例2
ゲル状物質合成例1において、ホモジナイザーでの処理条件を90℃、40MPaとした以外は、乳化物合成例1と同様の操作を実施して水性乳化分散液Bを得た。得られた乳化分散液Bの性状を表1に記す。
ゲル状物質合成例3
ゲル状物質合成例1において、ホモジナイザーでの処理条件を90℃、30MPaとした以外は、ゲル状物質合成例1と同様の操作を実施して水性乳化分散液Cを得た。得られた水性乳化分散液Cの性状を表1に記す。
ゲル状物質合成例1にて得られた水性乳化分散液Aを固形分濃度が30%となるように水で希釈し、繊維質基材製造例にて得られた茶色に染色された立毛繊維質基材にマングルを用いて含浸し、搾液率を70%にして60℃の乾燥機にて乾燥することによって皮革様シート全体の質量に対し油状物質およびその保持体からなる配合物の質量比率が20%の皮革様シート1が得られた。得られた皮革様シート1は、しっとりして落ち着いた外観と感触を有していた。またオイルのブリードも無かった。得られた皮革様シート1を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、極細繊維束はゲル状物質で密着している一方で、極細繊維束とそれを取り巻くポリウレタン壁との膠着はほとんど見られず、風合い硬化が抑制されていることがわかった。皮革様シート1の電子顕微鏡写真を図2に示す。
実施例1において水性乳化分散液Aを水で希釈することなくそのまま使用した以外は実施例1と同様の操作を実施し、皮革様シート2を得た。得られた皮革様シート2は、しっとりして落ち着いた外観と感触を有していた。またオイルのブリードも無かった。得られた皮革様シート2を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、極細繊維束はゲル状物質で密着している一方で、極細繊維束とそれを取り巻くポリウレタン壁との膠着はほとんど見られず、風合い硬化が抑制されていることがわかった。皮革様シート2の電子顕微鏡写真を図3に示す。
比較例1
実施例1において水性乳化分散液Aの代わりに水性乳化分散液Bを使用した以外は実施例1と同様の操作を実施し、皮革様シート3を得た。得られた皮革様シート3は、しっとりして落ち着いた外観と感触を有していた。またオイルのブリードも無かった。得られた皮革様シート3を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、極細繊維束はゲル状物質で密着している一方で、極細繊維束表面に存在しているゲル状物質によりそれを取り巻くポリウレタン壁との膠着が見られ、風合い硬化が進みつつあることがわかった。皮革様シート3の電子顕微鏡写真を図4に示す。
比較例2
実施例2において水性乳化分散液Aの代わりに水性乳化分散液Bを使用した以外は実施例2と同様の操作を実施し、皮革様シート4を得た。得られた皮革様シート4は、しっとりして落ち着いた外観と感触を有していたが、オイルのブリードが若干見られた。得られた皮革様シート4を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、極細繊維束はゲル状物質で密着している一方で、極細繊維束表面に存在しているゲル状物質によりそれを取り巻くポリウレタン壁との膠着が見られ、風合い硬化も進んでいることがわかった。皮革様シート4の電子顕微鏡写真を図5に示す。
比較例3
実施例1において水性乳化分散液Aの代わりに水性乳化分散液C用いた以外は実施例1と同様の操作を実施し、皮革様シート5を得た。得られた皮革様シート5は、しっとりして落ち着いた外観と感触を有していたが、風合いが硬いものであった。またオイルのブリードが若干見られた。得られた皮革様シート5を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、ゲル状物質は極細繊維束内部にはほとんど存在していない一方で、ゲル状物質による極細繊維束表面とそれを取り巻くポリウレタン壁との膠着が顕著であり、風合い硬化が進行していることがわかった。皮革様シート5の電子顕微鏡写真を図6に示す。
Figure 0004387221
Figure 0004387221
Figure 0004387221
本発明の皮革様シートは、天然皮革と同等の柔らかな風合い、オイル調のタッチ感を兼ね備えたものとなっており、このものは靴、衣料、グローブ等あらゆる人工皮革に適したものであり、特に肌への触感、フィット感に優れる点からスポーツ用手袋への応用に有用である。
ゲル状物質含有処理前の本発明の繊維質基材の形態を示す断面写真(図面代用写真)である。 本発明の皮革様シートの一形態を示す断面写真(図面代用写真)である。 本発明の皮革様シートの一形態を示す断面写真(図面代用写真)である。 比較例1の皮革様シートの一形態を示す断面写真(図面代用写真)である。 比較例2の皮革様シートの一形態を示す断面写真(図面代用写真)である。 比較例3の皮革様シートの一形態を示す断面写真(図面代用写真)である。

Claims (8)

  1. 極細繊維束からなる絡合不織布、該絡合不織布と他の繊維からなる絡合不織布もしくは編織布とが複合されたもの、またはそれらに高分子弾性体が含浸されたものから選ばれる繊維質基材において、少なくとも該極細繊維束内部の繊維間にゲル状物質が存在し、該極細繊維束が隣接する他の繊維質基材構成成分と該ゲル状物質によって実質的に膠着していないことを特徴とする皮革様シート。
  2. ゲル状物質が、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質とその保持体からなる請求項1記載の皮革様シート。
  3. 極細繊維束が、単繊維繊維径0.1〜5μmの極細繊維が10本以上集束したものである請求項1または2記載の皮革様シート。
  4. 絡合不織布内部の極細繊維束同士が形成する空間もしくは極細繊維束表面に沿って高分子弾性体が含有されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の皮革様シート。
  5. 以下の(1)から(4)の工程を順次行うことを特徴とする皮革様シートの製造方法。
    (1)極細繊維束発生型繊維からなるウェブを作製する工程
    (2)ウェブを積層してニードルパンチを行い絡合不織布とする工程
    (3)極細繊維束発生型繊維から極細繊維束を発生させる工程
    (4)下式(1)を満足するゲル状物質の分散液をゲル状物質の固形分質量が極細繊維質量に対して3〜20質量%となるよう含有させた後、分散媒を除去する工程
    d > r 式(1)
    但し、d:極細繊維束を構成する単繊維の平均単繊維径(μm)
    r:ゲル状物質の粒子径(μm)
  6. ゲル状物質が、30℃における粘度が50〜10000mPa・sの油状物質とその保持体からなる請求項5記載の皮革様シートの製造方法。
  7. 極細繊維束発生型繊維が、単繊維繊維径0.1〜5μmの極細繊維束を発生させうるものである請求項5または6記載の皮革様シートの製造方法。
  8. 絡合不織布に高分子弾性体の溶液または分散液を含浸して凝固させる工程を含む請求項5〜7いずれか1項に記載の皮革様シートの製造方法。
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