図8は、従来の画像記録装置における画像記録部周辺の構成を示すものである。図に示すように、搬送路90の上側に、記録用紙の幅方向に走査されながらインクを吐出する記録ヘッド91が走査可能に設けられ、該記録ヘッド91と対向する搬送路90の下側には、記録中の記録用紙を支持するプラテン92が配設されている。また、記録ヘッド91の搬送方向上流側には駆動ローラ93及び押さえローラ95が、下流側には排紙ローラ94及び拍車ローラ96が、それぞれ搬送路90の対向位置に一対となって設けられている。なお、図には示していないが、駆動ローラ93及び排紙ローラ94にはモータ等の駆動源からギア等を介して駆動力が伝達されるようになっており、一方、押さえローラ95及び拍車ローラ96は上下動可能に配設されるとともに、バネ等により駆動ローラ93又は排紙ローラ94側へそれぞれ付勢されて、駆動ローラ93又は排紙ローラ94と圧接している。
不図示の用紙トレイから搬送手段により給送された記録用紙Pは、上流側の駆動ローラ93及び押さえローラ95に狭持されてプラテン92上へ搬送される。記録用紙Pの先端が記録ヘッド91の下方に至ると記録ヘッド91の走査が開始されて、該記録用紙Pに記録ヘッド91からインクが吐出される。上記駆動ローラ93及び押さえローラ95は所定の改行量で間欠駆動しており、該駆動ローラ93及び押さえローラ95が間欠する毎に記録ヘッド91が走査され、これを繰り返すことにより、所定の改行量毎で搬送される記録用紙Pの所定領域に画像が記録される。また、記録用紙Pの先端が下流側の排紙ローラ94及び拍車ローラ96へ至ると、記録用紙Pは、先端側を排紙ローラ94及び拍車ローラ96に狭持され、且つ後端側を駆動ローラ93及び押さえローラ95に狭持された状態で画像記録が行われる。このように、記録ヘッド91の上流側及び下流側において記録用紙Pがそれぞれ狭持されることにより、記録用紙Pに適度な張力が付与される。記録ヘッド91から吐出されたインク滴が記録用紙Pに着弾すると、該インク滴の溶媒が直ちに蒸発して記録用紙Pに収縮が発生するが、かかる張力によりプラテン92上の記録用紙Pが平坦に保たれる。さらに記録用紙Pが搬送されると、記録用紙Pの後端が駆動ローラ93及び押さえローラ95を通過して、該記録用紙Pは下流側の排紙ローラ94及び拍車ローラ96によって搬送される。そして、画像記録が終了した記録用紙Pは、排紙ローラ94及び拍車ローラ96も通過して、不図示の排紙トレイへ排出される。
図9は、記録ヘッド91の上流側に配設された駆動ローラ93及び押さえローラ95を示す平面図である。図に示すように、1つの駆動ローラ93に対し、4つの押さえローラ95が軸方向に所定間隔で列設されている。駆動ローラ93の軸と各押さえローラ95の軸とは並行であり、図に斜線で示したように、駆動ローラ93と各押さえローラ95とは軸と平行な線状の領域でそれぞれ圧接してニップ領域Nを形成している。したがって、記録用紙Pは、4つの線状のニップ領域Nで駆動ローラ93及び押さえローラ95に狭持されるが、該記録用紙Pが各ニップ領域Nを通過する際に、駆動ローラ93と押さえローラ95とによる狭持力が一度に開放されるとともに、記録用紙Pの後端に各押さえローラ95の付勢力が加わることにより、記録用紙Pを搬送方向へ押し出そうとする。
一方、記録ヘッド91の下流側に配設された拍車ローラ96は、インク滴が着弾した直後の記録用紙Pの記録面に直接接触するので、排紙ローラ94側へ強く押圧すれば該記録面に跡が残る等の問題が生ずる。したがって、拍車ローラ96に強い押圧力を付与することができないので、排紙ローラ94及び拍車ローラ96による記録用紙Pの狭持力は弱くせざるを得ず、前述したように、記録用紙Pが駆動ローラ93及び押さえローラ95のニップ領域Nを通過する際に押し出し力が生じても、該押し出し力を排紙ローラ94及び拍車ローラ96による記録用紙Pの狭持力で制止することができない。よって、当該押し出し力により、記録用紙Pが、排紙ローラ94及び拍車ローラ96のニップ領域を滑り出るようにして、所定の改行量以上に搬送されるという所謂飛びが生じる。当該飛びが生じると、副走査方向の記録位置がずれて、記録画像にムラや白抜けが発生するという問題があった。
かかる問題を解決するための手段として、図10に示す構成が公知である(特許文献1参照)。当該手段では、記録ヘッド91の上流側の1つの大径の駆動ローラ97に対して、該駆動ローラ97より小径であってテーパ状に径大部と径小部と形成された押さえローラ98の2つを一対として、各径大部が両端に位置するように同軸に配設して1つのローラ組99とし、4つのローラ組99を駆動ローラ97の軸方向に所定間隔で列設している。また、各ローラ組99の軸は駆動ローラ97の軸に対して所定角度だけ傾斜させて配設されており、当該傾斜角を駆動ローラ97の中央側に配設された2つのローラ組99より、両端側に配設された2つのローラ組99の方が大きくなるようにしている。これにより、駆動ローラ97と各押さえローラ98とのニップ領域Nが点状となり、且つ搬送方向の位置が相互にずれるので、記録用紙Pが各ニップ領域Nを通過するタイミングがずれて、駆動ローラ97と押さえローラ98とによる記録用紙Pの狭持が段階的に開放され、記録用紙Pの飛びが防止される。
しかし、各押さえローラ98の外径は軸方向にテーパ状で変化しており、且つ、その軸を駆動ローラ97に対して傾斜させているので、1つのローラ組99における各押さえローラ98が駆動ローラ97と圧接するニップ領域Nは、1つのローラ組99において必ずしも左右対称位置ではない。したがって、駆動ローラ97の回転に従動する押さえローラ98の回転は左右で同一とならない。よって、左右の押さえローラ98を独立して回転させることとなるが、ローラ組99の軸に対して左右の押さえローラ98が自由回転することとすれば、各押さえローラ98が軸方向に対しても移動可能となり、1つのローラ組99におけるニップ領域Nの間隔が変動する。そうすれば、各ニップ領域Nの搬送方向の位置を正確に設定することが難しくなるという問題が生ずる。一方、左右の押さえローラ98を軸に固定して左右で同じ回転とするには、1つのローラ組99において各押さえローラ98の外径が左右対称となるようにテーパ形状を一定とし、且つ、左右の回転が同一となるように駆動ローラ97に対して位置決めする必要があり、押さえローラ98の製造や駆動ローラ97及び各ローラ組99の組立てが煩雑となってしまう。
また、前述した構成において、各種サイズ、すなわち幅が異なる記録用紙Pが搬送される場合に、記録用紙Pが駆動ローラ97の左右端の一方側を基準として搬送されるとすれば、駆動ローラ97と各押さえローラ98による各ニップ領域Nが記録用紙Pの幅方向に対して左右対称とならないので、記録用紙Pに作用する搬送力も左右対称とならず、斜行が生ずるおそれがある。さらに、記録用紙Pの前端を駆動ローラ97又は各押さえローラ98に当接させて斜行矯正する際には、各ニップ領域Nが各種サイズの記録用紙Pの幅方向に対して左右対称であることが好ましい。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、簡易且つ確実に被記録媒体の飛びを抑制して、画像記録装置の記録画像の劣化を防止する手段を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本発明は、搬送路の対向位置にそれぞれ設けられた駆動ローラ及び押さえローラによって被記録媒体を狭持して搬送し、該駆動ローラ及び押さえローラの下流側に配設された画像記録部によって上記被記録媒体に画像を記録する画像記録装置であって、各々の軸を駆動ローラの軸に対して搬送方向へ所定角度で傾斜させた複数の押さえローラが、駆動ローラの軸方向に列設され、該各押さえローラに、凹欠部がそれぞれ形成されるとともに、該凹欠部の軸方向両側に駆動ローラとそれぞれ圧接するニップ部がそれぞれ形成されており、上記駆動ローラは、少なくとも被記録媒体の後端近傍を狭持して搬送する際に、所定の単位搬送距離で間欠駆動されるものであり、上記各押さえローラの各ニップ部と駆動ローラとがそれぞれ圧接する各ニップ領域の搬送方向の離間距離が上記単位搬送距離以上である。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記各押さえローラの各ニップ部が、同径に形成されたものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記各押さえローラの各ニップ部と上記駆動ローラとが圧接する各ニップ領域が、各押さえローラにおいて搬送方向上流側となるニップ領域群及び下流側となるニップ領域群の各々のニップ領域群において、搬送方向と直交する方向の同一直線上に位置されたものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記各押さえローラが、搬送すべき複数種の被記録媒体サイズに対応して、各種被記録媒体の幅方向の両端付近に配置されたものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記各押さえローラが、搬送路の幅方向の中心に対して左右対称に配置されたものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記各押さえローラは、各々の軸が、その搬送路の幅方向の中心側の端部が搬送方向下流側となるように傾斜して配置されたものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記駆動ローラ及び押さえローラより上流側の搬送路が、該駆動ローラと押さえローラとのニップ領域より下方から該ニップ領域へ被記録媒体を案内するものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記搬送路が、被記録媒体を下方から上方へUターンさせて案内するものである。
また、本発明は、上記画像記録装置において、上記画像記録部が、インクを吐出して画像記録を行うインクジェット記録ヘッドを具備するものである。
本発明に係る画像記録装置によれば、各押さえローラに、凹欠部がそれぞれ形成されるとともに、該凹欠部の軸方向両側に駆動ローラとそれぞれ圧接するニップ部がそれぞれ形成され、この押さえローラを、その軸を駆動ローラの軸に対して搬送方向へ所定角度で傾斜させて複数列設することにより、被記録媒体が、各押さえローラにおいて搬送方向の2カ所で駆動ローラとの間に狭持されて搬送される。これにより、押さえローラと駆動ローラとのニップ圧を分散するとともに、被記録媒体の後端が通過する際には、その2カ所に分けて押さえローラと駆動ローラによる狭持が開放されるので、押さえローラと駆動ローラとが被記録媒体の狭持を開放したときに、該被記録媒体を搬送方向へ押し出す力を弱くして、被記録媒体の飛びを抑制できる。よって、被記録媒体の後端付近において画像の乱れが生じにくい画像記録装置を実現することができる。
また、本発明によれば、少なくとも被記録媒体の後端付近が搬送される際に、上記駆動ローラを単位搬送距離で間欠駆動し、上記各押さえローラの各ニップ部と駆動ローラとがそれぞれ圧接する各ニップ領域の搬送方向の離間距離を上記単位搬送距離以上としたので、被記録媒体の後端が押さえローラの各ニップ領域の間に位置するときに駆動ローラが必ず間欠することとなる。これにより、各押さえローラと駆動ローラとに狭持されている被記録媒体の後端付近の2カ所それぞれが開放されるタイミングを確実に分けて、搬送方向上流側の狭持が開放された際の押し出し力を搬送方向下流側の狭持で抑制することができる。
また、本発明によれば、上記各押さえローラの各ニップ部を同径に形成したので、駆動ローラとの2カ所で圧接する押さえローラの位置合わせが容易である。
また、本発明によれば、上記各押さえローラの各ニップ部と上記駆動ローラとが圧接する各ニップ領域を、搬送方向上流側となるニップ領域群と下流側となるニップ領域群との各々のニップ領域群において、搬送方向と直交する方向の同一直線上に位置したので、例えば、被記録媒体の前端を駆動ローラに当接して斜行矯正する場合に、その当接位置を搬送方向に対して同位置とすることができ、また、被記録媒体の前端を狭持するタイミングも同時となるので、被記録媒体が斜行することなく搬送されるという利点がある。
また、本発明によれば、上記各押さえローラを、搬送すべき複数種の被記録媒体サイズに対応して、各種被記録媒体の幅方向の両端付近に配置したので、各種被記録媒体をバランスよく狭持して搬送することができる。
また、本発明によれば、上記各押さえローラを、搬送路の幅方向の中心に対して左右対称に配置したので、該中心を基準として搬送される各種被記録媒体をバランスよく狭持して搬送することができ、特に定型サイズ以外の被記録媒体に対して有用である。
また、本発明によれば、上記各押さえローラを、各々の軸が、その搬送路の幅方向の中心側の端部が搬送方向下流側となるように傾斜して配置したので、駆動ローラと各押さえローラとで狭持されて搬送される被記録媒体に、搬送路の幅方向の外側へ向かって広がる張力が作用する。これにより、被記録媒体に撓みや皺等が発生することを防止できる。
また、本発明によれば、上記駆動ローラ及び押さえローラより上流側の搬送路が、駆動ローラと押さえローラとのニップ領域より下方から該ニップ領域へ被記録媒体を案内するものとした場合、特に、搬送路が被記録媒体を下方から上方へUターンさせて案内するものとして、駆動ローラ及び押さえローラの搬送力により被記録媒体を上方へ搬送させるべく大きな狭持力が駆動ローラ及び押さえローラに要求され、その狭持を開放する際の押し出し力が強くなる場合に、特に有用である。
また、本発明によれば、上記画像記録部を、インクを吐出して画像記録を行うインクジェット記録ヘッドを具備するものとして、駆動ローラ及び押さえローラが被記録媒体の後端を搬送する際に生じる飛びが画像を劣化させる場合に特に有用である。
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る複合機1(画像記録装置)の外観構成を示すものである。本複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能を有する。該複合機1のうちプリンタ部2が本発明に係る画像記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のものである。したがって、スキャナ部3がなく、スキャナ機能やコピー機能を有しない単機能のプリンタであっても、さらに通信部を備えてファクシミリ機能等を有するものであってもよい。また、本発明に係る画像記録装置を複合機として実施する場合には、本実施の形態に示す複合機1のような小型のものであっても、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えた大型のものであってもよい。また、複合機1は、主に不図示のコンピュータと接続されて、該コンピュータから送信された画像データや文書データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録するものであるが、その他、デジタルカメラと接続されてデジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録したり、各種記録媒体を装填して、該記録媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
図1に示すように、複合機1は概ね直方体の外形であり、複合機1の下部がプリンタ部2となっている。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されており、該開口2aに露出するようにして給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20は、被記録媒体である記録用紙を貯蔵するためのものであり、A4サイズ以下の、B5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容可能となっており、必要に応じてスライドトレイ20aを引き出してトレイ面を拡大することができるようになっている。該給紙トレイ20に収容された記録用紙(不図示)がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出されるようになっている。
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及び画像読取キャリッジ32が設けられている。プラテンガラス31は画像読取りを行う原稿を載置するためのものであり、該プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向を主走査方向とする画像読取キャリッジ32が、複合機1の幅方向に走査可能に設けられている。
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は各種操作ボタンや液晶表示部から構成されており、複合機1は、該操作パネル4からの操作指示によっても、コンピュータに接続されて該コンピュータからプリンタドライバを介して送信される指示によっても動作するようになっている。例えば、複合機1の正面の左上部には、記録媒体である各種小型メモリカードを装填可能なスロット部5が設けられており、該スロット部5に装填された小型メモリカードに記録された画像データを読み出して液晶表示部に表示させ、任意の画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させるための入力を、操作パネル4から行うことができる。
以下、図2及び図3を参照して複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。図に示すように、複合機1の底側に設けられた給紙トレイ20の奥側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を分離して上方へ案内するための分離傾斜板22が配設されており、該分離傾斜板22から上方へ向かって搬送路23が形成されている。該搬送路23は、上方へ向かった後、正面側へ曲がって、複合機1の背面側から正面側へと延びており、画像記録部24を通過して排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録部24に至り、該画像記録部24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出されることとなる。
図3に示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路23へ供給するための給紙ローラ25が設けられている。該給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の先端に軸支されており、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、モータ(不図示)の駆動が伝達されて回転するようになっている。給紙アーム26は、基端側を軸として上下方向に揺動可能に配設されており、待機状態では、不図示の給紙クラッチやバネ等により図に示すように上側へ跳ね上げられており、記録用紙を供給する際に下側へ揺動する。給紙アーム26が下側へ揺動することにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力で最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。該記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、搬送路23へ送り込まれる。また、給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22に当接することによって制止される。
搬送路23は、画像記録部24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の搬送路23は、外側ガイド面は複合機1のフレームと一体に形成されており、内側ガイド面はガイド部材28がフレーム内に固定されることにより構成されている。また、搬送路23において、特に搬送路23が曲がっている箇所には、各種搬送コロ29が外側ガイド面又は内側ガイド面へローラ面を露出するようにして、搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。これら各搬送コロ29によって、ガイド面に接触している記録用紙の搬送が円滑となる。
図3に示すように、搬送路23が下方から上方へUターンした後の下流側には、画像記録部24が設けられている。該画像記録部24は、不図示の走査キャリッジに搭載されたインクジェット記録ヘッド40が、搬送路23の幅方向を主走査方向として走査可能に設けられ、不図示のインクカートリッジから供給されるシアン(C)・マゼンダ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)の各色インクを吐出しながら走査されることにより、プラテン41上を搬送される記録用紙へ画像記録を行うものである。
また、上記画像記録部24の上流側には、搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持して、プラテン41上へ搬送する駆動ローラ42及び押さえローラ43が設けられている。一方、画像記録部24の下流側には、記録済みの記録用紙を狭持して搬送する排紙ローラ44及び拍車ローラ45が設けられている。駆動ローラ42及び排紙ローラ44には、不図示のモータから駆動力が伝達されており、所定の改行量で間欠駆動する。一方、押さえローラ43は駆動ローラ42に圧接するように付勢されて回転自在に設けられており、駆動ローラ42との間に記録用紙が進入した場合に該記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を駆動ローラ42とともに狭持し、駆動ローラ42の回転力を確実に記録用紙へ伝達するものである。拍車ローラ45も排紙ローラ44に対して同様に設けられたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸したものとなっている。
したがって、駆動ローラ42及び押さえローラ43に狭持された記録用紙は、所定の改行量でプラテン41上を間欠して搬送され、その改行毎にインクジェット記録ヘッド40が走査されて、記録用紙の先端側から画像記録が行われる。画像記録が行われた記録用紙の先端側は、その後、排紙ローラ44及び拍車ローラ45に狭持され、該記録用紙は先端側を排紙ローラ44及び拍車ローラ45に、後端側を駆動ローラ42及び押さえローラ43に狭持された状態で所定の改行量で間欠して搬送され、同様にインクジェット記録ヘッド40により画像記録が行われる。さらに記録用紙が搬送されると、記録用紙の後端が駆動ローラ42及び押さえローラ43を通過して、これらによる狭持が開放され、排紙ローラ44及び拍車ローラ45により所定の改行量で間欠して搬送され、同様にインクジェット記録ヘッド40により画像記録が行われる。記録用紙の所定領域に画像記録を行った後は、排紙ローラ44が連続的に回転駆動され、排紙ローラ44及び拍車ローラ45により狭持された記録用紙は排紙トレイ21へ排出される。
つぎに、上記駆動ローラ42及び押さえローラ43の構成を詳細に説明する。
図4は、上記ガイド部材28を示す図であり、各押さえローラ43は、図に示すように、ガイド部材28にそれぞれ軸支されている。ガイド部材28は、搬送路23の内側ガイド面となるガイド面70を形成しており、その両端に形成された取付部71によって複合機1のフレーム等に固定されるようになっている。ガイド面70は、上流側が下方から上方へ湾曲する曲面に形成されており、下流側がほぼ平面状に形成されてなり、ガイド面70には搬送方向に沿ってガイドリブ72が適宜形成されることにより、記録用紙とガイド面70との接触面積を少なくして摩擦の軽減が図られている。
また、ガイド部材28には、ガイド面70の下流端から搬送方向へ切欠き73が所定間隔で形成されることにより、該下流端部が4つに分割されて、各々の分割部分に押さえローラ支持部74が形成されている。該押さえローラ支持部74は、押さえローラ43の軸方向の長さより若干幅広に凹陥しており、その両端側に押さえローラ43を軸支するための支持片75がそれぞれ立設されている。各押さえローラ43は、両支持片75にそれぞれ軸支されて、そのローラ面の一部をガイド面70から突出するように配設され、そのローラ面が、ガイド面70に案内されて搬送される記録用紙と接触するようになっている。各押さえローラ43がガイド面70から突出する高さは適宜設定すればよいが、上記ガイドリブ72の高さと同程度とすることが好適である。また、各押さえローラ支持部74の底面にはバネ受け76がそれぞれ形成されており、該バネ受け76と複合機1のフレーム等との間にコイルバネ(不図示)がそれぞれ介設されることにより、各押さえローラ支持部74は上方向へ付勢される。ガイド部材28は合成樹脂等の弾性変形可能な素材から形成されており、また、上記切欠き73により各押さえローラ支持部74は上下方向に弾性変形容易となっているので、各押さえローラ43は、その上側に配設される不図示の駆動ローラ42へ付勢させるとともに、駆動ローラ42との間に狭持する記録用紙の厚みに応じて下側へ退避可能となっている。このようにして、4個の押さえローラ43が駆動ローラ42の軸方向に列設されている。
図5は、押さえローラ43の構成を示すものであるが、図に示すように、押さえローラ43は、樹脂製のローラ51が金属製の軸50に軸支されてなるものである。なお、ローラ51は、変形の少ない硬質プラスチック製のものが好ましく、また、ローラ51を金属製の軸50に代えてコイルスプリングで軸支してもよい。該ローラ51には、径方向に陥没した凹欠部52が、ローラ51の両端に所定領域を残して形成されている。凹欠部52の両側に残された各所定領域は、駆動ローラ42と圧接するためのニップ部53L,53Sとなる。後述するように、各押さえローラ43は、その軸50を駆動ローラ42に対して搬送方向へ所定角度で傾斜して配設されるが、軸50が傾斜されることにより、押さえローラ43と駆動ローラ42とのニップ領域は線状ではなく点状となる。その点状のニップ領域が存在する位置に上記凹欠部52を形成することにより、凹欠部52の両側のニップ部53L,53Sの2カ所で駆動ローラ42と圧接する。その領域をニップ領域Nとして図に示している。各ニップ部53L,53Sは同径に形成されているので、凹欠部52の直両側がニップ部53L,53Sにおけるニップ領域Nとなる。したがって、凹欠部52の幅によってニップ領域N間の距離が異なり、当該距離と押さえローラ43の傾斜角度によって、2つのニップ領域Nの搬送方向の離間距離が設定されるが、凹欠部52は、当該離間距離が、駆動ローラ42が間欠駆動して記録用紙を搬送する単位搬送距離となるように設定されている。
なお、本実施の形態では、ニップ部53L,53Sの軸方向の幅が異なり、ニップ部53Sに対してニップ部53Lを幅広としているが、各ニップ部53L,53Sの幅は、駆動ローラ42及び押さえローラ41に狭持されてプラテン41へ搬送される記録用紙の搬送角度等を考慮して設定されるものであり、当該幅は特に限定されるものではない。詳細には、図3に示すように、押さえローラ43は駆動ローラ42より搬送方向上流側へ偏心しているので、該駆動ローラ42及び押さえローラ43に狭持されて搬送される記録用紙は、水平より所定角度下側へ向かって送り出される。これにより、記録用紙はプラテン41に押し付けられるようにして搬送されることとなり、インクジェット記録ヘッド40と記録用紙との距離が一定に保たれるようになっている。このような記録用紙を送り出す角度を考慮して、駆動ローラ42と押さえローラ43との位置関係や押さえローラ43の傾斜角度とともに、ニップ領域Nをローラ51のどの位置とするかが設定され、これらとの関係でニップ部53L,53Sも幅も設定される。
図6は、駆動ローラ42に対する各押さえローラ43の配置を示すものである。図に示すように、1つの駆動ローラ42の軸方向に、4個の押さえローラ43が列設されている。該駆動ローラ42は、ローラの軸方向の幅として、A4サイズやはがき等の搬送すべき複数サイズの記録用紙に対応した通紙幅を少なくとも有するものであり、該ローラは、金属製のローラの表面にセラミックコーティングを施して記録用紙に対する摩擦力を付与したものが、温度変化に強く且つ記録用紙の搬送力が高いので好適である。本プリンタ部2では、搬送路23の幅方向中心C(図に示す1点鎖線)を記録用紙の中心と一致させて搬送されるので、各押さえローラ43は、A4サイズやはがき等の搬送すべき複数サイズの記録用紙に対応して幅方向に左右対称に、且つ各サイズの記録用紙の両端付近に配置されている。例えば、図における両端側の2つの押さえローラ43がA4サイズの両端付近に対応しており、中央の2つの押さえローラ43がはがきサイズに対応している。このように、記録用紙の両端付近に押さえローラ43を配置することにより、各種サイズの記録用紙をバランスよく狭持して搬送することができる。また、中心Cに対して左右対称に各押さえローラ43を配置することによっても記録用紙をバランスよく狭持して搬送することができ、特にA4サイズやはがきサイズ等のような定型サイズ以外の記録用紙を搬送する場合にも、該記録用紙に対して左右対称にニップ領域Nが位置することとなるので好適である。
また、各押さえローラ43の軸50は、駆動ローラの軸に対して所定角度θで傾斜されている。図に示すように、4個の各押さえローラ43は、各々の軸50が、搬送路23の幅方向の中心C側となる端部が搬送方向下流側となるように所定角度θで傾斜するように配置されている。すなわち、図右側の2個の押さえローラ43の軸50は右上がりに角度θで傾斜し、図左側の2個の押さえローラ43の軸50は左上がりに角度θで傾斜しており、図右側の押さえローラ43の軸50と図左側の2個の押さえローラ43の軸50とは傾斜方向が中心Cに対して左右対称であるが、それぞれが傾斜している角度θは同一である。したがって、図に示すように、駆動ローラ42と各押さえローラ43とで狭持されて搬送される記録用紙Pには、駆動ローラ42及び各押さえローラ43により幅方向外側へ向かって広がる張力が付与されながら搬送されることとなる。これにより、搬送中に記録用紙Pに撓みや皺等が発生することを防止できる。
また、図に示すように、各押さえローラ43は、幅広のニップ部53Lを搬送方向下流側となるように配置されている。ここで、各ニップ部53Lによるニップ領域をN1、各ニップ部53Sによるニップ領域をN2とすると、搬送方向上流側となるニップ領域群を構成する各ニップ領域N1は、搬送方向と直交する方向の直線L1に位置しており、搬送方向下流側となるニップ領域群を構成する各ニップ領域N2は、搬送方向と直交する方向の直線L2上に位置する。このように、各ニップ領域N1,N2を各々直線L1,L2上に位置せしめることにより、駆動ローラ42及び各押さえローラ43が記録用紙Pを狭持するタイミングが、記録用紙Pの幅方向において同時となる。特に、記録用紙Pの前端を、停止状態の駆動ローラ42及び各押さえローラ43のニップ領域N1やローラ面に当接させて、該ニップ領域N1に沿って斜行矯正をする場合に有用であり、また、その後に駆動ローラ42及び各押さえローラ43が記録用紙Pの前端を狭持するタイミングも同時となって、記録媒体Pが斜行することなく搬送されるという利点がある。また、前述したように、各押さえローラ43の各ニップ部53L,53Sは同径に形成されているので、各ニップ領域N1,N2が各々直線L1,L2上に位置するようにするには、各押さえローラ43の傾斜角度θを同一とすればよいので、このような位置合わせは容易である。さらに、図5に示したように、各ニップ部53L,53Sは、各押さえローラ43のローラ51に凹欠部52を形成することにより、1つのローラ51に一体に形成されている。したがって、記録用紙Pを搬送する際にニップ部53L,53Sが軸方向に移動することがない。すなわち、ニップ領域N1,N2が軸方向に移動することがないので、前述した位置合わせによるニップ領域N1,N2の位置は、記録用紙Pを搬送する際にも維持される。
図7は、図6における右端の押さえローラ43を例に記録用紙Pの後端がニップ領域N1,N2を通過する状態を示すものである。前述したように、押さえローラ43に凹欠部52を形成し、該押さえローラ43の軸50を駆動ローラ42の軸に対して所定角度θだけ傾斜させることにより、凹欠部52の両側のニップ部53L,53Sが駆動ローラ42と圧接する各ニップ領域N1,N2は、図に示すように、搬送方向に距離Wだけ離間したものとなる。駆動ローラ42と各押さえローラ43とによる記録用紙Pの狭持が、ニップ領域N1,N2に分けられてニップ圧が分散され、さらに、記録用紙Pの後端が通過する際には、該ニップ領域N1,N2に分けて記録用紙Pの狭持が開放されるので、当該開放の際に、各押さえローラ43の付勢力が記録用紙Pに作用して該記録用紙Pを搬送方向へ押し出す力が弱くなる。
また、上記ニップ領域N1,N2間の距離Wは、間欠駆動する駆動ローラ42の単位搬送距離以上となっている。これにより、記録用紙Pの後端がニップ領域N1,N2を通過する際には、図に示すように、記録用紙Pの後端が各ニップ領域N1,N2の間に位置するときに駆動ローラ42が必ず間欠することとなり、各ニップ領域N1,N2の狭持が開放されるタイミングを確実に分けることができる。したがって、ニップ領域N1における狭持が開放される際の押し出し力は、記録用紙Pがニップ領域N2で狭持されていることにより抑制される。なお、前述したように、各ニップ部53L,53Sが1つのローラ51に一体に形成されることにより、ニップ領域N1,N2が軸方向に移動することがないので、上記距離Wも常に維持される。
ここで、間欠駆動する駆動ローラ42の単位搬送距離は、画像記録部24により記録用紙Pに画像記録を行う際の改行量と一致させる必要はない。当該改行量は、画像記録密度等によって変動され、通常モードの画像記録時より高画質のファインモードの画像記録時の方が改行量を少なくすることが一般的である。すなわち、複合機1のプリンタ部2として上記距離Wは一定に設定するが、記録する画像の画質によって改行量は変動されることとなる。例えば、記録用紙Pの後端がニップ領域N1,N2を通過する際に、改行量を複数に分割して微少搬送距離で記録用紙Pを搬送すべく、駆動ローラ42の間欠駆動をさらに細かく分割する場合には、その分割された微少搬送距離を単位搬送距離とする。このように、画像記録密度等によって変動される改行量に拘わらず、記録用紙Pの後端がニップ領域N1,N2を通過する際の搬送距離を上記微少搬送距離とすべく、駆動モータ41の間欠駆動を制御すれば、上記距離Wと単位搬送距離との関係が一定となる。
このようにして、本複合機1のプリンタ部2によれば、記録用紙Pの後端の狭持が開放される際の飛びを抑制することができ、該後端付近における記録画像の乱れを防止できる。特に、本複合機1のプリンタ部2のように、駆動ローラ42及び押さえローラ43より上流側の搬送路23が、ニップ領域N1,N2より下方から、記録用紙PをUターンさせながらニップ領域N1,N2へ案内する所謂Uターンパスである場合には、駆動ローラ42及び押さえローラ43により記録用紙Pを上方へ引き上げるように搬送させることとなるので、ニップ領域N1,N2における狭持力を大きくする必要がある。そのような場合には、その狭持を開放する際の押し出し力も強くなる傾向にあるので、上記効果が顕著である。