JP4385777B2 - 歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として自動車用鋼板に係り、とくに、曲げ加工性、伸びフランジ加工性、絞り加工性等のプレス成形性が良好で、しかもプレス成形後の熱処理により引張強さが顕著に増加する、極めて大きな歪時効硬化特性を有する冷延鋼板およびその製造方法に関する。なお、本発明でいう冷延鋼板には、冷間圧延後焼鈍を施して製造される、いわゆる冷延鋼板のほか、冷間圧延後に焼鈍しさらに溶融亜鉛めっきや電気めっきなどのめっきを施された冷延めっき鋼板をも含むものとする。
本発明でいう極めて大きな歪時効硬化特性、すなわち「歪時効硬化特性に優れる」とは、ΔTS:150MPa以上、好ましくはΔTS:170MPa以上、になる歪時効硬化特性を有することを意味する。なお、本発明において、ΔTSとは、塑性歪量5%以上の予変形処理後、150 〜 350℃の範囲の温度で保持時間:30s以上の熱処理を施したときの、熱処理前後の引張強さ増加量{=(熱処理後の引張強さ)−(予変形処理前の引張強さ)}を意味する。
近年、地球環境の保全問題からの排出ガス規制に関連して、自動車の車体重量の軽減が極めて重要な課題となっている。最近、車体重量の軽減のために、自動車用鋼板を高強度化して鋼板板厚を低減することが検討されている。
鋼板を素材とする自動車の車体用部品の多くがプレス加工により成形されるため、使用される鋼板には、優れたプレス成形性を有することが要求される。しかし、一般に、鋼板を高強度化すると、降伏応力が上昇し形状凍結性が劣化するとともに、延性が低下してプレス成形性が低下する傾向となる。
また最近では、衝突時に乗員を保護するため、自動車車体の安全性が重視され、そのために衝突時における安全性の目安となる耐衝撃特性の向上が要求されている。耐衝撃特性の向上には、完成車での強度が高いほど有利になる。したがって、自動車部品の成形時には、強度が低く、高い延性を有してプレス成形性に優れ、完成品となった時点には、強度が高くて耐衝撃特性に優れる鋼板が最も強く望まれていた。
このような要望に対し、プレス成形性と高強度化とを両立させた鋼板が開発された。この鋼板は、プレス加工後に100 〜200 ℃の高温保持を含む塗装焼付処理を施すと降伏応力が上昇する塗装焼付硬化型鋼板である。この鋼板では、最終的に固溶状態で残存するC量(固溶C量)を適正範囲に制御し、プレス成形時には軟質で、形状凍結性、延性を確保し、プレス成形後に行われる塗装焼付処理時に、残存する固溶Cがプレス成形時に導入された転位に固着して、転位の移動を妨げ、降伏応力を上昇させる。しかしながら、この塗装焼付硬化型鋼板では、降伏応力は上昇させることができるものの、引張強さまでは上昇させることができなかった。
また、特許文献1には、C:0.08〜0.20%、Mn:1.5 〜3.5 %を含み残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、組織がフェライト量5%以下の均一なベイナイトもしくは一部マルテンサイトを含むベイナイトで構成された焼付硬化性高張力冷延薄鋼板が開示されている。特許文献1に記載された冷延薄鋼板は、連続焼鈍後の冷却過程で400 〜200 ℃の温度範囲を急冷し、その後を徐冷とすることにより、組織を従来のフェライト主体の組織からベイナイト主体の組織として、従来になかった高い焼付硬化量を得ようとするものである。
しかしながら、特許文献1に記載された冷延薄鋼板では、塗装焼付け後に降伏強さが上昇し、従来になかった高い焼付け硬化量が得られるものの、依然として引張強さまでは上昇させることができず、耐衝撃特性の向上が期待できないという問題があった。
また、プレス成形後に熱処理を施し、降伏応力のみならず引張強さをも上昇させようとする鋼板が、熱延鋼板ではあるが、いくつか提案されている。
例えば、特許文献2には、C:0.02〜0.13%、Si:2.0 %以下、Mn:0.6 〜2.5 %、sol.Al:0.10%以下、N:0.0080〜0.0250%を含む鋼を、1100℃以上に再加熱し、850 〜950 ℃で仕上圧延を終了する熱間圧延を施し、ついで15℃/s以上の冷却速度で150 ℃未満の温度まで冷却し巻取り、フェライトとマルテンサイトを主体とする複合組織とする、熱延鋼板の製造方法が提案されている。しかしながら、特許文献2に記載された技術で製造された鋼板では、歪時効硬化により降伏応力とともに引張強さが増加するものの、150 ℃未満という極めて低い巻取温度で巻き取るため、機械的特性の変動が大きく、またプレス成形−熱処理による降伏応力等の増加量のバラツキが大きいという問題があった。
また、特許文献3には、熱延板をめっき原板とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。この方法は、C:0.05%以下、Mn:0.05〜0.5 %、Al:0.1 %以下、Cu:0.8 〜2.0 %を含む鋼スラブを巻取温度:530 ℃以下の条件で熱間圧延を行い、続いて530 ℃以下の温度に加熱し鋼板表面を還元したのち、溶融亜鉛めっきを施すことにより、成形後の熱処理による著しい硬化が得られるとしている。しかしながら、この方法で製造された鋼板では、成形後熱処理により著しい硬化を得るためには、熱処理温度を500 ℃以上とする必要があり、熱処理温度が高く、実用上問題を残していた。
また、特許文献4には、熱延板あるいは冷延板をめっき原板とし、成形後の熱処理により強度上昇が期待できる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。この方法は、C:0.01〜0.08%を含み、Si、Mn、P、S、Al、Nを適正量としたうえで、Cr、W、Moの1種または2種以上を合計で0.05〜3.0 %含有する鋼を熱間圧延したのち、あるいはさらに調質圧延または冷間圧延し焼鈍したのち、溶融亜鉛めっきを行い、その後加熱合金化処理を施すというものである。この鋼板は、成形後、200 〜450 ℃の温度域で加熱することにより引張強さ上昇が得られるとされる。しかしながら、引張強さ上昇量は最大で140 MPa 程度であり、最近のユーザーの要望に対しては不十分なものである。
また、特許文献5には、プレス成形体の製造方法が提案され、Si、Al、Pを、{Si+1.4Al +6.3 P}:0.2 〜3%の範囲となるように調整した鋼板を用い、プレス成形後、低温で熱処理を施すことにより最大で400MPa程度の引張強さの上昇が得られるとしている。しかし、特許文献5に記載された技術では、Si、Al、Pを多量に含有させる必要があり、プレス成形性や化成処理性が低下するという問題がある。
また、特許文献6には、C:0.15%以下、Mn:3.0 %以下、Cu:0.5 〜3.0 %を含み、Si、P、S、Al、Nを適正量含む組成と、組織を主相としてのフェライト相と、面積率で2%以上のマルテンサイト相を含む第二相との複合組織としたプレス成形性と歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板が開示されている。このCu含有鋼板では、成形後に150 〜350 ℃の温度域で加熱することにより、80MPa 以上、引張強さが上昇するとしている。しかしながら、特許文献6に記載された技術では、Cu含有を必須としており、Cu含有は鋼材のリサイクルという観点からは好ましくない。また特許文献6にはCuに代えて、Mo、Cr、Wのうちから選ばれた1種または2種以上を含有する鋼板も開示されているが、この場合では、鋼板の引張強さ上昇量は最大でも140MPa程度であり、最近のユーザーの要望に対しては不十分なものである。
また、特許文献7には、C:0.20%以下、Mn:3.0 %以下、Cu:0.5 〜3.0 %を含み、Si、P、S、Al、Nを適正量含む組成、あるいはCuに代えて、Mo、Cr、Wのうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成と、組織を主相としてのフェライト相と、体積率で1%以上の残留オーステナイト相を含む第二相との複合組織としたプレス成形性と歪時効硬化特性に優れた高延性冷延鋼板が開示されている。この鋼板では、成形後に150 〜350 ℃の温度域で加熱することにより、80MPa 以上、引張強さが上昇するとしている。
しかしながら、特許文献7に記載された技術では、Cuを含有する場合には、鋼材のリサイクルという観点からは好ましくない。さらに、特許文献7に記載された技術では、未変態オーステナイトを残留させるため、Siを多量に含有する必要があり、めっき性、化成処理性に問題がある場合があり、表面改質を行うための処理を必要とし製造コストが高くなるという問題があった。
特公平5-24979 号公報 特公平8-23048 号公報 特許第2802513 号公報 特開平10−310824号公報 特開2000-178684 号公報 特開2001-348645 号公報 特開2003-13176号公報
本発明は、上記したように、極めて強い要求があるにもかかわらず、これらの特性を満足する鋼板を工業的に安定して製造する技術がこれまでになかったことに鑑み成されたものであり、上記した問題を有利に解決し、自動車用鋼板として好適な、優れたプレス成形性を有し、かつプレス成形後に、比較的低い温度での熱処理によって引張強さが極めて大きく上昇する歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板およびこの高延性鋼板を安定して生産できる製造方法を提案することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、歪時効硬化特性におよぼす合金元素の影響について鋭意研究を重ねた。その結果、Cを低炭素域とし、適正範囲のNb、Moのうちの1種または2種を含有する組成とし、さらに析出物の大きさを平均粒径32nm以下、好ましくは30nm以下、に調整した熱延板を母板として、冷間圧延(冷延ともいう)と(Ac3変態点−110 ℃)以上、好ましくは(Ac3変態点−100 ℃)以上、の温度域で焼鈍を施して冷延鋼板(冷延焼鈍板ともいう)とすることにより、予歪:5%以上の予変形処理と150 〜350 ℃の比較的低温の熱処理を施したのちに、降伏応力の増加に加えて、引張強さも顕著に増加する、高い歪時効硬化特性を有する鋼板となることを知見した。
まず、本発明者らが行った基礎的な実験結果について説明する。
質量%で、C:0.08%、Si:0.25%、Mn:1.9 %、P:0.01%、S:0.001 %、Al:0.04%、N:0.002 %、Mo:0.19%、Nb:0.05%を含有する組成のシートバーについて、1250℃に加熱−均熱後、仕上圧延出側温度が900 ℃となるように3パス圧延を行い板厚4.0 mmの熱延板とし、仕上圧延終了後、種々の冷却速度で冷却し、コイル巻取相当処理として種々の温度で1h保持する保温処理を行った。得られた熱延板の組織を透過型電子顕微鏡で観察し、析出物の大きさ(平均粒径)を測定した。なお、析出物の平均粒径は、各熱延板について倍率10万倍で10視野以上観察し、画像解析装置を用いて各視野における各析出物の面積を求め、この面積から円相当直径を求め各析出物の粒径として、各視野における析出物の平均粒径を求め、測定した全視野の平均値を各熱延板の平均値とした。なお、析出物の平均粒径を求めるに際しては、各視野において円相当直径で80nmを超える粗大な析出物を除き、粒径80nm以下の析出物について、上記したように析出物の平均粒径を求めた。円相当直径で80nmを超える析出物を除外したのは、これら析出物は比較的安定な析出物であり、冷間圧延後の焼鈍時に溶解することが期待できないと考えたからである。また、粒径80nm以下の析出物について、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて分析した結果、炭素と、Nbおよび/またはMoが検出され、これら微細な析出物はNb、Moのうちの1種または2種を含む炭化物であると推定される。
引き続き、熱延板に60%の冷間圧延を施して板厚1.2 mmの冷延板とした。ついで、これらの冷延板に種々の条件で焼鈍を施した。
得られた冷延板について、引張試験を実施し引張特性を調査した。さらに、これら冷延板の歪時効硬化特性について調査した。
まず、これら冷延板から試験片を採取し、これら試験片に引張予歪量5%の予変形処理を施し、ついで250 ℃×20min の熱処理を施したのち、引張試験を実施し引張特性を求めた。歪時効硬化特性は、熱処理前後の引張強さ増加量ΔTSで評価した。ΔTSは、熱処理を施した後の引張強さTSHTと、予変形処理および熱処理を施さない場合の引張強さTSとの差(=(熱処理後の引張強さTSHT)−(予変形処理前の引張強さTS))とした。なお、引張試験は、JIS 5号引張試験片を用いて実施した。
得られた結果を、ΔTSと熱延板の析出物平均粒径との関係で図1に示す。図1は、熱延後の冷却速度と巻取相当処理温度を変化した熱延板に冷間圧延を施した後、Ac3変態点( 810℃)直下の800 ℃で90s保持する焼鈍を行った場合の結果である。図1から、熱延板の析出物の大きさを平均粒径で32nm以下に調整することにより、ΔTSが150MPa以上という高い歪時効硬化特性を有する鋼板が得られ、さらに、熱延板の析出物の大きさを平均粒径で30nm以下に調整することにより、ΔTSが170MPa以上という高い歪時効硬化特性を有する鋼板が得られことがわかる。
ΔTSと焼鈍温度との関係を図2に示す。図2は、熱延後の冷却速度を50℃/s、巻取相当処理温度を400 ℃とし、析出物平均粒径を17nmとした熱延板に冷間圧延を施した後、種々の温度で90s間保持する焼鈍を行った場合の結果である。図2から、焼鈍温度を、(Ac3変態点−110 ℃)である700 ℃以上とすることにより、ΔTSが150MPa以上という高い歪時効硬化特性を有する鋼板が得られ、さらに焼鈍温度を(Ac3変態点−100 ℃)である710 ℃以上とすることにより、ΔTSが170 MPa 以上という高い歪時効硬化特性を有する鋼板が得られることがわかる。なお、Ac3変態点については、昇温速度5℃/sで昇温中の熱膨張−温度曲線の測定により求めた。
上記の結果をもとに種々検討した結果、Cを低炭素域とし、適正範囲のNb、Moのうちの1種または2種を含有する組成とし、さらに析出物の大きさを平均粒径32nm以下に調整した熱延板を冷延板母板として、冷延と(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度域での焼鈍を施し得られた鋼板に、予歪:5%以上の予変形と150 〜350 ℃の比較的低温の熱処理を施すと、極めて大きな引張強さの上昇が得られることを見出した。このように予変形と比較的低温の熱処理を施すことにより極めて大きな引張強さの上昇が得られるようになる理由については現在までのところ明確になっていないが、本発明者らは次のように考えている。
平均粒径32nm以下の微細な析出物が析出した熱延板を冷延板母板として冷間圧延を施すと、界面エネルギーや歪エネルギーが高く不安定な微細析出物と冷間圧延により導入された高密度の転位との相互作用により、析出物が一層不安定となり、次工程の焼鈍処理により固溶Cとしてフェライト相中に溶解しやすくなる。なお、上記析出物はNb、Moのうちの1種または2種を含む炭化物と考えられる。さらに、焼鈍処理を(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度域での焼鈍とすることにより、焼鈍中に熱延板の段階で生成した微細析出物を十分に溶解することができる。したがって、上記した工程を経て得られた鋼板に、予歪:5%以上の予変形処理と比較的低温の熱処理を施すと、鋼板中にNb、Moのうちの1種または2種を含む極微細な炭化物が歪誘起析出するものと考えられる。この極微細な炭化物の歪誘起析出により、降伏応力とともに引張強さが顕著に増加する高い歪時効硬化特性が得られたものと考えられる。
なお、本発明者らは、炭化物形成元素として、Nb、Moのうちの1種または2種に加えて、さらにTi、Vのうちの1種または2種を複合含有することにより、引張強さがさらに増加することを知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討して完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.25%以下、Mn:3.0 %以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.033 %以下、N:0.02%以下を含み、さらにNb:0.01〜0.2 %、Mo:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、次(1)式
ΔTS=TS HT −TS ‥‥(1)
ここで、TS HT :予変形−熱処理後の引張強さ(MPa )、TS:鋼板の引張強さ(MPa )、なお、予変形−熱処理:引張塑性歪量5%以上の予変形処理後、150 〜 350℃の範囲の温度で保持時間:30s以上の熱処理)
で定義されるΔTSが、ΔTS:150MPa以上となる歪時効硬化特性を有することを特徴とする歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板。
(2)(1)において、前記組成を有し、粒径80nm以下の析出物について求めた析出物平均粒径が32nm以下である熱延板を、冷間圧延し、ついで(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度域で焼鈍を施してなることを特徴とする冷延鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti、Vの1種または2種を合計で0.4 %以下含有することを特徴とする冷延鋼板。
(4)鋼スラブを、熱間圧延したのち、冷却し巻き取り熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に焼鈍を施し冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、を順次施す冷延鋼板の製造方法において、前記鋼スラブを、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.25%以下、Mn:3.0 %以下、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.033 %以下、N:0.02%以下を含み、さらにNb:0.01〜0.2 %、Mo:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブとし、前記熱延工程における冷却および巻き取りを、20℃/s以上の冷却速度で600 ℃以下まで冷却して巻き取る冷却および巻き取りとし、前記焼鈍における焼鈍温度を(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度とすることを特徴とする歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板の製造方法。
(5)(4)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti、Vの1種または2種を合計で0.4 %以下含有することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
(6)(4)または(5)において、前記熱間圧延の、スラブ加熱温度が900 ℃以上、仕上圧延出側温度が700 ℃以上であることを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
(7)(4)ないし(6)のいずれかにおいて、前記焼鈍後の冷却速度を、1℃/s以上とすることを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、優れたプレス成形性を維持しつつ、プレス成形後の熱処理により引張強さが顕著に上昇する冷延鋼板を、安定して製造することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。本発明の冷延鋼板を自動車部品用に適用した場合、プレス成形が容易で、かつ完成後の部品特性を安定して高くでき、自動車車体の軽量化に十分に寄与できるという効果もある。
本発明の冷延鋼板は、引張強さTS:440MPa以上の高張力鋼板であり、プレス成形性に優れ、かつプレス成形後の比較的低い温度での熱処理により引張強さが顕著に上昇し、ΔTS:150MPa以上、好ましくはΔTS:170MPa以上になる歪時効硬化特性に優れた鋼板である。
本発明でいう、「歪時効硬化特性に優れた」とは、上記したように、引張塑性歪量5%以上の予変形処理後、150 〜 350℃の範囲の温度で保持時間:30s以上の熱処理を施したとき、この熱処理前後の引張強さ増加量ΔTS{=(熱処理後の引張強さ)−(予変形処理前の引張強さ)}が150MPa以上となることを意味する。なお、望ましくはΔTSは170MPa以上、さらに望ましくは200MPa以上である。
歪時効硬化特性を規定する場合、予歪(予変形)量は重要な因子である。本発明者らは、自動車用鋼板が適用される変形様式を想定して、予歪量がその後の歪時効硬化特性に及ぼす影響について調査した。その結果、極めて深い絞り加工以外はおおむね1軸相当歪(引張歪)量で整理できること、また、実部品においては、この1軸相当歪量がおおむね5%を上回っていること、また、部品強度が予歪5%の歪時効処理後に得られる強度と良く対応すること、が明らかになった。これらのことから、本発明では、熱処理前の予歪(変形)を5%以上の引張塑性歪とした。
従来の塗装焼付処理条件は、170 ℃×20min が標準として採用されているが、本発明におけるように、極微細な炭化物の析出強化を利用する場合には、熱処理温度は150 ℃以上が必要となる。一方、350 ℃を超える条件では、その効果が飽和し、逆にやや軟化する傾向を示す。また、350 ℃を超える温度に加熱すると、熱歪やテンパーカラーの発生などが顕著となる。このようなことから、本発明では、歪時効硬化のための熱処理温度は150 〜350 ℃とした。なお、熱処理温度における保持時間は30s以上とする。熱処理の保持時間については、150 〜350 ℃ではおおむね30s程度以上保持すれば、ほぼ十分な歪時効硬化が達成される。よりおおきな安定した歪時効硬化を得たい場合には保持時間は60s以上とするのが望ましく、より好ましくは300 s以上である。
予変形処理(予歪処理)後の熱処理における加熱方法は、とくに限定されないが、通常の塗装焼付処理におけるように、炉による雰囲気加熱以外に、たとえば誘導加熱、無酸化炎、レーザー、プラズマなどによる加熱などがいずれも好適である。また、鋼板の温度を高めてプレスする、いわゆる温間プレスも、本発明においては極めて有効な方法である。
つぎに、本発明鋼板の組成限定理由について説明する。なお、質量%は単に%と記す。
C:0.01〜0.15%
Cは、鋼板の強度を増加し、また、予変形−熱処理後の強度増加に影響する元素であり、本発明では0.01%以上含有することが必要である。なお、より好ましくは0.02%以上である。一方、0.15%を超える含有は、鋼中の炭化物の分率が増加し、延性、さらにはプレス成形性を低下させる。さらに、より重要な問題として、C含有量が0.15%を超えると、スポット溶接性、アーク溶接性等が顕著に低下する。このため、本発明では、C含有量は0.01〜0.15%に限定した。なお、成形性の観点からは0.10%以下とするのが好ましい。
Si:0.25%以下
Siは、鋼板の延性を顕著に低下させることなく、鋼板を高強度化させることができる有用な強化元素であり、0.01%以上含有することが好ましい。しかし、その含有量が0.25%を超えると、プレス成形性の劣化を招くとともに、表面性状が悪化する。このため、Siは0.25%以下に限定した
Mn:3.0 %以下
Mnは、鋼を強化する作用があり、また、Sによる熱間割れを防止する有効な元素であり、含有するS量に応じて含有するのが好ましい。このような効果は、0.5 %以上の含有で顕著となる。また、Mnは、Ar3変態点を低下させる作用があり、含有量の増加に伴いAr3変態点が低下し、焼鈍冷却時にフェライト変態が低温で起こるようになり焼鈍後のフェライト中の転位密度が高くなる。この焼鈍後の転位密度の増加は予歪量の増加と同様の効果を示し、微細炭化物の歪誘起析出を促進するため、予歪時効後により大きな強度上昇を得ることができるようになる。このような効果は1.0 %以上の含有で顕著となる。なお好ましくは1.5 %以上である。一方、3.0 %を超える含有は、プレス成形性および溶接性が劣化する。このため、本発明ではMnは3.0 %以下に限定した。
P:0.02%以下
Pは、鋼を強化する作用を有する元素であり、所望の強度に応じて、0.005 %以上含有することが好ましい。一方、過剰に含有するとプレス成形性が劣化する。このため、Pは0.02%以下に限定した
S:0.02%以下
Sは、鋼板中では介在物として存在し、鋼板の延性、成形性、とくに伸びフランジ成形性の劣化をもたらす元素であり、できるだけ低減するのが好ましいが、0.02%以下に低減するとさほど悪影響をおよぼさなくなるため、本発明ではSは0.02%を上限とした。なお、優れた伸びフランジ成形性を要求される場合には、Sは0.010 %以下とするのが好ましい。
Al:0.033 %以下
Alは、鋼の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有用な元素であり、0.01%以上含有することが好ましい。しかし、0.033 %を超えて含有してもより一層の脱酸効果は得られず、逆にプレス成形性が劣化する。このため、Alは0.033 %以下に限定したなお、本発明では、Al脱酸以外の脱酸方法による溶製方法を排除するものではなく、たとえばTi脱酸やSi脱酸を行ってもよく、これらの脱酸法による鋼板も本発明の範囲に含まれる
N:0.02%以下
Nは、固溶強化や歪時効硬化で鋼板の強度を増加させる元素であり、0.001 %以上含有することが好ましいが、0.02%を超えて含有すると、鋼板中に窒化物が増加し、それにより鋼板の延性、さらにはプレス成形性が顕著に劣化する。このため、Nは0.02%以下に限定した。なお、よりプレス成形性の向上が要求される場合には0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.008 %以下である。
Nb:0.01〜0.2 %、Mo:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種
Nb、Moは、いずれも鋼板の歪時効硬化(予変形−熱処理後の強度増加)を顕著に増加させる元素であり、本発明において最も重要な元素の一つである。本発明では、Nb、Moのうちから選ばれた1種または2種を含有させ、熱延板の組織を32nm以下、好ましくは30nm以下の極微細な析出物が析出した組織とし、冷間圧延、焼鈍を施すことにより、予変形−熱処理時にNb、Moのうちの1種または2種を含む極微細な炭化物が歪誘起析出し、ΔTS:150MPa以上、好ましくはΔTS:170MPa以上の引張強さの増加が得られる。Nb:0.01%未満、Mo:0.05%未満では、たとえ予変形−熱処理条件、熱延板析出物の大きさを変化させても、ΔTS:150MPa以上の引張強さの増加は得られない。一方、Nb:0.2 %、Mo:1.0 %を超える含有は、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利となるうえ、プレス成形性の劣化を招く。このため、Nbは0.01〜0.2 %、Moは0.05〜1.0 %に限定した。なお、好ましくはNbは0.015 〜0.1 %、Moは0.1 〜1.0 %である。
また、本発明では、上記した基本成分に加えてさらに、Ti、Vの1種または2種を合計で0.4 %以下含有することが好ましい。
Ti、Vの1種または2種:合計で0.4 %以下
Ti、Vは、いずれも炭化物形成元素であり、歪時効硬化を利用した高強度化に有効に作用するため、必要に応じ選択して含有できる。なお、このような効果は単独であれば、Ti:0.01%以上、V:0.01%以上で、複合する場合には合計で0.01%以上の含有で顕著となる。しかし、Ti、Vのうちの1種または2種を合計で0.4 %超えて含有すると、プレス成形性が劣化する。このため、Ti、Vは合計で0.4 %以下に限定するのが好ましい。
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えばSb:0.01%以下、Sn:0.1 %以下、Zn:0.01%以下、Co:0.1 %以下が許容できる。
つぎに、本発明の冷延鋼板の製造方法について説明する。
本発明の冷延鋼板は、上記した範囲内の組成を有する鋼スラブを素材とし、該素材を、熱間圧延したのち、冷却し巻き取り熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に焼鈍を施し冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、を順次施すことにより製造される。
使用する鋼スラブは、転炉等の公知の溶製方法で溶製した溶鋼を、成分のマクロ偏析を防止するために連続鋳造法で鋼スラブとするのが好ましいが、造塊法、薄スラブ連鋳法で製造してもよい。また、鋼スラブを製造したのち、いったん室温まで冷却し、その後再加熱する従来法に加え、冷却しないで、温片のままで加熱炉に挿入する、あるいはわずかの保熱を行った後に直ちに圧延する直送圧延・直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用できる。
熱延工程では、上記した鋼スラブを加熱し、熱間圧延を施したのち、冷却し巻き取り熱延板とする。熱延工程では、スラブ加熱温度を900 ℃以上、仕上圧延出側温度を700 ℃以上とすることが好ましい。そして、本発明では、熱延工程における冷却および巻き取りを、好ましくは20℃/s以上の冷却速度で600 ℃以下まで冷却する冷却とし、冷却後巻き取る工程とする。
スラブ加熱温度:900 ℃以上
スラブ加熱温度が900 ℃未満では、圧延荷重が増大し、熱間圧延時のトラブル発生の危険が増大するため、スラブ加熱温度は900 ℃以上とすることが好ましい。なお、酸化重量の増加にともなうスケールロスの増大などから、スラブ加熱温度は1300℃以下とすることが望ましい。
なお、スラブ加熱温度を低くし、かつ熱間圧延時のトラブルを防止するといった観点から、シートバーを加熱する、いわゆるシートバーヒーターを活用することは、有効な方法であることはいうまでもない。
仕上圧延出側温度:700 ℃以上
仕上圧延出側温度を700 ℃以上とすることにより、冷延および焼鈍後に優れた成形性が得られる均一な熱延母板組織とすることができる。一方、仕上圧延出側温度が700 ℃未満では、熱延母板組織が不均一となるとともに、熱間圧延時の圧延負荷が高くなり、熱間圧延時のトラブルが発生する危険性が増大する。このようなことから、熱延工程の仕上圧延出側温度は700 ℃以上とするのが好ましい。
冷却速度:20℃/s以上
熱間圧延後の冷却は、仕上圧延出側温度から巻取温度までの平均冷却速度で20℃/s以上とすることが好ましい。冷却速度が平均で20℃/s未満では、析出物が粗大化し、熱延板が平均粒径32nm以下、好ましくは30nm以下の析出物が析出した組織を有する熱延板とならず、予変形−熱処理時にNb、Moのうちの1種または2種を含む極微細な炭化物の析出による十分な強度上昇が得られない場合がある。このため、仕上圧延出側温度から巻取温度までの平均冷却速度で20℃/s以上とすることが好ましい。なお、より好ましくは30℃/s以上である。
巻取温度:600 ℃以下
前記冷却速度で600 ℃以下まで冷却し巻き取る。この際、冷却の終点である巻取温度が600 ℃を超えると、析出物が粗大化し、熱延板が平均粒径32nm以下、好ましくは30nm以下の析出物が析出した組織を有する熱延板とならず、予変形−熱処理時にNb、Moのうちの1種または2種を含む極微細な炭化物の析出による十分な強度上昇が得られない場合がある。このため、巻取温度は600 ℃以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは500 ℃以下である。巻取温度が、200 ℃未満では、鋼板形状が顕著に乱れ、実際の鋼板使用において不具合を生じる危険性が増大するため、200 ℃以上とすることが好ましい。
なお、本発明における熱延工程では、熱間圧延時の圧延荷重を低減するために仕上圧延の一部または全部を潤滑圧延としてもよい。潤滑圧延を行うことは、鋼板形状の均一化、材質の均一化の観点からも有効である。なお、潤滑圧延の際の摩耗係数は0.25〜0.10の範囲とすることが好ましい。また、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上圧延する連続圧延プロセスとすることが好ましい。連続圧延プロセスを適用することは、熱間圧延の操業安定性の観点からも望ましい。
上記した熱延工程により得られた熱延板は、平均粒径32nm以下、好ましくは30nm以下の析出物が析出した組織を有する熱延板となる。なお、該平均粒径は、前記したように粒径80nm以下の析出物について求めた析出物平均粒径である。熱延板の析出物を平均粒径32nm以下、好ましくは30nm以下の析出物とすることにより、該熱延板に冷延工程−焼鈍工程を施した冷延焼鈍板が、予変形−熱処理後にNb、Moのうちの1種または2種を含む極微細な炭化物の析出による顕著な強度上昇を示す。析出物の平均粒径が32nmを超えて粗大化すると、予変形−熱処理後にΔTS:150MPa以上という大きな強度上昇効果が得られない。なお、ΔTS:170MPa以上という顕著な強度上昇効果を得るためには、析出物の平均粒径が30nmを超えて粗大化しないことが好ましい。析出物が微細になると、界面エネルギーや歪エネルギーが高くなるため析出物が不安定となりさらに、その後の冷延工程により導入された高密度の転位との相互作用により一層不安定となって、焼鈍工程で析出物が溶解するものと考えられ、その結果、その後の予変形−熱処理により極微細炭化物として歪誘起析出し、強度が顕著に上昇するものと考えれられる。
ついで、このような組織を有する熱延板に、冷延工程を施す。冷延工程では、熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする。冷間圧延条件は、所望の寸法形状の冷延板とすることができればよく、とくに限定されないが、冷間圧延時の圧下率は40%以上とすることが好ましい。圧下率が40%未満では、後工程である焼鈍時に、再結晶が均一に起こりにくくなる。
ついで、冷延板に焼鈍を行い冷延焼鈍板とする焼鈍工程を施す。
焼鈍は、連続焼鈍ラインまたは連続溶融亜鉛めっきラインのいずれかで行うのが好ましい。本発明では、焼鈍は、(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度域で行うことが好ましい。焼鈍温度が(Ac3変態点−110 ℃)未満では、予変形−熱処理後にΔTS:150MPa以上という大きな強度上昇効果が得られない。なお、ΔTS:170MPa以上という顕著な強度上昇効果を得るためには、焼鈍温度が(Ac3変態点−100 ℃)以上とすることが好ましい。焼鈍温度は、熱延板の析出物を溶解するという観点から(Ac3変態点−110 ℃)以上でできるだけ高温であることが好ましいが、(Ac3変態点+100 ℃)を超えると、結晶粒が粗大化するとともに、プレス成形性が劣化しやすくなるため(Ac3変態点+100 ℃)以下とすることが好ましい。なお、Ac3変態点は昇温速度5℃/sで昇温中の熱膨張−温度曲線の測定により求めるものとする。
また、焼鈍後の冷却速度は、1℃/s以上とすることが好ましい。焼鈍後の冷却速度が1℃/s未満では、冷却中に炭化物が析出しやすくなり、予変形−熱処理時に極微細な炭化物の析出による十分な強度上昇が得られない場合がある。なお、焼鈍後の冷却停止温度は、400 ℃以下とすることが好ましい。
また、焼鈍工程後の冷延焼鈍板に、形状、表面粗さ等の調整のために、伸び率:10%以下の調質圧延を施してもよい。
なお、本発明の鋼板は、加工用鋼板としてのみならず、加工用表面処理鋼板の原板としても適用できる。表面処理としては、亜鉛めっき(合金系を含む)、すずめっき、ほうろう等がある。また、溶融亜鉛めっき鋼板とする場合には、連続溶融亜鉛めっきラインにて、上記した焼鈍を施した後、めっき浴温度まで冷却してめっき処理を行い、あるいはさらに合金化処理を行うことが好ましい。
また、本発明の冷延鋼板には、亜鉛めっき後、化成処理性、溶接性、プレス成形性および耐食性等の改善のために特殊な処理を施してもよい。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした。これら鋼スラブに、表2に示す条件の熱延工程により板厚4.0mm の熱延鋼板(熱延板)とした。また、得られた熱延鋼板(熱延板)から試験片を採取し、熱延板組織を調査した。引き続き、これら熱延鋼板(熱延板)に酸洗を施し、ついで、表2に示す条件の冷延工程により板厚1.6mm の冷延板とした。ついで、これら冷延板に、連続焼鈍ラインで、表2に示す条件の焼鈍工程を施し、冷延鋼板(冷延焼鈍板)とした。得られた冷延鋼板(冷延焼鈍板)に、さらに伸び率:0.8 %の調質圧延を施した。
得られた冷延鋼板(冷延焼鈍板)から試験片を採取し、引張特性、歪時効硬化特性を調査した。なお、Ac3変態点は、加熱速度:5℃/sとして測定した熱膨張−温度曲線から求めた。
(1)引張特性
得られた冷延鋼板(冷延焼鈍板)から、圧延方向にJIS 5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、降伏強さYS、引張強さTS、伸びEl、降伏比YRを求めた。
(2)歪時効硬化特性
得られた鋼板(冷延焼鈍板)から、圧延方向にJIS 5号試験片を採取し、予変形(引張予歪)として5%の塑性変形を与えて、ついで250 ℃×20min の熱処理を施したのち、引張試験を実施し、熱処理後の引張強さTSHTを求め、ΔTS=TSHT−TSを算出した。なお、TSHTは予変形−熱処理後の引張強さであり、TSは鋼板(冷延焼鈍板)の引張強さである。
(3)熱延板組織
得られた熱延鋼(熱延板)から試験片を採取し、圧延方向断面(L断面)について、透過型電子顕微鏡を用いて倍率:10万倍で10視野観察し撮像し、画像解析装置を用いて、各々の析出物の面積を求め、この面積から円相当直径を求めて各々の析出物の粒径とし、各視野ごとに粒径80nm以下の析出物について平均粒径を求め、10視野の値を平均して、その熱延板の析出物の平均粒径とした。
なお、鋼板No.24 は、焼鈍温度から460 ℃まで20℃/sで冷却し、溶融亜鉛めっきを施したのち、520 ℃で合金化処理を行い合金化溶融亜鉛めっき鋼板とし、上記した各種特性を評価した。
これらの結果を表3に示す。
Figure 0004385777
Figure 0004385777
Figure 0004385777
本発明例は、いずれも、極めて大きなΔTSを示し、歪時効硬化特性に優れた鋼板となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例では、ΔTSが小さく、歪時効硬化特性が低下した鋼板となっている。
予変形−熱処理後のΔTSと熱延板の析出物平均粒径の関係を示すグラフである。 予変形−熱処理後のΔTSと焼鈍温度の関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.15%、 Si:0.25%以下、
    Mn:3.0 %以下、 P:0.02%以下、
    S:0.02%以下、 Al:0.033 %以下、
    N:0.02%以下
    を含み、さらにNb:0.01〜0.2 %、Mo:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、下記(1)式で定義されるΔTSが、ΔTS:150MPa以上となる歪時効硬化特性を有することを特徴とする歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板。

    ΔTS=TS HT −TS ‥‥(1)
    ここで、TS HT :予変形−熱処理後の引張強さ(MPa )、
    TS:鋼板の引張強さ(MPa )、
    なお、予変形−熱処理:引張塑性歪量5%以上の予変形処理後、150 〜 350℃の範囲の 温度で保持時間:30s以上の熱処理
  2. 前記組成を有し、粒径80nm以下の析出物について求めた析出物平均粒径が32nm以下である熱延板を、冷間圧延し、ついで(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度域で焼鈍を施してなることを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti、Vの1種または2種を合計で0.4 %以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷延鋼板。
  4. 鋼スラブを、熱間圧延したのち、冷却し巻き取り熱延板とする熱延工程と、該熱延板に冷間圧延を施し冷延板とする冷延工程と、該冷延板に焼鈍を施し冷延焼鈍板とする焼鈍工程と、を順次施す冷延鋼板の製造方法において、前記鋼スラブを、質量%で、
    C:0.01〜0.15%、 Si:0.25%以下、
    Mn:3.0 %以下、 P:0.02%以下、
    S:0.02%以下、 Al:0.033 %以下、
    N:0.02%以下
    を含み、さらにNb:0.01〜0.2 %、Mo:0.05〜1.0 %のうちから選ばれた1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼スラブとし、前記熱延工程における冷却および巻き取りを、20℃/s以上の冷却速度で600 ℃以下まで冷却して巻き取る冷却および巻き取りとし、前記焼鈍における焼鈍温度を(Ac3変態点−110 ℃)以上の温度とすることを特徴とする歪時効硬化特性に優れた冷延鋼板の製造方法。
  5. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti、Vの1種または2種を合計で0.4 %以下含有することを特徴とする請求項4に記載の冷延鋼板の製造方法。
  6. 前記熱間圧延の、スラブ加熱温度が900 ℃以上、仕上圧延出側温度が700 ℃以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の冷延鋼板の製造方法。
  7. 前記焼鈍後の冷却速度を、1℃/s以上とすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の冷延鋼板の製造方法。
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