JP4378472B2 - 麹菌daoC遺伝子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規D−アミノ酸オキシダーゼdaoC遺伝子及びその利用に関するものである。更に詳細には、本発明は、麹菌(アスペルギルス・オリゼー:Aspergillus oryzae)より新規に単離したD−アミノ酸オキシダーゼdaoC遺伝子を用いて、新規酵素であるD−アミノ酸オキシダーゼDAOCを大量に生産させ、D−アミノ酸測定試薬など様々な産業分野に利用することを可能にするものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に生体内の蛋白を構成するアミノ酸はL−アミノ酸で構築されているが、一部の特別な分子においてD−アミノ酸を含むことが知られている。このD−アミノ酸およびこれを含有する生体高分子は、様々な特殊な機能を持つことが知られており、生体中のアミノ酸の検出や含有量の測定は臨床検査として非常に重要な項目である。例えば、近年、血中のD−アミノ酸の測定値が腎不全の指標となる可能性が示され、(例えば、非特許文献1、2、3参照)、腎機能の評価項目としてD−アミノ酸が加えられている。
【0003】
このD−アミノ酸の定量は、D−アミノ酸オキシダーゼを用いた酵素法による測定が広く検討されている(例えば、非特許文献4参照)。本法の特徴は、▲1▼D−アミノ酸を特異的に酸化する酵素であるため、L−アミノ酸には全く反応しない、▲2▼オキシダーゼ反応で生成する過酸化水素をペルオキシダーゼとの共役反応により容易に発色反応として検出できる、などである。しかしながら、豚膵臓のD−アミノ酸オキシダーゼのように、酵素の安定性や生産量について課題が残されており、臨床検査用試薬として完成された技術にまでは達していない。
【0004】
D−アミノ酸オキシダーゼを産生する微生物としては、セファロスポリウム・ポトロニイ、トリゴノプシス・バリアビリス、グリオクラディウム属、シュードモナス属、ロドトルラ・グルチニス等の報告がある。しかしながら、これらの微生物から生産される酵素は、生産性や安定性などが解決されず、実用化に至っていない。また細菌由来の場合は、真核生物での発現に障害が発生する可能性もある。
【0005】
一方、近年になってD−アミノ酸オキシダーゼの産生について遺伝子レベルでの検討も行われるようになり、本発明者らは、D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子のクローニングに成功し、その塩基配列の決定にも成功し、麹菌での発現も確認したところである(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−253246号公報
【非特許文献1】
「クリニカル・サイエンス(Clinical Science), 73巻, p.105-108, 1987年
【非特許文献2】
「ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(Journal of Chromatography)」, 614巻, p.7-17, 1993年
【非特許文献3】
「北里医学」、23巻、p.51-62, 1993年
【非特許文献4】
「アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)」, 150巻, p.238-242, 1985年
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが解決しようとする課題は、D−アミノ酸の定量その他様々な産業に利用可能なD−アミノ酸オキシダーゼの有用性に鑑み、本発明者らが先に開発するのに成功した組換えD−アミノ酸オキシダーゼ(特開2002−253246)とは別の新規なD−アミノ酸オキシダーゼを効率よく生産させることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
糸状菌の中でも、特にアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae:黄麹菌)等を含む麹菌は、清酒、みそ、醤油、及び、みりん等を製造する、わが国における醸造産業において古くから利用され、直接に食されてきた菌類であり、米国のFDA(食品医薬局)によりGRAS(Generally Recognized as Safe)にリストアップされている安全な遺伝子源である。
従って、通常の菌由来の遺伝子を食品などに利用する際に必要な慢性毒性検査等の安全審査において、通常の菌由来の遺伝子の場合には約10億円要するのに対して、上記のGRASグレードである遺伝子の場合にはその約3分の1程度の経費で済むし、更に、該審査に要する時間もより短いというメリットがある。
このように、糸状菌、特に麹菌は、安全性及び経済性の点から極めて利用価値の高い遺伝子の宝庫と言える。
【0009】
従って、これら菌のゲノムDNA情報を明らかにし、それにコードされる遺伝子等の機能を明らかにすることによって、バイオテクノロジーを利用した物質生産等のような、食品産業において安全な遺伝子資源の有効な活用法を提供するとともに、農薬及び医薬分野における各種遺伝子スクリーニングの為の有用な情報を提供することが出来る。
更に、近縁種であるアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus) 、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)等のように穀物汚染菌、ヒト感染菌のゲノム情報を解析する有用なツールともなり得るものである。
【0010】
本発明者らは、上記観点にたち、麹菌の一種であるアスペルギルス・オリゼのゲノム解析を行い、遂にそれに成功し、更にそれらの塩基配列の決定及び各種機能等の決定にも成功し、これらの成果を先に特許出願したところである(先の出願:特願2001−403261)。
【0011】
そして今回、更に、本発明者らは、上記した先の出願に記載された配列番号に示される塩基配列情報に基づき、実際に遺伝子組換え手段を用いてトランスフォーマントを作成し、その産生物を得て、更に詳細に該遺伝子の配列およびその機能を検証した。その検証の結果、先の出願において配列番号36897で示される遺伝子配列情報にしたがって単離した遺伝子がD−アミノ酸オキシダーゼを発現するという具体的な機能、有用性を有するという新規事実をはじめて確認した。
【0012】
すなわち、この発明は、先の出願において配列番号36897に示される塩基情報を使用して、Aspergillus oryzae中に、これと相同性を有する遺伝子を単離し、この遺伝子を導入した宿主が、配列番号36897号についての説明中に示されるD−アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質を現に産生することを確認したことに基づくものである。
具体的には、上記配列番号36897号に示される塩基配列情報を解析し、その結果、D−アミノ酸オキシダーゼに相同性を示した予測遺伝子を見出した。これをdaoCと命名した。
【0013】
次に、このdaoC遺伝子の機能を調べるため、本遺伝子の大腸菌への導入を試みた。daoC遺伝子のcDNAを取得するため、daoC遺伝子の発現様式を調べた。具体的には、DPY液体培養、DPY+D−アミノ酸添加培養、米麹培養により得られた菌体からRNAを抽出し、逆転写PCRによりcDNAを増幅した。その結果、D−アミノ酸添加培養、米麹培養においてcDNAの増幅が確認された。とくにD−アミノ酸添加培養においてはcDNAが顕著に増幅された。
【0014】
このようにして得られたdaoC cDNA(1.0kb)を大腸菌高発現用ベクターpET23b(Novagen社製)に挿入し、常法に従って形質転換体の培養を行った。その結果、得られた形質転換体の菌体破砕液はpET23bで形質転換したものの菌体破砕液に比べて極めて高いD−アミノ酸オキシダーゼ活性を示した。
従って、我々が単離したdaoC遺伝子には、D−アミノ酸オキシダーゼ活性を有する蛋白がコードされていることが示された。
【0015】
本発明は、これら有用新知見に基づいてなされたものであって、D−アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質、それをコードする遺伝子に関するものであり、その態様例は以下に示される。
【0016】
(態様1) 以下の(a)または(b)のタンパク質:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、(b)アミノ酸配列(a)においてアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつD−アミノ酸オキシダーゼタンパク質。
【0017】
(態様2) 配列番号2の塩基配列で示される、請求項1記載のタンパク質(a)をコードする遺伝子、または、該遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつD−アミノ酸オキシダーゼタンパク質(b)をコードする遺伝子のDNA。
【0018】
本発明において、上記した特定のアミノ酸配列には、これと実質的に同一のアミノ酸配列も包含されるものである。本発明における特定のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、該アミノ酸配列と全アミノ酸配列に亘ってアラインメントして比較した場合に、全体の平均で約30%以上、好ましくは約50%以上、更に好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上のアミノ酸が同一であるようなアミノ酸配列を意味する。従って、或るアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列から成るタンパク質は、該アミノ酸配列から成るタンパク質と実質的に同等の機能を有するものと考えられる。
【0019】
又、本発明タンパク質における特定のアミノ酸配列において一部のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列とは、該アミノ酸配列から成るタンパク質と実質的に同等の機能を有する限りにおいて、好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加したアミノ酸配列、或いはそれらを組み合わせたアミノ酸配列から成るものを意味する。又、タンパク質の「機能」とは、それが細胞(菌体)の内部及び/又は外部において示す生物学的機能又は活性を意味する。
【0020】
上記の特定のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列から成るタンパク質、又はその一部のアミノ酸が欠失、置換又は付加したアミノ酸配列から成るタンパク質は、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法、及びPCR法等の当業者に周知の方法を適宜組み合わせて、容易に作成することが可能である。
尚、その際に、実質的に同等の機能を有するためには、当該タンパク質を構成するアミノ酸のうち、同族アミノ酸(極性・非極性アミノ酸、疎水性・親水性アミノ酸、陽性・陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸など)同士の置換が可能性として考えられる。又、実質的に同等の機能の維持のためには、本発明の各タンパク質に含まれる機能ドメイン内のアミノ酸は保持されることが望ましい。
【0021】
本明細書において、「ストリンジェントな条件下」とは、各塩基配列間の相同性の程度が、例えば、全体の平均で約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上であるような、高い相同性を有する塩基配列間のみで、特異的にハイブリッドが形成されるような条件を意味する。具体的には、例えば、温度60℃〜68℃において、ナトリウム濃度150〜900mM、好ましくは600〜900mM、pH 6〜8であるような条件を挙げることが出来る。
ハイブリダイゼーションは、例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))に記載の方法等、当業界で公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0022】
このように、本発明に係るdaoC遺伝子は新規なものであって、従来既知のD−アミノ酸オキシダーゼとは異なる新規D−アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子、該新規D−アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、これらの遺伝子の少なくともひとつを含有する遺伝子、から選ばれる少なくともひとつを指示するものである(以下、単にdaoC遺伝子ということもあり、その塩基配列(2640bp)を配列表の配列番号2、及び、図面の図3、図4に示す。)
【0023】
本発明DNAは、当業者に公知の方法で調製することが出来る。例えば、本明細書において具体的な塩基配列で示される各DNAは、アスペルギルス・オリゼのゲノムを出発材料として用いて、例えば、ショットガン・クローニング法によって調製することができる。その際、断片化された各染色体DNAは、その長さ等に応じて、プラスミドベクター又はファージ等の適当なクローニングベクターに連結し、これを用いてエレクトロポレーション法等の適当な方法によって大腸菌等の適当な宿主細胞を形質転換し、該断片化各染色体DNAをクローニングする為の、クローンライブラリーを調製することができる。
更に、化学分解法(マキサム−ギルバート法)及びジデオキシ法等の公知の方法に従って、かかるクローンライブラリーから得られる断片化各染色体DNAの塩基配列を決定することができる。
【0024】
或は、本明細書に記載された本発明DNAの塩基配列又はアミノ酸配列の情報に基づき、当業者に周知の化学合成、又は、本発明のプライマーを使用したPCRにより増幅して調製することも出来る。
【0025】
本発明に係るDNA源として用いるアスペルギルス・オリゼのゲノムの1例としては、アスペルギルス・オリゼRIB40株のゲノムを使用することができる。なお、本菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−18273として寄託されている。
【0026】
本発明において、このようにして単離したdaoC遺伝子は、これを宿主に導入して発現せしめ、D−アミノ酸オキシダーゼ又はD−アミノ酸オキシダーゼ酵素活性を有するタンパク質を製造するものである。なお、本発明において、D−アミノ酸オキシダーゼ酵素活性を有するタンパク質にはD−アミノ酸オキシダーゼも包含されるものであって、そのアミノ酸配列は配列番号1(図1、図2)に示される。
【0027】
例えば、daoC遺伝子のコード領域(1.1kbp)をベクター(例えば、大腸菌高発現用ベクターpET23b)に挿入して組換えベクターを調製する。このようにして調製した大腸菌発現プラスミドをpET23b−daoCと命名し、これを特許生物寄託センターにFERM P−19108として寄託した(図8)。
【0028】
このようにして調製した大腸菌発現プラスミドpET23b−daoCを宿主(例えば大腸菌)に導入して形質転換体を得る。このようにして得た形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)T7−DAOCと命名した。本形質転換体を培養したところ、菌体破砕液がきわめて高いD−アミノ酸オキシダーゼ活性を示すことから、本遺伝子の発現が確認された。
【0029】
本発明にかかるD−アミノ酸オキシダーゼ蛋白は、従来未知のD−アミノ酸オキシダーゼと同様に、各種のD−アミノ酸をD−ケト酸に酸化する作用を有し、以下のようなD−アミノ酸をそれぞれ対応するD−ケト酸に酸化することができる:D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−グルタミン等。しかし、そのアミノ酸配列は、従来のものとは相違しているところから、本酵素を新規酵素と同定し、D−アミノ酸オキシダーゼDAOCと命名した。
以下、本発明を以下の実験例によりさらに詳細に説明する。
【0030】
【実施例1】
daoC遺伝子のクローニング及びdaoC遺伝子の塩基配列の決定
先の出願に記載したように、麹菌ゲノム解析コンソーシアムにより配布されたゲノム解析結果のうち、D−アミノ酸オキシダーゼに相同性を示した予測遺伝子Con1601_h_1200について妥当性を検討した。本遺伝子はゲノムコンティグ1601番の逆鎖上にコードされる、全長3.4kbpの遺伝子として予測されていた。そのうち1−1000bpがプロモーター領域、1001−1032bp、1098−1684、1777−2183、2828−3121bpがコード領域、3122−3421bpがターミネーター領域、イントロンが3つ含まれていると予測されていた。ゲノム予測ではイントロンが3つ含まれるとされていたが、cDNA配列の解析により、第3イントロンは存在しないことが明らかとなった。
【0031】
そこで、Con1601_h_1200に含まれる遺伝子をdaoCと命名し、予測される開始コドンを含むプライマー(オリゴDNA#1)とoligo dTプライマーにより米麹から得たRNAをテンペレートとしてcDNAを増幅し、塩基配列の解析を行った。オリゴDNA#1の塩基配列を配列番号3(図5)に示す。
【0032】
その結果、daoC遺伝子は予測と異なり、イントロンを2つしか含まず、そのコーディング領域には349アミノ酸がコードされていた。しかし、イントロン部分およびCDS領域については予測とは異なるものの、daoCをコードする遺伝子の塩基配列は先の出願に係る配列番号36897号に示される塩基配列中に一部置換部分を除き全て含まれており、先の出願に係る配列番号36897号に示される遺伝子は、D−アミノ酸オキシダーゼ遺伝子であることが確認された。
【0033】
【実施例2】
daoC遺伝子の大腸菌への導入
次に、daoC遺伝子の機能を確認するため、本遺伝子の大腸菌への導入を試みた。daoC遺伝子のコード領域(1.1Kbp)をdaoC cDNAをテンペレートとして宝酒造株式会社製PyrobestによりオリゴDNA#2、オリゴDNA#3を用いて増幅した断片を制限酵素NdeIで処理し、大腸菌高発現用ベクターpET23b(Novagen社製)のNdeIサイトに挿入して、新規組換えベクターpET23b−daoCを構築し、これを特許生物寄託センターにFERM P−19108として寄託した。常法にしたがって本組換えベクターを用いて大腸菌の形質転換を行い、得られた新規形質転換体をEscherichia coli T7−DAOCと命名した。
【0034】
なお上記において、PCR用プライマーとして用いたオリゴDNA#2及びオリゴDNA#3の塩基配列を、それぞれ、配列番号4(図6)および配列番号5(図7)に示す。
【0035】
上記によって得た形質転換体の培養を行った。その結果、得られた形質転換体の菌体破砕液はpET23bで形質転換したものの菌体破砕液に比べてきわめて高いD−アミノ酸オキシダーゼ活性を示した。
【0036】
従って、我々が単離したdaoC遺伝子には、D−アミノ酸オキシダーゼ活性を有する蛋白がコードされていることが明らかとなった。このように本発明に係るdaoC遺伝子は新規なものであって、従来既知のD−アミノ酸オキシダーゼとは異なる新規D−アミノ酸オキシダーゼをコードする遺伝子、該新規D−アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、これらの遺伝子の少なくとも一つを含有する遺伝子、から選ばれる少なくとも一つを指示するものである。
【0037】
【実施例3】
組換えD−アミノ酸オキシダーゼDAOCの利用
D−アミノ酸オキシダーゼが触媒する反応の反応式を以下に示す。
【0038】
D−アミノ酸 + O2 + H2O → ケト酸 + H2O2 + NH3
【0039】
反応式から明らかな様に、反応生成物のピルビン酸、過酸化水素またはアンモニアの何れを検出してもD−アミノ酸を定量することが出来る。例えば生成した過酸化水素の検出には、比色法、蛍光法、化学発光法、電極法などが知られており、その何れもが使用できる。比色法では、ペルオキシダーゼ等の触媒により、過酸化水素でペルオキシダーゼの基質を酸化発色させ、発色濃度を分光光度計で測定する。ペルオキシダーゼの基質としては、o−フェニレンジアミン、5−アミノサリチル酸、4−アミノアンチピリンとフェノール、2,2′−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸)、ビス[3−ビス(4−クロロフェニル)メチル−4−ジメチル−アミノフェニル]アミン等が利用できる。
【0040】
蛍光法では、ペルオキシダーゼ等の触媒により、過酸化水素で基質を酸化して蛍光物質を生成させ、その蛍光強度を蛍光光度計で測定する。ペルオキシダーゼの基質としては、p−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸などが利用できる。化学発光法では、ペルオキシダーゼ等の触媒により、過酸化水素で基質を酸化して発光させ、その発光強度をルミノメーターで測定する。化学発光する基質としては、ルミノール化合物、ルシゲニン、アリルシュウ酸エステル類の化合物などが利用できる。D−アミノ酸オキシダーゼとD−アミノ酸の検出に必要な前記の試薬成分を含む試薬を調製し、D−アミノ酸の測定キットとして診断薬等に組み立てることが出来る。
【0041】
また、このD−アミノ酸オキシダーゼDAOCを使用すれば、DL−アミノ酸をラセミ分割して効率よくL−アミノ酸を分離、精製、製造することができ、例えば化学合成したラセミ体のアミノ酸からL−アミノ酸のみを効率よく得ることができる。
【0042】
具体的に、daoC D−アミノ酸オキシダーゼの基質特異性を検討した結果を示す。
反応溶液組成を以下に示す。
【0043】
50mM D−アミノ酸
50mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)
0.86mM o−ジアニシジン
3000U ペルオキシダーゼ
0.5μg/mlD−アミノ酸オキシダーゼ溶液
【0044】
室温で5分間反応後、上記反応液1mlに対し、30%硫酸溶液0.5mlを添加し、540nmでの吸光度を測定することにより活性を測定した。得られた結果を、下記表1に示す。
【0045】
【0046】
基質特異性を検討した結果、本D−アミノ酸オキシダーゼはD−アスパラギン酸およびD−グルタミン酸に対して特異的に反応することがわかった。したがって、これらD−アミノ酸の検出、ラセミ分割において非常に効果的であることがわかる。
【0047】
【発明の効果】
本発明により、麹菌の新規D−アミノ酸オキシダーゼDAOCを大量に生産することがはじめて可能となり、研究用試薬やD−アミノ酸測定用の検査薬への応用などD−アミノ酸オキシダーゼを産業上広く利用することを可能にするものである。また本発明は麹菌の酵素を麹菌で生産させるため、生産される酵素蛋白は非常に安全性が高く、食品、医薬品、化粧品産業などへも応用が可能な画期的な技術である。
【0048】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】D−アミノ酸オキシダーゼDAOCのアミノ酸配列を示す。
【図2】同上続きを示す。
【図3】D−アミノ酸オキシダーゼdaoC遺伝子の塩基配列を示す。
【図4】同上続きを示す。
【図5】オリゴDNA#1プライマーを示す。
【図6】オリゴDNA#2プライマーを示す。
【図7】オリゴDNA#3プライマーを示す。
【図8】大腸菌発現プラスミドpET23b−daoCの構築及びその制限酵素地図を示す。
Claims (9)
- 以下の(a)または(b)のタンパク質:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつD−アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質。 - 配列番号2で示される塩基配列を含むDNAであって、請求項1に記載のタンパク質(a)をコードする遺伝子、または、該遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつD−アミノ酸オキシダーゼ活性を有するタンパク質(b)をコードする遺伝子。
- 請求項2に記載のDNAの内、少なくともコーディング領域を含んでなる組換えベクター。
- 組換えベクターpET23b−daoC(FERM P−19108)。
- 請求項3または4に記載の組換えベクターを導入してなる形質転換体。
- 請求項5に記載の形質転換体を利用すること、を特徴とするD−アミノ酸オキシダーゼタンパク質を生産する方法。
- 請求項1に記載のタンパク質を使用すること、を特徴とするD−アミノ酸の測定方法。
- 請求項1に記載のタンパク質を含有してなること、を特徴とするD−アミノ酸測定試薬。
- 請求項1に記載のタンパク質を使用すること、を特徴とするDL−アミノ酸のラセミ分割方法。
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