JP4365783B2 - 培養装置 - Google Patents

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Description

本発明は、培養装置に関する。
浮遊細胞や細菌等の生体は、細胞に必要な栄養分や酸素を含んだ培養液中に浸漬された状態で培養される。ところで、培養液に含まれる酸素は時間とともに消費されるから、細胞を長時間培養する場合、ガス供給手段によって培養液に酸素を補給し、培養液中の酸素濃度が一定に保たれる。本発明は、培養液中の酸素濃度が一定に保つことができるガス供給手段を備えた培養装置に関する
ガス供給手段を備えた培養装置として、従来例1、2(特許文献1、2)に開示された培養装置がある。
従来例1の培養ユニットは、細胞を培養する培養容器と、この培養容器内の培養液を外部循環させる循環経路とを備えたものであり、この循環経路に、培養液のガス交換を行なうガス交換部を設けたものである。このガス交換部では、循環される培養液にテフロンチューブが浸漬されており、このテフロンチューブ内を流れるガスと培養液との間でガス交換が行なわれている。
このため、ガスの流量を調整すれば培養液に供給する酸素や栄養分の量、培養液から排出される二酸化炭素や窒素化合物の量を調整することができる。よって、培養液中の酸素濃度等を一定に保つことができるから、細胞を、長期間連続で培養することができる。
従来例2の培養ユニットは、培養槽が、中空な筒状体と、この筒状体内に収容された中空糸とから構成されており、中空糸と筒状体の間に細胞を培養するための増殖培地が収容されたものである。そして、筒状体内に収容されている中空糸は、培養槽外に設けられた培地交換装置およびガス供給装置と連通されており、中空糸内には、培地交換装置およびガス供給装置との間を循環する循環培地が流されている。そして、循環培地は、ガス供給装置および培地交換装置に通すことによって、循環培地に含まれる細胞の培養に必要な成分の濃度や酸素濃度を、増殖培地よりも高濃度に保っている。
このため、循環培地が培養槽の中空糸内を通るときに、培養に必要な成分や酸素が循環培地から増殖培地に供給され、細胞が排出した老廃物や二酸化炭素が増殖培地から循環培地に排出される。よって、循環培地の流量を調整すれば培養液中の酸素濃度や二酸化炭素の濃度等を一定に保つことができるから、細胞を、長期間連続で培養することができる。
しかるに、従来例1の培養ユニットは、培養液中の気体成分の濃度は調整することはできるが、細胞の栄養分となるアミノ酸、ホルモン、ビタミンはガスから培養液に供給することができないので、これらの栄養分が消費されてしまえば、細胞はそれ以上増殖することができない。そして、細胞が排出するアンモニア、尿素などの窒素化合物等を培養液から除去することはできないから、これらの成分濃度が一定の量以上になると、細胞は増殖を阻害する。したがって、従来例1の培養ユニットでは、ある程度の期間、つまり培養液中の窒素化合物等の濃度が細胞の培養に適した条件にある間は細胞を培養することができるが、それ以上の期間は細胞を培養できない。そして、細胞を培養することができる期間は、培養ユニットを循環する培養液の量によって制限されてしまい、長期間培養する場合には、装置が大型化してしまう。
また、従来例2の培養ユニットでは、循環されているのは循環培地であって、細胞が浸漬されている増殖培地自体は培養槽内に保持されたままである。すると、増殖培地のうち、中空糸と接触している部分はガス交換等が有効に行なわれるものの、中空糸と隔離している部分はほとんどガス交換等が行なわれないため、培養槽内の増殖培地が不均一な状態となる。そして、中空糸近傍の増殖培地と循環培地との濃度差が小さくなればガス交換効率が低くなるから、中空糸近傍が循環培地と同等の条件になれば、増殖培地全体で見れば培養に適していない条件になっていてもガス交換等が行なわれなくなってしまう。すると、従来例2の培養ユニットでは、長期間培養する内に、中空糸近傍では細胞が増殖していても、他の部分では細胞が死滅してしまう可能性がある。そして、死滅した細胞が増加すれば、これらの細胞によって中空糸が目詰まりしてしまう可能性があり、もし目詰まりが発生すれば、ガス交換等の効率がさらに低下するため、中空糸近傍であっても培養液の状態が悪化し、細胞が増殖できなくなってしまう可能性がある。
特開平07−8260号公報 特開平09−98769号公報
本発明は上記事情に鑑み、培養装置を提供することを目的とする。
第1発明の培養装置は、生体の細胞を培養するための装置であって、培養液を収容するための培養槽と、該培養槽内の培養液を外部循環させる循環手段と、前記培養液を外部循環させている間に、該培養液の状態を調整する培養液調整手段とを備え、該培養液調整手段が、前記培養液のガス濃度を調整するガス濃度調整手段と、前記培養液を浄化する浄化手段とを備えており、該浄化手段と前記ガス濃度調整手段が直列に配置されており、前記浄化手段が、前記培養液を透析する透析部であり、前記循環手段が、前記培養槽から細胞が流出することを防ぐための流出防止手段を備えており、該流出防止手段が、電磁石であることを特徴とする。
第2発明の培養装置は、生体の細胞を培養するための装置であって、培養液を収容するための培養槽と、該培養槽内の培養液を外部循環させる循環手段と、前記培養液を外部循環させている間に、該培養液の状態を調整する培養液調整手段とを備え、該培養液調整手段が、前記培養液のガス濃度を調整するガス濃度調整手段と、前記培養液を浄化する浄化手段とを備えており、該浄化手段と前記ガス濃度調整手段が直列に配置されており、前記浄化手段が、前記培養液を透析する透析部であり、該透析部が、中空な本体ケースと、該本体ケース内に配置された中空糸とを備えており、前記本体ケースの内面と前記中空糸の外面との間に、前記培養液が通される培養液循環通路が形成されており、前記中空糸の内部に、前記培養液を透析するための透析液が通されることを特徴とする。
第3発明の培養装置は、第1または第2発明において、前記培養槽から培養液を抽出する抽出手段を備えており、該抽出手段が、一端が前記培養槽内の培養液に浸漬され、他端が該培養槽外に配置された抽出経路と、該抽出経路に設けられた、前記培養液を搬送するための搬送手段と、前記抽出経路内に、無菌気体を供給する気体供給手段を備えており、該気体供給手段が、前記抽出経路において、その他端と前記搬送手段との間に常時無菌気体を供給していることを特徴とする。
第4発明の培養装置は、第1または第2発明において、前記培養槽内の培養液を外部に排出する培養液排出部と、前記循環手段に外部から新しい培養液を供給する培養液供給部とを有する培養液交換手段を備えており、前記培養液排出部が、前記培養槽から細胞が流出することを防ぐための流出防止手段を備えており、該流出防止手段が、電磁石であることを特徴とする。
第5発明の培養装置は、第1または第2発明において、前記培養する細胞を供給する細胞供給手段を備えており、該細胞供給手段が、培養する細胞を含有する播種液を前記培養槽に搬送する細胞搬送手段と、該細胞供給手段によって搬送された前記播種液を、前記培養槽内に排出する排出部とを備えており、前記細胞搬送手段が、前記播種液が収容された貯蔵部と、前記排出部との間を連通させる播種液搬送経路と、該播種液を前記貯蔵部から前記排出部に向けて送るポンプと、該ポンプと前記排出部との間に設けられ、両者の間を連通遮断するバルブとを備えており、該バルブによって前記ポンプと前記排出部との間を遮断した状態において前記ポンプを作動させ、前記細胞搬送手段内の前記播種液の圧力を上昇させてから、前記バルブによって前記ポンプと前記排出部との間を連通させることを特徴とする。
第6発明の培養装置は、第1または第2発明において、前記培養槽内に、複数本の円管を連結して形成された3次元構造を有する、培養する細胞が付着される培養器具を備えており、該培養器具が、その軸方向が前記培養槽の軸方向と平行となるように、前記培養槽内に配設されており、前記培養器具の表面に、培養する細胞の細胞を播種する播種手段を備えており、該播種手段が、前記培養槽を傾転させる傾転部と、前記培養器具に、細胞を含む液体を供給する細胞供給部と、前記培養槽内に設けられた前記培養器具に対して前記細胞供給部を挿入離脱させる移動部とを備えていることを特徴とする。
第7発明の培養装置は、第6発明において、前記培養槽を、その中心軸まわりに回転させる回転部を備えており、該回転部によって培養槽を回転させながら細胞を播種することを特徴とする。
第1発明によれば、培養槽内の培養液を外部循環させ、培養槽外を循環している間に、培養液の状態を調整することができる。つまり、ガス濃度調整手段によって培養液を所望のガス濃度に飽和させることができるから、培養液のガス濃度を均一な状態に保つことができ、浄化手段によって細胞が排出した老廃物や細胞に有害な物質を除することができるから、培養液の劣化を防ぐことができる。よって、培養槽内の培養液の状態を、培養槽内の細胞に最適な条件に保つことができるから、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。しかも、培養槽外でガス濃度に飽和させるから、培養槽の大きさに係わらず、所望の能力を有するガス濃度調整手段を採用することができる。そして、培養槽内には気泡が発生しないので、気泡によって培養細胞を損傷することを防ぐことができるし、培養細胞に与えるストレスを軽減することができる。さらに、ガス濃度調整手段と浄化手段とを直列に配置している、つまり、外部循環する培養液を、ガス濃度調整手段と浄化手段の両方を通過させてから培養槽に戻すので、培養槽内の培養液の状態を、細胞の培養に適した状態に確実に保つことができる。しかも、ガス濃度調整手段と浄化手段とを直列に配置すれば、コンパクトで一括操作できるので、使い捨てのセットとして製造することが可能である。そして、使い捨てのセットという構成を採用すれば、ガス濃度調整手段と浄化手段とを直列に配置したときに生じる接続部でのコンタミネーションが起こりやすいという問題が生じることも防ぐことができる。さらに、透析によって培養液を浄化するから、循環する培養液中に細胞が含まれていても、透析部を通過するときの細胞の損傷を少なくすることができる。しかも、培養槽外で透析しているから、培養槽の大きさに係わらず、所望の透析能力を有する透析部を採用することができる。また、中空糸間空間を広くとる構成にすれば、培養する細胞等が詰まって透析能力が低下することも防ぐことができる。さらに、浮遊細胞や細菌を培養した場合、浮遊細胞等が培養槽から流出することを防ぐことができるから、培養液を外部循環させながら培養槽内の浮遊細胞等を確実に培養させることができ、長時間連続して細胞を培養することができる。また、死亡した細胞が流出して循環手段内で閉塞することを防ぐことができる。さらに、外部循環する培養液中に細胞が含まれないから、ガス濃度調整手段においてはガスを直接培養液に供給しても細胞の培養に悪影響を与える心配がない。よって、培養液にガスを飽和させるときに、空気透過性のチューブを用いる必要がないから、装置の製造コストを低く抑えることができる。しかも、培養液の循環する経路の内部に設置する必要がない、つまり電磁石は培養液と接触しないので、培養液がコンタミネーションされることを防ぐことができ、しかも、培養液の流れを阻害しないので、培養液をスムーズに外部循環させることができる。また、電磁石は培養する細胞と物理的な接触によって流出を防ぐものではない。つまり培養している細胞と接触しないから、細胞膜の非常に弱い細胞であっても、培養槽からの流出を防ぎ、かつ損傷することなく培養することができる。
発明によれば、培養槽内の培養液を外部循環させ、培養槽外を循環している間に、培養液の状態を調整することができる。つまり、ガス濃度調整手段によって培養液を所望のガス濃度に飽和させることができるから、培養液のガス濃度を均一な状態に保つことができ、浄化手段によって細胞が排出した老廃物や細胞に有害な物質を除することができるから、培養液の劣化を防ぐことができる。よって、培養槽内の培養液の状態を、培養槽内の細胞に最適な条件に保つことができるから、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。しかも、培養槽外でガス濃度に飽和させるから、培養槽の大きさに係わらず、所望の能力を有するガス濃度調整手段を採用することができる。そして、培養槽内には気泡が発生しないので、気泡によって培養細胞を損傷することを防ぐことができるし、培養細胞に与えるストレスを軽減することができる。さらに、ガス濃度調整手段と浄化手段とを直列に配置している、つまり、外部循環する培養液を、ガス濃度調整手段と浄化手段の両方を通過させてから培養槽に戻すので、培養槽内の培養液の状態を、細胞の培養に適した状態に確実に保つことができる。しかも、ガス濃度調整手段と浄化手段とを直列に配置すれば、コンパクトで一括操作できるので、使い捨てのセットとして製造することが可能である。そして、使い捨てのセットという構成を採用すれば、ガス濃度調整手段と浄化手段とを直列に配置したときに生じる接続部でのコンタミネーションが起こりやすいという問題が生じることも防ぐことができる。さらに、透析によって培養液を浄化するから、循環する培養液中に細胞が含まれていても、透析部を通過するときの細胞の損傷を少なくすることができる。しかも、培養槽外で透析しているから、培養槽の大きさに係わらず、所望の透析能力を有する透析部を採用することができる。また、中空糸間空間を広くとる構成にすれば、培養する細胞等が詰まって透析能力が低下することも防ぐことができる。さらに、中空糸の内部に透析液を流し、本体ケースと中空糸との間に透析する培養液を流すから、培養液が透析部を流れるときの流動抵抗を少なくすることができる。よって、培養液を、スムースに外部循環させることができる。しかも、循環する培養液中に細胞が含まれていても、透析部を通過するときに透析部から細胞が受ける抵抗をさらに小さくすることができるから、透析部を通過するときの細胞の損傷を少なくすることができる。また、細胞もスムースに通過することができる。
発明によれば、搬送手段によって培養液を他端部に向けて搬送すれば、培養槽内の培養液を抽出することができるから、培養槽内の細胞の培養状況を確認することができる。しかも、搬送手段と抽出経路の他端部との間には、無菌気体が供給されているから、常に無菌気体を供給しておけば、抽出経路の他端から抽出経路内に雑菌が侵入することを防ぐことができる。すると、抽出経路を通過する培養液が雑菌に汚染されることを防ぐことができる。そして、抽出経路内に残っている培養液も雑菌に汚染されていないから、この培養液を培養槽に戻すことができ、培養液を有効活用することができる。
発明によれば、培養液排出部によって使用中の培養液を培養槽から排出させながら、培養液供給部によって培養槽に新しい培養液を供給することができ、しかも、流出防止手段によって浮遊細胞等が培養槽から流出することを防ぐことができる。このため、培養を継続したままで培養液を交換できるから、長期間の培養が必要である接着細胞や造血細胞であっても培養することができる。しかも、培養液排出部と培養液供給部を同期して作動させるだけで、使用中の培養液と新しい培養液の交換を自動的に行うことができる。よって、培養液の交換に人手が不要となり、培養液や培養中の細胞がコンタミネーションされる危険性を減らすことができる。しかも、培養液の循環する経路の内部に設置する必要がない、つまり電磁石は培養液と接触しないので、培養液がコンタミネーションされることを防ぐことができる。また、電磁石は培養する細胞と物理的接触して流出を防ぐものではない。つまり培養している細胞と接触しないから、細胞膜の非常に弱い細胞であっても、培養槽からの流出を防ぐことができる。
発明によれば、細胞搬送手段によって播種液を培養槽に搬送し、排出部によって培養槽内に排出すれば、播種液に含まれる細胞を培養液に供給することができる。また、バルブを閉めた状態でポンプを作動させれば播種液搬送経路内の播種液の圧力が高くなる。その状態でバルブを開けば、播種液を培養槽内に射出させることができる。すると、培養槽内に細胞を培養する足場となる細胞培養器具などを設けておけば、細胞培養器具の表面に播種液、つまり細胞を播種させることができる。よって、浮遊細胞だけでなく、接着細胞であっても自動的、言い換えれば培養槽を開閉することなく播種することができるから、細胞を播種するときに細胞や培養液等が汚染されることを防ぐことができる。
発明によれば、組織や臓器を構成している細胞であっても、培養器具に付着させれば、培養槽内で培養することができる。このため、従来の培養装置では不可能であった組織や臓器を構成している接着細胞であっても大量に培養をすることができる。また、培養器具の表面に細胞を培養させれば、種々の細胞から3次元組織を構築することができるので、再生医療に必要な3次元の組織や臓器を大量に供給することが可能となる。また、培養器具の形状に沿って細胞を培養させることができるから、培養器具を所望の形状に成形しておけば、所望の形状の組織や臓器を形成することができる。そして、培養器具が円管であるから、培養器具の表面積を大きくすることができるので、大量の細胞を培養することができる。しかも、円管内を培養液が流れるので、全ての細胞に新鮮な培養液を供給することができる。このため、培養される細胞の全ての細胞に栄養分や酸素を効率よく供給することができるので、培養液の循環効率が上がり、培養条件を飛躍的に亢進することが可能となる。さらに、傾転部によって培養槽を傾けた状態で、移動部によって細胞供給部を培養器具内に挿入し、細胞供給部から培養器具内に培養する細胞の細胞を含む液体を垂らせば、培養器具内面に液体を流すことができるので、培養器具内面に細胞を播種することができる。また、傾転部や移動部、細胞供給部の作動を自動化することが可能となるので、培養装置による細胞の培養を自動化することができる。しかも、自動化すれば、人手による作業をなくすことができるので、培養された細胞や、培養液などがコンタミネーションされるのを防ぐことができる。
発明によれば、細胞の播種しているときに、培養槽を傾転させた状態で回転させれば、培養器具の内面全体に液体を流すことができるので、培養器具の内面全体に細胞を播種することができる。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の培養装置は、細胞を培養するための装置であって、培養液を収容するための培養槽と、培養液を外部循環させる循環手段と、培養液が外部循環する経路に設けられた培養液調整手段を備えたものであり、培養液を外部循環させることおよび外部循環している間に培養液調整手段によって培養液の状態を調整するようにしたことが特徴である。
図1は本実施形態の培養装置1の概略説明図である。同図において、符号2は、本実施形態の培養装置1の培養槽を示している。この培養槽2は、例えばガラスやステンレス製の容器であり、培養液を収容するための本体部2aと、本体部2aの内部を密閉することができる蓋部2bとから構成されており、蓋部2bを本体部2aに取り付けると培養槽2内を外部から気密に密封することができるように構成されている。
なお、培養槽2の素材は上記のものに限られず、長期間使用しても腐食せず、また、培養液を変質させない素材であれば特に限定はない。
図1および図2に示すように、前記培養槽2の蓋2bには、この蓋2bを貫通する循環手段10の配管11の一端部が気密に取り付けられており、この配管11の他端はポンプ11pの吸入口に接続されている。一方、ポンプ11pの吐出口には、配管12の一端が取り付けられており、この配管12の他端部は、蓋2bに気密に取り付けられている。そして、配管11の一端、および配管12の他端はいずれも培養槽2内の培養液に浸漬されている。このため、ポンプ11pを作動させれば、培養槽2内の培養液を、配管11 ,12を通して培養槽2の外部を循環させることができる。
また、図1に示すように、配管12には、配管12内を流れる培養液の状態を調整する培養液調整手段20が介装されている。この培養液調整手段20は、培養液に含まれる老廃物等を除去する透析部21と、培養液のガス濃度を調整するガス濃度調整手段22と、培養液に細胞の培養に必要な栄養分を供給する栄養分補給部23を備えている。
このため、ポンプ11pを作動させて培養槽2内の培養液を外部循環させて、培養液を培養液調整手段20に供給することができる。すると、培養槽2内において細胞を培養しながら培養液を外部循環させれば、培養液が培養液調整手段20を通過するときに、細胞が排出した老廃物は透析部21によって培養液から除去され、培養液中の酸素濃度や窒素、二酸化炭素等の濃度はガス濃度調整手段22によって調整され、細胞が消費した栄養分は栄養分補給部23によって培養液に補給されるから、培養液を外部循環させることによって、培養液を、細胞の培養を開始する前の状態、言い換えれば細胞の培養に適した状態に調整して培養槽2内に戻すことができる。
よって、本実施形態の培養装置1によれば、培養槽2内の培養液の状態を、細胞の培養に最適な条件に保つことができるから、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。そして、長期間連続して培養することができるから、細胞を大量に培養することが可能である。
そして、図1に示すように、配管11の一端を培養槽2の上部に配置し、配管12の他端を培養槽2の下部に配置すれば、培養液を外部循環させるだけで、培養槽2内には、底部から上部に向かう流れを生じさせることができる。また、培養槽2の本体部2aの底部に、軸方向の両端部に金属が取り付けられた回転子4を配置し、培養槽2の外部における回転子4の直下に主軸に磁石5bが取り付けられたモータ5を設けておけば、モータ5を駆動すれば、磁石5bが回転し、その磁石5bの磁力によって培養槽2内の回転子4を回転させることができるので、培養槽2内の培養液に水平面内で旋回する流れを発生させることができる。すると、培養液を外部循環させながら回転子4を回転させれば、2つの流れの作用によって、外部循環して培養槽2内に戻された培養液と、培養槽2内に保持されている培養液との混合を促進することができるから、培養槽2内の培養液の状態を均一に近づけることができる。しかも、培養槽2内に保持されたまま外部循環されない培養液をなくすことができるから、培養液の状態、つまり細胞の培養条件を良好に保つことができる。そして、培養液の混合に培養液を外部循環させたことによって生じる流れを利用するから、回転子4の回転数を低くしても培養液の混合を促進することができる。すると、回転子4の回転だけで培養槽2内に対流を発生させて混合する場合に比べて、培養槽2内の培養液の流速を低くできるから、非常に外圧に弱い細胞であっても、培養槽2内の培養液の状態を均一に保ったまま培養することができる。
なお、回転子4は設けなくてもよいが、回転子4を設けておけば、培養液の均一化を迅速かつ効率よく行なうことができる。
また、図1および図2に示すように、浮遊細胞や細菌等のように、培養液とともに流動する細胞を培養する場合には、配管11における培養槽2内の一端に、流出防止手段として電磁石6を設けると好適である。通常、浮遊細胞や細菌は帯電しているため、電磁石6と反発するので、浮遊細胞等が電磁石を設けた位置を通過することを防ぐことができる。
すると、培養液を外部循環させながら浮遊細胞や細菌等を培養した場合であっても、浮遊細胞等を培養槽2内に滞留させておくことができ、死亡した細胞が流出して配管11 ,12内で閉塞することも防ぐことができる。
しかも、電磁石6は配管11の外周面に取り付ければよいので、培養液の流れが阻害されることもない。そして、電磁石6はフィルタのように物理的接触によって流出を防ぐものではない。つまり培養している細胞と接触しないから、細胞膜の非常に弱い、赤血球やマクロファージ、血しょう板等の細胞でも培養槽2からの流出を防ぎ、かつ損傷することなく培養することができる。
なお、培養する浮遊細胞が外圧に強いものであれば、流出防止手段としてフィルタや膜等のように、物理的な接触によって浮遊細胞等の流出を防ぐものを使用してもよい。
つぎに、培養液調整手段20について詳細に説明する。
図1および図3に示すように、前記配管12には、培養液調整手段20の透析部21が介装されている。この透析部21は、中空な本体ケース21aと、この本体ケース21a内に配置された中空糸21bとから構成されている。
本体ケース21aは、その内部が配管12と連通されており、その内面と前記中空糸21bとの間の培養液循環通路21hを培養液が流れるように構成されている。
中空糸21bは、例えば、ポリプロピレンやセルロースジアステート、シリコンゴム等の半透性という機能を有する素材によって形成されたものであり、その内部には、重炭酸緩衝液、燐酸緩衝液等の透析液が通されている。
このため、培養液が培養液循環通路21hを通過するときに、培養液が中空糸21bを介して透析され、培養液に含まれるアンモニア、窒素化合物等の老廃物が透析液に移動するから、培養液を浄化することができる。よって、培養液の劣化を防ぐことができ、常に、細胞の培養に適した状態に保つことができるから、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。
しかも、透析部21が培養槽2の外に設けられている、つまり、培養槽2外で培養液を透析しているから、透析部21の大きさや透析部21に使用する素材などを、培養槽2の大きさや培養液の性質等に係わらず、自由に選択することができる。よって、所望の透析能力を有する透析部21を採用することができるから、確実に培養液を所望の条件まで透析して浄化することができる。そして、透析部21として、その透析能力が培養槽2の大きさに比べて十分に高いものを使用すれば、細胞数の増加量に合わせて透析能力を高くすることができるから、大量の細胞を連続して培養することも十分に可能である。
また、中空糸21bの内部に透析液を流し、培養液を培養液循環通路21hに通しているから、培養液が透析部21を流れるときの流動抵抗を少なくすることができ、培養液をスムースに外部循環させることができる。そして、透析部21を流れるときの流動抵抗が小さいから、循環する培養液中に細胞が含まれていても、透析部21を通過するときに細胞が受ける抵抗を小さくすることができ、透析部21を通過するときに、損傷を受ける細胞を少なくすることができる。
さらに、透析部21が広い中空糸間空間を備えていれば、培養する細胞等が中空糸21b に詰まって透析能力が低下することも防ぐことができる。
なお、培養液を中空糸21b内に通し、透析液を培養液循環通路21hに通してもよいが、本願のごとき構成とすれば、中空糸21b内に通す場合に比べて、培養液の流動抵抗が少なくなるので、透析効率を高くすることができ、また、循環する培養液に細胞が含まれている場合に、細胞の損傷を少なくすることができる。そして、中空糸21bの内径を大きくしておけば、培養する細胞等が中空糸21bに詰まって透析能力が低下することも防ぐことができる。
さらになお、中空糸21b に代えて、透析膜等によって、本体ケース21a内を、培養液が通される経路と透析液が通される経路を分離する構成としてもよい。
さらになお、培養液を浄化する方法は、上記のごとき透析によって消化する方法に限られず、アンモニア吸着カラムやアフィニティカラム、分子ふるい等の方法を用いてもよい。
図1および図3に示すように、前記配管12において、前記透析部21の下流側には、ガス濃度調整手段22が介装されている。このガス濃度調整手段20は、中空なケース22aを備えており、このケース22aの内部が配管12と連通されている。そして、ケース22a の上部から供給された培養液が、ケース22aの下部から排出されるように構成されている。そして、ケース22aの上部には、他端がガス供給手段Gに接続された配管26の一端が配置されている。このガス調整手段Gは、所望のガス濃度、例えばCOが5%、空気が95%となるように調整された飽和ガスをケース22a内に供給するものである。
なお、飽和ガスのガス濃度は、上記の濃度に限られず、酸素濃度を高くしてもよく、培養する細胞の状態に最適なガス濃度とすればよい。例えば、酸素濃度を30%としたり、窒素を65%としてもよい。
ガス供給手段Gからガス濃度調整手段20のケース22a内に飽和ガスを送れば、ケース22a内の培養液に飽和ガスを接触させることができるから、培養液中のガス濃度が飽和ガスと同等のガス濃度となるように調整することができる。よって、培養液を所望のガス濃度に飽和させることができ、培養液のガス濃度を均一かつ細胞の培養に適した状態に保つことができるから、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。
しかも、ガス濃度調整手段22が培養槽2の外に設けられている、つまり、培養槽2外で培養液のガス濃度を調整することができるから、ガス濃度調整手段22の大きさを、培養槽2の大きさに係わらず、自由に選択することができる。よって、所望のガス交換能力を有するガス濃度調整手段22を採用することができるから、確実に培養液を所望のガス濃度に調整することができる。そして、ガス濃度調整手段22として、そのガス交換能力が培養槽2の大きさに比べて十分に高いものを使用すれば、細胞数の増加量に合わせてガス交換能力を高くすることができるから、大量の細胞を連続して培養することも十分に可能である。
さらに、循環する培養液に細胞が含まれていない場合には、配管26の一端に多数の細孔が形成された曝気部22bが設け、この曝気部22をケース22a内の培養液に浸漬させ、この曝気部22bの多数の細孔から培養液中にガスを排出させるような構成としてもよい(図4(A)参照)。この場合、ガス供給手段Gから曝気部22bに飽和ガスを送れば、ケース22a内の培養液を曝気することができるので、培養液と飽和ガスの接触面積が大きくなるので、培養液に酸素等を溶解させる効率を高くすることができ、ガス交換効率を高くすることができる。そして、培養液には細胞が含まれていないので、曝気したときに発生する気泡が細胞を傷つけたりストレスを与えたりすることがない。
なお、ケース22aとガス供給手段Gとの間の配管26には、飽和ガスを滅菌する滅菌フィルタ27を設けておけば、飽和ガスに雑菌等が含まれていても培養液が汚染されることを防ぐことができる。
さらになお、図4(B)に示すように、ケース22a内に空気透過性のチューブ22d(例えば、テフロン(デュポン社の登録商標)を素材とするチューブ)設け、このチューブ内に培養液を通し、ケース22a内に飽和ガスを供給するような構成とした場合には、培養液と飽和ガスが直接接触することを防ぐことができるから、培養液が汚染されることをより確実に防ぐことができる
そして、配管12に、透析部21とガス濃度調整手段22を直列に配置している、つまり外部循環する培養液を、透析部21とガス濃度調整手段22の両方に通過させてから培養槽2に戻すので、培養槽2内の培養液の状態を、細胞の培養に適した状態に確実に保つことができる。しかも、コンパクトで一括製造できるので使い捨てのセットとして製造することが可能である。とくに、使い捨てのセットという構成を採用すれば、透析部21とガス濃度調整手段22とを直列に配置したときに生じる接続部からのコンタミネーションという問題が生じることも防ぐことができる。
図1および図3に示すように、前記配管12において、ガス濃度調整手段22の下流側には、栄養剤補給部23が介装されている。この栄養剤補給部23は、培養液が流れる培養液通過部23aと、細胞の培養に必要なサイトカインやホルモン、ビタミン等の栄養分を含む栄養剤が流れる栄養剤通路23b を備えており、両通路の間が、例えば例えば、ポリプロピレンやセルロースジアステート、シリコンゴム等の半透性という機能を有する素材によって形成された透析部材によって分離されている。
このため、培養液が培養液通過部23aを通過するときに、細胞が消費して濃度が減少した栄養分が、透析部材23cを介して栄養剤から培養液に移動するから、培養液に細胞の培養に必要な栄養分を補給することができる。よって、培養液の栄養分の枯渇を防ぐことができ、常に、細胞の培養に適した状態に保つことができるから、細胞を長期間連続で、かつ安定した状態で培養することができる。
しかも、栄養剤補給部23が培養槽2の外に設けられている、つまり、培養槽2外で培養液に栄養分を補給しているから、栄養剤補給部23の大きさやその能力を、培養槽2の大きさ等に係わらず、自由に選択することができる。よって、所望の能力を有する栄養剤補給部23を採用することができるから、培養液に含まれる栄養分の濃度を、確実に所望の濃度まで補給することができる。そして、栄養剤補給部23として、その能力が培養槽2の大きさに比べて十分に高いものを使用すれば、細胞数の増加量に合わせて培養液に供給する栄養分の量を調整することができるから、大量の細胞を連続して培養することも十分に可能である。
また、培養液通過部23aと栄養剤通過部23bが透析部材23cによって分離されているから、栄養剤に含まれる栄養分のうち、培養液中の濃度が低下した成分だけを培養液に供給することができる。よって、必要以上の栄養分が培養液に供給されることによって生じる細胞障害を防ぐことができる。
なお、栄養剤補給部23の構成を、透析部21と実質同様の構成とし、中空糸の内部に栄養剤を流してもよい。
なお、培養液調整手段20に、培養液中の所望の成分を回収する、例えば透析器やアフィニティカラム、分子ふるい等の回収手段28を設けておけば、培養液が外部循環している間に、培養液中の有効成分である蛋白質や培養される細胞が産生する成分を回収することができるので、有効成分等、所望の成分を高効率かつ確実に回収することできるし、培養を停止することなく、所望の成分のみを回収することができる。
また、長期間培養すると、たとえ透析部21によって浄化したり、栄養剤補給部23によって栄養分の補給しても、培養液は劣化してしまうが、以下のごとき構成を有する培養液供給部30と培養液排出部40とを備えた培養液交換手段を設けておけば、細胞の培養を継続しながら培養液を、新鮮な培養液に交換することができる。
図1に示すように、配管12には、連通弁31を介して、培養液供給部30の配管33の一端が取り付けられている。この配管33の他端には、図示しない培養液貯蔵部に連通されている。この配管31には、培養液貯蔵部と連通弁31の間には、培養液貯蔵部から供給された培養液を35℃近傍まで温める加熱器34、ポンプ35、滅菌フィルター32が介装されており、培養液貯蔵部からその順で取り付けられている。
一方、培養槽2の蓋2bには、培養液排出部40の配管41が気密に取り付けられており、その一端が培養槽2内の培養液に浸漬されている。この配管41の他端部にはポンプ42が介装されており、このポンプ42と培養槽2との間には、滅菌フィルター43が介装されている。
このため、連通弁31によって培養液供給手段30と配管12を連通させて、ポンプ35によって培養液貯蔵部から加熱器34、減菌フィルタ32を通して、新鮮な培養液を配管12に供給し、同時に培養液排出器40によって使用中の培養液を培養槽2から排出させれば、培養槽2内における培養を中断しなくても、培養液の交換を行うことができる。よって、培養を継続したままで培養液を交換できるから、長期間の培養が必要である接着細胞や造血細胞であっても培養することができる。しかも、培養液排出部40と培養液供給部30を同期して作動させるだけで、使用中の培養液と新しい培養液の交換を自動的に行うことができる。よって、培養液の交換に人手が不要となり、培養液や培養中の細胞がコンタミネーションされる危険性を減らすことができる。
しかも、各配管33,41には、いずれも滅菌フィルター32,43が設けられているから、交換作業中に培養液が雑菌に汚染されることをより確実に防ぐことができる。
そして、浮遊細胞を培養する場合には、電磁石6を配管41の一端部に設けておけば、培養槽2内の培養液を排出するときに、その培養液とともに浮遊細胞等が培養槽2から流出することを防ぐことができるから、浮遊細胞であっても培養を中止することなく、培養液を交換することができる。
なお、培養液供給部30だけ、または培養液排出部40だけを作動させれば、培養槽2内の培養液の量を調整することも可能である。
細胞を長期間培養する場合には、定期的に培養液を抽出して、細胞や培養液の状態を調べる必要があるが、以下の構成を有する抽出手段50を設ければ、培養液が汚染されることなく、また、培養液を無駄にすることなく抽出することができる。
図5に示すように、培養槽2の蓋2bには、抽出経路81の一端部が気密に取り付けられており、その一端は培養槽2内の培養液に浸漬されている。この抽出経路81の他端部は、培養槽2の外部に配置されており、その他端部はシリンダ等の滅菌処理された抽出液受け容器82内に配置されている。
この抽出経路81には、ポンプ83が介装されており、このポンプ83と抽出経路81の他端部との間には、図示しないガス供給部から滅菌フィルター54を介して無菌気体が供給されるように構成されている。そして、この無菌気体は、常に、抽出経路81に供給されている。介装されている。
このため、ポンプ83を作動させれば、培養槽2内の培養液を抽出経路81を通して抽出液受け容器82内に排出させることができるから、この培養液を調べれば、細胞の培養状態を確認することができる。
しかも、抽出経路81には、常に無菌気体が供給されており、その無菌気体は抽出経路81の他端から抽出液受け容器82内に供給され、常に、抽出液受け容器82内を満たしている。すると、外気が抽出経路81や抽出液受け容器82内に侵入することができないので、抽出経路81や抽出液受け容器82内への雑菌の侵入を防ぐことができる。よって、抽出された培養液が抽出経路81を通過するとき、および抽出液受け容器82内に入ったときに雑菌等に汚染されることを防ぐことができる。
さらに、抽出経路81や抽出液受け容器82が確実に無菌状態に保たれているら、抽出経路81や抽出液受け容器82内に排出された培養液も雑菌に汚染されることはない。すると、必要以上の培養液が抽出された場合に、抽出経路81や抽出液受け容器82内に残った培養液を培養槽2内に戻すことができ、培養液を有効活用することができる。そして、培養液を戻すときに、抽出経路81や抽出液受け容器82内の気体も培養槽2内に入る可能性があるが、抽出経路81や抽出液受け容器82内は無菌気体によって満たされているから、雑菌が気体とともに侵入することもない。
とくに、連続して培養しながら培養液を回収する場合には、回収された培養液が汚染される心配がないので、その培養液を、安全に利用することができる。
また、図6に示すように、培養槽2内の培養液に培養する細胞を供給することができる細胞供給手段90を設ければ、細胞の培養を完全に自動化できるので、好適である。
図1において、符号91は培養する細胞を含有する播種液が収容された貯蔵部を示している。この貯蔵部91には、細胞搬送経路92の一端が取り付けられており、その一端は貯蔵部91内の播種液に浸漬されている。この細胞搬送経路92の他端部は、前記培養槽2の蓋2bに気密に取り付けられており、その一端は培養槽2内に配置されている。この細胞搬送経路92の他端には、公知のノズルなどの排出部93が設けられている。そして、細胞搬送経路92には、貯蔵部91内の播種液を排出部93に向けて搬送するポンプ94が介装されている。
このため、ポンプ94を作動させれば、播種液を培養槽2に搬送することができ、排出部93から培養槽2内に排出させて、播種液に含まれる細胞を培養液2に供給することができる。よって、細胞の供給を自動化することができるから、細胞の培養を完全に自動化することが可能となる。
そして、ポンプ94と排出部93との間の細胞搬送経路92に、両者の間を連通遮断する、例えばピンチバルブ等のバルブ95を設けておけば、バルブ95を閉めた状態でポンプ94を作動させれば播種液搬送経路2内の播種液の圧力が高くすることができる。そして、播種液の圧力が高くなった状態でバルブ95を開けば、播種液を培養槽2内に勢いよく射出させることができる。すると、培養槽2内に細胞を培養する足場となる細胞培養器具などを設けておけば、細胞培養器具の表面に播種液、つまり細胞を播種させることができる。よって、浮遊細胞だけでなく、接着細胞であっても自動的、言い換えれば培養槽2を開閉することなく播種することができるから、細胞を播種するときに細胞や培養液等が汚染されることを防ぐことができる。
さらに、本実施形態の培養装置1は、インキュベータや保温器などのような培養装置1の周囲の環境を一定に保つことができる設備の内部で使用することもできるが、培養槽2に、以下のごとき温度制御手段70を設ければ、培養装置1を所望の場所で使用することができる。
図1に示すように、前記培養槽2の外面には、温度制御手段70の面状発熱体71が設けられている。この面状発熱体71は、面状発熱体71に供給する電力を調整する制御部78に接続されている。この制御部78は、培養槽2内の培養液の温度に応じて、面状発熱体71に供給する電力を調整し面状発熱体71の温度を調整するものである。
図7に示すように、面状発熱体71は、通電されると発熱し、かつ培養槽2の内部に向けて遠赤外線を放出する放射部73を備えている。つまり、面状発熱体71は、放射部73が発生した熱だけでなく、発熱したときに放出する遠赤外線によって培養液を加熱することができるのである。
しかも、面状発熱体71から放射された遠赤外線は、培養槽2内の培養液中を伝播し、この遠赤外線の有するエネルギの一部は細胞に直接供給されることとなる。
このため、培養する細胞を、培養液からの熱伝達だけでなく、遠赤外線によっても加温することができるから、遠赤外線が培養に照射されてさえいれば、たとえ培養する細胞の周囲の培養液の温度が変化したとしても、細胞自体の温度変化を抑えることができる。
また、培養槽2内の培養液が所定の温度まで上昇すれば、面状発熱体71から遠赤外線の形態で放出されるエネルギのうち、培養液に吸収されるエネルギが減少する。すると、面状発熱体71から遠赤外線として放出されるエネルギは、その大部分が培養する細胞に供給され、細胞自体の加温に使用されることとなる。そして、遠赤外線の有するエネルギは面状発熱体71の温度に依存するから、遠赤外線によって加温される細胞の温度を、面状発熱体71とほぼ同じ温度まで加温することができる。
また、面状発熱体71の表面から放射される遠赤外線のエネルギー密度のピークが、7〜12μmの波長帯に形成されるように調整されている。この7〜12μmの波長は、生育光線と呼ばれる波長帯であり、植物などの成長に有効であるが、動物、特にヒトの細胞、例えば肝細胞や皮膚細胞、骨芽細胞、免疫細胞等の増殖する能力を有する細胞や、造血幹細胞や間質幹細胞等、自己増殖しかつ複数の高度な細胞に分化することができる幹細胞の培養において、培養する細胞に生育光線を照射すれば、遠赤外線を照射しない場合に比べて、細胞の増殖や分化を促進される。この細胞の増殖や分化が促進する原因としては、増殖や分化に影響する遺伝子や増殖因子や分化誘導因子を活性化させることや、逆に、増殖や分化を抑制する遺伝子や抑制因子の働きを抑えること、遠赤外線が直接増殖因子や分化誘導因子として機能することが考えられる。細胞が未分化で、各種組織の細胞に分化可能な細胞、例えば、骨髄、末梢血、臍帯血、組織由来の幹細胞や胚性幹細胞等の未分化な細胞を遠赤外線を照射した状態で培養すれば、非常に感受性が高く未分化な細胞自体の増殖を促進できることはもちろん、その未分化な細胞から所望の細胞への分化も促進させることができるから、少しの未分化な細胞から、所望の分化した細胞を容易かつ大量に培養することができる。また、肝細胞や骨芽細胞等、既に各組織に分化しているが増殖可能な細胞を、遠赤外線を照射した状態で培養すれば、長期間作用させると増殖を活性化させることができる。
つまり、本実施形態の培養装置1の培養槽2に、上記のごとき温度制御手段70を設けておけば、温度制御手段70を設けない場合に比べて細胞の増殖及び分化促進効率を向上させることができるのである。
なお、配管11 ,12や培養液調整手段20を断熱材によって覆っておけば、培養液が外部循環している間にその温度が変化することを防ぐことができる。
さらになお、透析部21やガス濃度調整手段22、栄養剤補給部23にも温度制御手段70を設けておけば、培養液の温度変化をより確実に防ぐことができる。
また、面状発熱体71に使用する放射体75として、カーボンブラックやカーボングラファイト、セラミックスパウダー、アルミナ、ジルコン等の金属紛等遠赤外線を放射する素材と、ポリエチレングリコール等を基材とした半導体等の有する正温度係数(P.T.C:PositiveTemperature Coefficiennt)機能、いわゆる自己温度制御機能を有する素材を含むものを使用すれば、特別な制御機構やセンサを採用しなくても、PTC素材や放射素材の温度が所定の温度近傍に確実に維持することができる。この場合、放射体75から放射される遠赤外線の波長やエネルギー密度の分布を所定の状態に保つことができる。よって、面状発熱体71の温度変化による遠赤外線の状態が変化、つまり細胞に放射される遠赤外線の状態を一定に保つことができるから、細胞の温度変化を防ぐことができ、安定した状態で細胞を培養することができる。
なお、遠赤外線放射部は、上記のごとき面状発熱体71でなくてもよく、所定の波長の遠赤外線を細胞に照射できるものであれば、特に限定はない。
培養開始前、および培養が終了したのち、培養装置1内に雑菌が繁殖することを防ぐために、培養液の流れる経路や、その他の部分を滅菌する必要があるが、培養槽の容積が10Lよりも小さい場合には、培養装置1を、培養槽2、循環手段、培養液調整手段20を全て連結した状態においてオートクレーブ装置内に収容できる大きさに構成すれば、装置を分解することなくオートクレーブ装置内に入れて滅菌することができるので、培養装置1の滅菌作業が容易になる。
しかも、連結した装置を分解しなくてもよいから、培養作業を開始する前にオートクレーブ装置によって殺菌し、そのままの状態で使用すれば、培養液や細胞が雑菌に汚染される確率を非常に低くすることができる。
そして、培養槽2が20L以上の場合には、配管11と加圧蒸気を発生することができる図示しない加圧蒸気供給手段を連通させることができるように設けておけば、加圧蒸気滅菌手段によって閉ループ回路内に加圧蒸気を供給すれば、各手段を分解することなく、各手段を滅菌することができる。すると、培養装置1が大型化しても、容易かつ迅速に装置全体を滅菌することができるから、培養槽2等がコンタミネーションされる危険性を低くすることができる。また、加圧蒸気滅菌手段を作動させるだけで培養装置を滅菌することができるので、培養装置1の滅菌を自動化でき、培養装置1の運転を完全に自動化することができる。
また、図8および図9に示すように、本実施形態の培養装置1において、細胞を付着させることができ、かつ増殖するための足場となる培養器具50を備えた培養槽2を使用すれば、細菌や浮遊細胞等のように短期間かつ培養液に浮遊させた状態で培養できる細胞だけでなく、骨芽細胞や皮膚繊維芽細胞等のように、培養に数週間から1ヶ月程度の期間を必要とし、かつ増殖するための足場が必要な接着細胞の培養に好適である。
図8および図9において、符号50が、培養槽2内に設けられた培養器具を示している。この培養器具50は、純チタンまたはチタン合金を素材とする複数本の円管を、互いに連結して形成されたものであり、支持部材51によって培養槽2内に保持されている。
このため、培養する細胞を培養器具50の表面に付着させた状態で培養槽2内に配置して培養液に浸漬させれば、組織や臓器を構成している接着細胞であっても培養することができる。しかも、本実施形態の培養装置1であれば、長期間連続して培養することが可能であるから、従来の培養装置では不可能であった組織や臓器を構成している接着細胞を、大量かつ所望の大きさになるまで培養することができる。
また、培養器具50が円管を連結して形成されおり、培養器具50の表面積、つまり細胞が足場とすることができる部分を広くすることができるから、大量の細胞を培養することができる。しかも、円管内に培養液を流すことができるから、全ての細胞に新鮮な培養液を供給することができる。このため、培養される細胞の全ての細胞に栄養分や酸素を効率よく供給することができるので、培養液の循環効率が上がり、培養条件を飛躍的に亢進することが可能となる。
なお、培養器具50は上記の構造に限られず、様々な形状のものを使用することができる。例えば、上下方向を貫通する貫通孔を有するハニカム構造や多孔質構造の培養器具50を使用すれば、上下方向の培養液が流れがスムースになり、培養される細胞の全ての細胞に栄養分や酸素を効率よく供給することができる。また、所望の3次元的な構造、例えば各種臓器の形状に形成された培養器具50を使用すれば、培養器具50の形状に沿って細胞が増殖し、所望の形状の3次元組織を構築することができるので、再生医療に必要な3次元の組織や臓器を大量に供給することが可能となる。
さらになお、培養器具50の形状として、膜状の部材を使用してもよく、その場合には膜状の組織を形成することも可能である。とくに、網目構造を有する膜状の部材、いわゆるメッシュを使用すれば、培養器具50を通して細胞に新鮮な培養液を供給できるから、培養器具50の表面に付着している細胞において、その表面の部分の細胞だけでなく、培養器具50に付着している部分の細胞にも新鮮な培養液を供給することができる。
また、培養器具50の円管の素材として、純チタンやチタン合金を使用している。純チタンやチタン合金は細胞親和性が高いので、培養器具50の表面に、直接、培養する細胞を播種しても、細胞が汚染されたり、傷害を与えられたりすることがないので、臓器等の接着細胞を長期間培養することができる。しかも、培養器具50と細胞との間には細胞外マトリックスが形成され、さらに石灰化層が形成される。このため、培養する細胞を確実に培養器具50に付着させておくことができるから、長期間、細胞を安定した状態で培養することができる。また、純チタンやチタン合金は化学的な安定性が非常に高く長期間使用しても変質したり腐食したりしないので、培養器具50の腐食変質等によって細胞が損傷することを防ぐことができる。そして、何回でも同じ培養器具50を利用することができるから、細胞を培養するコストを低下させることも可能である。
なお、培養器具50の全体がチタンやチタン合金で形成されていなくてもよく、基材の表面にチタンやチタン合金を含有する層を形成したものを使用しても良い。この場合も、培養器具50によって細胞が汚染されたり、損傷したりすることがないので、臓器等の接着細胞を長期間培養することができる。また、培養器具50はチタンやチタン合金を含有する層に完全に覆われており、しかも、このチタン等の層は細胞外マトリックスによって完全に覆われる。このため、基材が全く細胞と接触しないので、長期間使用しても、培養器具50が変質したり腐食したりしないので、培養器具50を長期間利用することができ、細胞を培養するコストを低下させることができる。
さらになお、培養器具50の素材は、コラーゲンや細胞吸収性ポリマー、キチン等の細胞由来高分子材料や、ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系化合物、ポリL乳酸やポリグリコール酸等の合成生分解性ポリマー等、細胞親和性の高い素材であれば、どのような素材を使用しても良い。
そして、培養器具50の基材が、珪素化合物、ガラス、磁性体、セラミックス、その他細胞親和性を有しない素材であっても、その表面に、細胞由来高分子材料やリン酸カルシウム系化合物、合成生分解性ポリマー、細胞外マトリックスなどの組織誘導能を有する組織誘導材料の層を形成すれば、培養器具50の細胞親和性を高くすることができる。
そして、培養器具50として、その器具自体の素材が細胞由来高分子材料であったり、器具の表面に細胞由来高分子材料の層を有するものを使用した場合には、培養器具50と細胞との細胞親和性がさらに高くなり、培養器具50によって細胞が汚染されたり、損傷したりすることがなく、臓器等の接着細胞を長期間培養することができる。しかも、培養器具50と細胞の間には細胞外マトリックスが形成され、さらに石灰化層が形成される。このため、培養する細胞を確実に培養器具50に付着させておくことができるから、細胞を安定した状態で培養することができる。
しかも、培養器具50全体が細胞由来高分子材料で形成されていれば、この細胞由来高分子材料は生体に吸収されるから、再生医療のために、生体に培養器具50をそのまましようできる、つまり培養器具50のまま移植することができるので、移植を確実かつ簡単に行うことができる。
とくに、細胞由来高分子材料がコラーゲンであれば、細胞との細胞親和性が非常に高いので、接着細胞の培養環境をさらに改善することができる。そして、培養器具50と細胞の親和性がさらに高まるので、大量の細胞を効率よく、低コストで培養することが可能となる。
また、培養器具50として、その器具自体の素材がリン酸カルシウム系化合物であったり、器具の表面にリン酸カルシウム系化合物の層を有するものを使用した場合には、リン酸カルシウム系化合物は細胞との細胞親和性が高いので、培養器具50の表面に、直接、細胞外マトリックスを形成させることができる。よって、培養器具50によって培養する細胞が汚染されたり、傷害を与えられたりすることがないので、臓器等の接着細胞を長期間培養することができる。しかも、培養器具50全体がリン酸カルシウム系化合物で形成されていれば、このリン酸カルシウム系化合物は生体に吸収されるから、培養器具50のまま移植することができるので、移植を確実かつ簡単に行うことができる。
そして、培養器具50として、その器具自体の素材が合成生分解性ポリマーであったり、器具の表面に合成生分解性ポリマーの層を有するものを使用した場合には、合成生分解性ポリマーは細胞親和性が高いので、培養器具50の表面には、直接、細胞外マトリックスを形成させることができる。よって、培養器具50によって培養する細胞が汚染されたり、傷害を与えられたりすることがないので、臓器等の接着細胞を長期間培養することができる。しかも、培養器具50全体がリン酸カルシウム系化合物で形成されていれば、この合成生分解性ポリマーは生体に吸収されるから、再生医療のために、生体に培養器具50をそのまま使用できる、つまり培養器具50のまま移植することができるので、移植を確実かつ簡単に行うことができる。
とくに、合成生分解性ポリマーがポリL乳酸またはポリグリコール酸であれば、培養器具50と細胞との細胞親和性が非常に高いので、接着細胞の培養環境をさらに改善することができる。そして、培養器具50と細胞の親和性がさらに高まるので、大量の細胞を効率よく、低コストで培養することが可能となる。
さらに、培養器具50として、珪素を含有する素材、例えば、ガラスやゼオライト、図14〜図16に示すような組成を有する黒体粉末や天然セラミックス等によって形成されたものを使用してもよい。この場合、黒体粉末や天然セラミックス等に含まれる珪素が石灰化能を有しているため、培養器具50の表面には、リン酸カルシウム系化合物等によって石灰化層が形成される。すると、培養器具50と細胞との親和性が高くなるから、培養器具50によって培養する細胞が汚染されたり、傷害を与えられたりすることがない。よって、臓器等の接着細胞を長期間培養することができるし、培養する細胞を確実に培養器具50に付着させておくことができるから、長期間、細胞を安定した状態で培養することができる。
しかも、図14〜図17に示すように、黒体粉末、天然セラミックス、ゼオライト等は、約833 〜1429cm-1の領域、つまり約7〜12μm近傍の遠赤外線領域の波長を特異的に吸収する特性を有している。言い換えれば、黒体粉末、天然セラミックス、ゼオライト等は、約7〜12μmの遠赤外線を強く放出する性質を有しているから、培養器具50は温度が高くなると遠赤外線を放出する。すると、培養器具50の表面に付着している細胞に、培養器具50から遠赤外線が供給されることになるから、細胞の分化や増殖を促進する効果を得ることができる。
そして、培養器具50の表面に、上記のごときガラスや天然セラミックス、ゼオライトなどの粉末や黒体粉末等とシリカゲル等の接着剤とを混合したものをコーティングし、ガラスやゼオライト、黒体粉末、天然セラミックス等を含有する層、つまり珪素を含有する素材の層を形成しても、同様の効果を得ることができる。
また、培養器具50として、人工セラミックス、例えば、図18に示すような組成を有する人工セラミックス等によって形成されたものを使用してもよい。この場合も、培養器具50の表面には、リン酸カルシウム系化合物等によって石灰化層が形成されるから、培養器具50と細胞との親和性が高くなる。よって、培養器具50によって培養する細胞が汚染されたり、傷害を与えられたりすることがなく、臓器等の接着細胞を長期間培養することができる。そして、培養する細胞を確実に培養器具50に付着させておくことができるから、長期間、細胞を安定した状態で培養することができる。
しかも、図18に示すように、人工セラミックスは、約833〜1429cm-1の領域、つまり約7〜12μmの遠赤外線領域の波長を特異的に吸収する特性を有している。言い換えれば、人工セラミックスは、約7〜12μm近傍の遠赤外線を強く放出する性質を有しているから、培養器具50は温度が高くなると遠赤外線を放出する。すると、培養器具50の表面に付着している細胞に、培養器具50から遠赤外線が供給されることになるから、細胞の分化や増殖を促進する効果を得ることができる。
そして、培養器具50の表面に、上記のごとき人工セラミックスの粉末とシリカゲル等の接着剤とを混合したものをコーティングし、人工セラミックスの層を形成しても、同様の効果を得ることができる。
さらに、培養器具50として、その器具の表面に組織誘導材料の層を有する場合には、細胞外マトリックス等の組織誘導材料と細胞との細胞親和性が高いから、接着細胞の培養環境を改善するとともに、再生医療のために、生体に直接利用することができ、細胞を培養するコストを低下させることができる。しかも、組織誘導材料の影響により細胞の増殖が促進されるだけでなく、未分化間葉系細胞の種々の組織への分化誘導が可能となる。よって、細胞の分化状態を維持したまま培養が可能なだけではなく、再生医療に必要な細胞を容易に供給することができる。
そして、本実施形態の培養装置1の培養器具50に、所望の接着細胞を播種して培養すれば、培養槽2内に気泡や速度の速い対流を生じさせることがなく、培養液の状態をほぼ均一かつ細胞の培養に適した状態に保つことができ、しかも細胞を培養しながら培養液の交換が可能であるから、様々な接着細胞を非常に長期間(数週間〜数ヶ月)でも培養することができる。すると、少量の接着細胞から再生医療に使用しうる大きさの組織を製造することができるから、再生医療などに必要とされる人工臓器や人工組織を、安価かつ大量に製造することができる。しかも、移植が必要とされる人から所望の組織の細胞を摂取し、その細胞を培養して臓器を製造することができるから、生体との適合性を高くすることができ、拒絶反応が起こることも防ぐことができる。
また、培養する細胞として間質幹細胞等の未分化な細胞を使用すれば、培養条件を調整することによって所望の細胞に分化させることができるから、入手が困難な細胞から構成されている組織などを、容易に入手できる細胞から製造することができる。そして、未分化な細胞を、未分化なままで増殖させれば、どのような組織にでも適用可能な人工組織も製造することが可能である。
以下のような細胞播種手段60に培養槽2を設置しておけば、培養器具50への細胞の播種も自動化することができるため好適である。
なお、培養器具50への細胞の播種は、上述した細胞供給手段90によっても可能であるが、培養器具50として、複数本の円管をその軸方向が一致するようにかつ横断面視で各円管が放射状に並ぶように形成したものを使用する場合には、以下のような細胞播種手段60を使用すると、培養器具50に対して細胞をより確実に播種することができる。
図8および図9に示すように、培養槽2内には、培養器具50が、その中心軸が培養槽2の中心軸と一致するように取り付けられている。
同図において符号61は、細胞播種手段60のベースである。このベース61の上面には、ベース61の上面において回転可能なターンテーブル62が設けられている。このターンテーブル62は、前記培養槽2を支持するスタンドSが載せられるものである。このため、ターンテーブル62上に培養槽2を支持するスタンドSを載せておけば、培養槽2をその軸まわりに回転させることができる。
図8および図9に示すように、前記ベース61には、支持枠63が立設されており、この支持枠63には、上下方向、つまり培養槽2内に設けられた培養器具50の軸方向に移動可能に、培養槽2の半径方向に伸ばした横軸64が設けられている。この支持枠63と横軸64が特許請求の範囲にいう移動部である。
そして、この横軸64には、細胞供給部65が取り付けられている。この細胞供給部65は、中空な部材であり、上部に培養する細胞が含まれた液体が供給される注入部65a が設けられている。一方、細胞供給部65の下部には、前記培養器具50の軸方向に沿って延びた、複数本の円筒状の播種部65bが設けられている。
この複数本の播種部65bは、全て培養器具50の中心軸と同一平面内に並んで設けられている。しかも、培養槽2の中心軸から各播種部65bまでの距離は、培養器具50の複数の円管のうち、同一面内に位置する複数の円管と培養槽2の中心軸との距離と同じ長さになるように配設されている。
また、前記ベース61には、前記培養槽2の中心軸に対して偏心した位置に、ベース61の下面から出没可能に、傾転軸66が設けられている。
つぎに、細胞播種手段60によって、細胞を播種する作業を説明する。
図10は細胞播種手段60が傾転した状態の概略説明図である。まず、培養槽2内の培養液を全て排出し、その後培養槽2の蓋2aを取り外す。
ついで、横軸64を支持枠63に沿って下降させると、細胞供給部65の播種部65bが培養器具50の各円管内に挿入される。その状態で、傾転軸66をベース61の下面から突出させると、傾転軸66が設けられた部分のベース61が浮き上がり、ベース61とともに培養槽2が傾く(図10)。
そして、細胞供給部65の注入部65aから培養する細胞が含まれた液体を流し込むと、細胞供給部65内を通って播種部65bから前記液体が培養器具50内に流入する。
このとき、培養槽2が傾いているので、液体は培養器具50内面をつたって流れるので、培養器具50内面に細胞を播種することができる。
ついで、横軸64を支持枠63に沿って上昇させると、細胞供給部65が培養器具50から離脱する。その後、ターンテーブル62を回転させて、円管の列が播種部65bと同じ面内に位置させる。そして、再び横軸64を支持枠63に沿って下降させると、細胞供給部65の播種部65bが培養器具50の各円管内に挿入される。そして、細胞供給部65の注入部65aから培養する細胞が含まれた液体を流し込むと、播種部65bから前記液体が培養器具50内に流入し、培養器具50内面をつたって流れる。
上記作業を繰り返すと、全ての円管内面に細胞を播種することができるし、円管内面を液体がながれているときにターンテーブル62を回転させれば、培養器具50の円管の内面全体に細胞を播種することができる。
また、培養する細胞の細胞を含む液体に代えて、細胞供給部65の注入部65bに、培養器具50から剥離させる剥離液(トリプシンEDTA)を注入し、播種部65bから培養器具50内に垂らせば、細胞を培養器具50から剥離させることができる。
そして、培養槽2の底部などに、剥離液を回収する回収部67を設けておけば、剥離液とともに培養器具50から剥離した細胞を回収することができる。
つまり、細胞播種手段60は、細胞回収手段として使用することができ、この場合、細胞供給部65が特許請求の範囲にいう剥離液供給部となるのである。
なお、細胞播種手段60は、図11〜図13に示すような構造でもよく、培養槽2の底部に、培養器具50の下端に接近離間して、培養器具50の下端を気密に密閉したり開放したりすることができる底蓋68を設けておけば、培養器具50の内部に剥離液をためることができるので、細胞の剥離を確実にすることができるし、また、剥離液の消費量を少なくすることができる。
さらになお、培養槽2は、播種回収を行っている間だけでなく、細胞の培養行っているときも、細胞播種手段60のターンテーブル62に上に設置していてもよいし、細胞の播種回収を行うときのみ細胞播種手段60上に設置するようにしてもよい。
上述したように、本実施形態の培養装置1を用いた場合、培養槽2内に気泡や速度の速い対流を生じさせることがなく、培養液の状態をほぼ均一かつ細胞の培養に適した状態に保つことができ、しかも細胞を培養しながら培養液の交換が可能であるため、様々な浮遊細胞を非常に長期間(数週間〜数ヶ月)でも培養することができる。すると、浮遊細胞自体を大量に製造することができるだけでなく、浮遊細胞が増殖する過程で産生される様々な有効成分を回収することができるから、この回収した成分から、抗体やワクチン、医薬品等を製造することができる。
とくに、浮遊細胞が造血幹細胞を含んでいる場合、造血幹細胞は、自己増殖するだけでなく様々な血液細胞に分化して、培養液内には、血液に含まれるほとんど全ての細胞、例えば赤芽球、骨髄芽球、巨核芽球、単芽球、リンパ芽球に分化した後血液細胞である赤血球、有核白血球である好中球、好酸球、好塩基球、血小板、単球やリンパ球等が産生される。そして、長期間培養を連続して行なえば、培養液には、大量の血液成分が産生される。
すると、培養液を処理すれば、所望の成分を抽出することができるので、所望の成分を含む血液製剤を容易に製造することができる。しかも、本実施形態の培養装置1は、細胞の培養を継続しながら、培養液の抽出および交換、追加が可能であるから、培養液に含まれる血液細胞等を回収しながら、連続して細胞を培養することも可能である。
そして、輸血や血液製剤が必要とされる人から造血幹細胞を摂取し、その造血幹細胞を培養して輸血用血液や血液製剤を製造することができるから、拒絶反応を起こす心配のない安全な輸血用血液等を製造することができる。
また、浮遊細胞が赤芽球、骨髄芽球、巨核芽球、単芽球、リンパ芽球等を含んでいれば、血液細胞である赤血球、有核白血球である好中球、好酸球、好塩基球、血小板、単球やリンパ球を産生することができるから、輸血用製剤として使用することができる混合液を製造することができる。
また、培養2槽内に設けられた培養器具50で接着細胞を培養しながら、培養液中では浮遊細胞を培養する、いわゆる混合培養を行うことも可能である。この場合、接着細胞から、浮遊細胞を活性化したり分化を促進したりする因子が産生、分泌されるので、浮遊細胞の培養を促進することができる。また、浮遊細胞が生理活性因子を産生するので、この生理活性因子の働きで接着細胞の活性や分化を促進することができる。したがって、浮遊細胞や接着細胞のみを培養した場合に比べて、各細胞の培養を促進することができるので、各細胞を効率よく培養することができる。
例えば、培養器具50によって骨髄間質幹細胞を培養しながら、培養液中で造血幹細胞を混合培養すれば、骨髄間質幹細胞から造血幹細胞を活性化したり、分化を促進する因子が産生、分泌されるため、造血幹細胞から赤血球、有核白血球である好中球、好酸球、好塩基球、血小板、単球やリンパ球の産生が促進される。また、造血幹細胞が産生する生理活性因子の働きで骨髄間質幹細胞から骨芽細胞、軟骨芽細胞、線維芽細胞、脂肪細胞やその他の細胞への分化が促進される。このため、造血幹細胞や骨髄間質幹細胞を単独で培養するよりも、より早く効率的にしかも活性の高い血液細胞である赤血球等を産生することができ、効率的良く骨芽細胞等を分化誘導することができる。 また、培養器具50によって骨髄間質幹細胞を培養しながら、培養液中で、赤芽球や骨髄芽球、巨核芽球、単芽球、リンパ芽球等の血液芽細胞を含んだ骨髄組織を混合培養すれば、骨髄間質幹細胞から赤芽球等を活性化したり、分化を促進する因子が産生、分泌されるため、骨髄組織から赤血球、有核白血球である好中球、好酸球、好塩基球、血小板、単球やリンパ球の産生が促進される。また、赤芽球等が産生する生理活性因子の働きで間質幹細胞から骨芽細胞、軟骨芽細胞、線維芽細胞、脂肪細胞やその他の細胞の分化が促進される。このため、骨髄組織や骨髄間質幹細胞を単独で培養するよりも、より早く効率的にしかも活性の高い血液細胞である赤血球等を産生することができ、効率的良く骨芽細胞等を分化誘導することができる。
そして、本実施形態の培養装置1は、上記のごとき構成を有しているから、混合培養したときの問題である培養液の劣化等を生じることを防ぐことができる。
以下に、本発明の培養装置によって細胞を培養する実施例を説明する。
以下の実施例において、培養槽の容積が10L以下の場合には、上述したの各手段や装置(例えば、循環手段やガス濃度調整手段等)を連結した状態でオートクレーブ内に収容しうるように構成した培養装置を使用し、121度、20分間滅菌してから培養を行なった。
なお、オートクレーブ内に収容するときには、培養装置の上部構造であるpHメーターや溶存酸素計の電気系統部分は、非耐熱性で非耐湿性のゆえ取り外される。そして、培養液交換装置やサンプリング装置における各培養液やガスの注入あるいは排出チューブは、コンタミネーションを防ぐために、アルミ箔で覆った状態でオートクレーブ内に収容される。
また、以下の実施例における培養液循環装置、ガス飽和装置、温度制御装置、漏出防止装置、培養液交換装置、細胞回収装置、は、それぞれ上述した循環手段10、培養液調整手段20、温度制御手段70、電磁石6、培養液供給手段、細胞回収手段に該当する。
(実施例1)
本発明の培養装置を使用して、形質転換された大腸菌を培養しサイトカインを製造する実施例を説明する。なお、この実施例では、培養槽として、その容積が1Lのものを使用している。
また、比較例として、フラスコ内で形質転換された大腸菌を培養しサイトカインを製造した場合と比較した。
なお、サイトカインの製造量の比較は、培養液の濁度を比較して行なった。濁度の比較は、ベックマン吸光光度計(DUシリーズ500、Beckman, Fullerton, CA)によって行なった。
(1)まず、培養装置をオートクレイブにて滅菌したのち、培養液(乾燥ブイヨン「ニッスイ」05511、日水製薬株式会社、東京)を培養装置に供給し、その後、形質転換により特定のサイトカインを発現する大腸菌800μlを培養槽に注入した。(濃度OD550 =0.032)
(2)この状態で、3時間連続で培養し、OD550 =0.535まで増殖させた。
(3)図19(A)に示すように、本発明の培養装置に使用された培養液の濁度は、培養フラスコ内の培養液に比べて、培養開始後2時間で約3倍になり、培養開始後2時間では4倍以上となった。つまり、本発明の培養装置では、同じ時間であっても、フラスコ培養に比べて大量かつ効率よく大腸菌が培養されていることが確認できる。
(4)そして、OD550 =0.535まで増殖させたのち、IPTG終濃度0.5mMで蛋白質発現の誘導を行い、4時間発現誘導した後、回収装置にて細菌を回収すれば、サイトカインを精製することができる。
(5)上記のごとく、本発明の培養装置によれば、大量かつ効率よく大腸菌が培養することができ、サイトカインを大量かつ効率よく製造することができるから、サイトカインのリコンビナント淡白質を製剤化することができ、種々のサイトカインのリコンビナント医薬品として臨床応用できる。
(実施例2)
本発明の培養装置を使用して、遺伝子導入した酵母を培養しサイトカインを製造する実施例を説明する。なお、この実施例では、培養槽として、その容積が1Lのものを使用している。
また、比較例として、ディッシュ内で形質転換された酵母を培養しサイトカインを製造した場合と比較した。
なお、酵母の量の比較は、培養液の濁度を比較して行なった。濁度の比較は、ベックマン吸光光度計(DUシリーズ500、Beckman, Fullerton, CA)によって行なった。
(1)まず、培養装置をオートクレイブにて滅菌したのち、培養液(YPD BROTH SIGMA-ALDRICH)を培養装置に供給し、その後、形質転換により特定のサイトカインを発現する酵母200μl(濃度OD550 =2.130)を培養槽に注入した。(濃度OD550 =0.078)
(2)この状態で、2日間連続で培養し、OD550 =1.784まで増殖させた。
(3)培養開始後24時間経過すると、本発明の培養装置に使用された培養液の濁度は、ディッシュ培養に使用された培養液に比べて、約22倍となった。そして、図19(B)に示すように、濁度と培養容量を掛けた総酵母量を比較すると、本発明の培養装置に使用された培養液中の総酵母量は178.383となり、ディッシュ培養に使用された培養液中の総酵母量の約95.5倍となった。つまり、本発明の培養装置では、dish培養に比べて大量かつ効率よく酵母が培養されていることが確認できる。
(4)OD550 =1.784 まで増殖させたのち、回収装置にて細菌を回収すれば、サイトカインを精製することができる。
(5)上記のごとく、本発明の培養装置によれば、大量かつ効率よく酵母が培養することができ、サイトカインを大量かつ効率よく製造することができるから、サイトカインのリコンビナント淡白質を製剤化することができ、種々のサイトカインのリコンビナント医薬品として臨床応用できる。
(実施例3)
本発明の培養装置を使用して、ハイブリドーマ細胞を培養し医薬品として利用可能な抗体を製造する実施例を説明する。なお、この実施例では、培養槽として、その容積が100Lのものを使用している。
(1)まず、培養槽に純チタン製チューブが組み合わされた細胞担体を挿入して、加圧蒸気滅菌装置にて、培養装置の培養槽、循環装置、ガス飽和装置を滅菌した。
(2)そして、医薬品として利用可能な抗体を産生するハイブリドーマ細胞を50,000個/mlに懸濁し、細胞担体のチューブ内に細胞播種装置を用いて各100μl注入した。
(3)図20(A)に示すように、ハイブリドーマ細胞を連続して培養すると、経時的に細胞数は増加していくことが確認できる。そして、図20(B)に示すように、ハイブリドーマ細胞の増加に伴って、抗体産生量も飛躍的に増加していくことが確認できる。
(4)培養後1週間で培養液を排出口から取り出し、限外ろ過装置に連結して濾過すれば、抗体を得ることができる。
(5)上記のごとく、本発明の培養装置によれば、大量かつ効率よくハイブリドーマ細胞が培養することができ、医薬品として利用可能な抗体を大量かつ効率よく製造することができるから、医薬品として利用可能な抗体を製剤化することができ、種々の抗体医薬品として臨床応用できる。
(実施例4)
本発明の培養装置を使用して、造血幹細胞を培養し、血小板を製造する実施例を説明する。なお、この実施例では、培養槽として、その容積が1Lのものを使用している。
また、比較例として、ディッシュ内で造血幹細胞を培養し血小板を製造した場合と比較した。
なお、血小板の製造量の比較は、培養液の総量に対する血小板の数を比較した。
(1)培養装置をオートクレイブにて滅菌し、ウサギ大腿骨および血液を摘出し、その大腿骨から注射筒を用いて骨髄を吸い出しMEM培地に懸濁後、コラーゲンゲルと混合し細胞担体のチタンメッシュにのせて滅菌した培養槽の中央に内蔵した。
(2)培養槽内に、満タンになるまで培養液を自動で注入し、循環装置によって環流しながら培養を行い、1週間後に細胞を含んだ培養液を回収し、フィコールを用いた密度勾配遠心法にて血小板分画をして得た。
(3)図21に示すように、本発明の培養装置では、ディシュで培養する場合に比べて、遙かに大量の血小板を生成することができることが確認できる。
(4)本発明の培養装置によれば、少量の造血幹細胞から大量の血小板を効率よく製造することができるから、本実施例により作成された血小板を製剤化することにより、外科手術や血小板減少症などの治療としての他家および自家の血小板移植を可能とすることができる。
本発明の培養装置によれば、細菌や浮遊細胞だけでなく、組織や臓器を形成する接着細胞であっても長期間効率よく培養することができるため、再生医療に使用可能な組織や臓器等を大量かつ効率よく製造することができる。とくに、少量の造血幹細胞から大量の血液細胞を培養することができるから、輸血用血液製剤の製造も可能である。また、細胞を大量に培養することができるから、細胞が産生する医薬品として利用可能な抗体を大量かつ効率よく製造することができる。
本実施形態の培養装置1の概略ブロック図である。 本実施形態の培養装置1に設置した培養槽2の概略説明図である。 培養液調整手段20の詳細説明図である。 他の実施形態のガス濃度調整手段22の概略説明図である。 抽出手段80を備えた培養装置1の概略ブロック図である。 細胞供給手段90を備えた培養装置1の概略ブロック図である。 面状発熱体71の概略説明図である。 細胞播種手段60の概略正面縦断面図である。 細胞播種手段60の概略側面縦断面図である。 細胞播種手段60が傾転した状態の概略説明図である。 他の実施形態の細胞播種手段60の概略正面縦断面図である。 他の実施形態の細胞播種手段60の概略側面縦断面図である。 他の実施形態の細胞播種手段60が傾転した状態の概略説明図である。 (A)黒体粉末の各成分重量割合を示したグラフであり、(B)黒体粉末をFT−IR分析した結果を示すグラフである。 (A)黒体粉末の各成分重量割合を示したグラフであり、(B)黒体粉末をFT−IR分析した結果を示すグラフである。 (A)天然セラミックスの各成分重量割合を示したグラフであり、(B)天然セラミックスをFT−IR分析した結果を示すグラフである。 ゼオライトをFT−IR分析した結果を示すグラフである。 (A)人工特殊セラミックスの各成分重量割合を示したグラフであり、(B)人工特殊セラミックスをFT−IR分析した結果を示すグラフである。 (A)本発明の培養装置およびフラスコを使用して大腸菌を培養したときにおいて、培養液の濁度を比較した図であり、(B)本発明の培養装置およびディッシュを使用して酵母を培養したときにおいて、培養液中の総酵母量を比較した図である。 本発明の培養装置およびディッシュを使用してハイブリドーマ細胞を培養したときにおいて、(A)培養液中の細胞数を比較した図であり、(B)抗体産生量を比較した図である。 本発明の培養装置およびディッシュを使用して造血幹細胞を培養したときにおいて、(A)培養液トータル量あたりの血小板数を比較した図であり、(B)造血幹細胞数あたりの血小板数を比較した図である。

Claims (7)

  1. 生体の細胞を培養するための装置であって、
    培養液を収容するための培養槽と、
    該培養槽内の培養液を外部循環させる循環手段と、
    前記培養液を外部循環させている間に、該培養液の状態を調整する培養液調整手段とを備え
    該培養液調整手段が、
    前記培養液のガス濃度を調整するガス濃度調整手段と、
    前記培養液を浄化する浄化手段とを備えており、
    該浄化手段と前記ガス濃度調整手段が直列に配置されており、
    前記浄化手段が、前記培養液を透析する透析部であり、
    前記循環手段が、
    前記培養槽から細胞が流出することを防ぐための流出防止手段を備えており、
    該流出防止手段が、電磁石である
    ことを特徴とする培養装置。
  2. 生体の細胞を培養するための装置であって、
    培養液を収容するための培養槽と、
    該培養槽内の培養液を外部循環させる循環手段と、
    前記培養液を外部循環させている間に、該培養液の状態を調整する培養液調整手段とを備え
    該培養液調整手段が、
    前記培養液のガス濃度を調整するガス濃度調整手段と、
    前記培養液を浄化する浄化手段とを備えており、該浄化手段と前記ガス濃度調整手段が直列に配置されており、
    前記浄化手段が、
    前記培養液を透析する透析部であり、
    該透析部が、
    中空な本体ケースと、
    該本体ケース内に配置された中空糸とを備えており、
    前記本体ケースの内面と前記中空糸の外面との間に、前記培養液が通される培養液循環通路が形成されており、
    前記中空糸の内部に、前記培養液を透析するための透析液が通される
    ことを特徴とする培養装置。
  3. 前記培養槽から培養液を抽出する抽出手段を備えており、
    該抽出手段が、
    一端が前記培養槽内の培養液に浸漬され、他端が該培養槽外に配置された抽出経路と、該抽出経路に設けられた、前記培養液を搬送するための搬送手段と、
    前記抽出経路内に、無菌気体を供給する気体供給手段を備えており、
    該気体供給手段が、前記抽出経路において、その他端と前記搬送手段との間に常時無菌気体を供給している
    ことを特徴とする請求項1または2記載の培養装置。
  4. 前記培養槽内の培養液を外部に排出する培養液排出部と、
    前記循環手段に外部から新しい培養液を供給する培養液供給部とを有する培養液交換手段を備えており、
    前記培養液排出部が、前記培養槽から細胞が流出することを防ぐための流出防止手段を備えており、
    該流出防止手段が、電磁石である
    ことを特徴とする請求項1または2記載の培養装置。
  5. 前記培養する細胞を供給する細胞供給手段を備えており、
    該細胞供給手段が、
    培養する細胞を含有する播種液を前記培養槽に搬送する細胞搬送手段と、
    該細胞供給手段によって搬送された前記播種液を、前記培養槽内に排出する排出部とを備えており
    前記細胞搬送手段が、
    前記播種液が収容された貯蔵部と、
    前記排出部との間を連通させる播種液搬送経路と、該播種液を前記貯蔵部から前記排出部に向けて送るポンプと、該ポンプと前記排出部との間に設けられ、両者の間を連通遮断するバルブとを備えており
    該バルブによって前記ポンプと前記排出部との間を遮断した状態において前記ポンプを作動させ、前記細胞搬送手段内の前記播種液の圧力を上昇させてから、前記バルブによって前記ポンプと前記排出部との間を連通させる
    ことを特徴とする請求項1または2記載の培養装置。
  6. 前記培養槽内に、複数本の円管を連結して形成された3次元構造を有する、培養する細胞が付着される培養器具を備えており、
    該培養器具が、その軸方向が前記培養槽の軸方向と平行となるように、前記培養槽内に配設されており、
    前記培養器具の表面に、培養する細胞を播種する播種手段を備えており、
    該播種手段が、
    前記培養槽を傾転させる傾転部と、
    前記培養器具に、細胞を含む液体を供給する細胞供給部と、
    前記培養槽内に設けられた前記培養器具に対して前記細胞供給部を挿入離脱させる移動部とを備えている
    ことを特徴とする請求項1または2記載の培養装置。
  7. 前記培養槽を、その中心軸まわりに回転させる回転部を備えており、
    該回転部によって培養槽を回転させながら細胞を播種する
    ことを特徴とする請求項6記載の培養装置。
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