JP2002065247A - 細胞培養基材 - Google Patents

細胞培養基材

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JP2002065247A
JP2002065247A JP2000260966A JP2000260966A JP2002065247A JP 2002065247 A JP2002065247 A JP 2002065247A JP 2000260966 A JP2000260966 A JP 2000260966A JP 2000260966 A JP2000260966 A JP 2000260966A JP 2002065247 A JP2002065247 A JP 2002065247A
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JP2000260966A
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Masahito Taya
正仁 田谷
Masahiro Kinooka
正博 紀ノ岡
Fumiko Shiraishi
文子 白石
Takao Okada
隆雄 岡田
Yukari Imamura
由賀里 今村
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Taki Chemical Co Ltd
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Taki Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成形性、形態維持性に優れ、生体外または生
体内で細胞を付着・培養し生体組織を形成することによ
り、優れた組織の再生を行うと共に、生体内で分解吸収
される細胞培養基材を提供する。 【解決手段】 乳酸−トリメチレンカーボネート共重合
体の多孔質体からなる細胞培養基材である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳酸−トリメチレ
ンカーボネート共重合体の多孔質体からなる細胞培養基
材に関し、成形性、形態維持性に優れ、生体外または生
体内で細胞を付着・培養し生体組織を形成することによ
り、優れた組織の再生を行うと共に、生体内で分解吸収
される細胞培養基材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より骨組織、軟骨組織のような硬組
織あるいは上皮組織、結合組織、神経組織のような軟組
織が外傷、炎症、腫瘍、老化などにより欠損部を生じた
り、あるいは、手術等によって不可逆的な損傷を受けた
場合には、種々の方法によって補綴等を行い機能回復が
行われており、これらに用いられる材料も数多く研究が
されている。このような生体内の欠損部を補綴する場合
には、従来より同種移植、異種移植よりも抗原性が少な
く移植床への生着性が良く、またウイルス、プリオン等
の感染あるいは免疫上問題の少ない方法である自家移植
が行われてきた。しかし、自家移植では採取可能な生体
組織は限定され、その採取量にも限界がある。しかも、
新たに手術創を形成することによって、耐性菌感染への
危険性、患者の苦病の長期化等の問題があった。
【0003】また、補綴および組織機能の回復について
は、人工補綴物や人工臓器等の開発が行われているが、
組織機能の回復については、その材料の特性が生体組織
に近づいているものの、材料と組織との界面での生体適
合性、生体親和性は未だ充分でなく、現状ではすべてを
人工材料に依存することは困難である。
【0004】近年、生化学的研究の発展、細胞培養技術
の開発により、生体内の細胞を用いてその機能を維持し
たまま生体外で培養し、これを患部に移植することによ
って組織を回復させようとする組織再生工学的研究が進
められており、採取した患者自身の体細胞を生体外で培
養し、再生した組織を欠損部に移植するという方法が提
案されている。この方法によれば、患者自身の細胞組織
を使用するため免疫上の問題がなく、採取する組織も少
量で良いため患者の負担も軽減されるという利点があ
る。しかし、生体外に於ける組織の培養では、通常、生
体を構成する細胞の殆どが固体表面に付着して増殖する
接着依存性細胞であるため、付着の足場となる基質が存
在しないと増殖或いは機能の発現が困難である。細胞を
その機能を保持した状態で培養するためには、生体内の
環境に近い状態を実現する三次元培養法を行う必要があ
り、そのためには、培養基材に毒性がなく、付着表面積
が大きく栄養分の供給、老廃物の代謝が阻害されない培
養基材を細胞外マトリックスとして使用することが必要
となる。
【0005】このような細胞外マトリックス(培養基
材)材料として、コラーゲンを使用する方法が知られて
いる。例えば、コラーゲンスポンジに表皮細胞、繊維芽
細胞を播種し、これを培養することにより人工皮膚を得
る方法(S.Boyce,SURGERY,103、421(1988))が知られて
いるが、この方法によると、コラーゲンは培養細胞によ
って変化を受け培養中に収縮するため、目的の形態の組
織を得ることが困難である。また、コラーゲンの収縮を
防ぐために、コラーゲンをグルタルアルデヒド等の架橋
剤で架橋させ、支持構造を有する特殊な容器を使用して
培養する方法が知られている。(特開平10-43213号公報) しかし、何れの方法もコラーゲンが天然物由来の材料で
あるため、その分子量、アミノ酸組成量、保水量等が一
定せず、更には、この材料は感染性を内在したウイルス
の完全な除去が困難であることから、使用に際して常に
感染の危険性を伴うという問題が残されている。
【0006】この様なコラーゲンに代えて、免疫学的に
問題の少ない合成系のポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル
を材料とする細胞培養基材が開発されている。このポリ
乳酸等の脂肪族ポリエステルは、生分解性を有し、細胞
増殖に伴って基材が分解されるために、細胞の接触阻害
による成長抑制作用を軽減することができるという利点
がある。米国特許第5,736,372号は、軟骨細胞を付着さ
せたポリ乳酸、ポリグリコール酸等の生分解性ポリマー
からなる繊維状細胞培養基材と軟骨組織の再生方法を開
示している。また、特公平6-6155号公報及び米国特許第
5,041,138号は、生体適合性、生分解性ポリマーからな
る軟骨細胞を含むマトリックスにより軟骨構造物を成長
させるための材料を開示している。このように細胞培養
基材に使用されるポリマーは、主としてポリ乳酸、ポリ
グリコール酸およびその共重合体である。この材料の物
性は高結晶性あるいは非晶性の組成に於いて疎水性であ
り、しかも材料が剛直性を有するため、細胞培養時に材
料と細胞との界面に於ける親和性が良好でなく、材料に
細胞が付着し難いという欠点がある。
【0007】また、上記開示技術では、培養基材は細胞
付着面積の増加、栄養分、老廃物等の循環効率の向上の
ために、その形態に繊維構造が採用されているが、この
形態では結晶性ポリマーを使用しているため脆性が高く
なり、生体組織の再生に必要な孔径を有した多孔質体形
状を付与することが困難である。また、他に多孔質体基
材として、スポンジ構造のカプロラクトン系共重合体が
開示されている。(上田実編,ティッシュ・エンシ゛ニアリンク゛,名古屋
大学出版会発行(1999))
【0008】更に、特表平3-502651号公報には、トリメ
チレンカーボネートを含むポリマーから製造される医療
用具が開示されている。また、特開平3-177423公報に
は、トリメチレンカーボネートと光学不活性ラクチドか
らなる共重合体が開示されている。更に、特開平4-2319
63号公報には、10〜50モル%のトリメチレンカーボネー
トで構成される共重合体からなる外科用修復器具が開示
されている。この様に各種の材料からなる基材が知ら
れ、泌尿器系組織、口腔内組織等の再建については多く
の研究がされているものの、生体細胞培養に適する特性
を有する材料は得られておらず、培養時に於ける組織と
基材界面での生体親和性及び形態付与性に優れ、細胞が
本来のマトリックスを形成するまでの期間に於いて強度
および形態を維持し、更に細胞増殖に伴って分解吸収さ
れることにより、生体内での細胞活動により生体組織に
置換され得る材料が求められているのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは前述の課
題を解決すべく、生体親和性、形態付与性に優れ、また
適切な強度及び分解性を有し、更には生体内で異物反応
を生じない細胞培養基材を得るべく鋭意研究を重ねた。
その結果、乳酸単位とトリメチレンカーボネート単位と
の共重合体の多孔質体からなる材料が、前述の課題を解
決する優れた材料となることを見出し、係る知見に基づ
き本発明を完成させたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、乳酸−ト
リメチレンカーボネート共重合体の多孔質体からなる細
胞培養基材に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下本発明を更に詳細に説明す
る。本発明の細胞培養基材は、乳酸−トリメチレンカー
ボネート共重合体の多孔質体からなり、その共重合体の
組成は、乳酸単位とトリメチレンカーボネート単位から
なる共重合体である。この共重合体は、一般的な方法に
より製造するものであればよく、各モノマーの開環重
合、一方のポリマー共存下での他モノマーの開環重合、
各単位ポリマー同士でのエステル交換反応等いずれの方
法によるものであってもよい。その一例を挙げれば、ラ
クチド、トリメチレンカーボネートをオクタン酸スズ、
塩化スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ系触媒の
存在下で、80〜180℃で溶融し、開環重合を行うこ
とによって製造することができる。乳酸単位となるモノ
マーであるラクチドに関しては、D体、L体、DL体のいず
れのものを使用してもよい。また、得られた共重合体中
にモノマ−、オリゴマ−が存在すると組織反応、分解性
異常等の原因となるため、再沈殿化法等の方法で精製し
て使用するのが好ましい。
【0012】乳酸−トリメチレンカーボネート共重合体
は、その組成および分子量により機械的強度、柔軟性、
加水分解速度が異るため、本発明に使用する共重合体
は、トリメチレンカーボネート含量が5〜50モル%であ
ることが好ましい。共重合体中のトリメチレンカーボネ
ート含量が5モル%を下廻ると、共重合体の剛性が高く
なり脆いため、生体組織との親和性に乏しくなり、また
分解速度が著しく低下するため好ましくない。また、反
対にトリメチレンカーボネート含量が50モル%を上廻る
と、共重合体は粘着性を呈し、基材として必要な強度が
得られないだけでなく、前記と同様に生体分解吸収速度
が低下するため好ましくない。
【0013】このようにして得られる乳酸−トリメチレ
ンカーボネート共重合体の数平均分子量は、20,000〜20
0,000であることが好ましい。共重合体の分子量がこの
範囲を逸脱し、20,000を下廻ると乳酸等のモノマー、オ
リゴマー等を多含するため、生体組織への刺激性が強く
なることで問題となるばかりでなく、共重合体の局部的
な加水分解を促し強度低下の原因となるため適切でな
い。また反対に、共重合体の分子量が200,000を越える
と、加水分解速度が低くなることで細胞の増殖と組織再
生を阻害する。
【0014】尚、本発明の目的を損なわない範囲であれ
ば、本発明の共重合体に少量の他の共重合体成分を含有
させてもよい。この様な共重合成分としては、グリコー
ル酸、β-ヒドロキシ酪酸、γ-ブチロラクトン、δ-バ
レロラクトン等のヒドロキシカルボン酸を構成するモノ
マ−を例示できる。
【0015】また、本発明で得られる基材材料の特徴を
損なわない範囲であれば、これに抗腫瘍剤、抗癌剤、抗
炎症剤あるいは生理活性物質等の薬剤を共重合体に添加
し、細胞培養時あるいは生体への移植後に、これら薬剤
の徐放化を行うことも可能である。
【0016】このようにして製造された共重合体は、次
いでこれを多孔質化する。多孔質化を行う方法は以下の
通りである。その例を挙げれば、前述の得られた共重合
体をジオキサン、ベンゼン等の適切な溶媒に溶解し、こ
の溶液を凍結乾燥する方法によって多孔質体が得られ
る。別の方法としては、前述の共重合体をクロロホル
ム、アセトン等の溶媒に膨潤あるいは溶解させたもの
を、共重合体の溶解度が低いメチルアルコール等の溶媒
に浸漬することにより、多孔質体を得る方法がある。更
に別の方法として、前述の共重合体をジオキサン、ベン
ゼン等の適切な溶媒に溶解させた溶液に、蔗糖、塩化ナ
トリウム等の水溶性化合物を添加し分散させた後、これ
を凍結乾燥により溶媒を除去し、さらに添加した水溶性
化合物を水等で抽出する方法等によっても多孔質体を得
ることが可能である。
【0017】多孔質体の孔径の調製方法は、共重合体溶
液の濃度、水溶性化合物の粒径を変える等により容易に
調整することが可能である。例えば、多孔質体の孔径を
小さくするためには、共重合体濃度を高くするか或いは
使用する上記水溶性化合物の粒径を小さくする方法が有
効であり、反対に、多孔質体の孔径を大きくするために
は、共重合体濃度を低くするか或いは水溶性化合物の粒
径を大きくする方法が有効な手段となる。
【0018】細胞培養基材として適切な基材の孔径に関
しては、培養する細胞の種類により異なり限定できない
が、概ね50〜700μmの範囲の空隙であることが好
ましい。孔径が50μmを下廻ると、細胞培養液中の水
分、養分が自由に基材を通過できなくなり、細胞への栄
養分の供給、老廃物の廃棄が阻害されるという問題を生
じる。更には、基材に植え付けた細胞が多孔質体内部に
浸透せず、細胞接着密度が低下し培養が阻害されるとい
う問題がある。また反対に、孔径が700μmを上廻る
と、培養基材からの細胞の脱落が多くなり細胞密度が低
下し、細胞同士の接触による相互作用が減少し、細胞が
分化した状態を維持できないという問題も生じる。
【0019】また、本発明細胞培養基材の空隙率は、7
0%以上が良い。一般に70%以下では細胞増殖が充分
でない。即ち、空隙率が70%以下では、上記と同様に
基材に植え付けた細胞が多孔質体内部に浸透せず、細胞
接着密度が低下し培養が阻害されるという問題を生じ
る。空隙率の上限に関しては別段制約はないが、形状保
持の点から98%程度である。
【0020】このようにして得られた多孔質体は、これ
を切断、加圧等の方法によって成形加工することが可能
であり、その厚さ、容積あるいは形状については適用す
る組織欠損部の状態によって適宜選択すればよい。
【0021】本発明の基材を用いて細胞培養を行う方法
について云えば、基材に播種、培養する細胞の種類とし
ては、好例として繊維芽細胞、上皮細胞、肝実細胞、軟
骨芽細胞、骨芽細胞等の接着性細胞が挙げられる。しか
し、これらに限定されるものではない。培養の方法は、
培養基材に目的細胞の細胞懸濁液を吸収させて細胞を導
入した後、これを培養液を入れたシャーレまたは培養瓶
中に浸漬して培養する方法により行うことができる。
【0022】このような方法で培養することにより、本
発明の基材は培養初期には収縮などの変形を生じず、そ
の形状を維持した状態で培養を行うことができ、更に細
胞の増殖に伴って基材は徐々に分解され、細胞増殖のた
めの新たな空孔を形成するため、細胞と基材との接触阻
害による細胞の増殖抑制が低減する。このようにして培
養を行った基材は、所定の培養期間を経た後、生体内の
細胞組織欠損部に移植する。移植後には、生体内でさら
に細胞が増殖し生体組織と置換される。形成された組織
は、組織欠損部周囲の組織との親和性に優れ、元の生体
組織とより良く接着することで、欠損組織の再生が可能
となる。
【0023】本発明の細胞培養基材は、細胞培養から組
織の再生までの間、基材の形態を保持し、また細胞の増
殖に伴って基材は分解吸収され、欠損部の組織に置換さ
れる特徴を有する。
【0024】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げ更に説明を行
う。
【0025】[実施例1]温度計、排気口を備えた50
0ml容のセパラブルフラスコに、トリメチレンカーボネ
ート55gとL-ラクチド(アルト゛リッチ社製、試薬)350
gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(和光純薬
製、試薬)0.12gを加えた。これを1×10- 1mm
Hgの減圧下、160℃で8時間重合反応を行った。反
応後、得られた共重合体を10v/w%となるようにクロ
ロホルムに溶解し、約3倍のメタノール中で共重合体を
析出させることにより精製処理を行った。処理後、乳酸
−トリメチレンカーボネート共重合体312gを得た。
この得られた共重合体の分子量をGPCによって測定し
た結果、数平均分子量は105,000であり、またH
-NMRによる測定結果からその組成(モル比)を求め
た結果、共重合体中のトリメチレンカーボネート含量
は、8モル%であった。
【0026】この乳酸−トリメチレンカーボネート共重
合体0.5gをジオキサン(和光純薬製、試薬)10m
lに溶解して約5w/v%の溶液とし、この溶液に約10
gの蔗糖(粒径150〜250μm)を添加混合した。
混合後、これをシャーレに入れ、凍結乾燥によりジオキ
サンを除去した後、これを室温下で蒸留水に浸漬するこ
とにより蔗糖を除去した。更に凍結乾燥をおこなって本
発明の基材を得た。この基材の孔径を走査型電子顕微鏡
観察により測定した結果、平均孔径は200μmであっ
た。基材の重量、容積を測定した結果より空隙率を求め
た結果、基材の空隙率は79%であった。また基材の厚
さは1mmであった。この基材を直径10mmの円盤状
に切断した後、これを70%エタノールに約2時間浸漬
して滅菌処理を行った。次いで、これをリン酸緩衝生理
食塩水(組成:塩化ナトリウム0.9%、塩化カリウム0.04
%、塩化カルシウム0.03%)中に17時間浸漬すること
により基材を洗浄した。
【0027】調製した本発明の基材を細胞培養基材とし
て評価するため、これを使用してヒト繊維芽細胞の培養
試験を行った。培養液としては、Dulbecco's Modified
Eagle's Medium(以下DMEMと略記)に、ウシ胎児血
清10%を添加した培養液を使用した。前培養として、
培養フラスコを用いてヒト繊維芽細胞(JCRB0075、ヒューマ
ンサイエンス)を上記の培養液に浸漬し、インキュベーター
中、37℃、5%CO2気相下で約10日間静置培養し
た。
【0028】培養によって繊維芽細胞は培養フラスコの
底面に接着して増殖した。この培養フラスコにトリプシ
ン溶液を添加して、繊維芽細胞をフラスコ底面から剥離
させた。次いで、剥離させた繊維芽細胞を遠心分離によ
り採取し、これにDMEM培養液を添加し、振とうする
ことにより繊維芽細胞懸濁液を得た。
【0029】前記本発明の基材をシャーレ上に置き、基
材上にヒト繊維芽細胞懸濁液(細胞濃度5.8×106
cells/ml)を初期接着細胞量が3.9×104 cells/di
skとなるように添加した。これを前記ウシ胎児血清10
%を添加したDMEM培養液中に浸漬し、インキュベー
ター中、37℃、5%CO2気相下で10日間培養を行
った。10日間培養を行った結果、培養基材中の細胞数
は8.2×104cells/diskに増加し、基材内における
細胞増殖が確認された。また、培養期間中、基材の変
形、収縮は認められなかった。尚、培養基材中の細胞数
は、3-(4,5-シ゛メチル-2-チアソ゛リル)-2,5-シ゛フェニル-2H-テトラソ゛リウムフ
゛ロミト゛(MTT)で細胞を染色した後、染色色素を溶出
して分光光度計による吸光度測定結果より算出して求め
た。
【0030】[実施例2]温度計、排気口を備えた50
0ml容のセパラブルフラスコに、トリメチレンカーボネ
ート172gとL-ラクチド181gを加え、これに触媒
としてオクタン酸スズ0.10gを加えた。1×10- 1
mmHgの減圧下160℃で8時間重合反応を行った。
反応後、得られた共重合体を10v/w%となるようにク
ロロホルムに溶解し、約3倍のメタノール中で共重合体
を析出させることにより精製処理を行った。処理後、乳
酸−トリメチレンカーボネート共重合体273gを得
た。この得られた共重合体の分子量をGPCによって測
定した結果、数平均分子量は115,000であり、ま
たH-NMRによる測定結果からその組成(モル比)を
求めた結果、共重合体中のトリメチレンカーボネート含
量は35モル%であった。
【0031】この乳酸−トリメチレンカーボネート共重
合体0.5gをジオキサン10mlに溶解して約5w/v%
の溶液とし、この溶液に約10gの蔗糖(粒径300〜
400μm)を添加混合した。混合後、これをシャーレ
に入れ、凍結乾燥によりジオキサンを除去した後、これ
を室温下で蒸留水に浸漬することにより蔗糖を除去し
た。更に凍結乾燥をおこなって本発明の基材を得た。こ
の基材の孔径を走査型電子顕微鏡観察により測定した結
果、平均孔径は350μm、空隙率は85%であった。
また基材の厚さは1mmであった。
【0032】実施例1と同様にヒト繊維芽細胞培養試験
を行った結果、細胞数は初期接着細胞数3.9×104
cells/diskから9.5×104cells/diskに増加し、多
孔質体内における細胞増殖が確認された。また、培養期
間中、多孔質体の変形、収縮は認められなかった。
【0033】[実施例3]温度計、排気口を備えた50
0ml容のセパラブルフラスコに、トリメチレンカーボネ
ート270gとL-ラクチド179gを加え、これに触媒
としてオクタン酸スズ0.13gを加えた。1×10- 1
mmHgの減圧下160℃で8時間重合反応を行った。
反応後、得られた共重合体を10v/w%となるようにク
ロロホルムに溶解し、約3倍のメタノール中で共重合体
を析出させることにより精製処理を行った。処理後、乳
酸−トリメチレンカーボネート共重合体382gを得
た。この得られた共重合体の分子量をGPCによって測
定した結果、数平均分子量は97,000であり、また
H-NMRによる測定結果からその組成(モル比)を求
めた結果、共重合体中のトリメチレンカーボネート含量
は45モル%であった。
【0034】この乳酸−トリメチレンカーボネート共重
合体0.5gをジオキサン10mlに溶解して約5w/v%
の溶液とし、この溶液に約10gの蔗糖(粒径600〜
800μm)を添加混合した。混合後、これをシャーレ
に入れ、凍結乾燥によりジオキサンを除去した後、これ
を室温下で蒸留水に浸漬することにより蔗糖を除去し
た。更に凍結乾燥をおこなって本発明の基材を得た。こ
の基材の孔径を走査型電子顕微鏡観察により測定した結
果、平均孔径は700μm、空隙率は95%であった。
また基材の厚さは1mmであった。
【0035】実施例1と同様にヒト繊維芽細胞培養試験
を行った結果、細胞数は初期接着細胞数3.9×104
cells/diskから12.0×104cells/diskに増加し、
多孔質体内における細胞増殖が確認された。また、培養
期間中、多孔質体の変形、収縮は認められなかった。
【0036】比較ために、トリメチレンカーボネートを
235g、L-ラクチドを64.7gとする以外は実施例
1と同様の製法にしたがって、共重合体中のトリメチレ
ンカーボネート含量が70モル%の乳酸−トリメチレン
カーボネート共重合体を合成したが、接着性があり低強
度であるため多孔質体を形成できなかった。
【0037】更に比較のために、実施例1で使用した乳
酸−トリメチレンカーボネート共重合体に代えて、コラ
ーゲンスポンジ((株)高研製)を使用してヒト繊維芽細
胞培養試験を行った。尚、培養条件等は実施例1と同条
件とした。その結果、スポンジ内における細胞増殖は確
認されたが、培養初期に基材が収縮、変形して初期の基
材形状を維持できなかった。
【0038】更に比較のために、実施例1で使用した乳
酸−トリメチレンカーボネート共重合体に代えて、ポリ
乳酸(分子量70000)を用いて実施例1と同様に多
孔質化を行い、これを基材として使用してヒト繊維芽細
胞培養試験を行った。その結果、ポリ乳酸からなる基材
は脆性が大きく、円盤状に切断する際に破断した。
【0039】更に比較のために、実施例1と同様の共重
合体の製造方法に従い、共重合体中のトリメチレンカー
ボネート含量8モル%、数平均分子量105,000の
乳酸−トリメチレンカーボネート共重合体を得た。この
乳酸−トリメチレンカーボネート共重合体1.5gをジ
オキサン(和光純薬製、試薬)10mlに溶解して約1
3w/v%の溶液とし、これをシャーレに入れ凍結乾燥に
よりジオキサンを除去することにより、平均孔径70μ
m、空隙率60%の多孔質体を得た。この多孔質体を培
養基材として使用し、実施例1と同様の方法によりヒト
繊維芽細胞の培養試験を行った結果、基材内部への繊維
芽細胞の増殖が阻害され、細胞の増殖が充分でなかっ
た。
【0040】
【発明の効果】本発明の細胞培養基材は、乳酸単位とト
リメチレンカーボネート単位からなる共重合体であり、
基材と細胞との親和性に優れ、生体内で異物反応を示さ
ない生体適合性を有する基材である。また、細胞組織の
再建に際しては、一般に再建される生体組織の形状は複
雑であるが、本発明の細胞培養基材によれば、乳酸単位
とトリメチレンカーボネート単位の成分比と共重合体の
分子量を調節することによって、基材に適切な強度と柔
軟性を付与でき、再建部位に容易に適合する形態の成形
材料を得ることができる。更に、本発明の基材材料であ
る共重合体は、生体内分解性を有し、共重合体の成分組
成を調整することによりその分解速度を調整することが
可能であり、各種細胞の増殖速度に適合した分解速度を
有する細胞培養基材を得ることができる。また、本発明
基材は、細胞培養に際して細胞増殖と組織再生を阻害し
ない特徴を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B029 AA08 AA21 BB11 CC02 CC08 CC10 GA01 GB09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乳酸−トリメチレンカーボネート共重合
    体の多孔質体からなる細胞培養基材。
  2. 【請求項2】 共重合体中のトリメチレンカーボネート
    含量が5〜50モル%の範囲である請求項1記載の細胞
    培養基材。
  3. 【請求項3】 多孔質体の孔径が50〜700μmの範
    囲の空隙を有する多孔質体である請求項1または2記載
    の細胞培養基材。
  4. 【請求項4】 多孔質体の空隙率が70%以上である請
    求項1、2または3記載の細胞培養基材。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003104386A1 (ja) * 2002-05-22 2003-12-18 株式会社エムビーエス 培養装置、人工組織および血液製剤
JP2005110676A (ja) * 2003-09-17 2005-04-28 Think Engineering Kk 生細胞培養基材、該基材の製造方法、および該製造方法に用いるエッチング処理装置、並びに生細胞の培養方法
WO2023134146A1 (zh) * 2022-01-11 2023-07-20 长春圣博玛生物材料有限公司 乳酸在调节促进组织增长制品中的应用

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