JP4363173B2 - セルロースアセテートプロピオネート繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、良好な繊維特性を有するセルロースアセテートプロピオネート繊維およびその製造方法に関する。
セルロースエステル、セルロースエーテルなどのセルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料として、また、自然環境中にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。
セルロースの繊維としての利用に関しては、自然界中で産生する綿や麻などの短繊維をそのまま紡績して使用することが古くから行われてきた。短繊維ではなく、フィラメント材料を得るためには、レーヨンのようにセルロースを二硫化炭素等の特殊な溶媒系で溶解させ湿式紡糸法での製糸を行うか、セルロースアセテートのようにセルロースを誘導体化して、塩化メチレンやアセトン等の有機溶媒に溶解させた後、この溶媒を蒸発させながら紡糸する乾式紡糸法での製糸を行うしか方法がなかった。これらの湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法では、使用する二硫化炭素、アセトン、塩化メチレン等の有機溶剤が環境に対して悪影響を及ぼす懸念が強いため、環境との調和を考える場合には、決して良好な製糸方法とはいえない。さらには多量の溶剤を用いて紡糸を行うため、紡糸や溶剤回収に多大のエネルギーを要し、また紡糸速度が低いため生産性が低く、製造原価が高いものとなってしまうという問題がある。これに対し溶融紡糸法は、エネルギーコストが低く、生産性が高く、様々な品種の繊維が紡糸可能であるという利点を有している。
しかしながら、セルロースアセテートに代表されるセルロース脂肪酸エステルは、ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーと比較して、熱流動性が劣っているため、溶融紡糸するためには可塑剤を多量に添加させることが必要となる。セルロース脂肪酸エステルに多量の可塑剤を添加して、セルロース脂肪酸エステルの熱分解温度以下で溶融紡糸することは基本的には可能であり、例えば、血液透析用あるいは限外濾過膜用のセルロース脂肪酸エステル繊維を得ることを目的として種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
上述の方法で得られるセルロース脂肪酸エステル繊維には、組成物中に約50重量%と大量の可塑剤を含有しているため、得られる繊維の機械的特性は非常に劣るものであった。溶融紡糸法によって得られるセルロース脂肪酸エステル繊維の一例を示すと、特許文献4においては、セルロースアセテートの溶融紡糸法による繊維化の記載が見られる。ここでは強度は0.44cN/dtex、伸度は15%であり、タフネス(強度×伸度1/2)は1.7と非常に低い繊維しか得られていない(例えば、特許文献4参照)。
また上記とは別に、用途として不織布を狙い、溶融紡糸時の断糸率を減少させ、高い繊維強度を有するセルロースエステル系繊維を得る目的として、セルロースアセテートおよび可塑剤(カプロラクトンテトラオール、ポリエチレンサクシネートなど)からなる組成物を溶融紡糸法により繊維を得るというものがある。しかしながら高い繊維強度を有するとは言っても、高々1.02g/D(=0.90cN/dtex)と低強度かつ低タフネスの繊維しか得られていない(例えば、特許文献5参照)。
特公平7−78288号公報(第1〜2頁) 特開昭59−49806号公報(第1頁) 特開昭54−42420号公報(第1頁) 特開平10−130957号公報(第5頁) 特開平10−317228号公報(第1〜3、5、7頁)
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、優れた機械的特性を有するセルロースアセテートプロピオネート繊維およびその製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)セルロースアセテートプロピオネート80〜98重量%および多価アルコール系可塑剤2〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維であって、該繊維の強度S(cN/dtex)と伸度E(%)が下記式を満たし、該繊維の降伏点応力が0.5〜1.5cN/dtexであることを特徴とするセルロースアセテートプロピオネート繊維。
6≦S・E1/2≦10
15≦E≦5
セルロースアセテートプロピオネートおよび多価アルコール系可塑剤を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸するに際し、紡糸温度を200〜280℃、紡糸速度を700〜2000m/分とし、口金下の雰囲気温度を80〜280℃とすることを特徴とするセルロースアセテートプロピオネート繊維の製造方法。
本発明のセルロースアセテートプロピオネートと多価アルコール系可塑剤を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維は、強伸度特性および降伏点応力が高いために工程通過性に優れたセルロースアセテートプロピオネート繊維である。該繊維は、衣料用繊維、産業用繊維、不織布などとして用いることができ、特に衣料用繊維に好適に用いることができる。
以下、セルロースアセテートプロピオネート繊維について詳細に説明する。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネート、多価アルコール系可塑剤との相溶性が良く、また多価アルコール系可塑剤の少量添加により、溶融紡糸が可能な熱流動性を有するものとなるため好ましい。セルロースにアシル基の炭素数が2 であるアセチル基と炭素数が3 であるプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネートは、適度な吸湿性を有しており、また製造も容易である。この場合、アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は、下式を満たすことが好ましい。なお平均置換度とはセルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基のうちアシル基が化学的に結合した数を指す。
2.0≦(アセチル基の置換度+プロピオニル基の置換度)≦3.0
0.1≦(アセチル基の置換度)≦2.0
0.5≦(プロピオニル基の置換度)≦2.9
上式を満たすセルロースアセテートプロピオネートは、多価アルコール系可塑剤との相溶性および良好な熱流動性の観点から好ましい。
セルロースアセテートプロピオネートの重量平均分子量(Mw)は30000〜300000であることが好ましい。Mwが30000未満の場合、セルロースアセテートプロピオネート繊維の繊維特性が低下するため好ましくない。Mwが300000より大きくなると、溶融粘度が非常に高くなるため、溶融紡糸による安定した繊維化が行えなくなってしまう。Mwは50000〜270000であることがより好ましく、80000〜250000であることが最も好ましい。なお重量平均分子量(Mw)とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
多価アルコール系可塑剤の含有量は、2〜20重量%とするものである。多価アルコール系可塑剤の含有量を2〜20重量%とすることで、セルロースアセテートプロピオネートの熱流動性が向上するため、生産効率の高い溶融紡糸法での生産が可能となり、それにより繊維断面を任意に制御することが可能となったり、複合繊維が可能となったりする。さらに良好な熱可塑性を生かして延伸や仮撚加工などを容易に行うことができる。
多価アルコール系可塑剤の含有量が2重量%未満の場合、セルロースアセテートプロピオネートの熱流動性が良好とならないため、溶融紡糸時にメルトフラクチャーや紡糸不良が生じ、溶融紡糸法による繊維化が困難となってしまう。
多価アルコール系可塑剤の含有量が20重量%より多い場合、セルロースアセテートプロピオネートの熱流動性は良好になるものの、紡糸して得た繊維に含まれる多価アルコール系可塑剤が繊維表面にしみ出したり、またそれに起因してヌメリ感が発生してしまい、高品質の製品を得ることができない。さらには熱的寸法安定性が悪くなってしまい、染色工程や高次加工工程において収縮に起因する問題が生じ、取り扱いが困難となってしまう。また布帛にした場合、はり(張り)・こし(腰)のないものとなってしまう。多価アルコールエステル系可塑剤の含有量は、より好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは8〜20重量%である。
本発明で具体的に用いることができる多価アルコール系可塑剤は、セルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物やポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物などである。
具体的なグリセリンエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
ジグリセリンエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンアセテート、ポリオキシエチレンプロピオネート、ポリオキシエチレンブチレート、ポリオキシエチレンバリレート、ポリオキシエチレンカプロエート、ポリオキシエチレンヘプタノエート、ポリオキシエチレンオクタノエート、ポリオキシエチレンノナネート、ポリオキシエチレンカプレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンミリスチレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンリノレート、ポリオキシプロピレンアセテート、ポリオキシプロピレンプロピオネート、ポリオキシプロピレンブチレート、ポリオキシプロピレンバリレート、ポリオキシプロピレンカプロエート、ポリオキシプロピレンヘプタノエート、ポリオキシプロピレンオクタノエート、ポリオキシプロピレンノナネート、ポリオキシプロピレンカプレート、ポリオキシプロピレンラウレート、ポリオキシプロピレンミリスチレート、ポリオキシプロピレンパルミテート、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシプロピレンオレート、ポリオキシプロピレンリノレートなどが挙げられるがこられに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
本発明における、セルロースアセテートプロピオネート80〜98重量%および多価アルコール系可塑剤2〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維は、強度S(単位:cN/dtex)と伸度E(単位:%)が下記式を満たす。
6≦S・E1/2≦10、15≦E≦50
上記式S・E1/2は繊維が切れるときのエネルギーを簡易的に示すものであり、タフネスと呼ばれている。タフネスが高ければ繊維が切れにくいということを示す。
上記式を満たすセルロースアセテートプロピオネート繊維は、繊維が切れるときに高いエネルギーが必要であるため、耐久性に優れている。
セルロースアセテートプロピオネート繊維の伸度は15〜50%である。伸度が15%以上である場合には製織や製編時など高次加工工程において糸切れが多発することがない。良好な伸度としては、20〜45%であることがより好ましく、20〜40%であることが最も好ましい。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネート80〜98重量%および多価アルコール系可塑剤2〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維の降伏点応力は0.5〜1.5cN/dtexである。降伏点応力がこの範囲にある場合、織編物を製造する際の工程通過性が良好となるため好ましい。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネート繊維は、上記式を満たすとともに、強度は0.9〜3.0cN/dtexであることが好ましい。強度が0.9cN/dtex以上であれば、製織や製編時など高次加工工程の通過性が良好であり、また最終製品の強力も不足することがないため好ましい。良好な強度特性の観点から、強度は高ければ高いほど好ましいが、具体的には1.0〜3.0cN/dtexであることがより好ましく、1.1〜3.0cN/dtexであることが最も好ましい。なお強度が3.0cN/dtexより高い繊維を得ることは事実上非常に困難である。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネート繊維は、初期引張抵抗度は20〜50cN/dtexであることが好ましい。初期引張抵抗度を20cN/dtex以上にすることで、布帛にした場合、適度なはり(張り)・こし(腰)を与えることができる。なお初期引張抵抗度が50cN/dtexより高いセルロースアセテートプロピオネート繊維を得ることは困難である。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネート繊維は、沸騰水収縮率は0.5〜10%であることが好ましい。沸騰水収縮率がこの範囲であれば、熱的寸法安定性が良好であり、染色工程や高次加工工程において収縮に起因する問題が発生せず、取り扱いが困難とならない。
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネート繊維の単糸繊度は、0.5〜100dtexであることが好ましい。単糸繊度が0.5dtex以上であれば、直接溶融紡糸法によって製糸性よく繊維を得ることができる。また、単糸繊度が100dtex以下であれば、繊維構造物の曲げ剛性が大きくなりすぎることなく、ソフトさが要求される衣料用布帛などにも適用することができる。単糸繊度はより好ましくは0.7〜50dtexであり、最も好ましくは1〜25dtexである。
本発明における、セルロースアセテートプロピオネート繊維のU%(ウースターノーマル%)は、3%以下であることが好ましい。U%とは、繊維の長さ方向の繊度斑をいう。U%が3%以下であることは、繊度の均一性に優れた繊維であり、値は小さければ小さい程好ましい。より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2%以下である。なおU%測定方法に関しては、実施例にて詳細に説明する。
本発明における、セルロースアセテートプロピオネート繊維の断面形状に関しては、特に制限がなく、実質的に真円状の円形断面であってもよいし、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、L字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形、中空などの異形断面であってもよい。また、芯鞘複合、偏芯芯鞘複合、サイドバイサイド型複合、異繊度混繊などのように複合繊維であってもよい。さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、酸化防止剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
本発明における強伸度特性に優れた、セルロースアセテートプロピオネートおよび多価アルコール系可塑剤を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維の製造方法は、溶融紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法、半湿式半乾式紡糸法のいずれであっても良い。なかでも高品質な長繊維を生産性良く得られること、繊維断面を任意に制御できること、芯鞘複合、偏芯芯鞘複合、サイドバイサイド型複合などのように様々な品種の複合繊維が得られること、製造時に環境への負荷がかかる有機溶剤を使用しないこと、エネルギーコストが低いこと、良好な熱流動特性を生かして紡糸して得られた繊維の延伸が可能になったり、更には延伸仮撚などの仮撚加工等が容易に可能になることを考慮すると、溶融紡糸法が最も好ましい。
溶融紡糸方法によるセルロースアセテートプロピオネート繊維の製造方法を例示すると、プレッシャーメルター型やエクストルーダー型などの公知の溶融押出紡糸機において、セルロースアセテートプロピオネートと多価アルコール系可塑剤を少なくとも含んでなる組成物を加熱溶融して、口金から押し出し、押し出された糸条は加熱筒の使用により加熱された雰囲気の領域を通過した後、チムニーにより冷却され、油剤付与により糸条を収束させ、巻き取る。
この際、紡糸温度は200〜280℃とすることが好ましい。紡糸温度を200℃以上とすることにより、組成物の溶融粘度が低くなり、メルトフラクチャーや紡糸不良などが生じることもなく、製糸性が良好となるので好ましい。また紡糸温度を280℃以下にすることにより、組成物の熱分解が抑制されるため、得られる繊維は着色せず、衣料用に適した繊維を得ることができるので好ましい。紡糸温度は220〜270℃であることがより好ましく、230〜260℃であることが最も好ましい。
また溶融紡糸の際、口金直下に加熱筒あるいは保温筒を設置することが重要である。加熱筒あるいは保温筒を設置することにより、口金直下の雰囲気温度が高くなり、タフネスに優れたセルロースアセテートプロピオネート繊維を得ることが可能となる。
口金下の雰囲気温度は80〜280℃とすることが好ましい。なお口金下の雰囲気温度とは、口金面より30mm真下の温度を指す。口金下の雰囲気温度が80℃未満では、加熱筒あるいは保温筒を使用せずに得られる繊維と同程度の繊維特性を有した繊維しか得られない。また280℃より高い場合、単糸切れなどが頻発してしまい、製糸性が不安定になってしまう。口金下の雰囲気温度は100〜270℃であることがより好ましい。
口金下を加熱するために用いる加熱筒あるいは保温筒の長さは、紡出糸の細化変形を容易にする効果と紡糸の作業性を考慮すると、50〜400mmが好ましく、100〜300mmであることがより好ましい。
紡糸速度は700〜2000m/分とすることが好ましい。紡糸速度を700〜2000m/分とすることで、分子配向が促進され、タフネスが向上する。紡糸速度は、750〜2000m/分であることがより好ましく、800〜2000m/分であることが最も好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.セルロースアセテートプロピオネートの置換度
セルロースにアセチル基とアシル基が結合したセルロースアセテートプロピオネートの置換度の算出方法については下記の通りである。
80℃で8時間の真空乾燥により絶乾状態としたセルロースアセテートプロピオネート0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[1−(Mwace−(16.00+1.01)×TA+{1−(Mwacy−(16.00+1.01)×TA}×Acy/Ace]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の置換度
DSacy:アシル基の置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
B.重量平均分子量(Mw)
セルロースアセテートプロピオネートを濃度0.01重量%となるようにクロロホルムに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters 2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:昭和電工製Shodex K−805L 2本連結
検出器:Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:クロロホルム
流速:1.0ml/分
注入量:200μl
C.強度、伸度、初期引張抵抗度および降伏点応力
JIS L 1013(1999年)に基づいて測定を行った。オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊度で除した値を繊維強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
なお、強度、伸度はマルチフィラメント糸で測定したものであり、測定回数は5回であり、その平均値を強度および伸度とした。
初期引張抵抗度(cN/dtex)は、JIS L 1013(1999年)(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10(初期引張抵抗度)に基づいて算出した。
なお、初期引張抵抗度はマルチフィラメント糸で測定したものであり、測定回数は5回であり、その平均値を初期引張抵抗度とした。
降伏点応力(cN/dtex)は、引張試験による降伏時の荷重を繊度で除した値とした。
D.U%(ウースターノーマル%)
U%測定は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。
測定速度:200m/分
測定時間:1分
撚り :S撚り、12000/分
なお、U%はマルチフィラメント糸で測定したものである。測定回数は3回であり、その平均値をU%とした。
E.沸騰水収縮率
繊維(マルチフィラメント糸)をかせ取りし、0.09cN/dtexの荷重下で試料長L0を測定した後、無荷重の状態で15分間、沸騰水中で処理を行う。処理後、風乾し、次いで0.09cN/dtexの荷重下で試料長L1を測定し、下式
沸騰水収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
なお測定回数は5回であり、その平均値を沸騰水収縮率とした。
実施例1
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)93重量%と平均分子量が600であるポリエチレングリコール(PEG600)7重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度238℃にて溶融させ、紡糸温度238℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量8.4g/分の条件で、0.27mmφ−0.65mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度200℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.08cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(84デシテックス−24フィラメント;単糸繊度3.5デシテックス)の強度は1.32cN/dtex、伸度は25.8%、降伏点応力は0.60cN/dtex、初期引張抵抗度は28.2cN/dtex、沸騰水収縮率は4.4%、U%は1.1%であった。この繊維のタフネスは6.7であり、良好な強伸度特性を有していた(表1参照)。
実施例2
ルロースアセテートブチレート(アセチル基の置換度:1.0、ブチリル基の置換度:1.7、重量平均分子量:15.5万;イーストマンケミカル社製CAB−381−20)91重量%とジグリセリンテトラカプリレート9重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度240℃にて溶融させ、紡糸温度240℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量10.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度125℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1250m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.09cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(84デシテックス−12フィラメント;単糸繊度7.0デシテックス)の強度は1.28cN/dtex、伸度は24.8%、降伏点応力は0.59cN/dtex、初期引張抵抗度は28.3cN/dtex、沸騰水収縮率は4.6%、U%は0.6%であった。この繊維のタフネスは6.4であり、良好な強伸度特性を有していた(表1参照)。
実施例3
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)87重量%と平均分子量が200であるポリエチレングリコールの末端水酸基にラウリル基が結合したポリオキシエチレンラウレート13重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度230℃にて溶融させ、紡糸温度230℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.5g/分の条件で、0.30mmφ−0.35mmLの口金孔を48ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度190℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.10cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(110デシテックス−48フィラメント;単糸繊度2.3デシテックス)の強度は1.33cN/dtex、伸度は24.9%、降伏点応力は0.61cN/dtex、初期引張抵抗度は30.3cN/dtex、沸騰水収縮率は5.0%、U%は1.0%であった。この繊維のタフネスは6.6であり、良好な強伸度特性を有していた(表1参照)。
実施例4
セルロース(日本製紙(株)溶解パルプ、α−セルロース92wt%)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースエステルを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートの置換度は2.4(アセチル基1.9、プロピオニル基0.5)、重量平均分子量は12.0万であった。
このセルロースアセテートプロピオネート80重量%と平均分子量が600であるポリエチレングリコール20重量%を二軸エクストルーダーを用いて220℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度250℃にて溶融させ、紡糸温度255℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量15.0g/分の条件で、0.25mmφ−0.50mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ100mm)内部を通過させ(口金下温度240℃)、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(100デシテックス−24フィラメント;単糸繊度4.2デシテックス)の強度は1.40cN/dtex、伸度は27.2%、降伏点応力は0.65cN/dtex、初期引張抵抗度は27.4cN/dtex、沸騰水収縮率は4.0%、U%は1.0%であった。この繊維のタフネスは7.3であり、良好な強伸度特性を有していた(表1参照)。
実施例5
実施例4で用いたセルロースアセテートプロピオネート85重量%と平均分子量が600でポリエチレングリコール15重量%を二軸エクストルーダーを用いて混練二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度250℃にて溶融させ、紡糸温度265℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量30.0g/分の条件で、0.20mmφ−0.40mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ175mm)内部を通過させ(口金下温度250℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1800m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(167デシテックス−36フィラメント;単糸繊度4.6デシテックス)の強度は1.42cN/dtex、伸度は24.0%、降伏点応力は0.67cN/dtex、初期引張抵抗度は31.3cN/dtex、沸騰水収縮率は5.0%、U%は1.1%であった。この繊維のタフネスは7.0であり、良好な強伸度特性を有していた(表1参照)
Figure 0004363173
比較例1
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)90重量%とグリセリンジアセテートモノオレート10重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度235℃にて溶融させ、紡糸温度235℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量13.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、800m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(167デシテックス−36フィラメント;単糸繊度4.6デシテックス)の強度は1.09cN/dtex、伸度は20.7%、降伏点応力は0.40cN/dtex、初期引張抵抗度は24.4cN/dtex、沸騰水収縮率は4.0%、U%は0.5%であった。この繊維のタフネスは5.0であり、タフネスの劣るものであった(表2参照)。
比較例2
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)90重量%とグリセリンジアセテートモノオレート10重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度235℃にて溶融させ、紡糸温度235℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量13.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度70℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、800m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(167デシテックス−36フィラメント;単糸繊度4.6デシテックス)の強度は1.10cN/dtex、伸度は21.1%、降伏点応力は0.41cN/dtex、初期引張抵抗度は24.3cN/dtex、沸騰水収縮率は4.0%、U%は0.6%であった。この繊維のタフネスは5.1であり、タフネスの劣るものであった(表2参照)。
比較例3
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)90重量%とグリセリンジアセテートモノオレート10重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度235℃にて溶融させ、紡糸温度235℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量13.4g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度285℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、800m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取りを幾度も試みたが、加熱筒の温度が高すぎるため糸掛け時に加熱筒内での糸切れが頻発し、巻き取り糸を得ることができなかった。
比較例4
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)90重量%と平均分子量が600であるポリエチレングリコール(PEG600)10重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度235℃にて溶融させ、紡糸温度235℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量24.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度150℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、2200m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取ることを幾度も試みたが、紡糸張力が高すぎるため、糸掛け時にゴデットローラーでの糸切れが頻発し、巻き取り糸を得ることができなかった。
比較例5
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)75重量%とグリセリンジアセテートモノラウレート25重量%を二軸エクストルーダーを用いて185℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度220℃にて溶融させ、紡糸温度220℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量13.3g/分の条件で、0.27mmφ−0.54mmLの口金孔を18ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度170℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、800m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(166デシテックス−48フィラメント;単糸繊度3.5デシテックス)の強度は0.79cN/dtex、伸度は39.5%、降伏点応力は0.31cN/dtex、初期引張抵抗度は16.5cN/dtex、沸騰水収縮率は6.0%、U%は3.2%であった。この繊維のタフネスは5.0であり、タフネスの劣るものであった(表2参照)。
比較例6
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)87重量%とポリオキシエチレンラウレート13重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度230℃にて溶融させ、紡糸温度230℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.5g/分の条件で、0.30mmφ−0.35mmLの口金孔を48ホール有した口金より紡出した。
この紡出糸条を25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(110デシテックス−48フィラメント;単糸繊度2.3デシテックス)の強度は1.26cN/dtex、伸度は15.2%、降伏点応力は0.48cN/dtex、初期引張抵抗度は31.2cN/dtex、沸騰水収縮率は4.8%、U%は1.1%であった。この繊維のタフネス(強度×伸度1/2)は4.9であり、タフネスの劣るものであった(表2参照)。
比較例7
ルロースアセテートプロピオネート(アセチル基の置換度:0.1、プロピオニル基の置換度:2.6、重量平均分子量:16.0万;イーストマンケミカル社製CAP−482−20)90重量%とグリセリンジアセテートモノオレート10重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースアセテートプロピオネート組成物ペレットを得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い、メルター温度235℃にて溶融させ、紡糸温度235℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量8.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を口金下に設置した加熱筒(長さ150mm)内部を通過させ(口金下温度150℃)、25℃、風速0.3m/秒のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、500m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。得られた繊維(166デシテックス−36フィラメント;単糸繊度4.6デシテックス)の強度は1.01cN/dtex、伸度は29.5%、降伏点応力は0.38cN/dtex、初期引張抵抗度は22.0cN/dtex、沸騰水収縮率は4.0%、U%は0.5%であった。この繊維のタフネスは5.5であり、タフネスの劣るものであった(表2参照)。
Figure 0004363173
得られる繊維は、衣料用繊維、産業用繊維、不織布などとして用いることができ、特に衣料用繊維に好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. セルロースアセテートプロピオネート80〜98重量%および多価アルコール系可塑剤2〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維であって、該繊維の強度S(cN/dtex)と伸度E(%)が下記式を満たし、該繊維の降伏点応力が0.5〜1.5cN/dtexであることを特徴とするセルロースアセテートプロピオネート繊維。
    6≦S・E1/2≦10
    15≦E≦50
  2. セルロースアセテートプロピオネートおよび多価アルコール系可塑剤を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸するに際し、紡糸温度を200〜280℃、紡糸速度を700〜2000m/分とし、口金下の雰囲気温度を80〜280℃とすることを特徴とするセルロースアセテートプロピオネート繊維の製造方法。
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