JP4687473B2 - セルロース脂肪酸エステル繊維およびその製造方法 - Google Patents

セルロース脂肪酸エステル繊維およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、布帛にした際に優れたふくらみ感、張り腰が得られるセルロース脂肪酸エステル繊維およびその製造方法に関する。
セルロースエステル、セルロースエーテルなどのセルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料として、また自然環境下にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。
セルロース系フィラメントとしてはビスコース、キュプラなどの再生セルロース繊維、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート繊維が知られている。これらの繊維はいずれも組成物が熱可塑性を有していない、あるいは熱可塑化が発現する温度が熱分解温度以上であるため、溶融紡糸法によって繊維化することはできず、溶媒を使用する湿式あるいは乾式の製糸方法によって製造されている。これらの繊維はセルロース由来であることによって、良好な光沢や吸放湿性など衣料用繊維として非常に良好な特性を有している一方、有害な有機溶媒を用いた溶液紡糸であるため環境負荷が懸念される。
このため溶融紡糸法による環境負荷の低減および生産性向上を目的として、セルロースエステル樹脂に可塑剤を添加することにより、樹脂の熱分解温度以下での熱流動性を向上させ溶融紡糸を行う技術が開示されている(特許文献1参照)。
上記手法で得られる繊維は、収縮応力が非常に低く、また沸騰水中での収縮率も非常に小さいものであった。即ち寸法安定性に非常に優れたものであるため、該繊維を用いて布帛にしても、優れたふくらみ感、張り腰を有する布帛を得ることは不可能であった(特許文献1参照)。
一方、特開2004−176201号公報には、張り・腰を有した布帛を得ることができる繊維の製造方法が開示されている。ここで得られる繊維を有した布帛は、確かに良好な張り・腰を有しているが、ふくらみに関しては優れたものではなかった(特許文献2参照)。
特開2004−27378号公報(第1頁) 特開2004−176201号公報(第8〜9頁)
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、布帛にした際に優れたふくらみ感、張り腰を有するものが得られるセルロース脂肪酸エステル繊維を提供することにある。
本発明者らは上記した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、溶融紡糸を行った後、特定の条件のもとで延伸を行うことにより、収縮特性が優れたセルロース脂肪酸エステル繊維を得ることに成功した。また、特定のマレイミド系共重合体を含んでなるセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融紡糸することにより、収縮特性が優れたセルロース脂肪酸エステル繊維を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
本発明の第1の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル55重量%〜95重量%および可塑剤5重量%〜25重量%を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維であって、熱収縮ピーク応力が0.02cN/dtex以上であり、かつ沸騰水収縮率が5.0%以上であることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維である。
また本発明の第2の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル75重量%〜95重量%および可塑剤5重量%〜25重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸した後、1.02倍〜2.00倍に延伸した後、加熱処理することなく巻き取ることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法である。
また本発明の第3の発明は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル55重量%〜94重量%および可塑剤5重量%〜25重量%及びマレイミド系共重合体1重量%〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸することを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法である。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、熱収縮ピーク応力および沸騰水収縮率が特定の要件を満足しているため、布帛にした際に優れたふくらみ感、張り腰を有したものとなる。
また本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法によれば、溶融紡糸を行った後、特定の延伸条件を採用することにより、収縮特性の優れた繊維を得ることができる。
また本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法によれば、特定のマレイミド系共重合体を含んでなるセルロース脂肪酸エステル組成物を溶融紡糸することにより、収縮特性の優れた繊維を得ることができる。
以下、本発明のセルロース脂肪酸エステルおよび可塑剤を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維について詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維は、セルロース脂肪酸エステルを55重量%〜95重量%の範囲で含有するものである。セルロース脂肪酸エステルの含有量が55重量%以上では、セルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維が持つ鮮明発色性と吸湿性など効果的に発現されるからである。65重量%以上であるのが好ましく、75重量%以上であることがさらに好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステルは、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18である。アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18である場合、可塑剤との相溶性が良く、また可塑剤の少量添加により、組成物が溶融紡糸可能な熱流動性を発現するため好ましい。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルの具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレートなどが例示できるが、なかでもセルロースにアシル基の炭素数が2であるアセチル基と炭素数が3であるプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースにアシル基の炭素数が2であるアセチル基と炭素数が4であるブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートは、適度な吸湿性や可塑剤との良好な相溶性を有しているため、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルとしてはセルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートが好ましい。
この場合、アセチル基およびアシル基(プロピオニル基またはブチリル基)の平均置換度は、下記式を満たすことが好ましい。なお平均置換度とはセルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基のうちアシル基が化学的に結合した数を指す。
2.0≦(アセチル基の平均置換度+アシル基の平均置換度)≦3.0
1.5≦(アセチル基の平均置換度)≦2.5
0.5≦(アシル基基の平均置換度)≦1.5
上記式を満たすセルロース脂肪酸混合エステルは、可塑剤との相溶性が優れており、また少量の可塑剤の添加により、溶融紡糸可能な熱流動性が発現するため好ましい。さらには布帛とした場合でも、熱軟化温度が高く、適度な吸湿性を有するものとなるため好ましい。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルの重量平均分子量(Mw)は5.0万〜25.0万であることが好ましい。Mwが5.0万未満の場合、溶融紡糸して得られるセルロース脂肪酸エステル繊維の機械的特性(特に強度)が実用レベルに到達しないため好ましくない。Mwが25.0万より大きくなると、溶融粘度が非常に高くなるため、溶融紡糸法による安定した繊維化が行えなくなってしまう。良好な機械的特性、安定した溶融紡糸性の観点から、Mwは6.0万〜22.0万であることがより好ましく、8.0万〜20.0万であることが更に好ましい。なお重量平均分子量(Mw)とは、GPC測定により算出した値をいい、実施例にて詳細に説明する。
可塑剤の含有量は、5.0重量%〜25.0重量%とするものである。可塑剤の含有量を5.0重量%〜25.0重量%とすることで、セルロース脂肪酸エステルの熱流動性が向上するため、溶融紡糸法での繊維化が可能となり、それにより繊維断面を精密かつ任意に制御することが可能となり、また得られる繊維の機械的特性も良好なものとなる。
可塑剤の含有量が5.0重量%未満の場合、組成物の熱流動性が不良となるため、溶融紡糸時にメルトフラクチャー等が発生したり、得られる繊維特性は不良となる。更には溶融紡糸法による安定した繊維化が困難となってしまう。
可塑剤の含有量が25.0重量%より多い場合、組成物の熱流動性は良好になるものの、紡糸して得た繊維に含まれる可塑剤が繊維表面にしみ出したり、またそれに起因してヌメリ感が発生してしまい、高品位の製品を得ることができない。さらには得られる繊維の強度が非常に低く、製織・製編等の高次加工工程の通過性が悪化してしまう。可塑剤の含有量は、より好ましくは8.0重量%〜22.0重量%、最も好ましくは10.0重量%〜20.0重量%である。
本発明における可塑剤は多価アルコール系可塑剤、多価カルボン酸系可塑剤であることが好ましく、多価アルコール系可塑剤がより好ましいが、これらに限定されない。
本発明で具体的に用いることができる多価アルコール系可塑剤は、アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステルとの相溶性が良く、またセルロース脂肪酸エステルの熱可塑化効果が顕著に発現するポリアルキレングリコール、グリセリン骨格を有した化合物、カプロラクトン系化合物などが例示でき、なかでもポリアルキレングリコールが好ましい。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、重量平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
また、本発明で用いることができる多価カルボン酸系可塑剤としては、多価カルボン酸エステルが挙げられる。多価カルボン酸エステルとしては、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、クエン酸エステルが例示できる。
本発明において、セルロース脂肪酸エステルを主成分とする熱可塑性組成物を溶融紡糸した後、温水、熱水等の水や有機溶剤等を用いた薬液処理で繊維に含有されている可塑剤を溶出させても良い。可塑剤を溶出させることで、最終製品の強力が不足することがなく、また熱軟化温度も高くなるため好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維にはマレイミド系共重合体を含むことができる。本発明で用いられるマレイミド系共重合体は、主鎖にマレイミド類を含む共重合ポリマーである。スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、オレフィンから選ばれる少なくとも1種以上とマレイミド類の共重合であることが好ましい。また、マレイミド類はフェニルマレイミドであることが好ましい。
本発明で好ましく用いられるマレイミド系共重合体中のマレイミド類の共重合比率は流動性の観点から、30重量%〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは30重量%〜50重量%である。
また、マレイミド系共重合体のガラス転移点(Tg)は、150℃〜220℃であることが好ましい。ガラス転移点(Tg)は180℃以上がさらに好ましく、200℃以上がより好ましい。また、セルロース脂肪酸エステルとの分散性の観点から210℃以下が好ましい。
マレイミド系共重合体としては、例えば市販のものとしては「“DENKA IP”(登録商標)」(電気化学製品)などが知られており、本発明ではこれらを好適に用いることができる。
本発明においてマレイミド系共重合体の含有量は1重量%〜20重量%であることが好ましい。1重量%以上含むことで、セルロース脂肪酸エステル繊維の収縮特性を良好に発現させることができる。好ましくは5重量%以上である。また、20重量%以下含むことでセルロース脂肪酸エステル繊維の繊維特性が良好になるため好ましい。好ましくは15重量%以下、よりこの好ましくは10重量%以下である。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステルにはホスファイト系着色防止剤を含有していることが好ましい。ホスファイト系着色防止剤を含有している場合、紡糸温度が高い範囲においても着色防止効果が非常に顕著であり、得られる繊維の色調が良好になる。
ホスファイト系着色防止剤の配合量は、組成物に対して0.005重量%〜0.5重量%であることが好ましい。配合量を0.005重量%以上とすることで加熱時の組成物の着色が抑制できるため好ましい。より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上である。一方、配合量を0.5重量%以下とすることにより、セルロースエステルの分子鎖を切断し重合度を低下することによる劣化を抑制することができ、得られる繊維の機械的特性が良好となるため好ましい。より好ましくは0.3重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。
本発明で用いる組成物は上述したセルロース脂肪酸エステルおよび可塑剤を含む以外に、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、酸化防止剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、滑剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維は、熱収縮ピーク応力が0.02cN/dtex以上であり、かつ沸騰水収縮率が5.0%以上である。
熱収縮ピーク応力が0.02cN/dtex以上であり、かつ沸騰水収縮率が5.0%以上であるとき、セルロース脂肪酸エステル繊維を製織・製編した後、染色工程に供すると、繊維が十分に収縮し、織編物交錯点でのクリンプ構造が深くなり、染色後の布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有するものとなる。
本発明において、セルロース脂肪酸エステル繊維の熱収縮ピーク応力は0.02cN/dtex以上であることが必要である。熱収縮ピーク応力を0.02cN/dtex以上にすることで生機のセット性が確保され、皺やシボのない、高品位な織編物を製造することができる。熱収縮ピーク応力は高いほどセット性に優れるため、0.04cN/dtex以上であることが好ましく、0.06cN/dtex以上であることがより好ましい。さらに好ましくは0.1cN/dtex以上である。なお、現状の技術では熱収縮ピーク応力は0.5cN/dtexが限界に近く、自ずとこの値が上限値になる。
最大熱収縮応力のピーク温度は70℃〜200℃であることが好ましい。最大熱収縮応力のピーク温度がこの範囲にある場合、布帛の熱セット工程での工程制御が容易になり、布帛に皺や筋を発生することなく、高品位な布帛とすることができる。最大熱収縮応力のピーク温度が70℃未満である場合、例えば糊付け工程や撚り止めセットの工程など乾燥工程での収縮が大きくなり、ビームに巻かれた内層と外層の繊維間および隣り合う繊維間で収縮差が発生しやすくなって収縮斑が発生し、布帛品位が低下してしまう。一方、最大熱収縮応力のピーク温度が200℃より高くなると、熱セット温度を高くする必要が生じ、セルロース脂肪酸エステル繊維の熱硬化温度に近づくために布帛が硬くなってペーパーライクとなり好ましくない。本発明の効果をより発揮するために、最大熱収縮応力ピークの温度は、75℃〜190℃であることがより好ましく、80℃〜180℃であることが更に好ましい。なお熱収縮ピーク応力の測定は実施例にて詳細に説明する。
本発明において、セルロース脂肪酸エステル繊維の沸騰水収縮率は5.0%以上である。沸騰水収縮率が5.0%以上の場合、布帛を熱処理すると繊維が十分に収縮し、処理後の布帛は優れたふくらみ感を有するものとなる。沸騰水収縮率は5.2%以上であることがより好ましく、5.5%以上であることが更に好ましい。沸騰水収縮率の上限値は15.0%であり、15.0%を越える場合、過度の収縮により布帛硬化が生じることがあるため好ましくない。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維の強度は0.9cN/dtex〜2.5cN/dtexであることが好ましい。強度が0.9cN/dtex以上であれば、製織や製編時など高次加工工程の通過性が良好であり、また最終製品の強力も不足することがないため好ましい。良好な強度特性の観点から、強度は高ければ高いほど好ましいが、具体的には1.0cN/dtex〜2.5cN/dtexであることがより好ましく、1.1cN/dtex〜2.5cN/dtexであることが更に好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維の伸度は15%〜35%であることが好ましい。伸度が15%以上である場合には、紡糸工程で毛羽が発生せず、また製織や製編時など高次加工工程において毛羽や糸切れが多発することがない。良好な伸度としては、18%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維の初期引張抵抗度は30cN/dtex以上であることが好ましい。初期引張抵抗度が30cN/dtex以上であれば、布帛にした場合、適度な張り・腰を有した布帛を得ることができる。初期引張抵抗度は35cN/dtex以上であることがより好ましく、40cN/detx以上であることが更に好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維の繊度変動値(U%)は3.0%以下である。繊度変動値は繊維長手方向における太さ斑の指標であり、ツェルベガーウースター社製ウースターテスターにより求めることができる。繊度変動値が3.0%以下であれば、繊維長手方向の均一性が優れていることを指し、織編物に加工する際、毛羽や糸切れが発生せず、また染色を行っても、部分的に強い染め斑、染め筋などの欠点が発生せず、高品位な織編物となる。更には布帛にした際の繊維の収縮斑を抑制し、美しい布帛表面を得ることが出来る。繊度変動値は小さい程よく、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下、最も好ましくは1.5%以下である。なお繊度変動値の測定条件に関しては、実施例にて詳細に説明する。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維の単糸繊度は0.5dtex〜20dtexであることが好ましい。単糸繊度を0.5dtex〜20dtexとすることで、溶融紡糸法によって製糸性よく繊維を得ることができ、また繊維構造物の適度な曲げ剛性により、ソフトさが要求される衣料用布帛などにも適用することができる。単糸繊度はより好ましくは0.8dtex〜15dtexであり、更に好ましくは1dtex〜10dtexである。
本発明におけるセルロース脂肪酸エステル繊維の断面形状に関しては特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、田字形、井桁形、中空などの異形断面糸でも良い。
次に2つ目の発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法について説明する。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル75重量%〜95重量%および可塑剤5重量%〜25重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸した後、1.02倍〜2.0倍に延伸した後、加熱処理することなく巻き取ることが重要である。
延伸倍率は1.02倍〜2.0倍であることが重要である。延伸倍率をこの範囲とすることで、得られる繊維の熱収縮ピーク応力は十分に高くなり、また延伸応力により分子鎖の配向が促進されるため強度が向上する。延伸倍率1.02倍未満では、実質的に延伸を行っていない場合と同程度の特性を有した繊維しか得られず、また延伸倍率2.0倍以上とすることは、セルロース主鎖の剛直性に起因して、延伸応力が非常に高くなり実質的には困難である。延伸倍率は、1.05倍〜1.80倍であることがより好ましく、1.08倍〜1.50倍であることが更に好ましい。
本発明では、延伸に供される繊維の予熱温度は200℃以下であることが好ましい。繊維を200℃以下で予熱することにより、延伸時の変形が均一に行われるようになり、また供給糸の軟化を良好とすることにより、延伸張力を低下させ、操業性良く延伸を行うことができる。製造時のエネルギーコストの観点から、予熱温度は低ければ低いほど良く、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが更に好ましく、50℃以下であることが最も好ましい。
本発明では延伸した後、加熱処理することなく巻き取ることが重要である。なおここで言う「加熱処理することなく」の温度とは、40℃以下の温度を指す。延伸後、加熱処理を実施しないことにより、高収縮な繊維を得ることができる。延伸後、加熱処理を行うと、熱による繊維の弛緩作用により熱収縮率が小さくなってしまうので、本発明の繊維を得ることが出来なくなってしまう。
本発明では、目的とする繊維を得る工程を簡略化させるために、溶融紡糸の際、紡出糸条を第1ゴデットローラーで引き取った後、第1ゴデットローラーと第2ゴデットローラーの速度差を利用して、ゴデットローラー間で延伸を行っても良い。
また溶融紡糸により、一旦、未延伸糸を引き取った後、延伸機にて延伸を行っても良い。この際、繊維の膨潤を利用し低い延伸応力で延伸を行うため、未延伸糸を水、有機溶媒などの液体浴に浸漬させた後、延伸を行っても良い。
本発明では、溶融紡糸に際して、組成物の含水分率を0.3%以下としておこくことが好ましい。含水分率が0.3%以下である場合、溶融紡糸時、水分により発泡することもなく、安定して紡糸を行うことができ、得られるマルチフィラメントの機械的特性も良好となる。含水分率は0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更にも好ましく、0.08%以下であることが最も好ましい。
本発明では、溶融紡糸の際、紡糸温度は220℃〜280℃であることが好ましい。紡糸温度を220℃以上とすることにより、紡糸口金より吐出された糸条の伸長粘度が十分に低下するため、メルトフラクチャー(紡糸口金孔通過時においてポリマーの剪断応力が高いと流線乱れが発生し、紡糸口金より吐出された糸条の形状が不規則になる現象)起因の短ピッチの周期斑が現れず、均一な繊維を得ることができる。更には紡糸口金より吐出した糸条の細化過程がスムーズになるため、繊維特性が良好となり、また紡糸張力が過度に高くならないため糸切れが多発せず、製糸性が安定する。また紡糸温度を280℃以下とすることにより、組成物の熱分解を抑制できるため、得られる繊維の分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が発生しない。紡糸温度は230℃〜270℃であることがより好ましく、240℃〜260℃であることが更に好ましい。
本発明では、溶融紡糸の際、紡糸速度は500m/分〜2500m/分であることが好ましい。紡糸速度を500m/分〜2500m/分とすることで、得られる繊維の分子配向が促進され、繊維特性に優れた繊維を得ることができる。紡糸速度は750m/分〜2250m/分であることがより好ましく、1000m/分〜2000m/分であることが最も好ましい。
本発明では、溶融紡糸の際、冷却風速度を0.01m/秒以上0.50m/秒以下とすることが重要である。冷却風速度がこの範囲にある場合、紡糸口金より吐出された、マルチフィラメントを構成する単糸の冷却が、均一となり、得られる繊維は均一性の優れたものとなる。冷却風速度は0.10m/秒以上0.45m/秒以下であることがより好ましく、0.20m/秒以上0.40m/秒以下であることが更に好ましい。
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図1〜3は、本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法に用いる装置の一実施態様を示す図である。
図1において、1はスピンブロック、2は溶融紡糸パック、3は紡糸口金、4は冷却装置、5は紡出糸条、6は給油装置、7は第1ゴデットローラー、8は第2ゴデットローラーである。
溶融された組成物は、スピンブロック1に装着された溶融紡糸パック2の下部に取り付けられた紡糸口金3の細孔より押し出される。押し出された紡出糸条5は、冷却装置4により室温まで冷却され、給油装置6により仕上げ剤が付与され、所定の速度で回転する第1ゴデットローラー7、第2ゴデットローラー8を介して、巻取機によって、未延伸糸パッケージ9として巻き取られる。なおこの際、第1ゴデットローラー7と第2ゴデットローラー8との周速度比を利用して、ローラー間にて所定の延伸倍率で延伸を行い、延伸糸10を得ても良い。
未延伸糸9は、次に延伸工程に供給され、図2に示すような延伸機で延伸される。延伸機では、未延伸糸は所定の温度に設定された供給ローラー11上で加熱され、供給ローラー11と延伸ローラー12との周速度比を利用して所定の繊度まで延伸される。延伸ローラー12を出た繊維はスピンドルによって撚りをかけながら、延伸糸パーン13として巻き取られる。
また図3に示すように、延伸応力を低下させる目的として、供給ローラーと延伸ローラー間に、液体浴14を設置しても良い。
次に3つ目の発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法について説明する。
アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル55重量%〜94重量%および可塑剤5重量%〜25重量%およびマレイミド系共重合体1重量%〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸することが重要である。
これらの成分は、例えば、2軸混練機などを用いて、溶融紡糸を行う前に混練しても構わないし、溶融紡糸を行う際にスタティックミキサーなどを用いて混合しても構わない。
本発明で用いられるマレイミド系共重合体の詳細は前述と同じである。
本発明で用いられるマレイミド系共重合体の含有量は1重量%〜20重量%含むことが必要である。1重量%以上含むことで、1重量%以上含むことで、マレイミド系共重合体を含むセルロース脂肪酸エステル繊維の収縮特性を発現する効果が現れる。好ましくは5重量%以上である。また、20重量%以下含むことで、セルロース脂肪酸エステル組成物の熱流動性が向上し良好な糸物性を有する繊維を得られる。好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
本発明の効果はマレイミド系共重合体を用いることにより発現する。マレイミド系共重合体を用いることで、溶融紡糸した後に1.02倍〜2.00倍に延伸し、加熱処理することなく巻き取ることを行わなくても良好な収縮特性を有する繊維を得ることができる。その理由は定かではないが、マレイミド系共重合体は、セルロース脂肪酸エステルとの相互作用を有し、剛直な構造を有しているためセルロース脂肪酸エステル中に適度に分散するためと推測される。
セルロース脂肪酸エステルの詳細は前述と同じである。また、セルロース脂肪酸エステルは55重量%〜94重量%含む。セルロース脂肪酸エステルの含有量が55重量%以上では、セルロース脂肪酸エステル組成物からなる繊維が持つ鮮明発色性と吸湿性など効果的に発現され、また94重量%を以下で、マレイミド系共重合体の収縮率発現効果が顕著に発現されるからである。65重量%以上が好ましく、75重量%以上がさらに好ましい。
本発明で用いる可塑剤の詳細は前述と同じである。本発明では5.0重量%〜25.0重量%の可塑剤を含む組成物を溶融紡糸する。5.0重量%以上含むことで組成物の熱流動性が良好となり、溶融紡糸法で安定した繊維を得ることができる。また、可塑剤の含有量を25.0重量%以下にすることで、紡糸して得た繊維に含まれる可塑剤が繊維表面にしみ出したり、またそれに起因したヌメリ感を抑制でき、高品位の製品を得ることができる。可塑剤の含有量は、より好ましくは8.0重量%〜22.0重量%、最も好ましくは10.0重量%〜20.0重量%である。
また、このセルロース脂肪酸エステル組成物は、前述したホスファイト系着色防止剤を含んでいても構わず、発明の主旨を損ねない範囲でその他の樹脂や添加剤を含んでいても構わない。
本発明では、溶融紡糸を行う前に、このセルロース脂肪酸エステル組成物を乾燥させ、組成物の含水分率を0.3%以下としておくことが好ましい。含水分率が0.3%以下である場合、溶融紡糸時、水分により発泡することもなく、安定して紡糸を行うことができ、得られるマルチフィラメント等の繊維の機械的特性も良好となる。含水分率は、より好ましくは0.2%以下であり、更に好ましくは0.1%以下であり、最も好ましくは0.08%以下である。
本発明では、このセルロース脂肪酸エステル組成物を、溶融紡糸して繊維を得る。溶融紡糸を行うことにより、セルロース脂肪酸エステル組成物の溶融状態から冷却固化に至るまでに十分に発達した繊維構造を形成させることが可能となり、加えて環境負荷が小さく、生産性にも優れる。溶融紡糸の方法としては、例えば、図1に示した装置あるいはエクストルーダーを用いた押出などを好適な手段として採用することができる。
溶融紡糸における紡糸温度は220℃〜280℃の範囲であることが好ましい。紡糸温度を220℃以上とすることにより、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため、メルトフラクチャー(紡糸口金孔通過時においてポリマーの剪断応力が高いと流線乱れが発生し、紡糸口金より吐出された糸条の形状が不規則になる現象)起因の短ピッチの周期斑が現れず、均一な繊維を得ることができる。更には紡糸口金より吐出された繊維糸条の細化過程がスムーズになるため、繊維特性が良好となり、また紡糸張力が過度に高くならないため糸切れが多発せず、製糸性が安定する。また、紡糸温度を280℃以下とすることにより、セルロース脂肪酸エステル組成物の熱分解を抑制することができるため、得られる繊維の分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が発生しない。紡糸温度は、より好ましくは230℃〜270℃であり、更により好ましくは240℃〜260℃である。
紡糸された繊維の引取方法は、特に制限されるものではなく、回転するローラーを用いて引き取っても良いし、ネットなどで捕集しても構わない。ローラーを用いて引き取る場合の紡糸速度は500m/min〜3000m/minであることが好ましい。紡糸速度を500m/min〜3000m/minとすることにより、発達した繊維構造を形成することが可能となり、繊維特性に優れた繊維を得ることができる。紡糸速度は、より好ましくは1000m/min〜2500m/minである。また、繊維を引き取った後に連続して延伸を施し、巻き取っても構わない。
本発明において、セルロース脂肪酸エステルを主成分とする熱可塑性組成物を溶融紡糸した後で可塑剤を溶出することができる。可塑剤の溶出は溶融紡糸により得られた繊維が衣類等の最終製品になるまでのいずれかの工程において行われることが好ましい。可塑剤の溶出は温水、熱水等の水や有機溶剤等を用いた薬液処理で繊維に含有されている可塑剤を溶出させても良い。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法に関して最も好適な例は、アセチル基の平均置換度が1.8〜2.4であり、プロピオニル基の平均置換度が0.5〜0.8であり、重量平均分子量(Mw)が8.0万〜20.0万のセルロースアセテートプロピオネート70重量%〜85重量%、平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール10〜25重量%、マレイミド系共重合体3〜10重量%およびホスファイト系着色防止剤0.05〜0.2重量%を2軸エクストルーダーにより200℃〜240℃の温度で溶融混練し、ペレット化した後、乾燥し、エクストルーダータイプの紡糸機によって、紡糸温度240℃〜260℃、引取速度1000m/min〜2500m/minで溶融紡糸を行い、油剤を付着させた後巻き取ってパッケージとなす。
上記のように、本発明で得られる熱収縮ピーク応力が0.02cN/dtex以上であり、かつ沸騰水収縮率が5.0%以上であるセルロース脂肪酸エステル繊維は、軽量性、保温性、ソフト性、吸湿性などに優れており、特に布帛にした際に優れたふくらみ感、張り腰を有することから、特にタフタ、デシン、ジョーゼット、ツイルなどの織物、または天竺、スムース、トリコットなどの編物にするのに適している。さらに衣料用途に限らず、不織布用途、メディカル用途や衛生材料、詰め物材として各種リビング材にも使用可能である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.熱収縮ピーク応力
熱収縮ピーク応力は鐘紡エンジニアリング社製KE−2熱収縮応力測定装置を用いて測定した。測定は糸を結んで周長20cmの輪を作り、装置に装着した後、初荷重0.01cN/dtex、昇温速度2.2℃/秒の条件で熱収縮応力の温度変化をチャートに描かせた。この時の熱収縮応力のピーク値を熱収縮ピーク応力とし、またその時の温度を熱収縮ピーク応力のピーク温度とした。なお測定回数は5回であり、その平均値を熱収縮ピーク応力、ピーク温度とした。
B.沸騰水収縮率
試料をかせ取りし、0.09cN/dtexの荷重下で試料長L0を測定した後、無荷重の状態で15分間、沸騰水中で処理を行う。処理後、風乾し0.09cN/dtexの荷重下で試料長L1を測定し、下式を用いて算出した。なお測定回数は5回であり、その平均値を沸騰水収縮率とした。
沸騰水収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
C.強伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除した値を強度(cN/dtex)とした。またその時の伸度を伸度(%)とした。なお測定回数は5回であり、その平均値を強度、伸度とした。
D.初期引張抵抗度
初期引張抵抗度は、JIS L 1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10に基づいて算出した。
E.繊度変動値(U%)
U%(Normal)測定は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。
測定速度 :200m/分
測定時間 :2.5分
測定繊維長:500m
撚り :S撚り、12000/分
なお測定回数は5回であり、その平均値を繊度変動値(U%)とした。
F.風合い特性
セルロース脂肪酸エステル繊維を用いて丸編地を作成し、70℃・20分間の精練を行った後、染色温度98℃、染色時間60分の条件で染色を行った。この丸編地を用いて、触手による官能評価を実施した。ふくらみ、張りおよび腰について評価し、「極めて優れている」は◎、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×とし、「優れている」以上を合格とした。
G.GPCによる重量平均分子量(Mw)測定
セルロース脂肪酸エステルの濃度が0.15重量%となるようにテトラヒドロフランに完全に溶解させ、GPC測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件のもと、Waters2690でGPC測定を行い、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。なお測定回数は3回であり、その平均値をMwとした
カラム :東ソー製TSK gel GMHHR−Hを2本連結
検出器 :Waters2410 示差屈折計RI
移動層溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :1.0ml/分
注入量 :200μl
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9、0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
実施例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.0万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率570ppm)、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.60mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.25m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)にて引き取った。続いて1650m/分で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)を介して(延伸倍率1.10倍)、加熱処理することなくワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−36フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は極めて優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例2
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート80重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)19.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて225℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.7万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率620ppm)、単軸エクストルーダーにて溶融させ、紡糸温度255℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量30.1g/分の条件で、0.20mmφ−0.50mmLの口金孔を48ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.20m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1715m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度80℃)にて引き取った。続いて1800m/分で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)を介して(延伸倍率1.05倍)、加熱処理することなくワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(167デシテックス−48フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例3
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート85重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)14.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて235℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw15.7万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率480ppm)、単軸エクストルーダーにて溶融させ、紡糸温度265℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量18.0g/分の条件で、0.25mmφ−0.50mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金下110mmの位置に設置した加熱筒(150mm、270℃)内を通過させた後、長さ25℃、風速0.30m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1200m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)にて引き取り、続いて第1ゴデットローラーと同速度で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)を介してワインダーに巻き取った。
この未延伸糸(150デシテックス−24フィラメント)を供給ローラー(ローラー温度25℃)に6周回接触させ、延伸倍率を1.15倍とし、延伸ローラー(ローラー温度25℃)に6周回させ、200m/分の速度で巻き取った。
得られた繊維(130デシテックス−48フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は極めて優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例4
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート85重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)14.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて235℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw15.7万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率480ppm)、単軸エクストルーダーにて溶融させ、紡糸温度265℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量18.0g/分の条件で、0.23mmφ−0.46mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金下110mmの位置に設置した加熱筒(150mm、270℃)内を通過させた後、長さ25℃、風速0.30m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1200m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)にて引き取り、続いて第1ゴデットローラーと同速度で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)を介してワインダーに巻き取った。
この未延伸糸(150デシテックス−24フィラメント)を供給ローラー(ローラー温度100℃)に6周回接触させ、延伸倍率を1.15倍とし、延伸ローラー(ローラー温度25℃)に6周回させ、200m/分の速度で巻き取った。
得られた繊維(130デシテックス−48フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は極めて優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例5
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20)90重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)10重量%を二軸エクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw15.5万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率420ppm)、メルター温度240℃にて溶融させ、紡糸温度240℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量13.5g/分の条件で、0.18mmφ−0.36mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.35m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度28℃)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同速度で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度28℃)を介してワインダーに巻き取った。
この未延伸糸(90デシテックス−24フィラメント)を供給ローラー(ローラー温度25℃)に6周回接触させた後、水に浸漬させ(水温22℃、水浴長500mm)、延伸倍率を1.12倍とし、延伸ローラー(ローラーの表面温度25℃)に6周回させ、50m/分の速度で巻き取った。
得られた繊維(80デシテックス−24フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例6
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレート(CAB381−20)90重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)10重量%を二軸エクストルーダーを用いて205℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.2万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率510ppm)、メルター温度250℃にて溶融させ、紡糸温度255℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量15g/分の条件で、0.18mmφ−0.45mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金下50mmの位置に設置した加熱筒(150mm、300℃)内を通過させた後、25℃、風速0.20m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1095m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)にて引き取り、続いて1500m/分で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)を介して(延伸倍率1.37倍)、加熱処理することなくワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−24フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例7
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82重量%とグリセリンジアセテートモノオレート17.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて225℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.5万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率610ppm)、単軸エクストルーダーにて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.60mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.25m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)にて引き取った。続いて1650m/分で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)を介して(延伸倍率1.10倍)、加熱処理することなくワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−36フィラメント)の特性は表1の通りであり、また布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表1参照)。
実施例8
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%、マレイミド系共重合体(電気化学工業「DENKAIP MS-NA」スチレン/無水マレイン酸/N-フェニルマレイミド=50.1/1.8/48.1、MFR(260℃)=2.5)5.0重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.6万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率660ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−12フィラメント)の特性は表2の通りであり、また布帛は極めて優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表2参照)。
実施例9
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%、マレイミド系共重合体(日本触媒「ポリイミレックス(登録商標)PSX0371スチレン/無水マレイン酸/N-フェニルマレイミド=50.1/1.8/48.1、MFR(260℃)=13)5.0重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.5万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率450ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−12フィラメント)の特性は表2の通りであり、また布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表2参照)。
実施例10
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%、マレイミド系共重合体(電気化学工業「DENKAIP MS-L2A」スチレン/無水マレイン酸/N-フェニルマレイミド=49.7/6.2/44.1、MFR(260℃)=2.5)5.0重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw15.9万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率590ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−12フィラメント)の特性は表2の通りであり、また布帛は極めて優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表2参照)。
実施例11
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%、マレイミド系共重合体(電気化学工業「DENKAIP MS-NA」スチレン/無水マレイン酸/N-フェニルマレイミド=50.1/1.8/48.1、MFR(260℃)=2.5)5.0重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.5万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率600ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。
この未延伸糸(100デシテックス−12フィラメント)を供給ローラー(ローラー温度110℃)に6周回接触させ、延伸倍率を1.10倍とし、延伸ローラー(ローラー温度110℃)に6周回させ、200m/分の速度で巻き取った。
得られた繊維(91デシテックス−12フィラメント)の特性は表2の通りであり、また布帛は優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表2参照)。
実施例12
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート73.8重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)16.1重量%、マレイミド系共重合体(電気化学工業「DENKAIP MS-NA」スチレン/無水マレイン酸/N-フェニルマレイミド=50.1/1.8/48.1、MFR(260℃)=2.5)10.0重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.6万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率580ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−12フィラメント)の特性は表2の通りであり、また布帛は極めて優れたふくらみ感、張り腰を有していた(表2参照)。
比較例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.0万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率570ppm)、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.60mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.25m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1500m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同速度で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)を介して、加熱処理することなくワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(110デシテックス−36フィラメント)の特性は表3の通りであり、また布帛はふくらみ感、張り腰が劣っているものであった(表3参照)。
比較例2
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート82重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.0万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率570ppm)、メルター温度260℃にて溶融させ、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量16.5g/分の条件で、0.23mmφ−0.60mmLの口金孔を36ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を25℃、風速0.25m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1485m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)にて引き取った。続いて1500m/分で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度26℃)を介して(延伸倍率1.01倍)、加熱処理することなくワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(110デシテックス−36フィラメント)の特性は表3の通りであり、また布帛はふくらみ感、張り腰が劣っているものであった(表3参照)。
比較例3
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート85重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)14.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて235℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw15.7万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率480ppm)、単軸エクストルーダーにて溶融させ、紡糸温度265℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量18.0g/分の条件で、0.25mmφ−0.50mmLの口金孔を24ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を紡糸口金下110mmの位置に設置した加熱筒(150mm、270℃)内を通過させた後、長さ25℃、風速0.30m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1200m/分で回転する第1ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)にて引き取り、続いて第1ゴデットローラーと同速度で回転する第2ゴデットローラー(ローラーの表面温度27℃)を介してワインダーに巻き取った。
この未延伸糸(150デシテックス−24フィラメント)を供給ローラー(ローラー温度100℃)に6周回接触させ、延伸倍率を1.15倍とし、延伸ローラー(ローラー温度140℃)に6周回させ、200m/分の速度で巻き取った。
得られた繊維(130デシテックス−48フィラメント)の特性は表3の通りであり、張り腰はあったものの、ふくらみはほとんど有していなかった(表3参照)。
比較例4
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート77.9重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.0重量%、ポリエステルエラストマー(東レ・デュポン社製「ハイトレル」)5.0重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw16.4万)を得た。
このペレットを80℃、8時間の真空乾燥を行い(乾燥後の含水分率330ppm)、紡糸温度260℃にて吐出量10.0g/minの条件で0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を12ホール有した口金より紡出した。この紡出糸条を、温度25℃、風速0.25m/secの冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、1000m/minで回転する第1ゴデットローラーにて引き取った後ワインダーにて巻き取った。
得られた繊維(100デシテックス−12フィラメント)の特性は表3の通りであり、また布帛はふくらみ感、張り腰が劣っているものであった(表3参照)。
Figure 0004687473
Figure 0004687473
Figure 0004687473
得られる繊維は収縮特性に優れており、衣料用繊維、産業用繊維、不織布などとして用いることができ、特に衣料用繊維に好適に用いることができる。
本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法の他の一例である。 本発明のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法の他の一例である。
符号の説明
1:スピンブロック
2:溶融紡糸パック
3:紡糸口金
4:冷却装置
5:紡出糸条
6:給油装置
7:第1ゴデットローラー
8:第2ゴデットローラー
9:未延伸糸
10:延伸糸
11:ローラー
12:供給ローラー
13:延伸ローラー
14:延伸糸パーン
15:液体浴

Claims (5)

  1. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル55重量%〜95重量%および可塑剤5重量%〜25重量%を少なくとも含んでなる組成物からなる繊維であって、熱収縮ピーク応力が0.02cN/dtex以上であり、かつ沸騰水収縮率が5.0%以上であることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維。
  2. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル55重量%〜94重量%および可塑剤5重量%〜25重量%およびマレイミド系共重合体1重量%〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物からなることを特徴とする請求項1記載のセルロース脂肪酸エステル繊維。
  3. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル75重量%〜95重量%および可塑剤5重量%〜25重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸した後、1.02倍〜2.00倍に延伸し、加熱処理することなく巻き取ることを特徴とするセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法。
  4. アシル基の少なくとも一部が炭素数3〜18であるセルロース脂肪酸エステル55重量%〜94重量%および可塑剤5重量%〜25重量%およびマレイミド系共重合体1重量%〜20重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸することを特徴とする請求項2記載のセルロース脂肪酸エステル繊維の製造方法。
  5. 請求項1記載のセルロース脂肪酸エステル繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする繊維構造物。
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