JP4361036B2 - 車両用防音材 - Google Patents

Description

この発明は、自動車の車室内床面等に用いられ、軽量、薄肉で遮音性能および吸音性能が優れた車両用防音材に関するものである。

近時の車両用防音材は、軽量化が求められることから、従来のＥＰＤＭ、オレフィンのようなヘビーシートに変わってフェルト系の軽量防音材が主流となっている。ところでフェルトは吸音性が優れている反面、遮音性が劣るので、その点を改善するため従来ではフェルトを圧潰して通気性を少なくする手法が採られていた。

一方、下記特許文献１には、フェルト等の吸音層とフィルム等の共振層とを所定の接着強度にて接着剤を介して接着してなる超軽量な防音材が開示されているが、この防音材は２層構造である故に車室内の騒音が吸収され難いことや、例えばダッシュサイレンサーとして使用するには剛性が不足し必要な形状安定性が得られないという問題がある。
また、下記の特許文献２および特許文献３は、非通気性フィルムの両側にフェルト等の吸音層を設けた３層構造の防音材を開示するものであるが、従来のこの種の多層防音材は、フィルムと吸音層とをそのいずれかに接着剤を含浸または塗布して接着するものであったので、製造工程が増しコストを上昇させると共に、車体形状等に倣った自由な立体形状に成形し難いという問題があった。
特許第３４９８０８５号公報 特開２００１−３４７９００号公報 特許第３２６４２３０号公報

そこで本発明は、軽量、肉薄で優れた防音性能を有し、しかも自由な立体形状に容易に成形でき、製造コストも軽減し得る車両用防音材を提供しようとするものである。

上記課題を解決するため請求項１に記載の車両用防音材の発明は、吸音層と中間層と吸音層とからなる積層構造の防音材であって、中間層は厚さ７〜５０μで融点が１６０〜２５０℃の熱可塑性樹脂フィルムからなる非通気性フィルムの両面に厚さ７〜５０μで融点が１００〜１３０℃の熱可塑性樹脂フィルムからなる熱融着フィルムを多層インフレーション成形により接着・積層してなり、室内側となるように車体に組み付けられる吸音層は厚さが０．５〜１５ｍｍ、目付量が１００〜２０００ｇ／ｍ^２ の繊維集合体であり、室外側となるように車体に組み付けられる吸音層は厚さが５〜４０ｍｍ、目付量が５００〜３０００ｇ／ｍ^２ の繊維集合体であり、該防音材をオーブン内に装入し熱風をその両面に吹き当てて加熱することにより上記熱融着フィルムを溶融させ、その溶融の直後に該防音材を冷却水パイプが内蔵された上型と成形面に多数の吸気孔が形成された下型とからなる冷間成形金型に移動させ、室内側となる吸音層が該下型と相対するようにして該防音材を該冷間成形金型により加圧するとともに該吸気孔によって前記非通気性フィルムを真空吸引させることで、前記非通気性フィルムの両面に両吸音層を融着させ該防音材を所要立体形状に成形してなることを特徴とする。
また、請求項２に記載の発明は上記車両用防音材において、繊維集合体はフェルトであることを特徴とする。

本発明は、多層インフレーション成形により熱融着フィルムが両面に予め接着・積層された非通気性フィルムを中間層として用いたことにより、これを加熱・加圧して所要立体形状に成形すると同時に該熱融着フィルムが溶融し吸音層が該非通気性フィルムに融着する。このため製造に必要な工程が削減され、製造コストが軽減される。また、こうして製造された車両用防音材は、軽量、肉薄であると共に、優れた吸音性能、遮音性能が得られ車室内を静粛に保つことができる。

インフレーション成形は、周知のように、押出機に設けられたインフレーション金型から溶融樹脂を垂直上方に押し出すと共に、該金型中央部より空気を吹き出すことで該溶融樹脂を薄肉筒状に膨張させ連続フィルムを作る方法であり、この実施形態では図１に示したように、厚さ７〜５０μで融点が１６０〜２５０℃であるナイロン，ポリエステルなどの熱可塑性樹脂フィルムからなる非通気性フィルム１の両面に、厚さ７〜５０μで融点が１００〜１３０℃であるポリエチレン，ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製フィルムからなる熱融着フィルム２ａ，２ｂを接着・積層させる。そしてこれを中間層３とする。

一方、図２に示したように、フェルト，グラスウールなどの繊維集合体またはウレタンフォームなどの多孔質合成樹脂層からなる厚さ０．５〜１５ｍｍ、目付量１００〜２０００ｇ／ｍ^２の吸音層４ａと、厚さ５〜４０ｍｍであり、目付量５００〜３０００ｇ／ｍ^２の吸音層４ｂを前記中間層３の両面に配置し、これを図３に示したようにオーブン５の装入用トレイ６上に配置して該オーブン５内に装入し、約２００℃の熱風をその両面に吹き当てて３０〜６０秒間加熱することにより、上記熱融着フィルム２ａ，２ｂを溶融させる。そしてその直後にこの防音材を図４に示したような冷間成形金型７に移動させて加圧し所要立体形状に成形する。このとき吸音層４ａ，４ｂが非通気性フィルム１の両面に融着する。なお、冷間成形金型７は、冷却水パイプが内蔵された上型７ａと、成形面に多数の吸気孔が形成され防音材を真空吸引することのできる下型７ｂとからなる。

こうして製造された車両用防音材は、図５に示したように、吸音層４ａ側が室内側となり吸音層４ｂ側がエンジンルーム又は車外側となるように車体に組み付けることにより、エンジンルーム又は車外騒音を防音し、室内側に洩れた騒音は吸音され、車室内を静粛にする。

そして本発明によれば、加熱・加圧して車両用防音材を所要立体形状に成形すると同時に熱融着フィルムが溶融し吸音層が非通気性フィルムに融着するため、従来のような接着剤を塗布する等の工程が削減され、製造コストを大幅に軽減することができる。しかもこの車両用防音材は、非通気性フィルムの熱融着と同時に成形できることから、剛性、形状保持性が高まり、複雑な形状の成形も可能にする利点がある。

この実施例では、上記非通気性フィルム１として厚さ１５μのナイロンフィルムを用い、多層インフレーション成形によりその両面に接着・積層される熱融着フィルム２ａ，２ｂとして厚さ２０μのポリエチレンフィルムを用いる。また、一方の吸音層４ａとしてはＰＥＴフェルトを厚さ３ｍｍ、目付量５００ｇ／ｍ^２に積層し、他方の吸音層４ｂとしてはＰＥＴフェルトを厚さ２０ｍｍ、目付量１０００ｇ／ｍ^２に積層する。そしてこれを上記のようにオーブン５により５０秒間加熱した後、冷間成形金型７により加圧成形する。

この車両用防音材は、図６に示した透過音損失試験から遮音性能、図７に示した残響室法吸音率試験から吸音性能がそれぞれ分かるように、遮音性能および吸音性能ともに優れた結果が得られた。なお同図中、白丸はこの発明品の車両用防音材、黒丸はこの発明品との比較のために本発明のような中間層を有さず、厚さ３ｍｍ，目付量１０００ｇ／ｍ^２のＰＥＴフェルト層と厚さ２０ｍｍ，目付量１０００ｇ／ｍ^２のＰＥＴフェルト層とを単に積層してなる比較品のデータを示したものであり、本発明によれば、この比較品のような防音材より軽量化できる上、音響性能も同等またはそれ以上の防音効果を得ることができることがこの試験により確かめられた。よって、本発明に係る車両用防音材をダッシュサイレンサーとしてエンジンルームとの境界に使用できるほか、車室内床面、天井面等に敷設することにより、騒音を吸収し車室内をより静粛にすることができる。

本発明に係る車両用防音材の中間層の縦断面図。 本発明に係る車両用防音材の分解斜視図。 本発明に係る車両用防音材を製造するオーブンの斜視図。 本発明に係る車両用防音材を製造する冷間成形金型の縦断面図。 本発明に係る車両用防音材の縦断面図。 本発明に係る車両用防音材の遮音性能を示すグラフ。 本発明に係る車両用防音材の吸音性能を示すグラフ。

符号の説明

１ 非通気性フィルム
２ａ，２ｂ 熱融着フィルム
３ 中間層
４ａ，４ｂ 吸音層
５ オーブン
７ 冷間成形金型
７ａ 上型
７ｂ 下型

Claims (2)

1. 吸音層と中間層と吸音層とからなる積層構造の防音材であって、中間層は厚さ７〜５０μで融点が１６０〜２５０℃の熱可塑性樹脂フィルムからなる非通気性フィルムの両面に厚さ７〜５０μで融点が１００〜１３０℃の熱可塑性樹脂フィルムからなる熱融着フィルムを多層インフレーション成形により接着・積層してなり、室内側となるように車体に組み付けられる吸音層は厚さが０．５〜１５ｍｍ、目付量が１００〜２０００ｇ／ｍ^２ の繊維集合体であり、室外側となるように車体に組み付けられる吸音層は厚さが５〜４０ｍｍ、目付量が５００〜３０００ｇ／ｍ^２ の繊維集合体であり、該防音材をオーブン内に装入し熱風をその両面に吹き当てて加熱することにより上記熱融着フィルムを溶融させ、その溶融の直後に該防音材を冷却水パイプが内蔵された上型と成形面に多数の吸気孔が形成された下型とからなる冷間成形金型に移動させ、室内側となる吸音層が該下型と相対するようにして該防音材を該冷間成形金型により加圧するとともに該吸気孔によって前記非通気性フィルムを真空吸引させることで、前記非通気性フィルムの両面に両吸音層を融着させ該防音材を所要立体形状に成形してなることを特徴とした車両用防音材。
2. 繊維集合体はフェルトである請求項１に記載した車両用防音材。

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