JP4360309B2 - アルミニウム合金ろう付け混合スラリー及びそれを用いたサンドイッチパネル製造方法 - Google Patents
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Description
この現象は、特に一対の面材となる薄いアルミニウム或いはアルミニウム合金製表面板とその間に介在されたアルミニウム或いはアルミニウム合金製コア材とを備え、当該コア材を前記表面板にろう付けしてサンドイッチパネルを製造する場合に深刻である。表面板の強度が低下したり、表面板に前記コア材の断面形状が浮き出たりするといった弊害が生じることがある。
また、ろう付け温度そのものを低くするために、低融点のAl−Cu−Si系合金を急冷して作製した箔状又は粉末状のろう材を用いる技術も提案されている(特許文献3)。
さらに、上記特許文献3で提案されたAl−Cu−Si系の粉末ろう材は、ろう材自体がその製造工程で酸化物を多く含んでいるため、実際のろう付けの際に不具合が起こりやすい。このため、ろう付け時には酸化物を除去する目的で多くのフラックスを必要とし、却ってコストを増す結果となる。しかも、多量のフラックスを使用するために、ろう付け部の外観が低下するといった問題も伴う。
フッ化物系フラックス固形分の含有量は、混合スラリー固形分に対して3〜50質量%の範囲としたものが好ましい。
アルミニウム又はアルミニウム合金製のサンドイッチパネルの製造にあっても、本発明ろう付け混合スラリーの使用により、外観低下を招くことなく、低コストでの製造が可能となる。
まず、本発明のアルミニウム合金ろう付け混合スラリーを構成するろう材について説明する。
ろう材は、Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金を基材とする。このような成分組成の合金とすることで融点を下げ、ろう付け温度を540〜560℃に下げることができる。このため、接合部材の変形や強度低下を抑制したろう付けが可能となる。Cu及びSiの含有量が上記数値を外れると、ろう材の融点及びろう付け温度が上昇し、ろう付け時に接合部材の変形や強度低下を起こすことにもつながる。
真空中又は不活性ガス中で噴霧する意義は、ろう材の冷却時における酸化物の発生及び混入を極力防ぐことにある。ろう材中に酸化物が多量に混入されていると、ろう付け時に用いるフラックス量が多くなってろう付け製品の外観を低下させるばかりでなく、コスト増にもつながる。
上記で言う真空とは、真空度が200torr以下の雰囲気であり、また不活性ガスとは、ろう材を酸化させることのないガスで、例えばアルゴン等の希ガス、水素等の還元性ガス、窒素等の非酸化性ガスである。
粉末状であるアルミニウム合金ろう材に含まれる酸化物は、ろう付け性の良・不良に影響する。酸化物の量が多くなるとろう付け性を低下させる。このため、高価なCsFを含むフッ化物系フラックスの使用量を多くする必要がある。フラックスの使用量を増やして酸化物の悪影響を除去できたとしても、多量のフラックスの残渣や酸化物が接合部表面に残って外観を低下させることにつながる。本発明では、ろう材は酸化物が含まれないような製造工程が採用されているので、基本的にはフラックス使用量を少なくすることができる。
このため、ろう付け時に接合部材が変形したり強度が低下したりすることがなく、表面外観に優れたろう付け製品が得られる。
例えば図1に示されるように、一般的なサンドイッチパネル1は、一対の表面板2と、これら表面板2間に配列されるように介在される中空のコア材3とで構成されている。そして、表面板2とコア材3、及びコア材3同士がろう付けにて接合されている。なお、図1中、3aは中空コア材の内部と連通する空気孔である。また、図1中には明示していないが、表裏二面の表面材2間で挟まれた空間の前後左右の側端面には、通常表面板2よりも厚肉の枠材が配置されている。
本発明では、上記表面板及びコア材をアルミニウム又はアルミニウム合金製とし、両者を本発明のアルミニウム合金ろう付け混合スラリーを用いてろう付けしようとするものである。
しかも、フラックスの使用量を最小限に抑えることができるため、残渣フラックスの少ないサンドイッチパネルを低コストで製造することができる。
なお、アルミニウム又はアルミニウム合金製サンドイッチパネルの製造の際にはフラックス使用によるコスト上昇とろう付け後のフラックス除去効率の両面を考慮すると、フラックス固形分は25質量%を上限にすることが好ましい。
Cu:30.9質量%及びSi:9.3質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金溶湯を、窒素ガス中にて噴霧して急冷することにより、アルミニウム合金粉末を得た。この合金粉末は、平均粒径が40μmの球状を呈し、表面及び内部に欠陥や酸化物は含まれていなかった。なお、この合金の融点は525℃である。
この合金粉末に、フッ化セシウム(CsF)を16質量%含有したKF−AlF3系の錯体からなるフッ化物系フラックスを固形分として所定の割合になるように蓋付きのポリエチレン製容器に計り取り、純水を加えて均一に混濁させて本発明のアルミニウム合金ろう付け混合スラリーを作製した。
また、比較のため、通常の大気雰囲気中で同組成の合金溶湯を噴霧して急冷させてアルミニウム合金粉末を得た。この合金粉末を上記と同じフラックスと混合して比較例アルミニウム合金ろう付け混合スラリーを作製した。上記合金粉末は、表面が酸化されたと思われる黒灰色を呈していた。
なお、通常の大気雰囲気中で同組成の合金溶湯を噴霧して急冷させた以外、その他のスラリー作製条件は本発明例スラリーと同じである。
これら本発明例スラリー及び比較例スラリーを用いて、アルミニウム合金板材を用いたろう付け時の隙間充填試験を行い、上記各スラリーの性能を比較した。
まず、厚さ1mmのJIS3003合金の板材を逆T字状に接触させ、下に位置する板材表面にスラリーを刷毛で塗布し、ドライヤーで乾燥した。乾燥後の固形分付着量は150〜200g/m2である。
次に上に位置する板材をその板材方向に5°傾きを設けることで、当該板材の一方に隙間を設けた。これらの試料を窒素ガス雰囲気中にて昇温速度50℃/分で550℃まで加熱し、550℃で3分間保持した後、100℃/分で冷却することでろう付けを行い、傾きをもった隙間がどの程度ろう付けされるかの実験を行った。
ろう付け後、ろう付けされた隙間の長さを計測し、板材同士のろう付け性を確認した。その結果を表1に示す。
次にスラリー固形分中に占めるフラックスの量が15%である本発明例スラリーと比較例スラリーを用いて実際にサンドイッチパネルを作製する試験を行い、上記各スラリーの性能を比較した。
パネル面材はL=2000mm、W=1000mm、t=2mmの板材であり、コア材はt=0.5mmの板材を直径25mmの円筒形にしたものである。面材表面に上記各スラリーを塗布した後に約200℃で乾燥した。乾燥後の固形分付着量は約180g/m2である。次いで面材、コア材及び枠材との組み付けを行い、その組付け体を雰囲気炉に入れ、雰囲気炉の内部を一旦真空にした後に窒素ガスで置換した。その後、この炉内で、パネルを540℃まで約40分で加熱し、540〜550℃で約5分保持した後、冷却することでろう付けを行った。なお、今回の試験では面材,コア材,枠材とも全てJIS3003合金を用いたが、6000系等の他の合金を用いても良い。
なお、表中の評価は、外観観察により全てのコア材,枠材についてその全てがろう付けされているものを良好として○で、一部のコア材,枠材について一部にろう付けされていないものがあるものを一部不良として△で表示した。
Claims (3)
- Cu:23〜37質量%,Si:4〜10質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、溶湯を真空中又は不活性ガス中で噴霧して急冷することにより得られた10〜100μmの平均粒径を有する粉末状アルミニウム合金ろう材と、固形分として11質量%以上のCsFを含むフッ化物系フラックスとを含有することを特徴とするアルミニウム合金ろう付け混合スラリー。
- フッ化物系フラックス固形分の含有量が混合スラリー固形分に対して3〜50質量%である請求項1に記載のアルミニウム合金ろう付け混合スラリー。
- アルミニウム又はアルミニウム合金製の二枚の面材と、当該二枚の面材の間にあって前記面材を支えるアルミニウム又はアルミニウム合金製のコア材とを含むサンドイッチパネルの製造方法であって、前記面材のろう付け面に請求項1又は2に記載のアルミニウム合金ろう付け混合スラリーを塗布した後、前記アルミニウム合金ろう付け混合スラリーを塗布した二枚の面材のろう付け面間にコア材を接触配置した状態で、前記面材及びコア材を不活性ガス中で加熱して両者をろう付けすることを特徴とするアルミニウム又はアルミニウム合金製のサンドイッチパネル製造方法。
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