JP4357966B2 - 芳香族ポリマーの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は芳香族ポリマー、特に全芳香族液晶ポリマーの製造法に関する。さらに詳しくは、原料として芳香族化合物を使用して、最終反応温度までを特定の速度で昇温し、最終反応温度に到達後、反応系内を特定の圧力にして重縮合を行う芳香族ポリマーの製造方法に関する。
本発明によりバッチ式重合を、重合装置を洗浄することなく繰り返し行うことができる。
背景技術
近年、プラスチックの高性能化に対する要求が益々高まり、種々の新規能を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリマーが、優れた流動性、機械的特性、物理的性質を有する点で注目されている。
液晶ポリマーの製造方法としては、原料をアシル化反応槽に仕込んでアシル化反応後、重合反応槽へ移行して重縮合反応を行う重合反応装置を用いることが知られている。
バッチ式で重合する場合、昇華物による重合装置の留出管等の閉塞が起きやすい。重合反応中に閉塞が起こると、反応器の内圧が上昇して非常に危険である。特に、バッチ式連続重合(重合装置を洗浄することなくバッチ式重合を繰り返し行うことであり、バッチ・オン・バッチ重合ともいう。)の場合、閉塞の問題が顕著に現れる。また昇華物が残留し熱履歴を受け、正常のポリマーの融点以上の異物になり、重合終了後、反応装置内から排出する際に、ポリマー中に混入するために、得られるポリマーに悪影響を及ぼすことがある。そのため、バッチ連式続重合を行うためには、定期的に反応装置内を洗浄せざるを得ない。
このため、特開平5−271398号公報には、留出する脂肪酸の一部を反応器に還流させることにより、同伴する前記原料を安定的に反応槽に戻すことが可能であるとの提案がなされている。しかし、この技術では、還流液が周囲の熱媒ジャケットや電熱ヒーターで加熱される反応槽の内壁を伝わって流下し反応混合物に戻ると、還流液が内壁を流下する間に熱媒ジャケットや電熱ヒーターによる熱で脂肪酸が蒸発し、還流液に含まれる原料が内壁等に析出堆積し、そこで重縮合したり、劣化したり、あるいは炭化したりしてポリマー中に落下するおそれがある。
本発明は、高品質の芳香族ポリマーをバッチ式連続重合により製造可能とする製造方法を提供することを目的としている。
発明の開示
本発明者らは、原料として芳香族化合物を使用して、最終反応温度までを0.5℃/分以下の速度で昇温し、最終反応温度に到達後、反応系内を25〜200Torrに減圧にして重縮合反応を行い、反応中に反応空間に接する反応装置部分の温度を150〜300℃に保つことにより、原料芳香族化合物等が重合装置の空間部に付着して閉塞を生じたり、変色して品質を低下させることがなく、芳香族ポリマーをバッチ式連続重合により製造し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の第1は、原料供給口とポリマー排出口を有する反応槽、撹拌装置、留出管、反応温度管理装置及び反応圧力管理装置を有する重合装置を用い、芳香族ポリマー用原料を重縮合して芳香族ポリマーをバッチ式で製造する際に、重縮合反応時に、反応空間に接する反応装置部分の温度を150〜300℃に保つことを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
本発明の第2は、(1)最終反応温度が300〜400℃の範囲内であり、280℃〜最終反応温度までを0.5℃/分以下で昇温し、(2)最終反応温度に到達後、反応系内圧力を25〜200Torrに減圧して、重縮合を行う事を特徴とする本発明の第1に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
本発明の第3は、留出管が、還流器及び反応槽内に突出したノズルを有することを特徴とする本発明の第1又は2に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
本発明の第4は、ノズルの温度が、150〜300℃である本発明の第3に記載の製造方法を提供する。
本発明の第5は、重合装置を洗浄することなく、繰り返しバッチ式で製造することを特徴とする本発明の第1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
本発明の第6は、ポリマー原料として、少なくとも下記一般式(i)〜(v)で表される構造を有する化合物のいずれか1以上を使用する本発明の第1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
(ここで、Ar1およびAr5はフェニレン又はナフタレン、Ar2はフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基、Ar3はフェニレン又はポリフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基、Ar4はフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基であり、Ar1〜Ar5の芳香族環の水素原子の一部が、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、フェニル、フェノキシ基で置換されていてもよい。)
本発明の第7は、芳香族ポリマーが、下記一般式(I),(II),(III)及び(IV)で表される構成単位からなり、各構成単位の比率が構成単位(I)40〜75モル%、構成単位(II)8.5〜30モル%、構成単位(III)8.5〜30モル%、構成単位(IV)0.1〜8モル%(ここで、構成単位(I)〜(IV)の合計は100モル%である。)であり、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルであることを特徴とする本発明の第1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
(ここで、Ar1は2,6−ナフタレン、Ar2は1,2−フェニレン、1,3−フェニレン及び1,4−フェニレンから選ばれる少なくとも1種、Ar3は1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、あるいはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基の少なくとも1種、Ar4は1,4−フェニレンである。)
本発明の第8は、芳香族ポリマーが全芳香族液晶ポリマーである本発明の第1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
本発明の第9は、原料として、フェノール性水酸基及び/又は芳香族アミノ基を有する芳香族化合物を使用する際に、フェノール性水酸基及び/又は芳香族アミノ基当量の1.02〜1.06倍量の炭素数1〜6のアシル化剤を添加して、フェノール性水酸基及び/又は芳香族アミノ基をアシル化させることを特徴とする本発明の第1〜6又は8に記載の芳香族ポリマーの製造方法を提供する。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明の実施の形態を説明する。
芳香族ポリマー
本発明で製造する芳香族ポリマーは、ポリマー用原料として、少なくとも下記一般式(i)〜(v)で表される構造を有する化合物のいずれか1以上を使用して得られる芳香族ポリエステル、または芳香族ポリエステルアミドである。
(ここで、Ar1およびAr5はフェニレン又はナフタレン、Ar2はフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基、Ar3はフェニレン又はポリフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基、Ar4はフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基であり、Ar1〜Ar5の芳香族環の水素原子の一部が、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、フェニル、フェノキシ基で置換されていてもよい。)
一般式(i)で表される構造を有する化合物としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びそのエステル誘導体、具体的には、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;3−メチル−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メチル−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルキル置換体;3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルコキシ置換体;及び3−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−ヒドロキシ安息香酸、3−ブロモ−4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸のハロゲン置換体等が挙げられる。これら芳香族ヒドロキシカルボン酸のエステル誘導体としては、アセチル、プロピオニル等のアシル誘導体が挙げられる。
一般式(ii)で表される構造を有する化合物としては、芳香族ジカルボン酸及びその誘導体、具体的にはテレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−トリフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸;クロロテレフタル酸、ジクロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸等の上記芳香族ジカルボン酸のハロゲン置換体;メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、エチルテレフタル酸等の上記芳香族ジカルボン酸のアルキル置換体;及びメトキシテレフタル酸、エトキシテレフタル酸等の上記芳香族ジカルボン酸のアルコキシ置換体等が挙げられる。
一般式(iii)で表される構造を有する化合物としては、芳香族ジオール及びそのエステル誘導体、具体的にはハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシトリフェニル、2,6−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−、1,5−、もしくは2,6−ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等の芳香族ジオール;及びクロロハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、フェノキシハイドロキノン、4−クロルレゾルシン、4−メチルレゾルシン等の上記芳香族ジオールのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体が挙げられる。
一般式(iv)で表される構造を有する化合物としては、芳香族ヒドロキシアミン及びそのアミド誘導体、具体的には4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルスルフィドなどが挙げられる。これら芳香族ヒドロキシアミンのエステル誘導体及び/又はアミド誘導体としては、4−アセトアミドフェノールのようなアセチル、プロピオニル等の誘導体が挙げられる。
一般式(v)で表される構造を有する化合物としては、芳香族アミノカルボン酸及びそのアミド誘導体、具体的には、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、6−アミノ−1−ナフトエ酸等の芳香族アミノカルボン酸;3−メチル−4−アミノ安息香酸、3,5−ジメチル−4−アミノ安息香酸、2,6−ジメチル−4−アミノ安息香酸、6−アミノ−5−メチル−2−ナフトエ酸等の芳香族アミノカルボン酸のアルキル置換体;3−メトキシ−4−アミノ安息香酸、3,5−ジメトキシ−4−アミノ安息香酸、6−アミノ−5−メトキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族アミノカルボン酸のアルコキシ置換体;及び3−クロロ−4−アミノ安息香酸、2−クロロ−4−アミノ安息香酸、2,3−ジクロロ−4−アミノ安息香酸、3,5−ジクロロ−4−アミノ安息香酸、2,5−ジクロロ−4−アミノ安息香酸、3−ブロモ−4−アミノ安息香酸、6−アミノ−5−クロロ−2−ナフトエ酸、6−アミノ−7−クロロ−2−ナフトエ酸、6−アミノ−5,7−ジクロロ−2−ナフトエ酸等の芳香族アミノカルボン酸のハロゲン置換体等が挙げられる。これら芳香族アミノカルボン酸のアミド誘導体としては、4−アセトアミド安息香酸のようなアセチル、プロピオニル等の誘導体が挙げられる。
上記芳香族ポリエステルは、好ましくは溶融時に異方性を示す液晶ポリエステルであり、特に好ましくは全芳香族液晶ポリエステルである。
全芳香族液晶ポリエステルとしては、例えば、下記一般式(I),(II),(III)及び(IV)で表される構成単位からなり、各構成単位の比率が構成単位(I)40〜75モル%、構成単位(II)8.5〜30モル%、構成単位(III)8.5〜30モル%、構成単位(IV)0.1〜8モル%(ここで、構成単位(I)〜(IV)の合計は100モル%である。)であるポリエステルが挙げられる。
(ここで、Ar1は2,6−ナフタレン、Ar2は1,2−フェニレン、1,3−フェニレン及び1,4−フェニレンから選ばれる少なくとも1種、Ar3は1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、あるいはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基の少なくとも1種、Ar4は1,4−フェニレンである。)
具体的には、各構成単位を表す原料としては、例えば(I)を与えるものとして2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、(II)を与えるものとして前記芳香族ジオール成分、(III)を与えるものとして前記芳香族ジカルボン酸成分、(IV)を与えるものとして4−ヒドロキシ安息香酸を組み合わせた溶融異方性を示すポリエステルが挙げられ、中でも上記(I),(II),(III)および(IV)の構造単位が上記組成からなる液晶ポリエステルを製造する際に、重合反応中に昇華物が多いため、本発明の製造方法は、顕著にその効果を発揮する。
重合装置
本発明において使用する重合装置は、バッチ式重合装置であり、1段で重縮合を行うように1基の反応槽を有する装置でもよいが、2段以上の重縮合を行うための2槽以上の反応槽を有する装置が好ましい。この場合、1段目はアシル化に、2段目以降は重縮合に使用される。
重縮合が行われる重合装置としては、原料供給口とポリマー排出口を有する反応槽、該反応槽に設けられた撹拌装置、留出管、反応温度管理装置及び反応圧力管理装置からなる。
温度管理装置としては、後述するジャケットまたはヒーターが挙げられる。
本発明では、反応空間に接する反応装置部分、即ち反応装置上部部分を冷却する必要があるので、反応装置の上部と下部の加熱手段(ジャケットやヒータ)を分けて設けることが好ましい。温度制御の観点から、好ましくはジャケットが使用され、所定の温度に冷却させるように外部の熱交換器を介して熱媒を循環させる。
圧力管理装置としては、真空ポンプ、エジェクタなどと圧力測定のための圧力計が挙げられる。
留出管は、後述する還流器(コンデンサー)及び反応槽内に突出したノズルからなるものが好ましく挙げられるが、必ずしも反応槽内に突出していなくてもよい。
以下、本発明に使用する製造装置の一例を第1図に示した。以下、第1図に従って説明する。第1図において、1はアシル化反応槽、2は原料供給ライン、3は還流器、4は留出液捕集器へのライン、5は撹拌器、6は加熱手段、7はアシル化反応物排出口、8はアシル化反応物移槽ライン、9は吸引ライン、10は生成ポリマー排出口、11は生成ポリマー排出ライン、12は重縮合反応槽、Aは反応槽内に突出した留出管の下端部(ノズル)である。
ライン2からは原料芳香族化合物とアシル化剤が供給される。これらはモノマー種毎に別々の供給ラインから供給されてもよい。
通常、1段目のアシル化反応槽(予備反応槽ということもある)においてアシル化が行われる。アシル化剤と共に供給される1種または2種以上のヒドロキシル基含有芳香族化合物は、アシル化反応によりエステル誘導体とされる。このようなアシル化反応を受けるのは、原料のヒドロキシル基含有芳香族化合物であるが、アミノ基含有化合物もアシル化される。本発明においては、ほとんどのヒドロキシル基含有化合物をアシル化反応槽でアシル化して重縮合反応槽12に供給することが好ましい。
なお、別の方法として反応槽1を設けず反応槽12内で、重縮合に先立ち、アシル化反応物を製造することもできる。
アシル化剤としては、通常酸無水物が使用され、酸無水物としては炭素数1〜6の一価カルボン酸の無水物、具体的には無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等が例示され、好ましくは無水酢酸が使用される。アシル化反応は、アシル化反応槽に取り付けられた還流ラインにより副生する酢酸等の脂肪酸を除去しながら進行させる。反応槽12に供給されるアシル化されたヒドロキシル基含有芳香族化合物等は一部または全部がオリゴマーとなっていてもよい。
なお反応槽12には、通常、図示しないラインから触媒が供給される。触媒としては、一般のポリエステル樹脂の製造に使用されている公知触媒、例えば酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、シュウ酸第一スズ,酢酸第一スズ,ジアルキルスズ酸化物,ジアリールスズ酸化物等のスズ化合物、二酸化チタン,チタンアルコキシド類,アルコキシチタンケイ酸塩のようなチタン化合物、酢酸ナトリウム,酢酸カリウム,酢酸カルシウム,酢酸亜鉛,酢酸第一鉄のような有機酸の金属塩等を挙げることができる。触媒の量は、生成ポリマーに対して金属重量部基準で10〜100ppm、好ましくは20〜80ppmである。
反応槽12においては、撹拌器5で反応混合物を撹拌し、また熱媒を用いるジャケットまたはヒーターのような加熱手段6により外部から加熱し、発生する酢酸等の脂肪酸をライン9から留去しながら重縮合が進行する。その際、エステル化合物等の高価なモノマーが脂肪酸と共に留去されるので還流器3を設け、脂肪酸と共に還流液を反応混合物へ戻す。
本発明においては、前記還流液を反応槽内壁を伝わせることなく反応混合物中に落下させることができる。これには還流器3に反応槽12内に突出したノズルAを設置することが好ましい。ノズルAの突出長さは、還流液が反応槽12の内壁に伝わらない程度であればよい。
重縮合は脂肪酸の留出により進行するが、最終段階では吸引ライン9から反応槽12内を減圧にし、揮発成分としての脂肪酸を除去する。重縮合が終了すると、得られた溶融状態の液晶性ポリマーは、反応槽12の下部に設けられた排出口10および排出ライン11を経由して反応槽外に取り出される。
反応条件
反応槽を1基で行う場合は、通常、原料モノマーを投入して窒素雰囲気下で140〜200℃程度となるまで昇温し、昇温と同時に撹拌を開始し、スラリー化した原料モノマーを、アシル化反応によって生成した留出物および未反応のアシル化剤を留出させながらアシル化反応を行った後、300〜400℃まで昇温し、減圧もしくは真空下で重縮合する。
第1図のように、反応槽を2基以上使って行われる場合、通常、反応槽1に原料モノマーとアシル化剤を仕込み、撹拌しながらスラリー化後昇温して130〜200℃で、アシル化により生成する留出物および未反応のアシル化剤を留出させながら、1〜2時間アシル化する。次に真空発生装置のついた反応槽12に移して、さらに300〜400℃程度の最終反応温度になるまで昇温して、減圧または真空下で重縮合する。なお、最終反応温度とは、重縮合反応時の反応液の最終到達温度である。
本発明において重要な点は、重縮合時に反応混合物からのモノマーもしくはオリゴマーなどの反応混合物が反応槽壁、留出管の還流器や留出液凝集コンデンサーノズルなどに付着乾燥し、それが加熱乾燥されることにより分解反応や着色などの所望しない反応が生ずることを抑制しながら重縮合する点にある。
従って、本発明では下記の条件で反応を行うことが重要である。
▲1▼反応混合物が付着する部分、即ち、重縮合反応時に反応液面より上の反応空間に接する反応装置部分、具体的には反応槽の上蓋や、留出液凝集コンデンサー入り口部分の温度を、150〜300℃にコントロールする。仮に昇華物が反応槽に付着しても、反応留出液蒸気が槽内に充満することにより反応槽内側を洗浄しながら重縮合を行うことができ、この温度範囲であれば昇華物は過度の熱履歴を受けることなくポリマーの融点程度の温度で溶融可能である。150℃未満に設定した場合、反応槽の設定温度との差から保温が十分できないことにより熱が逃げてしまい、反応槽の温度が下がってしまう。また、300℃超にした場合には昇華物が熱履歴を受け、溶融しない物質へと変化してしまい留出管閉塞やポリマーへの混入といった問題も引き起こす危険がある。より好ましくは、下記▲2▼〜▲4▼を満足する条件で反応を行う。
▲2▼減圧重縮合時の真空度を25〜200Torrの範囲にコントロールする。真空度を25Torr未満にして重縮合を行った場合、減圧中の昇華物発生が多く、留出管閉塞の原因となる。また真空度が200Torrよりも高い場合、昇華物は少ないものの重縮合反応が非常に遅くなるといった問題がある。
▲3▼反応温度としては140〜400℃であり、2.0℃/分以下、好ましくは1.0℃/分以下で昇温を行うが、原料の昇華を抑制するには、280℃以上、最終到達温度までの昇温速度を、1℃/分以下、好ましくは0.5℃/分以下にする。
▲4▼原料のフェノール性水酸基もしくはアミノ基を有する芳香族化合物の水酸基当量もしくはアミノ基当量に相当する量の1.02〜1.06倍量のアシル化剤を添加してアシル化させる。アシル化剤が1.02倍未満の場合、アシル化反応が十分に進行せず、1.06倍よりも多い場合はアシル化反応の他に架橋反応等の予期しない反応が起ることがある。
なお、反応槽上蓋、留出管等の温度を150〜300℃にコントロールする手段としては、バンドヒーター、温度調節された熱媒の流通するジャケット等の加熱手段が挙げられる。
実施例
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものでない。
[実施例1]
中心軸のないパドル翼を有した内容積6Lの反応槽1と、中心軸のないダブルヘリカル翼を有した内容積6Lの反応槽2を用い、以下のように反応を行なった。
反応槽1に(I)を与える原料として2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1218g,(II)を与える原料としてテレフタル酸560g、(III)を与える原料として4,4’−ジヒドロキシジフェニル628g,(IV)を与える原料として4−ヒドロキシ安息香酸37g、および無水酢酸1432g(ヒドロキシル基の1.04当量倍)を仕込んだ。槽内を70〜150rpmで撹拌し、140℃到達後、140℃で2時間反応後、200℃まで昇温した。200℃到達後、反応槽2に反応液を移行し70rpmで撹拌を行い、さらに反応槽液温を360℃まで昇温した。反応槽2の上部の温度は槽内の反応物の温度を超えないよう所定の200℃に設定した。反応槽液温が280℃から360℃までの昇温レートは0.5℃/minで行った。最終反応温度に達した後、常圧から約40分かけ最終減圧度の75Torrまで減圧を行った。
重縮合反応終了後、反応槽12内を約2kg/cm2程度まで加圧し、ポリマーをストランド状に吐出して、冷却後カットしてペレットにした。運転条件は表1に記載の条件で行った。
結果を表1に示す。なお、○はバッチ式連続重合が可能、△は数回のバッチ式連続重合が可能、×はバッチ式連続重合が不可を示す。
[実施例2〜4及び比較例1〜3]
反応条件を表1に示すように変更した他は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
産業上の利用可能性
本発明によれば、原料芳香族化合物やオリゴマーが重合装置の空間部に付着して閉塞を生じたり、変色して品質を低下させることがなく、芳香族ポリマーをバッチ式連続重合により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明にかかる芳香族ポリマーの製造方法で使用する重合装置の一例を示す図である。
Claims (9)
- 原料供給口とポリマー排出口を有する反応槽、撹拌装置、留出管、反応温度管理装置及び反応圧力管理装置を有する重合装置を用い、芳香族ポリマー用原料を最終反応温度が300〜400℃の範囲内で重縮合して芳香族ポリマーをバッチ式で製造する際に、重縮合反応時に、反応液面より上の反応空間に接する反応装置部分の温度を150〜300℃に保つことを特徴とする芳香族ポリマーの製造方法。
- (1)最終反応温度が300〜400℃の範囲内であり、280℃〜最終反応温度までを0.5℃/分以下で昇温し、(2)最終反応温度に到達後、反応系内圧力を25〜200Torrに減圧して、重縮合を行う事を特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
- 留出管が、還流器及び反応槽内に突出したノズルを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
- ノズルの温度が、150〜300℃である請求項3に記載の製造方法。
- 重合装置を洗浄することなく、繰り返しバッチ式で製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
- ポリマー原料として、少なくとも下記一般式(i)〜(v)で表される構造を有する化合物のいずれか1以上を使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
(ここで、Ar1およびAr5はフェニレン又はナフタレン、Ar2はフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基、Ar3はフェニレン又はポリフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基、Ar4はフェニレン、ナフタレン、またはメタもしくはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物残基であり、Ar1〜Ar5の芳香族環の水素原子の一部が、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、フェニル、フェノキシ基で置換されていてもよい。) - 芳香族ポリマーが、下記一般式(I),(II),(III)及び(IV)で表される構成単位からなり、各構成単位の比率が、構成単位(I)40〜75モル%、構成単位(II)8.5〜30モル%、構成単位(III)8.5〜30モル%、構成単位(IV)0.1〜8モル%(ここで、構成単位(I)〜(IV)の合計は100モル%である。)であり、溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
(ここで、Ar1は2,6−ナフタレン、Ar2は1,2−フェニレン、1,3−フェニレン及び1,4−フェニレンから選ばれる少なくとも1種、Ar3は1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、あるいはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基の少なくとも1種、Ar4は1,4−フェニレンである。) - 芳香族ポリマーが全芳香族液晶ポリマーである請求項1〜6のいずれか1項に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
- 原料として、フェノール性水酸基及び/又は芳香族アミノ基を有する芳香族化合物を使用する際に、フェノール性水酸基及び/又は芳香族アミノ基当量の1.02〜1.06倍量の、炭素数1〜6のアシル化剤を添加して、フェノール性水酸基及び/又は芳香族アミノ基をアシル化させることを特徴とする請求項1〜6又は8に記載の芳香族ポリマーの製造方法。
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