JP4356300B2 - 積層型lc複合部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層型LC複合部品に関するもので、特に、これを得るための焼成工程でのデラミネーションやクラックを生じさせにくくするための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図11には、この発明にとって興味ある従来の積層型LC複合部品に備える部品本体としての積層体1が断面図で示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
積層体1は、複数の積層されたセラミック層2をもって構成される。積層体1には、インダクタ部分3とコンデンサ部分4および5とが積層方向に関して互いに隣り合うように位置されている。図11に示した例では、インダクタ部分3は、第1および第2のコンデンサ部分4および5の間に挟まれるように位置している。
【0004】
インダクタ部分3には、セラミック層2間の複数の界面に沿って延びる複数のコイル導体6が形成され、第1および第2のコンデンサ部分4および5には、それぞれ、セラミック層2間の複数の界面に沿って延びる複数のコンデンサ導体7および8が形成されている。これらコイル導体6ならびにコンデンサ導体7および8は、たとえば銅を含む導電性ペーストの焼結体によって構成される。
【0005】
積層体1には、また、インダクタ部分3と第1および第2のコンデンサ部分4および5の各々との間に位置する中間層9および10が設けられている。
【0006】
このような積層体1は、コイル導体6ならびにコンデンサ導体7および8とともに焼成されることによって得られるものである。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−203552号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような積層体1を得るための焼成の結果、積層体1にクラックやデラミネーションなどの構造欠陥が発生することがある。このような構造欠陥は、中間層9および10において生じやすい傾向があり、特に、図11において破線で囲んだ領域Aのように、インダクタ部分3の、中間層9および10の各々側の境界近傍においてより生じやすい。この原因は、次のように考えられる。
【0009】
第1に、コイル導体6ならびにコンデンサ導体7および8に含まれる導電成分としての銅などは、焼成時において、セラミック層2側へと拡散し、セラミック層2の焼結を促進するように作用する。そのため、中間層9および10の各々における、インダクタ部分3側の境界近傍またはコンデンサ部分4および5の各々側の境界近傍と中間層9および10の各々の厚み方向の中央部との間で、焼成時の収縮度合いに比較的大きな差が生じる。この収縮度合いの差は、特に、中間層9および10の各々のインダクタ部分3との境界近傍において大きくなり、そのため、比較的大きな応力がこれらの部分に発生する。その結果、前述したようなクラックやデラミネーションなどの構造欠陥が発生しやすくなる。
【0010】
第2に、焼成時において、コイル導体6ならびにコンデンサ導体7および8が、セラミック層2より先に焼結が進行し、そのため、コイル導体6ならびにコンデンサ導体7および8において、セラミック層2よりも先に膨張および収縮が生じる。このことも、中間層9および10においてクラックやデラミネーションなどの構造欠陥を生じさせる原因となる。
【0011】
第3に、コイル導体6は、その等価直列抵抗の低減のため、コンデンサ導体7および8よりも厚く形成されるのが一般的である。一例として、コンデンサ導体7および8は、焼成前において約1.5μmおよび焼成後において約1.2μmの各厚みを有しているのに対し、コイル導体6は、焼成前において約5.5μmおよび焼成後において約4.4μmの各厚みを有している。そのため、コイル導体6は、焼成時において、その厚み方向に比較的大きな応力を及ぼし、その結果、中間層9および10の各々のインダクタ部分3との境界近傍において、セラミック層2間に隙間を生じさせ、これが原因となって、クラックやデラミネーションなどの構造欠陥を発生させることがある。
【0012】
第4に、焼成前の積層体1に対してはプレス工程が実施されるが、このプレス工程の結果、上述のように比較的厚いコイル導体6が積層方向に多数重なる部分とそうでない部分との間で密度の差が比較的大きく生じ、これが原因となって、クラックやデラミネーションなどの構造欠陥を招くこともある。
【0013】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る、積層型LC複合部品を提供しようとすることである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数の積層されたセラミック層をもって構成される積層体を備え、積層体には、インダクタ部分とコンデンサ部分とが積層方向に関して中間層を介して互いに隣り合うように位置され、インダクタ部分には、セラミック層間の複数の界面に沿ってスパイラル状に延びる複数のコイル導体が形成され、このコイル導体は1つの上記界面ごとに1ターン以上を与えるスパイラル状を有していて、コンデンサ部分には、セラミック層間の複数の界面に沿って延びる複数のコンデンサ導体が形成され、積層体は、コイル導体およびコンデンサ導体とともに焼成されることによって得られる、積層型LC複合部品に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0015】
すなわち、この発明に係る積層型LC複合部品では、複数のコイル導体のうち、コンデンサ部分に比較的近いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体は、コンデンサ部分に比較的遠いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体に比べて、そのターン数がより少なくされることによって、その総面積がより小さくされていることを第1の特徴としている。
【0017】
さらに、この発明に係る積層型LC複合部品は、コイル導体の積層方向に重なる数は、積層体の外周側ほど、より少なくされることを第2の特徴としている。
【0018】
上述のようなターン数の差に加えて、コンデンサ部分に比較的近いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体の幅方向寸法を、コンデンサ部分に比較的遠いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体の幅方向寸法に比べて、より小さくされてもよい。
【0019】
この発明に係る積層型LC複合部品の典型的な実施態様では、インダクタ部分は、第1および第2のコンデンサ部分の間に挟まれるように位置される。
【0020】
この発明に係る積層型LC複合部品において、インダクタ部分は、積層体の積層方向の端部に位置していてもよい。この場合、複数のコイル導体のうち、積層体の端部に比較的近いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体は、積層体の端部に比較的遠いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体に比べて、そのターン数がより少なくされることによって、その総面積がより小さくされることが好ましい。
【0021】
また、この発明は、インダクタ部分に備える、コンデンサ部分に最も近いコイル導体とコンデンサ部分に備える、インダクタ部分に最も近いコンデンサ導体との間の距離が、150μm以下である場合に、特に有利に適用される。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1ないし図6は、この発明の第1の実施形態を説明するためのものである。ここで、図1は、積層型LC複合部品11を示す平面図であり、図2は、積層型LC複合部品11に備える部品本体としての積層体12の、図1の線II−IIに沿う断面図である。図3は、積層型LC複合部品11が与える等価回路図である。
【0023】
積層体12は、図2に示すように、複数の積層されたセラミック層13をもって構成される。セラミック層13は、たとえば、比誘電率が12程度の誘電体セラミックから構成され、5〜25μm程度の厚みを有している。
【0024】
積層体12には、インダクタ部分14とコンデンサ部分15および16とが積層方向に関して互いに隣り合うように位置されている。この実施形態では、インダクタ部分14は、第1および第2のコンデンサ部分15および16の間に挟まれるように位置している。
【0025】
インダクタ部分14には、後で図5を参照して詳細に説明するように、セラミック層13間の複数の界面に沿って延びる複数のコイル導体17、18、19、20、21および22が形成されている。また、第1のコンデンサ部分15には、後で図4を参照して詳細に説明するように、セラミック層13間の複数の界面に沿って延びる複数のコンデンサ導体23および24が形成されている。第2のコンデンサ部分16には、後で図6を参照して詳細に説明するように、セラミック層13間の複数の界面に沿って延びる複数のコンデンサ導体25および26が形成されている。
【0026】
積層体12は、コイル導体17〜22およびコンデンサ導体23〜26とともに焼成されることによって得られるものである。コイル導体17〜22およびコンデンサ導体23〜26は、たとえば、銅、ニッケルもしくは銀またはこれを含む合金を導電成分として含む導電性ペーストを印刷し、積層体12の焼成工程において、これを焼結させることによって形成される。なお、このような印刷法に代えて、蒸着法、スパッタリング法またはフォトリソグラフィー法が適用されてもよい。
【0027】
積層体12の外表面上には、図1に示すように、外部端子電極27、28、29および30が形成される。外部端子電極27および28は、積層体12の各端部に設けられ、外部端子電極29および30は、積層体12の各側面の中央部に設けられている。なお、外部端子電極29および30は、この積層型LC複合部品11がたとえばノイズフィルタとして用いられるとき、ともに接地されるものであるので、積層体12を周回する一体的な電極として形成されてもよい。
【0028】
外部端子電極27〜30は、たとえば銅または銅合金を導電成分として含む導電性ペーストを、積層体12の外表面上の所定の領域に付与し、これを焼き付けることによって形成される。この場合、外部端子電極27〜30のための導電性ペーストは、焼成前の積層体12の外表面上に付与し、積層体12の焼成工程において、この導電性ペーストを同時に焼き付けるようにしてもよい。また、外部端子電極27〜30上には、必要に応じて、ニッケルめっきおよび半田または錫めっきが施される。
【0029】
次に、積層体12に備えるコイル導体17〜22およびコンデンサ導体23〜26の詳細について説明する。図4ないし図6は、積層体12をセラミック層13毎に分解して示す平面図である。図2に示した積層体12に備える複数のセラミック層13は、上から順に、図4(a)から図6(d)までの順に示されている。
【0030】
図4(a)に示したセラミック層13は、図2に示した積層体12の上方の端部に位置する外層31を与えるもので、外層31を形成するため、このようなセラミック層13が適当数積層される。
【0031】
次に、図4(b)および(c)に示したセラミック層13上にそれぞれ形成されたコンデンサ導体23および24は、図2に示した第1のコンデンサ部分15を与えるものである。図4(b)に示したコンデンサ導体23は、セラミック層13の両側部に引き出される引出し部32および33を有していて、図1に示した外部端子電極29および30にそれぞれ電気的に接続される。図4(c)に示したコンデンサ導体24は、セラミック層13の一方の端部にまで引き出される引出し部34を有していて、図1に示した外部端子電極27に電気的に接続される。
【0032】
コンデンサ導体23および24は、セラミック層13を介して互いに対向して静電容量を形成するものであるが、必要とする静電容量に応じて、コンデンサ導体23および24の各々を形成したセラミック層13の積層数が設定される。
【0033】
次に、図4(d)に示したセラミック層13は、図2に示した積層体12における第1のコンデンサ部分15とインダクタ部分14との間に位置する中間層35を与えるもので、中間層35を形成するため、このようなセラミック層13が適当数積層される。
【0034】
次に、図5(a)ないし(f)に示した各セラミック層13上にそれぞれ形成されたコイル導体17〜22は、図2に示したインダクタ部分14を与えるものである。これらコイル導体17〜22の各々は、図5(a)ないし(f)からわかるように、セラミック層13間の1つの界面ごとに1ターン以上を与えるスパイラル状を有している。コイル導体17〜22の各々の詳細について以下に説明する。
【0035】
図5(a)に示したコイル導体17は、実質的に1ターンを与えるスパイラル状に形成され、その一方端には、セラミック層13の一方の端部にまで引き出される引出し部36を形成し、その他方端には、セラミック層13を貫通するビアホール導体37が設けられる。引出し部36は、図1に示した外部端子電極27に電気的に接続される。
【0036】
なお、このビアホール導体37および後述するビアホール導体38〜41は、対応のセラミック層13となるセラミックグリーンシートにレーザ加工またはパンチング等によって貫通孔を設け、この貫通孔に導電性ペーストを充填することによって形成されるものである。
【0037】
図5(b)に示したコイル導体18は、実質的に2ターンを与えるスパイラル状に形成され、その一方端は、上述したビアホール導体37に電気的に接続され、その他方端には、セラミック層13を貫通するビアホール導体38が設けられる。
【0038】
図5(c)に示したコイル導体19は、実質的に3ターンを与えるスパイラル状に形成され、その一方端は、上述したビアホール導体38に電気的に接続され、その他方端には、セラミック層13を貫通するビアホール導体39が設けられる。
【0039】
図5(d)に示したコイル導体20は、実質的に3ターンを与えるスパイラル状に形成され、その一方端は、上述したビアホール導体39に電気的に接続され、その他方端には、セラミック層13を貫通するビアホール導体40が設けられる。
【0040】
図5(e)に示したコイル導体21は、実質的に2ターンを与えるスパイラル状に形成され、その一方端は、上述したビアホール導体40に電気的に接続され、その他方端には、セラミック層13を貫通するビアホール導体41が設けられる。
【0041】
図5(f)に示したコイル導体22は、実質的に1ターンを与えるスパイラル状に形成され、その一方端は、上述したビアホール導体41に電気的に接続され、その他方端には、セラミック層13の一方の端部にまで引き出される引出し部42を形成している。この引出し部42は、図1に示した外部端子電極28に電気的に接続される。
【0042】
次に、図6(a)に示したセラミック層13は、図2に示した積層体12におけるインダクタ部分14と第2のコンデンサ部分16との間の中間層43を与えるもので、中間層43を形成するため、このようなセラミック層13が適当数積層される。
【0043】
次に、図6(b)および(c)に示したセラミック層13上にそれぞれ形成されたコンデンサ導体25および26は、図2に示した第2のコンデンサ部分16を与えるものである。コンデンサ導体25は、セラミック層13の両側部に引き出される引出し部44および45を有し、これら引出し部44および45は、図1に示した外部端子電極29および30にそれぞれ電気的に接続される。コンデンサ導体26は、セラミック層13の一方の端部にまで引き出される引出し部46を有し、この引出し部46は、図1に示した外部端子電極28に電気的に接続される。
【0044】
コンデンサ導体25および26についても、これらはセラミック層13を介して互いに対向して静電容量を形成するものであるが、必要とする静電容量に応じて、コンデンサ導体25および26の各々を形成したセラミック層13の積層数が設定される。
【0045】
図6(d)に示したセラミック層13は、図2に示した積層体12の下方の端部に位置する外層47を与えるもので、外層47を形成するため、このようなセラミック層13が適当数積層される。
【0046】
以上のような構成を有する積層型LC複合部品11は、図3に示すようなπ型LCフィルタに対応する等価回路を実現する。図3において、図1および図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付すことによって、その対応関係を容易に理解できるようにしている。
【0047】
このような積層型LC複合部品11によれば、図2によく示されているように、セラミック層13間の界面に沿って延びるコイル導体17〜22の各々のターン数は、コンデンサ部分15および16の各々により近づくほど、より少なくされ、それによって、コイル導体17〜22の総面積が、コンデンサ部分15および16の各々により近づくほど、より小さくされている。したがって、インダクタ部分14における、中間層35および43の各々との境界近傍での焼成時の収縮挙動を、中間層35および43に近づけることができ、これらの部分で生じ得る応力を低減し、その結果、クラックやデラミネーションのような構造欠陥を生じさせにくくすることができる。
【0048】
また、この積層型LC複合部品11では、コイル導体17〜22の積層方向に重なる数は、積層体12の外周側ほど、より少なくされている。したがって、焼成前の積層体12に対して実施されるプレス工程の結果、コイル導体17〜22の存在のためにもたらされる密度の差を低減することができ、これに起因する構造欠陥も生じさせにくくすることができる。
【0049】
なお、インダクタ部分14に備えるコイル導体17〜22のうち、コンデンサ部分15および16の各々に最も近いコイル導体17および23とコンデンサ部分15および16の各々に備えるコンデンサ導体23〜26のうち、インダクタ部分14に最も近いものとの間の距離、言い換えると、中間層35および43の各々の厚みが150μmより大きい場合には、収縮挙動の差によってもたらされる応力が中間層35および43の各厚みの範囲内で緩和されやすいため、前述したような焼成時の収縮挙動に起因する構造欠陥が比較的生じにくい傾向が一般的にある。逆に言えば、インダクタ部分14に備えるコイル導体17〜22のうち、コンデンサ部分15および16の各々に最も近いコイル導体17および23とコンデンサ部分15および16の各々に備えるコンデンサ導体23〜26のうち、インダクタ部分14に最も近いものとの間の距離、言い換えると、中間層35および43の各々の厚みが150μm以下と薄い場合には、収縮挙動の差によってもたらされる応力が中間層35および43の各厚みの範囲内では十分に緩和されにくいため、前述したような焼成時の収縮挙動に起因する構造欠陥が比較的生じやすい傾向が一般的にある。したがって、この実施形態において採用される構造は、後者のように、中間層35および43の各々の厚みが150μm以下と薄いとき、特に効果が顕著に現れることになり、意義が大きいと言える。
【0050】
図7は、この発明の第2の実施形態を説明するための図2に相当する図である。図7において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
図7に示した積層体51は、図2に示した積層体12における第1のコンデンサ部分15を備えないものに相当する構造を有している。
【0052】
積層体51において、インダクタ部分14は、積層体51の積層方向の端部に位置している。また、この端部には、外層52が設けられるが、この実施形態では、複数のコイル導体17〜22の各々のターン数は、積層体51の端部に近づくほど、より少なくなるようにされている。これは、外層52とインダクタ部分14との間での焼成時の収縮挙動の差を低減するのに効果的である。
【0053】
図8は、この発明の第3の実施形態を説明するための図2または図7に相当する図である。図8において、図2または図7に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
図8に示した積層体61のインダクタ部分14には、セラミック層13の延びる方向に配列された複数のインダクタ62、63および64が設けられ、アレイ型の積層型LC複合部品を構成するようにされている。
【0055】
図9は、この発明の第4の実施形態による積層型LC複合部品71を示す断面図である。
【0056】
積層型LC複合部品71は、積層体72を備え、積層体72は、複数の積層されたセラミック層73をもって構成される。この実施形態では、セラミック層73の積層方向は、図9による左右方向であって、基板(図示せず。)の実装面に対して平行な方向とされる。
【0057】
積層体72には、第1および第2のインダクタ部分74および75の間にコンデンサ部分76が挟まれるように位置されている。
【0058】
第1のインダクタ部分74には、セラミック層73間の複数の界面に沿って延びる複数のコイル導体77が形成され、第2のインダクタ部分75には、セラミック層73間の複数の界面に沿って延びる複数のコイル導体78が形成され、コンデンサ部分76には、セラミック層73間の複数の界面に沿って延びる複数のコンデンサ導体79および80が形成される。
【0059】
積層体72における、第1のインダクタ部分74とコンデンサ部分76との間には中間層81が設けられ、第2のインダクタ部分75とコンデンサ部分76との間には、中間層82が設けられ、積層体72の一方の端部には外層83が設けられ、同じく他方の端部には、外層84が設けられる。
【0060】
積層体72の外表面上であって、一方の端部には、外部端子電極85が形成され、他方の端部には、外部端子電極86が形成され、中間部には、周回するように、外部端子電極87が設けられる。
【0061】
複数のコイル導体77および複数のコイル導体78の各々についてのセラミック層73を介しての接続は、前述したコイル導体17〜22の場合と同様、ビアホール導体(図示せず。)によって達成される。
【0062】
第1のインダクタ部分74に設けられた複数のコイル導体77による接続の一方端は、ビアホール導体88を介して外部端子電極85に電気的に接続される。これらコイル導体77による接続の他方端は、ビアホール導体89を介して、第2のインダクタ部分75に設けられた複数のコイル導体78による接続の一方端に電気的に接続される。また、第2のインダクタ部分75に設けられたコイル導体78による接続の他方端は、ビアホール導体90を介して外部端子電極86に電気的に接続される。
【0063】
また、上述のビアホール導体89は、コンデンサ部分76に設けられたコンデンサ導体79とは電気的に絶縁されながら、コンデンサ導体80と電気的に接続される。コンデンサ導体79は、外部端子電極87に電気的に接続される。
【0064】
このような積層型LC複合部品71においても、コンデンサ部分76に比較的近いセラミック層73間の界面に沿って延びるコイル導体77および78は、コンデンサ部分76に比較的遠いセラミック層73間の界面に沿って延びるコイル導体77および78に比べて、そのターン数がより少なくされている。
【0065】
また、外層83および84の各々に比較的近いセラミック層73間の界面に沿って延びるコイル導体77および78は、外層83および84の各々に比較的遠いセラミック層73間の界面に沿って延びるコイル導体77および78に比べて、そのターン数がより少なくされている。
【0066】
図10は、この発明にとって興味ある参考例を説明するための図2に相当する図である。図10において、図2に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0067】
図10に示した積層体91のインダクタ部分14に設けられる複数のコイル導体17a〜22aについては、次のような特徴を有している。すなわち、複数のコイル導体17a〜22aのうち、コンデンサ部分15および16の各々に比較的近いものは、比較的遠いものに比べて、その幅方向寸法がより小さくされ、それによって、総面積がより小さくなるようにされている。
【0068】
このように、インダクタ部分の、コンデンサ部分側の境界近傍における焼成時の収縮挙動の差をより小さくし、応力を緩和するためには、コンデンサ部分に比較的近いコイル導体の総面積を、比較的遠いコイル導体の総面積より小さくすればよく、その典型的な方法として、第1ないし第4の実施形態のように、ターン数をより少なくする方法と、参考例のように、コイル導体の幅方向寸法をより小さくする方法とがある。
【0069】
なお、上述した応力の緩和のため、コンデンサ部分に設けられたコンデンサ導体について、インダクタ部分により近いものほど、その面積を小さくすることも有効な方法の1つとして考えられる。
【0070】
また、セラミック層は、誘電体セラミックからなる場合に限らず、磁性体セラミックから構成されても、あるいは、コンデンサ部分において誘電体セラミックを用い、かつインダクタ部分において磁性体セラミックを用いてもよい。
【0071】
また、この発明が向けられる積層型LC複合部品は、ノイズフィルタとして用いられる場合に限らず、たとえばローパスフィルタのような高周波LCフィルタなどにも適用することができる。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、複数のコイル導体のうち、コンデンサ部分に比較的近いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体が、コンデンサ部分に比較的遠いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体に比べて、ターン数がより少なくされたり、好ましくは、さらに幅方向寸法がより小さくされたりして、その総面積がより小さくされているので、インダクタ部分の、コンデンサ部分側の境界近傍での焼成時の収縮挙動の差が低減され、したがって、この部分で生じ得る応力が緩和され、その結果、積層体において、クラックやデラミネーションのような構造欠陥を生じさせにくくすることができる。
【0074】
また、この発明によれば、コイル導体の積層方向に重なる数が、積層体の外周側ほど、より少なくなるようにされているので、焼成前の積層体に対して実施されるプレス工程の結果もたらされる密度の差に起因する構造欠陥をより生じさせにくくすることができる。
【0075】
また、インダクタ部分が、積層体の積層方向の端部に位置している場合、この端部に比較的近いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体が、この端部に比較的遠いセラミック層間の界面に沿って延びるコイル導体に比べて、その総面積をより小さくすると、インダクタ部分の、積層体の端部側での構造欠陥も生じさせにくくすることができる。
【0076】
また、インダクタ部分に備える、コンデンサ部分に最も近いコイル導体とコンデンサ部分に備える、インダクタ部分に最も近いコンデンサ導体との間の距離が150μm以下と短いと、上述したような構造欠陥がより生じやすい傾向が一般的にある。この発明によれば、上記距離が150μm以下と短い場合でも、上述したような構造欠陥を生じさせにくくすることができる。したがって、この発明は、上述の距離が150μm以下の場合において、効果が顕著に現れることになり、特に有利に適用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態による積層型LC複合部品11を示す平面図である。
【図2】図1に示した積層体12の、図1の線II−IIに沿う断面図である。
【図3】図1に示した積層型LC複合部品11が与える等価回路図である。
【図4】図2に示した積層体12における外層31から中間層35に至る部分について、セラミック層13毎に分解して示す平面図である。
【図5】図2に示した積層体12におけるインダクタ部分14について、セラミック層13毎に分解して示す平面図である。
【図6】図2に示した積層体12における中間層43から外層47に至る部分について、セラミック層13毎に分解して示す平面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態を説明するための図2に相当する図である。
【図8】この発明の第3の実施形態を説明するための図2に相当する図である。
【図9】この発明の第4の実施形態による積層型LC複合部品71を示す断面図である。
【図10】 この発明にとって興味ある参考例を説明するための図2に相当する図である。
【図11】この発明にとって興味ある従来の積層型LC複合部品に備える積層体1を示す断面図である。
【符号の説明】
11,71 積層型LC複合部品
12,51,61,72,91 積層体
13,73 セラミック層
14,74,75 インダクタ部分
15,16,76 コンデンサ部分
17〜22,17a〜22a,77,78 コイル導体
23〜26,79,80 コンデンサ導体
Claims (5)
- 複数の積層されたセラミック層をもって構成される積層体を備え、
前記積層体には、インダクタ部分とコンデンサ部分とが積層方向に関して中間層を介して互いに隣り合うように位置され、
前記インダクタ部分には、前記セラミック層間の複数の界面に沿ってスパイラル状に延びる複数のコイル導体が形成され、前記コイル導体は1つの前記界面ごとに1ターン以上を与えるスパイラル状を有していて、前記コンデンサ部分には、前記セラミック層間の複数の界面に沿って延びる複数のコンデンサ導体が形成され、
前記積層体は、前記コイル導体および前記コンデンサ導体とともに焼成されることによって得られる、積層型LC複合部品であって、
複数の前記コイル導体のうち、前記コンデンサ部分に比較的近い前記セラミック層間の界面に沿って延びる前記コイル導体は、前記コンデンサ部分に比較的遠い前記セラミック層間の界面に沿って延びる前記コイル導体に比べて、そのターン数がより少なくされることによって、その総面積がより小さくされていることを特徴とするとともに、
前記コイル導体の積層方向に重なる数は、前記積層体の外周側ほど、より少なくされていることを特徴とする、積層型LC複合部品。 - 前記コンデンサ部分に比較的近い前記セラミック層間の界面に沿って延びる前記コイル導体は、前記コンデンサ部分に比較的遠い前記セラミック層間の界面に沿って延びる前記コイル導体に比べて、その幅方向寸法がより小さくされていることを特徴とする、請求項1に記載の積層型LC複合部品。
- 前記インダクタ部分は、第1および第2の前記コンデンサ部分の間に挟まれるように位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層型LC複合部品。
- 前記インダクタ部分は、前記積層体の積層方向の端部に位置し、複数の前記コイル導体のうち、前記積層体の端部に比較的近い前記セラミック層間の界面に沿って延びる前記コイル導体は、前記積層体の端部に比較的遠い前記セラミック層間の界面に沿って延びる前記コイル導体に比べて、そのターン数がより少なくされることによって、その総面積がより小さくされていることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層型LC複合部品。
- 前記インダクタ部分に備える、前記コンデンサ部分に最も近い前記コイル導体と前記コンデンサ部分に備える、前記インダクタ部分に最も近い前記コンデンサ導体との間の距離は、150μm以下であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層型LC複合部品。
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