JP4351609B2 - アルミニウム合金、耐熱高強度アルミニウム合金部品及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金、耐熱高強度アルミニウム合金部品及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、100〜150℃の高温環境下にて使用されるエンジン部品、フレーム部品等に好適に使用可能なアルミニウム合金、耐熱高強度アルミニウム合金部品及びその製造方法に関する。
従来、地球環境保護の観点から、例えば車両等の燃費向上を目的として、エンジン部品及びフレーム部品等を構成している材料を、鉄鋼材料からアルミニウムやマグネシウムといった軽合金材料へ置換することが検討、実施されている。そして、軽合金材料を適用する際には、部品の全体的な剛性を鉄鋼材料と同等にするために、部品各部の断面積を拡大することが行われていた。
しかしながら、従来の軽合金材料をエンジン部品等に適用した際、その部品の使用温度雰囲気も無視出来ない要素であり、部品が使用される温度雰囲気によっては、前記のように断面積を拡大させて部品全体の剛性を鉄鋼材料と同等以上にしても、その部品の要求強度に対し、部品の強度が大幅に低下するという問題があった。
これは、以下のような理由による。例えば、エンジン内部の冷却油温雰囲気(100〜150℃)に晒される部品において、部品を鉄鋼材料で構成した場合には、鉄鋼材料の融点が1000℃以上と高いため、100〜150℃程度の比較的低い温度域では、素材の強度特性の低下は殆ど生じない。しかしながら、部品を従来の軽合金材料で構成した場合には、従来の軽合金材料の融点が約660℃前後と低いため、100〜150℃という温度域では、素材の強度特性が著しく低下してしまうためである。したがって、部品の使用温度雰囲気(100〜150℃)においても素材の強度特性が低下しない、鉄鋼材料に代わる軽合金材料の開発が望まれていた。
ところで、このような軽合金材料からなる素材の100〜150℃における強度特性の低下を防止するために、軽合金材料からなる素材に熱処理を施すことが広く知られており、その多くは溶体化処理(450℃〜530℃にて数時間の等温保持)を伴うものである。例えば、特許文献1、2には、素材としてのアルミニウム合金板(鋳物)を所定量のCu、Si、Mg、Agを含有するアルミニウム合金から構成し、所定条件で溶体化処理、焼き戻し(人工時効処理)することによって、耐クリープ性が高い、または強度の高いものが得られることが記載されている。
特開平9−165640号公報(段落番号0018、0039、0040、0045、0046、0055) 特開2004−91822号公報(段落番号0006、0009、0019〜0021)
しかしながら、前記従来の軽合金材料をエンジン部品等の製造に適用した場合には、以下のような問題が発生する。第1に、鋳造等の成形後に前記の溶体化処理を施すと、素材内部に鋳造欠陥として存在していた鋳巣や引け巣が熱膨張を起こし、素材に膨れやブリスタとなって現れ、素材外観を著しく悪化させるだけでなく、強度特性をも著しく低下させる。そして、素材が押出部材や展伸部材、鍛造部材である場合には、前記の鋳巣や引け巣の存在は無視出来るほど微少であるが、素材が鋳造部材、或いはダイカスト部材である場合には、前記の鋳巣や引け巣が顕著で、素材外観や強度特性に悪影響を与えるものとなる。
また、第2に、前記の溶体化処理後に人工時効処理を施すと、以下のような問題が発生する。すなわち、溶体化処理過程では、析出元素は、溶媒となる母材マトリクスヘ固溶し、その後の急冷処理にて、常温下でもその固溶濃度が維持される。そして、その後の人工時効処理にて、マトリクス内に必要な量の元素が析出する。この人工時効処理の際、マトリクス内部には析出物の粗大化に伴う大きな歪みが生じ、この歪みを維持することで強度特性を向上させることができる。しかしながら、その反面、この析出物の粗大化に伴う歪みにより、素材の寸法成長が発生する。
これらの観点から、複雑形状かつ素材強度および寸法精度の要求が非常に厳しいエンジン部品の製造においては、溶体化処理及び人工時効処理を最適に実施することは、非常に困難である。そのため、軽合金材料を適用してエンジン部品を製造する際には、鋳造もしくはダイカスト製法にて製造し、併せて無熱処理、或いは溶体化処理を伴わない人工時効処理のみが施され、エンジン部品の強度特性としては、中程度を余儀なくされることが多い。
本発明は前記の問題に鑑みてなされたもので、本発明は、エンジン内の油温相当である100〜150℃における強度特性(耐力、疲労強度、伸び)を兼ね揃え、かつ、寸法安定性及び耐摩耗性に優れたアルミニウム合金及び耐熱高強度アルミニウム合金部品を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明のアルミニウム合金は、Cu:1.5質量%以上3.8質量%未満、Si:7.5〜12.0質量%、Mg:0.7〜1.5質量%、Ag:0.1〜0.5質量%、Zn:0.5〜4.0質量%、Ca:50〜200ppmを含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
こうように構成すれば、アルミニウム合金が所定量のCu、Si、Mg及びAgを含有することによって、アルミニウム合金の鋳造性および加工性が向上すると共に、初晶Siの晶出を抑制し、Al、Cu、Mg、Agからなる析出強化相(Ω相)が形成される。それによって、溶体化処理を伴わない、人工時効処理のみで、アルミニウム合金の高温環境下での強度特性(耐力、疲労強度、伸び)及び耐摩耗性が向上する。また、アルミニウム合金のAlマトリクス内に生じる歪みに起因した寸法成長が抑制される。また、Znを更に含むように構成すれば、アルミニウム合金の強度がより一層高くなる。さらに、Caを更に含むように構成すれば、共晶Siが微細化し、アルミニウム合金の伸びがより一層大きくなる。
また、本発明のアルミニウム合金は、前記組成のアルミニウム合金に、Ti:0.02〜0.2質量%を更に含むことを特徴とする。このように構成すれば、Alマトリクスの過度な成長が抑えられ、結晶粒が微細化し、アルミニウム合金の耐力が高くなる。
また、本発明のアルミニウム合金は、前記組成のアルミニウム合金に、JIS規定のT5熱処理が施されたことを特徴とする。このように構成すれば、アルミニウム合金に溶体化処理を伴わない、人工時効処理のみの熱処理(T5熱処理)が施されることによって、溶体化処理に起因する鋳造欠陥の熱膨張が発生せず、アルミニウム合金の強度特性が向上する。
また、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品は、前記のアルミニウム合金から成形されたことを特徴とする。このように構成すれば、アルミニウム合金部品の高温環境下での強度特性及び耐磨耗性が向上すると共に、寸法成長が抑制される。
さらに、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品の製造方法は、前記のアルミニウム合金でダイカスト成形し、その後、JIS規定のT5熱処理が施されたことを特徴とする。このように構成すれば、前記アルミニウム合金によって、アルミニウム合金部品の高温環境下での強度特性及び耐磨耗性が向上すると共に、寸法成長が抑制される。また、ダイカスト成形及びT5熱処理によって、凝固時間が短縮されると共に、手間のかかる溶体化処理が省略される。
本発明のアルミニウム合金は、強度と伸びという、一般的に相反関係となっている特性を両立して向上させることができ、100℃〜150℃という中程度の高温環境下において、高強度、高靭性を有し、かつ寸法安定性、耐摩耗性に優れている。そして、構造部品用材料、例えば、高速移動体の構造部品用、内燃機関部品用および過給器部品用、特にエンジン内部のロッカーアーム用材料として使用できる。
また、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品は、同様に、高温環境下において、高強度、高靭性を有し、かつ寸法安定性、耐摩耗性に優れている。そして、構造部品、例えば、高速移動体の構造部品、内燃機関部品および過給器部品、特にエンジン内部のロッカーアームとして使用できる。
さらに、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品の製造方法は、同様に、高温環境下において、高強度、高靭性を有し、かつ寸法安定性、耐摩耗性に優れたものが製造可能となると共に、生産性が向上し、製造コストを下げることが可能となる。
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明のアルミニウム合金の目的としている、100〜150℃における強度特性(耐力、疲労強度、伸び)及び寸法安定性を改善するには、その温度雰囲気において、アルミニウム合金が如何なる破壊形態をとるのかを把握しておく必要がある。
広く一般に知られている結果として、アルミニウム合金においては、その合金融点(その多くは約920K前後)の約二分の一(約460K前後、すなわち190℃前後)の温度を境にして、母材結晶内部より破壊が起こる粒内破壊形態から、結晶粒界より破壊が起こる粒界破壊形態へと破壊形態が変位するという実験事実があるため、本発明においては、前記の粒内破壊を抑制する材料組成を検討するに至った。そして、結晶粒内を強化する材料組成とした。
すなわち、本発明のアルミニウム合金は、Cu:1.5質量%以上3.8質量%未満、Si:7.5〜12.0質量%、Mg:0.3〜1.5質量%、Ag:0.1〜0.5質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる。また、本発明のアルミニウム合金は、前記の組成を有するアルミニウム合金に、Zn:0.5〜4.0質量%、Ca、Na、Sr、Sbのうち少なくとも1種の元素(Caが望ましい):30〜300ppm及びTi:0.02〜0.2質量%のうちの少なくとも1種の元素を更に含むことが望ましい。以下に各元素の作用及び成分範囲について説明する。
1.Cuの作用と成分範囲
Cuは凝固収縮、寸法成長、強度に影響を与え、3.8質量%以上含有すると、鋳造時の凝固収縮が著しく、また、熱処理時の寸法成長も大きい。また、Cuは1.5質量%を下回ると、今度は熱処理時の析出硬化の寄与が薄い。すなわち、本発明のCuの成分範囲は、1.5質量%以上3.8質量%未満である。また、Cuは、2.0〜3.0質量%であることが望ましい(ここで、「〜」は以上、以下を意味し、2.0質量%以上3.0質量%以下である。後記する「〜」も同義である。)。
2.Siの作用と成分範囲
Siは鋳造性、耐摩耗性、加工性に影響を与え、共晶組成付近が最も鋳造性が良いことが知られているが、多元系のアルミニウム合金に対し、共晶組成までSiを含有すると、初晶Siがまばらに晶出してしまう。この初晶SiはAlマトリクス側との接合性が悪く、界面にて割れが発生し易い為に、伸び低下の原因となりやすい。よって、本発明におけるSi含有量の上限は、初晶Siが全く晶出しない組成として、12.0質量%までとした。また、Si含有量が少ないと、今度は組織の均一分散性が悪化し耐摩耗性の低下を招き、強度も低下する、そして、7.5質量%を下回ると顕著になることから、Si含有量の下限を7.5質量%とした。すなわち、本発明のSiの成分範囲は、7.5〜12.0質量%である。また、耐摩耗性を考慮すると、Siは、10.5〜11.5質量%であることが望ましい。
3.Mgの作用と成分範囲
Mgは鋳造割れ、強度に影響を与え、1.5質量%を超えて含有すると鋳造時の割れが著しく、健全な製品を得ることが困難となる。また、Mgは0.3質量%未満だと、Al、Cu、Agとの析出強化相(Ω相)が不十分となり、十分な強化は期待できない。すなわち、本発明のMgの成分範囲は、0.3〜1.5質量%である。また、Mgは、最も効果のある0.7〜1.5質量%であることが望ましい。
4.Agの作用と成分範囲
Agは本発明合金成分の中で、Al、Cu、Mgとの析出強化相(Ω相)を作り、強度への寄与が高い。しかしながら、AgはΩ相として析出させる目的では、0.5質量%を超えて含有しても効果は薄く、合金コストが高くなるだけである。また、Agは0.1質量%未満では、Ω相が不十分となり、十分な強化は期待できない。さらに、Agを添加しないと、熱処理によりAl−Cu系のθ相析出が起こり、その際に格子歪みが大きくなるために寸法成長が発生する。しかしながら、Agの添加によりΩ相が析出し、このΩ相は格子歪みが少なく、かつ、熱的に安定相であるために、Agを添加しない場合よりも寸法成長が発生しにくくなる。すなわち、本発明のAgの成分範囲は、0.1〜0.5質量%である。また、コスト面も考慮して、Agは、0.1〜0.3質量%であることが望ましい。
5.Znの作用と成分範囲
Znは湯流れ性、強度に影響を与え、5.0質量%程度までは鋳造性に影響を及ぼさないが、4.0質量%を超えて含有すると強度低下が起こり、0.5質量%未満でも強度低下が起こる。すなわち、本発明のZnの成分範囲は、0.5〜4.0質量%である。また、Znは、強度的に最も効果のある2.0〜3.5質量%であることが望ましい。
6.Ca、Na、Sr、Sbの作用と成分範囲
Ca、Na、Sr、Sbは共晶Siを微細にする元素であり、これらの元素のうち少なくとも1種の元素を含有しない場合には、共晶Siは針状(立体的には板状)に晶出し、割れや伸び低下の原因となりやすい。しかしながら、これらの元素のうち少なくとも1種の元素を含有する場合には、これらの元素は、共晶Siの成長界面へ濃縮した形で存在し(成長界面を三次元的に取り囲み)、板状への成長を抑制し、最終的に微細な樹脂状(ネットワーク状)組織を持った共晶Siにする働きがある。このように共晶Siが樹脂状組織となることで、界面割れが発生しにくくなり、伸びの向上が期待できる共に、組織が均一分散し、耐摩耗性が向上する。
これらの元素のうち少なくとも1種の元素は、300ppmを超えて含有すると、余剰となり、MgやZnとの脆弱な化合物が晶出する為、強度低下を招く。また、これらの元素のうち少なくとも1種の元素は、30ppm未満では、十分な共晶Siの微細化効果が得られない。すなわち、本発明のCa、Na、Sr、Sbのうち少なくとも1種の元素の成分範囲は、30〜300ppmである。また、Ca、Na、Sr、Sbのうち少なくとも1種の元素は、50〜200ppmであることが望ましい。
また、Ca、Na、Sr、Sbのうち、Naは非常に活性な元素であることから、扱いが困難であり、Srは粒界へ化合物を形成し易いために、伸び低下の原因となりやすく、Sbは今後、有害物質指定となる可能性がある。よって、Caを用いることが最も望ましい。
7.Tiの作用と成分範囲
TiはAlに対し、包晶系の元素であり、Alが凝固する際の有効異質核となる。したがって、Tiを含有すると、結晶核が多く存在することとなり、Alマトリクスの過度な成長が抑えられ、結果的に結晶粒が微細化され、耐力が改善される。しかしながら、Tiは、0.2質量%を超えて含有しても、TiのAlへの溶解度が非常に少ないため、微細化の向上効果は得られない。逆に、粒界へTi化合物として晶出してしまうため、伸び低下の原因となる。また、Tiは、0.02質量%未満では、十分な微細化効果は得られない。すなわち、本発明のTiの成分範囲は、0.02〜0.2質量%である。また、Tiは、0.05〜0.15質量%であることが望ましい。
8.不可避的不純物
本発明のアルミニウム合金は、不可避的不純物として、Feが1.3質量%以下、Mnが0.5質量%以下、Niが0.5質量%以下、Snが0.3質量%以下含有されても、本発明の効果が妨げられるものではなく、このような不可避的不純物の含有は許容される。
次に、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品は、前記アルミニウム合金から成形されたもので、100〜150℃という高温環境下において、高強度、高靭性を必要とし、かつ寸法安定性が重視される構造部品、具体的には、車両等の高速移動体の構造部品(例えば、フレーム部品)、内燃機関部品(エンジン内部のロッカーアーム)および過給器部品に使用される。そして、成形方法としては、従来公知の成形方法を使用することが可能であり、耐熱高強度アルミニウム合金部品の部品形状、部品強度等を考慮して、例えば、押出、圧延、鍛造、鋳造、ダイカスト等から適宜選択され、アルミニウム合金の凝固時間が短く、生産性の高いダイカストが好ましい。
また、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品は、前記の成形後に熱処理が施されたものが好ましい。また、熱処理は、JISH001に規定する、人工時効処理のみを行うT5熱処理が好ましい。そして、人工時効処理の条件は、耐熱高強度アルミニウム合金部品の肉厚、大きさ等によって適宜調整し、例えば、200〜250℃、1〜5時間が好ましい。
さらに、本発明の耐熱高強度アルミニウム合金部品においては、前記のアルミニウム合金から耐熱高強度アルミニウム合金部品が製造されることによって、従来の耐熱高強度アルミニウム合金部品の製造において実施されていたJISH001に規定する溶体化処理及び人工時効処理を行うT6処理ではなく、人工時効処理のみを行う前記のT5熱処理で耐熱高強度アルミニウム合金部品を製造することが可能となり、鋳造欠陥の熱膨張に起因した素材の膨れやブリスタの発生しやすい溶体化処理を省略することが可能となる。その結果、高温環境下における高強度、高靭性および寸法安定性を有する耐熱高強度アルミニウム合金部品を得ることができる。
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
参考例1〜11、実施例1〜3
表1に示す成分組成を持ったAl合金溶湯14種を約700℃にて溶解・保持し、ダイカストにて丸棒試験片形状の金型へ射出し、得られたダイカスト素材をT5熱処理(230℃×3時間)した。
(比較例1〜14)
参考例1〜11、実施例1〜3の比較対照として、表2に示す、比較例1としてAl−Si系ダイカスト用合金として最も多く使用されているJIS規定のADC12合金溶湯、比較例2〜14として本発明の成分範囲外の成分組成を有するAl合金溶湯13種を用いて、参考例1〜11、実施例1〜3と同様にしてダイカスト素材を作製し、得られたダイカスト素材をT5熱処理(230℃×3時間)した。
前記の参考例1〜11、実施例1〜3、比較例1〜14のT5熱処理後のダイカスト素材を用いて、以下の方法で、内部品質、150℃雰囲気における強度特性及び0〜400時間までの試験片長手方向の寸法成長、耐摩耗性について確認した。
(内部品質)
T5熱処理後のダイカスト素材について、目視にて凝固収縮、割れの発生を確認し、その結果を表1、表2に示す。なお、凝固収縮、割れの発生のないものを「○」で良好、凝固収縮、割れの発生がみられるものを「△」でやや不良、凝固収縮、割れの発生が著しいものを「×」で不良とした。
(150℃強度特性)
T5熱処理後のダイカスト素材を旋削加工し、引張試験片および疲労試験片とした。これらの試験片を150℃にて100hrソーキングした後に、それぞれ150℃にて、JISZ2241に規定する引張試験、及びJISZ2286に規定する回転曲げ疲労試験を行った。その結果を表1、表2に示す。なお、表2において、0.2%耐力及び伸びについては平均値を、疲労強度については、試験繰返し数1×107におけるP=0.5(破断確率50%)の疲労強度とした。そして、0.2%耐力については、190MPa以上を良好、190MPa未満を不良とした。また、疲労強度については、96MPa以上を良好、96MPa未満を不良とした。さらに、伸びについては、0.4%以上を良好、0.4%未満を不良とした。
(耐摩耗性)
実施例、比較例1及び比較例2のT5熱処理後のダイカスト素材を8mm×10mm×50mmの板状に旋削加工し、往復摺動試験機にて耐摩耗性を検証した。具体的には、T5熱処理後のダイカスト素材を、JIS規定のS58C鉄鋼材上で、測定温度150℃、荷重5Nまたは30Nを負荷しながら、150、300または600回往復摺動し、その際の摩耗量を測定した。その結果を図2に示す。
(寸法成長)
実施例、比較例1のダイカスト素材からφ10mm×25mmの丸棒試験片を切り出し、150℃雰囲気における、0〜400時間までの試験片長手方向の寸法成長を確認した。その結果を図1に示す。
Figure 0004351609
Figure 0004351609
表1、表2の結果から、参考例1〜11、実施例1〜3の本発明のアルミニウム合金は、内部品質、150℃強度特性(0.2%耐力、疲労強度、伸び)の全てが良好であった。また、比較例1〜13のアルミニウム合金は、内部品質、150℃強度特性(0.2%耐力、疲労強度、伸び)の少なくとも1つが不良であり、比較例14はAg含有量が多いため、アルミニウム合金のコストが高くなり実用性に欠けるものであった。また、図1の結果から、本発明のアルミニウム合金(実施例)は、比較例のアルミニウム合金(比較例1)に比べて、寸法成長が小さいものであった。さらに、図2の結果から、本発明のアルミニウム合金(実施例)は、比較例のアルミニウム合金(比較例1及び比較例2)に比べて、摩耗量が少ないものであった。
したがって、本発明のアルミニウム合金は、高温環境下において高強度、高靭性を有し、耐摩耗性及び寸法安定性においても優れていることが確認された。
150℃における寸法成長の推移を示すグラフである。 150℃における耐摩耗性を示し、(a)は荷重5N、(b)は荷重30Nでの摩耗量の測定結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. Cu:1.5質量%以上3.8質量%未満、Si:7.5〜12.0質量%、Mg:0.7〜1.5質量%、Ag:0.1〜0.5質量%、Zn:0.5〜4.0質量%、Ca:50〜200ppmを含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム合金。
  2. 請求項1に記載のアルミニウム合金に、Ti:0.02〜0.2質量%を更に含むことを特徴とするアルミニウム合金。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金に、JIS規定のT5熱処理が施されたことを特徴とするアルミニウム合金。
  4. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のアルミニウム合金から成形されたことを特徴とする耐熱高強度アルミニウム合金部品。
  5. 請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のアルミニウム合金でダイカスト成形し、その後、JIS規定のT5熱処理が施されたことを特徴とする耐熱高強度アルミニウム合金部品の製造方法。
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