JP4350958B2 - セラミックスシートの押し出し成形方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスシートの押し出し成形方法及びその装置、特に例えば燃料電池の電解質やセパレータなどに使用される極薄・高精度のセラミックスシートを押し出し成形方法で製造するその製造方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、燃料電池の研究開発、実用化が盛んに行われており、その燃料電池の部品として、ランタン系材料やジルコニア系材料などの厚みが、0.1〜1.5mm±0.05mmの極めて薄くしかも高精度のセラミックスシートが、その電解質やセパレータなどに使用されてきている。
【0003】
特許文献1に、繊維補強セメントの製造方法として、押し出し成形法によりセメントをパイプ状に押し出すと同時に軸方向に切開し、シート状に広げる技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−90204号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、厚みが20mm程度の極めて厚いセメントのシート状成形方法であり、特許文献1に開示されているシート状成形方法では、例えば燃料電池の電解質やセパレータなどで使用する際に要求されるランタン系材料やジルコニア系材料などの厚みが0.1〜1.5mm±0.05mmの基準を満足するに足る高精度を保ちつつ、しかもうねり、切れ、曲がりのないセラミックスシートを得ることは、困難であった。
【0006】
つまり、特許文献1に開示されたセメントをパイプ状に押し出すと同時に軸方向に切開し、シート状に広げる技法を、そのまま厚みが0.1〜1.5mm±0.05mmの極めて薄いセラミックスシートに転用して製造してみても、図16に示されているように、シート状に広げる前段階のパイプ成形口金51から押し出されるパイプ状のセラミックス成形体52にはうねり53が生じると共に、図示されていないがセラミックスシートに、切れ、曲がりが発生し、燃料電池の電解質やセパレータなどの使用に要求される高精度のセラミックスシートを成形することができなかった。
【0007】
上記セラミックスシートに、うねり、切れ、曲がりが発生する原因を追求した結果、押し出し圧力分布が均一でないことによるものであることが判明し、うねり、切れ、曲がりの発生原因は押し出し流量のバラツキに起因することが解明された。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、特許文献1に開示されたセメントをパイプ状に押し出すと同時に軸方向に切開し、シート状に広げる技法に技術的改良を加え、厚みが20mm程度の厚いシートの成形では考慮するには及ばないが、極めて薄いセラミックスシートを製造する際に発生するうねり、切れ、曲がり等の種々の技術的欠陥を克服し、燃料電池の電解質やセパレータなどの使用に要求される厚みが0.1〜1.5mm±0.05mmの高精度を保ちつつ、うねり、切れ、曲がりのないセラミックスシートを連続的に成形することができるセラミックスシートの押し出し成形方法及びその装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このために、本発明のセラミックスシートの押し出し成形方法は、押し出し成形法によりセラミックス坏土をパイプ状に押し出すと共にその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形方法において、セラミックス坏土を口金でパイプ状に押し出すに当たって、セラミックス成形体を形成する口金の環状成形部位に流れるセラミックス坏土の流量が均一化されるべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構を介して押し出され、或いはさらに、セラミックス成形体を形成する口金の環状成形部位に流れるセラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する成形流路にセラミックス坏土の押し出し圧力を均一化する溜め部を介して押し出されるように制御されてなり、パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴としている。
【0010】
そして、本発明のセラミックスシートの押し出し成形装置は、セラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する口金を備え、シリンダ内に設けられた押し出し機構でセラミックス坏土を口金に押し出すと共に、口金から射出されるパイプ状のセラミックス成形体をその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形装置において、シリンダ内に設けられた押し出し機構で押し出される環状成形部位でのセラミックス坏土の押し出し流量を均一化するべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構が口金に設けられてなり、パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のセラミックスシートの押し出し成形装置は、セラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する口金を備え、シリンダ内に設けられた押し出し機構でセラミックス坏土を口金に押し出すと共に、口金から射出されるパイプ状のセラミックス成形体をその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形装置において、シリンダ内に設けられた押し出し機構で押し出される環状成形部位でのセラミックス坏土の押し出し流量を均一化するべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構が口金に設けられてなると共に、セラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する成形流路にセラミックス坏土の押し出し圧力を均一化する溜め部が口金に設けられてなり、パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴としている。
【0012】
そして、セラミックスシートの押し出し成形が水平方向で行われる場合には、上記口金は、その射出部に、押し出されるセラミックス成形体を保持する支え冶具を備えている。
【0013】
また、上記支え冶具は、先端部が閉鎖された円筒状のその材質がポーラス材でなり、口金内に設けられた通気穴を介して送られ、ポーラス材の表面から吹き出される空気でセラミックス成形体と支え冶具との摩擦抵抗を低減せしめてもよく、さらにその表面に空気を吹き出す複数個の穴が形成されてなり、当該穴から吹き出される空気で、セラミックス成形体と支え冶具との摩擦抵抗を低減せしめてもよい。
【0014】
セラミックスシートの押し出し成形が水平方向で行われる場合には、上記支え冶具は、その先端部に、セラミックス成形体を連続して切開し、シート状に広げる開き装置を備えている。
【0015】
セラミックスシートの押し出し成形が重力方向で行われる場合には、水平方向のシリンダと口金との間に、セラミックス坏土の押し出し方向を水平方向から重力方向に変える方向変換冶具を備えている。
【0016】
このとき、すなわちセラミックスシートの押し出し成形が重力方向で行われる場合には、上記口金は、その射出部の次段に、セラミックス成形体を連続して切開し、シート状に広げる開き装置を備えている。
【0017】
口金に設けられた押し出し流量調整機構による調整で、セラミックス坏土の押し出し流量が環状成形部位で均一化して押し出されるように制御され、シート状に広げられる前の段階のパイプ状のセラミックス成形体にうねり、切れ、曲がりなどの発生を抑制することができる。開き装置を有するので、高精度の極薄セラミックスシートを連続的に製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の主要部分の一実施例構成断面図を示している。
【0019】
同図において、セラミックス坏土1を口金2に押し流す押流し機構3の先端部を構成するシリンダ4は、その内部にスクリュウ5が設けられていて、スクリュウ5の回転によってセラミックス坏土1が口金2側に押し流される。
【0020】
口金2には、フランジ6を有する円柱部7のその軸の先端中心部に窪んだ形態で、円錐体8が形成されている。円錐体8の根元には円錐体8の軸を中心とする同一円上に複数個の裏穴9が穿設され、これらの各裏穴9に連なってセラミックス坏土1をパイプ状のセラミックス成形体10に形成する環状成形部位の環状スリット11が設けられている。複数個の各裏穴9と環状スリット11との連結部分には、押し出し材料の溜め部12が設けられ、成形する際押し出し圧力を均一化するようになっている。この溜め部12は必ずしも設けなくてはならないものではない。そしてこの複数個の各裏穴9と環状スリット11との連結部分や溜め部12については、後程詳しく説明する。
【0021】
口金2のフランジ6は、押流し機構3のシリンダ4に設けられたフランジ13に固着されるようなっている。口金2の押流し機構3と反対側には、環状スリット11から押し出されたパイプ状のセラミックス成形体10の形状が自重で崩れないように、すなわちセラミックス成形体10の形状変形から生じるうねり、切れ、曲がりが生じないように円筒状の支え冶具14が取り付けられている。
【0022】
裏穴9の入口部、すなわち円錐体8の根元には、それぞれの裏穴9に対応して、裏穴9に流入するセラミックス坏土1の坏土量を調整する押し出し流量調整機構15が配設されている。この押し出し流量調整機構15として、上記裏穴9の入口部、すなわち円錐体8の根元位置に穿設されたねじ穴に螺合するネジ16が用いられ、ネジ16を回転することにより裏穴9の入口部を開閉し、裏穴9に流入するセラミックス坏土1の坏土量を微調整することができるようになっている。
【0023】
複数個の各裏穴9に対応してこの押し出し流量調整機構15をそれぞれ設けたことにより、押し出し材料の流動性が部分的に変わっても、裏穴9に流入するセラミックス坏土1の坏土量を調整するネジ16の回転で、環状スリット11から射出される押し出し材料の押し出し速度を環状スリット11全体にわたって均一にすることができ、例えば0.5〜1.5mmの極めて薄い厚みのパイプ状のセラミックス成形体10の成形において、その押し出し速度の不均一さから生じるうねり、曲がり、切れの発生がない成形が可能となる。
【0024】
図2は本発明の押し出し流量調整機構を備えた口金の一実施例組立図を示している。
【0025】
同図において、口金2は、フランジ部材17、流量調整部材18、外径形成部材19及び内径形成部材20を備えると共に、流量調整部材18に螺合され回転自在に設けられたネジ16、そしてシリンダ4のフランジ13に対し上記4つのフランジ部材17、流量調整部材18、外径形成部材19及び内径形成部材20を一体化して取り付けるネジなどを備えて構成される。
【0026】
フランジ部材17は、図1に示されたフランジ6を形成するため略環状形状をなしている。
【0027】
流量調整部材18は、図3の図4におけるAOB断面図、図4の正面図、図5の図4におけるその裏面図に示されているように、中心部に突出した形態で形成された円錐体8とこの円錐体8に連なっている円板部22とを具備した形状を有している。円錐体8の根元には当該円錐体8の軸を中心とする同一円上に複数個、この実施例では18個の裏穴9が穿設され、これらの各裏穴9に対応し、かつ中心部に形成された円錐体8の根元位置にくるようにして、円板部22の円中心から放射状にねじ穴23が、円板部22にそれぞれ設けられている。円錐体8と反対側の円板部22には、上記同一円上に設けられた複数個の各裏穴9と連結する円形の、断面が台形をなす連結溝24が設けられている。この円形の連結溝24と各裏穴9とが連結し連通する位置を連結部分という。また円板部22には嵌合凹部25が設けられると共にその中心部にねじ穴26が切られている。27は取り付けねじ用穴である。
【0028】
外径形成部材19は、図6の正面断面図、図7のその右側面図に示されているように、リング形状を有している。外径形成部材19の中央部に設けられた直径D1の穴28には、図6図示の如くテーパ部29が穴28の全周にわたって形成されている。30は取り付けねじ用穴である。
【0029】
内径形成部材20は、図8の正面断面図、図9のその右側面図に示されているように、直径D2の円形状をなし、中央部に取り付けねじ用穴31が設けられると共に、図3に示された嵌合凹部25と係合し環状スリット11を形成する嵌合凸部32と2つのねじ穴33とを有し、図8図示の如くテーパ部34が外周面全周にわたって形成されている。
【0030】
このような形状を有する4つのフランジ部材17、流量調整部材18、外径形成部材19及び内径形成部材20を一体化して取り付けるネジでシリンダ4のフランジ13に取り付けると、一体化された4つのフランジ部材17、流量調整部材18、外径形成部材19及び内径形成部材20が、図1図示の口金2を構成する。但し流量調整部材18の、断面が台形の連結溝24、外径形成部材19に形成されたテーパ部29及び内径形成部材20に形成されたテーパ部34によって、円板部22の円形の連結溝24と各裏穴9とが連結し連通する連結部分には、図2図示の如く紡錘形状の溜め部12が形成され、また外径形成部材19の中央部に設けられた直径D1の穴28と直径D2の内径形成部材20の外周面とによって、セラミックス成形体10の厚みを決定する環状スリット11が形成される。この説明から明らかなように、内径形成部材20の直径D2を変えることにより、セラミックス成形体10の厚みを自由に設定することができる。
【0031】
図10はパイプ状のセラミックス成形体をシート状に広げる開き冶具の一実施例説明図を示している。
【0032】
開き冶具35は図10図示の形状を備えており、その一端部36は支え冶具14に連結されるようになっている。開き冶具35の一端部36から他端にかけてテーパ状に広がる流線形状部37が形成されている。パイプ状に成形されたセラミックス成形体10が当該開き冶具35に押し出され、カッタ38によって連続的に切り開かれると、テーパ状に広がる流線形状部37によって徐々に広げられ、シート状にまで広げられるようになっている。
【0033】
カッタ38の刃は、極薄のセラミックス成形体を切り開くために、刃先の角度及びセラミックス成形体10に対する設置角度が限定される。すなわち刃先の角度は0.1〜0.3度が望ましく、またセラミックス成形体10に対する設置角度は10〜20度とすることが望ましい。又カッタ38の刃に換え、ピアノ線をセットして切断することもできる。
【0034】
このようにパイプ状からシート状に切り開く際に、セラミックス成形体10は常にテーパ状に広がる流線形状部37に沿った支えとなっており、シートに切り開く形状変形の際に生じる虞のあるうねりや曲がりを防止することもできる。
【0035】
図11は本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の主要構成図を用いてセラミックス坏土1がパイプ状のセラミックス成形体を経てシートに成形される工程を簡単に説明する。
【0036】
シリンダ4内のセラミックス坏土1は、スクリュウ5の回転によって口金2側に押し流される。口金2に導入されたセラミックス坏土1は、各押流し機構3を経て対応の裏穴9に入り、溜め部12に一時的に貯蔵され、その後環状スリット11に入り、パイプ状のセラミックス成形体10に形成される。環状スリット11でパイプ状に形成されたセラミックス成形体10は口金2から押し出され、円筒状の支え冶具14に支えられながら更に押し出される。支え冶具14の適宜の位置に配設されているカッタ38によって切り開かれると、次段に設けられている開き冶具35に到達し、開き冶具35のテーパ状に広がる流線形状部37によって徐々に広げられ、シート状にまで広げられる。
【0037】
これらの工程は連続的に行うことができるので、連続したセラミックスシートを製造でき、必要に応じ所望の寸法に自動切断されることにより、正方形及び矩形のシートをも製造することができる。
【0038】
この説明から分かるように、口金2から射出されたセラミックス成形体10は、その形が崩れないように支え冶具14及び開き冶具35で保持されている構成となっている。
【0039】
そして裏穴9の入口部、すなわち円錐体8の根元には、それぞれの裏穴9に対応して、裏穴9に流入するセラミックス坏土1の坏土量を調整する押し出し流量調整機構15が配設されているので、ネジ16を回転することにより裏穴9の入口部を開閉し、裏穴9に流入するセラミックス坏土1の坏土量を微調整することができ、これにより押し出し材料の流動性が部分的に変わっても、環状スリット11から射出される押し出し材料の押し出し速度を環状スリット11の各所全体にわたって均一化すること、すなわちセラミックス坏土1の押し出し圧力分布の差異をなくすことができ、口金2から射出されるパイプ状のセラミックス成形体10にうねり、曲がり、切れのない成形が可能となる。
【0040】
図12は本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の他の実施例主要構成図を示している。
【0041】
同図において、図1と同じものは同一の符号が付されており、図1と異なる所は、支え冶具40の材質とその形状、そして口金2に通気穴41が設けられている点である。
【0042】
支え冶具40は先端部が閉鎖された円筒状を有しており、微小な穴を多数備えたポーラス材が用いられている。口金2内に設けられた通気穴41を介して送られてきた空気が、微小な穴を多数備えたポーラス材の支え冶具40内に導入されると、微小な穴を多数備えたポーラス材の表面から吹き出される空気で、セラミックス成形体10と支え冶具40との摩擦抵抗を低減せしめ、セラミックス成形体10が支え冶具40の表面に貼り付くことなくスムースに押し出されることができる。この支え冶具40の表面に貼り付くことのないスムースな押し出しにより、セラミックス成形体10にうねり、曲がりの発生をなくすことができる。
【0043】
図13は支え冶具の他の実施例説明図である。
【0044】
同図において、支え冶具42は、摩擦抵抗を減らすために穴43を設けても良い。また、当該穴43から吹き出される空気で、セラミックス成形体10と支え冶具42との摩擦抵抗を低減せしめ、セラミックス成形体10が支え冶具42の表面に貼り付くことなくスムースに押し出されることができる。この支え冶具42の形状は、図12の支え冶具40と同様に、先端部が閉鎖された円筒状である。この穴43を有する支え冶具42は、図12の支え冶具40と同様のポーラス材の材質を用いてもよく、また一般的な材質のものにも用いられる。また穴43の形状は丸穴の他、細長の角穴状でも、又格子状でも同等の効果を得ることができる。
【0045】
図14は本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の他の実施例主要構成図を示している。
【0046】
同図において、図1,図11と同じものは同一の符号が付されている。
【0047】
図14のものは、セラミックスシートの押し出し成形が重力方向で行われるときに用いられ、図1や図11では水平方向にセラミックスシートの押し出し成形がなされるその水平方向のシリンダ4と口金2との間に、セラミックス坏土1の押し出し方向を水平方向からその垂直方向、すなわち重力方向に変える方向変換冶具44を備えている。
【0048】
セラミックスシートの押し出し成形が重力方向で行われるこの場合には、自重による変形が少ないので、極く薄厚の成形に有効である。上記口金2には、図1や図12で示された支え冶具14や40を省略し、直接開き冶具35が取り付けられる。
【0049】
図15は本発明を用いて成形されたシートのシート厚に対する一実施例比較説明図を示している。
【0050】
同図において、その結果はランタン系材料やジルコニア系材料で実験が行われたもので、丸印は良好、すなわちうねり、切れ、曲がりのないセラミックスシートを成形することができることを表し、ばつ印は不良、すなわちうねり、切れ、曲がりの少なくともいずれか1つが発生するセラミックスシートの成形を表している。
【0051】
図15から、総てなしの従来技術を用いたものは、厚み5mmのシートを得るのが限界であったが、本発明の各種の装置や冶具を用いることによって、厚み0.2mmのシートを実現することができた。
【0052】
また、押し出し流量調整機構の有無によるシート成形の良否は、上記で説明の押し出し流量の不均一にあり、押し出し流量調整機構15を設けることにより、セラミックス坏土1の押し出し流量が均一化され、口金2から射出されるパイプ状のセラミックス成形体10の形成において、うねり、曲がり、切れのない成形が実現することを表している。
【0053】
押し出し流量調整機構15は、ネジ16によって裏穴9の入口部を塞ぐ面積を増減するようにしているが、当該押し出し流量調整機構15はネジ16よる機構に限られるものではなく、裏穴9の入口部を塞ぐ面積を増減させる機構であれば、どの様な機構であってもよい。
【0054】
なお、押し出し原料として、ランタン系材料やジルコニア系材料のセラミックスで説明してきたが、ランタン系材料やジルコニア系材料の他に窒化珪素、炭化珪素、アルミナ等の一般的なセラミックスや、燃料電池に使われる酸化ニッケル、金属ニッケル、酸化ニッケル・イットリア安定化ジルコニア(NiO−YSZ)、酸化ニッケル・セリウムサマリウムオキサイド(NiO−SDC)、酸化ニッケル・セリウムカドニウムオキサイド(NiO−GDC)、ランタンストロンチウムマグネシウムオキサイド、ランタンストロンマンガナイト、ランタンストロンコバルタイト、ランタンストロンチウムガリウムオキサイド、ランタンストロンチウムガリウムマグネシウムコバルタイトオキサイド、サマリウムコバルタイトが、好適に使用されるが、これらは本発明の実施の形態において適宜に選択されるものであって、これらに限定されるものではない。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、口金での押し出し流量を均一化するように押し出し流量調整機構を設けたので、シート状に広げる全段階としての口金から射出されるパイプ状のセラミックス成形体の成形において、うねり、曲がり、切れのない成形ができ、したがって、うねり、曲がり、切れのない極薄シートを高精度で成形することができる。
【0056】
口金の射出部に支え冶具を設けたので、パイプ状のセラミックス成形体の自重による形崩れをなくすことができ、したがって、うねり、曲がり、切れのない極薄シートを高精度で成形することができる。
【0057】
支え冶具にポーラス材を用い、ポーラス材から空気を吹き出すようにしたので、或いはパイプ状のセラミックス成形体が接触する支え冶具の表面に複数個の穴を設け、この穴から空気を吹き出すようにしたので、パイプ状のセラミックス成形体が支え冶具に貼り付くことがなくなり、また支え冶具とパイプ状のセラミックス成形体との摩擦抵抗が低減し、パイプ状のセラミックス成形体をスムースに押し出すことができ、したがって、うねり、曲がり、切れのない極薄シートを高精度で成形することができる。
【0058】
水平方向で処理される場合は、支え冶具の端末にカッタと開き冶具を設ることにより、パイプ状のセラミックス成形体を連続的に切開してシート状に広げることができ、シートの連続製造ができる。
【0059】
一方、方向変換冶具を設け、水平方向からその垂直方向の重力方向に押し流されるセラミックス坏土を口金に流入する重力方向の成形処理がされる場合には、パイプ状のセラミックス成形体は自重による変形が少ないので、支え冶具を用いることなく口金の射出部に直接開き冶具を設ることができ、より薄いシートを精度良く、連続的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の主要部分の一実施例構成断面図である。
【図2】本発明の押し出し流量調整機構を備えた口金の一実施例組立図である。
【図3】図4におけるAOB断面図である。
【図4】流量調整部材の正面図である。
【図5】図4におけるその裏面図である。
【図6】外径形成部材の正面断面図ある。
【図7】外径形成部材の右側面図である。
【図8】内径形成部材の正面断面図である。
【図9】内径形成部材の右側面図である。
【図10】パイプ状のセラミックス成形体をシート状に広げる開き冶具の一実施例説明図である。
【図11】本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の主要構成図である。
【図12】本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の他の実施例主要構成図である。
【図13】支え冶具の他の実施例説明図である。
【図14】本発明に係るセラミックスシートの押し出し成形装置の他の実施例主要構成図である。
【図15】本発明を用いて成形されたシートのシート厚に対する一実施例比較説明図である。
【図16】従来装置によるシート形成状況説明図である。
【符号の説明】
1 セラミックス坏土
2 口金
3 押流し機構
4 シリンダ
5 スクリュウ
9 裏穴
10 セラミックス成形体
11 環状スリット
12 溜め部
14 支え冶具
15 押し出し流量調整機構
16 ネジ
Claims (10)
- 押し出し成形法によりセラミックス坏土をパイプ状に押し出すと共にその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形方法において、
セラミックス坏土を口金でパイプ状に押し出すに当たって、セラミックス成形体を形成する口金の環状成形部位に流れるセラミックス坏土の流量が均一化されるべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構を介して押し出されるように制御されてなり、
パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴とするセラミックスシートの押し出し成形方法。 - 押し出し成形法によりセラミックス坏土をパイプ状に押し出すと共にその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形方法において、
セラミックス坏土を口金でパイプ状に押し出すに当たって、セラミックス成形体を形成する口金の環状成形部位に流れるセラミックス坏土の流量が均一化されるべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構と、セラミックス成形体を形成する口金の環状成形部位に流れるセラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する成形流路にセラミックス坏土の押し出し圧力を均一化する溜め部とを介して押し出されるように制御されてなり、
パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴とするセラミックスシートの押し出し成形方法。 - セラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する口金を備え、シリンダ内に設けられた押し出し機構でセラミックス坏土を口金に押し出すと共に、口金から射出されるパイプ状のセラミックス成形体をその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形装置において、
シリンダ内に設けられた押し出し機構で押し出される環状成形部位でのセラミックス坏土の押し出し流量を均一化するべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構が口金に設けられてなり、
パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴とするセラミックスシートの押し出し成形装置。 - セラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する口金を備え、シリンダ内に設けられた押し出し機構でセラミックス坏土を口金に押し出すと共に、口金から射出されるパイプ状のセラミックス成形体をその軸方向に切開し、シート状に成形するセラミックスシートの押し出し成形装置において、
シリンダ内に設けられた押し出し機構で押し出される環状成形部位でのセラミックス坏土の押し出し流量を均一化するべく、セラミックス坏土を取り込む複数個の流入口の実質的な断面積をそれぞれ自在に調整可能な押し出し流量調整機構が口金に設けられてなると共に、
セラミックス坏土を所定の厚さのパイプ状の形状に成形する成形流路にセラミックス坏土の押し出し圧力を均一化する溜め部が口金に設けられてなり、
パイプ状のセラミックス成形体を成形するようにしたことを特徴とするセラミックスシートの押し出し成形装置。 - 上記口金は、その射出部に、押し出されるセラミックス成形体を保持する支え冶具を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセラミックスシートの押し出し成形装置。
- 上記支え冶具は、先端部が閉鎖された円筒状のその材質がポーラス材でなり、口金内に設けられた通気穴を介して送られ、ポーラス材の表面から吹き出される空気でセラミックス成形体と支え冶具との摩擦抵抗を低減せしめていることを特徴とする請求項5に記載のセラミックスシートの押し出し成形装置。
- 上記支え冶具は、その表面に空気を吹き出す複数個の穴が形成されてなり、当該穴から吹き出される空気で、セラミックス成形体と支え冶具との摩擦抵抗を低減せしめていることを特徴とする請求項6に記載のセラミックスシートの押し出し成形装置。
- 上記支え冶具は、その先端部に、セラミックス成形体を連続して切開し、シート状に広げる開き装置を備えていることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のセラミックスシートの押し出し成形装置。
- 上記シリンダと口金との間に、セラミックス坏土の押し出し方向を水平方向から重力方向に変える方向変換冶具を備えていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のセラミックスシートの押し出し成形装置。
- 上記口金は、その射出部の次段に、セラミックス成形体を連続して切開し、シート状に広げる開き装置を備えていることを特徴とする請求項9に記載のセラミックスシートの押し出し成形装置。
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