JP4350252B2 - シートベルト装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、車両の急減速時等にウエビング(ベルト)を引込んで、ウエビングを乗員に密着させるプリテンショナを備えたシートベルト装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車等の乗り物の座席には、乗員の安全を図るために、シートベルト装置が取り付けられている。このシートベルト装置には、車両の急減速時等にシートベルト装置のウエビングを乗員に密着させる手段として、一般的に、リトラクタプリテンショナやバックルプリテンショナが設けられている。
【0003】
近年では、緊急時にウエビングを引込むことで、乗員の下半身の拘束を可能にするプリテンショナが重視されている。このプリテンショナは、アウタアンカ側に取り付けられるものであり、通常、車体の側壁等に配置されている。このようなプリテンショナとしては、例えば、特許公報第2916439号公報や、特開平11−321558号公報等に記載されたものがある。
【0004】
特許公報第2916439号公報に記載されたプリテンショナは、作動時に張力を加えるテンショナ駆動装置が、端部取付具に隣接しかつベルト・バックルと前記端部取付具との間に位置したウエビングに係合し、前記ウエビングが車体に固定されたディフレクタ取付具を通って前記ベルト・バックルとテンショナ駆動装置の係合点との間で案内され、前記テンショナ駆動装置が前記ディフレクタ取付具と前記端部取付具との間でベルトウエビングに係合し、これによってウエビングの輪を形成することで、車内空間を有効利用した設置を可能にするものである。
【0005】
また、特開平11−321558号公報等に記載されたプリテンショナは、ピストン及びシリンダチューブで形成されたリニア駆動子と、偏向した牽引素子により前記ピストンに連結されたベルト係合部分を有しており、前記ベルト係合部分を、車体に対して平坦に位置するよう取付けられたガイド取付け部内で移動案内し、前記シリンダチューブをガイド取付け部に取り付けるかあるいはその傍らに位置させることで、車内空間を有効利用した設置を可能にするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来のプリテンショナは、通常、車内の側壁等に配設されており、車内空間をより有効に使用するための工夫がなされていないのが実状である。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、緊急時におけるウエビングの引込みを良好に行うことができ、かつ車内空間を有効利用して設置することが可能であるプリテンショナを備えたシートベルト装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、緊急時にウエビングを引込むプリテンショナが、ラップアウタ側に配設されたシートベルト装置であって、前記プリテンショナを車体の床面と座席シートとの間に配設してなるシートベルト装置を提供するものである。
【0009】
この構成を備えたシートベルト装置は、通常デッドスペースとなっている車体の床面と座席シートとの間を利用してプリテンショナを配設しているため、車内空間をより有効に使用することができる。
【0010】
前記プリテンショナは、少なくとも前記ウエビングを保護可能な空間を形成するカバーを備えることができる。この構成を備えたシートベルト装置は、緊急時にウエビングがプリテンショナに引込まれる際に、例えば、座席シートに着座している乗員の体重等により座席シートから床面に向けて荷重がかかっても、この荷重を前記カバーによって受けることができる。したがって、ウエビングが良好に移動するための空間を確保することができ、ウエビングの引込みをさらに良好に行うことができる。
【0011】
また、前記プリテンショナは、例えば、ウエビングを引込む引込部と、ウエビングと引込部とを連結する連結部と、を備えて構成することができ、前記カバーは、前記連結部と、この連結部に連結されたウエビングの一部を保護可能な位置に設置することができる。この場合、引込部とカバーとを別体に構成し、ボルトやネジなどの固定部材でこれらを連結させてもよい。このようにすることで、引込部とカバーとのなす角度を任意に設定することができるため、各車両によって異なる内部空間に応じたレイアウトを行うことができる。
【0012】
さらにまた、前記カバーには、前記ウエビングを誘導するガイド部を形成することができる。この構成により、ウエビングは、ガイド部によってその進行方向が誘導されるため、ウエビングをより一層無理なくスムーズにプリテンショナに引込ませることができる。
【0013】
前記ガイド部は、例えば、カバーのウエビング出入口、または出入口近傍に形成することができる。このガイド部は、ウエビングの移動方向に沿って滑らかに湾曲したアール(r)から構成することができる。また、ウエビングの幅方向にも滑らかに湾曲したアール(r)を設けることで、ウエビングの幅方向の動きをスムーズに行うこともできる。このガイド部には、ガイド部の形状に沿って、さらに樹脂等からなる摺動性部材を設けることができる。この構成により、ウエビングの摺動性をさらに向上することができる。このガイド部は、カバーと一体に形成してもよく、別体として形成してもよい。
【0014】
また、前記カバーの車体の床面側に、車体床面とウエビングとの接触を避ける保護板を設けることもできる。この構成により、例えば、車体床面に水抜き穴やボルト等が存在して表面に凹凸が存在しても、ウエビングがこれらに接触することがないため、ウエビングを損傷することが防止される。この保護板は、カバーと一体に形成してもよく、別体として形成してもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るシートベルト装置の概略図、図2は、図1に示すシートベルト装置のプリテンショナを示す正面図、図3は、図2に示すプリテンショナの平面図であって、その一部をIII−III線に沿って断面にした図、図4は、図3に示すIV−IV線に沿った断面図、図5は、図3に示すV−V線に沿った断面図、図6は、図3のVI−VI線に沿った断面図、図7は、図2に示す矢印X方向から矢視図である。
【0017】
図1〜図7に示すように、本実施の形態に係るシートベルト装置1では、座席シート2に着座する乗員3が、ウエビング(ベルト)4を着脱可能に装着できるようになっている。このウエビング4の一端は、車体の床面5と座席シート2との間に配設されたプリテンショナ6に、アンカープレート7を介して連結されている。また、ウエビング4の中間部は、図示しないタングプレートに移動可能に折り返され、他端側は、車両の側壁8に配設された巻取り装置9に巻き取られている。前記タングプレートは、車両中央部の床に設けられた図示しないバックルに着脱可能に係合するようになっている。
【0018】
プリテンショナ6は、ウエビング4を引込む引込部11と、引込部11とアンカープレート7とを連結する連結部材12と、この連結部材12及びアンカープレート7及びアンカープレートに連結されているウエビング4の一部を保護する空間を形成するカバー14と、を備えて構成されている。
【0019】
引込部11は、シリンダ15と、シリンダ15内に移動可能に収容されたピストン部16と、ピストン部16の図3における右側に、ピストン部16とは独立して配設されたロッド部18と、シリンダ15の図3における左側に配設されたガス発生装置19と、これらの部材及び連結部材12を収容するハウジング13と、を備えて構成されている。
【0020】
ピストン部16の図3における右側には、ガス発生装置19のガス圧により、ピストン部16が移動してロッド部18に当接した際に、ロッド部18の先端に形成された凹部21に挿入可能な凸部20が形成されている。この構成により、ロッド部18の傾きやガタツキを凸部20に吸収させることができ、通常使用時に異音が発生することを防止することもできる。なお、符号24は、シール部材であり、符号25は、ピストン部16が逆方向(図3における左側)に移動することを阻止する一方向クラッチ機構としての機能を果たすボールである。
【0021】
連結部材12のアンカープレート7が接続されている側とは反対側の端部は、カシメ玉22を介してハウジング13に固定されている。この連結部材12は、ロッド部18の右側先端に形成されたR形状部材23を起点として折り曲げられている。なお、符号26は、連結部材12を誘導するガイドローラである。
【0022】
アンカープレート7は、特に図3及び図4に示すように、一端に連結部材12の端部が固定されている。また、アンカープレート7の略中央部には、開口部33が形成されており、この開口部33には、ウエビング4を巻き掛けるためのピン27が設けられている。
【0023】
カバー14は、引込部11から延出した連結部材12、アンカープレート7及びアンカープレート7に固定されたウエビング4の一部を保護し、ウエビング4の引込みが良好に行える空間を形成可能であり、かつ車体床面5と、座席シート2との間に形成された空間に配設可能な形状を有している。このカバー14は、引込部11とは別体に形成されており、図2に示すようにボルト28によって、引込部11のハウジング13に連結固定されている。このように、カバー14とハウジング13とを別体で形成し、両者を連結する構成にすれば、引込部11とカバー14とのなす角度を、プリテンショナ6を配設する空間の形状に合わせ設定することができるため、車内空間に合わせたレイアウトが行い易くなる。このカバー14は、ボルト32によって車体の床面5に固定されている。
【0024】
また、カバー14のウエビング出入口29には、移動すべき方向にウエビング4を誘導するガイド部30が形成されている。このガイド部30は、カバー14のウエビング出入口先端の上部に形成された湾曲部30Aと、ウエビング4の幅方向に両側に対応する部分に形成された湾曲部30C及び30Dと、湾曲部30A、30C及び30Dの内側に沿って配置された湾曲状の摺動性樹脂部材30Bと、から構成されている。このガイド部30は、特に図4に示すように、ウエビング4は、湾曲部30A及びこの部分に形成された摺動性樹脂部材30Bによって誘導された状態で移動することになるため、ウエビング4の移動をスムーズに行うことができる。また、湾曲部30C及び30D及びこの部分に形成された摺動性樹脂部材30Bにより、ウエビング4が幅方向に移動(すなわち、図7に示す矢印Y方向の移動)した場合でも、ウエビング4はスムーズに移動できる。なお、摺動性樹脂部材30Bは、その良好な摺動作用により、ウエビング4の摺動性能を向上させ、摩擦等によってウエビング4が摩耗、損傷することを防止することができる。
【0025】
カバー14の底面側には、カバー14内に収納される部材が、車体の床面5に形成された凹凸等によって損傷することを防止するための保護板31が配設されている。この保護板31は、例えば、摺動性樹脂等から構成することができ、摺動性樹脂部材30Bと一体に形成してもよく、別体として形成してもよい。
【0026】
なお、このカバー14は、例えば、鋼や、アルミ等の金属や合金、強化プラスチック、または複合材等、座席シート2に着座した乗員3の体重等により、押しつぶされることがない剛性及び強度を備えた材料から構成されている。また、ガイド部30でウエビング4の向きを変える際に生じる果樹に耐える必要がある。
【0027】
次に、この構成を備えたプリテンショナ6の具体的動作について説明する。
【0028】
いま、座席シート2に着座した乗員3がウエビング4を装着しているが、この初期状態において、車両衝突などにより、車両に急激な減速が生じたとする。これにより、ガス発生装置19は瞬時に燃焼ガスを発生し、この燃焼ガスの圧力によって、ピストン部16が、図3における右側に押圧されて移動する。この移動によりピストン部16がロッド部18に当接し、凸部20が凹部21に挿入され、ピストン部16がロッド部18を図3における右側に押圧する。
【0029】
このとき、連結部材12は、ロッド部18の先端に形成されたR形状部材23を起点として折り曲げられているため、このロッド部18の移動に伴ってアンカープレート7を引込み、この結果ウエビング4が引込まれる。
【0030】
ここで、プリテンショナ6は、通常デッドスペースとなっている車体の床面5と座席シート2との間に配設されているため、邪魔になることがなく、車内空間を狭くすることなく、有効に利用することが可能となる。また、座席シート2に着座した乗員3の体重等によって生じる荷重は、カバー14によって受けることができるため、この荷重がウエビング4の引込みに悪影響を及ぼすことがない。さらに、カバー14のウエビング出入口29には、ガイド部30が形成されているため、ウエビング4をより一層スムーズに引込むことができる。そしてまた、カバー14の底面側には、保護板31が形成されているため、例えば、車体の床面5に、水抜き穴やボルト等による凹凸が形成されていても、ウエビング4が直接床面5に接触することがない。したがって、ウエビング4が損傷することを防止することができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、引込部11とカバー14とを別部材で構成した場合について説明したが、これに限らず、引込部11とカバー14は、一体的に形成してもよい。
【0032】
また、本実施の形態では、座席シート2からの荷重を受けるためにカバー14を配設した場合について説明したが、本願発明はこの構成に限定されるものではなく、車体の床面5と座席シート2との間に、プリテンショナ6を配置するための十分な空間が存在しており、座席シート2からの荷重を受けない場合には、必ずしもカバー14を設ける必要はない。
【0033】
そしてまた、本実施の形態では、ガイド部30を湾曲部30A、摺動性樹脂部材30B、湾曲部30C及び30Dから構成した場合について説明したが、これに限らず、ガイド部30は、湾曲部30Aのみで形成し、摺動性樹脂部材30Bを配設する代わりに、湾曲部30の内側に、その表面が滑らかになるような加工を施してもよい。また、ガイド部30は、摺動性樹脂部材30Bのみで形成してもよい。そしてまた、ウエビング4の移動方向によっては、ガイド部30を必ずしも設けなくてもよい。
【0034】
さらにまた、本実施の形態では、折り曲げられた連結部材12を利用したタイプの引込部11について説明したが、これに限らず、引込部11は、通常使用されている他のタイプのものを使用してもよいことは勿論である。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るシートベルト装置は、アウタアンカ側に配設されるプリテンショナを、通常デッドスペースとして存在している車体の床面と座席シートとの間に配設したため、乗員の下半身を良好に拘束することができると共に、車内空間をより有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシートベルト装置の概略図である。
【図2】図1に示すシートベルト装置のプリテンショナを示す正面図である。
【図3】図2に示すプリテンショナの平面図であって、その一部をIII−III線に沿って断面にした図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図3に示すV−V線に沿った断面図である。
【図6】図3のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図2に示す矢印X方向から矢視図である。
【符号の説明】
1 シートベルト装置
2 座席シート
3 乗員
4 ウエビング
5 床面
6 プリテンショナ
7 アンカープレート
11 引込部
12 連結部材
13 ハウジング
14 カバー
30 ガイド部
30A、30C、30D 湾曲部
31 保護板
Claims (5)
- 緊急時にウエビングを引込むプリテンショナが、アウタアンカ側に配設されてなるシートベルト装置であって、
前記プリテンショナを車体の床面と座席シートとの間に配設してなるシートベルト装置。 - 前記プリテンショナは、少なくとも前記ウエビングを保護可能な空間を形成するカバーを備えてなる請求項1記載のシートベルト装置。
- 前記カバーは、前記ウエビングを誘導するガイド部を備えてなる請求項2記載のシートベルト装置。
- 前記ガイド部は、前記ウエビングの移動方向に沿って滑らかに湾曲した湾曲部を備えてなる請求項3記載のシートベルト装置。
- 前記カバーの車体の床面側に、当該車体の床面と前記ウエビングとの接触を避ける保護板を配設してなる請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載のシートベルト装置。
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