JP4348593B2 - ポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に水性接着剤のベース樹脂として使用した場合に優れた性能を発揮し得るポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法に関するものである。更に詳しくは、貼り合わせ直後のコンタクト接着性に優れ、しかも初期及び最終接着強度、耐熱クリープ性、耐久性等にも優れる、良好な塗布性を有するポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ゴム、皮革、金属、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック、発泡体等の各種基材をポリウレタン系水性溶液、分散液、及びこれらを用いて得られる接着剤を使用して接着する場合、最終接着強度(養生、硬化後の接着強度)、耐久性以外に貼り合わせ直後および数時間内の接着強度、接着剤の塗布適性が非常に重要である。特に種々の形状の基材に刷毛等を使用して接着剤を塗布する靴等の用途においては、接着剤の刷毛塗り性、レベリング性(均一塗布性)の他に、2つの基材に各々接着剤を塗布した面同士のコンタクト接着性に優れることが重要となる。
【0003】
ポリウレタン樹脂水性分散体の接着剤を塗布した基材を貼り合わせる方法としては、刷毛等を用いて接着剤を2つの基材に各々塗布した後、水分を除去して接着性能を発現させるために、例えば、50〜60℃などの適当な温度で乾燥する再活性工程を行った後に、接着剤を塗布した基材同士を貼り合わせる方法が行われている。
【0004】
靴等の加工プロセスにおける接着では、エチレン−酢ビ系(EVA系)基材、ゴム、天皮、PVC等の基材は種々の形状を呈しているために、接着剤塗布面同士を貼り合わせた時のコンタクト接着強度が低い場合には、基材の変形の応力に負けて接着剤との界面もしくは接着剤の凝集破壊により基材の浮き、剥離等の問題が発生していた。このため、接着剤塗布面同士を貼り合わせるコンタクト接着を行う靴等をはじめとする分野では、コンタクト接着性や塗布適性、耐久性等に優れる接着剤が強く要望されていた。
【0005】
これまでに、種々の接着剤の検討がなされてきたが、何れも上記要求を充分に満足するものではなかった。例えば、特開平9−71720号公報では、ポリイソシアネートにノニオン性親水基含有化合物とイオン性界面活性剤を混合させることにより得られる自己乳化性ポリイソシアネート組成物と水性エマルジョンを用いて得られる水系コーティング組成物が記載されているが、コーティング剤としての使用を目的とした発明であり、コンタクト接着性、塗布適性、接着強度において十分な性能を有するものではなかった。更に、特許第2894494号公報では、親水基としてカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を含有するポリイソシアネート重付加物の水性溶液又は分散液の製造法が記載されているが、レベリング性及び基材への浸透性等の塗布適性において満足出来るものではなかった。
【0006】
以上のような理由から、接着剤として用いた時の塗布適性に優れ、貼り合わせ直後のコンタクト接着性、初期及び最終接着強度が良好で、とりわけ耐熱クリープ性に優れるポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法の開発が切望されていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、接着剤として用いた時の塗布適性に優れ、貼り合わせ直後のコンタクト接着性、初期及び最終接着強度が良好で、とりわけ耐熱クリープ性に優れるポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す特定の製造方法にて得られるポリウレタン樹脂水性分散体を接着剤として用いた場合に、塗布適性に優れ、貼り合わせ直後のコンタクト接着性、初期及び最終接着強度が良好で、とりわけ耐熱クリープ性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリイソシアネート(A)、水酸基価が10〜350mgKOH/gのポリオール(B)、及び有機溶剤(C)をイソシアネート基:水酸基=(2.00〜1.01):1.00なる当量比の範囲で反応させて得られたプレポリマー(D)と、ジアルキルスルホコハク酸型金属塩、ジアルキルスルホコハク酸型有機塩、アルキルベンゼンスルホン酸型金属塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸型有機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(E)を含有する水溶液(F)とを混合し機械乳化分散させて得られた水性分散体(G)に、分子量300以下で官能基数が2以上であるポリアミン(H)を、プレポリマー(D)に存在するイソシアネート基に対して、アミン基/イソシアネート基=1.9当量比以下で混合し、鎖伸長反応させてポリウレタン樹脂水性分散体を製造する方法であって、ポリオール(B)及びポリアミン(H)の内の少なくとも1つがカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を含有し、得られたポリウレタン樹脂水性分散体の平均粒子径が1μm以下であり、その標準偏差が1μm以下であることを特徴とするポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
次いで、本発明を実施するにあたり、必要な事項を具体的に以下に述べる。
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法とは、ポリイソシアネート(A)、水酸基価が10〜350mgKOH/gのポリオール(B)、及び有機溶剤(C)をイソシアネート基:水酸基=(2.00〜1.01):1.00なる当量比の範囲で反応させて得られたプレポリマー(D)と、ジアルキルスルホコハク酸型金属塩、ジアルキルスルホコハク酸型有機塩、アルキルベンゼンスルホン酸型金属塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸型有機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(E)を含有する水溶液(F)とを混合し機械乳化分散させて得られた水性分散体(G)に、分子量300以下で官能基数が2以上であるポリアミン(H)を、プレポリマー(D)に存在するイソシアネート基に対して、アミン基/イソシアネート基=1.9当量比以下で混合し、鎖伸長反応させてポリウレタン樹脂水性分散体を製造する方法であって、ポリオール(B)及びポリアミン(H)の内の少なくとも1つがカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を含有し、得られたポリウレタン樹脂水性分散体の平均粒子径が1μm以下で、且つ、その標準偏差が1μm以下であることを特徴とするポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法である。
【0012】
本発明において、ポリウレタン樹脂水性分散体を調製するに際し使用されるポリイソシアネート(A)とは、下記の一般式[1]で示される化合物である。
【0013】
R(NCO)n 一般式[1]
【0014】
(但し、一般式[1]中のRは任意の有機基、n≧2である。)
【0015】
本発明では、上記ポリイソシアネート(A)は、従来より公知のものが何れも使用出来るが、その中で特に代表的なものを例示すると、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ないしは1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(別名:イソホロンジイソシアネート;IPDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(別名:水添MDI)、2−ないしは4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−ないしは1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ないしは1,4−α,α,α’α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4−ないしは2,6−ジイソシアナトトルエン、2,2’−、2,4’−ないしは4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−ないしはm−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートまたはジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等である。これらの内でも、とりわけ機械的強度などの点からは芳香族ジイソシアネート化合物の使用が望ましく、また、とりわけ耐久性、耐光性などの点からは脂肪族ないしは脂環族ジイソシアネート化合物の使用が望ましい。また、接着性を阻害しない範囲で2官能を越えるポリイソシアネート化合物を併用しても構わない。
【0016】
本発明において、水性ウレタン樹脂固形分に対するイソシアネート含有率は、8〜25重量%の範囲が好ましい。この範囲内であれば、ウレタン分子の凝集力が好適となり、高い接着強度の発現が可能となる。
【0017】
本発明で用いられる水酸基価が10〜350のポリオール(B)において、ポリエステルポリオールが主体として使用される。ポリエステルポリオールとしては、公知慣用の種々のポリカルボン酸類と或いはそれらの諸反応性誘導体と公知慣用の種々の分子量300以下のポリオール化合物を公知慣用の種々の方法で反応させることにより調製され、特に限定はされない。
【0018】
上記ポリカルボン酸類としては、脂肪族の中で代表的なものを例示すると、例えば、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪(脂環)族ジカルボン酸、多官能成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸シクロヘキサントリカルボン酸等のポリカルボン酸およびそれらの酸無水物或いはエステル形成性誘導体、
【0019】
また、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびそれらの酸無水物もしくはエステル形成性誘導体、p−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0020】
また、本発明で用いられる環状エステルとしては、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0021】
一方、前記の分子量300以下のポリオール化合物としては、特に代表的なものを例示すると、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール、ビスフェノールA、ハイドロキノン、ビスヒドロキシエトキシベンゼンおよびそれらのアルキレンオキシド付加体のポリオール、また多官能成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールが挙げられる。またカルボキシル基を含有するポリオール化合物として、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられ、これらをポリエステルを合成する際のポリオール成分として用いて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールであっても構わない。
【0022】
本発明で使用するポリオール(B)は、(B−1)芳香族スルホン酸基を含有するジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体、(B−2)分子量300以下のポリオール、及び(B−3)スルホン酸基を含有しないポリカルボン酸もしくはそのエステル誘導体、及び/又は環状エステルを用いて得られる芳香族スルホン酸基を含有するポリエステルポリオールと、芳香族スルホン酸基を含有しない水酸基価が10〜350のポリオールとの混合物である。
【0023】
請求項4に記載の芳香族スルホン酸基を含有するポリエステルポリオールは公知慣用の種々の方法で反応させることにより調製される。
【0024】
また、本発明で使用する芳香族スルホン酸基を含有するジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体(B−1)とは、例えば、スルホン酸基の中にカチオン種としてプロトン、NaやK、Li、Ca等の金属イオン、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミンを含む5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸の如きジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体の塩等が挙げられる。
【0025】
また、分子量300以下のポリオール(B−2)、及びスルホン酸基を含有しないポリカルボン酸もしくはそのエステル誘導体、及び/又は環状エステル(B−3)としては、前述のポリオール(B)の具体例で記載したものと同様のものが使用出来る。
【0026】
本発明で使用するポリオール(B)が、(B−1)芳香族スルホン酸基を含有するジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体、(B−2)分子量300以下のポリオール、及び(B−3)前記(B−1)以外のポリカルボン酸もしくはそのエステル誘導体及び環状エステルを用いて得られるポリエステルポリオールを含有したポリオールを含む場合、主鎖に芳香環を有するため、ポリウレタン分子に剛直性を付与するのと同時に立体構造からウレタン分子鎖間の凝集力を一部抑制する性質がある。このため該芳香族スルホン酸基を含有するポリエステルポリオールをポリウレタン分子内に導入することにより、接着剤としてのタックフリータイム(オープンタイム)を長くするだけでなく、同時に凝集力と剛直性を付与することが実現出来る。
【0027】
また、該芳香族スルホン酸基を含有するポリエステルポリオールは、芳香族酸のエステルであるため耐加水分解性にも優れ、従来から水性ウレタン樹脂として問題になっていた貯蔵安定性及び耐久性の改善にも効果がある。また、低分子ポリオールを任意に選定し、更に耐水性の良好なラクトンモノマーを該芳香族スルホン酸金属塩基を含有するポリエステルポリオール中に導入することにより、該ポリウレタン樹脂水性分散体の耐水性、耐熱性、及び凝集力等を任意に調整することが可能である。
【0028】
当該ポリウレタン樹脂水性分散体を調製するに際し使用されるポリオール(B)としては、ポリエステルポリオールが主に使用されるが、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等、もしくはこれらの単独或いは混合物、又は共重合物も使用してもよい。
【0029】
本発明で用いられるポリエーテルポリオールとして特に代表的なものを例示すると、例えば、活性水素原子(反応性水素原子)を有する化合物の存在下にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン又はエピクロルヒドリン等のような種々の三員環もしくは四員環のエーテル化合物の単独或いは2種以上の混合物を開環重合して得られる重合体等である。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、一部メタノール、ブタノール等のモノアルコールにてブロック化されたポリエーテルモノオールについては、高分子量化を阻害しない範囲で使用しても構わない。
【0030】
また、本発明で用いられるポリカーボネートポリオールとして特に代表的なものを例示すると、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネート或いはエチレンカーボネート等によって代表されるような環式カーボネートとの反応生成物などである。
【0031】
水酸基価が10〜350のポリオール(B)は、ポリウレタン樹脂水性分散体に凝集性と柔軟性等を付与する目的から、プレポリマー(D)中のポリウレタン樹脂固形分中に55重量%以上含有されることが好ましく、より好ましくは55〜90重量%の範囲である。ポリオール(B)の含有量がかかる範囲内であれば、50〜60℃程度の温度で熱溶融するポリウレタン樹脂成分中のソフトセグメント(脂肪族ポリオール)部位が多くなる為、接着面の再活性化が活発となり、貼り合わせ直後から高い接着性能の発現が可能となる。
【0032】
また、本発明においては、プレポリマー(D)が、ポリイソシアネート(A)、水酸基価が10〜350のポリオール(B)、分子量300以下のポリオール(I)、及び有機溶剤(C)をイソシアネート基:水酸基=(2.00〜1.01):1.00なる当量比の範囲で反応させて得られたものであり、且つポリオール(B)、ポリアミン(H)及びポリオール(I)の内の少なくとも1つがカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を含有するものであってもよい。
【0033】
本発明で使用する、官能基数が2以上で、且つ、分子量300以下のポリオール(I)としては、ポリオール(B)の具体例で記載したものと同様のポリオールが使用出来る。更に、本発明では、分子内にアミノ基とアルコール性の水酸基を含有する官能基数が2以上で、且つ、分子量300以下のアミノアルコール類も使用出来、例えば、エタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、N−エチルジエチレンアミン、N−エチルジイソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0034】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体を調製する際には、有機溶剤(C)が用いられ、特に分子内に活性水素基を含まない有機溶剤が好ましく、例えば、ベンゼン、トルエン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、テトラクロルエチレン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられ、これら有機溶剤は単独使用又は混合使用でもよい。これら有機溶剤(C)の中でポリウレタン樹脂の溶解性の高い溶媒として特にアセトン、メチルエチルケトンが好ましい。
【0035】
また、ポリウレタン樹脂に含まれるカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を中和するのに、例えば、アンモニア、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、ピリジン、モルホリン、Na、K、Li、Ca等のアルカリ金属塩基及びアルカリ土類金属塩基から選ばれる少なくとも1種の中和剤を使用することが出来る。
【0036】
本発明で使用する界面活性剤(E)とは、一般的には洗浄剤、乳化剤、分散剤、浸透剤、可溶化剤、起泡剤等として用いられ、希薄溶液の状態でその溶媒の表面張力や界面張力を著しく低下させるものをいう。
【0037】
界面活性剤の分子構造としては、分子が疎水性の部分と親水性の部分をもち、両成分が適度のバランスをもっているものである。疎水性の部分には鎖状炭化水素基もしくはこれに環状炭化水素基、炭素数4〜20のフッ素化アルキル基を含有したものが挙げられ、親水性の部分には非イオン性の極性基もしくはアニオン、カチオン、ベタイン等のイオン性のそれが挙げられる。通常、界面活性剤は、極性の部分の種類により極性部分としてカルボン酸基、硫酸エステル基、アリルスルホン酸基に代表されるように水中で分子が陰イオン化するアニオン型活性剤、極性部がアミン塩もしくは第四級アンモニウム塩等からなる分子が陽イオン化するカチオン型活性剤、極性部分が水酸基、エーテル基、エステル基等に代表されるように分子全体が非イオン性の非イオン型活性剤、一つの分子中にアニオンとカチオンの両方の極性基を含有している両性型活性剤がある。この中で特にアニオン型活性剤であるジアルキルスルホコハク酸型金属塩もしくは有機塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸型金属塩もしくは有機塩が優れた界面活性力(乳化力)を持ち、且つ水溶液の表面張力を顕著に低下させる特徴があるため、塗布する基材へのレベリング性及び浸透力を高める働きがある。通常この様な界面活性剤は、水性製品として市販されている水性樹脂の中に後添加する方式で使用されていたが、▲1▼発泡性が高いために過剰の消泡剤を投入しなければならず基材へのハジキが生じること、▲2▼分散が不均一になること、等の問題点が挙げられる。本発明では、ポリウレタン樹脂と有機溶剤からなるポリウレタン溶液にジアルキルスルホコハク酸型金属塩もしくは有機塩及びアルキルベンゼンスルホン酸型金属塩もしくは有機塩の界面活性剤水溶液を投入し、ポリウレタン樹脂を乳化分散するため均一に水性ポリウレタン樹脂の粒子界面に該界面活性剤が配向するため、該界面活性剤からなるミセル等が最小限に抑制され、発泡性が低下出来る特徴を見出、本発明を完成したのである。
【0038】
更に、靴用途等で行われるコンタクト接着工程は、2つの基材の各々に接着剤を塗布し、接着剤塗布面同士を貼り合わせる。このため両方の接着剤塗布面が接触した際に接着剤の分子が動き易い状態であり、良く馴染むことが重要となる。最終的には両方の接着剤が一体化したような状態になることにより剥離抵抗の大きい、引いては接着強度の大きい接着面が得られることになる。従来の該界面活性剤を後添加する方式と比較しても、本発明の製造方法にて製造したポリウレタン樹脂水性分散体を使用した水性接着剤は、均一に水性ポリウレタン樹脂の粒子界面に該界面活性剤が配向するため、従来にない接着強度と耐熱クリープ性に優れる接着性能を実現出来る。また、該界面活性剤を添加することによる表面張力の低下により、刷毛塗り性、レベリング性、浸透性等に優れた塗布適性も実現出来る。
【0039】
本発明で使用する界面活性剤(E)とは、ジアルキルスルホコハク酸型金属塩、ジアルキルスルホコハク酸型有機塩、アルキルベンゼンスルホン酸型金属塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸型有機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
本発明で使用する界面活性剤(E)のプレポリマー(D)中のポリウレタン樹脂固形分に対する混合比率は、好ましくは0.05〜5.0重量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。界面活性剤(E)の混合比率がかかる範囲であれば、接着阻害を起こすことなく、良好なコンタクト接着性と初期接着強度を得ることが出来る。
【0041】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法では、前記プレポリマー(D)と界面活性剤(E)を含有する水溶液(F)とを混合し、機械乳化分散させて得られる水性分散体(G)に、ポリアミン(H)を混合し鎖伸長反応させる。
【0042】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法で云う「機械乳化」とは、上述の如く有機溶剤中で反応して得られたポリマーを中和後又は中和しながら、プレポリマー重量の好ましくは0.2〜5倍量の水或いは乳化剤水溶液を投入した後、ホモジナイザー等の乳化が可能な機械(乳化機)を使用して機械的剪断力或いは超音波等をかけることにより、ポリウレタン樹脂水性分散体の平均粒子径を1μm以下で、且つ、標準偏差が1μm以下になるよう粒子安定化が可能な乳化方式を云う。
【0043】
本発明で云う「機械乳化」に使用する機器としては、本発明の目的であるポリウレタン樹脂水性分散体の粒子安定化が可能な機器であれば何れのものでもよく、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー等の高速剪断による乳化機、高圧により乳化分散するコロイドミル(マントンゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、ソノレーター(ソニックコーポレーション社製)、その他「化学工業便覧、第779−782頁(1989)」に記載されている乳化機等を使用し、プレポリマー(D)を乳化分散することを示す。
【0044】
本発明で使用する、官能基数が2以上で、且つ、分子量300以下のポリアミン(H)として特に代表的なものを例示すると、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,2−ないしは1,3−ジアミノプロパン、1,2−ないしは1,3−ないしは1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−ないしは1,4−ジアミノシクロヘキサン又は1,3−ジアミノプロパン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン、更にはヒドラジンまたはアジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン誘導体、カナダ国特許第928323号、特公昭49−36693号に記載されているジアミノスルホネート等を使用することが出来る。
【0045】
官能基数が2以上で、且つ、分子量300以下のポリアミン(H)の使用量は、プレポリマー(D)中に存在するイソシアネート基に対して、アミン基/イソシアネート基の当量比で、好ましくは1.9当量比以下であり、より好ましくは0.6〜1.0当量比の範囲である。ポリアミン(H)を用いない場合は、水、ポリオールなどが鎖伸長反応に関与し、ポリアミン(H)を用いる場合は水、ポリアミン、ポリオールなどが鎖伸長反応に関与する。ポリアミン(H)をかかる範囲で混合し鎖伸長反応させれば、高分子量化が可能となり、耐久性及び耐光性に優れた性能を発現出来る。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法では、公知公用の乳化剤を併用することも出来る。その中でもノニオン系乳化剤、及び/又はアニオン系乳化剤が好適であり、添加量としてはポリウレタン樹脂固形分に対して、5重量%以下である。この様な乳化剤を使用する場合、添加時期については特に制限はなく、乳化分散工程前のポリウレタン樹脂溶液、あるいはイソシアネート基が存在するプレポリマーに添加した後、乳化分散することが望ましいが、乳化分散工程終了後に添加しても構わない。
【0047】
該ポリウレタン樹脂水性分散体を調製する際に必要ならばウレタン化触媒を使用することが出来る。ウレタン化触媒として代表的なものを例示すると、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、又はN−メチルモルホリン等の種々の含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫、又はジブチルチンジラウレート等の種々の有機金属化合物等である。
【0048】
本発明の製造方法により得たポリウレタン樹脂水性分散体を含む水性接着剤としては、該ポリウレタン樹脂単独でも構わないが、SBRラテックス樹脂やアクリルエマルジョンに代表されるポリウレタン樹脂以外の水性分散体を、全固形分に占めるポリウレタン樹脂固形分の割合、即ち、〔ポリウレタン樹脂固形分重量÷全固形分重量〕×100(%)で表した場合に、好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上で併用しても構わない。
【0049】
更に、本発明の製造方法により得たポリウレタン樹脂水性分散体を用いて得られる接着剤の凝集性を阻害しない範囲で通常の接着剤に使用される副資材及び添加剤、例えば、可塑剤、粘着付与剤(ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂等)、充填剤、顔料、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防腐剤等を使用することも可能である。
【0050】
該ポリウレタン樹脂水性樹脂分散体はこのもの単独でも使用出来るが、更に耐久性を向上させる目的で、例えば、アミノ化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、ポリイソシアネート化合物のような2官能以上の化合物を架橋剤として使用することも出来る。そのような化合物の中でもポリイソシアネート化合物が好ましく、ポリウレタン樹脂固形分に対して、50重量%以下の範囲で使用出来る。
【0051】
本発明で架橋剤として用いられる2官能以上の化合物であるポリイソシアネート化合物の代表的なものを例示すると、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の3量体からなるポリイソシアネート化合物、又は該ポリイソシアネート化合物とエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、長鎖高級アルコール等の低分子活性水素化合物等からなるイソシアネート基末端の化合物が挙げられる。
【0052】
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体の調製方法は特に限定されず、下記のような方法が例示される。
【0053】
例えば、分子内に活性水素基を含まない有機溶剤(C)中で、ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)及び分子量300以下のポリオール(I)をイソシアネート基(以下、NCO基と略記)と水酸基(以下、OH基と略記)との当量比が、通常、好ましくはNCO基:OH基=(2.00〜1.01):1.00、より好ましくは(1.80〜1.10):1.00の範囲でワンショット法或いは多段法により、プレポリマー反応(NCO基がOH基に対し過剰の反応)を行い、NCO基が残存するプレポリマー(D)とし、該プレポリマー(D)を中和後、又は中和しながらジアルキルスルホコハク酸型金属塩もしくは有機塩及びアルキルベンゼンスルホン酸型金属塩もしくは有機塩から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(E)をプレポリマー(D)中のポリウレタン樹脂固形分に対し0.05〜5.0重量%の範囲で含む水溶液(F)とを混合して機械乳化分散を行う。該界面活性剤(E)を含む水溶液は該プレポリマー(D)の重量に対し、40〜200重量%の範囲で混合し乳化分散することが好ましい。乳化分散終了後、分子量300以下の官能基数が2以上のポリアミン(H)を5〜100重量%の濃度になるように希釈した水溶液を、該乳化分散液に存在するNCO基に対して、好ましくは1.9当量比以下、より好ましくは0.6〜1.0当量比の割合で投入し鎖伸長反応を行い、必要により有機溶剤(C)を溜去する方法が挙げられる。尚、ポリアミン(H)を用いない場合は水、ポリオールなどが鎖伸長反応に関与し、ポリアミン(H)を用いる場合は水、ポリアミン、ポリオールなどが鎖伸長反応に関与する。
【0054】
【実施例】
以下に、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、部及び%は、特にことわりのない限り、全て重量基準であるものとする。尚、本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の諸特性は、以下に概略を示した評価方法にて測定した。
【0055】
[粒子径の評価方法]
ポリウレタン樹脂水性分散体を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−910)を使用し、相対屈折率=1.10、粒子径基準が面積の時の平均粒子径と標準偏差を測定した。
【0056】
[粒子安定性の評価方法]
製造したポリウレタン樹脂水性分散体を、製造から1日後に凝集していないかを目視にて判断した。
【0057】
[コンタクト接着性の評価方法]
ポリウレタン樹脂水性分散体の接着剤を塗布したポリ塩化ビニル(PVC)シート同士を貼り合わせた後、1分後に手で接着面を剥離し接着剤の凝集破壊の程度を目視で観察して接着剤同士の食い込み状態からコンタクト接着性の良否を評価した。
【0058】
[レベリング性の評価方法]
ポリウレタン樹脂水性分散体の接着剤を刷毛を用いてPVCシートに塗布した後、接着剤の液面の均一塗布性の良否を目視で評価した。
【0059】
[刷毛塗り性の評価方法]
ポリウレタン樹脂水性分散体の接着剤を刷毛を用いてPVCシートに塗布した際の接着剤の展延性の良否を目視で評価した。
【0060】
[初期接着強度の評価方法]
2枚のPVCシートに接着剤を各々100g/m2ずつ塗布し、次いで、50℃にて6分間熱風循環乾燥機に入れ再活性する。この乾燥機より取り出したPVC基材の接着面同士をゴムローラーで加圧して貼り合わせて、貼り合わせをしてから2分後の剥離強度をデジタルゲージにて測定した。
【0061】
[経時剥離強度の評価方法]
初期接着強度の評価の場合と同様にして作製した貼り合わせ試験片について、貼り合わせ2時間後、及び貼り合わせ1日後の剥離強度を引張試験機で引張速度100mm/分の測定条件にて180度剥離の強度を測定した。
【0062】
[耐熱クリープの評価方法]
初期接着強度の評価の場合と同様にして作製した貼り合わせ試験片について、3日間室温にて養生硬化させた。該試験片に1kgの錘を吊して、70℃にて30分間熱風循環乾燥機に入れ、180度の耐熱クリープ試験を行った。100mmの標線間を剥離した距離(mm)、又は錘が落下した時間を測定した。
【0063】
《参考例1》芳香族スルホン酸金属塩基含有ポリエステルポリオール1の調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、5−スルホソジウムイソフタル酸ジメチル(DMS)1480部と1,6−ヘキサンジオール1240部、及びジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、塔頂温度が60〜70℃になるように反応容器内温度を180〜190℃で反応物の酸価が1mgKOH/g以下になるまでエステル交換反応を行い、次に210℃で2時間反応させる。次いで、100℃まで冷却した後、ε−カプロラクトン2280部を仕込み、180℃で3時間開環重合反応することにより、表1に示すように水酸基価120で、酸価0.3のポリエステルポリオール1を得た。その結果を参考例1として、表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
《実施例1》
表2に示すように、参考例1の芳香族スルホン酸金属塩基含有ポリエステルポリオール1を30部に、メチルエチルケトン60部を加え十分撹拌溶解し、イソホロンジイソシアネート34部及びヘキサメチレンジイソシアネート4部を加えて80℃で3時間反応させた。次いでメチルエチルケトン95部を投入し60℃まで冷却後、1,4−ブチレングリコール5部と、1,4−ブチレングリコールとアジピン酸から成るポリエステルであるブチレンアジペート(水酸基価=37)160部を加え80℃にて反応を行った。その後、イソシアネート値が0.79%以下になったら、40℃まで冷却し、ネオコール YSK(ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩、有効成分70%:第一工業製薬(株)製)を1.7部に水280部を加え混合した水溶液にて機械乳化分散した後、10%ピペラジン水溶液29.7部(残存イソシアネート基に対してアミン基として95当量%)を加えて乳化分散した。得られた乳化液を脱溶剤することによって不揮発分50%の水分散体を得た。
【0066】
得られた上記水分散体100部に、SN−シックナー A−812(サンノプコ(株)社製)を1部添加して増粘した後、水に分散し得るイソシアネート架橋剤CR−60N(大日本インキ化学工業(株)製)を3部加えることにより接着剤を調整した。次いで、調整した接着剤を2枚のPVCシートに刷毛で各々100g/m2ずつ塗布した後、接着面同士を貼り合わせ、各接着性能の評価を行った。本発明の製造方法で得たポリウレタン樹脂水性分散体を用いた該接着剤は、表3に示す通り、優れた性能を示した。
【0067】
《実施例2》
表2に示すように実施例1のネオコール YSKをネオペレックス F−25(組成;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、有効成分25%:花王(株)製)に換えて、添加量を4.7部に変更した以外は実施例1と同様の操作にて合成を行い、不揮発分50%の水分散体を得た。得られた該水分散体を実施例1と同様にして接着剤を調整した後、接着面同士を貼り合わせ、各接着性能の評価を行った。本発明の製造方法で得たポリウレタン樹脂水性分散体を用いた該接着剤は、表3に示す通り、優れた性能を示した。
【0068】
《実施例3》
表2に示すように1,4−ブチレングリコールとアジピン酸から成るポリエステルであるブチレンアジペート(水酸基価=37)160部に、メチルエチルケトン60部を加え十分撹拌溶解し、イソホロンジイソシアネート34部を加えて80℃で3時間反応させた。次いで、メチルエチルケトン95部を投入し60℃まで冷却後、ジメチロールプロピオン酸9部を加え75℃にて反応を行った。その後、イソシアネート値が0.78%以下になったら、50℃まで冷却し、アセトン45部を加え、次いで10%ピペラジン水溶液27.1部(存在するイソシアネート基に対してアミン基として95当量%)を加えて鎖伸長反応を行った。30分間十分攪拌混合して養生後、中和剤のトリエチルアミン6.8部、ネオコール YSKを1.5部をウレタン樹脂溶液に投入し十分に攪拌混合を行う。次いで水300部を用いて機械乳化分散を行い、得られた乳化分散液を脱溶剤することによって、不揮発分40%の水分散体を得た。得られた該水分散体を実施例1と同様にして接着剤を調整した後、接着面同士を貼り合わせ、各接着性能の評価を行った。本発明の製造方法で得たポリウレタン樹脂水性分散体を用いた該接着剤は、表3に示す通り、優れた性能を示した。
【0069】
《比較例1》
表2に示すように実施例1の乳化分散工程において、機械を使用せずに手による攪拌のみで乳化分散する以外は実施例1と同様の操作にて合成を行い、不揮発分50%の水分散体を得た。得られた該水分散体の粒子安定性は悪く、製造から1日後には凝集沈降し実施例1と同様の接着剤の調製はできなかった。
【0070】
《比較例2》
表2に示すように実施例1のネオコール YSKを添加しないこと以外は実施例1と同様の操作にて合成を行い、不揮発分50%の水分散体を得た。得られた該水分散体を実施例1と同様にして接着剤を調製した後、接着面同士を貼り合わせ、各接着性能の評価を行った。その結果を表3に示したが、塗布性、コンタクト性、初期接着強度、耐熱クリープに劣るものであった。
【0071】
《比較例3》
表2に示すように実施例1のネオコール YSKの添加をポリウレタン樹脂水性分散体を製造してから後添加で混合した以外は実施例1と同様の操作にて合成を行い、不揮発分50%の水分散体を得た。得られた該水分散体を実施例1と同様にして接着剤を調製した後、接着面同士を貼り合わせ、各接着性能の評価を行った。その結果を表3に示したが、耐熱クリープ性に劣るものであった。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
実施例及び比較例で得られた接着剤の性能の評価基準は以下に従った。
コンタクト接着性については、◎は「接着性に優れる」、○は「接着性が良好である」ことを表す。
レベリング性については、○は「ムラがなく、平滑である」、△は「平滑性に劣る」ことを表す。
刷毛塗り性については、○は「刷毛のすべりが良く、スムースに塗布が可能である」、△は「刷毛のすべりに劣る」ことを表す。
【0075】
【発明の効果】
本発明は、従来のポリウレタン水性分散体において問題であったコンタクト接着性、塗布適性を解決するものであり、本発明の製造方法により得られるポリウレタン水性分散体を用いることにより、貼り合わせ直後のコンタクト接着性に優れ、しかも初期接着強度及び最終接着強度、耐熱クリープ性、耐久性にも優れ、良好な塗布性を有するポリウレタン水性接着剤を提供出来、該接着剤はゴムや皮革、金属、ポリ塩化ビニル等のプラスチック、発泡体等の各種基材の接着に好適であり、特に靴用接着剤として有用である。
Claims (5)
- ポリイソシアネート(A)、水酸基価が10〜350mgKOH/gのポリオール(B)、及び有機溶剤(C)をイソシアネート基:水酸基=(2.00〜1.01):1.00なる当量比の範囲で反応させて得られたプレポリマー(D)と、ジアルキルスルホコハク酸型金属塩、ジアルキルスルホコハク酸型有機塩、アルキルベンゼンスルホン酸型金属塩、及びアルキルベンゼンスルホン酸型有機塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(E)を含有する水溶液(F)とを混合し機械乳化分散させて得られた水性分散体(G)に、分子量300以下で官能基数が2以上であるポリアミン(H)を、プレポリマー(D)に存在するイソシアネート基に対して、アミン基/イソシアネート基=1.9当量比以下で混合し、鎖伸長反応させてポリウレタン樹脂水性分散体を製造する方法であって、ポリオール(B)及びポリアミン(H)の内の少なくとも1つがカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を含有し、得られたポリウレタン樹脂水性分散体の平均粒子径が1μm以下で、且つ、その標準偏差が1μm以下であることを特徴とするポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法。
- プレポリマー(D)が、ポリイソシアネート(A)、水酸基価が10〜350のポリオール(B)、分子量300以下のポリオール(I)、及び有機溶剤(C)をイソシアネート基:水酸基=(2.00〜1.01):1.00なる当量比の範囲で反応させて得られたものであり、且つポリオール(B)、ポリアミン(H)及びポリオール(I)の内の少なくとも1つがカルボキシレート基及び/又はスルホネート基を含有する請求項1に記載のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法。
- プレポリマー(D)中のポリウレタン樹脂固形分に対する界面活性剤(E)の混合比率が、0.05〜5.0重量%の範囲である請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法。
- ポリオール(B)が、(B−1)芳香族スルホン酸基を含有するジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体、(B−2)分子量300以下のポリオール、及び(B−3)スルホン酸基を含有しないポリカルボン酸もしくはそのエステル誘導体、及び/又は環状エステルを用いて得られる芳香族スルホン酸基を含有するポリエステルポリオールと、芳香族スルホン酸基を含有しない水酸基価が10〜350のポリオールとの混合物である請求項1〜3の何れかに記載のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法。
- ポリオール(B)をプレポリマー(D)中のポリウレタン樹脂固形分中に55重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポリウレタン樹脂水性分散体の製造方法。
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