この発明は,検査対象物の表面の検査のための検査システムおよび調整部材に関する。この明細書において,検査とは計測を含む。したがって,検査対象物とは検査または計測の対象物を意味する。検査すべき表面とは検査または計測の対象となる表面を指す。
薄板状の検査対象物の表面の画像検査のための検査システムでは,搬送路上を搬送される薄板状の検査対象物の表面が,搬送路の幅方向を走査方向とするラインセンサ(たとえば,CCDラインセンサ)を含む撮像装置により撮像され,撮像により得られる画像データに基づいて検査対象物の表面の検査が行われる。
図8は,従来の検査システムの例を示している。
図8(C) において,検査システムは,薄板上の検査対象物Sを搬送する複数のローラ43を含むローラコンベアと,このローラコンベアの搬送路の上方に配置された線状照明光源42および撮像装置41とを備えている。光源42はローラコンベアの搬送路上に定められた検査範囲(検査位置)を,搬送路の幅方向にわたってほぼ均一に照明する。撮像装置41は,ローラコンベアの搬送方向に直交する幅方向に主走査方向をもつCCDラインセンサを含み,光源42によって照明された検査対象物Sの表面からの反射光による光像を撮像する。撮像装置41から出力される画像データに基づいて検査対象物Sの表面の状態の検査が行われる。
検査対象物Sの検査時において,検査対象物Sが光透過性を持つものである場合に,ローラコンベアによる搬送路の検査範囲の下方に,図8(C) に示すように背面板44が配置される。検査対象物Sが光透過性をもつ場合には,撮像装置41は検査対象物Sの表面のみならず,その下方(撮像装置41からみて検査対象物Sよりも遠方)にあるもの(たとえば,ローラコンベアの機構,フロア面等)(以下,背景という)を,検査対象物Sの表面と重ねて撮像することになる。このような背景の像と検査対象物Sの表面の像とが重なってしまうことを回避するために設けられるのが背面板44である。
背面板44は,検査対象物Sの色,透明度等を考慮して選定され,最も一般的には背面板44の上面(撮像装置41に向かう面)は均一な黒色である。背面板44は搬送路上の検査範囲の幅全体にわたる長さを持ち,検査対象物Sの下面に近接した位置に設けられる。
撮像装置41から出力される画像データによって表される画像の画質の向上のために,検査対象物Sの検査に先立って,次の調整が行われる。
(1)光軸およびフォーカシング調整(図8(A) )
オペレータによって,表面にフォーカシング調整用パターン(たとえば,ストライプ状のラインパターン)が描かれたフォーカシング調整用(光軸調整を含む)調整板45が,搬送路上の検査位置(検査範囲を含む範囲)に置かれる。撮像装置41によってフォーカシング調整用調整板45の表面のラインパターンが撮像され,撮像によって得られる画像がモニタ上に映し出される。オペレータは,モニタ上に映し出されるラインパターンを確認しながら,撮像装置41のヨーイング,ピッチングおよびローリングを調整することにより光軸を調整し,かつレンズ位置を調整することにより撮像装置41のフォーカシングを調整する。
光軸およびフォーカシング調整の終了後,フォーカシング調整用調整板45が搬送路上から除去される。フォーカシング調整用調整板45を利用した光軸およびフォーカシング調整は,検査システムに撮像装置41を取付けたとき,定期的メインテナンス時,撮像装置41の修理または交換時等に実施される。
(2)シェーディング補正用データの取得(図8(B) )
シェーディング補正は,撮像装置41から得られる画像データについて,撮像装置41内のCCDラインセンサの画素感度のばらつきを補正するため,および光源42の照明の輝度の不均一性を補正するために行われる。オペレータによって,表面の反射率が均一なシェーディング補正用調整板(たとえば,表面が白色に塗られた板状部材)46が,搬送路上の検査位置に置かれる。撮像装置41によってシェーディング用調整板46の表面が撮像される。撮像により得られる画像データによって表される輝度を均一とするための補正データ(シェーディング補正用データ)が算出される。シェーディング補正データは,コンピュータのメモリに記憶される。シェーディング補正データをメモリに記憶させた後に,シェーディング補正用調整板46が搬送路上から除去される。
検査時において得られる検査対象物Sの撮像画像データは,シェーディング補正データに基づいてシェーディング補正される。シェーディング補正用調整板46を利用したシェーディング補正データ取得のための処理は,撮像装置41と光源42との位置関係が変化したとき,撮像装置41の修理または交換時,光源42の光量が変化したとき,光源42の交換時,撮像装置41のレンズの絞りまたはフォーカスを変更したとき等,または定期的に実施される。
特許文献1には,ロール20の表面に貼り付けられたパターンシート10を撮影し(図2および図3参照),撮影によって得られるオシロスコープ上の波形および撮影画像に基づいて,カメラ視点,焦点,視野,隣り合うカメラの段差を調整する調整方法が記載されている。
特許文献2は,シェーディング板セット機構に関するものである。手続き伝票の読取り装置(OCR装置)において,駆動ローラ21を支持する支持枠24に延設された支持片26にシェーディング板22が取り付けられている。センシング時には,シェーディング板22は駆動ローラ21の下側に退避した位置におかれている(図4)。シェーディング補正を行うときには,モータ33によってアーム34,ピン35,アーム31を介して支持枠24が軸26を中心に回転する。駆動ローラ21がセンサSから離間し,シェーディング板22がセンサの前面に対向する位置にくる(図5)。
図8および特許文献1に示された方法では,光軸およびフォーカシング調整(ならびにシェーディング補正データの取得)を行う度に,調整板(ロール20)を検査位置に設置する必要がある。検査対象物の幅方向(検査対象物の搬送方向と垂直な方向)の長さが長い(たとえば,メートル・オーダー)場合には,調整板も同程度の長さが必要となる。大型の調整板の設置には時間と手間がかかる。また,大型の調整板は設置の度に常に所定位置に設置することが比較的困難である。設置の度に調整板の設置位置にずれが生じると光軸およびフォーカシングも設置のたびにずれが生じ,検査対象物の撮影像の再現性が低いものになる。さらに,調整板の設置に手間がかかるので頻繁に光軸およびフォーカシング調整を行うこともできず,また,大型の調整板はその保管も容易ではない。
特許文献2の機構では,上述のように,シェーディング補正(シェーディング補正データの取得)時においては,シェーディング板22をセンサの前面に対向させるだけでなく,駆動ローラ21をセンサSから離間させる必要があるので,シェーディング補正データの取得のために比較的大きな動力が必要とされる。また,光軸およびフォーカシング調整を行おうとする場合には,シェーディング板22を光軸およびフォーカシング調整用のものに付け替える必要がある。
特開2002−174849号公報
実用新案登録第2605870号公報
この発明は,検査対象物の検査に先立って行われる光軸調整,フォーカシング調整等の調整作業およびシェーディング補正データの取得の作業を,比較的短時間で行うことを目的とする。
この発明はまた,上記の各種作業の再現性を高めることを目的とする。
この発明はさらに,上記の各種作業を頻繁に実施できるようにすることを目的とする。
さらにこの発明は,フォーカシング調整板やシェーディング補正用板を保管する必要をなくすことを目的とする。
さらにこの発明は,上記の各種作業のみならず,光透過性を有する検査対象物の検査に用いる背景板の設置,保管等を簡略化することを目的とする。
この発明による検査システムは,検査対象物を搬送する搬送装置の搬送路上に定められた検査範囲(検査位置)を,搬送方向に直交する幅方向の全体にわたって照明装置により照明し,検査対象物の検査すべき表面からの反射光による像を,上記幅方向を走査方向とするラインセンサを含む撮像装置により撮像し,撮像により得られた画像データに基づいて検査対象物の上記表面を検査するものにおいて,搬送路上の検査範囲(検査位置)に,調整部材が,上記幅方向に延びる回転軸を中心に回転自在に設けられ,この調整部材は,搬送路上の検査範囲(検査位置)の上記幅方向の全体にわたる長さを有し,かつそれぞれの回転角度位置において搬送装置の搬送面と平行となる少なくとも3つの第1,第2および第3の平面を有し,第1の平面はフォーカシング調整用パターンを有し,第2の平面はシェーディング補正用の面であり,第1の平面および第2の平面が搬送面と平行になるそれぞれの回転角度位置では,第1の平面および第2の平面は搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面が通過する位置にもたらされ,第3の平面は背景用であって,第3の平面が搬送面と平行になる回転角度位置では,第3の平面は搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面とは反対側の面よりも退出することを特徴とする。
検査対象物は,薄板状もの,シート状のもの,薄枠状のもの等を含む。枠体のもの,孔等があけられた薄板等であっても,検査すべき表面はほぼ一平面上にある。もちろん,検査システムは検査対象物の表面の全体のみならず,表面の一部の検査も可能である。
検査対象物を搬送する搬送装置は,ベルトコンベア,ローラコンベア,その他の搬送装置を含み,搬送路上に載置または保持される検査対象物を搬送する。検査対象物が載置される搬送装置の面が搬送面である。たとえば,ベルトコンベアの場合はベルトの表面が搬送面に相当する。ローラコンベアの場合は配列された複数のローラに接する仮想の面が,搬送面に相当する。
調整部材の3つの平面(第1の平面,第2の平面および第3の平面)はその長さ方向の全体(軸等は除く,実質的に調整等のために用いる長さの全体の意味である)にわたっている。搬送装置において,調整部材が設けられる場所(搬送路上の検査位置)には,当然ながら調整部材を設けるための空間がある。この空間に調整部材が設けられる。
調整部材はその回転軸が搬送方向に直交する方向(幅方向)になるように配置され,調整部材は回転軸を中心に回転自在に保持される。上記の3つの平面に対応するそれぞれの回転角度位置において調整部材の3つの平面が搬送装置の搬送面と平行となる。
第1の平面および第2の平面が搬送面と平行になるそれぞれの回転角度位置では,第1の平面および第2の平面は搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面が通過する位置にもたらされる。たとえば,搬送面が上方向を向いている場合には,搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面が通過する位置は,高さ位置を意味する。第1の平面および第2の平面は検査対象物の上記表面が通過する高さ位置にもたらされる。
第1の平面にはフォーカシング調整用(光軸調整用を含む)パターンが設けられる。フォーカシング調整用パターン(第1の平面)が検査対象物の上記表面が通過する位置にもたらされた回転角度位置において,このフォーカシング調整用パターンを撮像装置によって撮像することにより得られるパターン画像データに基づいて,撮像装置のフォーカシング調整,および必要ならば撮像装置の光軸調整が行われる。
第2の平面はシェーディング補正用の面である。シェーディング補正用の面(第2の平面)が検査対象物の上記表面が通過する位置にもたらされた回転角度位置において上記シェーディング補正用の第2の平面を撮像装置によって撮像することにより得られる画像データに基づいてシェーディング補正用データが算出される。
第3の平面は背景用である。調整部材の第3の平面は検査対象物を検査するときに搬送面と平行とされる。第3の平面が搬送面と平行になる回転角度位置では,第3の平面は搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面と反対側の面よりも退出する。これは2つの意義をもつ。その一つ目は,第3の平面が搬送面と平行となり,検査対象物の搬送面よりも退出するので,検査をするために検査対象物を検査位置まで,および検査位置を通過して搬送するときに,調整部材は邪魔にならないということである。その二つ目は,第3の平面は背景用であって,背景のための表面処理(たとえば,黒一色に塗るなど)が施されているということである。したがって,検査対象物が光透過性を持つものである場合で,撮像装置が検査対象物の表面のみならず背面側(裏側)に位置する物まで撮像しても,検査対象物の背面側には調整部材の背景用平面が存在し,この背景用平面が撮像されるから,撮像装置から出力される画像データでは背景が雑音とならず(または画像処理で除去可能なものであり),検査対象物の表面を正しく表わす画像データを得ることができる。
一実施態様では,調整部材を,その横断面が長方形である柱状のものとする。そして,横断面の短辺を含む2つの面をそれぞれ第1の平面および第2の面とし,横断面の長辺を含むいずれか一方の面を第3の面とする。第1の平面または第2の面(横断面の短辺を含む面)を搬送面と平行とした場合には第1または第2の面は搬送路内に突出するが,第3の平面が搬送面と平行になる回転角度位置においては,第3の平面は,搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面と反対側の面よりも退出する。
この発明によると,回転軸を回転させ,それぞれの回転角度位置に位置決めすることによって,調整部材の第1の平面または第2の平面を,搬送装置の搬送面と平行とすることができるので,フォーカシング調整用の調整部材またはシェーディング補正用の調整部材を,調整または補正のたびに搬送路上に設置する,設置した調整部材を取除く,調整部材を交換する,という作業が不要となる。このため,フォーカシング調整およびシェーディング補正に要する時間を短くすることができ,検査対象物の検査が長時間滞ってしまうことがない。調整作業から検査作業に移行する移行時間,検査作業から調整作業に移行する移行時間も短くすることができる。また,調整部材を搬送路から取除く必要がないので,調整部材の保管のための場所も必要とされない。上記の各種作業を短時間で行えるから,フォーカシング調整やシェーディング補正データの取得を頻繁に行うことができる。
また,調整部材の回転動作または回転操作によってフォーカシング調整用パターン(第1の平面)またはシェーディング補正用の面(第2の平面)が搬送面と平行とされるので,調整作業の度に調整部材を設置するのに比べて,第1の平面または第2の平面の位置を,比較的精度よく毎回同じ位置にすることができ,フォーカシング調整またはシェーディング補正データの取得の再現性がよくなる。
さらにこの発明によると,第1の平面または第2の平面が搬送面と平行になるそれぞれの回転角度位置において,第1の平面または第2の平面は搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面が通過する位置にもたらされるので,検査対象物の上記表面と同じ位置(次に述べるばらつきを許容する範囲を含む)においてフォーカシング調整を行うことができ,またシェーディング補正用データを得ることができる。すなわち,検査対象物を検査するための撮像時と同じ条件下においてフォーカシング調整のための撮像を行うことができ,またはシェーディング補正用データを得るための撮像を行うことができる。
搬送路上を搬送される検査対象物の検査すべき表面が通過する位置は,検査対象物の厚さによって変化する場合があるので若干のばらつきがあるが,このばらつきは撮像装置の被写界深度により吸収されるので多少のばらつきがあっても許容範囲内である。
背景用の第3の平面が搬送面と平行になる回転角度位置では,第3の平面は搬送路から退出するので,調整部材が検査対象物の搬送の障害になることがない。また,第3の平面は背景用であるから,検査対象物が光透過性を有するものにも対処し得る。
調整部材の回転は,オペレータが手動で行うことができる。この場合には,調整部材を上記の各回転角度位置に位置決めする,または固定する機構を設けておくことが好ましい。
好ましい実施態様では,調整部材の回転と位置決めを自動的に行う。すなわち,与えられる指令に応答して,上記調整部材を上記のそれぞれの回転角度位置まで回転させ,かつその角度位置に固定する回転駆動装置が設けられる。
この発明は,検査システムに用いられる調整部材も提供している。この発明による調整部材は,長さ方向の回転軸を中心に回転自在に支持されうるものであり,長さ方向の全体にわたる少なくとも3つの第1,第2および第3の平面を有し,第1の平面はフォーカシング調整用パターンを有し,第2の平面はシェーディング補正用の面であり,第3の平面は背景用であることを特徴とする。
検査対象物が光透過性を有しているものでない場合には,調整部材の第3の面を背景用とする必要はない。この発明はさらに,フォーカシング調整(光軸調整を含む)およびシェーディング補正用データの取得に適した検査システムも提供している。この検査システムは,検査対象物を搬送する搬送装置の搬送路上に定められた検査範囲(検査位置)を,搬送方向に直交する幅方向の全体にわたって照明装置により照明し,検査対象物の検査すべき表面からの反射光による像を,上記幅方向を走査方向とするラインセンサを含む撮像装置により撮像し,撮像により得られた画像データに基づいて検査対象物の上記表面を検査するものにおいて,搬送路上の検査範囲(検査位置)に,調整部材が,上記幅方向に延びる回転軸を中心に回転自在に設けられ,この調整部材は,搬送路上の検査範囲(検査位置)の上記幅方向の全体にわたる長さを有し,かつそれぞれの回転角度位置において搬送装置の搬送面と平行となる少なくとも2つの第1および第2の平面を有し,第1の平面はフォーカシング調整用パターンを有し,第2の平面はシェーディング補正用の面であり,第1の平面および第2の平面が搬送面と平行になるそれぞれの回転角度位置では,第1の平面および第2の平面は搬送路上を搬送される検査対象物の上記表面が通過する位置にもたらされることを特徴とするものである。
検査対象物の検査のときに,調整部材を検査対象物の搬送の邪魔にならないように搬送路から退出させる構成としては,ある回転角度位置で調整部材のどの部分も搬送路から退出した状態となるような形状とすることや,調整部材を,搬送面に垂直な方向に進退自在とし,検査時には調整部材を搬送路から退出させる形態がある。
図1は,検査システムを概略的に示す斜視図である。
検査システムは,検査対象物の表面をCCDラインセンサを含む撮像装置によって撮像し,撮像によって得られる画像データに基づいて,検査対象物の表面を検査するためのシステムである。この検査システムの検査対象物の例としては,シャドウマスク,カラーフィルタ,プラズマディスプレイパネル,プロジェクションスクリーン,有機ELパネル,反射防止フィルム,防眩フィルム,帯電防止フィルム等のシート状または薄板状の製品または半製品を挙げることができる。これらのシート状または薄板状の製品の表面には種々の加工,たとえば,表面の凹凸を削る,表面から裏面に貫通する穴をあける,表面に膜を形成(塗布)する,といった加工が施される。撮像装置によって得られるこれらの加工後の検査対象物の表面を表す画像データに基づいて,加工箇所の位置検査,加工寸法の検査,表面検査(傷または凹凸がないかどうか),貫通部の有無の検査(貫通していなければならない部分が貫通しているか,貫通してはいけない部分に貫通がないかどうか),均一性検査(膜厚や表面状態が均一かどうか)等が行われる。上記の通り,検査は測定を含む。
搬送装置はローラコンベアであり,多数のローラ3が搬送路にそって水平面上に一定間隔で平行に配列されている。これらのローラ3の両端は搬送装置のフレーム(鎖線で示す)により回転自在に支持され,かつローラ3は搬送駆動装置(図示略)によって互いに同期して回転駆動される。上流の検査対象物供給装置(図示略)から供給される検査対象物Sは,ローラ3上(搬送路上)を下流(搬送方向)に向けて搬送される。搬送装置の搬送路上に定められた検査位置(検査範囲)の上方において,検査位置よりもやや上流側に線状照明光源2が,やや下流側にCCDラインセンサを含む撮像装置1がそれぞれ固定的に設けられている。線状照明光源2は,搬送路の幅方向(搬送方向と直交する方向)にのび,搬送路上の検査位置をその検査範囲の全体(搬送路の幅方向のほぼ全体)にわたってほぼ均一に斜め上方から照明する。撮像装置1のCCDラインセンサは搬送路の幅方向を走査方向とするように配置され,その光源2により照明された検査位置(検査範囲)をその幅方向の全体にわたって撮像する。
搬送路上の検査位置において,2本のローラ3間の間隙がやや広くなっており,ここに直方体状(柱状)の調整部材4が,その長手方向が搬送路の搬送方向に直交する幅方向に延びるように設けられている。調整部材4の両端面の中心から回転軸4A(図2参照)が外方に向けて延びている。回転軸4Aは,搬送装置のフレームに固定された軸受5によって回転可能に支持されている。
一方の軸受5の外側にステッピング・モータ6が取付られている。ステッピング・モータ6のモータ軸は調整部材4の回転軸4Aと連結されている。ステッピング・モータ6のモータ軸が回転することにより,調整部材4も回転軸4Aを中心に回転し,かつ所定の回転角度位置に位置決めされる。ステッピング・モータ6は,後述するように,制御装置から与えられる指令に応じて所定角度回転する。
図2は調整部材4を拡大して示す斜視図である。図3は,調整部材4の4つの面を展開して示す展開図である。
調整部材4をその外観から見ると,調整部材4は六面を有する直方体状(柱状)の外形を持つ。調整部材4の両端面の中央にはそれぞれ,上述のように,回転軸4Aが取付けられて固定され,調整部材4の長手方向の外方に延びている。
調整部材4はその横断面が長方形であり,4つの側面4a,4b,4cおよび4dを有している。これらの4つの側面のうち,長方形断面の短辺を含む側面4a,4cは幅が狭く,長方形断面の長辺を含む側面4b,4dの幅は広い。
幅の狭い側面4aは,フォーカシング調整用(および光軸調整用)の平面である。フォーカシング調整用平面4aには,その幅方向(長手方向と垂直な方向)にのびるラインが長手方向に沿って一定間隔で描かれている(ライン・アンド・スペース・パターン)。
もう一つの幅の狭い面4cはシェーディング補正用の平面である。このシェーディング補正用平面4cはその全面が均一な白色である。
幅の広い面4bは背景用である。この背景用平面4bはその全面が均一な黒色である。
もう一つの幅の広い平面4dはこの実施例では利用されないので,調整部材4の素材色が現れていてもよい。この平面4dを黒色としてもよい。この場合には,調整部材4は2つの背景用平面を持つ。
フォーカシング調整用平面4aのラインは,調整部材4の平面4aに直接に描いてもよい。背景用平面4bの黒色,シェーディング補正用平面4cの白色は,調整部材4の平面4b,4cにそれぞれ直接に塗ってもよい。またはこれらのフォーカシング調整用平面4a,背景用平面4b,シェーディング補正用平面4cは,それぞれラインが描かれた,または黒色もしくは白色のシール,シート等を,調整部材4の各側面に貼付してもよい。
図4(A) はフォーカシング調整(光軸調整を含む)時の状態を,図4(B) はシェーディング補正用データの取得時の状態を,図4(C) は検査対象物の検査時の状態をそれぞれ示している。
検査システムでは検査対象物Sの検査に先立って(前処理として),撮像装置1の光軸およびフォーカシング調整が行われる。光軸およびフォーカシング調整時においては,図4(A) に示すように,調整部材4のフォーカシング調整用平面4aが搬送面(ローラ3の表面に接する面)(図4(A) に破線で示す)と平行になる回転角度位置に位置決めされる。このときフォーカシング調整用平面4aは,搬送面上を搬送される検査対象物Sの検査されるべき表面が通過する高さ位置(図4(A) に実線で示す)になる。すなわち,フォーカシング調整用平面4aは,搬送面よりも高さa上方に突出する。高さaは検査対象物Sの厚さc(図4(C) 参照)に相当する。このとき,撮像装置1によってフォーカシング調整用平面4aが撮像されて,光軸およびフォーカシング調整が行われる(詳しくは後述する)。
また,検査システムでは検査対象物Sの検査に先立って(前処理として),シェーディング補正用データの取得処理が行われる。シェーディング補正用データの取得処理時には,図4(B) に示すように,調整部材4はそのシェーディング補正用平面4cが搬送面に平行になる回転角度位置に位置決めされる。このときシェーディング補正用平面4cは搬送面上を搬送される検査対象物Sの表面が通過する高さ位置になる。すなわち,シェーディング補正用平面4cは,搬送面よりも高さb上方に突出する。高さbは上記高さaと同じであり,検査対象物Sの厚さc(図4(C) 参照)に相当する。このとき撮像装置1によってシェーディング補正用平面4cが撮像されて,シェーディング補正用データが得られる(詳しくは後述する)。
検査対象物Sの検査時には,図4(C) に示すように,調整部材4はその背景用平面4bが搬送面と平行になる回転角度位置に位置決めされる。このとき,背景用平面4bは搬送面よりも下方に退出し,検査対象物Sの搬送の邪魔になることはない。検査対象物Sは撮像装置1により撮像され,この撮像により得られる画像データに基づいて各種検査が行われる。背景用平面4bは黒色であるから,検査対象物Sが光透過性を持つものであっても,画像データに悪影響を与えることはない。
調整部材4のそれぞれの回転角度位置で,図4(A) 〜(C) に示す上述した条件が満たされるように,調整部材4の幅,厚さの寸法およびその回転軸の位置があらかじめ定められるか,または調整される。
搬送路上を搬送される検査対象物Sの検査すべき表面が通過する高さ位置は,検査対象物Sの厚さによって変化するので若干のばらつきが生じるが,このばらつきは撮像装置1の被写界深度により吸収される。このため,検査対象物Sの厚さに若干のばらつきがあっても,調整される光軸およびフォーカシングならびに取得されるシェーディング補正用データは,許容できる範囲内に収まる。
この検査システムにおいて,異なる厚さを持つ複数種類の検査対象物Sの検査を行う場合には,搬送される検査対象物Sの厚さに応じて,調整部材4の高さ位置(調整部材4に取付けられている軸4Aの高さ位置)を調整するか,または幅,厚さの異なる複数種類の調整部材4を用意しておき,その中から検査対象物Sの厚さに適合するものを使用するように交換してもよい。調整部材4の高さ位置の調整または交換は,光軸およびフォーカシング調整ならびにシェーディング補正データの取得処理に先だって行われる。
図5は検査システムの電気的構成を示すブロック図である。
検査システムは制御装置21を含む。制御装置21によって検査システムの全体が統括的に制御される。
制御装置21には,検査システムに指示または指令を与えるための操作装置(キーボード,マウス等)22,検査システムによって得られる撮像画像,検査結果等を表示するための表示装置23,搬送装置を制御するとともに,検査システムの前工程の装置および後工程の装置との連動等の制御のための搬送制御装置24,CDDラインセンサおよびそれを駆動するCCD駆動装置27を含む撮像装置1,ステッピング・モータ6を駆動するモータ駆動装置28および画像処理装置25が接続されている。画像処理装置25は,撮像装置1によって得られる画像データに対してシェーディング補正,その他の画像処理を行うものである。シェーディング補正等が施された画像データに基づいて,検査対象物の表面の検査(加工箇所の位置検査,加工寸法検査,表面検査(傷がないかどうか),貫通部検査(貫通していなければならない部分が貫通しているか,貫通してはいけない部分に貫通がないかどうか),均一性検査(膜厚や表面状態が均一かどうか)等)が行われる。画像処理装置25はまたシェーディング補正用データを作成する。
図6は,検査システムの動作の流れの一例を示すフローチャートである。
オペレータによって光軸およびフォーカシング調整指示が操作装置22から入力される。操作装置22に入力された光軸およびフォーカシング調整指示は制御装置21に与えられる。制御装置21は,フォーカシング調整用平面4aが上方を向くように回転させる駆動命令をモータ駆動装置28に与える。モータ駆動装置28はこの駆動命令に応答してステッピング・モータ6のモータ軸を回転させ,調整部材4のフォーカシング調整用平面4aが搬送面と平行になり,上方を向く回転角度位置に調整部材4を位置決めし,かつその位置に固定する(ステップ11,図4(A) )。
制御装置21から撮像装置1のCCD駆動装置27に撮像命令が与えられる。CCD駆動装置27は撮像命令が与えられるとCCDラインセンサ10を駆動する。撮像装置1によって調整部材4のフォーカシング調整用平面4aが撮像される(ステップ12)。
撮像によって得られた画像データに基づく画像が表示装置23の表示画面上に表示される。オペレータは,表示画面上に表示されている画像を確認しながら,ヨーイング,ピッチングおよびローリングを調整することにより撮像装置1の光軸を調整する。また,オペレータは,表示画面上に表示されている画像を確認しながら,撮像装置1のフォーカス・レンズ位置を調整することによりフォーカシング調整を行う(ステップ13)。これらの調整の一部または全部を制御装置21の制御により自動的に行うようにしてもよい。
光軸調整は,一般には,撮像装置1を固定している支持部材(図示略)に設けられている調整ねじ(ヨーイング調整ねじ,ピッチング調整ねじおよびローリング調整ねじ)を,オペレータが操作する(各調整ねじを回転させる)ことにより行われる。フォーカシング調整は,フォーカス・レンズを光軸方向に移動させるための撮像装置1に設けられるボリュームをオペレータが操作することによって行われる。もちろん,光軸調整およびフォーカシング調整を手動でなく,自動で行うようにしてもよい。たとえば,フォーカシングの自動調整は,操作装置22から与えられるフォーカス調整指令を撮像装置1に設けられるレンズ制御回路に入力し,レンズ制御回路によってフォーカス調整指令に応じてフォーカス・レンズの位置を調整することにより実現される。
光軸およびフォーカシング調整が終了すると(ステップ14でYES )(たとえば,光軸およびフォーカシング調整が終了した旨を,オペレータが操作装置22に入力すると),制御装置21は撮像装置1による撮像を一旦停止させる(もちろん,継続して撮像を続けてもよい)。また,光軸およびフォーカシング調整が終了すると(またはオペレータによって操作装置22に入力されるシェーディング補正指令に応じて),制御装置21は,シェーディング補正用平面4cが上方を向くように調整部材4を回転させる駆動命令をモータ駆動装置28に与える。モータ駆動装置28はこの駆動命令に応答してステッピング・モータ6のモータ軸を半回転させる。モータ軸の回転動作に連動して調整部材4も半回転する。すなわち,モータ駆動装置28は,調整部材4のシェーディング補正用平面4cが搬送面と平行になり,上方を向く回転角度位置に調整部材4を位置決めし,かつその位置に固定する(ステップ15,図4(B) )。
再び制御装置21から撮像装置1に撮像命令が与えられる。CCDラインセンサ10が駆動され,撮像装置1によって調整部材4のシェーディング補正用平面4cが撮像される(ステップ16)。撮像装置1から出力される画像データに基づいて画像処理装置25においてシェーディング補正用データが取得(算出)される(ステップ17)。シェーディング補正用データは画像処理装置25のメモリ(図示略)に記憶される。
シェーディング補正用データのメモリへの記憶が終了すると,制御装置21は,撮像装置1による撮像を一旦停止させる。また,シェーディング補正用データのメモリへの記憶が終了すると(またはオペレータによって操作装置22に入力される検査指令に応じて),制御装置21は,背景用平面4bが上方を向くように調整部材4を回転させる駆動命令をモータ駆動回路28に与える。モータ駆動装置28はこの駆動命令に応答してステッピング・モータ6のモータ軸を1/4(または3/4)回転させる。モータ軸の回転に連動して調整部材4も1/4(または3/4)回転する。すなわち,モータ駆動装置28は,調整部材4の背景面4bが搬送面と平行になり,上方を向く回転角度位置に調整部材4を位置決めし,かつその位置に固定する(ステップ18,図4(C) )。
制御装置21から撮像装置1に撮像命令が与えられる。また制御装置21から搬送制御装置24に搬送駆動命令が与えられる。搬送制御装置24による検査対象物Sの搬送が開始される。検査対象物Sが搬送路上の検査位置に達すると,撮像装置1によって検査対象物Sが撮像される。撮像装置1から出力された画像データは画像処理装置25に入力する。画像処理装置25は,撮像によって得られた検査対象物Sの画像データに対し,メモリに記憶されているシェーディング補正用データに基づくシェーディング補正等を行う。シェーディング補正等が施された検査対象物Sの撮像画像が,表示装置23の表示画面上に表示される。撮像画像に基づく各種検査が行われる(ステップ19)。検査は,一般的には,検査対象物Sを搬送しながら,その表面を所定のピッチで撮像装置1により連続的に撮像することにより得られる画像データに基づいて行われる。
上述の検査システムの動作の流れでは,光軸およびフォーカシング調整(ステップ11〜14),シェーディング補正(ステップ15〜17),ならびに検査対象物Sの検査(ステップ18〜19)が連続して行われているが,もちろん,光軸およびフォーカシング調整,シェーディング補正データの取得,ならびに検査対象物Sの検査は,常に連続して行う必要は必ずしもない。必要に応じて,光軸およびフォーカシング調整,シェーディング補正データの取得,または検査対象物Sの検査を選択的に行うこともできる。この場合には,光軸およびフォーカシング調整のための指令,シェーディング補正のための指令,または検査対象物Sの検査のための指令が,オペレータによって操作装置22から必要に応じて,その都度入力される。入力される指令の種類に応じて,制御装置21によって,上述のように,撮像装置1(CCD駆動装置27およびCCDラインセンサ10),モータ駆動装置28およびステッピング・モータ6,搬送制御装置24,ならびに画像処理装置25が制御され,光軸およびフォーカシング調整,シェーディング補正データの取得,または検査対象物Sの検査が行われる。
図7は,図4(A)〜(C) に示す検査システムの他の例を示している。撮像装置1および光源2がローラ3の下方に配置され,調整部材4,軸受5およびステッピング・モータ6が,ローラ3の上方に配置されている点が,図4(A)〜(C)に示す検査システムと異なる。
図7に示す構成(配置構成)を持つ検査システムでは,ローラ3上を搬送される検査対象物の底面が撮像装置1によって撮像される。調整部材4のフォーカシング調整用平面4aおよびシェーディング補正用平面4cは,搬送面に平行でかつ下方を向く回転角度位置に位置決めされ,このとき搬送面上を搬送される検査対象物Sの下面(検査すべき表面)と同じ高さ位置となる。検査対象物の検査時においては,調整部材4の背景用平面4bが搬送面と平行でかつ下方に向く回転角度位置に位置決めされ,このとき調整部材4の背景用平面4bは,搬送面よりも上方に退出する。検査対象物Sの搬送が調整部材4によって遮られることはない。
検査システムの概略的構成を示す斜視図である。
調整部材の拡大斜視図である。
調整部材の両端面を除く4面の展開図である。
(A) は光軸およびフォーカシング調整時の様子を,(B) はシェーディング補正データの取得のときの様子を,(C)は検査対象物の検査時の様子を,それぞれ示している。
検査システムの電気的構成を示すブロック図である。
検査システムの運用の一例を示すフローチャートである。
他の検査システムの概略的構成を示す。
従来の検査システムの概略的構成を示すもので,(A) は光軸およびフォーカシング調整時の様子を,(B) はシェーディング補正データを得るときの様子を,(C) は検査対象物の検査時の様子を,それぞれ示している。
符号の説明
1 撮像装置
3 ローラ
4 調整部材
4a フォーカシング調整用平面
4b 背景用平面
4c シェーディング補正用平面
6 ステッピング・モータ
10 CCDラインセンサ
22 操作装置
23 表示装置
24 搬送制御装置
25 画像処理装置
27 CCD駆動装置
28 モータ駆動装置