JP4342778B2 - マルチセルサイクロン - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特許請求範囲１に記載したような、多くのサイクロンセルを並列に接続したマルチセルサイクロンに関する。
【０００２】
【従来の技術】
このようなマルチセルサイクロンは、例えばＤＥ２９８１９３３５Ｕ１により公知である。この文書によると、前記マルチセルサイクロンはエアフィルターで粒子状物質を予め分離するのに使用される。前記文書の図１にはマルチセルサイクロンのモジュール構成が示されており、サイクロンセル２０は２個の穴付き板１９の間に取り付けられ、両穴付き板の間は分離された粒子状物質の集合室となり、分離された粒子状物質は分離物出口２６から排出される。サイクロンセル２０は標準部品であり、大量生産によって安価に製作することができる。該サイクロンセルを集積することにより、可能な体積流量に対して構造容積が比較的小さい安価なサイクロン分離器を実現できる。勿論、１個のマルチセルサイクロンに集積されるサイクロンセルの数に制限があるわけではない。取り付けるサイクロンセルの数が多い程、分離された物質が分離物搬出口から遠くなるという問題がある。このことは、作動中における個々のサイクロンセルの閉塞を惹起し、それによりマルチセルサイクロンの分離効果およびサイクロンにより生じる圧力損失に不利に影響する。サイクロンセルの数を多くすると分離物出口も多くしなければならず、それによって追加の製作費用が発生し、このような構成のマルチセルサイクロンの経済性を損なうことになる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、したがって妥当なコストで最適な分離効果と持続期間が得られるマルチセルサイクロンを提供することである。この課題は請求項１および２の特徴によって解決される。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明のマルチセルサイクロンは、清浄にされる流体の入口と清浄にされた流体の出口を共通に有する個々のサイクロンセルから周知の方法で作製される。さらに、分離された物質が吸引される分離物搬出口が設けられる。このために通常は清浄にすべき流体の部分流が分離物質と共に吸引されるように負圧が生じさせられる。この吸引のためにハウジング内にはサイクロンセルが設けられて該サイクロンセルでの分離物質に富んだ外周領域が前記ハウジングに開口している。サイクロンセルの清浄側出口は中間筒を通して形成されており、該中間筒は、サイクロンセル内に沈んでいて、ろ過すべき流体の前記中間筒内側部の容積流を取り込む。マルチセルサイクロンは、物質を液体から分離するのにも気体から分離するのにも利用することができる。マルチセルサイクロンの一用途としては内燃機関のエアフィルタにおける前分離器として用いられる。
【０００５】
本発明の特徴は、サイクロンセルがグループとして配設されていることである。夫々のグループは分離された物質が分離物搬出口の方に搬出され易いような通路構成部が形成されるように配置される。その際、該通路構成部は、１つのグループ内での互いのサイクロンセル間隔に比較して分離された物質を通過させる断面を広く利用できるように形成される。これにより、与えられた吸引性能において全サイクロンセルから均等な吸引が行われる。かくして、分離物搬出口から遠いサイクロンセルからも吸引される。この方法によりサイクロンセルの閉塞が効果的に防止され、低いコストで多数のサイクロンセルを1つのマルチセルサイクロンに装着することができる。
【０００６】
サイクロンセルのグループは、通路構成部により完全に分割されたサイクロンセル群と定義される。特別な実施形態では、グループ内の隣接するサイクロンセルは互いにぶつかり合うように配置される。これによりサイクロンセルの壁が通路構成部の壁を形成し、閉じた通路構成部が形成される。さらに、該通路構成部は分離された物質を外部吸引するための空間を仕切るハウジングによって形成される。
【０００７】
本発明の他の実施形態では、サイクロンセルグループが夫々のモジュールに組み込まれる。これらのモジュールはモジュールハウジングを有し、該モジュールハウジング自身は分離された物質のための小さな集合室を形成している。これら集合室はハウジングの通路構成部に通じる開口を備えている。このようにして、マルチセルサイクロンは多数の小さなマルチセルサイクロンでモジュールに構成される。モジュールは好ましくは４から１０個のセルを有するのがよい。この数量のサイクロンセルならば共通の集合室を介しての吸引でも全く問題がないからである。モジュールの開口部は全てのモジュールが分離物搬出口に向かって同じように吸引されるように前記した通路構成部に向かって開口される。各モジュールの閉塞は、したがって前記したのと同じように効果的に防止される。
【０００８】
好ましい実施形態としては、サイクロンセルのグループ（前記したモジュールであってもよいのであるが）を規則的に配置するのがよい。ここに規則的配置とは、特に中心対称あるいは軸対称配置を意味する。対称配置によりハウジング内の流れを規則正しい状態にすることができる効果がある。これにより、分離物排出による清浄化効果を予測することができ、マルチセルサイクロンの信頼性が向上される。
【０００９】
本発明の特に好ましい実施形態では、全部のサイクロングループを取り囲む環状通路で通路構成部を囲むのがよい。この環状通路を通して分離層を分離物搬出口の方に吸引させることができる。特に、モジュールを用いる場合、モジュールをその開口部が環状通路に向かって外向きに開口するように配置することができる。
【００１０】
これにより、分離された物質を直接に搬送する短い通路が形成されることになる。この場合、したがって環状通路の他にさらに通路構成部を形成する必要はない。勿論、環状通路をマルチセルサイクロン内に通じてサイクロンセルをグループに分割する通路構成部と連通させてもよい。
【００１１】
いくつかのサイクロンセルを所謂ダミーパイプで置き換えることによって本発明のマルチセルサイクロンの分離効果を向上することもできる。ダミーパイプにより通路構成部と吸入口が直接に連通され、ダミーパイプに置き換えられるサイクロンセルを通ってハウジングに導かれる場合よりも少ない圧力損失で流体がダミーパイプを通ってハウジングに導かれる。したがって、通路構成部の形成にも拘わらず分離機能が他のマルチセルサイクロンよりも問題となるマルチセルサイクロンの領域にダミーパイプを用いるとよい。１つのサイクロンセルを置き換えられるダミーパイプを設けることにより、マルチセルサイクロンの閉構造に応じてその構造に基本的な変更を加えることなしに分離効果の最適化を図ることができる。したがって、ダミーパイプの使用により低コストの代替品を製作することができる。例えば、単体として製作されるマルチセルサイクロンを、実験あるいは既得の結果を適用して最適化することができる。
【００１２】
【００１３】
本発明の有効な実施形態の１つでは、１つのサイクロンセルグループは１つの本体と１つの補助体で構成される。本体は清浄にされるべき流体を通過させるためのパイプ状構造部を有する。該本体は、分離された物質が送り出される場所まで吸入口から延設される。補助体は中間筒で形成された清浄にされた流体の出口側を有する。該中間筒は、前記本体内に沈んでいて、筒部が半径方向外側領域を形成し、清浄にされた流体が該領域で分離された物質の層から分かたれる。
【００１４】
【００１５】
【００１６】
上記およびその他の本発明の好ましい特徴が、請求項、また明細書及び図面から案出され、個々の特徴がそれ自身あるいは多くは本発明の実施形態を組合せた形態でおよび他の分野で実現される有利かつそれ自身保護され得る実施形態を示すことができ、それらに対して茲に保護を要請するものである。
【００１７】
【発明の実施の形態】
図１にはモジュール１０が矢印１１にしたがって組立てられる前の状態で示されている。該モジュールは本体１２と補助体１３からなる。前記本体にはサイクロンセル１５の管側開口部をなす吸入口１４が形成されている。該開口部には案内羽根１６が認められ、該案内羽根は前記本体１２と一体にアンダーカット部がないように形成されている。図示の部品は射出成形技術によって２つの形状品に作製して矢印１１の方向に取り付ける、あるいは射出成形後に再び取外すようにすることができる。このことは補助体１３についても同様である。
【００１８】
補助体１３には出口側１７が形成され、該出口側は同時に、前記本体に形成された、図１には見えない集合室１８を閉じる蓋となる。こうして生じる前記蓋と本体の間の境界部には開口部１９形成され、前記集合室の分離物層が前記開口部１９を通ることができる。分離物層は、サイクロンセル１５を出て、図１に示すように上方に向いた中間筒２０がサイクロンセル内に沈むことによって形成されたリング状間隙を通って前記開口部１９に達する。前記中間筒の内側は出口側１７の穴を形成し、該穴は清浄にされた流体が通る穴となる。本体１２および補助体１３の外側がモジュールハウジング２１をなす。
【００１９】
図２は図１のモジュールを収容するための取付け部２３を有するハウジング２２を示す。該ハウジングには前記モジュールのスリット２５（図１参照）に相当するリブ２４が形成されている。前記取付け部にはさらに貫通口２６が設けられ、該貫通口は前記モジュールの開口部１９に連通しており、該開口部をモジュールを囲む環状通路２７に連通させる。ハウジングには、図には示されていないハウジングカバーを取り付けるためにフランジ結合部２８が設けられている。モジュール１０を組み付けたハウジングが図４に示されている。
【００２０】
図３および４は、モジュール１０を組み付けたハウジング２２を示す。図３は前記吸入口１４を有するハウジング２２の俯瞰図である。同図からモジュール１０を取り付ける前に保護網２９が前記取付け部に敷いてあることが明らかである。さらに、８個のモジュールを囲み分離物搬出口３０で終る環状通路２７が認められる。
【００２１】
前記防護網は、大きな粒子がサイクロンセルに吸込まれて前記案内羽根１６を損傷しマルチセルサイクロンの機能の耐久性が損なわれるのを防ぐ。これら部品の働きは図４により理解することができる。前記網２９はモジュール１０の取付け部２３の開いた底に敷かれている。それに続いて前記モジュールが取付け部に挿入されている。さらに、前記中間筒２０によって形成される集合室１８が認められる。モジュール１０をハウジング２２に挿入後、カバー３１が取り付けられ、該カバーは前記環状通路を前記出口側１７からシール部材３２を介して分かつ。
【００２２】
清浄にされるべき、および清浄にされた流体の流れは図４に実線矢印で示されている。この流れは前記吸入口からサイクロンセル１５に入り、そこから前記中間筒２０を通って前記カバー３１の内側の前記出口側１７に達する。サイクロンセル内における旋回により分離すべき物質に富んだ傍流が図３および４に破線矢線で示されるように分かれる。図４から、該傍流は前記中間筒２０の外周縁部を通って前記集合室１８に入り、そこから前記開口部１９と貫通口２６を通って前記環状通路２７に達する。図３から、該環状通路は分離された物質を前記貫通口２６から均等に分離物搬出口３０の方に吸い出すことが分る。
【００２３】
図５は、図３および４のマルチセルサイクロンの一応用例を示し、マルチセルサイクロンがエアフィルタのプレフィルタとして装着されている。そのためにマルチセルサイクロンがハウジング２２によってエアフィルタハウジング３４にフランジ止めされており、該エアフィルタハウジングが図４におけるカバー３１の役目を果たしている。これにより、予備清浄化された流体、この場合においては空気がそのままエアフィルタハウジング３４内に装着されたフィルタエレメントに導かれ、該エレメントを通って清浄空気の出口３５に達する。
【００２４】
図６には図３と似ているがサイクロンセルが中心対称に配置されたマルチセルサイクロンの俯瞰図が示してある。サイクロンセルがハウジング２２ａに装着された状態で示されていて、サイクロンセル１５ａは通路構成部３６ａが形成されるように配置されており、特に分離物搬出口３０ａに通じる円環状の環状通路２７ａが形成されていることが分る。各グループのサイクロンセル１５ａは隣接するセルの壁が接触するように互いに密着している。したがって、通路構成部３６ａは夫々のまとまった通路構成部に形成されており、これら通路構成部を通して分離された物質を直接に導き出すことができる。図には現れていない各サイクロンセルからの分離物出口が前記通路構成部３６ａに向かって開いている。
【００２５】
マルチセルサイクロンの前記分離物搬出口３０ａから最も遠い領域にダミーパイプ３７ａが夫々サイクロンセルの代わりに配設されている。これにより、通路構成部３６ａのこの領域には付加的な空気が導入され、該空気は分離された物質の搬出を助けるとともに最も閉塞が発生し易いこれら二つのサイクロンセルがダミーパイプによって置き換えられることになる。
【００２６】
ここに示したマルチセルサイクロンは、異なるサイクロンセルグループからなる１つのモジュールとして構成してもよいし、あるいはサイクロンセルの夫々のグループをモジュールとして配設してもよい。例えば、マルチセルサイクロンを一点鎖線３８で示すように扇形に区切ることも考えられる。マルチセルサイクロンは締付けねじ３９ａでハウジング２２ａに保持される。
【００２７】
【図面の簡単な説明】
本発明のさらに詳細は、実施例を示す概略図を参照して説明される。
【図１】 本体と補助体からなるマルチセルサイクロン用モジュールの斜視図である。
【図２】 図１のモジュールが装着されるハウジングの断面図である。
【図３】 図２のハウジングの閉じた状態を示す俯瞰図である。
【図４】 図２に示したハウジングに図１のモジュールを装着した状態を示す断面図である。
【図５】 図３のハウジングを円筒形のエアフィルタに装着した状態を示す斜視図である。
【図６】 マルチセルサイクロンの他の実施例で円形状のマルチセルサイクロンの俯瞰図である。
【符号の説明】
１０ モジュール
１２ 本体
１３ 補助体
１４ 流体の吸入口
１５、１５ａ サイクロンセル
１６ 案内羽根
１７ 流体の出口
１８ 集合室
１９ 開口
２０ 中間筒
２１ モジュールハウジング
２２、２２ａ ハウジング
２７、２７ａ 環状通路
３０、３０ａ 分離物搬出口
３６ａ 通路構成部
３７ａ ダミー管

Claims (6)

1. 複数のサイクロンセル（１５）、清浄にすべき流体の吸入口（１４）、清浄にされた流体の出口（１７）、および前記流体から分離された物質を排出する分離物搬出口（３０）を備えたハウジング（２２）を含むマルチセルサイクロンにおいて、
   前記複数のサイクロンセル（１５）のグループをまとめて一つのモジュール（１０）を構成し、該モジュール（１０）は夫々モジュールハウジング（２１）に収容され、該モジュールハウジングには前記サイクロンセル内で分離された分離物を集合する集合室（１８）が形成され、該集合室は複数のモジュールを囲むように形成された前記ハウジング（２２）の環状通路（２７）への開口部（１９）を夫々少なくとも１つ有し、該環状通路を介して前記分離物搬出口（３０）につながり、前記環状通路（２７）は、前記開口部(１９)からの分離された物質が均等に分離物搬出口（３０）の方へ吸い出されるように構成されたことを特徴とするマルチセルサイクロン。
2. 複数のサイクロンセル（１５ａ）、清浄にすべき流体の吸入口、清浄にされた流体の出口、および前記流体から分離された物質を排出する分離物搬出口（３０ａ）を備えたハウジング（２２ａ）を含むマルチセルサイクロンにおいて、
   前記複数のサイクロンセル（１５ａ）がまとめられてグループを構成し、該グループのサイクロンセルからの分離物出口は、通路構成部（３６ａ）へ向かって開口し、該通路構成部を介して前記分離物搬出口（３０ａ）につながり、各グループを構成する隣接するサイクロンセルの壁が互いに接触するように密着して複数のサイクロンセル（１５ａ）の壁によって閉じた前記通路構成部（３６ａ）を形成し、さらに、前記分離物搬出口（３０ａ）から最も遠い領域のグループの少なくとも１つのサイクロンセルを置換されるサイクロンセルよりも管内流路抵抗が小さいダミーパイプで置換したことを特徴とするマルチセルサイクロン。
3. 前記モジュール（１０）は個々に前記ハウジング（２２）に装着できることを特徴とする請求項１記載のマルチセルサイクロン。
4. 前記サイクロンセルのグループが互いに中心対称あるいは軸対称に配置されていることを特徴とする請求項１または２記載のマルチセルサイクロン。
5. サイクロンセル（１５ａ）の全グループを囲み前記分離物搬出口（３０ａ）に連通する環状通路（２７ａ）が前記通路構成部（３６ａ）を囲むことを特徴とする請求項２記載のマルチセルサイクロン。
6. １つのグループの少なくとも１つのサイクロンセルが、ダミー管で置き換えられ、該ダミー管はその管内流路抵抗が置換されるサイクロンセルのそれよりも小さいことを特徴とする請求項１記載のマルチセルサイクロン。

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