JP4341256B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面波励起プラズマを利用したプラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体製造プロセスでは、成膜、エッチング処理、アッシング処理等にプラズマ技術が多く利用されている。また、太陽電池、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等の製造にもプラズマ技術が利用されている。高密度で均一なプラズマを生成すれば、被処理物に安定して均一な処理ができる。
【0003】
高密度で均一なプラズマを生成できるプラズマ処理装置としては、表面波励起プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)を利用する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、導波管内を伝播するマイクロ波をスロットアンテナから誘電体窓(マイクロ波導入窓)を通してプラズマ生成室内に導入し、誘電体窓に生じた表面波によってプラズマ生成室内のプロセスガスを励起し、表面波励起プラズマを生成するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−348898号公報(第2頁、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この種のプラズマ処理装置では、表面波の定在波モードは、誘電体窓の面積、厚さおよび気密容器の寸法で決まる。当然ながら、表面波励起プラズマのプラズマ密度は、表面波の定在波モードの影響を直接受けるので、この定在波モード毎にプラズマ密度、いわゆる放電モードが決まる。
マイクロ波電力や気密容器内のガス圧力を連続的に変化させたときに、放電モードが急激に変化するモードジャンプという現象が起こる。モードジャンプは、プラズマ密度分布を断続的に変動させるので、所望の密度のプラズマが得られないという問題がある。
本発明は、モードジャンプを生じさせないプラズマ処理装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1のプラズマ処理装置は、底面にスロットアンテナが設けられたマイクロ波導波管と、スロットアンテナを通して導入されたマイクロ波から表面波を形成し、伝播させるマイクロ波導入窓と、表面波によりプロセスガスを励起して表面波励起プラズマを生成し、表面波励起プラズマにより被処理物を処理する気密容器と、マイクロ波導入窓の面に沿って伝播する表面波の伝播経路中に設けられ、表面波の一部を導入し、導入した一部の表面波が反射面で反射することにより位相を変更するとともに、位相が変更した表面波を伝播経路中を伝播する表面波に合流させる凹部とを備え、表面波の定在波モードの生成を阻止するようにしたことを特徴とする。
(2)請求項2のプラズマ処理装置は、底面にスロットアンテナが設けられたマイクロ波導波管と、スロットアンテナを通して導入されたマイクロ波から表面波を形成し、伝播させるマイクロ波導入窓と、表面波によりプロセスガスを励起して表面波励起プラズマを生成し、表面波励起プラズマにより被処理物を処理する気密容器と、マイクロ波導入窓の面に沿って伝播する表面波の伝播経路中に設けられ、表面波の一部を導入し、導入した一部の表面波が反射面で反射することにより、伝播経路を伝播する表面波の一部の伝播方向を変更し、伝播方向が変更した表面波の位相を変更して伝播経路に再び合流させる凹部とを備え、表面波の定在波モードの生成を阻止するようにしたことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2のプラズマ処理装置において、凹部には、この凹部に進入する表面波を伝播経路へ反射させて合流するための反射板を設けたことを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項3のプラズマ処理装置において、反射板は可動反射板であり、反射板の位置を変更して表面波の位相を可変とすることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるプラズマ処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるプラズマ処理装置を模式的に示す全体構成図である。図1に示すプラズマ処理装置は、マイクロ波導波管1と、誘電体板2と、チャンバー本体3およびフランジ4から成るチャンバー10とを備える。誘電体板2は、チャンバー本体3の最上部に、チャンバー本体3の内壁に接して設けられている。マイクロ波導波管1は、誘電体板2の上面に設けられている。
【0008】
不図示のマイクロ波出力部から発振された例えば周波数2.45GHzのマイクロ波は、マイクロ波導波管1の内部を紙面の垂直方向に伝播する。マイクロ波導波管1の底板1aには、マイクロ波を誘電体板2へ導くスロットアンテナ5が複数個形成されている。誘電体板2は、石英、アルミナ、ジルコニア、パイレックスガラス(米国コーニング社の登録商標)等の誘電性材料から製作される。
誘電体板2には、表面波散乱部材としてのメタルポール6が複数個埋設されている。また、誘電体板2には、表面波吸収部としてのポイントリフレクター7が複数個設けられている。
【0009】
メタルポール6は、導電性材料、または誘電体板2と誘電率が異なる誘電性材料から製作される。導電性材料としては、非磁性金属、例えばステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。誘電性材料としては、誘電体板2として誘電率3.6の石英を用いたとすると、これと誘電率が大きく異なる誘電率9〜10のアルミナ、誘電率7〜10のジルコニアを用いることができる。
【0010】
ポイントリフレクター7は、シリンダ11、ピストンロッド先端に固定された反射板12および補助板13から構成されている。このピストンロッドを伸縮させることにより、反射板12は、シリンダ11内を矢印で示す方向に運動できる。シリンダ11および反射板12は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等の非磁性金属材料から製作される。補助板13は、誘電性材料から製作される。
【0011】
チャンバー本体3にはガス導入口8と真空排気口9が設けられている。ガス導入口8からO2,SiH4,H2,N2,SF6,Cl2,Ar,He等のプロセスガスが導入される。プロセスガスを導入しながら真空排気口9から排気することによって、チャンバー10内の圧力は通常、0.1〜50Pa程度に保持される。チャンバー10は、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等の非磁性金属材料から製作される。
【0012】
マイクロ波は、スロットアンテナ5を通過して誘電体板2に入射し、表面波Sとなって誘電体板2のチャンバー本体3側の表面を伝播し、瞬時に誘電体板2の全面に拡がる。この表面波エネルギーは、チャンバー10内に導入されているプロセスガスを励起してプラズマPを生成させる。図示されていないが、プラズマP中に被処理物を置くことによって、成膜、エッチング、アッシング等の処理が行われる。
【0013】
次に、メタルポール6とポイントリフレクター7の作用を説明する。
図2は、図1のプラズマ処理装置をI−I線に沿って見た平面図である。誘電体板2の外縁は、チャンバー本体3の側壁で取り囲まれている。誘電体板2には複数個のメタルポール6(小円形形状で示す)と複数個のポイントリフレクター7(大円形形状で示す)が配置されている。
【0014】
マイクロ波導波管1中を左から右へ進行するマイクロ波Mは、スロットアンテナ5を通して誘電体板2に導入され、表面波Sとなって誘電体板2の表面を伝播し、表面波の定在波モードを形成する。メタルポール6またはポイントリフレクター7が存在しないときは、誘電体板の誘電率、面積、厚さ、気密容器の寸法、マイクロ波電力、ガス圧力およびガス種で決まる定在波モードを維持する。
【0015】
図2において、2点鎖線で囲んだエリア20を参照して、メタルポール6とポイントリフレクター7の作用を詳説する。エリア20内の矢印は、表面波がメタルポール6またはポイントリフレクター7によって散乱または吸収される態様を模式的に示すものである。以下、表面波Sの一部を取り出して説明する場合は、表面波S1,S2のように番号を付記する。
【0016】
〈メタルポール〉
図2において、誘電体板2上を伝播する表面波S1は、メタルポール6aによって散乱される。表面波S1は、メタルポール6aが存在しない場合は直進するが、存在する場合は直進が妨げられてあらゆる方向に進路をとる。図3を参照してこの状態をさらに説明する。
【0017】
図3は、図2のII−II断面図であり、メタルポールの埋設状態と作用を説明するための図である。
4個のメタルポール6b〜6eは、それぞれ円柱状ブロックであり、その高さは、誘電体板2の厚さよりも短い。誘電体板2には、メタルポール6b〜6eをそれぞれ埋設するための穴部が設けられている。メタルポール6b〜6eとしては、前述の導電性材料、および誘電体板2と誘電率が異なる誘電性材料のうちから1種類を適宜選ぶことができる。また、2種類以上の材料を組み合わせて用いることもできる。メタルポールを不要とするときには、その代わりに誘電体板2と同一材料のポールを挿入すればよい。メタルポールの個数や配置は、本実施の形態に限るものではなく、マイクロ波電力やガス圧力等のパラメータに合わせて自由に設計できる。
【0018】
図3において、表面波が誘電体板2の表面上を伝播する様子は、矢印で示されている。右向きの矢印で示される表面波S5は、メタルポール6b、6cによって散乱され、表面波S6とS7からなる合成波となる。散乱される前の表面波S5と散乱された後の表面波S6、S7とは、位相や振幅等が異なるので、表面波S5は定在波を形成し難くなる。左向きの矢印で示される表面波S8についても全く同様に、メタルポール6d、6eによって散乱され、定在波を形成し難くなる。結果として、表面波Sの定在波モードは消失し、表面波励起プラズマのモードジャンプは生じなくなる。
【0019】
〈ポイントリフレクター〉
図2のエリア20において、誘電体板2上を伝播する表面波S2は、ポイントリフレクター7aによってその一部を吸収されるとともに、伝播方向も多少は変えられる。すなわち、表面波S2は、表面波S3とS4の矢印で模式的に示されるように伝播方向を変えて伝播する。図4を参照してこの状態をさらに説明する。
【0020】
図4は、図2のIII−III断面図であり、ポイントリフレクターの構造と作用を説明するための図である。
2個のポイントリフレクター7a、7bは、誘電体板2の上面、すなわち大気側に設けられている。ポイントリフレクター7aについて、距離Dは、反射板12aと補助板13aの間隔であり、この部分は大気圧の環境にある。ポイントリフレクター7bについては、距離Dは零に設定されている。
【0021】
図4において、表面波が誘電体板2の表面上を伝播する様子は、矢印で示されている。右向きの矢印で示される表面波S9は、ポイントリフレクター7aによってその一部分である表面波S10が吸収される。表面波S10は、補助板13aを通してポイントリフレクター7aに入射し、距離Dだけ離れた反射板12aの底面で反射する。反射板12aで反射された反射波は、補助板13a、誘電体板2を通して表面波S9に合流する。反射波は、表面波S9と位相や振幅等が異なるため、表面波S9は定在波を形成し難くなる。
【0022】
一方、図中、左向きの矢印で示される表面波S11は、ポイントリフレクター7bが存在するものの、距離Dが零であるために吸収されない。表面波S11は、位相や振幅が散乱作用によって多少変化するだけである。従って、表面波S11の定在波モードは、ほとんど乱されることはない。
しかし、現実には、表面波は2次元的に伝播するので、表面波S11は、右方へ伝播する表面波S9の影響を受けて、定在波モードが乱される。表面波S9のように定在波モードを形成し難い部分があると、表面波Sの全体としての定在波モードは消失し、表面波励起プラズマのモードジャンプは生じなくなる。
【0023】
以上のことから、ポイントリフレクター7の距離Dを可変とすることによって、表面波Sの定在波モードを確実に消失させることができる。
誘電体板2の上側に複数個のポイントリフレクター7を配置し、各々のポイントリフレクター7の距離Dを互いに異なるようにしてもよい。このような細かい調整によって、マイクロ波電力やガス圧力等のパラメータを変化させた場合でも、表面波Sの定在波モードを確実に消失させることができる。ポイントリフレクターの個数や配置は、本実施の形態に限るものではなく、マイクロ波電力やガス圧力等のパラメータに合わせて自由に設計できる。
【0024】
誘電体板2には、メタルポール6およびポイントリフレクター7のいずれか一方を設けてもよいし、両者を併設してもよい。併設することにより、表面波Sの定在波モードをより確実に消失させることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、モードジャンプを生じさせないプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置全体を模式的に示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るプラズマ処理装置をI−I線に沿って見た平面図である。
【図3】図2のII−II断面図であり、メタルポールの埋設状態と作用を説明するための図である。
【図4】図2のIII−III断面図であり、ポイントリフレクターの構造と作用を説明するための図である。
【符号の説明】
1:マイクロ波導波管
2:誘電体板(マイクロ波導入窓)
3:チャンバー本体
4:フランジ
5:スロットアンテナ
6:メタルポール(表面波散乱部材)
7:ポイントリフレクター(表面波吸収部)
10:チャンバー
M:マイクロ波
S:表面波
P:プラズマ
Claims (4)
- 底面にスロットアンテナが設けられたマイクロ波導波管と、
前記スロットアンテナを通して導入されたマイクロ波から表面波を形成し、伝播させるマイクロ波導入窓と、
前記表面波によりプロセスガスを励起して表面波励起プラズマを生成し、前記表面波励起プラズマにより被処理物を処理する気密容器と、
前記マイクロ波導入窓の面に沿って伝播する表面波の伝播経路中に設けられ、前記表面波の一部を導入し、導入した一部の表面波が反射面で反射することにより位相を変更するとともに、前記位相が変更した表面波を前記伝播経路中を伝播する表面波に合流させる凹部とを備え、
前記表面波の定在波モードの生成を阻止するようにしたことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 底面にスロットアンテナが設けられたマイクロ波導波管と、
前記スロットアンテナを通して導入されたマイクロ波から表面波を形成し、伝播させるマイクロ波導入窓と、
前記表面波によりプロセスガスを励起して表面波励起プラズマを生成し、前記表面波励起プラズマにより被処理物を処理する気密容器と、
前記マイクロ波導入窓の面に沿って伝播する表面波の伝播経路中に設けられ、前記表面波の一部を導入し、導入した一部の表面波が反射面で反射することにより、前記伝播経路を伝播する表面波の一部の伝播方向を変更し、伝播方向が変更した表面波の位相を変更して前記伝播経路に再び合流させる凹部とを備え、
前記表面波の定在波モードの生成を阻止するようにしたことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 請求項1または2のプラズマ処理装置において、
前記凹部には、この凹部に進入する表面波を前記伝播経路へ反射させて合流するための反射板を設けたことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 請求項3のプラズマ処理装置において、
前記反射板は可動反射板であり、前記反射板の位置を変更して前記表面波の位相を可変とすることを特徴とするプラズマ処理装置。
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