JP4338865B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気を浄化する複数の排気浄化触媒を有する排気浄化装置に関し、特に排気中の未燃成分濃度を数十ppm以下のレベルまで低減することができるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関から排出される成分(HC,CO,NOx)を酸化還元する三元触媒を排気系に複数配置して、排気中の不要成分をより低減すること、及びこれらの三元触媒の上流側と下流側とに酸素濃度センサを設け、上流側センサの出力に基づいて空燃比を制御するメインフィードバック制御を実行するとともに、下流側センサ出力に基づいてメインフィードバック制御を補正するサブフィードバック制御を実行することは従来より知られている。
【0003】
また三元触媒では、排気中の未燃成分(HC、CO)と水(H2O)とが反応して、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)とを生成する水性ガス反応が起きるため、排気系の最下流に配置された三元触媒の下流側では、水素濃度が高くなる傾向がある。そして酸素濃度センサの周辺で水素濃度が高くなると、センサ出力は、実際の酸素濃度より低濃度側にシフトし、その結果、上記サブフィードバック制御の精度が低下するという問題が発生する。
【0004】
この問題を解決するため、特開平8−319822号公報には、酸素蓄積能力を有する酸化セリウム(CeO2)の担持量を、三元触媒の位置に応じて変更する技術が示されている。すなわち、下流側の三元触媒の酸化セリウム担持量を、上流側三元触媒の酸化セリウム担持量より少なくすることにより、水性ガス反応を抑制し、触媒下流側における水素濃度の増加を抑えるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、空燃比制御の精度を向上させるとともに、三元触媒の数を増やすことにより排気浄化性能を向上させると(最終的なHC,CO成分の濃度を数十ppm以下程度とすると)、空燃比がリッチ側に多少ずれたとしても最下流の三元触媒の下流側では、排気中のHC、CO成分(通常未燃成分と呼ばれる酸化可能な成分)の濃度が極端に低いため、また酸素の濃度も極端に低いため、酸素濃度センサの出力変化が不十分なものとなり、従来のサブフィードバック制御を実行することができなくなる。すなわち、理論空燃比を境として出力電圧が急変するいわゆる二値型の酸素濃度センサは、白金電極の表面で排気中の未燃成分が酸化されることにより、出力電圧が変化するものであるため、未燃成分の濃度が極端に低下すると、十分な出力電圧の変化が得られなくなり、前記サブフィードバック制御を実行することが困難となる。
【0006】
また、酸素濃度センサを最下流の触媒の下流側ではなく、複数の三元触媒の中間(例えば3つの三元触媒を配置する場合に、最下流の三元触媒の上流側)に配置する手法も知られているが、これでは最終的に排出される排気の状態を確認できないため、酸素濃度センサより下流側の触媒の劣化により、排気特性が悪化する可能性がある。
さらに、二値型の酸素濃度センサを使用した場合、触媒の酸素蓄積能力が飽和し、触媒下流側で酸素が過剰となったことが検出されないので、NOxの排出量が増加するおそれがあった。
【0007】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、最終的な未燃成分の濃度が数十ppm以下となるような低エミッション特性を実現するとともに、排気系最下流の触媒の下流側に配置したセンサの出力に基づいて、空燃比制御の補正を適切に行い、未燃成分のみならずNOxの排出量増加も抑制することができる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気系に設けられ、排気を浄化する複数の触媒手段を有する排気浄化装置において、前記排気系の最上流に配置された触媒手段の上流側に配置され、排気中の特定成分の濃度を検出する最上流検出手段と、前記排気系の最下流に配置された触媒手段の下流側に配置され、排気中の特定成分の濃度を検出する最下流検出手段と、前記機関に供給する混合気の目標空燃比を設定する目標空燃比設定手段と、前記最上流検出手段の出力を用いて前記混合気の空燃比が前記目標空燃比と一致するようにフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記最下流検出手段の出力が所定値を越える場合のみ、前記目標空燃比設定手段により設定された目標空燃比を、前記最下流検出手段の出力に応じて補正する第1目標空燃比補正手段と、少なくとも前記最下流検出手段の出力が前記所定値を越えるまでの間、前記目標空燃比を理論空燃比より小さい値に補正する第2目標空燃比補正手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、最上流検出手段の出力を用いて空燃比が目標空燃比と一致するようにフィードバック制御が実行されるとともに、最下流検出手段の出力が所定値を越える場合のみ、最下流検出手段の出力に応じて目標空燃比が補正され、さらに少なくとも最下流検出手段の出力が前記所定値を越えるまでの間は、目標空燃比が理論空燃比より小さい値に補正される。最下流検出手段の出力が所定値を越える場合は、触媒手段における水性ガス反応によって、最下流の触媒手段の下流側で水素濃度が高くなっていることを示すので、この場合のみその最下流検出手段の出力に応じて目標空燃比を補正することにより、未燃成分の微少な増加に対応した目標空燃比の修正を行うことができ、最終的な排気中の未燃成分濃度を常に低レベルに維持することが可能となる。さらに少なくとも最下流検出手段の出力が前記所定値を越えるまでの間は、目標空燃比を理論空燃比より小さい値に補正することにより、排気中の酸素が過剰となってNOxの排出量が増加する事態を回避し、良好な排気特性を維持することができる。
【0010】
前記複数の触媒浄化手段は、前記最下流の触媒手段の下流側における未燃成分濃度を数十ppm以下とする浄化性能を有するものである。また、前記最下流検出手段は、その出力が理論空燃比近傍で急変する特性を有する酸素濃度センサとすることが望ましい。
また前記第2目標空燃比補正手段は、触媒手段の酸素蓄積能力が飽和し易い機関運転状態において、前記補正を実行することが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の一形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその排気浄化装置の全体構成図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(θTH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力してエンジン制御用電子コントロールユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0012】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0013】
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には吸気管内絶対圧(PBA)センサ8が設けられており、この絶対圧センサ8により電気信号に変換された絶対圧信号は前記ECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ9が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0014】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ10はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。
エンジン1の図示しないカム軸周囲又はクランク軸周囲には、エンジン回転数(NE)センサ11及び気筒判別(CYL)センサ12が取り付けられている。エンジン回転数センサ11は、エンジン1の各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180゜毎に)TDC信号パルスを出力し、気筒判別センサ12は、特定の気筒の所定クランク角度位置で気筒判別信号パルスを出力するものであり、これらの各信号パルスはECU5に供給される。
【0015】
排気管13にはエンジン1の排気マニホールドの直ぐ下流に配置される直下三元触媒14と、該直下三元触媒14より下流側に若干離れて配置される第1〜第3の床下三元触媒15,16,17とが設けられている。
直下三元触媒14は、例えば1.0リットル程度の容積を有し、酸素貯蔵能力を有するセリア(CeO2、酸化セリウム)が、700g/cft(グラム/立方フィート)程度の割合で添加されている。1cft≒28.317リットルであるので、700g/cft≒25g/リットルである。また、第1及び第2の床下三元触媒15、16は、例えばそれぞれ0.7リットル程度の容積を有し、第1の床下三元触媒15にはセリアが添加されておらず、第2の床下三元触媒16には、1500g/cft程度の割合でセリア添加されている。セリアを添加することにより、セリアを触媒とする水性ガス反応によりNOxを還元して浄化しうるので、NOx浄化ウインドウが広がり、リーン空燃比においてもNOxの浄化率も向上させることができる。
【0016】
直下三元触媒14の上流位置には、最上流検出手段としての比例型空燃比センサ18(以下「LAFセンサ18」という)が装着されており、このLAFセンサ18は排気中の酸素濃度(空燃比)にほぼ比例した電気信号を出力し、ECU5に供給する。
【0017】
第3の床下三元触媒17の下流位置には、最下流検出手段としての二値型酸素濃度センサ(以下「O2センサ」という)20が装着されており、O2センサ20の検出信号はECU5に供給される。このO2センサ20は、その出力が理論空燃比の前後において急激に変化する特性を有し、その出力は理論空燃比よりリッチ側で高レベルとなり、リーン側で低レベルとなる。
【0018】
また大気圧PAを検出する大気圧センサ22が設けられており、その検出信号がECU5に供給される。
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路5a、中央演算処理回路(以下「CPU」という)5b、CPU5bで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶手段5c、前記燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路5d等から構成される。
【0019】
CPU5bは、上述の各種エンジンパラメータ信号に基づいて、種々のエンジン運転状態を判別するとともに、該判別されたエンジン運転状態に応じて、次式(1)に基づき、前記TDC信号パルスに同期して駆動される燃料噴射弁6の燃料噴射時間TOUTを演算する。
TOUT=TiM×KCMD×KLAF×K1+K2…(1)
ここに、TiMは基本燃料量、具体的には燃料噴射弁6の基本燃料噴射時間であり、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたTiマップを検索して決定される。Tiマップは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに対応する運転状態において、エンジンに供給する混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。
【0020】
KCMDは目標空燃比係数であり、エンジン回転数NE、スロットル弁開度θTH、エンジン水温TW等のエンジン運転パラメータに応じて設定される。目標空燃比係数KCMDは、空燃比A/Fの逆数、すなわち燃空比F/Aに比例し、理論空燃比のとき値1.0をとるので、目標当量比ともいう。
【0021】
目標空燃比係数KCMDは、後述するようにO2センサ20の出力VO2が所定電圧VO2H2より高いときは、その出力VO2に応じて設定される第1の補正係数KCMDLSにより補正される一方、O2センサ20の出力VO2が、所定電圧VO2H2より低いときは、第2の補正係数KCMDRにより、1.0より僅かに大きい値となるように補正される。これは、エンジンの排気系やLAFセンサ及び三元触媒の特性のばらつきや経年変化の影響を抑制し、特に排気管最下流における酸素濃度を適切に制御して、良好な排気特性を維持するためである。
【0022】
KLAFは、フィードバック制御の実行条件が成立するときは、LAFセンサ18の検出値から算出される検出当量比KACTが目標当量比KCMDに一致するようにPID制御により算出される空燃比補正係数である。
K1及びK2は夫々各種エンジンパラメータ信号に応じて演算される他の補正係数および補正変数であり、エンジン運転状態に応じた燃費特性、エンジン加速特性等の諸特性の最適化が図れるような所定値に決定される。
CPU5bは上述のようにして求めた燃料噴射時間TOUTに基づいて燃料噴射弁6を開弁させる駆動信号を出力回路5dを介して燃料噴射弁6に供給する。
【0023】
図2は前記式(1)に適用される目標空燃比係数KCMDを算出する処理のフローチャートであり、本処理はTDC信号パルスの発生に同期してCPU5bで実行される。
ステップS11では、エンジン運転状態に応じて目標空燃比係数KCMDを算出する。目標空燃比係数KCMDは、基本的には、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定され、高負荷運転時やエンジン水温TWが低いときは、エンジン負荷やエンジン水温TWに応じた修正が行われる。
【0024】
続くステップS12〜S20では、O2センサ出力VO2及びエンジン運転状態に応じて、目標空燃比係数KCMDの補正係数KCMDLS及びKCMDRを算出する。
排気管13に配置した三元触媒14〜17が正常に機能している状態では、空燃比が理論空燃比よりリッチ側にずれた場合に水性ガス反応により、水素(H2)濃度が増加する傾向がある。水性ガス反応は、下記化学式(2)のようにCOと、水(H2O)とが反応して、H2と、CO2とを生成する反応(以下「水素生成反応」という)である。なお、実際には逆向きの反応(以下「逆反応」という)、すなわち、H2と、CO2とが反応して、COと、H2Oとを生成する反応と、水素生成反応とが平衡状態となっており、水素生成反応と、逆反応との比率は、温度によって変化する。例えば500℃では、水素生成反応の比率が高く、水素濃度はCO濃度の4倍程度となる。
CO+H2O⇔CO2+H2 (2)
【0025】
一方O2センサ20は、水素濃度の増加に対して図3に示すような出力特性を有することが実験により確かめられている。そこで、本実施形態では、O2センサ出力VO2が、所定電圧VO2H2より高くなったときは、センサ出力VO2に応じて第1の補正係数KCMDLSを算出し、これにより目標空燃比係数KCMDを補正するようにしている。
【0026】
このように、O2センサ出力VO2により、最下流の三元触媒17の下流側においても酸素の不足状態(空燃比のリッチ方向へのずれ)は水素濃度の増加により検出できるが、逆に酸素の過剰状態となっても、2値型O2センサ20では、その状態を検出することができない。そこで、本実施形態では、O2センサ出力VO2が水素濃度が低いことを示しているときは、第2の補正係数KCMDRを1.0より僅かに大きい値に設定し、三元触媒に蓄積された酸素を徐々に減少させるようにして、酸素過剰状態が発生することを防止するようにしている。その結果、酸素過剰状態に起因するNOx排出量の増加を回避することができ、良好な排気特性を維持することができる。
【0027】
具体的には、O2センサ出力VO2が所定電圧VO2H2(例えば0.5V)より高いか否かを判別し(ステップS12)、VO2≦VO2H2であるときは、エンジン回転数NEが所定回転数NETH(3000rpm)以下か否かを判別し(ステップS16)、NE≦NETHであるときは、さらに吸気管内絶対圧PBAが、所定圧PBTH(例えば61.3kPa(460mmHg))以下か否かを判別する(ステップS17)。
【0028】
そして、NE>NETHまたはPBA>PBTHであるときは、目標空燃比係数KCMDの第2の補正係数KCMDRを1.0(無補正値)に設定する(ステップS19)とともに、目標空燃比係数KCMDの第1の補正係数KCMDLSを「1.0」(無補正値)に設定して(ステップS20)、ステップS21に進む。また、NE≦NETHかつPBA≦PBTHであって、エンジン1が低負荷低回転状態にあるときは、第2の補正係数KCMDRをリッチ化所定値KCMDR0(例えば1.002)に設定して(ステップS18)、前記ステップS20に進む。
【0029】
一方、ステップS12でVO2>VO2H2であるときは、O2センサ出力VO2に応じて図4に示すKCMDLSHテーブル及びKCMDLSLテーブルを検索し、エンジン回転数NEが所定高回転数NEH(例えば2500rpm)以上の場合に適用される高回転用補正係数KCMDLSH、及びエンジン回転数NEが所定低回転数NEL(例えば1500rpm)以下の場合に適用される低回転用補正係数KCMDLSLを算出する(ステップS13)。KCMDLSHテーブル及びKCMDLSLテーブルは、O2センサ出力VO2が高くなるほど、すなわち水素濃度が高くなるほど、補正係数KCMDLSH、KCMDLSLが減少するように設定され、かつKCMDLSH≧KCMDLSLとなるように設定されている。
【0030】
続くステップS14では、エンジン回転数NEが、所定低回転数NEL以下であるときは、KCMDLS=KCMDLSLとし、所定高回転数NEH以上であるときは、KCMDLS=KCMDLSHとし、所定低回転数NELと所定高回転数NEHと間にある(NEL<NE<NEH)ときは、エンジン回転数NEに応じた補間演算を行って第1の補正係数KCMDLSを算出する。
【0031】
次いで、第2の補正係数KCMDRを1.0に設定し(ステップS15)、ステップS21に進む。
ステップS21では、ステップS11で算出した目標空燃比係数KCMDを、第1の補正係数KCMDLS及び第2の補正係数KCMDRを乗算することにより補正し、本処理を終了する。
【0032】
以上のように本実施形態では、三元触媒17の下流側で水素濃度が高くなったことを、O2センサ出力VO2により判定し、VO2>VO2H2となって水素濃度が高くなったと判定したときは、O2センサ出力VO2に応じて設定される補正係数KCMDLSにより、目標空燃比係数KCMDをリーン方向へ補正するようにしたので、最終的な未燃成分濃度を数十ppm以下とする低エミッション特性を常に維持することができる。さらに、VO2≦VO2H2であってかつ低負荷低回転運転状態にあるときは、第2の補正係数KCMDRを1.0より僅かに大きいリッチ化所定値KCMDR0に設定するようにしたので、三元触媒の酸素蓄積能力が飽和して、排気管最下流において酸素過剰状態となることが回避することができる。その結果、NOx排出量が増加することを防止し、良好な排気特性を維持することができる。
【0033】
なお、図2の処理で、第2の補正係数KCMDRをリッチ化所定値KCMDR0に設定するのを、低負荷低回転運転状態に限ったのは、例えばそのような状態での定速運転、緩やかな加速運転、または減速運転で、三元触媒の酸素蓄積能力の飽和状態が起きやすいからである。
【0034】
図5は空燃比補正係数KLAFを算出する処理のフローチャートであり、本処理はTDC信号パルスの発生毎にCPU5bで実行される。
ステップS61でLAFセンサ18の出力に応じたフィードバック制御を実行するLAFフィードバック制御条件が成立しているか否かを判別する。このLAFフィードバック制御条件は、LAFセンサ18が活性化しており、燃料供給遮断運転あるいはスロットル全開運転を実行していないこと等を条件として成立する。ステップS61の答が否定(NO)のときは、空燃比補正係数KLAFを「1.0」に設定して(ステップS66)、本処理を終了する。
【0035】
LAFフィードバック制御条件が成立するときは、LAFセンサ18の出力を当量比に変換した検出当量比KACTと、目標空燃比係数KCMDとの偏差DKAF(k)(=KCMD(k)−KACT(k))を算出し(ステップS62)、偏差DKAF(k)及び各制御ゲインKP,KI,KDを下記式に適用して、比例項KLAFP(k)、積分項KLAFI(k)及び微分項KLAFD(k)を算出する(ステップS63)。ここで、(k),(k−1)は、それぞれ今回値,前回値であることを示すために付されている。
KLAFP(k)=DKAF(k)×KP
KLAFI(k)=DKAF(k)×KI+KLAF(k−1)
KLAFD(k)=(DKAF(k)−DKAF(k−1))×KD
【0036】
そして、比例項KLAFP、積分項KLAFI及び微分項KLAFDを加算して空燃比補正係数KLAF(=KLAFP+KLAFI+KLAFD)を算出し(ステップS64)、算出した空燃比補正係数KLAFの値が所定上下限値の範囲内に入るようにリミット処理を行って(ステップS65)、本処理を終了する。
本処理により、LAFセンサ出力に基づく検出当量比KACTが、目標空燃比係数KCMDに一致するようにフィードバック制御が実行される。
【0037】
図6は、本実施形態による制御を実行したときの、動作例を示すタイムチャートである。例えば、時刻t1〜t2の期間では、VO2>VO2H2であるので、センサ出力VO2に応じて、目標空燃比係数KCMDがリーン側に制御され、時刻t2〜t3の期間では、VO2<VO2H2であるので、目標空燃比係数KCMDが、1.0より僅かに大きな値に設定される。
【0038】
本実施形態では、直下三元触媒14及び床下三元触媒15〜17が、触媒手段に相当し、図2のステップS11が目標空燃比設定手段に相当し、図6の処理がフィードバック制御手段に相当し、図2のステップS12〜S14及びS20が第1目標空燃比補正手段に相当し、同図のステップS12,S15,S16〜S19が第2目標空燃比補正手段に相当する。より具体的には、所定電圧VO2H2が請求項1の「所定値」に相当し、第1の補正係数KCMDLSによる補正が、第1目標空燃比補正手段による補正に相当し、第2の補正係数KCMDRによる補正が、第2目標空燃比補正手段による補正に相当する。
【0039】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、床下三元触媒15,16は、まとめて1つの触媒としてもよく、また三元触媒17は、HCを吸着するHC吸着触媒としてもよい。
また、上述した実施形態では、VO2≦VO2H2であってかつ低負荷低回転運転状態(NE≦NETHかつPBA≦PBTH)であるときのみ、空燃比補正係数KCMDの第2の補正係数KCMDRを、リッチ化所定値KCMDR0に設定するようにしたが、VO2≦VO2H2であるときは、常にリッチ化所定値KCMDR0に設定するようにしても良い。
【0040】
また、エンジンの低負荷低回転運転状態(NE≦NETHかつPBA≦PBTH)であるときは常に第2の補正係数KCMDR=KCMDR0とし、VO2>VO2H2となったときの第1の補正係数KCMDLSを、リッチ化所定値KCMDR0に対応してより小さな値(=KCMDLS/KCMDR0)に設定するようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、最上流検出手段の出力を用いて空燃比が目標空燃比と一致するようにフィードバック制御が実行されるとともに、最下流検出手段の出力が所定値を越える場合のみ、最下流検出手段の出力に応じて目標空燃比が補正され、さらに少なくとも最下流検出手段の出力が前記所定値を越えるまでの間は、目標空燃比が理論空燃比より小さい値に補正される。最下流検出手段の出力が所定値を越える場合は、触媒手段における水性ガス反応によって、最下流の触媒手段の下流側で水素濃度が高くなっていることを示すので、この場合のみその最下流検出手段の出力に応じて目標空燃比を補正することにより、未燃成分の微少な増加に対応した目標空燃比の修正を行うことができ、最終的な排気中の未燃成分濃度を常に低レベルに維持することが可能となる。さらに少なくとも最下流検出手段の出力が前記所定値を越えるまでの間は、目標空燃比を理論空燃比より小さい値に補正することにより、排気中の酸素が過剰となってNOxの排出量が増加する事態を回避し、良好な排気特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその排気浄化装置の構成を示す図である。
【図2】目標空燃比係数(KCMD)を算出する処理のフローチャートである。
【図3】水素濃度とセンサ出力(VO2)との関係を示す図である。
【図4】図2の処理で使用するテーブルを示す図である。
【図5】空燃比補正係数(KLAF)を算出する処理のフローチャートである。
【図6】図2に示す制御を適用した場合のO2センサ出力及び目標空燃比係数(KCMD)の推移を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 内燃機関
5 電子コントロールユニット(目標空燃比設定手段、フィードバック制御手段、第1目標空燃比補正手段、第2目標空燃比補正手段)
6 燃料噴射弁
13 排気管
14,15,16,17 三元触媒(触媒手段)
18 酸素濃度センサ(最上流検出手段)
20 酸素濃度センサ(最下流検出手段)
Claims (1)
- 内燃機関の排気系に設けられ、排気を浄化する複数の触媒手段を有する排気浄化装置において、
前記排気系の最上流に配置された触媒手段の上流側に配置され、排気中の特定成分の濃度を検出する最上流検出手段と、
前記排気系の最下流に配置された触媒手段の下流側に配置され、排気中の特定成分の濃度を検出する最下流検出手段と、
前記機関に供給する混合気の目標空燃比を設定する目標空燃比設定手段と、
前記最上流検出手段の出力を用いて前記混合気の空燃比が前記目標空燃比と一致するようにフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記最下流検出手段の出力が所定値を越える場合のみ、前記目標空燃比設定手段により設定された目標空燃比を、前記最下流検出手段の出力に応じて補正する第1目標空燃比補正手段と、
少なくとも前記最下流検出手段の出力が前記所定値を越えるまでの間、前記目標空燃比を理論空燃比より小さくする第2目標空燃比補正手段とを備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2000044035A JP4338865B2 (ja) | 2000-02-22 | 2000-02-22 | 内燃機関の排気浄化装置 |
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