JP4333356B2 - 冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Metallurgical Plant and Technology International 6/2001,p.70 D.Muljono, M.Ferry, D.P.Dunne,「Influence of heating rate on anisothermal recrystallization in low and ultra-low carbon steels」, Materials Science and Engineering A303(2001), 90-99
本発明に係る冷延鋼板の成分組成を限定する理由について説明する。
C:0.02〜0.2mass%
Cは、微細なセメンタイトやパーライトの析出あるいはベイナイト、マルテンサイトなどの低温変態相の生成によって組織変化を促進するので、高強度化のためには有効な元素である。しかし、C量が0.02mass%を下回ると、熱延コイル巻き取り後の冷却時におけるセメンタイトの析出が困難となり、鋼中に多量の固溶Cが残存する。この多量の固溶Cは、その後の冷間圧延において、不均一な剪断歪みの導入を促進し、焼鈍後の再結晶組織を不均一化し、加工性の低下を招く。一方、C量が0.2mass%を超えると、パーライト量の増大やセメンタイトの粗大化を招き、焼鈍後の鋼板の加工性(延性、伸びフランジ性)を劣化する他、溶接性にも悪影響を及ぼす。よって、C量の添加範囲は、0.02〜0.2mass%とする。好ましくは、0.04〜0.1mass%である。
Si:0.1〜2.0mass%
Siは、加工性を劣化することなくフェライトを固溶強化し、強度と加工性のバランスを向上させるので、要求される強度レベルに応じて添加することができる。ただし、2.0mass%を超える添加は、靭性および溶接性を劣化させるので、Si添加量の上限は2.0mass%とするのが好ましい。また、Siは、熱間圧延前に行うスラブ加熱において、その表面でのファイヤライトの生成を促進し、いわゆる赤スケールと呼ばれる表面模様の発生を助長する他、溶融亜鉛メッキ鋼板に用いられる場合には、不メッキの原因ともなる。そのため、良好な表面性状を必要とする冷延鋼板や溶融亜鉛メッキ鋼板を製造する場合には、Siの添加量は0.5mass%を上限とすることが好ましく、望ましくは0.2mass%以下である。なお、強度確保を目的としてSiを添加する場合、含有量が少なすぎると、鋼板の強度と加工性のバランスが低くなることから、0.1mass%%以上添加する。
Mnは、固溶強化および組織強化を介して高強度化するのに有効な元素であるので、要求される強度レベルに応じて添加することができる。ただし、Mnの多量の添加は、溶接性の劣化を招くため、3.0mass%を上限とするのが好ましい。より好ましくは、2.5mass%以下である。なお、Mnは、熱間加工性を劣化させるSをMnSとして固定し、熱間割れを回避するのに有効であるため、0.2mass%以上添加することが好ましい。
Pは、加工性を害することなく固溶強化できる元素であるので、高強度化に有効である。また、Si添加鋼の場合には、赤スケールの発生を抑制する効果もあることから、必要に応じて添加することができる。ただし、Pの多量の添加は、粒界への偏析を助長し、延性、靭性を低下させるとともに、溶接性を劣化させる。よって、Pの上限は0.2mass%とするのが好ましい。また、Pは、溶融亜鉛メッキ鋼板の合金化速度の遅滞を招くことから、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を製造する場合には、0.1mass%を上限とするのが望ましい。一方、Pは、不可避的に鋼中に含まれる元素であり、極度のP含有量の低減は、製造コストの上昇を招くだけであるので、その下限値は0.005mass%とすることが好ましい。
Sは、熱間での延性を著しく低下する元素であり、熱間圧延中に割れを誘発し、表面性状を著しく劣化させる。また、Sは、強度にほとんど寄与しないばかりか、不純物元素として粗大なMnSを形成し、さらに、Ti添加鋼の場合には、多量の粗大なTi系硫化物を生成して、耐食性や延性、伸びフランジ性を劣化させるので、Sは極力低減し、0.01mass%以下とするのが好ましい。延性および伸びフランジ性をより向上するためには、Sは0.005mass%以下とすることがより好ましい。
Alは、固溶強化元素であり、高強度化に有効な元素である。しかし、Alは、フェライト安定化元素であるため、多量の添加は熱間圧延におけるオーステナイトからフェライトへの変態点の上昇を招き、熱延鋼板の粒径を粗大化して、焼鈍後の鋼板の加工性を低下させる。また、強化元素としてのAlの添加は、コストの増加を招く。そのため、Alは、3.0mass%以下の範囲で、必要に応じて添加することが好ましい。なお、Alは脱酸元素としても有効な元素であり、鋼中の介在物を減少させる効果を有する。しかし、多量に添加した場合には、アルミナ系介在物が増加し、表面性状や内部性状の劣化の他、延性の低下を招く。よって、これらの特性を重要視する場合には、Alは、0.1mass%以下とすることがより好ましい。また、Alは、固溶NをAlNとして固定することで、鋼板の耐時効性を改善することから、0.02mass%以上含有していることが好ましい。
Nは、Alと結合して微細なAlNを形成し、鋼板の強度上昇に寄与する元素である。また、必要に応じ、固溶Nを鋼中に残存させることで、焼き付け硬化性を得ることができる。しかし、0.02mass%を超えて多量に添加すると、熱間圧延中にスラブ割れを引き起こし、表面庇が発生する虞がある。そのため、N含有量は、0.02mass%を上限とするのが好ましい。なお、Nは、耐時効性が求められる場合には極力低減し、0.005mass%以下とすることが好ましい。
Ti:1.0mass%以下、Nb:1.0mass%以下およびV:1.0mass%以下の中から選ばれる1種以上
Ti,NbおよびVは、いずれも炭窒化物形成元素であり、炭窒化物を微細に析出すると共に、再結晶や粒成長を抑制して鋼板の結晶粒を微細化することで、強度上昇に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。上記効果を得るためには、それぞれ、Ti:0.02mass%以上、Nb:0.005mass%以上およびV:0.05mass%以上を添加することが好ましい。しかし、Ti,Nb,Vを多量に添加した場合には、通常の熱延工程における再加熱時に、炭窒化物が全固溶することができず、粗大な炭窒化物が残存するため、強度上昇にあまり寄与しない。また、連続鋳造して得た鋼スラブを冷却、再加熱を行うことなくそのまま熱間圧延する場合には、Ti,Nb,Vの添加は、1.0mass%を超えて添加しても、強度上昇への寄与は小さく、合金コストの上昇を招くだけである。さらに、Ti,Nb,Vの多量の添加は、熱延鋼板の強度を上昇するため、冷間圧延の圧延負荷が増大し、製造コストの上昇を招くので、それぞれ、Ti:1.0mass%以下、Nb:1.0mass%以下およびV:1.0mass%以下の範囲で添加することが好ましい。
Cr,Ni,MoおよびBはいずれも、焼入れ性を向上して組織を強化することにより強度上昇に寄与する元素であり、必要に応じて添加することができる。上記効果を得るためには、それぞれ、Cr:0.1mass%以上、Ni:0.1mass%以上、Mo:0.1mass%以上およびB:0.0005mass%以上添加することが好ましい。しかし、Cr,Ni,Mo,Bの多量の添加は、合金コストの上昇を招くので、それぞれ、Cr:1.0mass%以下、Ni:1.0mass%以下、Mo:1.0mass%以下の範囲で添加することが好ましい。また、Bの多量の添加は、焼入れ性向上の効果が飽和するだけでなく、再結晶抑制作用により熱間圧延時の荷重負荷が著しく増加するため、B:0.01mass%以下の範囲で添加することが好ましい。
上記成分組成を有する鋼の溶製方法は、転炉法、電炉法等、通常公知の方法を適宜適用することができる。溶製された鋼は、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法により鋼スラブとし、そのまま、あるいは、冷却してから再加熱し、熱間圧延する。熱間圧延における圧延温度、圧下率等の圧延条件は、特に規定する必要はなく、常法に従って行えばよい。
熱間圧延後の熱延鋼板は、下記の巻取温度で巻き取り、下記の所定時間以内に強制冷却し、その後、通常の酸洗、冷間圧延をし、その後、急速加熱を伴う焼鈍工程を経て製造する。
熱間圧延後のコイルの巻取温度は、300〜650℃の範囲とする必要がある。巻取温度が650℃を上回った場合には、巻き取り後の冷却中に、鋼板中に析出したセメンタイトが粗大化する。そのため、冷間圧延後に行われる急速加熱焼鈍において、セメンタイトが完全に溶解することができずに残存し、加工性の著しい劣化を招く。また、残存したセメンタイトは、急速加熱後、均熱温度に長時間保持することにより溶解させることができるが、均熱保持時間の増加は、結晶粒径の粗大化を招き、急速加熱による細粒化効果を失わせる。さらに、セメンタイトの周囲は、C濃度が高く、再結晶が抑制されるため、粗大なセメンタイトが存在する場合には、再結晶が不均一に進行し、焼鈍後の鋼板組織も不均一化して加工性が劣化する。一方、巻取温度が300℃を下回った場合には、冷却中にセメンタイトが析出できず、固溶Cが多量に残存する。そのため、冷間圧延時に剪断歪みが不均一に導入されて、焼鈍後の再結晶組織も不均一となり、加工性の低下を招くこととなる。したがって、熱間圧延後の巻取温度は、300〜650℃の範囲とする必要がある。
熱延コイル巻き取り後の冷却条件は、上述した巻取温度と共に、本発明の根幹をなす部分であり、巻き取り終了から10〜60分の間に、強制冷却を行う必要がある。これにより、セメンタイトを適度に析出させかつ固溶Cをほどほどに確保すること、具体的には、概ね直径1μm以下の微細な炭化物を析出させると共に、0.001〜0.008mass%程度のCを固溶させることができ、ひいては、冷間圧延、焼鈍後に優れた加工性を得ることができるからである。巻き取り終了から冷却開始までの時間が10分未満の場合には、セメンタイトの析出が不十分となり、鋼中には固溶Cが多量に存在することとなる。その結果、冷間圧延において不均一な剪断歪みの導入を促進し、再結晶焼鈍後の鋼板における加工性の劣化をもたらす。逆に、巻き取り終了から冷却開始までの時間が60分を超える場合には、析出したセメンタイトが粗大化し、この粗大セメンタイトは、焼鈍の急速加熱過程では完全に溶解できないため、鋼中に残存し、加工割れの起点となる。また、セメンタイトが粗大化するほど析出が進んだ場合には、鋼中の固溶Cは、大部分がセメンタイトとなり、ほとんど残存していない。さらに、急速加熱時にセメンタイトが分解し、再固溶したCは、旧セメンタイト近傍に存在するため、この部分のC濃度が一時的に高くなり、その部分の再結晶が抑制されて焼鈍後の鋼板組織を不均一化し、加工性の低下を招くこととなる。この点、コイル巻き取り完了後、10〜60分の間に強制冷却した場合には、鋼中に固溶Cがある程度の量(0.001〜0.008mass%程度)残留しているので、急速加熱によってセメンタイト近傍の固溶C量が増加しても、マトリックス中の固溶C量との差が少ない。そのため、再結晶が均一に進行し、焼鈍後の組織も均一となって加工性を向上させることができる。
冷間圧延に続いて、鋼板を再結晶させ加工性を付与するための連続焼鈍を行う。この焼鈍の加熱速度は、上述した熱間圧延後の巻取温度と共に本発明の根幹をなす部分であり、600℃以上均熱温度までを30℃/sec以上で急速加熱する必要がある。上記加熱速度が30℃/sec未満と低い場合には、加熱の途中で歪みの回復が先行し、再結晶の核発生頻度が低下することから、微細な再結晶粒を得ることができない。さらに、核発生頻度の低下は、結晶の不均一な成長を助長し、再結晶粒の大きさを不均一とすることから、加工性の低下を招く。これに対して、加熱速度を30℃/sec以上とした場合には、加熱途中での歪みの回復が抑制され、再結晶核が一気にランダムに発生するので、均一かつ微細な再結晶粒を得ることができる。
穴拡げ率λ(%)=(d−d0)/d0×100
ここで、d:亀裂が板厚を貫通した時の穴径(mm)、d0:初期穴径(=10mm)
を用いて穴拡げ率λを求めた。
その後、上記熱延鋼板を、酸洗して表面スケールを除去し、圧下率60%の冷間圧延を行い、板厚1.2mmの冷延鋼板とし、さらに、この冷延鋼板に対し、600℃までを加熱速度100℃/secで加熱し、600℃から均熱温度(850℃)までを加熱速度100℃/secで加熱し、均熱温度に1秒間保持した後、冷却速度50℃/secで300℃まで冷却し、その温度に300秒間保持する過時効処理を施した後、室温まで空冷する、連続焼鈍に相当する熱処理を行った。上記のようにして得た冷延鋼板について、実施例1と同様の要領で、引張試験と穴拡げ試験を行った。
Claims (3)
- C:0.02〜0.2mass%、Si:0.1〜2.0mass%、Mn:3.0mass%以下、P:0.2mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:3.0mass%以下、N:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを熱間圧延し、300〜650℃の温度で巻き取り、その後、10〜60分以内で強制冷却してから酸洗、冷間圧延し、600℃以上均熱温度までを30℃/sec以上で加熱して焼鈍することを特徴とする冷延鋼板の製造方法。
- 上記成分組成に加えてさらに、Ti:1.0mass%以下、Nb:1.0mass%以下およびV:1.0mass%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板の製造方法。
- 上記成分組成に加えてさらに、Cr:1.0mass%以下、Ni:1.0mass%以下、Mo:1.0mass%以下およびB:0.01mass%以下の中から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷延鋼板の製造方法。
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