JP4329315B2 - 水性顔料分散体用混練物の製造方法 - Google Patents

水性顔料分散体用混練物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料分散体用混練物の製造方法に関し、特にインクジェット用水性顔料インクに適したものである。
【0002】
【従来の技術】
デジタル情報の視覚化に向く、インクジェット印刷は、非接触印刷、カラー化が容易等の長所を有し、特に水を主体とする水性インクは取り扱いが容易なことから、幅広く検討されている。当初は発色性の高さと、水を主体とする媒体への溶解度の高い染料を色材とする水性インクが多く検討されているが、印刷後の耐水性、耐光性に劣っているため、最近では色材を染料から顔料へと変更した水性顔料インクの開発が進められている。
特に、微細なノズルからインク滴を噴出させて記録するインクジェット記録用のインクにおいては、通常の印刷インクや塗料における顔料分散に比較し、高度な安定性、粗大な粒子の一層の低減が求められている。
【0003】
インクジェット印刷に顔料を用いた場合は、染料と比較すると印刷物の耐水性や耐光姓が高いという長所があるがが、染料と同等以上の発色性を得るためには、概ね染料の場合に比べて高い濃度で使用することが多く、本来水媒体に対して溶解性の低い顔料は、分散粒子の凝集、沈降、ノズルの閉塞による噴射異常等が発生しやすい。このため、顔料の分散方法が広く検討されている。
【0004】
水性顔料インクの製造においては、顔料の分散を、インクとして使用される色材濃度よりも大幅に高い領域で行って顔料分散液を得、さらにこの顔料分散液を用いて、インクに必要な物性を与えるための希釈、溶剤添加、各種添加剤の添加を行い、必要に応じて遠心分離や濾過による調製を行うことが提案されている。この方法では、分散機による機械的な分散力が高濃度の色材による高粘度な顔料分散媒体中で、効率的に作用すると考えられ、分散安定性に優れた顔料分散体およびインクが得られるとされている。
従来からある塗料等一般の顔料分散と同様に、顔料分散体は、色材としての各種顔料、水または水性有機溶剤からなる水性媒体に加え、分散を効率よくかつ安定に実現するための分散剤の利用が一般的である。
【0005】
分散剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の各種低分子化合物、特開昭56−147863号公報に提案されているような高分子化合物があるが、特に合成樹脂からなる高分子化合物は、組成となるモノマー種や重合手法の選択により、インクジェット用インクに求められる安定性や印刷品質特性の実現に有利なものである。
特に、特開平10−88042号公報のスチレン・(メタ)アクリル酸系樹脂は、顔料表面への吸着と印刷物適性に優れたものである。このような樹脂よりなる分散剤は、高顔料濃度下で高シェアで分散させることにより顔料表面へのより強力な吸着が行われやすい。
【0006】
従来、このような(メタ)アクリル酸のごとき酸性基を構造中に含む樹脂よりなる分散剤は、特開2001−262038号公報において、水溶性有機溶剤への溶解あるいは塩基性化合物による中和を経て、溶液状にて使用することが提案されている。例えば、水溶性樹脂とアルカリ成分を水に溶解した水溶液を作成し、これに顔料を加えて充分撹拌した後、さらに分散効率の高い高速のサンドミルなどを用いて分散させて水性顔料分散液を得る方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような高分子分散剤を溶解するような操作を行う場合、製造工程内に溶剤除去操作が必要になるなど煩雑であり、また顔料と高分子分散剤との強固な吸着が得にくく、得られた水性顔料分散体の分散安定性が未だ不十分であった。
すなわち、たとえばサンドミルによる水性顔料分散液の分散工程は、通常固形分比率の小さい低粘度の被分散液で行われる。そのため、被分散液は顔料濃度が低く、また粘度も低いため、顔料に強力なシェアがかかりにくく、顔料の粗大粒子を粉砕するのに多くの時間がかかるという問題があった。
【0008】
また、この様にして得られた水性顔料分散液には、分散後にも相当量の粒径1μm以上の粗大粒子が含まれている。そして、このままではインクジェットの吐出安定性が確保できないので、さらに遠心分離、濾過などによってこの粗大粒子を除去する工程が必要であり、さらなる製造効率の低下と収率の低下という問題があった。
これに対して、樹脂と顔料もしくは、樹脂、水、水溶性有機溶剤からなる水性樹脂溶液と顔料の混合物を、ロールで練肉することも行われている。二本ロールにおいては、上記混合物を混練して顔料を含む固形チップを作製し、該固形チップに主に水と水溶性有機溶剤を添加してハイスピードミキサー、ホモジナイザー等で分散して水性顔料分散液を得る方法も行われている。
【0009】
しかしながら、このような方法を用いると、確かに顔料はロール間でシェアを受けて細かく粉砕されるものの、練肉はあくまで開放系で行われるため、練肉中に水、水溶性有機溶剤が蒸発して最終的には固形分比率の高い固形のチップ状となる。そのため、これに続く分散工程で、さらに水、水溶性有機溶剤を添加して固形チップの粉砕、溶解と顔料の分散を行わなければならない。
したがって、ロールで練肉する操作に続く、分散工程に負担がかかり、分散時間が長時間化したり、また、たとえ長時間の分散を行ったとしても、粗大粒子が残存する可能性があった。また、ロールで練肉した後の固形チップは顔料の表面が樹脂被覆されていても、このように該固形チップを粉砕、溶解する分散工程を経るため、水性顔料分散液作製後の顔料表面の樹脂被覆が必ずしも十分でないことがあった。
【0010】
とくに、二本ロールを用いた練肉においては、練肉中に練肉物がロール間でシート状になり、かつロールから脱離しないことが必要とされる。そのため、練肉当初から粉体状顔料と粉体状樹脂を用いて練肉を開始することは装置の構造上無理である。さらに練肉開始時における顔料に対する樹脂、水溶性有機溶剤の比率が一定値以上でないと、前記シート状の練肉物を形成することが出来ないため、顔料、樹脂、水、水溶性有機溶媒等の配合比率の設定自由度は必ずしも高くなく、顔料比率をあまり高く設定できない。また使用樹脂の組成や熱特性によっては混練物がうまくまとまらないなど、樹脂そのものの選定や製造時に用いる形態にも制約が課せられていた。とくに印字塗膜の耐久性やインクの熱安定性を考慮したとき、樹脂中のスチレン比率を高め、Tgの高い樹脂を使うことが行われるが、二本ロールによる混練ではスチレン比率が25%を超え、もしくは樹脂Tgが90°Cを超えると混連中の樹脂がまとまりにくくなるため、このような高耐久性の要望に応えるのが難しかった。
【0011】
また三本ロールを用いた練肉は、二本ロールに比べると遙かに低固形分比率の混合物に対して用いられ、顔料の配合比率をあまり高く設定することができない。被混練物の粘度も低く、前処理として用いるには被混練物にかかるシェアをあまり大きくできないという難点がある。
【0012】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、分散安定性に優れ、粗大粒子が少なく、普通紙上の高品位な印刷特性を有するインクジェット用水性顔料インクを得ることができる水性顔料分散体用混練物の製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明においては以下の様な解決手段を提案する。すなわち、カーボンブラック及び有機顔料から選択された少なくとも1種の粉体状顔料と粉体状の樹脂とを用いて混合、撹拌し混合物を作製し、前記混合物を、前記粉体状顔料と前記粉体状の樹脂の共存した状態で混練することを特徴とする水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法である。
【発明の実施の形態】
また、本発明においては、このような水性顔料分散体用顔料混練物において、粒度分布において1ミリメートル以下の成分が80重量%以上である粉体状の樹脂を用いることが好ましい。
高分子分散剤として機能する樹脂をこのように粉体で用いることにより、多量の水溶性溶剤を利用することなく、粉体状の顔料表面に効率的に吸着が行われる。
【0014】
また前記粉体状の樹脂がカルボキシル基を含有しており、前記混合、攪拌時にさらに塩基性物質を加えて行うと、より粗大粒子の低減に効果があり好ましい。
また、粉体状で取り扱い、続いて混練物を分散体として取り扱うためには、密閉可能な混合機な撹拌槽を有していることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法においては、前記撹拌槽を有している混合機がプラネタリーミキサーであることが好ましい。
プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を使用して、撹拌槽中の混練物を撹拌、混練する構造を有しており、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少ない。また、羽根の形状が肉厚で、高負荷をかけることができるが、一方では撹拌羽根を撹拌槽中で回す通常の撹拌機の様に使用することも出来る。このため粉体状の顔料、樹脂の混合、攪拌に適している。また高負荷領域から低負荷領域まで、混練対象にすることができる被混練物の幅が広く、混練終了後の混練物に、そのまま水と水溶性有機溶剤の一方あるいは両方を添加して希釈、撹拌、分散の全てを、混練物をプラネタリーミキサーから取り出さずに、該同じミキサーの中で行うことができる。
【0016】
水性顔料分散体用顔料混練物の製造においては、粉体状の顔料と粉体状の樹脂を用いて混合、攪拌を行う工程を有するが、必要に応じて水、水溶性有機溶剤、を用いることができる。
本発明の製造方法においては、カーボンブラック及び有機顔料から選択された少なくとも1種の粉体状顔料と粉体状の樹脂とを用いて混合、撹拌し混合物を作製する工程を有することを特徴としており、特に上記混合物の混練開始時に粉体状の顔料と粉体状の樹脂が共存した状態となっていることが好ましい。また粉体状の顔料と粉体状の樹脂が共存した状態で混練される過程を経ることがさらに好ましい。
【0017】
以下、本発明について、水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法について、例を挙げて詳細に説明する。
【0018】
(顔料)
顔料は、公知のものを特に制限なく使用することができる。特にインクジェット記録に適した水性顔料混練物を得るためには、例えばモノアゾ系、ジスアゾ系などのアゾ顔料;フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等の縮合多環式顔料、レーキ顔料など種々の有彩色の有機顔料およびカーボンブラックを用いることができる。
【0019】
本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法において、これら顔料は粉体状で撹拌槽に配合される。インクジェット記録に適した顔料分散体を得るためには、顔料の粒径は粉体状の樹脂よりも微細であることが好ましく、特に顔料の一次粒子は1μm以下であることが好ましい。一般に顔料は、一次粒子の凝集物の形で用いられるが、均一な分散体を得る上で、粗大な凝集物のないことが好ましい。
【0020】
本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法における顔料としては、粉体の平均粒径として0.5μm程度以下であることが好ましく、顔料の着色力、耐光性等の観点からも0.05〜0.5μmであることが好ましい。顔料の粒径は、遠心沈降光透過法、遠心沈降重量法、顕微鏡観察、電気的見知法、レーザー回折/散乱光学式等の公知の方法により計測可能である。各種測定法による粒子径は、おのおの異なる物理的意味を有しているが、粒子径としては具体的には粉体状顔料は粒径分布を有しているため、体積球相当径の平均をもって表されるものが分散体の品質を表現する上からも好ましい。
前記顔料は、本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法において、全混練物に対して35重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上配合される。
【0021】
(樹脂)
本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法における粉体状の樹脂は、水性媒体中の顔料に対して分散効果のある高分子分散剤として機能するものを用いることが好ましい。特にこれらの高分子分散剤として利用可能な樹脂は、インクジェット適性における分散安定性、長期保存安定性の点から、モノマー成分として親水基と疎水基を含む樹脂などが好ましい。
【0022】
モノマー成分として親水基と疎水基を含む樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、ポリビニール酢酸系樹脂、ポリビニールスルフォン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、ポリピロリドン樹脂、セルロース系樹脂などを例示することができる。
そして、この樹脂は、好ましくは疎水基を有する疎水性モノマーと、親水基を持つモノマーとを共重合させて得ることができる。
【0023】
なお、ここで、単にモノマーという場合には、重合前のモノマーを指し、モノマー成分という場合には、樹脂中に含まれるモノマー由来の構造を示すものとする。
前記樹脂に用いる疎水基を有する疎水性モノマーとしては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリルエステル;
スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;
アクリロニトニル;アクリルアミド;酢酸ビニル;塩化ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;エチレン;などを例示することができる。中でもスチレン系モノマー、さらにはスチレンモノマーが好ましい。これらは1種または2種以上併用して用いることができる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/またはメタアクリレートを示し、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/またはメタアクリル酸を示す。
【0024】
また、親水基を持つモノマーとしては、酸基を有するモノマーであることが好ましく、カルボン酸、スルホン酸、リン酸などを例示することができる。特に分散安定性、長期保存安定性の点から、カルボキシル基を含むモノマーが好ましく、例えば(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。本発明においては、分散安定性、長期保存安定性の点から、特に(メタ)アクリル酸に由来する構造を有している(メタ)アクリル酸系モノマーを用いると好ましい。
【0025】
さらに、分散安定性、長期保存安定性の点から、疎水性モノマー成分であるスチレンモノマー成分と、酸基を有するモノマー成分、特に(メタ)アクリル酸系モノマー成分とからなる共重合樹脂などが好ましい。なお、酸基を有するモノマーは親水性モノマーであると好ましい。
【0026】
スチレンモノマー成分と(メタ)アクリル酸系モノマーからなる共重合樹脂においては、スチレンモノマー成分が20重量%以上、好ましくは40重量%以上で、95重量%以下含まれていると望ましい。
【0027】
共重合樹脂中のスチレンモノマー成分の含量を20重量%以上とすることにより、共重合樹脂の疎水性が増加し、水系においてはより強固に顔料への樹脂被覆が行われる。その結果、インクジェット用インク中の、樹脂被覆粒子が加熱されても、その粒径が安定であり、粒径安定性が向上する。その結果、インクとしたときには吐出安定性が向上し、かつ高い印字濃度が得られ、また印字品の耐水性の向上が達成される。なお、95重量%をこえると分散に寄与する酸基を有するモノマー成分の配合量が低下し、水系での分散安定性、長期保存安定性が低下するおそれがある。
【0028】
なお、長期的な保存安定性の点から、樹脂の酸価は60〜300mgKOH/g、好ましくは100〜180mgKOH/g、さらに好ましくは120〜170mgKOH/g範囲とされる。なお酸価とは、樹脂1gを中和するに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数であり、mgKOH/gにて示す量である。
酸価が60より小さいと、顔料の分散安定性が低下するおそれがある。一方、酸価が300より大きいと、顔料の凝集が発生し易くなり、またインクの印字品の耐水性が低下するおそれがある。
【0029】
なお、樹脂の重量平均分子量は4000〜40000、さらに好ましくは5000〜30000とされる。4000以上とされる理由は、低分子量である程初期的な分散性が優れているが、長期的な保存安定性が低下する傾向があるためである。なお、40000をこえると水性顔料分散液粘度が高くなるだけでなく、分散性が低下する傾向がある。樹脂の溶解性などが低下し、不都合である。
【0030】
また、樹脂のガラス転移点は90°C以上、好ましくは100°C以上、実質的には150°C以下とされる。ガラス転移点が90°C以上であると、インクによって形成された画像の耐久性が向上し、また、インクの熱安定性が向上し、好ましい。なお、樹脂のガラス転移点は分子量などの変更によって調整することができる。
【0031】
これらの樹脂は、通常有機合成の手法により、溶剤中でモノマー成分を重合することにより合成されるが、本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法における樹脂は、溶剤等を除去した後、乾燥、粉砕して利用される。特に、スチレンモノマー成分と(メタ)アクリル酸系モノマーからなる共重合樹脂においては、水性のインクジェット用インクに通常使用されるアルコール類等の有機溶剤類に対する溶解度が低い。効率的な顔料樹脂混練と、均一な分散体を得るためには、樹脂は微細化することが好ましい。また、撹拌槽を有する混合機を用いる場合は、樹脂の粒径は概ね1mm程度以下とすることが好ましい。樹脂の粒径は、合成後の樹脂を乾式で粉砕することによりなされ、メッシュ状のふるいにより容易に分級が可能である。本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法においては、樹脂の粒度分布は、1ミリメートル以下の成分が80重量%以上であれば、均一な分散体を得る上で効果があり、好ましい。
【0032】
なおここで1ミリメートル以下の成分が80重量%以上とは、粒度分布から各粒径の成分に対応する重量割合を算出したときに、粒径1ミリメートル以下の成分の重量累積値が80重量%となるという意味である。
【0033】
粉体状の樹脂の粒度分布は、遠心沈降光透過法、遠心沈降重量法、顕微鏡観察、電気的見知法、レーザー回折/散乱光学式等の公知の方法により計測可能である。とくに、粒度分布の広範な粉体樹脂においては、光学顕微鏡による観察やふるいによる分級は効率的であり好ましい。光学顕微鏡等による観察では、視野内にある複数の粒子の短軸径と長軸径を測定し、おのおのの粒子の二軸幾何平均径から換算された粒子の体積球相当値の累計値をもって、粉体の粒度分布を評価することができる。
【0034】
各種測定法による粒子径は、おのおの異なる物理的意味を有しているが、本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法における粉体状樹脂の粒度分布に関しては、特定の目開きを有するふるいを通過しうる樹脂のふるい下分布により、評価可能である。ふるいによる評価方法を用いれば、好ましくは、目開き4ミリメートルのふるい(JIS4000マイクロメートルふるい)を用いた分級で、質量分布において、ふるい下積算分布が50%以上であることが好ましく、さらには、目開き4ミリメートルふるいのふるい下積算分布が95%以上で、目開き1ミリメートルのふるい(JIS1000マイクロメートルふるい)の分級におけるふるい下積算分布が80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、目開き500マイクロメートルのふるい(JIS500マイクロメートルふるい)によるふるい下積算分布が80%以上であることが、粗大粒子の少ない水性顔料分散体用の混練物を得るためには、好ましい。
【0035】
本発明の水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法における粉体状樹脂の粒度分布における下限は特に必要ないが、粉砕の効率と、取り扱いの容易さから100マイクロメートル程度とすることが好ましい。また、粉体状樹脂の粒形は必ずしも球状である必要はなく、粉砕による不定形の粒子で使用可能である。
【0036】
さらに顔料と樹脂の比率に関しては、樹脂の量は顔料表面を安定に被覆するのに必要な量が確保されていれば十分であり、それ以上の樹脂の含有はむしろ好ましくない。樹脂が過剰量存在すると、水性顔料分散体やインクを作製したときに、顔料に吸着しない遊離の樹脂が増加するため、特にインクジェット用インクとして使用したときに該樹脂がインクノズルに固着してインク吐出不良の原因となりやすい。特にサーマルジェットプリンターにおいては同障害の発生する危険性が高い。
【0037】
本発明の水性顔料分散体用混練物における、顔料と樹脂の含有比率は重量比で10:0.5〜10:20、より好ましくは10:0.5〜10:10とされる。
この範囲外であると樹脂が少ない場合分散安定性が悪化するおそれがあり、樹脂が多いと遊離樹脂が増加しインクジェット記録用のインクとしたときに、不良を引き起こすおそれがある。
【0038】
(水、水溶性有機溶剤)
本発明の水性顔料分散体用混練物の製造においては、顔料と粉体状の樹脂を混合、攪拌、混練してなるが、必要に応じて水および水溶性有機溶剤類を併用することができる。
水性顔料分散体用混練物に水溶性有機溶剤を配合することにより、この水溶性有機溶剤が前記樹脂を溶解、一部溶解若しくは膨潤させた状態で顔料と混練することで、顔料の粒子の表面に樹脂の均一な被膜を容易に形成することができる。その結果、水性顔料分散体とインクにおいて顔料の分散安定性を格段に向上させることができる。
【0039】
水溶性有機溶剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;
ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;
ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;
エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類;
ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのモノグリコールエーテル類;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;
あるいは、スルホラン、エステル、ケトン、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類、グリセリンおよびその誘導体など、水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤などを挙げることができる。
これらの水溶性有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
中でも、水性顔料分散液やインクにおいて、乾燥防止剤としての役割も果たすため、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。グリコール類は一般的にインクに含まれている場合が多く、最終製品中に残留しても問題がない。
【0041】
なお、水溶性有機溶剤は、必要に応じて、顔料および樹脂の重量に対応した量が添加される。その添加量は、顔料の重量の0〜5倍程度であり、好ましくは樹脂の重量の1〜4倍程度である。 水溶性有機溶剤量が顔料の重量の1/2未満では顔料表面の樹脂との親和性を増すことができず、顔料の分散安定性が低下するがある。また5倍をこえても混練物の粘度が低下しすぎて、十分な混練が行えないため、顔料の分散性が低下し、インクにおいて、塗出不良等の画質低下を生じるおそれがある。
【0042】
(塩基性化合物)
本発明の水性顔料分散体用混練物の製造において、分散剤として酸性基を有する樹脂を使用した場合、混練物から誘導された水性顔料分散体の水媒体中での分散安定性を高めるため、酸性基を中和する塩基性化合物を用いることが好ましい。特にスチレンモノマー成分と(メタ)アクリル酸系モノマー成分からなる共重合樹脂を用いた場合、アルカリ金属水酸化物、アルコールアミン類等の有機アミン化合物が利用可能である。これら塩基性化合物は、混練の課程で添加しても、混練後の水性顔料分散体の調製課程で添加することも可能であるが、混練過程で添加することが好ましい。
【0043】
塩基性化合物の添加量は、水性顔料分散体およびインクにおける最大添加量以下とすることが好ましく、樹脂の酸価に対応した中和率にて、50〜200%の範囲が好ましい。
ここで中和率は下記式で表される。
【化1】
Figure 0004329315
【0044】
(混練方法)
本発明の水性顔料分散体用混練物の製造方法においては、粉体状の顔料、樹脂を用いてなるため、粉体として流動性が高く、撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を備えた混合機を用いると好ましい。撹拌羽根の数は特に限定しないが、高い混練作用を得るためには二つ以上の撹拌羽根のものが好ましい。この様な構成の混合機を用いると、水性顔料分散体用混練物を製造した後、これを同一撹拌槽中で直接水溶性溶剤で希釈し、分散させて、水性顔料分散体を製造することができる。この様な装置としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー等があるが、特にプラネタリーミキサーなどが好適である。本発明においては、好ましくは顔料濃度と、顔料と樹脂からなる固形分濃度が高い状態で混練するため、混練物の混練状態に依存して粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは低粘度から高粘度まで広範囲に対応することができるためである。
【0045】
図1〜図3はプラネタリーミキサーの構成の一例を示したものである。図中符号1は撹拌槽であって、この中空円筒形の撹拌槽1は上下に略二分割されている。そして、撹拌時には上方部材2と下方部材3とが一体化し、閉鎖系となる。撹拌槽1の上方部材2の内側には図2に拡大図で示した様に、枠型ブレードからなる撹拌羽根4、5が一つのローター6に保持されている。ローターが回転(公転)すると、撹拌羽根4、5は同一方向に回転(自転)する。そして、図3に示した様に、ローターの公転運動とともに2本の撹拌羽
根4、5がそれぞれ自転運動する、いわゆる遊星運動(プラネタリー運動)をする。なお、図3に示したのは公転一回転における、2本の撹拌羽根4、5の先端の軌跡である。
【0046】
プラネタリーミキサーにおいては、この様な撹拌羽根4、5のプラネタリー運動により、撹拌羽根4、5相互間、および撹拌羽根4、5と撹拌槽1内面との間で強力な剪断力が作用し、高度の撹拌、混練、分散作用が得られる。
【0047】
(水性顔料分散体)
本発明の水性顔料分散体用混練物の製造方法による混練物は顔料濃度が高く、通常粘土状あるいは固体状の混練品なので、物理的にその表面を細かく削り取り、水溶性溶剤中に分散させて水性顔料分散液を製造すると好ましい。なお、水性顔料分散液用混練物中の顔料は水性顔料分散液用混練物の製造時に既に解砕されているので、水性顔料分散液を得るための分散時間が短く、製造効率が向上する。
【0048】
水性顔料分散体用混練物の分散に用いる分散機としては、公知のものを用いることができ、例えば、メディアを用いたものでは、上記サンドミルの他に、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミルなどを挙げられる。またメディアを用いないものとしては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機などがあげられるが、これらの中でもメディアを用いた分散機は分散能力が高いため好ましい。
なお、分散後に必要に応じて水溶性溶剤で濃度調整を行ってもよい。
【0049】
(インクの調製方法)
インクは、上述の様にして得られた水性顔料分散液をさらに水溶性溶剤にて希釈して製造することができる。インク中に含有される顔料濃度は2〜10重量%程度が好ましい。
水性顔料分散液を希釈する水溶性溶剤に、水溶性有機溶剤が配合されていると、インクにおいて、乾燥防止、粘度調整、濃度調整に寄与するため、好ましい。水溶性有機溶剤としては、上述の水性顔料分散液用混練物を分散するために用いるものと同様のものを例示することができる。
【0050】
また、記録媒体への浸透性を示す水溶性有機溶剤が配合されていると、インクに浸透性を付与することができ、好ましい。インクにおいて、浸透性は、記録媒体へのインク(顔料)の浸透性や記録媒体上でのドット径の調整を行うために必要な特性である。
浸透性を示す水溶性有機溶剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルなどのアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピルエーテルなどのアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0051】
インクには、水溶性溶剤と水性顔料分散液用混練物の他に、例えば公知の添加剤などを配合することができる。
配合可能なものとしては、例えばアルカリ剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂などを例示することができる。
【0052】
本発明においては、例えば水性顔料分散液、水溶性溶剤、必要に応じて各種添加剤を加えて均一に撹拌することにより、インクを製造することができる。
このインクは、インクジェット記録用のインクとして好適に用いることができる。適用するインクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知のものを例示することができる。
そして、このインクは、これら各種のインクジェット方式に適用した場合に、極めて安定したインク吐出が可能となる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。なお、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。また、特に断りがない限り「部」は「重量部」、「%」は「重量%」である。
【0054】
(樹脂の粉砕)
常法により合成したスチレン/アクリル酸/メタアクリル酸=70/10/13(モノマー重量比)からなる樹脂を乾燥し、白色固体とした。この樹脂の重量平均分子量11000、酸価151mgKOH/gであり、モノマーの組成比から計算したガラス転移点は107°Cであった。次いで、これをクラッシャーにて十分に粉砕し、粉体(粉体樹脂A)とした。この粉体はJIS1000マイクロメートルふるいによる分級で、ふるい残が15重量%であった。
【0055】
この粉砕した樹脂を、さらに回転刃付き粉砕器で粉砕し、JIS500マイクロメートルふるいにより80重量%以上が分級される粉体(粉体樹脂B)とした。
同様にして合成、乾燥した樹脂を解砕することで、粒径数ミリメートルの固体粒子状態(粉体樹脂C)とした。粉体樹脂CのJIS4000マイクロメートルふるいによるふるい残は40重量%、JIS1000マイクロメートルふるいによるふるい残は90重量%であった。
【0056】
(実施例1)
(混練)
下記組成の混合物を、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V((株)井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温し、内容物温度が60°Cになるまで低速(自転回転数:21rpm、公転回転数:14rpm)で混練を行い、内容物温度が60°Cに達した後、高速(自転回転数:35rpm、公転回転数:24rpm)に切り替え、4時間混練を継続した。
【0057】
・粉体樹脂A 1.50kg
・青色顔料 ファストゲンブルーTGR 5.00kg
(大日本インキ化学工業(株)製 粉末状)
・ジエチレングリコール 2.00kg
・34重量%水酸化カリウム水溶液 0.67kg
混練物は溶融状から固体状であった。(顔料混練物(1))
【0058】
引き続き、イオン交換水10.83kgを3時間かけて徐々に加え混練物を液状化し、液体状態でプラネタリーミキサーから取り出した。この取り出し物(1)の固形分濃度は34%、回収量は17.5kgであった。
【0059】
(分散)
取り出し物(1)にイオン交換水5.25kgを加え、分散撹拌機(浅田鉄工(株)製)で30分間撹拌し、泡が消えるまで一晩室温で静置した。
この顔料分散液を、ビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L)にて下記条件で4回分散機を通す(4パス)ことで分散を実施し、顔料分散体(1)を得た。
【0060】
Figure 0004329315
顔料分散体(1)は固形分濃度27%、顔料濃度20%であった。
この水性顔料分散体の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、108nmであった。
【0061】
(実施例2)
実施例1の粉体樹脂Aに換えて粉体樹脂Bを用いた他は、実施例1と同様にして、水性顔料分散体用顔料混練物(2)を得た。
この顔料混練物(2)を実施例1と同様にして、水希釈、分散処理により顔料分散体(2)とした。
この水性顔料分散体の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、110nmであった。
【0062】
(実施例3)
実施例1の粉体樹脂Aに換えて粉体樹脂Bを用い、青色顔料 ファストゲンブルーTGRに換えてカーボンブラック#960(三菱化学(株)製 粉末状)を用いた他は、実施例1と同様にして、水性顔料分散体用顔料混練物(3)を得た。
この顔料混練物(3)を実施例1と同様にして、水希釈、分散処理により顔料分散体(3)とした。
この水性顔料分散体の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、75nmであった。
【0063】
(実施例4)
実施例1の粉体樹脂Aに換えて粉体樹脂Cを用いた他は、実施例1と同様にして、水性顔料分散体用顔料混練物(4)を得た。
この顔料混練物(4)を実施例1と同様にして、水希釈、分散処理により顔料分散体(4)とした。水希釈過程でやや沈降物が発生していた。
この水性顔料分散体の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、141nmであった。
【0064】
(比較例1)
実施例1で用いた粉体樹脂Aの樹脂100グラムに、メチルエチルケトン100グラム、水酸化ナトリウム1070グラム、水600グラムを加え撹拌した後、メチルエチルケトンを減圧下(70゜C、150Pa)で蒸留して固形分20.0重量%を含む乳白色状の樹脂溶液を得た。
【0065】
次に、下記組成で仕込みを行い、
・樹脂溶液 20部
・青色顔料 ファストゲンブルーTGR 10部
(大日本インキ化学工業(株)製 粉末状)
・ジエチレングリコール 20部
・イオン交換水 10部
・ジルコニアビーズ(1.25mm径) 400部
ペイントシェーカーを用いて4時間撹拌を行い水性顔料分散体(5)を得た。この水性顔料分散体の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、111nmであった。
【0066】
(比較例2)
実施例1で用いた粉体樹脂Aの2.50kgを、ジエチレングリコール 2.75kg、34重量%水酸化カリウム水溶液 0.38kgを秤量し、加熱撹拌を行い、シロップ状の液体とした。この樹脂溶液3.6kgをプラネタリーミキサーPLM−V−50V((株)井上製作所製)に仕込み、黄色顔料クロモフタールイエロー8G−CF(チバスペシャリティケミカルズ社製、C.I.ピグメントイエロー128の微細粉砕品)4.00kgを加え、60°Cに加熱撹拌混練を4時間行った。この混練物に水7.2kgを徐々に混練物を液状化し(水性顔料分散体6)、液体状態でプラネタリーミキサーから取り出した。
この水性顔料分散体の体積平均粒径を日機装(株)社製マイクロトラックUPA−150で測定したところ、250nmであった。
この顔料分散体6の13.4kgを実施例1と同様にして、水8.1kgを加えて希釈し、ビーズミルによる分散を試みたが、送液圧力変動が大きく、安定な分散処理が行えなかった。
【0067】
(顔料分散体の安定性)
実施例1、2、3、4および比較例1、2の顔料分散体(1、2、3、4、5、6)をポリエチレンキャップ付きガラス瓶に密封し、60°C72時間の加熱試験を行った。加熱後のガラス瓶をゆっくりと倒立させることで、ガラス瓶底部の状況を目視で観察した。その結果を以下の表1に示した。
【0068】
【表1】
Figure 0004329315
【0069】
(粗大粒子観察)
実施例1、2、3、4および比較例1、2の顔料分散体(1、2、3、4、5、6)をスライドグラス上に極少量取り、カバーグラスを乗せ分散体膜厚を一定にした条件で、200倍の倍率で透過光による顕微鏡観察を行い、粗大粒子の状態を確認した。その結果を以下の表2に示した。ランクは、粒子観察結果のレベルを示したものである。
【0070】
【表2】
Figure 0004329315
【0071】
(インクの調整)
実施例1、2、3の水性顔料分散体用顔料混練物からなる水性顔料分散体を用いて、下記配合で混合し水性インク(1、2、3)を得た。配合順序は、顔料分散体以外の組成を計量混合した水性溶媒中へ水性顔料分散液を撹拌しながら加え均一に混合し、フィルターによる濾過操作は行っていない。
【0072】
・水性顔料分散体 20.0部
・ジエチレングリコール 11.0部
・グリセリン 3.0部
・サンニックスGP−600 5.0部
(三洋化成工業(株)製)
・イオン交換水 61.0部
【0073】
(インクの印刷評価)
これらの水性インクをポリエチレンキャップ付きガラス製密閉容器に入れ、60°C、72時間で加速安定性試験を行ったところ、いずれも粒径変化、沈降物は認められなかった。また、得られた水性インクを市販のインクジェットプリンタEM−900C(セイコーエプソン(株)製)を用い、ゼロックス社製4024用紙への印刷試験では、水性インク(1、2)では製造直後および加速安定性試験後のいずれの記録液でも、ノズル目詰まりはなく安定しており、良好な画像が得られた。
同様にして、比較例1、2の水性顔料分散体用顔料混練物からなる水性顔料分散体を用いて得た水性インクは、吐出の乱れが多発した。
【0074】
(耐水性)
ピエゾ方式インクジェットプリンタ(エプソン社製EM−900C)を用い、ゼロックス社製4024用紙へのベタ印刷画像を印刷後1分以内に、室温の精製水に1時間静かに浸漬し、室温で24時間かけて乾燥後、マクベス社製濃度計RD−918で未浸漬部と浸漬部の印刷濃度を測定した。印刷の残存率を、
[浸漬後の印刷濃度]/[浸漬前の印刷濃度]×100
でもとめたところ、実施例1および2の混練物から得たインクの印刷試験結果は、残存率がそれぞれ99%、99%で差異は認められず、いずれも耐水性が高い物であった。
インクの印刷評価と耐水性の結果を表3に示した。
【0075】
【表3】
Figure 0004329315
【0076】
本発明の水性顔料分散体用混練物の製造方法において、粉体状の樹脂を用いるとこのように粗大粒子の少ない顔料分散体が得られる理由について、詳細は明らかではないが、本発明者らは、粉体状の顔料と高分子分散剤として機能する樹脂とが混練の初期段階で、均一に混合され、顔料表面を活性点とした樹脂の吸着によるマイグレーションが効率的に進行し、この課程で顔料の一次粒子表面を樹脂が被覆しやすいものと考えている。それにより、混練物を希釈した顔料分散体の粗大粒子が減少し、後工程の分散処理工程への負荷が低減するものと考えている。また、スチレン(メタ)アクリル酸系樹脂のごとき、水を主体とする分散媒体に対する溶解度の低い樹脂を用いた場合、この効果が顕著に発現するものと考えている。
これらの効果により、インクジェット用インクを調製した場合、フィルター処理工程の負荷も低減し、品質の高い水性顔料インクに適用可能となっているものと考えている。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、水性顔料分散体用混練物の製造過程で粗大粒子を各段に減少し、インクジェット適性の高い分散安定性を有し、普通紙上の高品位な印刷特性に優れたインクジェット用水性顔料インクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プラネタリーミキサーの構成の一例を示した斜視図。
【図2】 プラネタリーミキサーの一部拡大図。
【図3】 プラネタリーミキサーにおける撹拌羽根の軌跡を示した説明図。
【符号の説明】
1 :撹拌槽
2 :撹拌槽の上部
3 :撹拌槽の下部
4 :撹拌羽根
5 :撹拌羽根
6 :ローター

Claims (5)

  1. カーボンブラック及び有機顔料から選択された少なくとも1種の粉体状顔料とカルボキシル基を含有した粉体状の樹脂、塩基性化合物、及び水溶性有機溶剤を用いて混合、撹拌し混合物を作製し、前記混合物を、前記粉体状顔料と前記粉体状の樹脂の共存した状態で混練開始し、前記粉体状の樹脂は乾燥、粉砕したものであることを特徴とする水性顔料分散体用顔料混練物の製造方法。
  2. 粒径1ミリメートル以下の成分が80重量%以上である粉体状の樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載の水性顔料分散体用混練物の製造方法。
  3. 前記粉体状の樹脂はJIS4000マイクロメートルふるいを用いた分級で、質量分布において、ふるい下積算分布が50%以上である請求項1または2に記載の水性顔料分散体用混練物の製造方法。
  4. 撹拌槽と一軸あるいは多軸の撹拌羽根を有する混合機を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散体用混練物の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性顔料分散体用混練物を用いて製造された混練物を、水溶性溶剤中に分散させることを特徴とする水性顔料分散体の製造方法。
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