JP4324702B2 - 質量分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は質量分析装置による質量分析方法に関し、更に詳しくは、分析対象であるイオンを開裂させて発生した娘イオンを分析することが可能な質量分析装置を用いた質量分析方法、特に分子の組成や構造を解析する方法に関する。
イオントラップ型質量分析装置などを用いた質量分析においてはMS/MS分析(タンデム分析)という手法が知られている。一般的なMS/MS分析では、まず分析対象物から目的とする特定の質量厳密には質量/電荷)を有するイオンを前駆イオン(親イオン)として選別し、その選別した前駆イオンをCID(Collision Induced Dissociation:衝突誘起分解)によって開裂させ、開裂イオンを生成する。その後、開裂によって生成した娘イオンを質量分析することによって、目的とするイオンの質量や化学構造についての情報を取得することができる。
近年、こうした装置で分析しようとする試料はますます分子量が大きくなり、構造(組成)も複雑になる傾向にある。そのため、試料の性質によっては、一段階の開裂操作だけでは十分に小さな質量までイオンが開裂しない場合がある。そうした場合には、開裂の操作を複数回(n−1回)繰り返し、最終的に生成した娘イオンを質量分析するMSn分析が行われることもある(例えば特許文献1、2など参照)。なお、上記のような1回の開裂操作による娘イオンの質量分析はMS2分析である。
こうしたMSn分析では、基本的に、親イオンの質量から推定される元素の組み合わせによる組成式と娘イオンの質量から推定される元素の組み合わせとの両方を用いて、元の試料の分子構造や組成の候補を絞る。しかしながら、或る程度の高い精度で質量を算出することが可能な装置であっても、分子量が大きくなるほど推定される候補の数が多くなり、最終的に目的試料の組成を決定することが非常に困難になるという問題がある。
特開平10−142196号公報 特開2001−249114号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、特に大きな分子量を持つ試料の分子構造や組成の解析を行う際に、そうした解析を容易に且つ正確に行うことができる質量分析方法を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明の第1の態様に係る質量分析方法は、分析対象である試料に由来する親イオンをn−1(n≧3)段階に開裂させ、該開裂によって発生した娘イオンを質量分析するMSn分析が可能な質量分析装置を用い、前記試料の分子構造や組成の解析を行う質量分析方法であって、
a) 開裂操作を行わないMS1分析により得られた親イオンの質量に基づき、該親イオンに対応する成分の候補Xを導出する候補X導出ステップと、
b) MSm(2≦m≦n)分析により得られた娘イオンの質量に基づき、該娘イオンに対応する成分の候補Yを導出する候補Y導出ステップと、
c) 前記候補Yの数が所定値以下である場合に、MSp(p=2〜m)分析により得られた娘イオンの質量とMSp-1分析により得られた親イオン又は娘イオンの質量との差を算出するとともに、該質量の差に対応した成分の候補Zをそれぞれ導出する候補Z導出ステップと、
d) 少なくとも前記候補Y、候補Zを利用して候補Xの絞り込みを実行する絞り込みステップと、を有し、
前記候補Xの数が1個又は所定の個数以下になるまでmを2から最大nまで順次増加させてゆくことを特徴としている。
また、上記課題を解決するためになされた本発明の第2の態様のものは、分析対象である試料に由来する親イオンをn−1(n≧2)段階に開裂させ、該開裂によって発生した娘イオンを質量分析するMSn分析が可能な質量分析装置を用い、前記試料の分子構造や組成の解析を行う質量分析方法であって、
a) MSm(1≦m≦n−1)分析により得られた親イオン又は娘イオンの質量に基づき、該親イオン又は娘イオンに相当する成分の組成候補Xを導出するステップと、
b) 前記親イオン又は娘イオンを1回又は複数回開裂させるMSp(p≧m+1)分析により得られた娘イオンの質量に基づき、該娘イオンに対応する成分の候補Yを導出する候補Y導出ステップと、
c) MSq(q=m+1〜p)分析により得られた娘イオンの質量とMSq-1分析により得られた親イオン又は娘イオンの質量との差を算出するとともに、該質量の差に対応した成分の候補Zをそれぞれ導出する候補Z導出ステップと、
d) 前記候補Yと候補Zの組み合わせから成る候補(Y+Z)を作成する候補(Y+Z)作成ステップと、
e) 前記候補Xと候補(Y+Z)を比較することで候補Xの絞り込みを行う絞り込みステップと、
を有することを特徴としている。
上記課題を解決するためになされた本発明の第3の態様のものは、分析対象である試料に由来する親イオンをn−1(n≧2)段階に開裂させ、該開裂によって発生した娘イオンを質量分析するMSn分析が可能な質量分析装置を用い、前記試料の分子構造や組成の解析を行う質量分析方法であって、
a) 上記親イオンに含まれ得る各原子の最大数及び最小数を記載した解析条件テーブルを作成する解析条件テーブル作成ステップと、
b) MSm(2≦m≦n)分析により得られた娘イオンの質量に基づき、該娘イオンに対応する成分の候補Yを導出する候補Y導出ステップと、
c)MSm-1分析により得られた前記娘イオンの前駆イオンに相当するイオンの質量と該娘イオンの質量との差を算出するとともに、該質量の差に対応した成分の候補Zを導出する候補Z導出ステップと、
d) 候補Y及び候補Zに含まれる各原子の最小数を考慮して、上記解析条件テーブルに記載された各原子の最小数を増加させる解析条件改定ステップAと、
e) 前記前駆イオンの質量に基づき、該前駆イオンに対応する成分の候補Xを導出する候補X導出ステップと、を有し、
上記候補X導出ステップにおいて、解析条件改定ステップAにおいて改定された解析条件テーブルに記載された各原子の最小数及び最大数を候補Xを導出する際の解析条件として利用することを特徴としている。
本発明の第1の態様に係る質量分析方法では、まずMS1分析として開裂操作を行わずに目的試料に由来する親イオンの質量を測定する。そして、候補X導出ステップにより、質量分析装置の質量精度や構成要素となり得る原子の種類、最大個数などの条件を考慮して、親イオン(つまり元の試料)の成分(組成)の候補Xを挙げる。質量分析装置の質量精度がきわめて高ければ、親イオンの成分の候補Xを容易に絞ることができるが、多くの場合、そこまでの質量精度はないため、多数の候補Xが挙げられる。そこで、次にn=2として1回のみ開裂操作を行うMS2分析を実行し、娘イオンの質量を測定する。そして、候補Y導出ステップにより、この娘イオンの質量から該娘イオンの成分の候補Yを挙げる。
娘イオンは親イオンの開裂により生じたものであるから、その質量は親イオンの質量よりも小さくなる。しかしながら、元の試料の分子量が大きい場合、娘イオンの質量が親イオンの質量に比べて十分に小さくなるまで候補Yの数を十分に絞ることは困難である。また、娘イオンに対する候補Yの数が多い場合、親イオンに対する候補Xを絞ることも困難である。換言すれば、m=4、5、…と大きくしてゆき、娘イオンの質量自体が或る程度小さくなると、候補Yの数をかなり絞ることが可能である。そこで、娘イオンに対する候補Yの数が所定値以下になるまでmを順次増加させ、つまりは開裂操作の段数を増加させてゆき、娘イオンに対する候補Yの数が所定値以下になったならば、候補Z導出ステップにより、開裂による脱離イオンに対する候補Zを求め、絞り込みステップにより、候補Y、候補Zを利用して候補Xの絞り込みを行う。そして、親イオンに対する候補Xが1個又は所定個数以下にまで絞り込めたならば、分析を終了して求まった候補Xをユーザーに提示する。
mが或る値であるときに候補Y導出ステップによる候補Yの数が所定値を超えていた場合、候補Z導出ステップ及び絞り込みステップを実行してもよいが、上述したように候補Xを絞り込める可能性は非常に小さいので実質的には実行しても意味がない。そこで、好ましくは、候補Y導出ステップによる候補Yの数が所定値を超えていた場合には、候補Z導出ステップ及び絞り込みステップを実行せずにmを増加させて候補Y導出ステップを実行するようにするとよい。これにより、無駄な処理動作を省いて結果を迅速に出すことができる。
このようにして本発明に係る質量分析方法によれば、目的試料の分子量が大きいような場合であっても、その試料の分子構造や組成を推定するために有用な情報をユーザーに確実に且つ迅速に提供することができる。
また、本発明の第2の態様に係る質量分析方法は、目的とするイオンを1回又は複数回開裂させることによって生じた娘イオン及び脱離イオンの組成候補である候補Y及び候補
Zを用いた該目的イオンの組成候補Xの絞り込み方法に関するものである。
まず、候補X導出ステップによって、目的とするイオンの質量から上述のような所定の解析条件の下で該イオンに相当する成分の候補Xを導出する。ここで、目的とするイオンとは、試料を開裂操作を行わないMS1分析で分析することで得られたイオン(親イオン)であってもよく、該親イオンを1回又は複数回開裂させて得られた娘イオンであってもよい。次に、候補Y導出ステップによって、上記目的イオンを1回又は複数回開裂させて得られた娘イオンの質量からその組成式候補Yを導出する。その後、候補Z導出ステップによって、上記目的イオンから上記娘イオンを得るまでの1回又は複数回の各開裂操作の前後におけるイオンの質量差を求め、該質量差に基づいて各開裂による脱離イオンの候補Zをそれぞれ導出する。
続いて、候補(Y+Z)作成ステップによって、上記候補Yに含まれる全ての組成候補と上記候補Zに含まれる全ての組成候補とを組み合わせることによって候補(Y+Z)を作成し、その後、絞り込みステップにおいて該候補(Y+Z)と上記候補Xとを比較することで候補Xの絞り込みを行う。
このように、本発明の第2の態様に係る質量分析方法によれば、目的イオンについて多数の候補Xが得られた場合にも、候補Yと候補Zとの組み合わせからあり得ない候補を排除することができ、質量分析による測定物質の組成式の決定を容易に行うことができるようになる。
一方、上記のように、質量からイオンの組成式の候補を計算する際には、解析条件として質量分析装置の質量精度や親イオン(すなわち元の試料)の構成要素となり得る原子の種類や各原子の最大数等を利用するが、このような解析条件の幅が広い場合には、多数の候補Xが挙げられてしまう。そこで、本発明の第3の態様に係る質量分析方法は、開裂によって生じる娘イオンと脱離イオンの解析結果を利用して、親イオンの組成推定時における解析条件の絞り込みを行うものである。
まず、解析条件テーブル作成ステップにおいて、親イオンの構成要素となり得る原子の種類と各原子の最大数及び最小数を記載した解析条件テーブルを作成する。次に、目的試料について、1回又は複数回の開裂操作を含むMS分析を行い、各段階におけるマススペクトルを得る。そして、候補Y導出ステップにより、MS分析(2≦m≦n)によって得られた娘イオンの質量から該娘イオンに対応する成分の組成式の候補Yを計算すると共に、候補Z導出ステップにより、開裂による脱離イオンの候補Zを導出する。このとき、解析条件としては上記解析条件テーブルに記載された各原子の最大数等を利用することが望ましく、更に、脱離イオンの候補Zの組成推定においては、解析条件テーブルに記載された各原子の最大数から上記娘イオンの候補Yに含まれる各原子の最小個数を減じることで解析条件を更に絞り込むことが望ましい。これにより、候補Z導出ステップにおける脱離イオンの候補Zの数を少なくして、解析効率を更に向上させることができる。
なお、上記とは逆に、候補Z導出ステップにおける解析結果を利用して候補Y導出ステップにおける解析条件の絞り込みを行うようにしてもよい。この場合、上記解析条件テーブルに記載された各原子の最大数等を解析条件として候補Z導出ステップを実行し、続いて、該解析条件テーブルに記載された各原子の最大数から該候補Z導出ステップで得られた脱離イオンの候補Zに含まれる各原子の最小個数を減じることで解析条件の絞り込みを行う。その後、該解析条件を用いて候補Y導出ステップを実行することにより候補Y導出ステップにおける娘イオンの候補Yの数を少なくすることができる。
このようにして求められた候補Y及び候補Zから、上記娘イオンに含まれる各元素の最小数と脱離イオンに含まれる各元素の最小数が明らかになる。該娘イオンの前駆イオンに相当するMSm−1分析における娘イオン又は親イオンには、少なくともMS分析で得られた娘イオンと脱離イオンのそれぞれに含まれる各元素の最小数を足し合わせた数の各原子が含まれることになる。そこで、解析条件改定ステップAにおいて、この値を親イオンに含まれ得る各原子の最小個数として解析条件テーブルに記載する。これにより、解析条件が絞り込まれるため、候補X導出ステップにおいて、改定された解析条件テーブルに記載された各原子の最小数及び最大数を考慮して前記娘イオン及び脱離イオンの前駆イオンに相当するMSm−1分析における娘イオン又は親イオンの組成候補を計算することで、得られる前駆イオンの組成候補Xの数を制限することができる。従って、本発明の第3の態様に係る質量分析方法によれば、より高効率且つ高精度な組成解析を実現することができる。
本発明の一実施例による質量分析装置の概略構成図。 本実施例による質量分析装置を利用した特徴的な解析処理動作の手順の一例を示すフローチャート。 本実施例による質量分析装置を利用した特徴的な解析処理動作の手順の別の例を示すフローチャートの前半部分(ステップS21〜S30)。 同フローチャートの後半部分(ステップS31〜S38)。 図2のフローチャートに沿った解析処理動作の具体例を示す模式図。
1…イオン源
2…イオントラップ
21…リング電極
22、23…エンドキャップ電極
24…イオン捕捉空間
25…入射口
26…出射口
27…電圧発生部
28…ガス供給源
3…TOFMS
31…飛行空間
32…検出器
4…制御部
5…データ処理部
6…データベース
7…条件記憶部
本発明に係る質量分析方法により分析を実行する質量分析装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は本実施例の質量分析装置の概略構成図である。図1において、図示しない真空室の内部には、イオン源1、イオントラップ2、及び飛行時間型質量分析器(以下、TOFMS(=Time Of Flight Mass Spectrometer)という)3が配設されている。イオントラップ2は、1つのリング電極21と2つの互いに対向するエンドキャップ電極22、23により構成されている。リング電極21には電圧発生部27より高周波高電圧が印加され、リング電極21と一対のエンドキャップ電極22、23とで囲まれる空間内に形成される四重極電場によってイオン捕捉空間24を形成し、そこにイオンを捕捉する。一方、エンドキャップ電極22、23にはそのときの分析モードに応じて適宜の補助交流電圧が電圧発生部27より印加される。また、イオントラップ2の内部には、イオン捕捉空間24に捕捉されているイオンの開裂を促進するために、ガス供給源28からCIDガスが導入され得るようになっている。これらイオン源1、TOFMS3、電圧発生部27、ガス供給源28等の動作は、CPUを中心に構成される制御部4により制御される。
上記構成の質量分析装置では、イオン源1において目的試料をイオン化し、発生したイオンを入射口25を通してイオントラップ2内部に導入する。イオントラップ2では、リング電極21及びエンドキャップ電極22、23により形成される電場によりイオンをイオン捕捉空間24に一旦捕捉する。その後にガス供給源28からイオントラップ2内部にCIDガスを導入し、該ガスの分子にイオンを衝突させることでイオンの開裂を促進する。そして十分に開裂が行われた後に電極21、22、23へ印加する電圧を変更し、イオントラップ2内部にイオンを排出するような電場を形成してイオンを出射口26を通して放出させる。イオントラップ2から出たイオンはTOFMS3の飛行空間31を飛行し、質量に応じた飛行時間で以て検出器32に到達する。検出器32は順次到達するイオンの量に応じた検出信号を出力する。データ処理部5はこの検出信号を受け取って、マススペクトルを作成するとともに、このマススペクトルに現れているピークの質量に基づきデータベース6に保存されているライブラリを参照しながら、目的試料の分子構造や組成を推定する解析処理を実行する。
本実施例の質量分析装置では、このような解析処理動作に大きな特徴を有している。この点について、まず図2のフローチャートを参照しつつ、解析処理動作の手順の一例について説明する。
ユーザーの指示により分析が開始されると、制御部4の制御の下に、まずイオントラップ2内部での開裂操作を行わない通常の質量分析(MS1分析)を実行する(ステップS1)。即ち、イオン源1で発生したイオンをイオントラップ2内部に一旦捕捉した後、CIDガスをイオントラップ2内部に導入することなく、所定のタイミングでイオンを出射口26を通して出射させてTOFMS3で質量分析し、質量データを取得する(ステップS2)。データ処理部5はこの質量データからマススペクトルを作成し、マススペクトル中に現れているピークの中で目的試料に由来するイオン(親イオン)のピークを見つけてその質量Pを算出する(ステップS3)。
次に、データ処理部5は、データベース6を参照して親イオンの質量Pから所定の解析条件の下で組成式の候補Xを計算する(ステップS4)。ここで解析条件とは、例えば目的試料の種類などに応じて選択された構成要素となり得る原子(元素)の種類やその原子の最大個数、質量分析の質量精度などである。この解析条件によって或る程度は候補の数を制限することができる。但し、解析条件を厳しくしすぎると実際の組成式が候補から漏れるおそれがあるため、解析条件は或る程度緩めにしておく必要がある。そのため、特に目的試料の分子量が大きい場合には、親イオンの質量に基づく候補の数が多くなりすぎることが多い。
そこで、次に制御部4の制御の下に、分析繰り返し回数変数nを2に設定してMSn分析を実行する(ステップS5、S6)。即ち、上記MS1分析時と同じ目的試料をイオン源1でイオン化してイオントラップ2内部に導入し、今度はイオントラップ2の内部で1回の開裂操作を実行し、その開裂によって発生した娘イオンをTOFMS3で質量分析する(MS2分析)。これにより、MS2分析による娘イオンの質量データが得られるから、データ処理部5ではこのデータに基づいてマススペクトルを作成し、マススペクトル中に現れているピークの中で娘イオンのピークを見つけてその質量n-1を算出する(ステップS7、S8)。そして、 データベース6を参照して娘イオンの質量n-1から所定の解析条件の下で娘イオンの組成式の候補Yを計算する(ステップS9)。ここで解析条件は上記の親イオンに対する処理時と同一とするのが一般的であるが、過去の分析結果に基づく知見などから解析条件を適宜変更してもよい。
次に上記の候補Yの数が所定値以下であるか否かを判定し(ステップS10)、所定値を超えている場合には後述するステップS16へと進む。他方、候補Yの数が所定値以下である場合には、これまでの分析の前後で求まった質量の差fm、つまりn=2であるときにはMS1分析とMS2分析との結果である親イオンの質量Pと娘イオンの質量1との質量差f1を計算し(ステップS11)、データベース6を参照して所定の解析条件の下でその質量差f1に対応した脱離イオンの組成式の候補Zを計算する(ステップS12)。その後に、所定のアルゴリズムに従って、上記組成式の候補Y、Zを利用して、親イオンに対する組成式の候補Xの絞り込みを行い(ステップS13)、唯一又は所定個数以下の候補に絞られたか否かを判定する(ステップS14)。ここで所定個数とは適宜に決めることができるが、ユーザーに適切な情報を提供するという意味では多くても数個程度、通常は2〜3個程度としておくとよい。ステップS14で適切な絞り込みが為されたと判断されると、その結果を表示画面などを通して出力する(ステップS15)。
ステップS14で唯一の又は所定個数以下の候補の絞り込みができなかったと判定された場合には、分析繰り返し回数変数nをインクリメントして(ステップS16)ステップS6へと戻る。また、上述したようにステップS10で候補Yの数が所定値を超えていた場合にもステップS16を介してステップS6へと戻る。ステップS6に戻ると、制御部4の制御の下に、上述したようにイオントラップ2内部での開裂操作の回数を増加し、例えばn=3であれば2回の開裂操作を行って、それ結果生成された娘イオンの質量分析を実行する。そして、上述したような手順でそれ以降の処理を遂行する。
試料の分子量が大きい場合、開裂操作の回数が少ない間は、その試料に由来する娘イオンの質量に基づく組成式の候補の数を絞ることは難しいが、開裂操作の回数が増加して来ると、娘イオンの質量自体がかなり小さくなるため、候補数を絞ることが容易になる。従って、ステップS10でYESと判定される確率が高くなる。また、その場合には、質量差fmに基づく脱離イオンの数も増加するため、親イオンの組成式の候補を絞る際に利用し得るデータが増える。そのため、親イオンの組成式の候補Xの絞り込みが容易になる。従って、この方法によれば、試料の分子量が大きい場合であっても開裂操作の回数を増加させてゆく過程で、高い確率で以て唯一又はユーザーが容易に判断できる程度の少数の組成式の候補を決定することができる。
なお、上述のように娘イオンの組成式の候補Yと脱離イオンの組成式の候補Zを利用して親イオンの組成式の候補Xを絞り込む方法としては、例えば、以下のような方法を用いることができる。
まず、上記ステップS9で得られた娘イオンの候補Yに含まれる全ての組成式候補とステップS12で得られた各脱離イオンの候補Zに含まれる全ての組成式候補から考えられる組み合わせを作成し、これを候補(Y+Z)とする。次に、該候補(Y+Z)とステップS4で得られた親イオンの組成候補Xとを比較し、両者に共通に含まれるものを選び出すことによって候補Xの絞り込みを行う。これにより、親イオンの候補Xに多数の組成候補が含まれる場合にも、娘イオンの候補Yと脱離イオンの候補Zとの組み合わせから不適当と考えられる候補を除外することができ、ユーザーに信頼性の高い組成式候補を示すことができる。
次に、本発明の質量分析装置における解析処理動作の別の例について図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。図3及び図4では、分析対象試料について開裂操作を行わないMS分析と、MS分析及びMS分析を行い、その結果に基づいて親イオンに相当する成分(すなわち元の試料)の組成推定を行う場合の解析手順を示している。なお、開裂操作を行う回数はユーザーが任意に決定してもよく、あるいは、上述した解析処理動作の場合と同様に、娘イオンの組成式の候補Yが所定の個数以下になるまで開裂操作を繰り返すようにしてもよい。
ここで、各分析で得られたMSスペクトル、MSスペクトル、MSスペクトルには、それぞれ1max、2max、3max本のピークが含まれているとし、各スペクトル中のピークは、スペクトルの種類(開裂段数)と各スペクトル中におけるピーク番号を用いた記号で示す。例えば、MSスペクトル中のa番目のピークはp(a,0,0)、該ピークをMS分析して得られたスペクトル中のb番目のピークはp(a,b,0)、更にそのピークをMS分析して得られたスペクトル中のc番目のピークはp(a,b,c)と表される。
なお、分析開始前に予め試料由来の親イオンに含まれ得る原子の種類及び各原子の最大数及び最小数(TResult(a,0,0).max(etc)及びTResult(a,0,0).min(etc)、記号の意味については後述する)を記載した条件テーブルTを作成し、その他の解析条件(質量分析装置の質量精度等)と共に条件記憶部7に記憶させておく。なお、該テーブルTは、ユーザーがキーボード等の入力手段を用いて作成してもよく、あるいは所定の方法で試料の種類等を指定することで自動的に作成されるようにしてもよい。その後、MS〜MSまでの分析を行い、その結果を基に組成解析を開始する。
ユーザーの指示により解析が開始されると、データ処理部5はMSスペクトル中に現れているピークの中から目的とするイオン(親イオン)のピークp(a,0,0)を選択する(ステップS21)。
次に、該ピークに対してMS分析がなされているかを判定し(ステップS22)、MS分析がなされていた場合には、MSスペクトル中のピークから所定の判断基準(例えばピークの順番や高さ)に従ってピークp(a,b,0)を選択する(ステップS23)。なお、p(a,0,0)についてMS分析が行われていなかった場合には後述のステップS36を実行する。
続いて、p(a,b,0)についてMS分析がなされているかが判定され(ステップS24)、MS分析がなされていた場合には、MSスペクトル中のピークから所定の判断基準に従ってピークp(a,b,c)を選択する(ステップS25)。なお、p(a,b,0)についてMS分析がなされていなかった場合には、後述のステップS31を実行する。
次に、質量に基づきデータベース6を参照して上記MS分析における娘イオンp(a,b,c)の組成式の候補Yを計算する(ステップS26)。このとき、解析条件として条件テーブルTに記載された各原子の最大数(TResult(a,0,0).max(etc))及び質量精度を考慮して候補Yの絞り込みを行う。組成計算の結果(Result(a,b,c)と表す)は、組成式候補Yのリストとして得られ、該リスト中における各元素の最小原子個数、すなわち該娘イオンp(a,b,c)に少なくとも含まれる各元素の原子個数は、Result(a,b,c).min(etc)のように表される。なお、etcは任意の元素を示しており、例えば、p(a,b,c)に相当するイオンに含まれる炭素原子C及び水素Hの最小数はそれぞれResult(a,b,c).minC、Result(a,b,c).minHと表される。
次に、ピークp(a,b,c)の質量とその前駆イオンにあたるMSスペクトル中の娘イオンのピークp(a,b,0)の質量(それぞれp(a,b,c).ms、p(a,b,0).msと表す)との差が求められ、データベース6を参照してその質量差(p(a,b,0).ms−p(a,b,c).ms)に対応する脱離イオンの組成式候補Zを計算する(得られた結果をDResult(a,b,c)と表す)(ステップS27)。このとき、上記と同様に、解析条件として各原子の最大数、及び質量精度を考慮して候補Zの絞り込みを行うが、各原子の最大数としては、上記テーブルTに記載された親イオンp(a,0,0)に含まれ得る各原子の最大数から上記ステップS26で得られた娘イオンp(a,b,c)に少なくとも含まれる各原子の数を減じたもの(TResult(a,0,0).max(etc)−Result(a,b,c).min(etc))を使用する。これにより、脱離イオンの組成推定における解析条件を絞り込み、得られる候補Zの数を少なくすることができる。
次に、上記ステップS26で得られた娘イオンに含まれる各原子の最小数Result(a,b,c).min(etc)とステップS27で得られた脱離イオンに含まれる各原子の最小数DResult(a,b,c).min(etc)を加算する(ステップS28)。ここで、TResult(a,b,c).min(etc)=Result(a,b,c).min(etc)+DResult(a,b,c).min(etc)とする。
MSスペクトル中の全てのピークp(a,b,c)、(c=1〜3max)について上記ステップS25〜28が実行されたかどうかが判定され(ステップS29)、MSスペクトル中の全ピークについての解析が完了するまで上記ステップS25〜28が繰り返し実行される。
次に、MSスペクトル中の各ピークについて求められたTResult(a,b,c).min(etc)、(c=1〜3max)から各原子の個数が最大のものを選択することで、MSスペクトル中のピークp(a,b,0)に相当するイオンに少なくとも含まれる各原子の数、TResult(a,b,0).min(etc)(TResult(a,b,0).minC、TResult(a,b,0).minH、TResult(a,b,0).minO等)を決定し、条件テーブルTに記載する(ステップS30)。
以上により、MSスペクトル上のピークp(a,b,c)、(c=1〜3max)に基づいた解析が終了し、それらの前駆イオンに相当するMSスペクトル中の娘イオン(p(a,b,0)に相当)の組成候補Xを計算するための解析条件が決定されたことになる。そこで、分析開始時に条件テーブルTに記載されたTResult(a,0,0).max(etc)と上記ステップ30で条件テーブルTに追加されたTResult(a,b,0).min(etc)をそれぞれ候補Xに含まれる各原子の最大数及び最小数として、p(a,b,0)の質量(p(a,b,0).ms)に基づいてその組成式候補Xを導出する(ステップS31)。ここで得られた結果をResult(a,b,0)と表す。
続いて、ピークp(a,b,0)の質量とその前駆イオンにあたるMSスペクトル中の親イオンのピークp(a,0,0)の質量との差が求められ、その質量差(p(a,0,0).ms−p(a,b,0).ms)に対応する脱離イオンの組成式候補Zを計算する(得られた結果をDResult(a,b,0)と表す)(ステップS32)。このときの解析条件としては、条件テーブルTに記載された親イオンに含まれ得る各原子の最大数からステップS31で求められた候補Xに含まれる各原子の最小数を減じたもの(TResult(a,0,0).max(etc)−Result(a,b,0).min(etc))を各原子の最大数として用いる。
次に、ステップS28と同様にして、娘イオンに含まれる各原子の最小数Result(a,b,0)と脱離イオンに含まれる各原子の最小数DResult(a,b,0)を加算することで、TResult(a,b,0).min(etc)を算出する(ステップS33)。
その後、MSスペクトル中の全てのピークp(a,b,0),(b=1〜2max)について上記ステップS23〜33が実行されたかどうかが判定される(ステップS34)。MSスペクトル中の全ピークについての解析が完了するまで上記ステップS23〜33が繰り返し実行された後、各ピークについて得られたTResult(a,b,0).min(etc),(b=1〜2max)の内、各原子の個数が最大のものを選択することで、ピークp(a,0,0)に相当するイオン(親イオン)に少なくとも含まれる各原子の数TResult(a,0,0).min(etc)を決定し、解析条件テーブルTに記載する(ステップS35)。
以上により、MSスペクトル上のピークp(a,b,0),(b=1〜2max)に基づいた解析が終了し、それらの前駆イオンに相当するMSスペクトル中の親イオン(p(a,0,0)に相当)の組成候補Xを計算するための解析条件が決定されたことになる。そこで、分析開始時に解析条件テーブルTに記載されたTResult(a,0,0).max(etc)と上記ステップ35で解析条件テーブルに記載されたTResult(a,0,0).min(etc)をそれぞれ候補Xに含まれる各原子の最大数及び最小数として、p(a,0,0)の質量に基づいて親イオン組成式候補Xが導出される(ステップS36)。ここで得られた結果をResult(a,0,0)と表す。
次に、上記ステップS36で得られたResult(a,0,0)より、所定の基準に基づいて再度組成推定をやり直すか否かを判定する(ステップS37)。例えば、Result(a,0,0)に含まれる候補Xが所定の数以上であった場合に再度解析を行うものとし、候補Xの個数が所定の数を下回った時点、又は解析を繰り返しても候補Xの数が変化しなくなった時点で解析を終了するものなどとすることができる。
ステップS37において、再度解析をやり直す必要があると判定された場合には、上記ステップS36で得られたResult(a,0,0)から親イオンに含まれる各原子の最小数及び最大数を求め、解析条件テーブルTに記載されたTResult(a,0,0).min(etc)及びTResult(a,0,0).max(etc)を上記の値に変更した上で、ステップS22に戻ってS22〜S36の処理を再度実行する。一方、ステップS37で、これ以上解析を繰り返す必要がないと判定された場合には、S36で得られた組成式候補Xを同位体分布や窒素ルール等も考慮して確定する(ステップS38)。
以上の様な解析処理動作を行うことにより、開裂によって生じた娘イオンと脱離イオンの解析結果を利用して、それらの前駆イオンに含まれる各原子の最小数を決定し、その値を用いて該前駆イオンの組成推定の際の条件を絞り込むことができるため、組成計算で得られる候補の数を少なくすることができる。また、MSスペクトルやMSスペクトル上の全てのピークのデータを解析条件の決定に用いるため、より正確な解析を行うことができる。
なお、図4に示す解析処理動作のステップS31やステップS36において組成推定を行う際には、前述の解析処理の場合と同様に、該イオンの開裂によって生じた娘イオンの候補Yと脱離イオンの候補Zを利用して候補Xの絞り込みを行うことが望ましい。
図2のフローチャートに従って試料の組成を推定することにより親イオンの組成式の候補の絞り込みが容易になることについて、具体例を挙げて説明する。
いま、目的試料をイオン化することで生成された親イオンの質量PがP=171.066(u:原子質量単位)であるとし、5回の開裂を行う際のその開裂操作毎に生成された娘イオンの質量がそれぞれd1=153.056、d2=125.021、d3=97.027、d4=69.032、d5=41.038であるものとする。このとき、MSn-1分析における親イオン又は娘イオンの質量とMSn分析における娘イオンの質量との質量差fmは図5に示すようになる。
MS1分析の結果、つまり親イオンの質量Pから、原子の種類及び最大個数が炭素(C):14個、水素(H):30個、酸素(O):10個、窒素(N):10個で且つ質量精度:0.02uという解析条件の下で組成式の候補を挙げると、次の表1に示すようになる。
Figure 0004324702
即ち、組成式の候補Xが多数出て来ることになる。仮に質量精度がきわめて高ければ、具体的に例えば上記表1中の[Diff]が0.001であるという条件を設定できれば、唯一の候補(表1中の#1のもの)に絞り込むことができる。しかしながら、実際の質量分析装置ではppm程度のレベルの質量精度しか得られず、上記のように多数の候補が出て来ることが避けられない。
次にMS2分析の結果、つまり1回の開裂操作後の娘イオンの質量1から、上記解析条件の下で組成式の候補を挙げると、次の表2に示すようになる。
Figure 0004324702
この場合でも親イオンの質量Pから計算したものと同程度の数の候補が出てきてしまい、組成式を決定することは困難である。
これに対し、5回の開裂操作を行った後の娘イオンの質量5から同様にして組成式の候補を挙げると次の表3に示すようになり、候補の数が2個と大幅に減少する。
Figure 0004324702
これは開裂操作の繰り返しによって娘イオンの質量5が親イオンの質量Pと比べて格段に小さくなったためである。また、質量差がほぼ同一であるf3、f4、f5について脱離イオンの候補を挙げると、表4に示すようになる。
Figure 0004324702
但し、一般にイオンの開裂現象においては各種の知見により脱離イオンがN2であることは殆ど考えられない。従って、予めこうした知見に基づく情報を与えておくことにより、N2という組成式は排除することができ、COが妥当な結果として求まる。
同様に、質量差f2、f1についてそれぞれ脱離イオンの候補を挙げると、表5、表6に示すようになる。
Figure 0004324702
Figure 0004324702
図2のフローチャートに照らして考えると、ステップS10中の所定値を例えば2又は3と設定しておくと、MS6分析が実行された後にステップS10でYESと判定され、質量差f1〜f5が算出されて上記のように脱離イオンの各候補が導出される。図2中の候補Yは表3に示すものであり、候補Zは表4、表5及び表6に示すものである。これらから想定される親イオンの組成式の候補は、
(C35 又は C23N)+CO+CO+CO+(C24 又は CH2N)+H2
=C8114 又は C79NO4 又は C6724
となり、当初の27個の候補の中から3個まで絞り込むことができる。この絞り込みの結果を例えば表示画面上に表示することで、分析担当者が最終的に組成を決定する重要な情報を提供することができる。
なお、ここでは行わなかったが、ステップS10でYESとならなかったMSn分析における娘イオンの組成の候補も利用して、上記のようにして求まった結果との整合性がとれるか否かを検証することにより、結果の信頼性を高めたり更に絞り込みを行ったりすることも可能である。
以下、上記本発明の第2の態様に係る質量分析方法において、娘イオンの組成式候補と脱離イオンの組成式候補との組み合わせを利用して親イオンの組成式候補の絞り込みを行う際の手順について、具体例を挙げて説明する。
いま、目的試料をイオン化することで生成された親イオンの質量Pが150.01(u)であるとし、該親イオンを1回開裂させて生成された娘イオンの質量1が100.0(u)であるものとする。このとき該親イオンと娘イオンとの質量差f1は、P−d1=50.01(u)である。ここで、親イオン、娘イオン、及び脱離イオンの組成候補をそれぞれ、CF(P)、CF(d1)、CF(P−d1)とし、娘イオンの組成式候補CF(d1)と脱離イオンの組成式候補CF(P−d1)との組み合わせをCF(d1)*CF(P−d1)と表すものとする。
P及びd1の許容誤差を0.003(u)、P−d1の許容誤差を0.006(u)とし、且つ原子の種類及び最小個数、最大個数を表7に示すように設定し、これらの解析条件の下で上記の質量P、d1、P−d1に合致する組成式候補を導出する。なお、このとき、価電子数を考慮して結合数が不自然になるものは排除する。
Figure 0004324702
以上により得られる組成式の候補CF(P)、CF(d1)、CF(P−d1)は、それぞれ次の表8〜10に示すようになる。
Figure 0004324702
Figure 0004324702
Figure 0004324702
上記表9及び表10から、CF(d1)*CF(P−d1)は次のようになる。
48NOS2、C86OS、CH452S、C5242
このとき、上記CF(d1)*CF(P−d1)と表8に示すCF(P)とに共通に含まれている組成式はCH452Sであるので、これを親イオンの組成式候補として決定することができる。
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜に修正、変更、追加などを行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。

Claims (4)

  1. 分析対象である試料に由来する親イオンをn−1(n≧2)段階に開裂させ、該開裂によって発生した娘イオンを質量分析するMSn分析が可能な質量分析装置を用い、前記試料の分子構造や組成の解析を行う質量分析方法であって、
    a) 上記親イオンに含まれ得る各原子の最大数及び最小数を記載した解析条件テーブルを作成する解析条件テーブル作成ステップと、
    b) MSm(2≦m≦n)分析により得られた娘イオンの質量に基づき、該娘イオンに対応する成分の候補Yを導出する候補Y導出ステップと、
    c)MSm-1分析により得られた前記娘イオンの前駆イオンに相当するイオンの質量と該娘イオンの質量との差を算出するとともに、該質量の差に対応した成分の候補Zを導出する候補Z導出ステップと、
    d) 候補Y及び候補Zに含まれる各原子の最小数を考慮して、上記解析条件テーブルに記載された各原子の最小数を増加させる解析条件改定ステップAと、
    e) 前記前駆イオンの質量に基づき、該前駆イオンに対応する成分の候補Xを導出する候補X導出ステップと、を有し、
    上記候補X導出ステップにおいて、解析条件改定ステップAにおいて改定された解析条件テーブルに記載された各原子の最小数及び最大数を候補Xを導出する際の解析条件として利用することを特徴とする質量分析方法。
  2. 更に、上記解析条件テーブルに記載された親イオンに含まれ得る各原子の最大数から上記候補Yに含まれる各原子の最小数を減じる解析条件改定ステップBを有し、
    上記候補Z導出ステップにおいて、解析条件改定ステップBによって改定された解析条件テーブルに記載された各原子の最大数を候補Zを導出する際の解析条件として利用することを特徴とする請求項に記載の質量分析方法。
  3. 更に、上記解析条件テーブルに記載された親イオンに含まれ得る各原子の最大数から上記候補Zに含まれる各原子の最小数を減じる解析条件改定ステップCを有し、
    上記候補Y導出ステップにおいて、解析条件改定ステップCによって改定された解析条件テーブルに記載された各原子の最大数を候補Yを導出する際の解析条件として利用することを特徴とする請求項に記載の質量分析方法。
  4. 上記候補X導出ステップによって導出された親イオンに対応する成分の候補Xに含まれる各原子の最小数及び最大数を考慮して、上記解析条件テーブルの各原子の最小数を増加及び最大数を減少させ、改定された該解析条件テーブルを用いて上記b)〜e)の各ステップを再度実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の質量分析方法。
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