JP4322008B2 - タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の回収方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はフッ化ナトリウム及び/又はフッ化カリウムを含む混合塩又は該混合塩の水溶液中に含まれるタンタル及び/又はニオブ成分を、アンモニウム化合物及び/又はヒドラジン化合物と反応させることにより、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブとして高収率で回収する方法に係るものである。
【0002】
更に本発明は回収した水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを再度フッ酸に溶解させた後、精製を行なって不純物を除去し、各種製品の効率的な製造に適した高純度タンタル化合物及び/又は高純度ニオブ化合物として再利用する方法に係る。
【0003】
また、タンタル及び/又はニオブ原料の回収に付随して、副生混合塩中のフッ素成分を、カルシウム化合物の添加により、フッ化カルシウムとして回収し、これをフッ酸製造原料とする方法。更には添加したアンモニア化合物及び/又はヒドラジン化合物をカルシウム化合物と反応せしめて、硫酸アンモニウムとして回収し、これを化学肥料原料とする方法に係り、そしてこれ等をシステム化して廃棄物のリサイクルシステムが可能とさせる方法に係るものである。
【0004】
【従来の技術】
タンタルは、その用途が広く、耐食性、耐熱性に優れているため化学工業用として蒸留塔、オートクレーブ、熱交換器、化学繊維用紡糸ノズルなど各種化学装置に用いられている。また一般にタンタル酸化皮膜は、弁作用(電極が正極であれば誘電体に動作するが、逆に電極が負極であると誘電体として動作しないという特性、すなわち整流特性)と呼ばれる特性を有しているため、電解コンデンサの電極材料として使用され、搬送機器、電子機器、電子制御機器などに用いられている。また携帯電話のノイズ除去用の表面弾性波(SAW)フィルターとしてタンタル酸リチウム単結晶ウェハが使用されており、移動体通信市場の拡大に伴い、その需要が大幅に拡大している。さらに炭化タンタルは超硬切削工具用材料として、酸化タンタルは光学レンズの添加剤として利用されており、タンタルの重要性は極めて大きく、その需要は増大している。
【0005】
ニオブは、鋼中の炭素を安定化し、粒間腐食を防ぐ効果があるので鉄鋼添加材として使用されており、これが最大の用途である。また高圧ナトリウムランプのランプ発光部に付随する導電管としてニオブ合金が実用化されており、さらに超伝導材料や超合金の添加元素などに利用されている。
【0006】
タンタル(Ta)やニオブ(Nb)は、酸化物の状態で互いに随伴して採掘されるのが普通である。タンタルはニオブと同族にあって、極めて似た性質を持っている為、工業的には同属である両者を化学的な手法により、完全に分離してから、各々の金属の精製を行なっている。
【0007】
この化学的な手法で精製される金属タンタルや金属ニオブの中間的な原料は、K2TaF7及び/又はK2NbF7であり、フッ化タンタルカリウム又はフッ化ニオブカリウムと呼ばれている。金属タンタル及び/又は金属ニオブを製造するには、この中間原料をナトリウムやカリウムの如きアルカリ金属を用いて還元する方法が行われており、その還元反応は次の通りである。
K2TaF7 + 5Na = Ta +2KF + 5NaF
K2NbF7 + 5Na = Nb +2KF + 5NaF
【0008】
この還元反応は、空気を絶った雰囲気下、摂氏1000℃近い高温で行われ、所定の比表面積を持った粉末状の金属タンタルや金属ニオブとして得られる。電子産業界では各種の比表面積を持った金属タンタル粉末や金属ニオブ粉末が求められ、このため比表面積の大小を調整することが必要とされ、その方法として、フッ化タンタルカリウムやフッ化ニオブカリウムに対し、フッ化カリウム、塩化カリウム又は塩化ナトリウム等の無機塩を希釈剤として使用することが提案されている(特開昭48−43006号公報、特開昭62−278210号参照)。
【0009】
金属タンタル粉末や金属ニオブ粉末の製造法は、バッチ方式で行われ、反応が終了すると生成物は冷却される。冷却後には比重の重い金属タンタル粉末や金属ニオブ粉末が、反応器の底部に沈澱し、比重の軽い無機塩類は反応器の上部に堆積した状態で取り出される。この際フッ化カリウム、フッ化ナトリウム及び希釈剤として使用された無機塩が、冷却時に群集し、10〜1000mm程度の塊となる。この際群集中に金属タンタル粉末や金属ニオブ粉末の他に、原料として用いたフッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムが0.01〜10wt%ほど取り込まれてしまう。またこれらを洗浄する際に、フッ化タンタルカリウムやフッ化ニオブカリウムが水に溶解し、廃水へと流出してしまう。
【0010】
而して、このようなタンタル化合物及び/又はニオブ化合物は、希少品であるにも係わらず、近年需要が大幅に増大している。また数年前には、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の供給が需要に追いつかない状況下にもあった。このため、原料としてタンタルやニオブの製造工程で生じる廃棄物や不要になった製品を再利用することが近年試みられている。
【0011】
例えば、特開2000−7339号には、原料であるタンタル含有廃棄物を焙焼し、これによりタンタル含有廃棄物中の有機物を除去し、かつ金属タンタルおよび不純物を酸化物に変換し、その後フッ酸による溶解を行なう方法が開示されている。また、特開2000−7338号には、タンタル酸化物含有スラッジを原料とし、このスラッジに酸処理またはアルカリ処理を行なってタンタル品位を高めた後、フッ酸溶解工程に供する方法が開示されている。
【0012】
しかし、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物含有スラッジ(廃棄物)の種類あるいは使用している副原料等により、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の処理・再利用方法は、大幅に異なっている。その為これらの方法がそのままタンタルフッ化物及び/又はニオブフッ化物を含む廃棄物及び/又は該溶液から、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物のリサイクル方法として適用出来る訳ではない。
【0013】
このタンタルフッ化物及び/又はニオブフッ化物を含む廃棄物又は該廃棄物の水溶液の例として、フッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムを用いた金属タンタル及び/又は金属ニオブ還元工程から発生する混合塩(以下「副生混合塩」という。)や、その副生混合塩の水溶液(例えば洗浄溶液等及び廃水等)があげられる。
【0014】
その中でフッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムを用いた金属タンタル及び/又は金属ニオブ還元工程から発生する副生混合塩のリサイクル方法として本発明者が実施可能と考えられる方法を実際に行なってみた。この方法は以下の方法である。
【0015】
即ち、このフッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムを用いた金属タンタル及び/又は金属ニオブ還元工程から発生する副生混合塩のリサイクル方法として、取り込まれている金属タンタル、フッ化タンタルカリウム及び/又は金属ニオブ、フッ化ニオブカリウム及び希釈剤として用いたフッ化カリウム、フッ化ナトリウム等の副生混合塩を酸性水溶液に一旦完全に溶解させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等で中和する方法である。
【0016】
その際、主にTa(OH)5及び/又はNb(OH)5が沈殿し、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物として一部回収出来るものの、Na2TaF7,K2TaF7,NaxTa(SO4)y,KxTa(SO4)y及び/又はNa2NbF7,K2NbF7,NaxNb(SO4)y,KxNb(SO4)y等の溶解度分を回収することは難しいことが判明した。また副生混合塩を溶解させる際、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物以外で、最も溶解度の低いNaFが溶け残らない程度まで溶解する必要があることも判明した。
【0017】
一方タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の含有率は0.01〜10wt%程度である為、酸性溶液中で、Na2TaF7,K2TaF7,NaxTa(SO4)y,KxTa(SO4)y及び/又はNa2NbF7,K2NbF7,NaxNb(SO4)y,KxNb(SO4)y等の溶解は十分可能なレベルである。従ってこの方法ではタンタル化合物及び/又はニオブ化合物を高回収率とすることはやはり困難であることも本発明者の研究で明らかとなった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記方法の難点を解消することである。更に詳しくは、フッ化ナトリウム及び/又はフッ化カリウムの少なくとも1 種、並びにタンタル化合物及びニオブ化合物の少なくとも1種とを含む混合塩又は該混合塩の水溶液と、アンモニウム化合物及び/又はヒドラジン化合物を反応させることにより、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを高い収率で回収する手段。更に回収した水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを再度フッ酸に溶解させた後、精製操作を行なって、各種製品の効率的な製造に適した高純度タンタル化合物及び/又は高純度ニオブ化合物として再利用する手段。また同時に回収されるフッ化カルシウム、硫酸アンモニウムも再利用出来る効果的な手段を夫々採用することにより、該課題を解決することである。
【0019】
【課題を解決する為の手段】
本発明は、フッ化ナトリウム及びフッ化カリウムの少なくとも1種、並びにフッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムを金属還元して得られたタンタル化合物及びニオブ化合物の少なくとも1種とを含む混合塩又は該混合塩の水溶液と、アンモニウム化合物及び/又はヒドラジン化合物を反応させることにより水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを沈殿させ、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを高い収率で回収することが出来る。更に回収した水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを再度フッ酸に溶解させた後、精製操作を行なうことにより不純物を除去出来、高純度タンタル化合物及び/又はニオブ化合物として再利用することが出来、また、同時に回収されるフッ化カルシウム、硫酸アンモニウムも再利用出来る大きな特徴を有する。
【0020】
以下に本発明の方法例を簡単なフローシートで示せば、図1の通りである。
副生混合塩は、フッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムをアルカリ金属還元した結果発生したものであって、主要組成はフッ化カリウム、塩化カリウム、フッ化ナトリウムから成り、これに金属不純物や水分を含んでいる。より詳細には、フッ素成分は10〜40重量%、塩素成分は10〜25重量%、ナトリウム成分は10〜40重量%、カリウム成分は10〜40重量%程度である。また金属不純物としては、Fe<50ppm、Ni<50ppm、Cr<40ppm、Mg<10ppm、Si<100ppm程度が含まれている。主要組成は上記の他に塩化ナトリウムが含まれる場合もある。更に、溶液も含まれ、通常、反応後の副生混合塩の溶液を例示出来る。
【0021】
上記副生混合塩を、水により溶解処理してスラリーを得る。この溶解処理時に、金属タンタル及び/又は金属ニオブ等が溶解せずに残存することがある。この時、濾過により金属タンタル及び/又は金属ニオブを回収することも出来るが、フッ酸或いは硫酸を添加することにより不溶解成分を溶解しても構わない。またこれら混合溶媒を用いて、溶解しても構わない。
【0022】
フッ酸或いは硫酸の濃度および添加量は、原料の量や目的とする純度等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではないが、通常溶解に必要な量使用される。また、フッ酸或いは硫酸溶解の際の条件は、特に限定されないが、所定時間、攪拌混合することにより好ましく行なうことができる。
得られた溶液にアルカリを加え沈殿を生じさせる。ここでアルカリとして、アンモニア、アンモニア水、或いは炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムなどのアンモニウム化合物、ヒドラジン、抱水ヒドラジン水溶液などのヒドラジン化合物を用いる。
【0023】
用いるアルカリ量は、100重量部の(酸性)濾液に対して10〜100000重量部が好ましいが、特に好ましくは10〜1000重量部である。この時のpHはpH>7が好ましいが、強アルカリになることで、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の溶解度が上がる為、特に好ましいpHはpH8〜10である。
中和時の温度は特に限定されるものでは無いが、好ましくは40〜90℃である。中和後に冷却し晶析操作を行なっても構わない。晶析操作としては、冷却法、濃縮法(例えば蒸発濃縮法)、断熱蒸発法その他の方法が用いられる。冷却法の場合、冷却時の温度も特に限定されるものでは無いが、好ましい温度は−10〜30℃である。
【0024】
中和およびその後の冷却時間も特に限定されるものでは無いが、0.01〜48時間程度が好ましい。しかし、0.01〜3時間が工業的にも特に好ましい。また反応は常圧下、真空下、加圧下、何れで行なっても良い。
【0025】
このように、アンモニウム化合物やヒドラジン化合物を用いることで、Ta(OH)5及び/又はNb(OH)5を高回収率で得ることが出来る。これら回収されたTa(OH)5及び/又はNb(OH)5は、後の精製工程で精製した後、高純度タンタル化合物及び/又はニオブ化合物としてリサイクルされる。
【0026】
ここで、上記反応により得られたフッ化アンモニウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液にカルシウム化合物を反応させることで、フッ化カルシウムが沈殿として得られる。ここで用いるカルシウム化合物として、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。またアンモニウム化合物を硫酸アンモニウムとして回収するため、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムを用いる場合は、硫酸を添加した後にこれらカルシウム化合物と反応させると良い。
【0027】
更に濾液として得られた硫酸アンモニウム水溶液を、濃縮させることで、硫酸アンモニウム結晶を取り出すことが出来る。このようにして得られたフッ化カルシウムは、フッ酸製造原料として、硫酸アンモニウムは化学肥料として再利用可能である。
【0028】
フッ化アンモニウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液とカルシウム化合物との反応条件も特に限定されるものでは無く、温度は15〜90℃が特に好ましく、常圧、真空下、加圧下何れの条件で行なっても構わない。またカルシウム化合物の量は、フッ化アンモニウム100重量部に対し、10〜100000重量部であるが、100〜1000重量部が特に好ましい。更に用いる硫酸の量も特に限定されるものではなく、フッ化アンモニウム100重量部に対し、10〜100000重量部であるが、100〜1000重量部が特に好ましい。
【0029】
また回収されたTa(OH)5及び/又はNb(OH)5をフッ酸に溶解後、精製操作を行なうことで、各種製品の効率的な製造に適した高純度タンタル化合物及び/又はニオブ化合物とすることが可能となる。なお、精製方法については、特に限定されるものではなく、一般的な方法を使用することが出来る。例えば以下の方法を例示出来る。
【0030】
タンタル化合物及び/又はニオブ化合物を有機溶媒により抽出分離する方法、F型陰イオン交換樹脂を用いタンタル化合物及び/又はニオブ化合物と他の不純物金属と分離しする方法、塩析剤濃度と水素イオン濃度差を利用して分離する方法、有機溶媒を固定化または架橋した吸収剤を用いタンタル化合物及び/又はニオブ化合物を吸収させ溶液から除去する方法、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の溶解液から晶析操作にて精製する方法等が挙げられるが、何れの方法を用いても構わない。
【0031】
【作用】
本発明はすでに説明した通り、フッ化ナトリウム及びフッ化カリウムの少なくとも1種、並びにタンタル化合物及びニオブ化合物の少なくとも1種を含む混合塩又は該混合塩の水溶液から、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを高い回収率で得ることが出来る。更に、回収した水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを再度フッ酸に溶解させた後、精製操作を行なうことで不純物を除去出来、高純度タンタル化合物及び/又はニオブ化合物として再利用することを大きな特徴とする。
【0032】
またその際生じたアンモニウム化合物を、硫酸アンモニウムとすることで、化学肥料として再利用出来る。更に、フッ化カルシウムは、フッ酸原料として使用することも可能となり、リサイクルシステムのとれた手法である。
【0033】
【実施例】
以下に本発明の代表的な例を示しながら更に具体的に説明する。尚これらは説明の為の単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。また実施例における評価は以下の(1)〜(3)の方法により実施した。
(1)金属不純物量・・・誘導結合プラズマ原子発光分析装置にて評価。
(2)純度・・・蛍光X線装置にて評価。
(3)結晶構造解析・・・X線回折装置(XRD)により評価。
【0034】
【実施例1】
フッ化タンタルカリウムをNa還元して金属タンタル粉末を製造する際に副生する、フッ化カリウムとフッ化ナトリウムを主成分とする副生混合塩(含タンタル化合物)1kgを水8kgに溶解させた後、若干溶け残ったタンタル化合物を溶解させる為、98%硫酸を0.5kg加え、完全に溶解させた。溶液中のタンタル濃度は500ppmであった。
【0035】
その後室温にて、80wt%抱水ヒドラジン水溶液1.3kgを加え、沈殿物を吸引濾過した後、60℃温水1.0kgで洗浄を行なった。回収物の重量は0.065kgであり、濾液中のタンタル濃度は<10ppmであった(タンタル回収率>95%)。
その後、得られた沈殿0.065kgを50wt%フッ酸0.1kgに80℃で溶解させ、その後−20℃にて晶析を行なった後、吸引濾過して、結晶と濾液に分離した。
得られた結晶を250℃で3時間乾燥を行なった処、乾燥後の結晶はTaO2Fであった。得られたTaO2Fを大気下、電気炉にて1000℃で8時間焙焼を行なった。その後結晶を取り出し、XRDにて分析したところ、Ta2O5であった。さらにこのTa2O5中の金属不純物を測定した結果、Nb<10ppm,K<10ppm,Na<10ppm,Ti<1ppm,Fe<1ppm,Ni<1ppm,Al<1ppm,Sb<1ppmであった。
また、80wt%抱水ヒドラジン水溶液との反応後の濾液10.5kgと硫酸カルシウム1kgを反応させ、濾過により、フッ化カルシウムとアンモニア廃水に分離した。その後濾液10.3kgを4.2kgまで濃縮し、−5℃で冷却を行なうことで、硫酸アンモニウムとして回収することが出来た。
【0036】
【実施例2】
フッ化ニオブカリウムをNa還元して金属ニオブ粉末を製造する際に副生する、フッ化カリウムとフッ化ナトリウムを主成分とする副生混合塩(含ニオブ化合物)10kgを水70kgに溶解させた後、若干溶け残ったニオブ化合物を溶解させる為、98%硫酸を8.0kg加え、完全に溶解させた。溶液中のニオブ濃度は850ppmであった。
その後室温にて、40%アンモニア水溶液4.1kgを加え、沈殿物を吸引濾過した後、60℃温水5.0kgで洗浄を行なった。回収物の重量は0.14kgであり、濾液中のニオブ濃度は<10ppmであった(ニオブ回収率>95%)。
【0037】
その後、得られた沈殿0.14kgを50wt%フッ酸0.3kgに80℃で溶解させ、さらに6N 硫酸0.4kg を加えた後、シクロヘキサノン1.6kgを入れ、Nb 及びTa を有機層へ抽出した。さらにこの有機層を1N 硫酸水溶液0.6kgで、再抽出を行ない、10 分間混合した後静置し、下層の水溶液層と上層のシクロヘキサノン層を分液し、Nb 抽出水溶液を得た。このNb 抽出水溶液にフッ化カリウム0.2kgを加え、−20℃で晶析を行なったところ、オキシフッ化ニオブ酸カリウム・1水和物結晶が0.3kg得られた。このオキシフッ化ニオブ酸カリウム・1水和物結晶を、無水フッ酸に分散させた後、フッ酸分を除去した。その後、110℃にて乾燥を行ない、XRDにて分析したところ、K2NbF7であった。さらにこのK2NbF7中の金属不純物を測定した結果、Ta<1ppm,Ti<1ppm,Fe<1ppm,Ni<1ppm,Al<1ppm,Sb<1ppmであった。
【0038】
【比較例1】
水酸化ナトリウムを用いること以外は実施例1と同条件で、アンモニア化合物及び/又はヒドラジン化合物との比較を行なった。
フッ化タンタルカリウムをNa還元して金属タンタル粉末を製造する際に副生する、フッ化カリウムとフッ化ナトリウムを主成分とする副生混合塩(含タンタル化合物)10kgを水80kgに溶解させた後、若干溶け残ったタンタル化合物を溶解させる為、98%硫酸を5.0kg加え完全に溶解させた。溶液中のタンタル濃度は500ppmであった。
【0039】
その後、10℃にて水酸化ナトリウム2.5kgを加えた後、−2℃まで冷却し、沈殿物を吸引濾過により回収した。回収物の重量は0.05kgであり、濾液中のタンタル濃度は150ppmであった。
得られた沈殿の分析を行なったところ、Ta(OH)5とNa2TaF7の混合物であった。しかし、タンタル回収率は70%と低い値であった。
【0040】
【発明の効果】
本発明によればフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムの少なくとも1 種、並びにタンタル化合物及びニオブ化合物の少なくとも1種を含む混合塩又は該混合塩の水溶液から、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを高い回収率で得ることが出来る。更に、回収した水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを再度フッ酸に溶解させた後、精製操作を行なうことで不純物を除去出来、高純度タンタル化合物及び/又はニオブ化合物として再利用することが出来る。
【0041】
またその際生じたアンモニウム化合物を、硫酸アンモニウムとすることで、化学肥料として再利用出来る。更に、フッ化カルシウムは、フッ酸原料として使用することも可能となる。
このように本発明により、環境を配慮したクローズドシステムとしても大いに期待出来るものである。
【0042】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の方法の代表例を示すフローシートである。
Claims (5)
- フッ化ナトリウム及びフッ化カリウムの少なくとも1種、並びにフッ化タンタルカリウム及び/又はフッ化ニオブカリウムを金属還元して得られたタンタル化合物及びニオブ化合物の少なくとも1種を含む混合塩又は該混合塩の水溶液に、アンモニア化合物及び/又はヒドラジン化合物を添加して水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを沈殿させ、固液分離して、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブとして回収することを特徴とするタンタル化合物及び/又はニオブ化合物の回収方法。
- 前記請求項1で得た水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブをフッ酸に溶解後、精製を行ない、タンタル化合物及び/又はニオブ化合物として回収する方法。
- 前記請求項1で副生した(固液分離して副生した)溶液中のフッ素成分をフッ化カルシウムとして回収し、回収したフッ化カルシウムをフッ酸製造原料として再利用する方法。
- 前記請求項1で副生した(固液分離して副生した)溶液を硫酸アンモニウムとして回収し、再利用する方法。
- 前記アンモニア化合物及び/又はヒドラジン化合物として、アンモニア、アンモニア水、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及び/又はヒドラジン、抱水ヒドラジンの何れか一種を用いる請求項1乃至4の何れか一項に記載のタンタル化合物及び/又はニオブ化合物の回収方法。
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