JP4321706B2 - 積層体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、包装材料やディスプレイ材料等に用いることが可能な積層体、およびその製造方法に関するものである。
従来より、高分子基材等の表面に、例えばガスバリア層やハードコート層等を形成したものが、包装材料やディスプレイ材料等に用いられている。ここで、機能性層の材料として無機材料が用いられる場合には、高分子基材と機能性層との密着性が悪く、機能性層が例えばガスバリアや表面保護等の機能を果たすことが困難となる、という問題があった。
このような問題を解決するために、高分子基材の表面に親水性高分子樹脂や、界面活性剤等の親水性化合物を塗布し、機能性層と高分子基材との密着性を向上させる方法等が提案されている。しかしながら、この場合においては、高分子基材と、親水性化合物との密着性に問題があり、これらの密着性を向上させるために、親水性化合物の層の膜厚を厚くする必要がある、という問題があった。
なお、本発明に関する先行技術は発見されていない。
以上のことから、高分子基材と機能性層の密着性が良好であり、かつ膜厚を薄く形成することが可能な積層体、およびその製造方法の提供が望まれている。
本発明は、表面に親水性官能基を有する高分子基材と、上記高分子基材上に形成された密着性向上層と、上記密着性向上層上に形成された機能性層を有する積層体であって、上記密着性向上層が、上記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ、かつ上記高分子基材上に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を原料として用いて形成され、上記自己組織化薄膜形成物質の上記配向基が親水基に置換された層であることを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、上記高分子基材が親水性官能基を有していることから、その高分子基材上に形成される密着性向上層との密着性を良好なものとすることができる。また、その密着性向上層として、自己組織化薄膜を形成する物質が用いられることから、密着性向上層の膜厚を薄いものとすることができ、さらに自己組織化薄膜の配向基が親水基に置換されていることから、密着性向上層と、その密着性向上層上に形成された機能性層との密着性を良好なものとすることができる。これにより、機能性層を緻密に形成された層とすることができ、機能性が高く膜厚の薄い、各層の密着性が良好な積層体とすることができる。
上記発明においては、上記自己組織化薄膜形成物質が、下記の一般式(1)で示される自己組織化薄膜形成物質を原料として形成されたものであることが好ましい。
αXR β (1)
(ここで、Rは、炭素数1〜30までのアルキル基あるいはアリール基(ベンゼン環)であり、炭素基は部分的に分岐鎖や多重結合を有するものも含まれる。また、炭素に結合する元素としてはフッ素や塩素等のハロゲン、水素あるいは窒素等も含まれる。また、Rは、ハロゲン、または−OR(Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、またはアリル基である。ここで、炭素が酸素や水素だけでなく、ハロゲンや窒素と結合しているものも含まれる。)で示される置換基である。また、Xは、Si、Ti、Al、CおよびSからなる群から選択される一つの元素である。ここで、αおよびβは1以上であり、α+βは2から4である。)
上記のような自己組織化薄膜形成物質が、上記高分子基材と密着性を良好に自己組織化薄膜を形成することが可能となるからである。
また、上記発明においては、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、およびN−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも一つの材料が、上記自己組織化薄膜形成物質として用いられることが好ましい。上記自己組織化薄膜形成物質が、上記の物質であることにより、高分子樹脂基材との密着性が良好であり、かつ容易に配向基が置換されて、機能性層との密着性を良好なものとすることができるからである。
本発明は、上述した積層体の、上記機能性層がガスバリア層であることを特徴とするガスバリア積層体を提供する。
本発明によれば、上記機能性層としてガスバリア層を形成することにより、上記密着性向上層との密着性が良好であることから、緻密なガスバリア層とすることができ、ガスバリア性の高いガスバリア積層体とすることができる。
また、本発明は上述した積層体の、上記機能性層がハードコート層であることを特徴とするハードコート積層体も提供する。
本発明によれば、上記密着性向上層との密着性が良好であることから、緻密なハードコート層とすることができ、傷つき防止性等の高い、ハードコート積層体とすることができる。
またさらに本発明は、高分子基材表面に、エネルギーを照射することにより、上記高分子基材の表面を改質する表面改質工程と、
上記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ、かつ上記高分子基材表面に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を用いて、上記高分子基材上に、自己組織化薄膜をCVD法により形成する自己組織化薄膜形成工程と、
上記自己組織化薄膜形成工程により形成された自己組織化薄膜の上記配向基を親水基に置換して密着性向上層を形成する配向基除去工程と、
上記密着性向上層上に機能性層を形成する機能性層形成工程と
を有することを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
本発明によれば、高分子基材に上記表面改質工程を行うことから、高分子基材上に形成される密着性向上層との密着性を向上させることができる。また、上記自己組織化薄膜形成工程により、自己組織化薄膜を形成し、その後、その自己組織化薄膜の配向基を除去する配向基除去工程を有することから、その後形成される機能性層との密着性を良好なものとすることができ、機能性層を緻密な層とすることができる。これにより、膜厚が薄く、機能性の高い積層体を製造することができるのである。
また、本発明は上記積層体の製造方法における上記機能性層形成工程が、ガスバリア層を気相法により形成するガスバリア層形成工程であることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法を提供する。本発明によれば、上記密着性向上層上に、気相法によりガスバリア層を形成することから、緻密で密着性の高いガスバリア層を形成することが可能となる。
またさらに、本発明は、上記積層体の製造方法における上記機能性層形成工程が、ハードコート層を気相法により形成するハードコート層形成工程であることを特徴とするハードコート積層体の製造方法を提供する。本発明によれば、上記密着性向上層上に、気相法によりハードコート層を形成することから、緻密で密着性の高い、ハードコート層を形成することが可能となる。
本発明によれば、機能性層を緻密に形成された層とすることができ、機能性が高く、膜厚が薄い、各層の密着性が良好な積層体とすることができる。
本発明は、包装材料やディスプレイ材料等に用いることが可能な積層体、およびその製造方法に関するものである。以下、それぞれについて分けて説明する。
A.積層体
まず、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、表面に親水性官能基を有する高分子基材と、上記高分子基材上に形成された密着性向上層と、上記密着性向上層上に形成された機能性層を有する積層体であって、上記密着性向上層が、上記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ、かつ上記高分子基材上に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を原料として用いて形成され、自己組織化薄膜形成物質における上記配向基が親水基に置換された層であることを特徴とするものである。
本発明によれば、高分子基材が表面に親水性官能基を有していることから、密着性向上層と高分子基材との密着性を良好なものとすることができる。また密着性向上層として、自己組織化薄膜の配向基が親水基に置換された層が用いられることから、密着性向上層と機能性層との密着性を良好なものとすることができ、機能性層が緻密に形成された機能性の高い層とすることができるのである。これにより、各層の密着性が良好であり、また機能性の高い積層体とすることができる。またさらに、上記密着性向上層が、上記物質を用いて形成された層であることから、積層体全体の膜厚を薄いものとすることができ、様々な用途に用いることが可能な積層体とすることができるのである。
以下、本発明の積層体に用いられる各構成について説明する。
1.高分子基材
まず、本発明の積層体に用いられる高分子基材について説明する。本発明の積層体に用いられる高分子基材は、表面に親水性官能基を有するものであれば、その材料等は特に限定されるものではない。また、用途に応じて透明なものであっても、不透明なものであってもよく、フィルム状であっても、板状であってもよく、さらに、ガラスやシリコンウエハーのような固体表面を、高分子によってコーティングした高分子基材であっても良い。
ここで、上記親水性官能基とは、親水性を有する官能基であり、具体的にはヒドロキシル基や、CHO基、COOH基、CO基、NO基、およびCNO基等が挙げられる。このような親水性官能基が、高分子基材表面に存在することにより、後述する密着性向上層を構成する自己組織化薄膜の吸着基が、上記親水性官能基と結合することができ、高分子基材と密着性向上層との密着性を良好なものとすることができるのである。
ここで、本発明においては、上記高分子基材の表面の、水との接触角は90°以下、中でも70°以下であることが好ましい。上記高分子基材の表面が、水との接触角が上記となる程度、親水性官能基を表面に有することにより、後述する密着性向上層との密着性を良好なものとすることができるからである。ここで、本発明における高分子基材と水との接触角は、協和界面化学社の接触角測定装置(型番CA−Z)を用いて測定したものである。具体的には、被測定対象物の表面上に、純水を一滴(一定量)滴下させ、一定時間(10秒間)経過後顕微鏡またはCCDカメラを用いて水滴形状を観察し、物理的に接触角を求める。
上述したような親水性官能基を有する高分子基材として、分子構造内に、親水性官能基を有する高分子基材を用いてもよいが、本発明においては、高分子基材表面に親水性官能基を導入する処理を行うことが好ましい。これにより、表面を高い親水性を有するものとすることができ、密着性向上層との密着性をより良好なものとすることができるからである。
高分子基材表面に親水性官能基を導入する方法としては、一般的に高分子基材の表面を親水化処理する方法を用いることができ、高分子基材表面を溶液で処理する方法等を用いてもよいが、本発明においては、反応性雰囲気下でエネルギーを照射する方法を用いることが好ましい。これにより、反応性雰囲気中のガスが励起されて高エネルギー状態となり、上記高分子基材表面の特定部位と反応することにより、容易に上記高分子基材表面上に親水性官能基が導入されるからである。
ここで、本発明でいう反応性雰囲気とは、上記高エネルギーの照射により活性化される物質を含有する雰囲気であり、上記高エネルギーの照射の方法により、異なるものであるが、具体的には、O、NO、NO、NO、CO、CO、H、He、N、Ar等のガスの雰囲気を挙げることができ、中でも酸素原子を含んだガスであることが好ましい。
また、上記エネルギーの照射として具体的には、大気圧中でのプラズマ照射や、減圧下でのプラズマ照射、イオン照射、ラジカル照射、光照射等が挙げられる。
本発明においては、上述した高分子基材の表面粗さが、0.1nm〜200nmの範囲内、中でも0.1nm〜150nmの範囲内であることが好ましい。高分子基材表面の表面粗さが上記範囲内であることにより、後述する密着性向上層や、その密着性向上層上に形成される機能性層の密着性を良好なものとすることができるからである。
ここで、表面粗さは、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製;SPI3800N)を用いて、タッピングモードで測定された値である。
ここで、上述したような本発明に使用できる高分子基材の種類として、具体的には
・エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)系樹脂、
・環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン系樹脂(APO)、
・ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2、6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、
・ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)系樹脂、
・ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、
・ポリイミド(PI)系樹脂、
・ポリエーテルイミド(PEI)系樹脂、
・ポリサルホン(PS)系樹脂、
・ポリエーテルサルホン(PES)系樹脂、
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系樹脂、
・ポリカーボネート(PC)系樹脂、
・ポリビニルブチラート(PVB)系樹脂、
・ポリアリレート(PAR)系樹脂、
・ポリスチレン系樹脂、
・エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、
等を用いることができる。
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、上記アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを基材として用いることも可能である。さらに、ガラスやシリコンウエハーのような固体表面にこれらの樹脂をコーティングした基材であっても良い。
本発明においては、上記の中でも、加工性や密着性向上層との密着性等の面から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、またはポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。
2.密着性向上層
次に、本発明に用いられる密着性向上層について説明する。本発明に用いられる密着性向上層は、上記高分子基材上に形成される層である。またさらに、上記密着性向上層は、上記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ、かつ上記高分子基材上に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を原料として用いて形成され、その自己組織化薄膜形成物質における上記配向基が親水基に置換された層である。
ここで、上記自己組織化薄膜とは、固体/液体もしくは固体/気体界面で、有機分子同士が自発的に集合し、会合体を形成しながら自発的に薄膜を形作っていく有機薄膜である。例として、ある特定の材料でできた基板を、その基板材料と化学的親和性の高い有機分子の溶液または蒸気にさらすと、有機分子は基板表面で化学反応し吸着する。その有機分子が、化学的親和性の高い官能基と、基板との化学反応を全く起こさないアルキル基との2つのパートからなり、親和性の高い官能基がその末端にある場合、分子は反応性末端が基板側を向き、アルキル基が外側を向いて吸着する。アルキル基同士が集合すると、全体として安定になるため、化学吸着の過程で有機分子同士は自発的に集合する。分子の吸着には、基板と末端官能基との間で化学反応が起こることが必要であることから、一旦基板表面が有機分子でおおわれ膜ができあがると、それ以降は分子の吸着は起こらない。その結果、分子が密に集合し、配向性のそろった有機膜ができる。このような膜を本発明においては、自己組織化薄膜とする。ここで、上記の基板と結合する反応性末端基を吸着基、外側を向いて配向する基を配向基とする。
本発明においては、上記吸着基が、上述した高分子基材表面に存在する親水性官能基と結合することによって、高分子基材と密着性が良好な密着性向上層とすることができるのである。また、上記自己組織化薄膜は、高分子基材上に膜厚が薄く形成されることから、本発明の積層体自体の膜厚を薄いものとすることができるのである。
上述したような自己組織化薄膜として、具体的には、下記の一般式(1)で示される自己組織化薄膜形成物質を原料として形成されたものであることが好ましい。
αXR β (1)
(ここで、Rは、炭素数1〜30までのアルキル基あるいはアリール基(ベンゼン環)であり、炭素基は部分的に分岐鎖や多重結合を有するものも含まれる。また、炭素に結合する元素としてはフッ素や塩素等のハロゲン、水素あるいは窒素等も含まれる。また、Rは、ハロゲン、または−OR(Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、またはアリル基である。ここで、炭素が酸素や水素だけでなく、ハロゲンや窒素と結合しているものも含まれる。)で示される置換基である。また、Xは、Si、Ti、Al、CおよびSからなる群から選択される一つの元素である。ここで、αおよびβは1以上であり、α+βは2から4である。)
また、Rは上述の配向基、Rは上述の吸着基、Xは自己組織化薄膜の核となる物質である。上記構造の物質が自己組織化薄膜を形成するのである。
上記に示した自己組織化薄膜形成物質の具体的な例として、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルジメチルメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルジメチル(ジメチルアミノ)シラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、ノニルクロロシラン、オクテニルトリクロロシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェニルジクロロシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、テトラデシルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメチルクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジクロロシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリクロロシラン、ヘキシルジクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシラン、エイコシルトリクロロシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ドデシルジメチルクロロシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、デシルメチルジクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルメチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、およびN−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシランであることが好ましい。
本発明においては、中でもオクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ノニルクロロシラン、オクテニルトリクロロシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、テトラデシルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリクロロシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、エイコシルトリクロロシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルメチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、およびN−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく、特にオクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、およびN−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
ここで、本発明に用いられる密着性向上層は、上述した自己組織化薄膜の配向基が、親水基に置換されたものである。これにより、自己組織化薄膜の表面に親水基が存在することとなることから、後述する機能性層を構成する分子と上記親水基とが容易に結合し、密着性向上層と機能性層との密着性を良好なものとすることができる。なお、上記親水基とは、親水性を有する基であり、例えばOH基、CHO基、COOH基、CO基等が挙げられる。
本発明においては、上記自己組織化薄膜の配向基を親水基に置換する方法としては、上記自己組織化薄膜上から上記配向基を除去し、親水基に置換することが可能であれば、方法等は特に限定されるものではないが、中でも反応性雰囲気下で高エネルギーを照射することにより行われることが好ましい。これにより、容易に上記自己組織化薄膜の配向基を除去し、親水基を導入することが可能となるからである。
上記エネルギーの照射については、上述した基材の項で説明したエネルギーの照射と同様とすることができ、例えば酸素原子を含んだガスを用いるプラズマを照射する方法、または酸素含有雰囲気下で紫外光を照射する方法を用いてもよいが、特に真空紫外光の照射が製造効率やコスト等の面から好ましい。
ここで、本発明においては、上記配向基が親水基に置換された自己組織化薄膜の上に、さらに同様の自己組織化薄膜を形成してもよい。これにより、後述する機能性層との密着性をさらに良好なものとすることができるからである。本発明においては、上記密着性向上層として、上記自己組織化薄膜が、1層〜200層の範囲内、中でも1層〜100層積層されることが好ましい。
また本発明においては、上記密着性向上層の水との接触角として、具体的には、20°以下、中でも10°以下であることが好ましい。上記密着性向上層の水との接触角が、上記程度とされることにより、後述する機能性層と密着性向上層との密着性を良好なものとすることができるからである。
またさらに、本発明に用いられる密着性向上層の膜厚としては、上記密着性向上層の種類等によっても異なるが、通常0.2nm〜100nmの範囲内、好ましくは0.3nm〜50nmの範囲内とすることができる。
ここで、上述した密着性向上層は、上記基材の全面に形成されていてもよいが、例えば基材上にパターン状に形成されているものであってもよい。また、上記自己組織化薄膜の配向基をパターン状に除去して、密着性向上層がパターン状に形成されたものとしてもよい。これにより、配向基が除去されていない部分を疎水性、配向基が除去された部分を親水性とすることができ、この親疎水のパターンを利用して、機能性層を親水性である密着性向上層上に、容易にパターン状に形成することができるからである。
3.機能性層
次に、本発明に用いられる機能性層について説明する。本発明に用いられる機能性層は、上述した密着性向上層上に形成されるものであり、例えばガスバリアや、傷つき防止等の機能性を有する層である。本発明に用いられる機能性層としては、上記密着性向上層上に形成され、機能性を有する層であればその種類は限定されるものではなく、例えばガスバリア層や、傷つき防止等の機能を有するハードコート層、DVDディスク等の潤滑層、医歯薬用化学部材の吸着防止層や、バイオマテリアル層等が挙げられる。
本発明においては、中でも機能性層がガスバリア層である場合、およびハードコート層であることが、本発明の利点を活かすことができることから、特に好ましい。
また、本発明においては、このような機能性層の形成方法は、上記機能性層を形成可能であれば、特に限定されるものではないが、中でも例えばCVD法やPVD法等の気相法で形成されたものであることが好ましい。これにより、機能性層を、膜厚が薄く緻密な層とすることができるからである。
本発明に用いられる機能性層の膜厚としては、上記機能性層の種類等によっても異なるが、通常5nm〜20μmの範囲内、中でも10nm〜10μmの範囲内とすることが好ましい。これにより、本発明の積層体を、様々な用途に用いることが可能となるからである。
4.積層体
次に、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、上述した高分子基材上に密着性向上層が形成され、その密着性向上層上に機能性層が形成されたものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜他の層が形成されたものであってもよい。
本発明においては、特に上記機能性層がガスバリア層であるガスバリア積層体、もしくは上記機能性層がハードコート層であるハードコート積層体であることが好ましく、これらの積層体について説明する。
(ガスバリア積層体)
まず、本発明のガスバリア積層体について説明する。本発明のガスバリア積層体は、上記高分子基材と、その高分子基材上に形成された密着性向上層と、その密着性向上層上に形成されたガスバリア層とを有するものである。本発明において用いられるガスバリア層としては、一般的にガスバリア層として用いられる酸化ケイ素膜、酸化窒化ケイ素膜、酸化炭化ケイ素膜、窒化炭化ケイ素膜、SiOCN膜、ダイヤモンド膜、アモルファスカーボン膜、窒化炭素膜、酸化アルミニウム膜等を用いることができる。本発明においては、上記の中でも、特に酸化ケイ素膜および酸化窒化ケイ素膜であることが好ましい。これにより、上述した密着性向上層と密着性を良好なものとすることができ、ガスバリア性の高いガスバリア積層体とすることができるからである。
なお、本発明のガスバリア積層体に用いられるガスバリア層の形成方法等については、一般的なガスバリア層の形成に用いられる方法等を用いることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明においては、特に上記ガスバリア層がCVD法やPVD法等の気相法で形成されたものであることが好ましい。これにより、上記ガスバリア層を緻密で膜厚の薄い層とすることができ、本発明のガスバリア積層体を、様々な用途に用いることができるからである。
(ハードコート積層体)
次に、本発明のハードコート積層体について説明する。本発明のハードコート性積層体は、上記高分子基材と、その高分子基材上に形成された密着性向上層と、その密着性向上層上に形成されたハードコート層とを有するものである。
本発明において用いられるハードコート層は、傷つき防止等の機能を果たす層であれば、特に限定されるものではない。このようなハードコート層に用いられる材料としては、例えば酸化炭化ケイ素膜、SiOCN膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、ダイヤモンド膜、アモルファスカーボン膜、窒化炭素膜等が挙げられる。
なお、本発明のガスバリア積層体に用いられるハードコート層の形成方法等については、一般的なハードコート層の形成に用いられる方法等を用いることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明において、上記ハードコート層はCVD法やPVD法等の気相法で形成されたものであることが好ましい。これにより、上記ハードコート層を緻密で膜厚の薄い層とすることができ、本発明のハードコート積層体を、様々な用途に用いることができるからである。
B.積層体の製造方法
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。本発明の積層体の製造方法は、
高分子基材表面に、エネルギーを照射することにより、上記高分子基材の表面を改質する表面改質工程と、
上記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ、かつ上記高分子基材表面に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を用いて、上記高分子基材上に、自己組織化薄膜をCVD法により形成する自己組織化薄膜形成工程と、
上記自己組織化薄膜形成工程により形成された自己組織化薄膜の上記配向基を親水基に置換して密着性向上層を形成する配向基除去工程と、
上記密着性向上層上に機能性層を形成する機能性層形成工程と
を有するものである。
本発明の積層体の製造方法は、例えば図1に示すように、まず高分子基材1の表面にエネルギー2を照射し、高分子基材1の表面を改質する表面改質工程(図1(a))を行う。これにより、高分子基材上に形成される自己組織化薄膜との密着性を良好なものとすることができる。次に、この表面改質工程により表面が改質されて密着性が良好となった高分子基材1´上に自己組織化薄膜3をCVD法によって形成する自己組織化薄膜形成工程(図1(b))を行い、さらにこの自己組織化薄膜3の表面に例えばエネルギー4を照射すること等により、自己組織化薄膜の表面に存在する配向基を除去し、親水基に置換する配向基除去工程(図1(c))を行う。続いて、この表面の配向基が親水基に置換された自己組織化薄膜3´上に機能性層5を形成する機能性層形成工程(図1(d))を行い、積層体が製造される。本発明によれば、上記配向基除去工程によって、自己組織化薄膜の表面を親水性とすることから、その上に形成される機能性層との密着性が高く、形成される機能性層を緻密で機能性の高い層とすることができる。また、上記高分子基材と上記機能性層との密着性を向上させるために形成される密着性向上層として、上記自己組織化薄膜の配向基が除去された、膜厚の薄い層を用いることから、積層体全体の膜厚を薄いものとすることができる。
以下、このような積層体の製造方法の各工程について、詳しく説明する。
1.表面改質工程
まず、本発明の積層体の製造方法における表面改質工程について説明する。本発明の積層体の製造方法における表面改質工程は、高分子基材表面にエネルギーを照射することにより、高分子基材の表面を改質する工程である。本工程により照射されるエネルギーは、高分子基材の表面を改質し、後述する自己組織化薄膜形成工程により形成される自己組織化薄膜との密着性を良好なものとすることが可能な方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば高分子基材表面を溶液処理する方法等であってもよい。
本発明においては、特に反応性雰囲気下で高エネルギーを照射する方法が用いられることが好ましい。これにより、反応性雰囲気中のガスが励起されて高エネルギー状態となり、上記高分子基材表面の特定部位と反応することにより、上記高分子基材表面上に親水性の官能基を導入することが可能となり、自己組織化薄膜との密着性を良好なものとすることができるからである。
ここで、本発明でいう反応性雰囲気とは、上記高エネルギーの照射により活性化される物質を含有する雰囲気であり、上記高エネルギーの照射の方法により、異なるものであるが、具体的には、O、NO、NO、NO、CO、CO、H、He、N、Ar等のガスの雰囲気を挙げることができ、中でも酸素原子を含んだガスであることが好ましい。
また、高エネルギーの照射の方法として、具体的には、大気圧下、または減圧下でのプラズマ照射や、イオン照射、ラジカル照射、光照射等が挙げられる。
本発明における上記高分子基材の表面を改質する方法としては、上記の中でも酸素原子を含んだガスを用い、プラズマを照射するプラズマ処理、または酸素含有雰囲気下で真空紫外光を照射する紫外光処理を用いることが好ましい。これにより、容易に上記高分子基材表面に親水性を有する官能基を導入することが可能であり、親水性の官能基が導入された高分子基材上に、密着性向上層を、密着性良く形成することが可能となるからである。
この際、本工程により表面改質された後の上記高分子基材表面の表面粗さとしては、0.1nm〜200nmの範囲内、中でも0.1nm〜150nmの範囲内とされることが好ましい。高分子基材表面の表面粗さが上記範囲内であることにより、後述する密着性向上層や、その密着性向上層上に形成される機能性層の密着性を良好なものとすることができるからである。ここで、上記表面粗さは、上述した方法と同様の方法により測定された値である。
なお、本工程に用いられる高分子基材等については、上述した「A.積層体」の高分子基材の項で説明したものと同様のものを用いることが可能であるので、ここでの説明は省略する。
2.自己組織化薄膜形成工程
次に、本発明における自己組織化薄膜形成工程について説明する。本発明における自己組織化薄膜工程は、上記高分子基材上に、上記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ有し、かつ上記高分子基材表面に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を用いて、上記高分子基材上に自己組織化薄膜をCVD法により形成する工程である。
本工程においては、上記高分子基材上に上記自己組織化薄膜をCVD法により形成することが可能な方法であれば、例えばプラズマCVD法等を用いてもよいが、特に熱CVD法によって行うことが好ましい。上記自己組織化薄膜の形成が、熱CVD法により行われる場合、原料となる物質を気化し、高分子基材上に均一になるように材料を送り込み、酸化、還元、置換等の反応を行わせることから、上記高分子基材に均一に自己組織化薄膜を
形成することが可能であり、上記高分子基材上に密着性よく形成することができるからである。
本発明における熱CVD法の好ましい成膜条件としては、上述した高分子基材の耐熱温度以下であれば、高ければ高いほどよいが、室温〜200℃の範囲内であることが好ましい。また、反応系中に水分、あるいは酸素が含まれることが、上記自己組織化薄膜形成物質の吸着基の加水分解反応がより促進され、上記高分子基材との反応性が高くなることから好ましい。
本発明における熱CVD法による自己組織化薄膜の材料としては、上述した「A.積層体」の密着性向上層の項で説明した自己組織化薄膜の記載と同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.配向基除去工程
次に、本発明における配向基除去工程について説明する。本発明における配向基除去工程とは、上述した自己組織化薄膜形成工程により形成された自己組織化薄膜の上記配向基を自己組織化薄膜上から除去し、親水基に置換し、密着性向上層を形成する工程である。本発明における配向基除去工程は、上記自己組織化薄膜上から上記配向基を除去し、親水基に置換することが可能であれば、方法等は特に限定されるものではないが、中でも反応性雰囲気下で高エネルギーを照射することにより行われることが好ましい。これにより、容易に上記自己組織化薄膜の配向基を除去し、親水基を導入することが可能となり、この密着性向上層上に形成される機能性層との密着性を良好なものとすることができるからである。
なお、上記反応性雰囲気下における高エネルギーの照射については、上述した表面改質工程における高分子基材表面に行うエネルギー照射と同様とすることができるが、本発明の配向基除去工程においては、上述した反応性雰囲気下における高エネルギーの照射の中でも酸素原子を含んだガスを用いるプラズマを照射する方法、または酸素含有雰囲気下での紫外光を照射する方法を用いることが好ましい。
酸素原子を含んだガスを用いるプラズマを照射する方法によれば、上記プラズマにより、上記自己組織化薄膜における配向基が除去されるのと同時に、酸素ガス中の酸素原子により、上記自己組織化薄膜の骨格を形成する物質が酸化されることから、容易に表面に親水基を導入することが可能となるのである。
また、例えば上記自己組織化薄膜に真空紫外光を照射した場合、上記配向基は上述したような有機物等により構成されており、上記配向基中のC−C結合やC−H結合が励起され、切断されることによりラジカルが生成する。このラジカルはさらに、雰囲気中の残留酸素が真空紫外光によって励起されて発生した活性酸素と反応し、有機成分は分解し、水や二酸化炭素となって除去される。また、上記自己組織化薄膜の骨格を形成する物質は上述したような珪素等であることから、光照射によって除去されずに酸化され、表面は親水基を有する構造とすることができるのである。
ここで上記真空紫外光照射における圧力は、1Pa〜10000Pa、なかでも10Pa〜1500Paの範囲内であることが好ましい。これにより、効率的に上記の反応が進むことから、製造効率やコスト等の面からも好ましいからである。
ここで、本発明においては、上記配向基除去工程の後に、さらに自己組織化薄膜形成工程および配向基除去工程を行い、上記配向基が親水基に置換された自己組織化薄膜の上に、さらに同様の自己組織化薄膜を形成してもよい。これにより、後述する機能性層形成工程で形成される機能性層と密着性向上層との密着性をさらに良好なものとすることができるからである。本発明においては、上記密着性向上層として、上記自己組織化薄膜が、1層〜200層の範囲内中でも1層〜100層積層されることが好ましく、上記自己組織化薄膜形成工程および配向基除去工程を繰り返し行うことにより、このような密着性向上層を形成することができる。
4.機能性層形成工程
次に、本発明における機能性層形成工程について説明する。本発明における機能性層形成工程は、上述した自己組織化薄膜形成工程および配向基除去工程によって形成された密着性向上層上に機能性層を形成する工程である。本工程により形成される機能性層は、機能性を有する層であれば、特にその種類等は限定されるものではなく、例えばガスバリア性を有するガスバリア層、傷つき防止機能を有するハードコート層、DVDディスク等の潤滑層等とすることができ、本発明においては特に、ガスバリア層またはハードコート層であることが好ましい。
また、本工程は、このような機能性層を形成することが可能な方法であれば、特に限定されるものではないが、特にCVD法やPVD法等の気相法により行われることが好ましい。これにより、上記密着性向上層上に、密着性よく、緻密な層を形成することができ、機能性の高い層とすることができるからである。また、上記機能性層を気相法により形成することによって、膜厚の薄い層とすることができることから、様々な用途に用いることが可能な積層体とすることができるからである。
本工程により形成される機能性層の膜厚としては、機能性層の種類や用途等によって、適宜選択されるものであるが、通常5nm〜20μm、中でも10nm〜10μm程度とされることが好ましい。
C.ガスバリア積層体の製造方法
次に、本発明のガスバリア積層体の製造方法について説明する。本発明のガスバリア積層体の製造方法は、上述した積層体の製造方法の機能性層形成工程が、ガスバリア層を気相法により形成するガスバリア層形成工程である方法である。
本発明によれば、上記機能性層としてガスバリア層を気相法によって形成することにより、ガスバリア層を上記密着性向上層と密着性を良好に形成することができ、また緻密に形成されたガスバリア性の高い層とすることができる。また、ガスバリア積層体全体の膜厚を薄いものとすることができることから、様々な用途に用いることが可能なガスバリア積層体とすることができるのである。
ここで、上記ガスバリア層形成工程に用いられる気相法は、ガスバリア層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、一般的にガスバリア層の形成に用いられるCVD法やPVD法等とすることができる。
なお、本発明のガスバリア性積層体の製造方法に用いられるガスバリア層の材料等については、上述した「A.積層体」のガスバリア積層体の項で説明したものと同様であり、また、ガスバリア層形成工程以外の工程については、上述した「B.積層体の製造方法」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
D.ハードコート積層体の製造方法
次に、本発明のハードコート積層体の製造方法について説明する。本発明のハードコート積層体の製造方法は、上述した積層体の製造方法の機能性層形成工程が、ハードコート層を気相法により形成するハードコート層形成工程である方法である。
本発明によれば、上記機能性層としてハードコート層を気相法によって形成することにより、ハードコート層を上記密着性向上層と密着性を良好に形成することができ、また緻密に形成された、例えば傷つき防止等の機能の高い層とすることができる。また、ハードコート積層体全体の膜厚を薄いものとすることができることから、様々な用途に用いることが可能なハードコート積層体とすることができるのである。
ここで、上記ハードコート層形成工程に用いられる気相法は、ハードコート層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、一般的にハードコート層の形成に用いられるCVD法やPVD法等とすることができる。
なお、本発明のハードコート性積層体の製造方法に用いられるハードコート層の材料等については、上述した「A.積層体」のハードコート積層体の項で説明したものと同様であり、また、ハードコート層形成工程以外の工程については、上述した「B.積層体の製造方法」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例]
(表面改質工程)
まず,PET基材(12μm−PET:ユニチカ(株)社製)を、172nmの中心波長を有する真空紫外(VUV)光照射装置を備えたチャンバー中に設置し、大気圧下にて20分間,VUV光を照射した。照射後のPET表面の平均二乗粗さは約2nmであった。表面粗さの測定は、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製;SPI3800N)を用いて、タッピングモードで測定された。
(密着性向上層形成工程)
上述したVUV光照射されたPET基材と、ガラス容器に入れたオクタデシルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)社製 00256)約2ccを、テフロン(登録商標)容器内に設置し、100℃のオーブン中に5時間放置し、熱CVDによる自己組織化薄膜(以下、ODS−SAMと略称する。)を形成した。
ODS−SAM成膜後、水滴接触角および膜厚を測定したところ、水との接触角が約105°であり、熱CVDにより、SAMが形成されていることがわかった。
なお、この水との接触角の測定方法は、協和界面化学社の接触角測定装置(型番CA−Z)を用い、被測定対象物の表面上に、純水を一滴(一定量)滴下させ、一定時間経過後、CCDカメラを用いて水滴形状を観察し、物理的に接触角を求める方法を用いた。
上記で作製したSAMコーティング膜を、上述のVUV光照射装置を備えたチャンバー中に導入し、1000Paにて、20分間露光した。露光後、水滴接触角を測定したところ、水との接触角が10°以下であったので、VUV光照射により、配向基が除去され、親水基が導入されていることがわかった。
(ガスバリア層形成工程)
酸化ケイ素膜を、容量結合型高周波プラズマCVDにより成膜した。まず、減圧手段により反応チャンバー(反応管)内を1.0×10-4Pa以下まで真空にした。次いで、原料ガスを反応チャンバー内に導入した。原料ガスとしては、有機ケイ素化合物としてテトラメトキシシランを用い、酸素原子を含むガスとして酸素ガスを用いた。テトラメトキシシランおよび酸素分圧をそれぞれ5Paと一定にし,200Wの電力で,10分間シリカ膜を成膜した。成膜中、基板表面温度は100℃以下であった。膜厚は約150nmであった。
(OTR測定)
酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/20)を用い、23℃、90%Rhの条件で測定したところ、実施例のサンプルの酸素透過率は1cc/m/day以下であった。また、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31)を用い、37.8℃、100%Rhの条件で測定したところ、実施例のサンプルの水蒸気透過率は1g/m/day以下であった。
本発明の積層体の製造方法の一例を示す工程図である。

Claims (1)

  1. 高分子基材表面に、エネルギーを照射することにより、前記高分子基材の表面を改質する表面改質工程と、
    前記高分子基材に自己組織化薄膜を吸着させるための吸着基を少なくとも一つ、かつ前記高分子基材表面に自己組織化薄膜を形成するように分子を配向させる配向基を少なくとも一つ有する自己組織化薄膜形成物質を用いて、前記高分子基材上に、自己組織化薄膜をCVD法により形成する自己組織化薄膜形成工程と、
    前記自己組織化薄膜形成工程により形成された自己組織化薄膜の前記配向基を親水基に置換して密着性向上層を形成する配向基除去工程と、
    前記密着性向上層上に機能性層を形成する機能性層形成工程とを有し、
    前記機能性層形成工程が、ハードコート層を気相法により形成するハードコート層形成工程であることを特徴とするハードコート積層体の製造方法。
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