JP4311951B2 - 貨幣処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙幣入出金機のような貨幣処理装置に関し、特に流通過程で傷んだ貨幣であっても収納することが可能な貨幣処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
貨幣を受け付けて収納または返却の処理を行う貨幣処理装置の一例として、金融機関の係員窓口に設置される紙幣入出金機がある。この紙幣入出金機は、係員が顧客から預かった紙幣を入金する場合、紙幣が入出金機に投入されると、内部に備わる識別部によって紙幣の真偽判定のような複数の判定項目に基づいて紙幣が正常であるか異常であるかを識別する。そして、真紙幣であり紙幣入出金機で取り扱い可能な紙幣である等と判定することにより紙幣が正常であると識別すると、その紙幣を収納して入金する。これに対して、偽紙幣であると判定したり、取り扱い不可能な紙幣である等と判定することにより紙幣が異常であると識別すると、その紙幣を返却して入金を拒否する。なお、取り扱い可能な紙幣とは、識別部で金種の識別が出来た紙幣の内、紙幣入出金機内に収納してもよい紙幣のことであり、取り扱い不可能な紙幣とは、識別部で金種の識別が出来た紙幣の内、紙幣入出金機内に収納を許可されていない紙幣(例えば、旧札や特定札や海外札のような紙幣)のことである。
【0003】
上記のような紙幣入出金機では、偽紙幣が混入しないように紙幣の真偽判定レベルを高く設定している。そのため、流通過程でしわが寄ったり汚れが付いたというような傷んだ紙幣が、真紙幣であるにも拘らず識別部で偽紙幣であると判定され、返却されることがある。このような場合、従来は、返却された紙幣を係員がチェックして真紙幣であると認めると、予め準備しておいた予備紙幣と交換し、交換した紙幣を手元で管理するとともに、予備紙幣を紙幣入出金機に入金していた。しかしこれでは、係員が現金を手元で管理するので、防犯上問題となっていた。また、予備紙幣を返却された紙幣の代わりに入金するので、手間と時間がかかり、顧客に対する入金サービスをスムーズに行えなかった。
【0004】
一方、下記の特許文献1には、紙幣を強制的に収納する強制収納モードを有し、一度返却された紙幣を係員がチェックして真紙幣であると認めると、係員の操作により強制収納モードに切り替えて、その紙幣を強制的に収納する紙幣入出金機が記載されている。このような紙幣入出金機によれば、流通過程で傷んだ紙幣を強制的に紙幣入出金機に入金することができるので、係員が現金を手元で管理する必要がなくなり、現金を紙幣入出金機内で安全に管理することができる。また、予備紙幣を用いる必要がなくなり、予備紙幣の扱いに手間と時間がかからず、顧客に対する入金サービスをスムーズに行うことができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−30106号公報(第3−4頁、図5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、紙幣を識別する識別部では、紙幣の真偽判定以外にも複数の判定を行っていて、その中には人間の目では判定できないような項目もある。このため、特許文献1の紙幣入出金機のように、一度返却した紙幣に対する複数の判定を識別部で行わずに係員の判断のみに委ねると、真偽判定を始めとする複数の判定に基づいて紙幣が正常であるか異常であるかを正確に識別できず、偽造紙幣や紙幣入出金機で取り扱い不可能な紙幣のような異常な紙幣が、係員に流通過程で傷んだ真紙幣であると判断されて、紙幣入出金機内に混入してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するものであって、その課題とするところは、流通過程で傷んだ貨幣であっても識別部で識別して収納することができるとともに、異常な貨幣が混入するのを防止することができる貨幣処理装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、受け付けた貨幣を複数の判定項目に基づいて識別し、その識別結果に応じて貨幣の収納または返却の処理を行う貨幣処理装置において、複数の判定項目のうち、全ての判定項目を満足する貨幣を正常であると識別し、少なくとも1つの判定項目を満足しない貨幣を異常であると識別する識別部と、複数の判定項目の1つである貨幣の真偽判定を行うための真偽判定レベルを変更するレベル変更手段と、識別部によって貨幣が異常と識別され、かつ真貨幣と判定された場合は、真偽判定レベルの変更を許可せず、識別部によって貨幣が異常と識別され、かつ偽貨幣と判定された場合に、真偽判定レベルの変更を許可する変更許可手段と、変更許可手段によって真偽判定レベルの変更が許可されたことを通知する通知手段とを設ける。そして、受け付けた貨幣が、識別部により異常でかつ真貨幣と判定された場合は、変更許可手段により真偽判定レベルの変更を許可することなく、当該貨幣を返却する。また、受け付けた貨幣が、識別部により異常でかつ偽貨幣と判定された場合は、当該貨幣を返却するとともに、変更許可手段が真偽判定レベルの変更を許可し、当該許可に基づいて、通知手段が真偽判定レベルの変更が許可されたことを通知するとともに、レベル変更手段が真偽判定レベルを下げるように変更し、返却された当該貨幣が再度受け付けられたときに、変更後の真偽判定レベルにより識別部で真偽判定を行う。なお、識別部によって「異常である」と識別される貨幣には、例えば、偽造貨幣や、貨幣処理装置で取り扱い不可能な貨幣や、流通過程で傷んだため真貨幣であるにも拘らず真偽判定で偽貨幣であると判定された貨幣が含まれる。
【0009】
このようにすると、流通過程で傷んだ真貨幣を最初に受け付けたときに、識別部が当該貨幣を偽貨幣で異常であると識別し、それを返却しても、返却した貨幣を再度受け付けたときに、真偽判定レベルが下げられているので、当該貨幣は識別部により真貨幣で正常であると識別され、内部に収納することができる。この結果、従来の紙幣入出金機のように、係員が現金を手元で管理する必要がなくなり、現金を貨幣処理装置内で安全に管理することができる。また、予備貨幣を用いる必要がなくなり、予備貨幣の扱いに手間と時間がかからず、顧客に対するサービスをスムーズに行うことができる。
【0010】
また、特許文献1の紙幣入出金機のように、一度返却した貨幣の真偽判定やこれ以外の判定を人間の判断のみに委ねるということはなく、全て識別部によって判定するので、識別部による判定に基づいて貨幣が正常であるか異常であるかを正確に識別することができ、偽造貨幣や貨幣処理装置で取り扱い不可能な貨幣のような異常な貨幣が貨幣処理装置内に混入するのを防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明においては、真偽判定レベルは3段階以上の複数段階に設定されていて、返却された貨幣を繰り返し受け付けて変更後の真偽判定レベルにより真偽判定を行う毎に、真偽判定レベルをレベル変更手段によって順次下げるように変更する。このようにすると、返却された貨幣を繰り返し受け付ける毎に真偽判定レベルを徐々に下げて行くことができ、相当程度傷んだ貨幣であっても、最終的には受け付けて収納することが可能となる。
【0012】
また、本発明においては、上記構成に加え、真偽判定レベルの変更を指示するために操作される変更指示手段を設ける。この場合、変更許可手段によって真偽判定レベルの変更が許可され、かつ、変更指示手段によって真偽判定レベルの変更が指示されると、レベル変更手段によって真偽判定レベルを下げるように変更する。
【0013】
このようにすると、貨幣処理装置側で真偽判定レベルの変更が許可されていなければ、係員が変更指示手段を操作しても、真偽判定レベルを下げることができないため、真偽判定レベルが係員によって不用意に変更されるのを防止することができる。
【0014】
また、本発明においては、真偽判定レベルを変更した後に、変更許可手段によるレベル変更許可状態を不許可状態に戻すとともに、変更指示手段によるレベル変更指示状態を無指示状態に戻す状態初期化手段を設ける。真偽判定レベルを変更した後に、レベル変更許可状態およびレベル変更指示状態のままにしておくと、その後識別部によって真貨幣であるが異常であると識別された異常な貨幣をもう一度受け付けたときに、指示なく真偽判定レベルを下げて、その下げたレベルで識別部によって誤った真偽判定が行われてしまうが、上記のようにしてレベル変更不許可状態およびレベル変更無指示状態に戻すことで、異常な貨幣をもう一度受け付けたときに、指示なく真偽判定レベルを下げてしまうことは発生せず、識別部によって誤った判定が行われることもない。
【0015】
さらに、本発明においては、受け付けた貨幣に対する処理が完了した後に、真偽判定レベルを初期のレベルに戻すレベル初期化手段を設ける。このようにすると、自動的に真偽判定レベルを元に戻して、次の貨幣を受け付けるときに、通常の高い真偽判定レベルで貨幣の真偽判定を行うことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、紙幣入出金機の概略構造を示す図である。図1において、1は紙幣入出金機であって、金融機関の係員窓口に設置される。この紙幣入出金機1は、投入される紙幣Sを金種別に内部のカセットC1〜C4に収納して入金する機能と、カセットC1〜C4に収納している紙幣Sを指示された金種や枚数に基づいて取り出して出金する機能とを備えている。紙幣入出金機1は、本発明における貨幣処理装置を構成する。2は紙幣入出金機1の本体、3は入金する紙幣Sが投入される入金口、4は投入された紙幣Sを返却する返却口、5は出金する紙幣Sを放出する出金口、6は投入された紙幣Sに対する処理が確定するまで紙幣Sを一時的に保留する一時保留部である。なお、入金口3、返却口4、出金口5は、本体2の前面上部に設けられていて、一時保留部6は本体2の内部に設けられている。7は本発明における識別部であって、入出金する紙幣Sが正常であるか異常であるかを複数の判定項目に基づいて識別する。なお、複数の判定項目としては、紙幣Sの真偽判定や金種判定等がある。
【0017】
8は本体2の上面に設けられた操作部である。この操作部8の詳細を図2に示す。図2において、9は入出金する紙幣Sの金額や紙幣入出金機1の動作状態等を表示する表示部、10は紙幣入出金機1に対して各種の保守作業を行うために操作される監査キースイッチである。B1は発光可能な真偽判定レベル変更指示ボタン(以下、レベル変更ボタンと記す)であって、識別部7が紙幣Sの真偽判定を行うための真偽判定レベルの変更を指示するために操作される。レベル変更ボタンB1は、本発明における変更指示手段を構成する。B2は一時保留部6に保留された紙幣Sに対して入金の確定を指示するために操作される入金確定ボタン、B3は一時保留部6に保留された紙幣Sに対して入金の取り消しを指示するために操作される入金取消ボタン、B4は入金口3に投入された紙幣Sの金額を計数するために操作される計数ボタン、B5は紙幣入出金機1の状態をリセットするためのリセットボタンである。
【0018】
図1に示すC1〜C4は紙幣Sを金種別に収納する第1〜第4カセットである。本実施形態では、第1カセットC1は千円札、第2カセットC2は五千円札、第3カセットC3は一万円札、第4カセットC4は予備札や混合札をそれぞれ収納する。C5はリジェクトカセットであって、第1〜第4カセットC1〜C4から取り出した紙幣Sが破損している等の異常な紙幣であるため出金が不可能な場合にこのカセットC5に回収する。紙幣入出金機1はこれらのカセットC1〜C5に対して紙幣Sを出し入れし、入出金取引を行う。
【0019】
L1は紙幣Sを搬送するための上部搬送ラインであって、入金口3から識別部7を介して返却口4または出金口5までをループ状に接続している。L2は紙幣Sを搬送するための分岐搬送ラインであって、上部搬送ラインL1の途中で分岐し一時保留部6を介して再び上部搬送ラインL1へ接続している。L3は紙幣Sを搬送するための下部搬送ラインであって、識別部7と各カセットC1〜C5とをループ状に接続している。なお、図1では、各搬送ラインL1、L2、L3を駆動するためのモータやローラ等の駆動機構は図示を省略している。
【0020】
上記構成の紙幣入出金機1において、紙幣Sを入金する場合は、係員が入金口3に紙幣Sを投入し、計数ボタンB4を押して紙幣Sの計数を指示すると、紙幣Sは入金口3から一枚繰り出されて上部搬送ラインL1を通って識別部7へ搬送される。そして、識別部7で紙幣Sの真偽や金種等の複数項目の判定が行われて、それらの判定結果から紙幣Sが正常であるか異常であるかが識別される。なお、このときの金種判定は、入金口3から繰り出されて来た紙幣Sが、紙幣入出金機1で取り扱い可能な金種の紙幣であるか、取り扱い不可能な金種の紙幣であるかを確認するために行われていて、取り扱い可能な紙幣とは、カセットC1〜C4のいずれかに収納してもよい紙幣のことであり、取り扱い不可能な紙幣とは、カセットC1〜C4のいずれにも収納してはいけない紙幣のことである。また、識別部7によって正常であると識別される紙幣とは、複数の判定項目の全てを満足した紙幣のことであり、異常であると識別される紙幣とは、複数の判定項目のうち少なくとも1つの項目を満足しなかった紙幣のことである。異常であると識別される紙幣には、例えば、偽造紙幣や、紙幣入出金機1で取り扱い不可能な紙幣や、流通過程で傷んだため真紙幣であるにも拘らず真偽判定で偽紙幣であると判定された紙幣が含まれる。
【0021】
識別部7によって真紙幣であり取り扱い可能な紙幣である等と判定されることにより正常であると識別された紙幣Sは、上部搬送ラインL1から分岐搬送ラインL2を通り一時保留部6へ搬送されて、ここで一時的に保留される。一方、偽紙幣であると判定されたり、取り扱い不可能な紙幣である等と判定されることにより異常であると識別された紙幣Sは、上部搬送ラインL1を通り返却口4へ搬送されて、外部に返却される。紙幣Sが一時保留部6または返却口4に搬送されると、次の紙幣Sが入金口3から一枚繰り出されて識別部7へ搬送され、識別部7での識別結果に応じて一時保留部6または返却口4へ搬送される。そして、上記のようにして入金口3の紙幣Sが全て搬送されると、係員は返却口4に搬送された紙幣Sを入金口3に再度投入するか、一時保留部6に集められた紙幣Sに対する処理の指示を行う。ここで、係員が返却口4に搬送された紙幣Sを入金口3に再度投入し、計数ボタンB4を押すと、上述したように紙幣Sが入金口3から一枚繰り出されて識別部7へ搬送され、さらに一時保留部6または返却口4へ搬送される。
【0022】
一方、係員が入金確定ボタンB2を押して一時保留部6の紙幣Sの入金確定を指示すると、紙幣Sは一時保留部6から一枚繰り出されて上部搬送ラインL1を通り識別部7へ搬送される。そして、識別部7で再度紙幣Sの金種判定が行われ、紙幣Sは、判定された金種に対応するカセットC1〜C4へ下部搬送ラインL3を通って搬送されて収納される。この後は、次の紙幣Sが一時保留部6から一枚繰り出されて上部搬送ラインL1を通り識別部7へ搬送され、識別部7で判定された金種に対応するカセットC1〜C4へ搬送されて収納される。このようにして、一時保留部6の紙幣Sが全てカセットC1〜C4に振り分けられて収納されると、紙幣Sに対する処理が完了する。なお、係員が入金確定ボタンB2ではなく入金取消ボタンB3を押して一時保留部6の紙幣Sの入金取消を指示すると、紙幣Sは一時保留部6から一枚ずつ繰り出されて上部搬送ラインL1を通り返却口4へ搬送されて返却される。このようにして、一時保留部6の紙幣Sが全て返却口4に搬送されて返却されると、紙幣Sに対する処理が完了する。
【0023】
紙幣入出金機1から紙幣Sを出金する場合は、係員が図示しないテンキー等により出金する金額と紙幣Sの金種を指定すると、指定された金種に対応するカセットC1〜C4から紙幣Sが繰り出されて、下部搬送ラインL3を通って識別部7へ搬送される。そして、識別部7で金種等の判定が行われ、それらの判定結果から紙幣Sが正常であるか異常であるかが識別される。なお、このときの金種判定は、指定された金種と一致しているか否かを確認するために行われている。ここで、紙幣Sの金種が指定された金種と一致している等と判定されることにより正常であると識別された紙幣Sは、上部搬送ラインL1を通って出金口5へ搬送され、出金口5から取り出しを許容された状態となる。一方、紙幣Sの金種が指定された金種と一致していない等と判定されることにより異常であると識別された紙幣Sは、下部搬送ラインL3を通ってリジェクトカセットC5へ回収される。
【0024】
図3は、紙幣入出金機1の電気的構成を示したブロック図である。図3において、11は紙幣入出金機1の各部を制御するCPUである。12はCPU11の動作プログラム等を記録したROM、13はCPU11が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAMである。14は入金口紙幣検知センサ(以下、入金口センサと記す)であって、入金口3の紙幣Sの有無を検知する。15は保留部紙幣検知センサ(以下、保留部センサと記す)であって、一時保留部6の紙幣Sの有無を検知する。入金口センサ14と保留部センサ15とはそれぞれフォトセンサから構成される。8は前述の操作部、7は前述の識別部、16は前述の3つの搬送ラインL1、L2、L3をそれぞれ駆動するための駆動源であるモータである。17はRAMから構成される格納部であって、所定の領域にレベルテーブルTと、変更指示データD1と、変更許可データD2とを格納している。
【0025】
レベルテーブルTは識別部7が紙幣Sの真偽判定を行うための基準である真偽判定レベルを表すテーブルである。このレベルテーブルTの詳細を図4に示す。図4において、真偽判定レベルはA、B、C、D、Eと3段階以上の複数段階に設定されていて、このうちAがもっとも高いレベルであり、Aから下に行くほど低いレベルとなっている。また、各レベルA〜Eと対応して、それぞれのレベルA〜Eが現在識別部7で有効であるか、無効であるかを表す情報が記憶されている。「1」は有効を表し、「0」は無効を表している。識別部7では、初期はレベルAが有効になっていて、このレベルAに基づいて紙幣Sの真偽判定が行われる。そして、識別部7で有効であるレベルは、後述するようにCPU11によってレベルAからレベルBへ、レベルBからレベルCへというように順次下げるように変更することが可能となっている。
【0026】
図3に示した変更指示データD1はレベル変更ボタンB1(図2)からの真偽判定レベルの変更指示が有ったか無かったかを示すデータである。また、変更許可データD2はCPU11が真偽判定レベルの変更を許可したか否かを示すデータである。なお、CPU11は識別部7によって紙幣Sが偽紙幣であると判定されたことを確認したときに真偽判定レベルの変更を許可する。このようなCPU11は、本発明における変更許可手段を構成する。また、CPU11は変更指示データD1と変更許可データD2とに基づいて識別部7で有効である真偽判定レベルを図4で説明したようにレベルAから順次下げるように変更する。このようなCPU11は、本発明におけるレベル変更手段を構成する。
【0027】
図5は、CPU11が識別部7で有効である真偽判定レベルを変更する状況を説明する図である。図5において、変更指示データD1の下側に示される「0」は真偽判定レベルの変更指示が無い無指示状態を表していて、「1」は真偽判定レベルの変更指示が有る指示状態を表している。変更指示データD1は、初期では状態「0」であるが、係員によってレベル変更ボタンB1(図2)が操作されると、CPU11によって状態「1」に更新される。変更許可データD2の下側に示される「0」は真偽判定レベルの変更が許可されていない不許可状態を表していて、「1」は真偽判定レベルの変更が許可された許可状態を表している。変更許可データD2は、初期では状態「0」であるが、CPU11によって真偽判定レベルの変更が許可されると状態「1」に更新される。このように変更許可データD2が状態「1」に更新されると、図2に示したレベル変更ボタンB1は発光して真偽判定レベルの変更が許可されたことを通知する。このようなレベル変更ボタンB1は、本発明における通知手段を構成する。
【0028】
変更指示データD1が真偽判定レベルの変更の指示状態「1」を表し、かつ、変更許可データD2が真偽判定レベルの変更の許可状態「1」を表すと、CPU11は識別部7で有効である真偽判定レベルを変更する。なお、真偽判定レベルを変更した後に、CPU11は、変更指示データD1を初期の無指示状態「0」に戻すとともに、変更許可データD2を初期の不許可状態「0」に戻す。このようなCPU11は、本発明における状態初期化手段を構成する。また、入金を受け付けた紙幣Sに対する処理が完了した後に、CPU11は変更した真偽判定レベルを初期のレベルAに戻す。このようなCPU11は、本発明におけるレベル初期化手段を構成する。
【0029】
図6〜図8は、紙幣入出金機1の入金時の動作手順を示したフローチャートであって、各ステップはCPU11が実行する処理である。なお、図7は図6のステップS2の紙幣入金受付処理の詳細を示したフローチャートであり、図8は図6や図7の処理と独立して実行される変更指示データ更新処理を示したフローチャートである。
【0030】
図6において、まず、CPU11は、変更指示データD1を真偽判定レベルの変更の指示が無い無指示状態「0」に初期化するとともに、変更許可データD2を真偽判定レベルの変更の許可がされていない不許可状態「0」に初期化する(ステップS1)。そして、紙幣Sの入金を受け付ける紙幣入金受付処理を図7のフローチャートに従って実行する(ステップS2)。図7において、係員が入金口3に紙幣Sを投入して計数ボタンB4を押すと、CPU11は入金口センサ14の検知出力により入金口3に紙幣Sが有り、かつ、紙幣Sの計数指示が有ったと判断して(ステップS21:YES)、変更許可データD2が真偽判定レベルの変更が許可された許可状態「1」であるか否かを判定する(ステップS22)。このときは、図6のステップS1で変更許可データD2を不許可状態「0」に初期化したので、許可状態「1」でないと判定して(ステップS22:NO)、ステップS26へ移行する。
【0031】
ステップS26において、入金口3から紙幣Sを一枚繰り出して識別部7へ搬送し、識別部7で真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS27)。このとき、識別部7は初期の真偽判定レベルであるレベルAに基づいて紙幣Sを識別する。また、識別部7は金種判定の結果に基づいて紙幣Sの金額を計数する。そして、CPU11は識別部7によって紙幣Sが正常であると識別されたか否かを確認し(ステップS28)、正常であると識別されていると(ステップS28:YES)、紙幣Sを識別部7から一時保留部6へ搬送する(ステップS29)。搬送後は、入金口3の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS34)、入金口3にまだ紙幣Sがあれば(ステップS34:NO)、ステップS26へ移行して、入金口3から紙幣Sを一枚繰り出して識別部7へ搬送し、上述したように識別部7で紙幣Sを識別する。
【0032】
一方、ステップS28において、識別部7によって紙幣Sが異常であると識別されていると(ステップS28:NO)、続けて、識別部7によって真偽判定で紙幣Sが偽紙幣と判定されたか否かを確認する(ステップS30)。ここで、紙幣Sが真紙幣と判定されていると(ステップS30:NO)、紙幣Sを識別部7から返却口4へ搬送して返却する(ステップS32)。なお、このように識別部7によって真紙幣と判定されているにも拘らず異常と識別された紙幣Sは、真偽判定以外の複数の判定項目のうち少なくとも1つの項目を満足しなかった紙幣であって、例えば、紙幣入出金機1で取り扱い不可能な金種の紙幣が含まれている。紙幣Sを返却口4へ返却すると、入金口3の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS34)、入金口3にまだ紙幣Sがあれば(ステップS34:NO)、ステップS26へ移行して、入金口3から紙幣Sを一枚繰り出して識別部7へ搬送し、上述したように識別部7で紙幣Sを識別する。
【0033】
ステップS30において、識別部7で紙幣Sが偽紙幣と判定されていると(ステップS30:YES)、紙幣Sを識別部7から返却口4へ搬送して返却し(ステップS31)、真偽判定レベルの変更を許可して、変更許可データD2を不許可状態「0」から許可状態「1」に更新する(ステップS33)。なお、このように識別部7によって偽紙幣と判定され異常と識別された紙幣Sには、実際には真紙幣であるが流通過程においてしわが寄ったり汚れが付いたというように傷んだ状態にあるために、真偽判定レベルAでは真紙幣と判定できなかった紙幣が含まれている。また、偽造紙幣も含まれている。変更許可データD2を更新すると、CPU11は入金口3の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS34)、入金口3にまだ紙幣Sがあれば(ステップS34:NO)、ステップS26へ移行して、入金口3から紙幣Sを一枚繰り出して識別部7へ搬送し、上述したように識別部7で紙幣Sを識別する。これに対して、入金口3の紙幣Sが全てなくなると(ステップS34:YES)、紙幣入金受付処理を終了して、図6のステップS3へ移行する。このとき、識別部7では全紙幣Sの金額の計数が完了しているので、表示部9に紙幣Sの金額が表示される。
【0034】
なお、CPU11は図7の紙幣入金受付処理とは独立して、変更指示データ更新処理を図8のフローチャートに従って実行している。そのため、図7のステップS33で変更許可データD2を更新すると、変更許可データD2が許可状態「1」になったと判定し(図8のステップS41:YES)、レベル変更ボタンB1を発光させて(ステップS42)、係員がレベル変更ボタンB1を押すのを待つ(ステップS43)。このとき、レベル変更ボタンB1が発光しているので、係員は真偽判定レベルの変更が許可されていて、返却口4に返却された紙幣Sを真偽判定レベルを変更した後に、再度紙幣入出金機1に受け付けさせる必要があることを認識する。そして、係員が真偽判定レベルの変更を指示するためにレベル変更ボタンB1を押すと(ステップ43:YES)、CPU11は変更指示データD1を無指示状態「0」から指示状態「1」に更新し(ステップS44)、変更指示データ更新処理を終了する。
【0035】
図6のステップS3において、CPU11は、入金確定指示または入金取消指示が有ったか否かを判定する。このとき、係員は、返却口4に返却されている紙幣Sを取り出してチェックし、紙幣Sが紙幣入出金機1で取り扱い不可能な紙幣であるかどうかや、紙幣Sが流通過程で傷んでしまったために、真紙幣であるにも拘らず真紙幣と判定されなかった紙幣であるかどうか等を判断する。そして、係員は、取り扱い可能な紙幣であり、流通過程で傷んでしまった真紙幣であると判断した紙幣Sを、紙幣入出金機1に再度受け付けさせるために、入金口3に投入し、投入後、計数ボタンB4を押す。また、係員は、上記以外の判断をした紙幣S、例えば取り扱い不可能と判断した紙幣Sを入金対象から外す。係員によって紙幣Sが入金口3に投入されると、入金口センサ14によって入金口3に紙幣Sが有ることが検知されるので、CPU11は、入金確定指示または入金取消指示が無いと判定して(ステップS3:NO)、ステップS2へ移行し、再度紙幣入金受付処理を図7のフローチャートに従って実行する。
【0036】
図7において、上述したように入金口センサ14の検知出力により入金口3に紙幣Sが有り、かつ、紙幣Sの計数指示が有ったと判断すると(ステップS21:YES)、変更許可データD2が許可状態「1」であるか否かを判定する(ステップS22)。このときは、上述したように最初の紙幣Sの受け付け時にステップS33で変更許可データD2を許可状態「1」に更新したので(ステップS22:YES)、ステップS23へ移行し、変更指示データD1が指示状態「1」であるか否かを判定する。ここでは、上述したように図8のステップS44で変更指示データD1を無指示状態「0」から指示状態「1」に更新したので(ステップS23:YES)、識別部7で有効である真偽判定レベルをレベルAからレベルBへ変更する(ステップS24)。真偽判定レベルの変更後は、変更指示データD1を無指示状態「0」に初期化するとともに、変更許可データD2を不許可状態「0」に初期化して(ステップS25)、ステップS26へ移行する。
【0037】
ステップS26において、入金口3から紙幣Sを一枚繰り出して識別部7へ搬送し、識別部7で真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS27)。このときは、ステップS24で真偽判定レベルがレベルAからレベルBへと変更されたので、レベルAよりも低いレベルBに基づいて識別部7は紙幣Sを識別する。そして、レベルBに基づく真偽判定で紙幣Sが真紙幣と判定され、さらにその紙幣Sが正常と識別されると(ステップS28:YES)、この紙幣Sを識別部7から一時保留部6へ搬送し(ステップS29)、上述したようにステップS34の処理を実行する。
【0038】
一方、識別部7によって紙幣Sが異常であると識別され(ステップS28:NO)、続けて、紙幣Sが真紙幣であると判定されていると(ステップS30:NO)、その紙幣Sを識別部7から返却口4へ搬送して返却する(ステップS32)。なお、ここで返却した紙幣Sには、上述したように取り扱い不可能な紙幣が含まれるので、入金口3の紙幣Sが全て返却口4または一時保留部6に振り分けられた後に、係員によって返却口4から取り出されてチェックされ、入金対象から外される。紙幣Sを返却口4へ返却すると、上述したようにステップS34の処理を実行する。
【0039】
上記に対して、ステップS30において、紙幣Sが偽紙幣と判定されていると(ステップS30:YES)、紙幣Sを識別部7から返却口4へ搬送して返却し(ステップS31)、真偽判定レベルの変更を許可して、変更許可データD2を不許可状態「0」から許可状態「1」に更新する(ステップS33)。なお、ここで返却した紙幣Sには、上述したように流通過程において傷んだために、真偽判定レベルBでは真紙幣と判定できなかった紙幣が含まれるので、入金口3の紙幣Sが全て返却口4または一時保留部6に振り分けられた後に、係員によって返却口4から取り出されてチェックされ、再度入金口3に投入される。変更許可データD2を更新すると、CPU11は上述したようにステップS34の処理を実行する。そして、ステップS34で入金口3の紙幣Sが全てなくなると(ステップS34:YES)、紙幣入金受付処理を終了して、図6のステップS3へ移行する。また、変更許可データD2を更新すると、CPU11は、図8の変更指示データ更新処理において、変更許可データD2が許可状態「1」になったと判定し(ステップS41:YES)、ステップS42〜ステップS44の処理を上述した手順と同様にして実行する。
【0040】
図6のステップS3において、CPU11は、入金確定指示または入金取消指示が有ったか否かを判定する。このとき、係員が返却口4に返却された紙幣Sを紙幣入出金機1に再度受け付けさせるために入金口3に投入すると、上述したようにCPU11は入金確定指示または入金取消指示が無いと判定して(ステップS3:NO)、ステップS2へ移行し、再度紙幣入金受付処理を図7のフローチャートに従って上述した手順と同様にして実行する。なお、その場合は、図7のステップS24で真偽判定レベルを一段階下げるように変更する。ここでは、真偽判定レベルをレベルBからレベルCへ変更する。
【0041】
一方、ステップS3において、係員が入金確定ボタンB2または入金取消ボタンB3を押すと、一時保留部6の紙幣Sに対して入金確定指示または入金取消指示が有ったと判定し(ステップS3:YES)、続けて、その指示はどちらかを判定する(ステップS4)。ここで、指示が入金確定指示であれば、ステップS5へ移行して、紙幣収納処理を実行する。詳しくは、紙幣Sを一時保留部6から一枚ずつ繰り出して識別部7へ搬送し、識別部7で金種を判定した後に、紙幣Sを判定した金種に対応するカセットC1〜C4に収納する。このようにして、一時保留部6の紙幣Sを全てカセットC1〜C4へ収納し、受け付けた紙幣Sに対する処理が完了すると、真偽判定レベルを初期化して初期のレベルAに戻し(ステップS6)、入金時の動作を終了する。
【0042】
ステップS4において、指示が入金取消指示であれば、ステップS7へ移行して、紙幣返却処理を実行する。詳しくは、紙幣Sを一時保留部6から一枚ずつ繰り出して返却口4へ返却する。そして、一時保留部6の紙幣Sを全て返却口4へ返却して、受け付けた紙幣Sに対する処理が完了すると、真偽判定レベルを初期化して初期のレベルAに戻し(ステップS8)、入金時の動作を終了する。
【0043】
以上の手順によると、流通過程で傷んだ真紙幣Sを最初に受け付けたときに、識別部7が当該紙幣Sを偽紙幣で異常であると識別して、それを返却しても、返却した紙幣Sを再度受け付けたときに、真偽判定レベルが下げられているので、当該紙幣Sは識別部7により真紙幣で正常であると識別され、カセットC1〜C4に収納することができる。この結果、従来の紙幣入出金機のように、係員が現金を手元で管理する必要がなくなり、現金を紙幣入出金機1内で安全に管理することができる。また、予備紙幣を用いる必要がなくなり、予備紙幣の扱いに手間と時間がかからず、顧客に対する入金サービスをスムーズに行うことができる。
【0044】
また、特許文献1の紙幣入出金機のように、一度返却した紙幣Sの真偽判定やこれ以外の判定を人間の判断のみに委ねるということはなく、全て識別部7によって判定するので、識別部7による判定に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを正確に識別することができ、偽造紙幣や紙幣入出金機1で取り扱い不可能な紙幣のような異常な紙幣Sが紙幣入出金機1内に混入するのを防止することが可能となる。
【0045】
また、上述の手順では、返却された貨幣を再度受け付けて変更後の真偽判定レベルにより真偽判定を行う毎に、真偽判定レベルA〜Eを順次下げるように変更している。これにより、返却された紙幣Sを繰り返し受け付ける毎に真偽判定レベルを徐々に下げて行くことができ、相当程度傷んだ貨幣であっても、最終的には受け付けて収納することが可能となる。
【0046】
また、上述の手順では、変更指示データD1が真偽判定レベルの変更の指示状態「1」を表し、かつ、変更許可データD2が真偽判定レベルの変更の許可状態「1」を表していることを条件として、真偽判定レベルを下げるように変更している。これにより、紙幣入出金機1側で真偽判定レベルの変更が許可されていなければ、係員がレベル変更ボタンB1を操作しても、真偽判定レベルを下げることができないため、真偽判定レベルが係員によって不用意に変更されるのを防止することができる。
【0047】
また、上述の手順では、レベル変更ボタンB1を発光させて真偽判定レベルの変更が許可されたことを通知している。これにより、紙幣入出金機1で真偽判定レベルの変更が可能な状態になっていて、レベル変更ボタンB1の操作が有効であるということが容易に分かるので、係員は即座にレベル変更ボタンB1を操作して真偽判定レベルの変更を指示し、返却された紙幣Sを紙幣入出金機1に再度受け付けさせることができる。
【0048】
また、上述の手順では、真偽判定レベルを変更した後に、変更許可データD2の許可状態「1」を不許可状態「0」に戻すとともに、変更指示データD1の指示状態「1」を無指示状態「0」に戻している。このようにせずに、変更許可データD2を許可状態「1」および変更指示データD1を指示状態「1」のままにしておくと、その後識別部7によって真紙幣であるが異常であると識別された異常な紙幣Sをもう一度受け付けたときに、指示なく真偽判定レベルを下げて、その下げたレベルで識別部7によって誤った真偽判定が行われてしまう。しかるに、上記のように変更許可データD2と変更指示データD1とを「0」に戻せば、異常な紙幣Sをもう一度受け付けたときに、指示なく真偽判定レベルを下げてしまうことは発生せず、識別部7によって誤った判定が行われることもない。さらに、上述の手順では、受け付けた紙幣Sに対する処理が完了した後に、真偽判定レベルを初期のレベルAに戻している。これにより、次の紙幣Sを受け付けるときに、通常の高い真偽判定レベルAで紙幣Sの真偽判定を行うことができる。
【0049】
以上述べた実施形態においては、係員が紙幣入出金機1の操作部8を操作して、紙幣入出金機1に直接指示を行う場合を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、例えば、紙幣入出金機を上位装置と接続し、係員が上位装置を操作して、上位装置から紙幣入出金機に指示を行うようにしてもよい。
【0050】
図9〜図11は、この場合の実施形態を示す図である。図9は、紙幣入出金機と上位装置とを示す図である。図9において、30は紙幣入出金機であって、図1に示した紙幣入出金機1と略同様の構造をしている。この紙幣入出金機30の操作部38には、図2に示した操作部8が備えるレベル変更ボタンB1や入金確定ボタンB2や入金取消ボタンB3等は備わっていない。40はPC(Personal Computer)から構成される上位装置であって、ケーブルCaで紙幣入出金機30と接続されている。この上位装置40の表示部45には紙幣入出金機30に対して各種の指示をするための画面が表示される。本実施形態では、紙幣入出金機30と上位装置40とは、本発明における貨幣処理装置を構成する。
【0051】
図10は、上位装置40の表示部45に表示される紙幣入金処理用の画面の一例を示す図である。図10において、紙幣入金処理用画面Gは、紙幣Sを紙幣入出金機30に入金するときに表示部45に表示される。Wは入金する紙幣Sの金額等を表示する表示ウインドウである。K1は消灯と点灯とで切り替って表示される真偽判定レベル変更指示キー(以下、レベル変更キーと記す)であって、紙幣入出金機30に備わる識別部37(図11に図示)が紙幣Sの真偽判定を行うための真偽判定レベルの変更を指示する場合に操作される。レベル変更キーK1は、本発明における変更指示手段を構成する。K2は紙幣入出金機30の一時保留部に保留された紙幣Sに対して入金の確定を指示するために操作される入金確定キー、K3は一時保留部に保留された紙幣Sに対して入金の取り消しを指示するために操作される入金取消キー、K4は紙幣入出金機30の入金口に投入された紙幣Sの金額を計数するために操作される計数キー、K5は紙幣入出金機30の状態をリセットするためのリセットボタンである。なお、5つのキーK1〜K5は、画面G上のポインタYを上位装置40のマウスによって移動させて操作することができる。
【0052】
図11は、紙幣入出金機30と上位装置40の電気的構成を示すブロック図である。紙幣入出金機30において、31は紙幣入出金機30の各部を制御するCPU、32はCPU31の動作プログラム等を記録したROM、33はCPU31が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAMである。34は入金口の紙幣を検知する入金口紙幣検知センサ、35は一時保留部の紙幣を検知する保留部紙幣検知センサである。38は前述の操作部であって、紙幣入出金機30の動作状態等を表示する表示部等が備わっている。37は本発明における識別部、36は紙幣入出金機30の内部に備わる搬送ライン(図1のL1〜L3に相当するもの)を駆動するための駆動源であるモータである。
【0053】
39はRAMから構成される格納部であって、所定の領域にレベルテーブルTを格納している。レベルテーブルTは、図4で説明したものと同様のテーブルである。CPU31は、上位装置40から真偽判定レベルの変更が指示されると、レベルテーブルTに表されている識別部37で有効である真偽判定レベルを順次下げるように変更する。そして、受け付けた紙幣Sに対する処理が完了した後に、CPU31は変更した真偽判定レベルを初期のレベルに戻す。CPU31は、本発明におけるレベル変更手段と、レベル初期化手段とを構成する。50は上位装置40と相互に通信するための通信部である。紙幣入出金機30は通信部50によって、上位装置40から真偽判定レベルの変更指示や紙幣Sの入金確定指示および入金取消指示を受ける。また、上位装置40に対して入金時の動作状態や紙幣Sの収納または返却状況、および識別部37によって行われた紙幣Sの真偽判定のような複数の判定結果や紙幣Sが正常であるか異常であるかの識別結果を通知する。
【0054】
次に、上位装置40において、41は上位装置40の各部を制御するCPU、42はCPU41の動作プログラム等を記録したROM、43はCPU41が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAMである。44はマウスやキーボード等から構成される操作部、45は前述の表示部であって、モニタから構成される。47はRAMやハードディスクから構成される格納部であって、所定の領域に変更指示データD1と、変更許可データD2と、図10に示した画面Gの画面データD3とを格納している。変更指示データD1はレベル変更キーK1(図10)からの真偽判定レベルの変更指示が有ったか無かったかを示すデータある。変更許可データD2はCPU41が真偽判定レベルの変更を許可したか否かを示すデータである。なお、CPU41は、識別部37で紙幣Sが偽紙幣であると判定されたことを紙幣入出金機30からの通知により確認したときに、真偽判定レベルの変更を許可する。このようなCPU41は、本発明における変更許可手段を構成する。なお、変更許可データD2で真偽判定レベルの変更の許可が示されると、図10に示したレベル変更キーK1が点灯表示されてそのことを通知する。このようなレベル変更キーK1は、本発明における通知手段を構成する。
【0055】
変更指示データD1が真偽判定レベルの変更指示が有ったことを示し、かつ、変更許可データD2が真偽判定レベルの変更が許可されたことを示すと、CPU41は識別部37で有効である真偽判定レベルの変更の指示を紙幣入出金機30に出す。そして、紙幣入出金機30のCPU31によって真偽判定レベルが変更された後に、CPU41は、変更指示データD1を初期の変更指示が無い無指示状態に戻すとともに、変更許可データD2を初期の変更の許可がされていない不許可状態に戻す。このようなCPU41は、本発明における状態初期化手段を構成する。49は紙幣入出金機30と相互に通信するための通信部である。上位装置40は通信部49によって、紙幣入出金機30から入金時の動作状態や紙幣Sの収納または返却状況、および識別部37によって行われた紙幣Sの真偽判定のような複数の判定結果や紙幣Sが正常であるか異常であるかの識別結果を受ける。また、紙幣入出金機30に対して真偽判定レベルの変更指示や紙幣Sの入金確定指示および入金取消指示を出す。
【0056】
このような構成においても、流通過程で傷んだ真紙幣Sを最初に受け付けたときに、識別部7が当該紙幣Sを偽紙幣で異常であると識別し、それを返却しても、返却した紙幣Sを再度受け付けたときに、真偽判定レベルが下げられているので、当該紙幣Sは識別部7により真紙幣で正常であると識別され、内部に収納することができる。
【0057】
図1〜図8に示した実施形態では、紙幣入出金機1側で真偽判定レベルの変更が許可され、かつ、係員によってレベル変更ボタンB1が操作されて真偽判定レベルの変更が指示された場合に、真偽判定レベルを変更する場合を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、例えば、紙幣入出金機1側だけの判断で真偽判定レベルを変更するようにしてもよい。この場合、識別部7によって異常であると識別された紙幣Sが真偽判定で偽貨幣であると判定されていたことを確認したときに、真偽判定レベルを変更すればよい。
【0058】
また、上記実施形態では、真偽判定レベルをA〜Eのように複数段階設定し、これを順次下げるように変更する場合を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではなく、例えば、初期の真偽判定レベルを100%のレベルとし、これに対して90%のレベル、80%のレベル、70%のレベルというように数値的に徐々に下げるように変更してもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、本発明に係る貨幣処理装置を、紙幣を受け付けて入金または出金する紙幣入出金機とした場合を例に挙げているが、本発明はこれのみに限定するものではなく、これ以外に、硬貨を受け付けて入金または出金する硬貨入出金機や、硬貨と紙幣の両方を受け付ける貨幣入出金機であってもよい。またさらに、駐車場や給油所等に設置され、利用客から預かった貨幣を係員が入金して精算する料金精算装置のようなものであってもよい。つまり、貨幣を受け付けて収納または返却の処理を行う装置であればよい。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、流通過程で傷んだ真貨幣を最初に受け付けたときに、識別部が当該貨幣を偽貨幣で異常であると識別して、それを返却しても、返却した貨幣を再度受け付けたときに、真偽判定レベルが下げられているので、当該貨幣は識別部により真貨幣で正常であると識別され、内部に収納することができる。この結果、係員が現金を手元で管理する必要がなくなり、現金を貨幣処理装置内で安全に管理することができ、また、予備貨幣を用いる必要がなくなり、顧客に対するサービスをスムーズに行うことができる。
【0061】
また、貨幣の真偽判定やこれ以外の判定を全て識別部によって判定するので、貨幣が正常であるか異常であるかを正確に識別することができ、偽造貨幣や貨幣処理装置で取り扱い不可能な貨幣のような異常な貨幣が貨幣処理装置内に混入するのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紙幣入出金機の概略構造を示す図である。
【図2】紙幣入出金機の操作部の詳細を示す図である。
【図3】紙幣入出金機の電気的構成を示したブロック図である。
【図4】真偽判定レベルを表すレベルテーブルを示す図である。
【図5】真偽判定レベルを変更する状況を説明する図である。
【図6】紙幣入出金機の入金時の動作手順を示したフローチャートである。
【図7】紙幣入金受付処理を示したフローチャートである。
【図8】変更指示データ更新処理を示したフローチャートである。
【図9】他の実施形態の紙幣入出金機と上位装置とを示す図である。
【図10】他の実施形態の上位装置で表示される画面の一例を示す図である。
【図11】他の実施形態の電気的構成を示す図である。
【符号の説明】
1 紙幣入出金機
7 識別部
11 CPU
31 CPU
41 CPU
A〜E 真偽判定レベル
B1 真偽判定レベル変更指示ボタン
K1 真偽判定レベル変更指示キー
S 紙幣
Claims (5)
- 受け付けた貨幣を複数の判定項目に基づいて識別し、その識別結果に応じて貨幣の収納または返却の処理を行う貨幣処理装置において、
前記複数の判定項目のうち、全ての判定項目を満足する貨幣を正常であると識別し、少なくとも1つの判定項目を満足しない貨幣を異常であると識別する識別部と、
前記複数の判定項目の1つである貨幣の真偽判定を行うための真偽判定レベルを変更するレベル変更手段と、
前記識別部によって貨幣が異常と識別され、かつ真貨幣と判定された場合は、前記真偽判定レベルの変更を許可せず、前記識別部によって貨幣が異常と識別され、かつ偽貨幣と判定された場合に、前記真偽判定レベルの変更を許可する変更許可手段と、
前記変更許可手段によって真偽判定レベルの変更が許可されたことを通知する通知手段と、を備え、
受け付けた貨幣が、前記識別部により異常でかつ真貨幣と判定された場合は、前記変更許可手段により真偽判定レベルの変更を許可することなく、当該貨幣を返却し、
受け付けた貨幣が、前記識別部により異常でかつ偽貨幣と判定された場合は、当該貨幣を返却するとともに、前記変更許可手段が真偽判定レベルの変更を許可し、当該許可に基づいて、前記通知手段が真偽判定レベルの変更が許可されたことを通知するとともに、前記レベル変更手段が真偽判定レベルを下げるように変更し、返却された当該貨幣が再度受け付けられたときに、変更後の真偽判定レベルにより前記識別部で真偽判定を行うことを特徴とする貨幣処理装置。 - 請求項1に記載の貨幣処理装置において、
前記真偽判定レベルは3段階以上の複数段階に設定されていて、返却された貨幣を繰り返し受け付けて変更後の真偽判定レベルにより真偽判定を行う毎に、真偽判定レベルを前記レベル変更手段によって順次下げるように変更することを特徴とする貨幣処理装置。 - 請求項1または請求項2に記載の貨幣処理装置において、
真偽判定レベルの変更を指示するために操作される変更指示手段を備え、
前記変更許可手段によって真偽判定レベルの変更が許可され、かつ、前記変更指示手段によって真偽判定レベルの変更が指示されると、前記レベル変更手段によって真偽判定レベルを下げるように変更することを特徴とする貨幣処理装置。 - 請求項3に記載の貨幣処理装置において、
真偽判定レベルを変更した後に、前記変更許可手段によるレベル変更許可状態を不許可状態に戻すとともに、前記変更指示手段によるレベル変更指示状態を無指示状態に戻す状態初期化手段を設けたことを特徴とする貨幣処理装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の貨幣処理装置において、
受け付けた貨幣に対する処理が完了した後に、真偽判定レベルを初期のレベルに戻すレベル初期化手段を設けたことを特徴とする貨幣処理装置。
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