JP4310867B2 - シロール共重合体を用いた電界発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シロール共重合体を用いた発光材料、電子輸送材料および電界発光素子(以下、EL素子という)に関する。
【0002】
【従来の技術】
π電子系ポリマーを光機能材料や電子機能材料に応用しようとする試みが多くの研究機関で行われており、その内容は多種多彩である。中でも、ヘテロ5員環を分子内に含むポリマーは、ヘテロ原子の特性に応じてポリマーの物性が異なることから、様々な用途への展開が試みられている。その中で、ヘテロ原子がケイ素であるシロール環を含むポリマーは、ケイ素の特性に由来する電子受容性を示し、新たな材料としての可能性が示されている。例えば、特開平7−300489号公報には、シロール縮重合物が記載されており、光機能性材料、特に、導電性有機材料、非線形光学材料または光応答性材料に使われる可能性が示唆されている。しかしながら、得られている化合物は、2または4量体に限られており、高分子量体に関する記載はない。さらに、実際に、光機能性材料に応用されている記載もなく、その材料としての特性はわかっていなかった。
【0003】
また、特開平6−100669号公報および特開平6−166746号公報には、シロールとチオフェンの共重合体が記載されている。しかしながら、共重合体構成単位の一方はチオフェンに限定されており、他の構造に関する記載はない。材料への応用としては、ヨウ素をドーピングした導電性に関する評価のみがある。さらにまた、特開平8−245653号公報には、シロールとピロールの共重合体が記載されている。しかしながら、実際に、光機能性材料に応用されている記載もなく、その材料としての特性はわかっていない。なお、最近、シロールと種々の芳香環との共重合体が発明者によって日本化学会第76春季年会3B547,1999年で報告されているが、材料への応用については触れられていなかった。
【0004】
一方、EL素子は、2つの電極間に発光層を挟み電圧をかけることによって発光させる素子で、いくつかのタイプがある。例えば、有機化合物からなる発光層を持った有機EL素子、無機蛍光体を挟んだ無機EL素子、陰極電極から電子を放出して蛍光体を発光させる電界放出型素子などがある。これらの中で、ヘテロ5員環を分子内に含むポリマーは、有機EL素子の発光材料もしくは電子輸送材料、または電界放出型素子の電子放出材料もしくは電極などに使われている。
【0005】
これらの中で、最近、特に注目されている有機EL素子は、基本的には2つの電極に電子輸送材料または/および発光材料となる有機化合物を挟んだ構造からなっている。長寿命、低消費電力、高効率な有機EL素子であることが望ましく、いくつかのヘテロ5員環を分子内に含むポリマーが材料として報告されている。例えば、正孔輸送材料として、ポリチオフェン誘導体がDigest of Technical Papers, SID 1999, p.372-375に記載されている。ところが、実際には、報告されているほとんどの材料が欠点を有しており、未だ実用化されたヘテロ5員環を分子内に含むポリマーはほとんど無い。また、多くのヘテロ5員環を分子内に含むポリマーが、電子受容性よりも電子供与性に優れるため、電子輸送材料に用いた例は報告されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この様に、ヘテロ5員環を分子内に含むポリマーは、光電子機能材料への応用が指摘されているにも関わらず、実用化されている例に乏しく、電子受容性に富むものもあまり報告されていなかった。そのため、EL素子をはじめとする光電子機能材料として有効に働く重合体の開発が望まれていた。本発明の目的は、このような課題を解決するために、特定のシロール共重合体およびこれを用いたEL素子を提供することである。
【0007】
【課題を解決する為の手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、特定構造を有するシロール共重合体をEL素子に用いることにより、上記課題を解決し得ることを知り本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は下記のような構成を有するものである。
(1)式(1)で表されるシロール共重合体。
【化2】
(式(1)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基を示し、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はそれぞれフェニル基を示し、Xは2価のチアゾール環基、フェニレン基または2価のピリジン環基を示し、nは1〜50である。)
【0012】
(2)前記(1)項に記載の式(1)で表されるシロール共重合体を用いた電界発光素子。
【0013】
(3)式(1)で表されるシロール共重合体を発光層に用いた、前記(2)項に記載の電界発光素子。
【0014】
(4)式(1)で表されるシロール共重合体を電子輸送層に用いた、前記(2)項に記載の電界発光素子。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるシロール共重合体は、製造方法によって制限されるものではないが、例えば、式(2)で表されるジハロゲノ誘導体と、式(3)で表されるジボロン酸誘導体とを、触媒と塩基の存在下に反応させることにより得られる。
【化3】
【化4】
【0017】
式(2)および式(3)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基であり、その例としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、デシル基などが挙げられる。
【0018】
また、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はそれぞれフェニル基である。
【0019】
式(2)におけるXは2価のチアゾール環基、フェニレン基または2価のピリジン環基を示す。
【0020】
この製造法において用いられる触媒としては、例えば、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム、ジクロロビスジフェニルフォスフィノフェロセンパラジウム、パラジウムカーボン、塩化パラジウム、ジクロロビストリアルキルフォスフィンパラジウム、酢酸パラジウム、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウムなどのパラジウム触媒、ジクロロビストリフェニルフォスフィンニッケル、ジクロロビスジフェニルフォスフィノフェロセンニッケル、ジクロロジフェニルフォスフィノプロパンニッケルなどのニッケル触媒等が挙げられる。
【0021】
塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化バリウム、リン酸カリウム、水酸化カリウム、もしくは水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、用いられる溶媒としては、特に制限はなく、通常、ジメトキシエタン、ジオキサン、ジエチルエーテルあるいはテトラヒドロフラン(以下、THFという)のようなエーテル系、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系、水、アルコール、ジメチルホルムアミド、もしくはこれらの混合溶媒が用いられる。
【0022】
これらの反応は、不活性ガス中で行うことが好ましく、窒素およびアルゴンガスなどが使われるが、大気下でも反応させることは可能である。反応温度は、特に制限はないが、通常、0℃〜200℃程度が好ましい。これらの反応には、特に反応時間に制限はなく、反応が十分に進行している時点で反応を止めればよい。NMRあるいはクロマトグラフィー等の一般的な分析手段により反応を追跡し、最適の時点で反応の終点を決定すればよい。
【0023】
このようにして得られるシロール共重合体の例として、下記の式(4)〜式(6)で表されるものをあげることができる。これらの式において、Phはフェニル基、R1〜R4はそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基を示し、nは1〜50である。また、これらのシロール共重合体の末端基は、上記の製造方法によるときには、ハロゲン原子、−B(OH)2、または水素原子である。
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
本発明の有機EL素子は、基本的には一対の電極(陽極と陰極)間に、前記の式(1)で表されるシロール共重合体を主成分とするシロール共重合体層を挟持した構造を有するものである。
該シロール共重合体を用いて構成した層は、発光層および電子輸送層(正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層)もしくは電極として好適である。また、該シロール共重合体層には、該シロール共重合体以外の材料が添加されていても良い。
【0027】
電界放出型の素子においては、電場をかけたときに電子を放出する材料が求められている。該シロール共重合体からなる材料は、電子親和性に富み、薄膜作成の容易性、高電子輸送性などを併せ持つことにより、電界放出型の素子の電子放出材料として優れている。
【0028】
有機EL素子においては、多くの場合、電子輸送材料となる電子供与性化合物と電子受容性化合物とが用いられており、これらの混合物を添加したり、これらを積層したりして使用されているが、これらは好ましくない電荷移動錯体またはエキサイプレックスを形成することも知られている。しかし、本発明で用いられるシロール共重合体は、ケイ素原子に置換しているアルキル基などが、シロール環に対して上下に配置されているため、電荷移動錯体またはエキサイプレックスを形成しにくい構造となっている。従って、該シロール共重合体を電子受容性化合物として有機EL素子の材料に使用すると、高効率な素子が得られやすい利点を有している。
【0029】
本発明の有機EL素子には、電極間に該シロール共重合体層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層および界面層などを任意に設けても何等差し支えない。
本発明の有機EL素子の具体的な構成としては、
構成(1)陽極/シロール共重合体層/陰極
構成(2)陽極/正孔注入層/シロール共重合体層/陰極
構成(3)陽極/シロール共重合体層/電子注入層/陰極
構成(4)陽極/正孔注入層/シロール共重合体層/電子注入層/陰極
構成(5)陽極/正孔注入層/シロール共重合体層/界面層/陰極
構成(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/シロール共重合体層/電子注入層/陰極
構成(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/シロール共重合体層/電子注入層/界面層/陰極
構成(8)陽極/(シロール共重合体+正孔輸送材料)層/陰極
構成(9)陽極/(シロール共重合体+発光材料+正孔輸送材料)層/陰極
などの積層構造を挙げることができる。
この場合、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層および界面層は、必ずしも必要ではないが、これらの層を設けることにより、発光効率を向上させることができる。特に、正孔注入層および正孔輸送層の導入は、発光効率を大幅に向上させる。
【0030】
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。基板としては、機械的強度、熱安定性および透明性を有するものであればよく、ガラス、透明プラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0031】
本発明の有機EL素子の陽極に用いられる陽極物質としては、4eVより大きな仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を用いることができる。具体例として、Auなどの金属、CuI、インジウムチンオキサイド(以下、ITOという)、SnO2、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
【0032】
また、本発明の有機EL素子の陰極に用いられる陰極物質としては、4eVより小さな仕事関数の金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を使用できる。具体例としては、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム合金、リチウム合金、アルミニウム合金等があり、混合物としてはアルミニウム/リチウム、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウムなどが挙げられる。
【0033】
本発明では、有機EL素子の発光を効率よく取り出すために、電極の少なくとも一方は光透過率を10%以上とすることが望ましい。電極としてのシート抵抗は数百Ω/mm以下とするのが好ましい。なお、膜厚は電極材料の性質にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜400nmの範囲で選定される。このような電極は、上述の電極物質(陽極物質と陰極物質)を使用して蒸着やスパッタリングなどの方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。
【0034】
本発明の有機EL素子の必須構成層である発光層には、前記の式(1)で表されるシロール共重合体が用いられるか、あるいは、該シロール共重合体以外の発光材料が用いられても良い。また、該シロール共重合体と該シロール共重合体以外の発光材料との混合体を用い、該シロール共重合体とは異なる波長の光を発生させたり、さらに発光効率を向上させることもできる。
この様な該シロール共重合体以外の発光材料には、高分子学会編高分子機能材料シリーズ”光機能材料”、共立出版(1991)、P236 に記載されているような昼光蛍光材料、蛍光増白剤、レーザー色素、有機シンチレータ、各種の蛍光分析試薬などの公知物質を挙げることができる。
【0035】
具体的には、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、ルブレン、キナクリドンなどの多環縮合化合物、クオーターフェニルなどのオリゴフェニレン系化合物、1,4-ビス(2-メチルスチリル)ベンゼン、1,4-ビス(4-メチルスチリル)ベンゼン、1,4-ビス(4-メチル-5-フェニル-2-オキザゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(5-フェニル-2-オキサゾリル)ベンゼン、2,5-ビス(5-タシャリー-ブチル-2-ベンズオキサゾリル)チオフェン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン、1,1,4,4-テトラフェニル-1,3-ブタジエンなどの液体シンチレーション用シンチレータ、特開昭63−264692号公報記載のオキシン誘導体の金属錯体、クマリン染料、ジシアノメチレンピラン染料、ジシアノメチレンチオピラン染料、ポリメチン染料、オキソベンズアントラセン染料、キサンテン染料、カルボスチリル染料およびペリレン染料、独国特許2534713号公報に記載のオキサジン系化合物、第40回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、1146(1993)に記載のスチルベン誘導体、特開平7−278537号公報記載のスピロ化合物および特開平4−363891号公報記載のオキサジアゾール系化合物などが好ましい。
【0036】
本発明の有機EL素子の選択的構成層である正孔注入層は、正孔注入材料を用いて得ることができるが、この際、一種以上の正孔注入材料を用いて1層の正孔注入層を得ても良く、異なる数種の正孔注入材料を用いて複数の正孔注入層を得ても良い。
また、本発明の有機EL素子の選択的構成層である正孔輸送層は、正孔輸送材料を用いて得ることができるが、この際、一種以上の正孔輸送材料を用いて1層の正孔輸送層を得ても良く、異なる数種の正孔輸送材料を用いて複数の正孔輸送層を得ても良い。
【0037】
該正孔注入材料および該正孔輸送材料には、光導電材料において、正孔の電子輸送材料として従来から慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用され得る公知物質の中から任意のものを選択して用いることもできる。
【0038】
この様な公知物質としては、例えば、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、トリアリールアミン誘導体(TPD、芳香族第3級アミンを主鎖あるいは側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル(以下、NPDと略記する)、4,4',4''-トリス{N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ}トリフェニルアミン、ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティー・ケミカル・コミュニケーション第2175ページ1996年に記載されている化合物、特開昭57−144558号公報、特開昭61−62038号公報、特開昭61−124949号公報、特開昭61−134354号公報、特開昭61−134355号公報、特開昭61−112164号公報、特開平4−308688号公報、特開平6−312979号公報、特開平6−267658号公報、特開平7−90256号公報、特開平7−97355号公報、特開平6−1972号公報、特開平7−126226号公報、特開平7−126615号公報、特開平7−331238号公報、特開平8−100172号公報および特開平8−48656号公報に記載されている化合物、アドバンスド・マテリアル第6巻第677ページ1994年に記載されているスターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体(日本化学会第72春季年会講演予稿集(II)、1392ページ、2PB098に記載のものなど)、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ポリシランなどが挙げられる。
【0039】
本発明の有機EL素子の選択的構成層である電子注入層は、電子注入材料を用いて得ることができるが、この際、一種以上の電子注入材料を用いて1層の電子注入層を得ても良く、異なる数種の電子注入材料を用いて複数の電子注入層を得ても良い。
また、本発明の有機EL素子の選択的構成層である電子輸送層は、電子輸送材料を用いて得ることができるが、この際、一種以上の電子輸送材料を用いて1層の電子輸送層を得ても良く、異なる数種の電子輸送材料を用いて複数の電子輸送層を得ても良い。
【0040】
該電子注入材料および該電子輸送材料には、前記の式(1)で表されるシロール共重合体を用いることが望ましいが、光導電材料において、電子伝達化合物として従来から慣用されているもの、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用され得る公知物質の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0041】
この様な公知物質としては、例えば、ジフェニルキノン誘導体(電子写真学会誌、30,3(1991)などに記載のもの)、ペリレン誘導体(J.Apply.Phys.,27,269(1988)などに記載のもの)や、オキサジアゾール誘導体(前記文献、Jpn.J.Appl.Phys.,27,L713(1988)、アプライド・フィジックス・レター(Appl.Phys.Lett.),55,1489(1989)などに記載のもの)、チオフェン誘導体(特開平4−212286号公報などに記載のもの)、トリアゾール誘導体(Jpn.J.Appl.Phys.,32,L917(1993)などに記載のもの)、チアジアゾール誘導体(第43回高分子学会予稿集、(III)P1a007などに記載のもの)、オキシン誘導体の金属錯体(電子情報通信学会技術研究報告、92(311),43(1992)などに記載のもの)、キノキサリン誘導体のポリマー(Jpn.J.Appl.Phys.,33,L250(1994)などに記載のもの)、フェナントロリン誘導体(第43回高分子討論会予稿集、14J07などに記載のもの)などを挙げることができる。
【0042】
本発明の有機EL素子に用いることのできる正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料および電子注入材料などは、好ましくはTgが80℃以上のもの、より好ましくはTgが100℃以上のものがよい。
【0043】
本発明の有機EL素子の選択的構成層である界面層としては、陰極からの電子の注入を促進させられるものが好ましく、また陰極への正孔の流れ込みを阻止するものが好ましい。これらは、陰極に用いられる材料との相性によって選択され、その具体例としては、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどが挙げられる。
【0044】
本発明の有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、スピンコート法およびキャスト法などの公知の方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、素材の性質に応じて適宜選定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲で選定される。
【0045】
蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、シロール共重合体の種類、分子累積膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なるが、一般に、ボート加熱温度50〜400℃、真空度10-6〜10-3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選定することが望ましい。
【0046】
次に、本発明の有機EL素子を作製する方法の一例として、前記構成(1)の陽極/シロール共重合体層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着法により形成させて陽極を作製した後、この陽極上にシロール共重合体の薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に陰極物質からなる薄膜を蒸着法により、1μm以下の膜厚になるよう形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、発光層、陽極の順に作製することも可能である。
【0047】
この様にして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すれば良く、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、交流電圧を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0048】
【実施例】
以下に実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
合成例1
<前記の式(4)において、R1およびR2がn−ヘキシル基、R3およびR4がn−ブチル基であるシロール共重合体の合成>
アルゴン気流下、1,1−ジブチル−3,4−ジフェニルシロール−2,5−ジボロン酸(2mmol)、2,5−ビス(5−ブロモ−2−チアゾリル)−1,1−ジヘキシル−3,4−ジフェニルシロール(2mmol)、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウムクロロフォルム付加物(0.1mmol)、トリフェニルフォスフィン(0.4mmol)、炭酸ナトリウム(4mmol)、THF16mlおよび水4mlを混合し、72時間加熱還流した。冷却後、ヘキサン200ml中に注ぎ、不溶物をろ過によって集めた。この不溶物に水40mlとメタノール40mlを加え、10分間超音波に曝した。再びろ過により不溶物を集め、50mlのメタノールで洗浄し、続いて、50mlのヘキサンで洗浄した。THF30mlを用いて、この不溶物からソックスレー抽出し、目的のポリマーを得た。その収率は81%であった。このポリマーのGPCによる重量平均分子量は、31600であった。
1H−NMR(CDCl3)δ=0.65-0.88(m,12H), 0.89-1.47(m,32H), 6.48-6.67(m,8H), 6.78-7.10(m,12H), 7.43(s,2H).
【0050】
合成例2
<前記の式(5)において、R1およびR2がn−ヘキシル基、R3およびR4がn−ブチル基であるシロール共重合体の合成>
合成例1で用いた2,5−ビス(5−ブロモ−2−チアゾリル)−1,1−ジヘキシル−3,4−ジフェニルシロールを、2,5−ビス(p−ブロモフェニル)−1,1−ジヘキシル−3,4−ジフェニルシロールに代えた以外は、合成例1に準ずる方法で合成した。収率は59%であった。このポリマーのGPCによる重量平均分子量は、13600であった。
1H−NMR(CDCl3)δ=0.60-1.04(m,20H), 1.05-1.40(m,24H), 6.58(br s,4H), 6.65-6.78(m,8H), 6.85-7.04(m,16H).
【0051】
合成例3
<前記の式(6)において、R1およびR2がn−ヘキシル基、R3およびR4がn−ブチル基であるシロール共重合体の合成>
合成例1で用いた2,5−ビス(5−ブロモ−2−チアゾリル)−1,1−ジヘキシル−3,4−ジフェニルシロールを、2,5−ビス(5−ブロモ−2−ピリジル)−1,1−ジヘキシル−3,4−ジフェニルシロールに代えた以外は、合成例1に準ずる方法で合成した。収率は65%であった。このポリマーのGPCによる重量平均分子量は、25300であった。
1H−NMR(CDCl3)δ=0.69-0.87(m,12H), 0.90-1.44(m,32H), 6.17(d,2H), 6.56(d,2H), 6.65-6.74(m,4H), 6.75-6.82(m,4H), 6.89-7.14(m,12H), 8.19(br s,2H).
上記の合成例1〜3で得られたシロール共重合体は、いずれも空気中において安定であった。
【0052】
実施例1
25mm×75mm×1.1mmのガラス基板上にITOを蒸着法にて100nmの厚さに蒸着したもの(東京三容真空(株)製)を透明支持基板とした。この透明支持基板をスピンナーの基板ホルダーに固定し、これにN,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(以下NPDと略記する)1重量部、合成例1で得たシロール共重合体1重量部、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(以下、DCMと略記する)0.02重量部、クロロフォルム256重量部の溶液を滴下し、高速で回転させて、均一な薄膜を作成する。これを真空蒸着装置に入れ、基盤ホルダーに固定後、陰極の蒸着源として、マグネシウムを入れたグラファイト製のるつぼ、および銀を入れたグラファイト製のるつぼを装着した。
その後真空槽を2×10-4Paまで減圧し、グラファイト製のるつぼを加熱して、マグネシウムを1.2〜2.4nm/秒の蒸着速度で、同時に銀を0.1〜0.2nm/秒の蒸着速度で蒸着し、有機層の上に150nmのマグネシウムと銀の合金電極を形成することにより、有機EL素子を得た。
ITO電極を陽極、マグネシウムと銀の合金電極を陰極として、直流電圧を印加すると、約1mA/cm2の電流が流れ、輝度約10cd/m2、波長590nmの赤橙色の発光を得た。
【0053】
実施例2
実施例1で用いた合成例1で得たシロール共重合体を、合成例3で得たシロール共重合体に代えた以外は実施例1に準ずる方法で有機EL素子を作成した。
ITO電極を陽極、マグネシウムと銀の合金電極を陰極として、直流電圧を印加すると、約1mA/cm2の電流が流れ、輝度約10cd/m2、波長590nmの赤橙色の発光を得た。
【0054】
【発明の効果】
本発明のシロール共重合体を含む材料は、電子親和性に富み、薄膜作成の容易性、高電子輸送性などの特徴のために、電界発光素子、電子写真、非線形光学素子および導電性材料などの光電子機能材料として有用である。
また、本発明のEL素子は、本発明のシロール共重合体を含む材料を使用しているために、これを用いた場合、低消費電力で長寿命なディスプレイが作成できる。
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