JP4310723B2 - 固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼 - Google Patents

固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は固体酸化物型燃料電池のセパレータに用いられる鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、その発電効率が高いこと、SOx、NOx、Co2の発生量が少ないこと、負荷の変動に対する応答性が良いこと、コンパクトであること等の優れた特徴を有するため、火力発電の代替としての大規模集中型、都市近郊分散配置型、及び自家発電用等の巾広い発電システムへの適用が期待されている。
燃料電池の種類には用いる電解質により、りん酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型に分類されるが、なかでも固体酸化物型燃料電池は電解質として安定化ジルコニア等のセラミックスを用いており、従来、1000℃付近のかなり高温で運転されるものであった。
【0003】
上述の固体酸化物型燃料電池は、高温で運転されるために電極反応に触媒を用いる必要がないこと、高温による化石燃料の内部改質が可能で石炭ガス等の多様な燃料を用いることができること、高温排熱を利用しガスタービン或いは蒸気タービン等と組み合わせ、いわゆるコンバインドサイクル発電とすることにより高効率の発電が可能となること、構成物が全て固体であるためコンパクトであること等の優れた特徴を有し、次世代の電力供給源として非常に有望視されている。
【0004】
しかしながら、固体酸化物型燃料電池の実用化のためには多くの検討課題が残されており、特に高出力密度が可能な平板型燃料電池の場合、重要な構成要素としてセパレータが挙げられる。
このセパレータは電解質、燃料極、空気極の三層を支持し、ガス流路を形成するとともに電流を流す役目を有する。従ってセパレータには、高温での電気伝導性、耐酸化性、更に電解質との熱膨張差が小さいこと等の特性が要求されることから、このような要求特性を鑑み、従来は導電性セラミックスが多く用いられてきたが、セラミックスは加工性が悪くまた高価であることから、燃料電池の大型化、実用化の面から問題を残している。
【0005】
そのため安価で信頼性のある金属材料によるセパレータの開発が要求されている。通常の金属材料を1000℃で使用すると、表面が酸化され酸化被膜を生じるが、セパレータ材として用いるためにはこの酸化被膜が安定で酸化が進行しないことと共に酸化被膜が電気伝導性を有することが必要である。
このような要求特性を満足させるために、特開平6-264193号には固体酸化物型燃料電池用金属材料として、C:0.1%以下、Si:0.5〜3.0%、Mn:3.0%以下、Cr:15〜30%、Ni:20〜60%、Al:2.5〜5.5%、残部Feからなるオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている。
【0006】
また、特開平7-166301号には固体電解質燃料電池のセパレータとして、Fe:60〜82%及びCr:18〜40%に前記単電池の空気極との間の接触抵抗を低減する添加元素(La、Y、CeまたはAlをそれぞれ単独で含有させる)からなる合金を使用することが提案されている。更に、特開平7-145454号には、固体電解質型燃料電池用金属材料としてCr:5〜30%、Co:3〜45%、La:1%以下、残部Feからなる材料が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで最近、固体電解質型燃料電池の改良が著しく進み、運転温度が従来の1000℃付近から700〜950℃程度にまで低下させることが可能となってきた。このため、実用化が早まるものと予想されている。
上記の特開平6-264193号に開示された材料はAlとCrを相当量含むために表面酸化被膜はAl系酸化物を主体とし、これにCr系酸化物を含有したものである。しかしながら後述するようにAl系酸化物は、電気伝導率が低いために固体電解質型燃料電池セパレータ用としては必ずしも十分といえない面があり、またオーステナイト系ステンレス鋼は、電解質の安定化ジルコニアに比較して熱膨張係数が大きいため電池の起動、停止に伴う熱サイクルによる電解質の割れ等による電池の性能低下を起こしやすく、長時間使用における安定性に問題がある。更に高価なNiを多く含むために価格的にも高く、燃料電池の実用化のためには不十分である。
【0008】
これに対して、特開平7-166301号及び特開平7-145454号に開示された材料は、オーステナイト系ステンレス鋼に比較して熱膨張係数が低く、電解質の安定化ジルコニアの熱膨張係数に近いため長時間使用における安定性に有利であり、また電気伝導率も良好である。しかし、長時間使用後の耐酸化性が不十分であり、特に酸化層の増大に伴う剥離現象を助長し、電池内のガス流路となるセパレータに設けた溝を狭めて、電池機能を低下させる問題がある。
また、特開平8-35042号及び特開平8-277441号に開示された材料は、オーステナイト系ステンレス鋼に比較して熱膨張係数が低く、電解質の安定化ジルコニアの熱膨張係数に近いため長時間使用における安定性に有利であるが、セパレータ材の特性として重要な電気伝導率については何ら考慮されていない。
【0009】
また、特開平9-157801号及び特開平10-280103号に開示された材料もまた、1000℃までの熱膨張係数が低く、電解質の安定化ジルコニアの熱膨張係数に近いため長時間使用における安定性に有利であり、また1000℃での耐酸化性、電気伝導率も良好である。
しかしながら、以上説明する公知の材料は、何れも1000℃で作動する固体酸化物型燃料電池のセパレータとして良好な特性を得ることを目的に開発されたものであり、最近の固体酸化物型燃料電池の作動温度である700〜950℃程度での特性は何ら考慮されていない。
【0010】
また、固体酸化物型燃料電池は運転と停止を繰り返すことから、構成部品のセパレータには熱サイクルによる応力が作用する。この熱応力のために、特に常温での衝撃特性が低いと破断することが心配されるので、セパレータ用鋼には熱応力に耐えるだけの衝撃特性が必要であるが、以上説明した公知の材料には、常温での衝撃特性が何ら考慮されていない。
本発明の目的は、700〜950℃程度において良好な電気伝導性を有する酸化被膜を形成するとともに、長時間の使用においても良好な耐酸化性、特に耐剥離性を有し、かつ常温での衝撃特性に優れ、電解質との熱膨張差が小さい安価な固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は種々検討の結果、まず対象とする金属材料をフェライト系とした。この理由の第一は、固体酸化物の電解質である安定化ジルコニアの常温から約750℃までの平均熱膨張係数が約11×10-6/℃に対し、通常のオーステナイト系の金属材料では約16×10-6/℃以上であり、両者の熱膨張差が大きいため長時間使用中の安定性に問題があると考えたためである。
第二の理由は一般にオーステナイト系は高価なNiを含むため高価であることに対し、フェライト系はFeをベースとしNiを含まないか、または含んでも少量であるため安価であることである。
【0012】
次に本発明者は、形成される酸化被膜の電気伝導度について種々検討した。
保護性を有する酸化被膜の代表としてはAlの酸化物とCrの酸化物が知られている。700〜950℃付近の高温になると一般にはAl2O3の方が保護作用が大きく有利であるが、Al2O3被膜形成材の電気抵抗を測定してみると非常に大きく、セパレータとしては使用できないことが分かった。
一方、Cr2O3被膜形成材の電気抵抗は、十分小さくセパレータに使用可能であることが分かった。そこで本発明においては表面にCr系酸化物を主体とする酸化被膜を形成するフェライト系金属材料、すなわちFe-Cr系を基本とした。
【0013】
次に、長時間使用する場合に問題となる耐酸化性であるが、前述のように700〜950℃付近においては通常Cr系酸化被膜の耐酸化性はAl系酸化被膜より劣る。また、Cr系酸化被膜を主体とする場合でもNiベースの合金(例えばJIS NCF600に代表されるNi-Cr合金)よりもFeベースの合金(例えばSUS430のようなFe-Cr合金)の方が耐酸化性は劣っている。
従って、上記方針に従ってFe-Cr系を基本とすると耐酸化性を満足させることは非常に困難になる。
【0014】
本発明者はこれを解決するために種々検討した結果、Fe-Cr系にY、希土類元素、Zrの一種または二種以上の添加に加え、Alを低めに抑え、更にSi、Mnを少量添加することにより、Cr系の酸化被膜を主体としながら、良好な耐酸化性、特に耐剥離性が得られ、長時間加熱後も被膜の形成状態が安定することを見出した。
特にY及び/または希土類元素にZrを複合添加した場合に耐剥離性は最も向上する。また上記各元素の添加を行っても、形成される酸化被膜はCr系酸化被膜が主体なので電気抵抗もさほど大きくなることはないことも知見した。
【0015】
更に、良好な耐酸化性を得るのに有効な元素であるY、希土類元素、Zrは、合金中のS、Oが多いと硫化物や酸化物を形成して介在物になりやすい。Y、希土類元素、Zrが介在物となって固定されてしまうとマトリックス中に固溶するY、希土類元素、Zrの量が減少し、酸化膜の成長抑制、緻密化、密着性向上に寄与できる有効量が減少する。従って、添加したY、希土類元素、Zrを有効に作用させるためにはこれらの元素の介在物をできるだけ少なくすることが有効であり、S、O等の不純物元素を低く抑えることが良好な耐酸化性を維持するために必要であることを見出した。
また、N、Bについても耐酸化性維持に有効な元素の一部、例えばLa等と化合物を形成する可能性があることから、不純物として低く抑えることが有効であることを見出した。また、特にBは酸化膜表面の平滑性を害して接触抵抗を低下させることを新たに見出し、接触抵抗の点からもセパレータ用鋼中のBは不純物として低く抑える必要がある。
また、Tiも耐酸化性を低下させる元素であるため、不純物として低く抑える必要がある。
【0016】
また、セパレータ用鋼素材の鋼をセパレータに加工するには、硬さを下げることが必要であり、そのためには適正な焼鈍を行うことが必要である。この焼鈍は、硬さ調整のみならず、フェライト結晶粒径の調整にも有効であり、適正な細粒組織とすることによって、衝撃特性も向上させることができる。
以上のように、合金成分の調整を行うとともに、熱処理条件、組織、機械的特性を適正化することによって、本発明に到達した。
【0017】
すなわち本発明の第1発明は、質量%にて、C:0.2%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、Ni:2%以下、Cr:15〜30%、Al:1%以下、La:0.005〜0.1%、Zr:1%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.015%以下、O:0.010%以下、N:0.050%以下、B:0.0030%以下に制限し、かつ(1)式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
(O+2S)/(0.035Zr+0.16La)≦2.0…(1)
(1)式の元素は質量%である。
【0018】
本発明の第2発明は、質量%にて、C:0.1%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、Cr:17〜26%、Ni:1%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、Zr:0.01〜0.8%、La:0.005〜0.8%を含み、残部はF及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.015%以下、O:0.010%以下、N:0.020%以下、B:0.0030%以下に制限し、かつ(1)式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
【0019】
本発明の第3発明は、質量%にて、C:0.1%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:0.2%未満(0%を含まず)、Cr:17〜26%、Ni:1%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、Zr:0.01〜0.8%、La:0.005〜0.8%を含み、残部はF及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.015%以下、O:0.010%以下、N:0.020%以下、B:0.0030%以下に制限し、かつ(1)式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
【0020】
本発明の第4発明は、上述の合金に、更にY:0.01〜0.3%を含有し、かつ(2)式を満足する固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
(O+2S)/(0.27Y+0.035Zr+0.16La)≦2.0…(2)
【0021】
本発明の第5発明は、質量%にて、C:0.08%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:0.5%以下(0%を含まず)、Cr:18〜25%、Ni:0.5%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、La:0.005〜0.1%、Zr:0.01〜0.6%、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.008%以下、O:0.008%以下、N:0.020%以下、B:0.0020%以下に制限し、かつ()式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である
【0022】
本発明の第6発明は、質量%にて、C:0.08%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:0.5%以下(0%を含まず)、Cr:18〜25%、Ni:0.5%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、La:0.005〜0.1%、Zr:0.01〜0.6%、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.008%以下、O:0.008%以下、N:0.020%以下、B:0.0010%未満に制限し、かつ()式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.3以上の細粒である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である
【0023】
好ましくは、質量%にて、Mo単独またはMoとWの二種を、Mo+1/2W≦5.0%を含む固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
更に好ましくは、質量%にて、V、Nb、Hfの一種または二種以上を合計で0.01〜1.0%含む固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
【0024】
更に好ましくは、20℃での2mmVノッチシャルピー衝撃値が8J/cm以上である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
また更に好ましくは、20℃での2mmVノッチシャルピー衝撃値が10J/cm以上である固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
更に好ましくは、750℃で1000Hr加熱した後の750℃における酸化被膜の電気抵抗が100mΩ・cm以下であり、更に850℃で100Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が発生しない固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
また更に好ましくは、750℃で1000Hr加熱した後の750℃における酸化被膜の電気抵抗が50mΩ・cm以下であり、更に850℃で100Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が実質的に発生しない固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
また本発明は、前述の第1から第3、第5、第6発明の何れかの組成に、合計で0.005〜0.1%のLaとLa以外の希土類元素(REM)を更に含有し、かつ(3)式を満足する固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼である。
(O+2S)/(0.035Zr+0.16REM)≦2.0…(3)
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明における成分限定理由について述べる。
Cは、炭化物を形成して高温強度を増大させる作用を有するが、逆に加工性を劣化させまたCrと結び付くことにより耐酸化性に有効なCr量を減少させる。従って0.2%以下に限定する。望ましくは、0.1%以下、更に望ましくは0.08%以下である。
【0026】
Siは、セパレータに設けた高温ガスの流路となる溝の内面に、Cr系酸化層を主体とする被膜の形成に関与し、長時間の使用においても形成した酸化被膜が必要以上に成長したり、また剥離現象を起こすのを防ぐ効果を有する元素である。
Siの効果の一つには、恐らくCr2O3酸化被膜と母材の界面付近に薄い不連続なSiO2被膜を形成して耐酸化性を向上させるものと考えられる。
【0027】
また、上記SiO被膜は母材とCr被膜の界面において母材、Cr被膜、SiO被膜が細かくからみ合った状態を形成しており、これによって母材との密着性を高め、Cr被膜の剥離を阻止する効果がある。
このような効果は特に1000℃以上の高温において大きく、700〜950℃では必ずしも大きくないが、上記効果を得るためにはSiを少量添加することが必要である。
一方、過度の添加は加工性、靭性の低下を招くとともにSiO被膜が厚くなりすぎ、連続して酸化被膜の剥離を招いたり、被膜の電気伝導度が低下する問題が生じるので、Siは0.2%未満(0%を含まず)とする。
【0028】
Mnは、Fe、Crとともにスピネル型酸化物を形成する。Mnを含むスピネル型酸化物層は、Cr2O3の酸化層の外側に形成される。このスピネル型酸化物層は固体酸化物型燃料電池のセラミックス電解質を劣化させるCrがセパレータ用鋼から蒸発するのを防ぐ保護効果を有する。また、このスピネル型酸化物は、通常Cr2O3に比べると酸化速度が大きいので、耐酸化性そのものに対しては不利に働く一方で、酸化被膜の平滑さを維持して接触抵抗を低下させたり、電解質に対して有害なCrの蒸発を防ぐ効果を有している。
一方、過度に添加すると前述のようにMn含有のスピネル型酸化物自体の耐酸化性不足のため耐酸化性が悪くなる。従って、Mnは1%以下(0%を含まず)に限定する。使用温度が700〜950℃程度の低温の場合には、0.5%以下(0%を含まず)としてもよく、更に使用温度が低い場合には0.2%未満(0%を含まず)としてもよい。
【0029】
Crは、本発明においてCr2O3被膜の生成により、耐酸化性及び電気伝導性を維持するために重要な元素である。そのため最低限15%を必要とする。しかしながら過度の添加は耐酸化性向上にさほど効果がないばかりか加工性の劣化を招くので15〜30%に限定する。望ましいCrの範囲は17〜26%、更に望ましいCrの範囲は18〜25%である。
【0030】
Y、希土類元素(REM)、Zrは、少量添加により耐酸化性及び酸化皮膜の電気伝導度を大幅に改善する効果を有する。特に少量のSi、Mn添加と組み合わせた場合の耐酸化性向上効果が大きく、これは主に酸化被膜の密着性を改善することによると考えられる。
本発明においてはCr系酸化被膜のみで耐酸化性を持たせているが、このCr系酸化被膜の密着性を向上させるために、希土類元素(REM)のうち、Laと、Zrの複合添加を必須とし、更に必要応じて、LaとLa以外の希土類元素、を必要に応じて0.005〜0.1%含有しても良い。しかしながら過度の添加は熱間加工性を劣化させるので、Yは0.%以下、希土類元素(REM)は0.%以下、Zrは1%以下に限定する。望ましくは、Y:0.01〜0.3%、希土類元素(REM):0.005〜0.10%、Zr:0.01%〜0.8%である。
【0031】
更に、Y:0.01〜0.3%と、Laを必須とする希土類元素(REM):0.005〜0.10%の一種または二種以上とZr:0.01%〜0.8%を複合で添加すると、酸化皮膜の密着性がより向上し、長時間加熱後においても酸化被膜の剥離を防止できる。更に望ましくは、Laを必須とする希土類元素(REM):0.005〜0.10%とZr:0.01%〜0.8%の複合添加である。希土類元素の中では、Laが最も酸化被膜の密着性向上に効果があることから、本発明ではLa:0.005〜0.1%とZr:1%以下とを必須で複合添加する。La:0.005〜0.10%とZr:0.01%〜0.6%の複合添加が最も望ましい。
なお、Zrは後述のV、Nb、Ta、Hfと同様、Cと結びついて炭化物を形成し、C固定により加工性を向上させ、また強度向上にも寄与する。
【0032】
Niは、本発明鋼に少量添加することにより靭性の向上に効果が有る。しかしNiはオーステナイト生成元素であり、過度の添加はフェライト−オーステナイトの二相組織となり、熱膨張係数の増加及びコストアップを招く。更に過度のNiの添加は耐酸化性を悪くする。従ってNiは2%以下に限定する。望ましくは1%以下、更に望ましくは0.5%以下である。
【0033】
Alは、通常脱酸剤として添加される。Alを多く添加するとAl2O3被膜が形成されるが、前述のようにAl2O3被膜は耐酸化性に対しては有効であるが、酸化被膜の電気抵抗を増大させる。従って、本発明の場合Al2O3被膜の形成を避けるためにAlは1%以下に限定する。望ましくは0.001%以上0.5%未満である。
【0034】
Moは、特に高温強度を増加させる作用を有するので、高温強度を重視する場合には添加してもよい。WもMoと同様の効果を有するが、Moと同じ効果を発揮するためには質量%でMoの二倍の添加が必要である。Wの多量添加は熱間加工性を害することから、WはMoとの複合添加を行い、MoとWの総量を低く抑える必要がある。このように、過度に添加すると加工性を劣化させるだけでなく、耐酸化性も低下させるので、Mo+1/2Wで5%以下に限定する。望ましくは3%以下である。
【0035】
V、Nb、Hfは、Cと結び付いて炭化物を形成し、C固定により加工性を向上させる。また強度向上にも寄与する一方で、700〜900℃付近においてはHfを除き、余り保護性のない酸化物を形成し耐酸化性を劣化させる。
上記のHfは、耐酸化性にも効果を有するため、これらの元素の中では最も好ましいが、高価であるため必要に応じて選択する。また、V、Nb、Hfの元素の過度の添加は、一次炭化物を多く形成して加工性を劣化させる。従って、加工性、強度、耐酸化性を考慮しながら、V、Nb、Hfは一種または二種以上を合計で0.01〜1.0%の範囲で添加しても良い。望ましくは0.03〜0.6%である。
【0036】
次に不可避的不純物元素の限定理由について述べる。
Tiは、内部酸化相を形成することで耐酸化性を劣化させる元素であるため、不純物として、0.1%以下に限定する。
Sは、Mn、希土類元素(REM)等と硫化物系介在物を形成して、耐酸化性に効果をもつ有効な希土類元素量を低下させ、耐酸化性を低下させるだけでなく、熱間加工性、表面肌を劣化させるため、0.015%以下に限定する。望ましくは、0.008%以下がよい。
Oは、Al、Si、Mn、Cr、Y、希土類元素(REM)、Zr等と酸化物系介在物を形成して、熱間加工性、冷間加工性を害するだけでなく、耐酸化性向上に大きく寄与する元素であるY、希土類元素(REM)、Zr等の固溶量を減少させるため、これらの元素による耐酸化性向上効果を減じる。従って、0.010%以下に制限する。望ましくは、0.008%以下がよい。
【0037】
Nは、オーステナイト生成元素であるため、本発明のFe-Cr系フェライト鋼に過剰に添加するとオーステナイト相を生成してフェライト単相を維持できなくするだけでなく、Al、Cr等と窒化物系介在物を形成して熱間、冷間加工性を害するため、0.050%以下に制限する。望ましくは0.020%以下、更に望ましくは0.010%以下がよい。
Bは、約700℃以上の高温で酸化被膜の成長速度を大きくすることで耐酸化性を劣化させるだけでなく、酸化被膜の表面粗さを大きくして酸化被膜と電極との接触面積を小さくすることによって接触抵抗を劣化させるため、不純物として0.0030%以下に制限し、できるだけ0%まで低減させる方が良い。望ましい上限は0.0020%以下がよく、更に望ましくは0.0010%未満がよい。
【0038】
本発明鋼において、特に耐酸化性及び酸化皮膜の電気伝導度の向上に大きな効果を有するY、希土類元素(REM)、Zrが十分効果を発揮するには、これらの元素が硫化物系介在物や酸化物系介在物に完全に固定されないようにする必要がある。そのためには、(1)〜(3)式に示すようにZrとLa、または、Y、Zr、La、または、ZrとLaを必須とした希土類元素(REM)の添加量に対するSとOの量の比率を低く抑えるのが有効である。
(1)〜(3)式の値が2.0を超えるとY、Zr、希土類元素(REM)が介在物の固定されて耐酸化性及び酸化皮膜の電気伝導度向上に寄与しなくなることから、(1)〜(3)式の値は2.0以下とした
【0039】
なお、以下の元素は下記の範囲内で本発明鋼に含まれても良い。
P≦0.04%、Cu≦0.30%、Mg≦0.02%、Ca≦0.02%、Co≦2%
【0040】
次に、上述した組成を有する鋼を用いて、固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼とするには、冷間塑性加工や機械加工によってガス流路を形成する必要があるため、冷間塑性加工や機械加工が容易にでき、しかも熱サイクルに伴う引張り応力によって、鋼に割れが発生しないだけの衝撃特性が重要となる。
この指標として本発明では硬さと結晶粒度及び衝撃特性を用いて規定した。
本発明の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼に必要な特性である硬さ、結晶粒度、衝撃特性は、合金組成のみで決まるものではなく、素材の塑性加工方法、焼鈍等の熱処理条件等に強く依存するので、固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼として使用するためには、化学成分のみならず、硬さ、結晶粒度、衝撃特性なども合わせて本発明の規定範囲を満足させることが重要である。
【0041】
上述の硬さ、結晶粒度、衝撃特性を満足させるには、素材製造工程で発生して材料中に残存する加工歪を除去するため、焼鈍を行うとよい。焼鈍温度は、950℃より高温では後述する結晶粒が粗大化し、また、650℃より低温では軟化に長時間を要するだけでなく、650℃より低温であまり長時間焼鈍するとσ相が析出して脆化する可能性があることから、焼鈍温度は、650〜950℃の範囲とするとよい。
なお、焼鈍の保持時間は、高温では結晶粒を粗大化させないように短時間で行うのがよく、一方、低温では硬さを低下させるのに長時間を要するため、保持時間は結晶粒度と硬さの関係から適宜選択できる。
【0042】
焼鈍後の硬さが280HVより高いと、これらの加工に時間を要したり、形状精度が低下したりすることから、硬さは280HV以下とした。望ましくは200HV以下である。また、この硬さの範囲内であれば、焼鈍後の熱歪による変形を修正するために、焼鈍後に冷間圧延等の冷間加工を行ってもよい。
【0043】
本発明の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼は、約700℃以上の使用温度で使用されるものであるが、燃料電池は運転と停止を繰り返し行うことから、セパレータ用鋼は使用温度と常温の間での加熱、冷却の熱サイクルを繰り返し受ける。特に冷却中に引張応力が作用するので、冷却時に割れないようにするためには常温での衝撃特性が良好であればよい。
本発明の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼のようなフェライト組織の鋼で、良好な衝撃特性を得るためには、フェライト結晶粒を微細化することが有効である。後述する衝撃特性を得るためには平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒とすることが必要である。望ましくは平均フェライト結晶粒度がASTM No.3以上の細粒がよい。
衝撃特性は、20℃での2mmVノッチシャルピー衝撃値で評価することができ、衝撃値が8J/cm2以上であればよく、望ましくは、10J/cm2以上がよい。
【0044】
次に、本発明の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼では、特に700〜950℃の温度範囲で優れた電気抵抗を有する。そのため、その優れた電気抵抗を示す指標として以下のように規定した。
電気伝導性を評価する評価手段として、750℃で1000Hr加熱した後の750℃における酸化被膜の電気抵抗が100mΩ・cm2以下、望ましくは50mΩ・cm2以下であることが重要である。
また、長期使用後において、形成されたCr系酸化被膜の酸化が進行して、表面酸化スケールとなって剥離する現象の評価手段として、850℃で100Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が実質的に発生しないことが重要である。なお、「表面酸化スケールの剥離が実質的に発生しない」とは、スケールの自然剥離がないことを指し、外的衝撃が加わらない状態をいう。
【0045】
また、本発明鋼は、固体酸化物型燃料電池セパレータに好適な材料であり、鋼板、鋼帯に加工される場合が多いが、その他の固体酸化物型燃料電池用部品または本発明鋼の特性が生かせるその他用途の部品に、棒鋼、線材、粉末、粉末焼結体、多孔質体、鋼箔、等の種々の形状に加工して使用することが可能である。
【0046】
【実施例】
(実施例1)
本発明鋼及び比較鋼を真空誘導炉にて溶製し10kgのインゴットを作製した。
真空溶解時には、不純物元素を規定内に低く抑えるために、純度の高い原料を選定するとともに炉内雰囲気等操業条件を制御してTi、S、O、N、B等の混入、残存を抑制した。但し、比較鋼の一部については、不純物元素の影響を調べるため、あえてこれらの考慮をしなかった。
その後、1100℃に加熱して30mm角の棒材に鍛伸し、780℃で1時間の焼鈍を行った。表1及び表2に本発明鋼No.1〜23、比較合金No.31〜40の化学組成を示す。なお表2において、比較鋼No.40はJIS NCF600として知られているオーステナイト系合金である。
なお、表に示す式の値は、ZrとLaの複合添加合金は(1)式、Y、Zr、Laの複合添加合金は(2)式、ZrとLaを必須とした希土類元素(REM)の複合添加合金は(3)式で計算した値である。
また、表中でLaを必須添加していない合金については、以下に示す式にて計算を行なった。
(O+2S)/(0.27Y+0.035Zr+0.16REM)≦2.0
式の元素は質量%であり、上記式中のY、Zr、希土類元素(REM)のうち無添加の元素については0として計算した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
これらの素材から試験片を切り出し各種試験を行った。
まず、これらの鋼の縦断面の光学顕微鏡組織観察を行い、平均フェライト結晶粒度を測定した。また、2mmVノッチシャルピー試験片を採取し、2mmVノッチシャルピー衝撃試験を20℃で行い、衝撃値を求めた。更に直径10mm、長さ20mmの円柱状試験片を用いて、大気中で850℃×100Hr及び750℃で1000Hrの加熱処理を行った後、表面酸化スケールの剥離量を測定した。
また10mmW×10mmL×3mmtの板状試料を用いて、大気中750℃で1000Hr加熱を行って表面に酸化被膜を形成させた後、750℃における電気抵抗を測定した。なお電気抵抗は面積抵抗(mΩ・cm2)で表した。
また、30℃から750℃までの平均熱膨張係数を測定した。これらの試験結果をまとめて表3及び表4に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表3より、本発明鋼は何れも焼鈍後の硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上であり、また、2mmVノッチシャルピー衝撃値も8J/cm2以上の値を有しており、シャルピー衝撃値が10J/cm2以上のものもある。
表3より本発明鋼は大気中750℃×1000Hr及び850℃×100Hr加熱後のスケールの剥離は全く観察されない。
また、本発明鋼は、大気中750℃で1000Hr加熱を行って表面に酸化被膜を形成させた後に750℃において測定した電気抵抗の値は十分小さい。これは、主に表面に薄い緻密なCr2O3被膜を形成しているためと考えられる。
更に、本発明鋼は、30〜750℃までの平均熱膨張係数が約11×10-6/℃台と小さく、固体電解質である安定化ジルコニアに近い。
【0053】
一方、表4より比較鋼No.31はCr量が少ないため剥離量が多く、長時間使用に耐えないことがわかる。比較鋼No.32は、Cr量が多いため、750℃ではスケール剥離が観察されないが、850℃では少量のスケール剥離が観察される。
比較鋼No.33はAlを3%以上含むためAl2O3被膜を形成し、電気抵抗の値は本発明鋼の値よりはるかに大きい。また比較鋼No.34はSiが高く、おそらく厚いSiO2被膜が形成されていると思われ、電気抵抗の値が高い。
また、比較鋼No.35、36は、O量が多かったり、Zr、Y、希土類元素(REM)の添加量が少なかったりするために式(1)の値が大きくなり、耐酸化性に効果のあるZr、Y、希土類元素(REM)の効果が十分発揮できず、スケールの剥離が観察され、また電気抵抗も高くなっている。
【0054】
比較鋼No.37は、Bを多く含むため、緻密な酸化スケールが形成されず、一部剥離するとともに電気抵抗も高くなっている。また、比較鋼No.38は、Sを多く含み、そのため式(1)の値が大きくなり、耐酸化性に効果のある希土類元素(REM)等の効果が十分発揮できず、スケールの剥離が観察され、また電気抵抗も高くなっている。
比較鋼No.39は、Tiを多く含み、かつ上述した式の値が大きいためにスケールの剥離が観察され、また電気抵抗も高い。比較鋼No.40は、酸化スケール剥離も観察されず、電気抵抗も低かったが、オーステナイト系Ni基合金であるため、熱膨張係数が非常に大きくなった。
【0055】
参考例No.3、本発明鋼No.5、23及びBを含む比較鋼No.37を1000℃で100時間加熱した後の酸化被膜の断面顕微鏡写真とその模式図を図1〜4に示す。
図1〜3に示すように、本発明鋼は酸化被膜(1)の表面が平滑であり、かつマトリックス(2)が酸化被膜内に入り込んでいるため密着状態が良好であるのに対し、図4に示すBを含む比較鋼No.37の酸化被膜(1)の表面は凹凸が激しく平滑でない上に、酸化被膜内にマトリックス(2)の食い込みがないことがわかる。このため、Bを含む比較鋼は、接触抵抗が高くなるだけでなく、酸化被膜の密着性も良くないと考えられるので、Bは不純物として極力低く抑えることが重要である。
【0056】
(実施例2)
参考例No.1〜3、本発明鋼No.4、5について、熱間鍛造後、熱間圧延によって厚さ5mmの板形状に仕上げ、780℃で1時間の焼鈍を行った。また、更に冷間加工と焼鈍を繰り返し行い、厚さ1mmと0.3mmの板形状に仕上げ、それぞれ850℃で3分及び2分の焼鈍を行った。これらの鋼の縦断面の光学顕微鏡組織観察を行い、結晶粒度を測定した。
また、焼鈍温度を変えて焼鈍を行った30mm角の鍛造材及び厚さ5mmの熱間圧延材について、2mmVノッチシャルピー衝撃試験を20℃で行い、衝撃値を求めた。
これらの結果をまとめて表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
何れも硬さは280HV以下、平均フェライト結晶粒度はASTM No.3以上であり、特に冷間圧延工程で作製した厚さ1mm及び0.3mmの板材ではASTM No.8〜9及びNo.9〜10程度と非常に細かい。また厚さ5mmの板材の2mmVノッチシャルピー衝撃値は10J/cm2以上であり、衝撃特性も良好である。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように本発明鋼を固体電解質型燃料電池のセパレータに用いることにより、700〜950℃付近において良好な電気伝導性を有する酸化被膜を形成すると共に、長時間の使用においても良好な耐酸化性、特に耐剥離性を有し、かつ電解質との熱膨張差が小さく、燃料電池の低コスト化及び高性能化を図ることができることから、比較的低温の700〜950℃程度で作動する固体電解質型燃料電池の実用化、高効率化、大型化に大きく寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼の断面顕微鏡写真である。
【図2】本発明の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼の断面顕微鏡写真である。
【図3】本発明の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼の断面顕微鏡写真である。
【図4】比較鋼の断面顕微鏡写真である。

Claims (13)

  1. 質量%にて、C:0.2%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、Ni:2%以下、Cr:15〜30%、Al:1%以下、La:0.005〜0.1%、Zr:1%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.015%以下、O:0.010%以下、N:0.050%以下、B:0.0030%以下に制限し、かつ(1)式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.035Zr+0.16La)≦2.0…(1)
    (1)式の元素は質量%である。
  2. 質量%にて、C:0.1%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:1.0%以下(0%を含まず)、Cr:17〜26%、Ni:1%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、Zr:0.01〜0.8%、La:0.005〜0.8%を含み、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.015%以下、O:0.010%以下、N:0.020%以下、B:0.0030%以下に制限し、かつ(1)式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.035Zr+0.16La)≦2.0…(1)
    (1)式の元素は質量%である。
  3. 質量%にて、C:0.1%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:0.2%未満(0%を含まず)、Cr:17〜26%、Ni:1%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、Zr:0.01〜0.8%、La:0.005〜0.8%を含み、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.015%以下、O:0.010%以下、N:0.020%以下、B:0.0030%以下に制限し、かつ(1)式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.035Zr+0.16La)≦2.0…(1)
    (1)式の元素は質量%である。
  4. 更にY:0.01〜0.3%を含有し、かつ(2)式を満足することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.27Y+0.035Zr+0.16La)≦2.0…(2)
  5. 質量%にて、C:0.08%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:0.5%以下(0%を含まず)、Cr:18〜25%、Ni:0.5%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、La:0.005〜0.1%、Zr:0.01〜0.6%、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.008%以下、O:0.008%以下、N:0.020%以下、B:0.0020%以下に制限し、かつ()式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.2以上の細粒であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.035Zr+0.16La)≦2.0…(
  6. 質量%にて、C:0.08%以下、Si:0.2%未満(0%を含まず)、Mn:0.5%以下(0%を含まず)、Cr:18〜25%、Ni:0.5%以下、Al:0.001%以上0.5%未満、La:0.005〜0.1%、Zr:0.01〜0.6%、残部はFe及び不可避的不純物でなり、不可避的不純物として、Ti:0.1%以下、S:0.008%以下、O:0.008%以下、N:0.020%以下、B:0.0010%未満に制限し、かつ()式を満足する鋼からなり、硬さが280HV以下、平均フェライト結晶粒度がASTM No.3以上の細粒であることを特徴とする固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.035Zr+0.16La)≦2.0…(
  7. 質量%にて、Mo単独またはMoとWの二種を、Mo+1/2W≦5.0%を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  8. 質量%にて、V、Nb、Hfの一種または二種以上を合計で0.01〜1.0%含むことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  9. 20℃での2mmVノッチシャルピー衝撃値が8J/cm以上であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  10. 20℃での2mmVノッチシャルピー衝撃値が10J/cm以上であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  11. 750℃で1000Hr加熱した後の750℃における酸化被膜の電気抵抗が100mΩ・cm以下であり、更に850℃で100Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が発生しないことを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  12. 750℃で1000Hr加熱した後の750℃における酸化被膜の電気抵抗が50mΩ・cm以下であり、更に850℃で100Hr加熱後に表面酸化スケールの剥離が発生しないことを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
  13. 合計で0.005〜0.1%のLaとLa以外の希土類元素(REM)を更に含有し、かつ(3)式を満足することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の固体酸化物型燃料電池セパレータ用鋼。
    (O+2S)/(0.035Zr+0.16REM)≦2.0…(3)
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