本発明の実施の形態によるコイル部品の巻線方法について図1乃至図54に基づき説明する。コイル部品の巻線方法はコイル部品の製造方法の一部を構成するが、コイル部品の製造方法及び当該製造方法を実施するためのコイル部品の製造装置1(図2等)について説明する前に、説明の便宜のため、先ずコイル部品の製造装置1によって製造され巻線されるコイル部品2について説明する。コイル部品2は、より具体的には図1に示されるような、小型の電子機器に使用される高周波用のコモンモードフィルタであり、磁気コアたるドラムタイプコア21と、絶縁被覆された2本の導線24A、24Bとを備える。ドラムタイプコア21は、フェライト等の磁性粉体が圧縮、焼結等の過程を経て成形されたものである。
ドラムタイプコア21は、巻芯部22と、巻芯部22の両端にそれぞれ接続される一対のフランジ部23、23′とを備える。巻芯部22は、一対のフランジ部23、23′を互いに結ぶ方向、即ち巻芯部22の軸方向に垂直な面で切った断面が、図30乃至図33に示されるように、第1の角22A、第2の角22B、第3の角22C、及び第4の角22Dを有する略四角形状をなす。また、一対のフランジ部23、23′は、図1に示されるように、当該一対のフランジ部23、23′を構成する一方のフランジ部23と他方のフランジ部23′との中間点を通り巻芯部22の軸方向に垂直な面に対して対称形状をなす。そこで、説明の便宜上、一対のフランジ部23、23′それぞれにおいて、対称形状をなす各部分の符号については、一方のフランジ部23、他方のフランジ部23′共に同一の符号を付して以下に説明する。
フランジ部23、23′はそれぞれ略直方体形状をなし、頂面23Aと、巻芯部22とフランジ部23、23′との連結面をなす側面23Cと、側面23Cに対向する側面23Bと、側面23Bと側面23Cとを連結する2つの側面23D、側面23Eと、図示せぬ底面とより規定される。
頂面23Aには溝23aと溝23bが形成されている。溝23a、溝23bは、頂面23Aにおける巻芯部22の軸方向の略中央位置から巻芯部22の方へ向かって斜傾しており、溝23aと溝23bとの間の部分は、溝23a、23bに対して相対的に突出する分離用凸部23Fをなす。溝23aは、底面をなす傾斜部23a−1と、側面をなす側壁部23a−2、23a−3とにより画成される。同様に、溝23bは、底面をなす傾斜部23b−1と、側面をなす側壁部23b−2、23b−3とにより画成される。側壁部23a−3、23b−3は、分離用凸部23Fを規定する。
一対のフランジ部23、23′には、2つの電極25A、25Bがそれぞれ設けられている。電極25A及び電極25Bは、それぞれ頂面23Aから側面23Bに跨るように設けられており、巻芯部22の幅方向の中央位置を通り巻芯部22の軸方向に指向する仮想直線と頂面23Aの法線とを含む面に対して対称の位置に対称の形状で設けられている。これら電極25A、25Bは、フランジ部23、23′の表面にメッキされることにより形成される。
電極25A、25Bの一部は、頂面23Aの溝23a、23bが形成されていない非溝部に配置されており、また、溝23a、溝23b内にも配置されている。より具体的には、頂面23Aの溝23a、23bが形成されていない非溝部には、電極25A、25Bの一部をなす電極25A−1、25B−1がそれぞれ配置されおり、傾斜部23a−1、傾斜部23b−1には、電極25A、25Bの一部をなす電極25A−2、電極25B−2がそれぞれ配置されており、また、側壁部23a−2、側壁部23b−2には、電極25A、25Bの一部をなす電極25A−3、電極25B−3がそれぞれ配置されている。
電極25Aには導線24Aが継線される。導線24Aの端部は、電極25A−1と電極25A−2と電極25A−3とが互いに交わる交点25a近傍より電極25A−1上に載置され、熱圧着、半田付け、アーク溶接、レーザー溶接等により継線される。導線24Aの端部の末端は、交点25aから側面23Bと側面23Dとの交点の方へ向かった位置に配置される。同様に、電極25B−1において継線された導線24Bの端部は、交点25bより側面23Bと側面23Eとの交点の方へ向かった位置に配置される。このため、導線24Aと導線24Bとは、その端部が末端に向かって互いに距離が離間するように継線されている。
一方のフランジ部23の電極25A、25Bに継線された導線24A、24Bは、それぞれ溝23a、23bを通り巻芯部22の周方向に向かって引出されて引出し部24C、24Dをなし、巻芯部22に所定回数巻回され、他方のフランジ部23′において電極25A、25Bの方向に引出されて図示せぬ引出し部をなし、溝23a、23bを通り電極25A、25Bに継線される。ドラムタイプコア21の寸法は、縦方向における長さ、即ち一対のフランジ部23、23′を結ぶ方向における長さが2mmであり、最大幅は1.2mmであり、極小型である。また、ドラムタイプコア21に巻回された状態の2本の導線24A、24Bの直径は、それぞれ51μmである。
以上のようなコイル部品2を製造するための製造装置1は、図2乃至図5に示されるように、コイル部品2のドラムタイプコア21を狭持するためのチャック11と、導線24A、24Bを供給しチャック11に狭持されたドラムタイプコア21に導線24A、24Bを巻回するためのノズル12と、ノズル12から供給される導線24A、24Bの一端を狭持するためのクランプ13と、これらを保持する図示せぬ製造装置本体とを備えている。
チャック11は、図2に示されるように、固定チャック11Aと可動チャック11Bとを備えている。固定チャック11Aは、図3に示されるように、スピンドル台11Cの上に載置されたコア受け台11Dに固定されており、図2に示されるように、コア受け台11D上面11Gの略半分の部分を覆っている。なお、図3においては、図の右側が鉛直上方であり、左側が鉛直下方である。また、図2中のX軸、Y軸、及びZ軸については後述する。
可動チャック11Bは、回動軸11E(図2)によってコア受け台11D上に回動可能に支承されており、固定チャック11Aにより覆われていないコア受け台11D上面11Gの大半の部分を覆っている。可動チャック11Bを回動させチャック11を開き、固定チャック11Aの先端部と可動チャック11Bの先端部との間にドラムタイプコア21の一方のフランジ部23を配置させ、図2に示されるように、固定チャック11Aの先端部と可動チャック11Bの先端部との間でドラムタイプコア21の一方のフランジ部23を狭持することができるように構成されている。
ドラムタイプコア21の一方のフランジ部23を狭持する固定チャック11Aの先端部には、2つの逃げ部11a、11bが形成されている。逃げ部11a、11bは、鉛直上方から見たときには、図2に示されるように略半円形状に窪んでいる。逃げ部11a、11bが形成されていることにより、ドラムタイプコア21の一方のフランジ部23に設けられた電極25A、25Bが固定チャック11Aに接触することを防止することができる。
狭持されているときのドラムタイプコア21の一方のフランジ部23の鉛直方向最下端には、図3に示されるように、コア受け台11Dの先端部11Fが対向し当接しており、コア受け台11Dの先端部11Fによって、一方のフランジ部23の鉛直方向最下端が支持されている。
狭持されているときのドラムタイプコア21の他方のフランジ部23′の鉛直方向最下端に対向する位置には、図3に示されるように、鉛直上下方向、即ち、図3の左右方向に延出し、同方向に移動可能なバックアップ14が設けられている。ドラムタイプコア21がチャック11に狭持されているときであって後述のようにドラムタイプコア21が回転していないときには、図示せぬスピンドルによってバックアップ14が鉛直下方から鉛直上方へ、即ち、図3の左方向から右方向へと移動してきて、固定チャック11Aが載置されているコア受け台11Dの上面11Gと同じ高さにまで移動し、バックアップ14の鉛直上方端が、他方のフランジ部23′の鉛直方向最下端に当接するように構成されている。バックアップ14は、ドラムタイプコア21が回転しているときには鉛直下方へ後退し、ドラムタイプコア21に衝突しないように構成されている。
スピンドル台11Cには、捨てピン11Hと右ワイヤー位置決めピン11Iと左ワイヤー位置決めピン11Jとが固着されている。捨てピン11Hは、図2に示されるように、チャック11に狭持されている状態のドラムタイプコア21の一対のフランジ部23、23′を結ぶ方向における一方のフランジ部23の側の仮想延長線a上に位置している。左ワイヤー位置決めピン11J、右ワイヤー位置決めピン11Iは、捨てピン11Hからドラムタイプコア21へ向かう方向で見た場合にこの順に並んで固着されており、当該仮想延長線aからそれぞれ左右に所定の距離だけオフセットした位置に固着されている。
捨てピン11H、右ワイヤー位置決めピン11Iは、それぞれ固定チャック11Aとコア受け台11Dとスピンドル台11Cとを貫通しており、スピンドル台11Cのチャック11が設けられている側とは反対側、即ち、スピンドル台11Cの図3における左側面11Kの位置において捨てピン11H、右ワイヤー位置決めピン11Iの端部には、図示せぬEリングがそれぞれ環装されている。このことにより、捨てピン11H、右ワイヤー位置決めピン11Iは、その軸方向へ移動不能であり、且つスピンドル台11Cから抜け落ちないように構成されている。
同様に、左ワイヤー位置決めピン11Jはコア受け台11Dとスピンドル台11Cとを貫通しており、スピンドル台11Cの図3における左側面11Kの位置において左ワイヤー位置決めピン11Jには、図示せぬEリングが環装されている。このことにより、左ワイヤー位置決めピン11Jは、その軸方向へ移動不能であり、且つスピンドル台11Cから抜け落ちないように構成されている。
捨てピン11H、右ワイヤー位置決めピン11I、左ワイヤー位置決めピン11Jは、それぞれ図3に示されるように基端部の部分が縮径部11L、11M、11Nとなり段部11O、11P、11Qをなし、固定チャック11A又はコア受け台11Dよりも鉛直上方に突出している部分が、あたかも傘を開いたような形状をなしており、段部11O、11P、11Qには導線24A又は24Bが掛けられるように構成されている。
捨てピン11H、右ワイヤー位置決めピン11I、及び左ワイヤー位置決めピン11Jの突出方向、即ち、図3の左側から右側へと向かう方向における縮径部11L、11M、11Nの長さA、B、Cは、捨てピン11Hの長さAが最も短く0.3mmであり、左ワイヤー位置決めピン11Jの長さBが0.45mmであり、右ワイヤー位置決めピン11Iの長さCが最も長く0.55mmである。このように、縮径部11L、11M、11Nの長さA、B、Cが異なるため、後述のようにノズルホルダ12Aを移動させて、ノズル12から繰出されている導線24A、24Bを交差等させたときに、導線24A、24Bが互いに絡まないようにすることができる。
スピンドル台11C、コア受け台11D、及びチャック11からなるコア狭持部10は、ドラムタイプコア21から捨てピン11Hへと延びる仮想延長線a(図2)を回転軸として一体回転するように構成されており、導線24A、24Bをドラムタイプコア21の巻芯部22に巻回するときに、ドラムタイプコア21をチャック11で狭持した状態で回転することにより、ドラムタイプコア21も仮想延長線a(図2)を回転軸として回転し、ノズル12、12から繰出される導線24A、24Bが巻芯部22に巻回される。
また、図示せぬ図2の上方には、図2に示されるスピンドル台11C、コア受け台11D、及びチャック11の部分と同一形状の部分が図2に示されるこれらの部分に対して回転対称に設けられており、全体として回転対称の位置関係で図示せぬチャックとチャック11とからなる一対のチャックが図2の上下に2つ設けられている構成となっている。
当該一対のチャックはコア狭持部10をなし、図示せぬ上方の当該部分と図2に示される下側の部分との略中間の位置を通る図示せぬ回転軸であって図2の紙面の表と裏とを結ぶ方向に指向する図示せぬ回転軸を中心として、コア狭持部10全体が一体回転可能であり、当該回転軸は一対のチャックの回転対称の中心に一致する。コア狭持部10は、当該回転軸の位置において図示せぬ製造装置本体に軸支されており、図示せぬ製造装置本体に対しては相対的に回転可能であるが、後述のX軸、Y軸、及びZ軸の方向には移動不能に固定されている。
この構成により、図2に示される一方のチャック11に狭持された1つ目のドラムタイプコア21に導線24A、24Bを巻回している最中に、図示せぬ他方のチャックに図示せぬ2つ目のドラムタイプコアが狭持され、1つ目ドラムタイプコア21に導線24A、24Bが巻回され終わると、コア狭持部10全体が当該回転軸を中心に180°回転し、次に、図示せぬ2つ目のドラムタイプコアに導線24A、24Bが巻回される、といったように、連続的にドラムタイプコア21に導線24A、24Bを巻回することができる。
ノズル12、12は、図4に示されるように2本設けられており、ノズルホルダ12Aから平行に鉛直下方、即ち図4の下方へ向かって延出している。2本のノズル12、12の先端の間の距離D(図2)は4mmである。ノズルホルダ12Aは、2本のノズル12、12に平行な図示せぬ回転軸であって2本のノズル12、12間の中間の位置を通る図示せぬ回転軸を中心として回転可能であり、ノズルホルダ12Aが回転することにより、2本のノズル12、12は当該回転軸を中心として回動する。2本のノズル12、12の鉛直下端の位置は、常に互いに同一である。なお、図2及び後に参照する図7等では、説明の便宜上ノズルホルダ12Aを簡略化して円で表し、ノズルホルダ12Aにおいては2本のノズル12、12を2つの小さな2つの円で表した。
図4に示されるノズル12、12の上方には、2本のノズル12、12からそれぞれ繰出される導線24A、24Bをノズル12、12へ供給するための図示せぬ2つボビンが設けられている。また、ノズル12、12の上方には図示せぬテンション装置が設けられており、図示せぬ2つのボビンから繰出された導線24A、24Bは、所定の張力が作用した状態で、それぞれノズル12、12内を通ってノズル12、12の先端から繰出されるように構成されている。
図2に示されるように、チャック11に狭持されている状態のドラムタイプコア21の一対のフランジ部23、23′を結ぶ方向であって他方のフランジ部23′から一方のフランジ部23へ向かう方向をX軸の+方向とし、X軸の方向に垂直な一の方向であって図2の左から右へ向かう方向をY軸の+方向とし、X軸の方向及びY軸の方向に垂直な方向であって図2の紙面の裏側から表側へ向かう方向、即ち鉛直上方向をZ軸の+方向とすると、ノズルホルダ12Aは、スピンドル台11C、コア受け台11D、及び2つのチャック11等からなるコア狭持部10全体を回転可能に軸支する図示せぬ製造装置本体に対して、X軸、Y軸、及びZ軸の方向へ移動可能である。
また、後述のようにコイル部品の製造方法のうちの所定の工程を行っている最中には、ノズルホルダ12Aは、常に徐々にZ軸の+方向へ移動してゆくように構成されている。前述のように、2本のノズル12、12の最下端の鉛直方向における位置は常に互いに同一であるが、このようにノズルホルダ12Aが、常に徐々にZ軸の+方向へ移動してゆくこと、及び、捨てピン11H、右ワイヤー位置決めピン11I、及び左ワイヤー位置決めピン11Jの突出方向における縮径部11L、11M、11Nの長さA、B、Cがそれぞれ異なっていることにより、コイル部品の製造方法を行っている最中に右ワイヤー位置決めピン11I、左ワイヤー位置決めピン11Jの段部11O、11P、11Qとノズル12、12の先端との間で張られた状態となった導線24A、24Bが、ノズルホルダ12Aの複雑なXY軸方向への移動等によって互いに絡まることを防止することができる。
クランプ13は、2本のノズル12、12からそれぞれ繰出された導線24A、24Bの一端をそれぞれ狭持可能であり、クランプ13に狭持された2本の導線24A、24Bの一端は、図示せぬ製造装置本体に対して移動不能に固定する。従って、後述のようにノズルホルダ12Aを移動させることによりノズル12、12を移動させているときには、2本の導線24A、24Bの一端は固定されているため、ノズル12、12の移動に伴って2本の導線24A、24Bが2本のノズル12、12からそれぞれ繰出される。
また、コイル部品の製造装置1には、図5に示されるような線押さえ部材15が設けられている。線押さえ部材15はY軸方向、即ち図5の左右方向に延出する部材により構成されており、第1線押さえ部15Aと第2線押さえ部15Bと第3線押さえ部15C(図40)とを備え、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能である。このため、本実施の形態におけるドラムタイプコア21とは異なる形状のドラムタイプコア21を用いて異なる形状のコイル部品を製造する場合にも、容易に対応することができるように構成されている。
第1線押さえ部15Aについては後に説明する。第2線押さえ部15Bは、図5に示されるように、線押さえ部材15の端部であって図5に示される右端部により構成される。第2線押さえ部15Bは、ドラムタイプコア21の一方のフランジ部23から他方のフランジ部23′へ向かって突出する第2線押さえ凸部15Dを有している。第2線押さえ凸部15Dの先端は、ドラムタイプコア21の他方のフランジ部23′から一方のフランジ部23の方へ、即ち、他方のフランジ部23′から図5の上の方へ40μm程度の距離Eを隔てた位置に至るまで、他方のフランジ部23′の分離用凸部23F(図1)に接近可能である。
コイル部品の製造方法を行っている最中にこのように接近した状態となることで、第2線押さえ凸部15Dの図5における左右の位置に、導線24A、24Bをそれぞれ配置させることができ、第2線押さえ凸部15Dの右側に2本の導線24A、24Bが配置されたり、左側に2本の導線24A、24Bが配置されたりするようなことが生ずることを防止することができるように構成されている。
第1線押さえ部15Aは、線押さえ部材15の図5に示される右端から少し離れた部分により構成されている。第1線押さえ部15AのZ軸の−方向端、即ち、図5の紙面の裏側に位置する第1線押さえ部15Aの鉛直下方端は平坦面になっており、図18に示されるように、鉛直上方から2本の導線24A、24Bを鉛直下方へ押圧し、ドラムタイプコア21の一方のフランジ部23に形成された2つの溝23a、23bに導線24A、24Bを配置させることができるように構成されている。
第3線押さえ部15C(図40)は、線押さえ部材15と一体にXY軸方向に移動可能であり、且つ第1線押さえ部15A及び第2線押さえ部15Bに対してZ軸方向に相対移動可能である。第3線押さえ部15CのZ軸の−方向端、即ち、図40の紙面の裏側に位置する第3線押さえ部15Cの鉛直下方端は平坦面になっており、図40に示されるように、第1線押さえ部15Aと同様に鉛直上方から2本の導線24A、24Bを鉛直下方へ押圧し、ドラムタイプコア21の他方のフランジ部23′に形成された2つの溝23a、23bに導線24A、24Bを配置させることができるように構成されている。
また、コイル部品の製造装置1は、左フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16Aと、右フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16B(図41等)と、ヒータチップ17(図21等)と、カッター18(図25)とを備える。左フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16A、右フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16Bは、それぞれ丸棒からなり径は略一定であり、捨てピン11Hや右ワイヤー位置決めピン11Iや左ワイヤー位置決めピン11Jのような段部は設けられていない。後述のようにコイル部品の製造方法及び巻線方法において、図41〜図51に示されるように、他方のフランジ部23′の電極25A、25Bに導線24A、24Bを継線させるときのみZ軸の+方向、即ち鉛直上方へ向かってノズル12、12の位置と略同一の位置まで突出した状態となるように構成されている。
これ以外のときには、左フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16A、右フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16Bは、それぞれZ軸の−方向に後退して引込んだ状態となっており、ノズル12、12及びノズル12、12から繰出される導線24A、24Bとは干渉しない。
ヒータチップ17は導線24A、24Bを電極25A、25Bに圧着させることにより導線24A、24Bを電極25A、25Bに継線する。ヒータチップ17はXYZ軸方向に移動可能であり、継線するとき以外は後退して引込んだ状態となっており、ノズル12、12及びノズル12、12から繰出される導線24A、24Bとは干渉しない。
カッター18は導線24A、24Bを切断する。カッター18はXYZ軸方向に移動可能であり、導線24A、24Bを切断するとき以外は後退して引込んだ状態となっており、ノズル12、12及びノズル12、12から繰出される導線24A、24Bとは干渉しない。
次に、コイル部品の製造方法について説明する。なお、コイル部品の巻線方法は、コイル部品の製造方法の一部を構成する。コイル部品の製造方法では、先ず、図6に示されるように、チャック11によってドラムタイプコア21の一方のフランジ部23を狭持し、全体として図7に示される位置関係となるように、ノズル12、12から繰出された2本の導線24A、24Bの一端をクランプ13によって狭持し固定し、ノズルホルダ12Aを移動させてコイル部品の製造方法を開始する位置であるホームポジション(図7)に配置する。
Z軸方向、即ち鉛直方向で見たときの、ホームポジションにおけるノズル12、12の最下端であるノズル12、12の先端の位置は、捨てピン11Hの縮径部11L(図3)の位置と略一致している。図7に示されるホームポジション以降、図15に示されるように導線24A、24Bが電極25A、25Bの鉛直の略上方に配置される状態に至るまでの間、ノズル12、12はノズルホルダ12Aと一体に、略一定の速度でZ軸の+方向に移動し続ける。このため、後述のように2本の導線24A、24Bを交差させるときに、導線24A、24Bどうしが絡むことを防止することができる。
次に、図8に示されるように、ノズルホルダ12AをX軸の+方向及びY軸の−方向に移動させてゆき、図9に示されるように、捨てピン11Hの段部11O(図3)に2本の導線24A、24Bを図9の上方向から引掛ける。次に、ノズルホルダ12AをX軸の−方向に移動させてゆき、図10に示されるように、左ワイヤー位置決めピン11Jの段部11P(図3)に2本の導線24A、24Bのうちの一方の導線24Aを図10の上方向から引掛ける。
次に、図11に示されるように、ノズルホルダ12AをY軸の+方向に移動させ、図12及び図13に示されるように、ノズルホルダ12AをX軸の−方向に移動させて、右ワイヤー位置決めピン11Iの段部11Q(図3)に2本の導線24A、24Bのうちの他方の導線24Bを図12及び図13の上方向から引掛け、Y軸の−方向へ少し移動させると共に、2本のノズル12、12の位置がドラムタイプコア21の他方のフランジ部23′よりもX軸の−方向の位置となるように移動させる。このとき、2本のノズル12、12はX軸方向で見たときに同一の位置にあり、且つ、2本のノズル12、12の中間の位置は、X軸とY軸とを含む平面で見たときに仮想線aに一致する。
段部11O、11P、11Qに導線24A、24Bが引掛けられるため、上述のようにノズル12、12がノズルホルダ12AとともにX軸方向やY軸方向に移動しているときに、導線24A、24Bが段部11O、11P、11Qから外れることはない。
次に第1配置工程を行う。第1配置工程では、図14に示されるようにノズルホルダ12Aを反時計方向に180°回転させ、X軸とY軸とを含む平面で見たときに、ノズル12、12を、図13に示されている位置に対して仮想線aを中心として左右対称となるような位置関係とし、2本の導線24A、24Bを交差させる。
そして、図15に示されるように、一方のフランジ部23の2つの電極25A、25Bに対向する位置に、それぞれ導線24A、24Bが配置された状態となるように、且つ、ドラムタイプコア21のフランジ部23と巻芯部22との接続位置付近において、2本の導線24A、24Bが交差した状態となるように、ノズルホルダ12Aの位置補正を行う。このとき2本の導線24A、24Bは、一方のフランジ部23の2つの溝23a、23b及び2つの電極25A、25Bの略鉛直上方に位置している。以上が第1配置工程である。第1配置工程のうちの、2本の導線24A、24Bを交差させ、2本の導線24A、24Bを2つの電極25A、25Bの略鉛直上方に位置させる工程は、交差工程に相当する。
前述のように、左ワイヤー位置決めピン11J、及び右ワイヤー位置決めピン11Iの縮径部11M、11Nの長さがそれぞれ異なっており、右ワイヤー位置決めピン11Iの縮径部11Nの方が左ワイヤー位置決めピン11Jの縮径部11Mよりも長く、更にノズル12、12がノズルホルダ12Aと一体に、略一定の速度でZ軸の+方向に移動し続けるため、このように2本の導線24A、24Bを交差させたときに、常に右ワイヤー位置決めピン11Iに引掛けられた導線24Bの方が、左ワイヤー位置決めピン11Jに引掛けられた導線24Aよりも鉛直上側となるようにすることができる。
2本の導線24A、24Bをドラムタイプコア21の巻芯部22に巻回してゆくときには導線24A、24Bを張った状態に支持する必要があるが、上述のように2本の導線24A、24Bを交差させないで導線24A、24Bを張った状態としようとした場合には、コイル部品の製造装置1に導線24A、24Bを支持するためのピンを多数設ける必要がある。しかも、このピンは、必要なときに突出して導線24A、24Bが引掛かるようにしたり、不要なときには導線24A、24Bが引掛からないように後退できるように構成されていなければならない。また、導線24A、24BのZ軸方向における位置を所望の位置とするために、ピンを所望の突出量に調整可能でなければならない。更に、非常に高い精度でこれらの動作を行うことができなければならない。従って、非常に高い精度で複雑な動きができるようにコイル部品の製造装置1を構成する必要がある。
しかし、交差工程において、ドラムタイプコア21のフランジ部23と巻芯部22との接続位置付近において2本の導線24A、24Bを1点で交差させて、各電極25A、25Bに対向する位置にそれぞれ導線24A、24Bを1本ずつ配置させるようにしたため、このような複雑な動きをするピンを、コイル部品の製造装置1に設ける必要性を最小限に抑えることができる。
このため、当該ピン等を移動させたり、突出させたり突出してない状態に収納したりするための機構をコイル部品の製造装置1に極力設けずに済み、コイル部品の製造装置1の構成を簡単にすることができる。また、導線24A、24Bの引回しを簡単にすることができ、マシンタクト、即ち、コイル部品2を製造するためにかかる時間を大幅に短縮することができる。また、このことにより、メンテナンス性を向上させることができ、設備コストを低減することができる。また、サイズの異なるドラムタイプコアに導線を巻回しようとする場合であっても、容易に導線を電極に対向する位置に配置させ、巻回することができる。
また、導線24A、24Bの一端又は他端を、複数の導線24A、24Bが当該1点で交差した位置から広がるような位置関係とした後で、電極25A、25Bに継線させることができるため、電極25A、25Bに対向する位置への導線24A、24Bの位置決めを容易とすることができる。また、導線24A、24Bと電極25A、25Bとの接合面積を大きくすることができ、接合強度を高めることができる。また、導線24A、24B間を確実に互いに離間させることができ、導線24A、24Bに絶縁被覆がなされていて当該絶縁被覆が剥けてしまった場合であってもショートを防止することができる。
次に、ノズルホルダ12AをZ軸の−方向へ移動させて、図16に示されるように、導線24A、24Bを一方のフランジ部23の各電極25A、25B(図15等)に押当てる押当て工程を行う。このとき、ドラムタイプコア21の一方のフランジ部23には、2つの溝23a、23bが形成されているため、2本の導線24A、24Bは、それぞれ2つの溝23a、23b内に1本ずつ配置される。次に、図17、図18に示されるように、線押さえ部材15の第1線押さえ部15A(図18)の平坦面がドラムタイプコア21の一方のフランジ部23の2つの溝23a、23bを覆うようにして一方のフランジ部23に接近し対向し、溝23a、23bから導線24A、24Bが出ないように導線24A、24Bを押圧して規制し、導線24A、24Bが溝23a、23b内に確実に配置される。
第1線押さえ部15Aの平坦面で導線24A、24Bを押圧するようにしたため、第1線押さえ部15Aの導線24A、24Bの押圧によって絶縁被覆された導線24A、24Bに傷や打痕がつくことを防止することができる。また、交差した導線24A、24Bを押圧するときに、導線24A、24Bに第1線押さえ部15Aが引っかかることを防止することができ、2本の導線24A、24Bをきれいに交差させた状態とすることができる。また、第1線押さえ部15Aの平坦面の部分は製造が容易であり、第1線押さえ部15Aを有する線押さえ部材15を製造するコストを低減することができる。また、平坦面の部分は磨きやすく、容易にきれいな状態とすることができる。
次に、図19、図20に示されるように、ノズルホルダ12AをZ軸の+方向に移動させ、反時計方向に180°回転させ、Y軸の+方向へ移動させ、Z軸の−方向へ移動させる。ノズルホルダ12Aを回転させる前にZ軸の+方向に移動させるのは、ノズルホルダ12Aを回転させているときに、一方のノズル12の先端が他方のノズル12から繰出されている導線24A、24Bに引っかからないようにし、また同様に、他方のノズル12の先端が一方のノズル12から繰出されている導線24A、24Bに引っかからないようにするためである。図19、図20に示されように、ノズルホルダ12AをZ軸の+方向に移動等させる際に、第1線押さえ部15Aを図17に示される状態としたままにしておくのは、導線24A、24Bが交差した状態を維持し続けるためである。
次に第1継線切断工程を行う。第1継線切断工程では、図21、図22に示されるように、一方のフランジ部23の電極25A、25Bに対向する導線24A、24Bの部分にヒータチップ17を鉛直上方から下方へ向かって押しつけ、図23に示されるように、線押さえ部材15をオフセットさせる。そして、図24に示されるように、ヒータチップ17によって導線24A、24Bを電極25A、25Bにパルスヒート圧着する。線押さえ部材15をオフセットさせたのは、パルスヒート時に導線24A、24Bを被覆している被覆材料であるウレタンが飛散して、第1線押さえ部15Aに付着堆積することを完全に防止するためである。
そして、図25及び図26に示されるように、カッター18によって、チャック11に挟まれているドラムタイプコア21の一方のフランジ部23のすぐZ軸の+方向側の位置、即ち導線24A、24Bの継線位置よりも導線24A、24Bの一端側の位置において2本の導線24A、24Bを切断し、図27に示されるように、クランプ13をY軸の+方向に移動させ、ノズルホルダ12Aから離間させた位置に配置させる。クランプ13に固定されている側の導線24A、24Bの部分は、図示せぬ掃除機によって吸引され廃棄される。以上が第1継線切断工程である。
次に、コイル部品の巻線方法を行う。コイル部品の巻線方法では、図28及び図29に示されるように、ノズルホルダ12AをX軸の+方向、及びY軸の−方向へ移動させ、時計方向に回転させ、X軸とY軸とを含む平面で見たときに、一方のノズル12の先端が他方のノズル12から繰り出される導線24Bに略一致するような位置関係とする。このときのX軸及びY軸を含む平面で見たときの、ノズル12の先端とドラムタイプコア21の巻芯部22との間の距離は、1.2mm以下である。1.2mm以下というように、ノズル12の先端をドラムタイプコア21から近い位置に配置させることにより、後述のように、導線24A、24Bをドラムタイプコア21の巻芯部22の第1の角22A(図30等)に押圧し、第1の角22Aの形状に倣って屈曲させるときに、ノズル12をZ軸の−方向に大きく移動させずに少しだけ移動させるようにすることができる。
次に、図30、図31に示されるように、ノズルホルダ12AをZ軸の−方向へ移動させる。移動後のノズル12の先端の位置は、ドラムタイプコア21のフランジ部23の図30、図31に示される上端から下端へ向けて0.7mm程移動した位置である。このことにより一方のノズル12の先端で導線24Aを鉛直下方に押下げ、導線24Aをドラムタイプコア21の巻芯部22の第1の角22Aに押圧し、導線24Aを巻芯部22の周方向の形状、即ち第1の角22Aの形状に倣って屈曲させる。コイル部品の製造方法の一番最初の工程からここまでの工程は第1屈曲工程に相当する。また、ノズルホルダ12Aを図30、図31に示されるように移動する方向は第1の方向に相当する。
図29に示されるように、ドラムタイプコア21のフランジ部23の電極25A、25Bに継線された2本の導線24A、24Bは図29の右方向へ引出され、当該引出されている部分はそれぞれ引出し部24C、24D(図1)となる。引出し部24C、24Dのうちの短い方24Dは、ドラムタイプコア21のフランジ部23に接続されている巻芯部22の位置に当たることにより巻始め位置が安定するが、長い方24Cは、特に当たる部分がないため巻始め位置が安定しなかった。しかし、図29に示されているように、引出し部24C、24D(図1)のうちの長い方24Cに相当する導線24Aを、巻芯部22の第1の角22Aの形状に倣って屈曲させるようにしたため、屈曲された部分が第1の角22A(図30)に引掛かり、引出し部24Cとなる部分を安定させることができる。このため、後述する導線巻回工程で導線24A、24Bを巻回するときの巻始め位置を安定させることができ、巻芯部22への導線24A、24Bの巻回を、意図したとおりの巻線間隔や巻回ピッチできれいに行うことができる。
次に、X軸の方向にノズルホルダ12Aを移動させて、後述の導線巻回工程において巻芯部22に導線24A、24Bを巻回するときの導線巻き角度を調整する巻き角度調整工程を行う。
次に、導線24A、24Bをドラムタイプコア21の巻芯部22に巻回する導線巻回工程を行う。導線巻回工程では、ドラムタイプコア21を仮想線aを回転軸として回転させると共に、ノズル12、12をX方向に相対移動させて、一方のフランジ部23側から他方のフランジ部23′側に向かってらせん状に巻芯部22に導線24A、24Bを巻回する。
より具体的には、導線巻回工程における一巻目では、先ず、ノズルホルダ12Aに設けられたテンション装置により導線24A、24Bに第1の張力を作用させた状態とし、図32に示されるように、仮想線aを回転軸としてコア狭持部10(図2)を回転させることにより、仮想線aを回転軸としてドラムタイプコア21を、図31に示されるX軸の−側から+側に向かう方向で見た場合の反時計方向へ90°回転させる第2屈曲工程を行う。第2屈曲工程により、2本の導線24A、24Bをそれぞれドラムタイプコア21の巻芯部22の第1の角22Aに隣接する第2の角22Bに押圧し、第2の角22Bに倣った形状に導線24A、24Bを屈曲させることができる。
このため、巻芯部22への押圧により屈曲された導線24A、24Bの部分であって巻始め位置とは異なる部分を、巻芯部22の所定の位置に安定して配置させることができ、導線24A、24Bの巻始め位置をより安定して巻芯部22の巻始め位置相当位置に配置させることができる。
なお、第1屈曲工程、第2屈曲工程で導線24A、24Bを屈曲させるときに、ノズル12、12から繰出されている導線24A、24Bに付加されている張力を意図的に高めることはしない。意図的に高めなくても、導線24A、24Bを屈曲させているときのノズル12、12の延出方向と、ノズル12、12の先端における導線24A、24Bの繰出される方向とのなす角度は、ノズル12、12のZ軸の−方向への移動に伴い、徐々に鋭角になってゆくため自然に適度な張力が導線24A、24Bにかかり、第1の角22A、第2の角22Bにおいて導線24A、24Bを適度に屈曲させることができるからである。
次に、ノズルホルダ12AをZ軸の+方向へ移動させるノズル位置移動工程を行う。ノズル位置移動工程によってノズル12、12の先端は、図33に示されるように、第2屈曲工程におけるノズル12、12の位置から、巻芯部22の回転円bの仮想接線位置から回転円の半径方向外方に導線24A、24Bの略直径分だけ離間した位置まで移動させられる。
このことにより、導線24A、24Bをドラムタイプコア21の巻芯部22の第2の角22Bに押圧されていない状態とすることができる。このため、ドラムタイプコア21の回転軸に垂直な面で切った断面が略長方形状の巻芯部22を回転させて、巻芯部22に導線24A、24Bを巻回するときに、導線24A、24Bが巻芯部22の回転に伴って鉛直上下方向、即ち図33の上下方向に振れることを防止することができる。
次に、ドラムタイプコア21を回転軸を中心として270°回転させ、回転を一旦止めて一巻目を終了する。なお、一巻目を行っている間には、所定のピッチで巻芯部22に導線24A、24Bが巻回されるようにするため、後述の二巻目以降と同様に、一巻目の移動量に適した値で、X軸の−方向へ向かってノズル12、12を移動させ続ける。一巻目は第1張力回転工程に相当する。
次に、ノズルホルダ12Aの回転角を二巻目に適した値に設定し直し、ノズルホルダ12Aに設けられたテンション装置により導線24A、24Bに第2の張力を作用させた状態とする。また、ノズル12、12のX方向の移動量を二巻目に適した値に設定し直す。そして、ドラムタイプコア21を360°回転させながらノズル12、12を設定した値の移動量でX軸方向へ移動させ、回転を一旦止めて二巻目を終了する。二巻目以降は第2張力回転工程に相当する。
二巻目と同様にして三巻目以降所定回数繰返して、図34に示されるようにドラムタイプコア21の巻芯部22に導線24A、24Bを巻回する。2本のノズル12、12は、所定の距離をもって互いに離間しているため、2本の導線24A、24Bは、所定の距離を持って互いに離間した状態で巻芯部22に巻回される。以上がコイル部品の巻線方法である。また、以上が導線巻回工程である。導線巻回工程は巻線工程に相当する。なお、ドラムタイプコア21は、常にaを回転軸として、X軸の−側から+側に向かう方向で見た場合の反時計方向へ回転する。
また、ドラムタイプコア21が1回転する毎にノズルホルダ12Aの回転角を設定するようにしたため、巻芯部22に巻回される複数の導線24A、24B間の距離を1回転毎に調整することができる。同様に、ドラムタイプコア21が1回転する毎にノズル12、12のX方向の移動量を設定するようにしたため、1回転毎に巻芯部22に巻回される導線24A、24Bの巻回ピッチを調整することができる。ここで、2本の導線24A、24Bは、所定の間隔で互いに離間した状態で巻回されるが、導線24A、24B間の距離とは、2本の導線24A、24Bの軸心間の距離をいう。また、巻回ピッチとは、nを自然数としたときのn巻目の2本の導線24A、24Bの軸心位置の中間位置と、n+1巻目の2本の導線24A、24Bの軸心位置の中間位置との距離をいう。
また、ノズルホルダ12Aの回転角、ノズル12、12のX方向の移動量を一定に設定して一巻目から所定巻数目まで巻回した場合であっても、何らかの理由により均一にきれいに巻くことができない部分が生ずる場合がある。このような場合に、均一とならずにきれいに巻くことができない当該巻回数目のノズルホルダ12Aの回転角及びノズル12、12のX方向の移動量を設定し直して、全体として均一にきれいに巻かれた状態とすることができる。
また、二巻目以降に張力を上げて第2の張力とすることにより、導線24A、24Bの動きをノズル12、12の動きに追従させることができる。このため、各導線24A、24B間を所望の間隔で均等に離間させた状態で巻回することができる。また、一巻目に導線24A、24Bに作用させる張力を第1の張力とすることにより、巻始め位置がずれることを防止することができる。第1の張力の値は、小さいほどずれの防止に効果を発揮する。
次に、図36、図37及び図5に示されるように、線押さえ部材15の第2線押さえ部15Bをドラムタイプコア21の他方のフランジ部23′に接近させ、第2線押さえ部15Bの第2線押さえ凸部15Dによって2本の導線24A、24Bを他方のフランジ部23′の2つの溝23a、23bにそれぞれ対向する位置に配置させ、且つ後の工程で溝23a、23bのうちの一方の中に2本の導線24A、24Bが配置されないように分離する。
次に、第2配置工程を行う。第2配置工程では、図38に示されるように、ノズルホルダ12AをY軸の−方向及びX軸の−方向へ移動させ、反時計方向に回転させる。そして、図39及び図40に示されるように、線押さえ部材15の第3線押さえ部15Cが他方のフランジ部23′に接近して導線24A、24Bを押圧して規制し、他方のフランジ部23′の2本の溝23a、23b内に導線24A、24Bがそれぞれ配置された状態を維持する。
次に、図41に示されるように、左フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16Aと、右フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16BとをそれぞれZ軸の+方向へ突出した状態とさせ、図42に示されるように、ノズルホルダ12Aを略Y軸の−方向に移動させ、反時計方向に略90°回転させる。次に、図43に示されるように、ノズルホルダ12AをX軸の−方向へ移動させてゆき、左フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16Aに2本の導線24A、24Bのうちの一方の導線24Aを図43の上方向から引掛ける。そして、図44に示されるように、ノズルホルダ12AをY軸の+方向へ移動させ、右フィニッシュ側ワイヤー位置決めピン16Bに2本の導線24A、24Bのうちの他方の導線24Bを引掛ける。以上が第2配置工程である。
次に、第2継線切断工程を行う。第2継線切断工程では、図45及び図46に示されるように、他方のフランジ部23′の電極25A、25Bに対向する導線24A、24Bの部分にヒータチップ17を鉛直上方から下方へ向かって押しつけ、図47に示されるように、線押さえ部材15の第2線押さえ部15B及び第3線押さえ部15Cをオフセットさせる。そして、図48に示されるように、ヒータチップ17によって導線24A、24Bを他方のフランジ部23′の電極25A、25Bにパルスヒート圧着する。
そして、図49に示されるように、クランプ13をホームポジションにおけるクランプ13の位置に移動させ、図50に示されるように、ノズルホルダ12Aをクランプ13の位置に移動させ、クランプ13で2本の導線24A、24Bを狭持し固定する。
次に、図51及び図52に示されるように、カッター18によって、チャック11に挟まれている導線24A、24Bの、ドラムタイプコア21の他方のフランジ部23′のすぐZ軸の−方向側の位置、即ち導線24A、24Bの継線位置よりも導線24A、24Bの一端側に対する他端側の位置において2本の導線24A、24Bを切断することにより、図54に示されるように、2本の導線24A、24Bが巻回されたドラムタイプコア21からなるコイル部品2が完成する。以上が第2継線切断工程である。
最後に、図53に示されるように、ノズルホルダ12Aをホームポジションにおけるノズルホルダ12Aの位置へ移動させ、コア狭持部10(図2)をX軸及びY軸を含む平面上で180°回転させ、完成したコイル部品2を図示せぬ収容容器上に配置させ、チャック11による狭持を解除し、コイル部品2を収容容器内へ入れる。以上がコイル部品の製造方法である。
本発明によるコイル部品の製造方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、本実施の形態において、図28及び図29に示される工程では、ノズルホルダ12AをX軸の+方向、及びY軸の−方向へ移動させ、その後で時計方向に回転させたが、時計方向に回転させた後で、ノズルホルダ12Aを移動させるようにしてもよい。
また、ドラムタイプコア21の巻芯部22は、ドラムタイプコア21の回転軸に垂直な面で切った断面が略四角形状をなしていたが、この形状に限定されない。また、多角形にも限定されない。また、各導線24A、24B間を所定の間隔で互いに離間させて巻回したが、所定の間隔を隔てずに隣合う導線24A、24Bと互いに当接した状態で巻回してもよい。
また、導線の本数は2本に限られない。例えば1本でもよく、また、3本であってもよい。また、ドラムタイプコアのフランジ部には溝が形成されていなくてもよい。導線が3本であってフランジ部に溝が形成されていないコイル部品を一例として説明する。図55(a)〜(c)に示されるように、コイル部品102のドラムタイプコア121のフランジ部123の電極125A、125B、125Cが設けられている一端は、溝が形成されていない平坦面になっている。平坦面上に電極125A、125B、125Cが固着されており、電極125A、125B、125Cに対向する位置に3本の導線124A、124B、124Cが配置されている。3本の導線124A、124B、124C間は、それぞれ互いに隙間無く巻芯部122に巻回されている。
また、導線の電極への継線方法は、本実施の形態による方法に限定されない。また、導線がドラムタイプコアのフランジ部の溝内に確実に配置させることができるのであれば、第1線押さえ部15A、第2線押さえ部15B、及び第3線押さえ部15Cは不要となり、線押さえ部材15をコイル部品の製造装置に設けなくてもよい。
また、上述の本実施の形態において、ノズルホルダ12Aを回転させる方向が時計方向であったものについては反時計方向に回転させてもよく、また、反時計方向であったものについては時計方向に回転させてもよい。また、ドラムタイプコア21の巻芯部22に導線24A、24Bを巻回する方向は、図33に示される巻芯部22の時計方向であったが、反時計方向であってもよい。