JP4309077B2 - Cvケーブルモールド用加熱管及びcvケーブル端末処理方法。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力用CV(架橋ポリエチレン)ケーブルの端末処理に用いられるCVケーブルモールド加熱管、及びそれを用いたCVケーブルの端末処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電力用の高圧、超高圧CVケーブルの接続部として、ストレスコーン等のプレモールド絶縁体を用いて接続を行うプレハブ式の接続部が広く用いられている。プレハブ式接続部の一例を図6に示す。接続される一対のCVケーブル端末1はその端部で外皮が段剥ぎされ、ケーブル導体3、架橋ポリエチレンからなる絶縁層5、半導電層7が順に露出した状態とされている。一対のケーブル導体3は導体接続管9で接続され、この周囲に埋込電極を有するエポキシユニット10が被嵌され、その両端部のエポキシユニットのテーパ面とケーブル1との間にプレモールド絶縁体11が嵌挿される。プレモールド絶縁体11は押圧機構13によってエポキシユニット10内で押圧され、ケーブル絶縁層表面及びエポキシユニット内面に対して密着し、必要な絶縁耐圧が確保される。
【0003】
このようなプレハブ式のケーブル接続部においては、プレモールド絶縁体とケーブル絶縁体や半導電層との密着の善し悪しが、耐圧を確保する上で重要な問題となる。プレモールド絶縁体とケーブルの絶縁層や半導電層との間の界面の密着が充分でなく微少なボイド等が介在すると、その部分が絶縁破壊の原因となる。そこで、特に高い電圧で使用されるケーブル接続部においては、必要な密着性を確保するために、ケーブル絶縁体の表面にあらかじめ鏡面仕上げ処理を施している。鏡面仕上げ処理は、ケーブル絶縁体を過熱した状態でその表面を平滑な表面を有する他の材料に押しつけ平滑な表面の転写を行い、絶縁体表面を極めて平滑な鏡面状に仕上げるものであり、熱収縮チューブを用いる方法や金属管を用いる方法が知られている。
【0004】
熱収縮チューブを用いる方法では、内面が平滑に仕上げられた熱収縮チューブをケーブル絶縁体に被せて加熱し、ケーブル絶縁体表面を軟化させると同時に熱収縮チューブを収縮させて密着させる。これにより、熱収縮チューブの平滑な内面がケーブル絶縁体表面に転写される。次いで冷却の後、熱収縮チューブに切れ目を入れて剥ぎ取る。また、金属管を用いる方法は、ケーブル絶縁体の外径よりわずかに大きい内径を持つ金属管を被せて加熱を行うことによる。ケーブル絶縁体の熱膨張率は金属管の膨張率より大きいため、絶縁体は加熱により軟化すると同時に膨張して金属管内面に押しつけられ、金属管内面の平滑面の転写がされる。このような従来技術を示す参考例として、特許第2864184号公報や特許第3013730号公報に記載のものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の熱収縮チューブや金属管を用いた方法には次の問題がある。熱収縮チューブを用いる場合、ケーブル絶縁体に熱収縮チューブを被せた後、テープ及び加熱ヒータを周囲に巻き付けて加熱処理を行うのが一般的であり、現在広く用いられている方法である。しかし、この方法ではヒータやテープの巻き方が不適切であると、仕上がりの絶縁体表面にテープやヒータの跡がつき、表面が波打ってしまうという問題がある。このような問題を解消するため、熱収縮チューブを被せたあとに周囲から圧縮空気で加圧しつつ熱処理を行う装置も提案されているが、装置が大がかりとなる。また、熱収縮チューブは1回毎の使い捨てで無駄が多く、ヒータやテープの巻き付けも1回毎に手作業で行うことから、作業者に相応の技能が要求され、作業毎の条件のばらつきや配線のトラブル等が生じやすい。
【0006】
一方金属管を用いる方法は、アイデアは古くからあるものの、実際の作業において良好な結果を得るのが難しい。熱収縮チューブを用いる方法では、チューブ自身が収縮して締め付け力を発揮し、また周囲からテープや圧縮空気で加圧することで、チューブ表面をケーブル絶縁体表面に密着させることができる。一方、金属管は熱収縮チューブのような柔軟性を有さない。そのため、ケーブル絶縁体の表面全体にわたって良好な密着を確保するのは実際上困難で片あたりの状態となりやすく、絶縁体表面で良好な鏡面処理がされる部分とされない部分の転写ムラが生じやすい。また、金属管を用いる方法では、金属管とケーブル絶縁体の密着力は、絶縁体の熱膨張により発生する。従って、加熱前の時点での金属管内径とケーブル絶縁体外径のクリアランスの設定が重要となるが、クリアランスを大きく緩めに設定すれば、金属管とケーブル絶縁体との密着力が充分でなく、上述のように部分的に転写がされない部分が生じてしまう。一方、クリアランスを小さくきつめに設定すれば、金属管がケーブル絶縁体の熱膨張を過度に拘束してしまう。この場合、絶縁体の膨張の余剰が金属管の開口部に押しやられるようになり、金属管を出た部分でケーブル絶縁体が膨らみ、その部分に凹凸の跡が残ってしまうこともある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の手段は、CVケーブル端末の絶縁表面の平滑化を行うモールド仕上処理のためのCVケーブルモールド用加熱管を、CVケーブル端末が差し込まれる金属製の管状本体と、前記管状本体の内面に設けられた、前記CVケーブルの外面に接触する平滑内面を有する合成高分子材料製のクッション層と、前記CVケーブル端末を加熱するための加熱手段とを有するものとすることである(請求項1)。
【0008】
CVケーブルモールド用加熱管にこのようなクッション層を備えることで、ケーブル端末表面の全域にわたり転写ムラなどが生じることなく、良好な平滑表面を形成することが可能となる。
【0009】
第2の手段は方法に関するものであり、金属製の管状本体の内側に合成高分子材料製の平滑内面を有するクッション層が設けられてなる加熱管にCVケーブルの端末部を差し込み、ついで加熱により上記CVケーブルの絶縁体を膨張させ、上記クッション層の平滑内面に接触させることで平滑面を上記絶縁体の表面に転写させることによるCVケーブルの端末処理方法とすることである(請求項2)。
【0010】
また、導体の周囲に絶縁層及び半導電層を有し、その周囲にシースの設けられたCVケーブルの端末処理方法であって、前記CVケーブル端末において前記シース及び半導電層並びに絶縁層を段剥ぎし、前記外部半導電層上から前記絶縁層上にかけて半導電テープを巻き回して半導電テープ巻き渡り部を形成し、次いでこのCVケーブル端末を金属製の管状本体の内側に合成高分子材料製の平滑内面を有するクッション層が設けられた加熱管に差し込み、次いで加熱を行うことにより、上記CVケーブルの絶縁体を膨張させて上記クッション層の平滑内面に接触させることで平滑面を上記絶縁体の表面に転写させ、かつ前記半導電テープ巻き渡り部の融着モールド処理を行うCVケーブルの端末処理方法とすることもできる(請求項3)。
【0011】
この方法においては、平滑面の転写処理と、半導電テープ巻き渡り部の融着モールド処理が同時に行え、しかもそれぞれの処理において仕上がりムラのない良好な結果を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本願発明の実施例を図1乃至2を用いて説明する。図1の(a)図は、本願発明によって処理のなされるCVケーブルの端末部分を示したものである。CVケーブルはその端末において段剥され、ケーブル導体3、架橋ポリエチレンからなる絶縁層5、半導電層7が順に露出した状態となっている。また、半導電層7の周囲にはケーブルシース8が被服されている。絶縁層5の上から半導電層7の上にかけて半導電テープが巻き回され、半導電テープ巻き渡り部15が設けられる。半導電テープ巻き渡り部15付近の断面を(b)図に示す。この半導電テープ巻き渡り部15は以下の目的で設けられる。本願発明によるCVケーブル端末には、接続の際、図6に説明したようなプレモールド絶縁体11が被嵌される。プレモールド絶縁体11は絶縁ゴムと半導電ゴムが一体にモールドされたものであり、ケーブルの絶縁層5からケーブルの半導電層にまたがって被嵌される。ここで、ケーブルの半導電層7の厚みが大きく絶縁層5の表面との間に段差があると、その段差の部分でプレモールド絶縁体11との間にボイドが生じてしまい絶縁耐圧上望ましくない。そこで、ケーブルの半導電層7を段剥ぎして端部を斜めに削り落とした後、ケーブルの半導電層7より厚さの薄い半導電テープを絶縁層5の上から半導電層7にかけて巻き回して半導電テープ巻き渡り部15を形成する。この上にプレモールド絶縁体11の半導電部分を被嵌すれば、半導電テープ巻き渡り部15による段差は半導電層7によるものよりはるかに小さいので、上記ボイドの発生が緩和される。
【0013】
次いで、(a)図に示したCVケーブル端末部分を本願発明によるモールド用加熱管に差し込む。その状態を図2の(a)図に示している。モールド用加熱管は、片側が閉じられた円筒状をなす鉄製の管状本体17を有し、管状本体の内面にはクッション層19が内張されている。クッション層19は耐熱性のEPゴム製であり、概略円筒形で内面はCVケーブル端末部分の外形に沿った形とされ、かつ平滑な鏡面仕上げとされている。本実施例においては、CVケーブル絶縁層の外径は80mmであり、クッション層とCVケーブル端末表面とのクリアランスは、片側で1mmから1.5mmとしている。管状本体17の閉じられた方の端部には、ケーブル導体3が差し込まれる穴を有する導体支持具21を設け、ケーブル端末とモールド用加熱管との中心合わせを行っている。管状本体17の周囲には、加熱のためのヒータ23が取り付けられ、その周囲を断熱層25で覆っている。また管状本体には温度センサとして熱電対27が取り付けられ、温度の測定値に応じてヒータ23の加熱量の調整が可能とされている。
【0014】
次いで、ヒータ23に通電しモールド用加熱管の加熱を行う。本実施例では、150℃で1時間保持している。加熱中の状態を(b)図に示す。加熱を開始するとケーブル端末の絶縁層及び半導電層は熱膨張し、140℃程度でクリアランスが消失し、ケーブル端末の表面全域とクッション層19が密着した状態となる。このとき、ケーブル絶縁層5の架橋ポリエチレンは軟化して半固形状態となっており、クッション層19との間で密着圧力がかかり、ケーブル絶縁層5に平滑表面の転写がなされる。また、これと同時に半導電テープ巻き渡り部15の半導電テープが加熱融着され一体化する。
【0015】
次いで、モールド用加熱管を徐冷し、ケーブル端末の絶縁層5及び半導電層7が熱収縮してクッション層19と分離した後に、加熱管をケーブル端末から引き抜く。その状態を(c)図に示す。本実施例ではケーブル絶縁層5の表面は平滑な鏡面に仕上がり、また半導電テープ巻き渡り部15は良好に融着による一体化がなされた。
【0016】
比較例として、管状本体17内面にクッション層を設けていない例を図3に示す。(a)図に示すように、この比較例では管状本体17の内面がそのままCVケーブル端末部分の外形に沿った形に成形されており、かつ平滑な鏡面状態に仕上げられている。その他、ヒーター23や熱電対27、断熱層25などは上記実施例と同様である。本比較例においても150℃にて1時間の加熱を行った後、モールド加熱管を取り外した。その時のCVケーブル端末の状態を(b)図に表している。比較例では、ケーブル絶縁層5の表面の一部に、平滑面の転写が充分でない部位5’がまだら状に存在した。また、半導電テープ巻き渡り部15の巻き渡しの凹凸部分の一部に、テープの融着が充分でない部位15’が認められた。処理がなされるCVケーブルの端末には若干の外径変動やケーブルの曲がりぐせが残っているため、ケーブル端末の表面と管状本体17との隙間が不均一となり、片当たり、当たりムラが生じたためと考えられる。
【0017】
本願発明におけるクッション層の作用を図4及び図5において説明する。図4の(a)図は、比較例である管状本体17内面にクッション層を設けていない場合の、CVケーブル端末とモールド用加熱管の状態を示す模式図である。図はCVケーブル端末をモールド用加熱管に差し込んだ状態での断面を示しており、簡単のためにヒータ、断熱層の記載を省略している。図中3はケーブル導体の断面であり、その周囲に内部半導電層4、絶縁層5が設けられている。加熱前の常温では絶縁層5と管状本体17の間には、片側で1mmから1.5mmのクリアランス18が存在する。
【0018】
この状態でモールド用加熱管の全体を加熱すると、絶縁層5及び管状本体17はそれぞれ熱膨張し、外側に拡がる。絶縁層を構成するポリエチレンの熱膨張率は管状本体を構成する鉄の熱膨張率より約一桁大きく、絶縁層の方が余計に膨張するためクリアランス18は消滅し、絶縁層5表面と管状本体17内面が圧着されて、平滑面の転写が行われる。しかしここで、管状本体17も同時に膨張しているので、その内径も拡がってしまうこととなり、充分な圧着力を得にくい。圧着力を確保するためには、あらかじめクリアランス18を小さく設定しなければならないが、その分ケーブル端末のモールド加熱管への差し抜きが容易でなくなり、クリアランス18の誤差の許容範囲も狭くなる。
【0019】
一方、管状本体17内面にクッション層19を備えた実施例の状態を、(b)図に示す。EPゴム等の合成高分子材料からなるクッション層19は、絶縁層と同様に管状本体17に比べて大きな膨張率を持つが、クッション層19の周囲には金属製の管状本体が存在することから、加熱した際にクッション層19は内側に向かって膨張する。絶縁層5が外側に向かって膨張するのに対向してクッション層19は内向きに膨張するので、両者の間で充分な圧着力が確保できる。
【0020】
図5はCVケーブル端末が管状本体に片あたりを起こしている状態を示す。(a)図は、クッション層を持たない比較例である。CVケーブル端末は管状本体に対し下方向にずれた状態で片当たりをしている。この状態で加熱を行うと、図中上側の界面には充分な面圧が係らないため、平滑面の転写が充分になされず、転写ムラを生じることとなる。一方(b)図のクッション層19を有する場合には、クッション層19が弾性、塑性を有するため、片当たりをしている部分からしていない部分へ片当たりの面圧が分散される。わずかな片当たりやクリアランスの大小であればクッション層19が吸収し、CVケーブル端末表面全体に良好に面圧がかかり転写がなされることとなる。
【0021】
なお、本願発明は上記実施例に限定されない。管状本体は鉄のほか、ステンレス、銅など通常用いられる金属構造材料が使用可能である。クッション層の材質としては、上記EPゴムのほか、耐熱性のあるゴムやエラストマー、例えば、シリコン系やフッ素系のゴムが良好に使用可能であり、また熱可塑性の樹脂も使用可能である。クッション層とCVケーブル端末の境界面に熱収縮チューブを介在させることも可能であり、クッション層を流動性の高い材料で構成する場合に推奨される。上記実施例でのクッション層とCVケーブル端末とのクリアランスの大きさは経験に基づいて設定し一応の好結果を得たが、ケーブルの太さ及びクッション層の熱膨張率に応じ、熱処理温度においてクリアランスが消滅し、かつある程度の面圧がかかる程度に設定するのが適切である。また、本願発明においてはクッション層の弾性のため、クリアランスが小さすぎる場合でも従来例のように加熱管の開口部において絶縁体が膨らんでしまう現象は生じにくいが、さらにこれを緩和するために、クッション層の開口部分を漏斗状に開いた形状とすることもできる。
【0022】
【発明の効果】
上述のように、本願発明によれば、CVケーブル絶縁体表面の平滑化のモールド処理を良好に行うことができ、従来の熱収縮チューブを用いた場合や、クッション層の無い金属管を用いた場合での、仕上がり表面が波打ったり、平滑表面の転写ムラが生じる問題が解決される。また、装置が一体化され反復使用可能で作業性がよく、使い捨ての熱収縮チューブに比して経費も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施例を示す説明図である。
【図2】本願発明の実施例を示す説明図である。
【図3】クッション層を設けていない比較例を示す説明図である。
【図4】クッションの作用を説明する説明図である。
【図5】クッションの作用を説明する説明図である。
【図6】プレハブ式ケーブル接続部の断面構造を示す説明図である。
【符号の説明】
3 ケーブル導体
5 絶縁層
7 半導電層
8 シース
11 プレモールド絶縁体
15 半導電テープ巻き渡り部
17 管状本体
19 クッション層
23 ヒータ
25 断熱層
27 熱電対
Claims (3)
- CVケーブル端末の絶縁表面の平滑化を行うモールド仕上処理のためのCVケーブルモールド用加熱管であって、CVケーブル端末が差し込まれる金属製の管状本体と、前記管状本体の内面に設けられた、前記CVケーブルの外面に接触する平滑内面を有する合成高分子材料製のクッション層と、前記CVケーブル端末を加熱するための加熱手段とを有するCVケーブルモールド用加熱管。
- 金属製の管状本体の内側に合成高分子材料製の平滑内面を有するクッション層が設けられてなる加熱管にCVケーブルの端末部を差し込み、ついで加熱により上記CVケーブルの絶縁体を膨張させ、上記クッション層の平滑内面に接触させることで平滑面を上記絶縁体の表面に転写させることによるCVケーブルの端末処理方法。
- 導体の周囲に絶縁層及び半導電層を有し、その周囲にシースの設けられたCVケーブルの端末処理方法であって、前記CVケーブル端末において前記シース及び半導電層並びに絶縁層を段剥ぎし、前記外部半導電層上から前記絶縁層上にかけて半導電テープを巻き回して半導電テープ巻き渡り部を形成し、次いでこのCVケーブル端末を金属製の管状本体の内側に合成高分子材料製の平滑内面を有するクッション層が設けられた加熱管に差し込み、次いで加熱を行うことにより、上記CVケーブルの絶縁体を膨張させて上記クッション層の平滑内面に接触させることで平滑面を上記絶縁体の表面に転写させ、かつ前記半導電テープ巻き渡り部の融着モールド処理を行うCVケーブルの端末処理方法。
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