JP4307983B2 - 光学素子成形用型及び光学素子成形方法 - Google Patents

光学素子成形用型及び光学素子成形方法 Download PDF

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Description

この発明は、レンズ、プリズム等の光学素子をガラス素材のプレス成形により製造するための光学素子成形用型及びこれを用いた光学素子成形方法に関する。
近年、このようなガラス素材から光学素子を製造する方法として、成形型を用いたプレス成形がある。この製造方法では、研磨加工を必要としないため、簡単且つ安価に光学素子を製造できる利点を有する。従来、このプレス成形に使用される光学素子成形用型としては、成形の際にガラス素材に接触する成形面の表面粗さを保持し、長時間にわたる光学素子の成形を可能とするものが種々検討されている。
すなわち、このような光学素子成形用型は、クロム、チタン等の金属材料を結合材として焼結した超硬合金やサーメットから形成される型母材と、光学素子を製造する際にガラス素材に直接接触する貴金属層と、これら型母材および貴金属層の間に形成される中間層とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
貴金属層は、白金、イリジウム等の貴金属材料から形成されており、ガラス素材の融着を防ぐようになっている。また、中間層は、窒化チタン、炭化クロム、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化タンタル、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア、チタン、クロムから選ばれる1種類以上の材料から形成されている。
上記のように、チタン、クロム等の金属材料を含む中間層の形成は、型母材に含まれる金属成分の成形面への析出防止を目的としている。また、この中間層の形成は、型母材と貴金属層との密着力向上による貴金属層の剥離防止、およびプレス成形における熱サイクルの応力緩和による成形面の粗さ増大の抑制を目的としている。
特公昭62−28093号公報
しかしながら、上記従来の光学素子成形用型においては、中間層が、チタン、クロム等の金属材料を含む化合物により形成されていた。このため、プレス成形を繰り返した際には、金属材料が成形面である貴金属層の表面に析出してガラス素材の融着を引き起こすという問題があった。また、貴金属層から中間層内部に微量の酸素が侵入し、この微量酸素が中間層を酸化させて密着力が低下するという問題があった。
さらに、プレス成形時の熱により成形面に析出した金属材料が酸化したり、貴金属層の成形面に不均一な結晶成長が発生したりするため、成形面の表面粗さが次第に増大するという問題があった。以上のことから、繰り返しプレス成形を行うことにより、成形される光学素子の面精度低下や、ガラス素材の食いつきによる離型不能といった不具合が発生するという問題があった。
なお、プレス成形時の熱によって貴金属層の成形面に不均一な結晶成長が発生する要因は、本発明者の鋭意研究により明らかにされた。
すなわち、本発明者は、中間層や貴金属層の成膜の結晶状態に応じて、光学素子の成形の際に発生する成形面粗さの増加に関係があることを見出した。また、表面層を形成する白金、イリジウム等の貴金属材料は、その直下に形成される中間層や型母材の結晶粒毎の結晶方位の影響を受けることを見出した。さらに、中間層にチタン、クロム等の金属材料を用いた場合、中間層の結晶粒毎の結晶方位が、その直下にある型母材の結晶粒毎の結晶方位の影響を受けることを見出した。
そして、上述した内容から、型母材を構成する材料の結晶粒径よりも大きい結晶粒で中間層を形成し、さらに表面層を貴金属材料により形成した場合には、貴金属層の結晶毎の結晶方位が、中間層自体の各結晶粒の結晶方位や、中間層を介して型母材の各結晶粒の結晶方位に影響を受けることを見出した。また、プレス成形の際には、熱による型母材の結晶成長や酸化の速度、進行度合いが、型母材の結晶粒毎に異なることを見出した。
以上の2点から、本発明者は、母材の結晶成長や酸化の速度、進行度合いが、母材の結晶粒毎に貴金属層の各結晶にそれぞれ異なる影響を与えて、貴金属層の各結晶の結晶成長や酸化の速度、進行度合いが異なるため、不均一な結晶成長等が発生し、成形面の粗さ増大を招くことを見出した。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、プレス成形により光学素子を繰り返し成形しても、成形面の表面粗さの増大を防止して、面精度の高い光学素子を成形できる光学素子成形用型及びこれを用いた光学素子成形方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、ガラス素材をプレス成形して光学素子を成形するための光学素子成形用型であって、焼結した超硬合金もしくは炭化ケイ素からなる型母材と、該型母材の表面上に形成され、プレス成形の際に前記ガラス素材に接触する表面層と、これら型母材と表面層との間に形成された中間層とを備え、前記表面層が、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウムから選択される少なくとも1種類の元素、またはこれら元素を含む合金、化合物から形成され、該中間層が、母材表面層と金属層と窒化物層を備え、該母材表面層が、前記型母材の表面に接触するように、タングステン、炭素、炭化タングステン、炭化ケイ素のうち少なくとも1種類の材料から非晶質状態に形成され、前記金属層が、前記母材表面層と前記表面層との間に、クロム、チタン、アルミ、モリブデンのうち少なくとも1種類の金属材料から形成され、前記窒化物層が、前記金属層と前記表面層との間にクロム、チタン、アルミ、モリブデンのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物から形成されることを特徴とする光学素子成形用型を提案している。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、母材表面層を非晶質状態に形成することにより、プレス成形の際に、型母材の結晶粒毎に異なる結晶方位の影響を表面層に与えないようにされている
したがって、この発明に係る光学素子成形用型によれば、光学素子成形用型を加熱することにより型母材において結晶成長や酸化が発生しても、型母材の結晶粒や結晶粒界の影響を表面層に与えることが無くなり、ガラス素材に接触する成形面の粗さの増加を防止できる。
また、この発明に係る光学素子成形用型によれば、クロム、チタン、アルミ、モリブデンからなる金属層を母材表面層と表面層との間に形成しておくことにより、十分な密着力を得ることができると共に、プレス成形時の熱サイクルによって発生する応力を緩和できる。
したがって、プレス成形を繰り返し行っても、表面層の剥離を確実に防止できる。
また更に、この発明に係る光学素子成形用型によれば、窒化クロム、窒化チタン、窒化アルミ、窒化アルミチタン、窒化モリブデンのような窒化物から形成される窒化物層は、耐熱性、耐酸化性に優れた性質を有しているため、繰り返しプレス成形を行っても、酸素が表面層の成形面から中間層内部に侵入することを防止できる。このため、酸素がクロムやチタン等から形成される金属層に到達することがなく、金属層の酸化による密着力の低下を防ぐことができる。したがって、表面層の剥離を長期間にわたって防止できる。
また、この窒化物層は、化合物としても安定しているため、金属層のチタン、クロム等の金属材料が表面層の成形面にまで析出しない。したがって、析出した金属材料の酸化による成形面の粗さ増加を防止できると共に、プレス成形の際にガラス素材が成形面に融着することを防止できる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光学素子成形用型において、前記窒化物層が、前記金属層に向けて窒素濃度が漸次減少する窒素濃度傾斜層を備えることを特徴とする光学素子成形用型を提案している。
この発明に係る光学素子成形用型によれば、窒素化合物からなる窒化物層と、窒素を含まない金属材料からなる金属層との境界が不明確となるため、プレス成形の温度を上昇させても窒化物層が金属層から剥離することがない。したがって、表面層が浮き上がることなく、表面層の成形面の粗さ増大を確実に防止できる。
請求項3にかかる発明は、請求項1に記載の光学素子成形用型を用いてガラス素材を成形することを特徴とする光学素子成形方法を提案している。
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、非晶質に形成されたタングステン、炭素、炭化タングステン、炭化ケイ素のうち少なくとも1種類からなる母材表面層を型母材に接触して形成しておくことにより、ガラス素材に接触する表面層の成形面の粗さが増加することを防止できるため、面精度の高い光学素子を成形することができる。
また、層と表面層との間にクロム、チタン、アルミ、モリブデンの少なくとも1種類の金属材料からなる金属層を備えることにより、繰り返しプレス成形を行う際に、表面層の剥離に基づくガラス素材の融着を確実に防いで、面精度の高い光学素子を成形することが可能となる。
また、金属層と表面層の間にチタンやクロムからなる窒化物層を形成しておくことにより、プレス成形の際に、ガラス素材が成形面に融着することを防止すると共に、金属層を形成する金属材料の酸化による密着力の低下も防ぐことができるため、長期間にわたって面精度の高い光学素子を成形することができる。
また、請求項2に係る発明によれば、窒化物層と金属層との境界を不明確とすることにより、表面層の成形面の粗さ増大を確実に防止できるため、面精度の高い光学素子をさらに長期にわたって成形することができる。
さらに、請求項3に係る発明によれば、光学素子の面精度が高いため、光学的精度の高い光学素子を得ることができる。
図1,2はこの発明に係る第1の実施形態を示す。この実施の形態に係る光学素子成形用型は、凸レンズ(光学素子)をプレス成形により製造するためのものである。この光学素子成形用型1は、図1に示すように、一対の型母材2,2と、各型母材2の表面2a上に形成され、プレス成形の際にガラス素材Mに接触する成形面3aを有する表面層3と、これら型母材2と表面層3との間に形成された中間層4とを備えている。
型母材2は、焼結した超硬合金または炭化ケイ素から形成されており、その表面2aは、凸レンズの曲率半径に合わせて凹面状に形成されている。
中間層4は、図2に示すように、型母材2の表面2aに接触して非晶質状態もしくは1〜2μmの結晶粒からなる結晶状態に形成されたタングステン、炭化タングステン等の材料からなる母材表面層5と、母材表面層5の表面5aに接触して形成され、クロム、チタン等の金属材料からなる金属層6と、金属層6の表面6aに接触して形成され、クロム、チタン等の元素を含む窒化物からなる窒化物層7とから構成されている。
表面層3は、白金、イリジウム等の金属材料からなり、窒化物7の表面7aに接触して形成されている。この表面層3は、RFスパッタ、イオンビームスパッタ、蒸着等のPVD(物理的気相成長法)やCVD(化学的気相成長法)により形成される。
なお、母材表面層5は、RFスパッタ、イオンビームスパッタ、蒸着等のPVD、CVD、母材表面層5を形成する材料をイオン注入する方法、母材表面層5を形成する材料にアルゴンガス等のイオンを電気的に加速して型母材に照射しながら成膜するイオンアシスト成膜法や、イオン注入しながら成膜するイオンビームミキシング法により形成される。また、結晶成長を効率よく抑制するために、母材表面層5の材料および型母材2の温度を母材表面層5の材料の結晶成長温度未満に制御しながら、母材表面層5を形成することが好ましい。これらの方法により非晶質状態もしくは1〜2μmの結晶粒からなる結晶状態に制御して母材表面層5を形成することが可能となる。
これら型母材2、母材表面層5、金属層6、窒化物層7および表面層3の材質および形成方法を変えて9種類の光学素子成形用型を作製した。具体的な構成を表1に示す。
Figure 0004307983
表1中の成形型1〜成形型3の形成方法は、以下の通りである。
はじめに、炭化タングステン(WC)を主成分とする超硬合金からなる型母材2を焼結により形成し、この型母材2の表面2aに炭化タングステン(WC)からなる母材表面層5をイオンビームスパッタにより形成する。次いで、クロム(Cr)からなる金属層6をイオンビームスパッタにより成膜し、窒化クロム(CrN)からなる窒化物層7を、窒素ガスを流しながらクロムをスパッタする反応スパッタにより形成する。最後に、白金−イリジウム合金(Pt−Ir)、又はイリジウム−レニウム合金(Ir−Re)、又は白金(Pt)からなる表面層3をスパッタにより形成する。
また、表1中の成形型4〜成形型6の形成方法は、以下の通りである。
はじめに、炭化タングステン(WC)を主成分とする超硬合金からなる型母材2を焼結により形成し、この型母材2の表面2aに炭化タングステン(WC)からなる母材表面層5をイオンビームスパッタにより形成する。次いで、チタン(Ti)からなる金属層6をRFスパッタにより成膜し、窒化チタン(TiN)からなる窒化物層7を、窒素ガスを流しながらチタンをスパッタする反応スパッタにより形成する。最後に、白金−イリジウム合金(Pt−Ir)、又はイリジウム−レニウム合金(Ir−Re)、又は白金(Pt)からなる表面層3をスパッタにより形成する。
また、表1中の成形型7〜成形型9の形成方法は、以下の通りである。
はじめに、炭化ケイ素(SiC)を主成分とする型母材2を焼結により形成し、この型母材2の表面2aに炭化ケイ素(SiC)からなる母材表面層5をCVDにより成膜する。その後、母材表面層5の表面5aを鏡面研磨して形成する。次いで、クロム(Cr)からなる金属層6をRFスパッタにより成膜し、窒化クロム(CrN)からなる窒化物層7を、窒素ガスを流しながらクロムをスパッタする反応スパッタにより形成する。最後に、白金−イリジウム合金(Pt−Ir)、又はイリジウム−レニウム合金(Ir−Re)、又は白金(Pt)からなる表面層3をRFスパッタにより形成する。
表1に示すように、上述した成形型1〜成形型9に対する3つの比較例の光学素子成形用型1として、母材表面層5を省略した比較例1と、母材表面層5および窒化物層7を省略した比較例2と、成形型4から母材表面層5、金属層6、窒化物層7を省略した比較例3とを作製した。これら比較例1〜比較例3の製造は、成形型1や成形型4と同様にして行われている。
なお、成形型1〜成形型3、成形型7〜成形型9における窒化物層7の組成は、表1においてCrNと表記されているが、実際には、CrNにCrあるいはCrNが混合したものでも良い。また、成形型4〜成形型6及び比較例1における窒化物層7の組成は、表1においてTiNと表記されているが、実際には、TiNにTiあるいはTiNが混合したものでも良い。さらに、成形型4〜成形型6及び比較例1における窒化物層7の組成は、TiNに限ることはなく、例えば、窒化アルミチタン(TiAlN)であってもよい。
以上の12種類の光学素子成形用型1について、光学素子成形用型1の温度を580℃に固定して、実際にガラス素材Mを用いて繰り返しプレス成形を行い、表面層3の成形面3aおよび凸レンズとなる成形品に不具合が発生するまでの成形回数に関してそれぞれ実験を行った。これらの実験結果を表2に示す。
Figure 0004307983
表2の結果によれば、本発明の実施形態である成形型1〜成形型9については、3000回以上のプレス成形を行っても、表面層3の成形面3a、および成形品に不具合が認められなかった。これに対して比較例1については、プレス成形を約140回繰り返した時点で成形品の表面が曇るという不具合が発生した。
比較例1について、この時点における表面層3の成形面3aの表面粗さを測定したところ、数値上の粗さ増加は確認されなかった。しかしながら、この成形面3aを形成する結晶粒を電子顕微鏡にて観察したところ、型母材2の結晶粒、結晶粒界と同様の模様が認められ、それぞれの結晶粒の表面の一部に微細な凹凸が存在し、さらに結晶粒界が顕著に目立っていた。これは、型母材2の表面2aに露出した結晶粒各々の結晶方位が異なり、その上に形成される金属層6や表面層3の結晶方位が型母材2の結晶方位の影響を受けて結晶粒単位で異なった膜形成をしているためである。つまり、金属層6や表面層3において、成形時の熱に応じて結晶成長や酸化の度合いが型母材2の結晶粒と同様の単位で異なるため、成形面3aの粗さが増大するものと考えられる。
また、成形品の表面を詳細に観察したところ、表面層3の成形面3aと同様の模様が認められた。以上のことから、成形面3aの微細な表面形状の変化が成形品の表面に転写され、曇りが発生したものと考えられる。
一方、成形型1〜成形型9について、表面層3の成形面3aを詳細に観察すると、型母材2の結晶粒、結晶粒界とは異なる模様となっており、金属層6、窒化物層7および表面層3が型母材2の結晶粒や結晶粒界の影響を受けていないことが分かる。これは、母材表面層5の結晶粒径を、型母材2の結晶粒径よりも小さい2μm以下としたためであると考えられる。
したがって、成形型1〜成形型9の場合には、光学素子成形用型1を加熱することにより型母材2において結晶成長や酸化が発生しても、型母材2の結晶粒や結晶粒界の影響が表面層3に伝達されないため、ガラス素材Mに接触する成形面3aの粗さの増大を防止できる。
また、比較例2については、プレス成形を約70回繰り返した時点でガラス素材Mが表面層3の成形面3aに融着する不具合が発生し、さらにプレス成形を繰り返したところ、成形品が割れてプレス成形の継続が不可能となった。この成形面3aを詳細に観察したところ、成形面3aの一部に変色が認められた。この変色部分は、元素分析によりクロムや酸化クロムであることが判明し、金属層6のクロムが成形面3aに析出して、その一部が酸化したものであることが分かった。したがって、プレス成形の際には、ガラス素材Mがこれらクロムおよび酸化クロムに融着したと考えられる。
一方、成形型1〜成形型9および比較例1について、表面層3の成形面3aを詳細に観察しても、前述の変色部分が見られなかった。これは、窒化クロム、窒化チタン、窒化アルミチタン等の窒化物が化合物として安定した性質を有し、金属層6を形成する金属材料が表面層3の成形面3aに析出することを阻止しているためである。したがって、プレス成形の際に、ガラス素材Mが成形面3aに融着することを防止できる。
また、これら窒化物は、耐熱性、耐酸化性に優れた性質を有しているため、繰り返しプレス成形を行っても、酸素が表面層3の成形面3aから金属層6まで侵入することを阻止する。したがって、繰り返しプレス成形を行っても、金属層6を形成する金属材料の酸化による密着力の低下も防ぐことができる。
また、比較例3では、プレス成形を約50回繰り返した時点でガラス素材Mが表面層3の成形面3aに融着し、成形品の一部が曇るという不具合が発生した。この成形面3aを詳細に観察したところ、密着力が低下して表面層3が型母材2から剥離していることが確認された。また、ガラス素材Mの融着および成形品の曇りが表面層3の剥離部分において発生していることが判明した。このことから、型母材2の露出によるガラス素材Mの融着や、露出した型母材2の酸化により表面粗さの増加に起因する成形品の曇りが発生すると考えられる。
一方、成形型1〜成形型9、比較例1について、表面層3の成形面3aを詳細に観察しても、表面層3の剥離が確認されなかった。これは、金属層6を形成するクロムやチタンが高い密着力を有していることを示しており、金属層6が表面層3の剥離を防止していることが分かる。
上記のように、この光学素子成形用型1によれば、非晶質もしくは粒径1〜2μmの結晶粒からなる結晶質に形成されたタングステン、炭素、炭化タングステン、炭化ケイ素のいずれか1つからなる母材表面層5を型母材2に接触して形成しておくことにより、プレス成形の際にガラス素材Mに接触する表面層3の成形面3aの粗さが増加することを確実に防止できるため、面精度の高い凸レンズを成形することができる。
また、母材表面層5と窒化物層7、表面層3との間にチタンやクロムからなる金属層6を形成しておくことにより、繰り返しプレス成形を行う際に、表面層3の剥離に基づくガラス素材Mの融着を確実に防いで、高い面精度の凸レンズを成形することが可能となる。
さらに、金属層6と表面層3の間にチタンやクロムからなる窒化物層7を形成しておくことにより、プレス成形の際に、ガラス素材Mが成形面3aに融着することを防止すると共に、金属層6を形成する金属材料の酸化による密着力の低下も防ぐことができるため、長期間にわたって面精度の高い凸レンズを成形することができる。
また、この光学素子成形用型1を用いて成形される凸レンズの面精度は高いため、光学的精度の高い凸レンズを得ることができる。
次に、図3は、この発明に係る第2の実施形態を示しており、この実施形態は、図1,2に示す光学素子成形用型1と基本的構成が同一であるが、窒化物層7の構成について異なっている。ここでは、図3において、窒化物層7について説明し、図1,2の構成要素と同一の部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
すなわち、窒化物層7は、金属層6に向けて窒素濃度が漸次減少する窒素濃度傾斜層8を備えている。この窒素濃度傾斜層8を有する3種類の光学素子成形用型1を作製した。具体的な構成を表3に示す。
Figure 0004307983
表3中の成形型10〜成形型12の形成方法は、以下の通りである。
はじめに、炭化タングステン(WC)を主成分とする超硬合金からなる型母材2を焼結により形成し、この型母材2の表面2aに炭化タングステン(WC)からなる母材表面層5をイオンビームスパッタにより形成する。次いで、クロム(Cr)からなる金属層6をイオンビームスパッタにより成膜し、その後、このクロム成膜を行いながら窒素ガスの導入量を0sccmから8sccmまで徐々に増加させることにより、窒素濃度が徐々に増加する窒素濃度傾斜層8を形成する。そして、窒素ガスの導入量を8sccmに保持した状態で、クロムをスパッタする反応スパッタにより窒化クロム(CrN)からなる残りの窒化物層7を形成する。最後に、白金−イリジウム合金(Pt−Ir)、又はイリジウム−レニウム合金(Ir−Re)、又は白金(Pt)からなる表面層3をイオンビームスパッタにより形成する。
また、これら成形型10〜成形型12に対する比較例として、第1の実施形態において記述した成形型1と同様の構成である比較例4を作製した。これら成形型10〜成形型12および比較例4は、窒素濃度傾斜層8の有無を除いて、型母材2、母材表面層5、金属層6、窒化物層7および表面層3の材質が同一となっている。
これら4種類の光学素子成形用型1について、実際にガラス素材Mを用いて繰り返しプレス成形を行い、表面層3の成形面3aおよび凸レンズとなる成形品に不具合が発生するまでの成形回数に関してそれぞれ実験を行った。成型時における光学素子成形用型1の温度は、3000回までのプレス成形において580℃とし、その後のプレス成形において600℃とした。これらの実験結果を表4に示す。
Figure 0004307983
表4の結果によれば、580℃で3000回のプレス成形を行っても、成形型10〜成形型12および比較例4に不具合は発生しなかった。しかしながら、600℃に変更してさらにプレス成形を行った結果、成形型10〜成形型12では、2000回以上のプレス成形を行っても不具合が発生しなかったのに対し、比較例4においては、約1500回のプレス成形を行ったあたりでガラス素材Mの融着が認められた。
この比較例4の表面層3の成形面3aを詳細に観察したところ、表面層3および窒化物層7の一部が金属層6から剥離し、剥離した部分には金属層6のクロムが露出していた。ガラス素材Mは、この金属層6のクロムに融着したものと考えられる。
上記のように、この光学素子成形用型1によれば、窒素濃度傾斜層8を形成して金属層6と窒化物層7との間に明瞭な境界をなくすことにより、プレス成形の温度を上昇させても、窒化物層7が金属層6から剥離することがないため、表面層3の成形面3aの粗さ増大を確実に防止できる。したがって、面精度の高い凸レンズをさらに長期にわたって成形することが可能となる。
また、この光学素子成形用型1を用いて成形される凸レンズの面精度は高いため、光学的精度の高い凸レンズを得ることができる。
なお、上記の実施の形態においては、母材表面層5の結晶粒径を1〜2μmとしたが、これに限ることはなく、少なくとも型母材2の結晶粒径よりも小さければよい。ただし、母材表面層5の結晶粒径は、小さい方が好ましく、1μm以下とすることが特に好ましい。
また、型母材2の表面2aに母材表面層5を形成するとしたが、これに限ることはなく、少なくとも金属層6を形成する下地が、非晶質状態もしくは型母材2の結晶粒径よりも小さい径の結晶粒からなる結晶質状態に形成されていればよい。したがって、例えば、型母材2を形成した後に、アルゴン等のイオンを型母材2の表面2aから注入して、型母材2の表面2a近傍を非晶質状態もしくは粒径1〜2μmの結晶粒からなる結晶質状態に形成し、この型母材2の表面2aに金属層6を形成するとしてもよい。
また、光学素子成形用型1の型母材2や各層を構成する材料の組み合わせは、成形型1〜成形型12に限ることはない。すなわち、型母材2は、炭化タングステン等の超硬合金や炭化ケイ素を主成分とした材料から選択すればよく、母材表面層5は、タングステン、炭素、炭化タングステン、炭化ケイ素のうち1種類以上の材料から選択すればよい。すなわち、例えば、成形型1〜成形型6における母材表面層5の組成を炭化タングステン(WC)からタングステン(W)に代えるとしても構わない。また、例えば、成形型7〜成形型9における母材表面層5の組成を炭化ケイ素(SiC)から炭素(C)に代えるとしても構わない。上記組成の場合には、母材表面層5をPVD、CVDの他に、イオン注入法により形成しても良い。
また、金属層6は、クロム、チタン、アルミ、モリブデンの少なくとも1種類の金属材料から選択すればよく、窒化物層7は、クロム、チタン、アルミ、モリブデンの少なくとも1種類の元素を含む窒化物から選択すればよい。ただし、金属層6の金属材料と、窒化物層7の窒化物に含まれる金属材料は同一であることが好ましい。
さらに、表面層3は、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウムの少なくとも1種類の金属材料、もしくはこれらの元素を含む合金、化合物から選択すればよい。すなわち、表面層3は、例えば、白金−パラジウム合金(Pt−Pd)、白金−レニウム合金(Pt−Re)、イリジウム−ルテニウム合金(Ir−Ru)等の合金や、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)のみの金属材料から形成されるとしてもよい。
また、光学素子成形用型1の中間層4は、母材表面層5、金属層6及び窒化物層7から構成されるとしたが、これに限ることはなく、母材表面層5及び金属層6のみから構成されるとしても構わない。この構成においても、プレス成形の際に表面層3の剥離に基づくガラス素材Mの融着を確実に防止できる、という効果を奏する。
さらに、この中間層4は、上記構成からさらに金属層6を除く構成としてもよい、すなわち、母材表面層5のみから構成されるとしてもよい。この構成においても、プレス成形の際にガラス素材Mに接触する表面層3の成形面3aの粗さが増加することを確実に防止できる、という効果を奏する。
また、光学素子成形用型1は、凸レンズを成形するものとしたが、これに限ることはなく、平面レンズ、凹レンズ、プリズム、あるいは光学面を有するセル等の光学素子を成形するものであればよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
この発明の第1、第2の実施形態に係る光学素子成形用型の構成を示す概略図である。 この発明の第1の実施形態に係る光学素子成形用型において、図1の要部を示す拡大断面図である。 この発明の第2の実施形態に係る光学素子成形用型において、図1の要部を示す拡大断面図である。
符号の説明
1 光学素子成形用型
2 型母材
2a 表面
3 表面層
4 中間層
5 母材表面層
6 金属層
7 窒化物層
8 窒素濃度傾斜層
M ガラス素材

Claims (3)

  1. ガラス素材をプレス成形して光学素子を成形するための光学素子成形用型であって、
    焼結した超硬合金もしくは炭化ケイ素からなる型母材と、該型母材の表面上に形成され、プレス成形の際に前記ガラス素材に接触する表面層と、これら型母材と表面層との間に形成された中間層とを備え、
    前記表面層が、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、レニウムから選択される少なくとも1種類の元素、またはこれら元素を含む合金、化合物から形成され、
    該中間層が、母材表面層と金属層と窒化物層を備え、
    該母材表面層が、前記型母材の表面に接触するように、タングステン、炭素、炭化タングステン、炭化ケイ素のうち少なくとも1種類の材料から非晶質状態に形成され
    前記金属層が、前記母材表面層と前記表面層との間に、クロム、チタン、アルミ、モリブデンのうち少なくとも1種類の金属材料から形成され、
    前記窒化物層が、前記金属層と前記表面層との間にクロム、チタン、アルミ、モリブデンのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物から形成されることを特徴とする光学素子成形用型。
  2. 前記窒化物層が、前記金属層に向けて窒素濃度が漸次減少する窒素濃度傾斜層を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学素子成形用型。
  3. 請求項1に記載の光学素子成形用型を用いてガラス素材を成形することを特徴とする光学素子成形方法。
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