JP4304858B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば燃料を直接筒内に噴射するための内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンと言う)用の燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディーゼルエンジン等においては、環境保護の観点から排気ガス中に含まれる有害成分の低減、さらに燃費向上を達成するために燃料噴射による噴霧を最適化し、これを達成することが望まれている。具体的には、例えば噴射初期には噴射率を低下させ、噴射中期には噴射率を増加させる。これは着火遅れ期間中の噴射量を抑制し、NOx生成量を低減させて、かつ噴射中期の噴射率を増加し短期間に必要燃料を噴射させることで燃焼を活発化させ、排気ガス中に含まれる有害成分のひとつである黒煙の排出量を低減することが可能である。
【0003】
このような燃料噴射の最適化を目的とした燃料噴射弁として、例えばニードルリフトを低減し、シート絞り、つまり実噴射圧力を低下させた状態で噴射させる手法が数多く提案されている。しかし、この手法では充分な排気浄化効果は得られない。
【0004】
これを改善する方法として、ニードルを2本設けて各ニードルによって開閉する噴孔を有する噴射弁が提案されている。これを目的とした燃料噴射弁として、蓄圧式燃料噴射弁では特開平9−32687号公報に開示されているのが知られている。
【0005】
特開平9−32687号公報に開示されている燃料噴射弁は、例えば図12に示す構成からなる。図12中の第2のノズルニードル625は中空円筒状の第1のノズルニードル620に往復移動可能に収容されている。図示しない第1の圧力制御室内の高圧燃料が排出されると、第1のノズルニードル620はリフトし、コモンレールから供給された高圧燃料が第1の噴孔631から噴射される。第1のノズルニードル620のリフト途中でシム635が第2のノズルニードル625の端面627aに係止されると、第2のノズルニードル625は第1のノズルニードル620とともにリフトし、第1の噴孔631に加えて第2の噴孔632からも燃料が噴射される。第1のノズルニードル620のリフトに応じて第2のノズルニードル625がリフトするので、燃料の噴霧分布が拡大する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図12の従来の提案にある燃料噴射弁の構成では、第1のノズルニードル620が第2のノズルニードル625を持上げる部位である第2のノズルニードル625の端面627aが第1シート部611よりかなり上流に設けられ、第2のノズルニードル625を閉弁付勢するスプリング629がディスタンスピース613内にある。ディスタンスピース613は、第1のノズルニードル620と第2のノズルニードル625を内部軸方向の設けたノズルボディ611の上部に配置させている。つまりスプリング629がノズルボディ611の外部にある。
【0007】
従って、第2のノズルニードル625の全長が第1のノズルニードル20の全長とほぼ等しく、また同軸上にあるため第1のノズルニードル620の外形がφ4〜5mmである場合、第2のノズルニードル625の径はφ1〜3mmとなり、この径内にスプリング629を装着することは困難である。更に、第2のノズルニードル625が中空ニードルを形成し、かつ全長が長いので強度上問題である。これを回避するには第1、第2のノズルニードル径を全体的に大きくする必要があるが、これでは燃料噴射弁が大型化してしまい、エンジンへの装着が困難となり問題である。
【0008】
本発明は上記事情に基づいて成されたものであり、その目的は先行および後発してリフトする両ニードルの強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能な燃料噴射弁を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1記載の燃料噴射弁によると、アウターニードルとインナーニードルの2本のニードルを同軸関係にて往復移動可能に配置させ、先行してリフトするインナーニードルのリフトを制御すれば、このインナーニードルのリフトに引き続いて係止機構部がアウターニードルをリフトさせる。このように、2本のニードルのリフトにより第1の噴孔から第2の噴孔を段階的に開閉できる燃料噴射弁の構成とし、後発してリフトするアウターニードルの全長は先行してリフトするインナーニードルより短い構成とした。つまり、後発してリフトするアウターニードルの軸方向の長さを短く押さえて、ニードルの直径(D)に対するニードルの軸方向の長さ(L)の比率、L/D(以降、単にL/Dと表記する)を小さく設計できることによる強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能となる。
【0011】
本発明の請求項1記載の燃料噴射弁によると、係止機構部を燃料溜まりの燃料下流側に設ける構成としたことで、後発してリフトするアウターニードルの軸方向の長さを更に短く押さえて、L/Dを小さく設計できることによる強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能となる。
【0015】
本発明の請求項1記載の燃料噴射弁によると、先行してインナーニードルがリフトすることにより、第1の噴孔の燃料下流側より高圧燃料が導かれ第1の噴孔より燃料が噴射する。よって、第1の噴孔の上流側と下流側の2箇所に第1の弁座を設ける構成とすることにより、インナーニードルがリフトしても第1の噴孔より燃料が噴射することがない。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の参考例および実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(第1参考例)
本発明の第1参考例による燃料噴射弁を適応した燃料供給システムの一例を図4に示す。高圧燃料供給ポンプ1Aから燃料配管2Aを通してコモンレール3Aに供給される高圧の燃料はコモンレール3A内の蓄圧室で一定の高圧に蓄圧され、燃料配管4Aを介して各気筒に配設された燃料噴射弁31に供給される。燃料噴射弁31に供給された燃料のうち余剰燃料は燃料タンク5Aにリターンされる。
【0026】
次に、本発明の第1参考例の燃料噴射弁を図1、図2及び図3を用いて説明する。図1は、本発明の第1参考例による燃料噴射弁のノズル部を示す全体断面図である。図2は、本発明の第1参考例による燃料噴射弁のノズル部を示す部分断面図である。図3は、本発明の第1参考例による燃料噴射弁全体を示す模式的断面図である。
【0027】
先ず、本発明の課題である先行および後発してリフトする両ニードルの強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応方法について述べる。アウターニードル1とインナーニードル8の2本のニードルを備える燃料噴射弁において、アウターニードル1が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、インナーニードル8をリフトさせる係止機構部をノズルボディ2内の内部の第1の弁座16より上流側に設ける構成とした。係止機構部はアウターニードル1の軸部に孔部である調整穴14を設け、インナーニードル8の軸部に係止軸部であるリフトピン15を貫通するという簡潔な構成とした。
【0028】
このように、係止機構部をノズルボディ2内に設ける構成により、後発してリフトするインナーニードル8をノズルボディ2内にコンパクトに構成することが可能となる。具体的には、例えばインナーニードル8の軸方向の長さを短く押さえて、L/Dを小さく設計できることによる強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能となる。更にインナーニードル8を小型軽量化できたことにより、インナーニードル8のリフトの作動応答性が向上する。
【0029】
以下、上述した係止機構部を採用した燃料噴射弁31の詳細について述べる。燃料噴射弁31は図示しないエンジンの各シリンダ毎のエンジンヘッドに挿入搭載され、エンジンのシリンダとシリンダ内を往復運動するピストンとの間に形成された燃焼室に向けて燃料を噴射するように構成されている。燃料噴射弁31には、アウターニードル1のリフトを制御する制御手段を備えている。制御手段は、制御室22と制御ピストン21により構成され、制御室22内の燃料圧力を制御することによりアウターニードル1を軸方向に往復動させ、燃料噴射弁31の噴射時期および噴射量を調整している。アウターニードル1のリフトに従いリフトするインナーニードルとの関係については、後述する。
【0030】
燃料供給ポンプ1Aから蓄圧室3Aを経て供給される高圧燃料は、燃料入口27、燃料導入通路28を経由して燃料溜まり3に供給され、かつ制御室22にも供給される。電磁弁30の制御により、制御室22内の高圧燃料は燃料タンク5Aに排出可能である。
【0031】
燃料噴射弁31のノズルボディ2内にはアウターニードル1が摺動自在に収容され、摺動部下には油溜り3、燃料通路4が設けられ、その下流にシート面5が設けられ、アウターニードル1の内側にインナーニードル8が摺動自在に収容されている。インナーニードル上端部9に噴射燃料圧力が加圧可能なように、アウターニードル1にはニードル内を左右に貫通するバイパス通路10、およびインナーニードル8がアウターニードル1内を摺動可能でバイパス通路10に連通する閉弁室11を有する。更に、アウターニードル1にはインナーニードル8の円筒部12と摺動可能なガイド部13、アウターニードル1内を左右に貫通する調整穴14が連通している。そしてインナーニードル8内を左右に挿入されるリフトピン15が調整穴14内に位置している。調整穴14内下端部とリフトピン15下端部間寸法がインナー無効リフト量(HD0)を定める。
【0032】
アウターニードル1の先端には、上記シート面5と接触する着座部分が設けられ、このアウターニードル1の着座する部分がシート面5に着座することにより、シート面5に第1の弁座16を形成している。このように形成された第1の弁座16が燃料通路4と第1の噴孔6との連通を遮断している。
【0033】
インナーニードル8の先端には、上記シート面5と接触する着座部分が設けられ、このインナーニードル8の着座する部分がシート面5に着座することにより、シート面5に第2の弁座17を形成している。このように形成された第2の弁座17が第1の噴孔6と第2の噴孔7との連通を遮断している。
【0034】
第1の噴孔6は燃料通路4よりも燃料下流側に設けられ、第2の噴孔7は第1の噴孔6よりも燃料下流側に設けられている。第1の弁座16は通路4と第1の噴孔6との間に設けられ、第2の弁座17は第1の噴孔6と第2の噴孔7との間に設けられている。第2の弁座17よりも燃料下流側には第2の噴孔7と連通するサック室3aが形成されており、インナーニードル8のリフト時、第2の噴孔7から初期噴射される燃料を一時的に蓄えている。
【0035】
アウターニードル1の反噴射側端部にはプレッシャピン19を介して制御ピストン21が形成されており、プレッシャピン19には噴孔閉塞方向に付勢する第1ばね20を備える。
【0036】
制御室22内の燃料圧力を制御する電磁弁30は、電磁コイル23、制御弁24、第2ばね25および制御室22と燃料タンク5Aに排出される通路を連通する出口絞り26により構成され、制御弁24により出口絞り26の開閉操作を行う。
【0037】
電磁コイル23への通電オフ時、制御弁24は第2ばね25の付勢力により出口絞り26部を閉塞している。そして、制御室22に高圧燃料が供給され、アウターニードル1が第1ばね20により第1の弁座16に向けて受ける付勢力と制御室22内の燃料圧力から第1の弁座16に向けて受ける力との和は、燃料溜まり3内の燃料圧力によりリフト方向に受ける力よりも大きくなるので、アウターニードル1は第1の弁座16に着座している。
【0038】
電磁コイル23への通電オン時、制御弁24は出口絞り26部を開放し制御室22内の高圧燃料は出口絞り26を経て燃料タンクに排出され、制御室22内の燃料圧力が低下することによりアウターニードル1は第1の弁座16から離座しリフトする。
【0039】
ここで、アウターニードル1のリフトに従いリフトするインナーニードル8との関係について説明する。調整穴14内下端部とリフトピン15下端部間寸法であるインナー無効リフト量(HD0)のリフト行程間は、アウターニードル1が第1の弁座16から離座、リフトし第1の噴孔6のみから噴射が行われ、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させることができる。
【0040】
ここから、更にアウターニードル1がリフトすると調整穴14内下端部とリフトピン15下端部が接触し、インナーニードル8を第2の弁座17から離座させる。このインナーニードル8は、僅かでもリフトすると高圧燃料がインナーニードル円錐面18全体に負荷するため、インナーニードル8は瞬時にリフトし、第2の噴孔7からも燃料を噴射する。従って、噴射中期の噴射率を増加できる。
【0041】
アウターニードル1の最大リフト量(HDmax)は、規制部材29下端とアウターニードル1の上端面1a間の軸方向寸法で決定される。インナーニードル8のリフト量は(HDmax−HD0)となる。このように、2段階の燃料噴射率で燃料を噴射することが可能となり、燃料の噴霧分布が拡大する。このように一連の噴射作動において、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させることができるので、初期噴射時において燃料が良好に微粒化して燃焼室内に噴射され燃焼効率が高くなる。
【0042】
次いで、更にリフトし噴射中期の噴射率を増加させることで着火遅れ期間中の噴射量を抑制し、NOx生成量を低減させて、噴射中期の噴射率を増加し短期間に必要燃料を噴射させることで燃焼を活発化させ、排気ガス中に含まれる有害成分のひとつである黒煙の排出量を低減することができる。
【0043】
(第2参考例)
本発明の第2参考例による燃料噴射弁を図5に示す。図5は、本発明の第2参考例による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す部分断面図である。先ず、本発明の課題である先行および後発してリフトする両ニードルの強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応方法について説明する。
【0044】
アウターニードル101とインナーニードル108の2本のニードルを備える燃料噴射弁において、アウターニードル101が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、インナーニードル108をリフトさせる係止機構部をノズルボディ102内の内部の第1の弁座116より下流側に設ける構成とした。係止機構部はアウターニードル101にインナーニードル108内を摺動可能なリフトピン115を設け、インナーニードル108の下端部121とリフトピン115の上端部が係止する簡潔な構成とした。
【0045】
このように、係止機構部をノズルボディ102内に設ける構成により、後発してリフトするインナーニードル108をノズルボディ102内にコンパクトに構成することが可能となる。具体的には、例えばインナーニードル108の軸方向の長さを短く押さえて、L/Dを小さく設計できることによる強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能となる。更にインナーニードル108を小型軽量化できたことにより、インナーニードル108のリフトの作動応答性が向上する。
【0046】
以下、上述した係止機構部を採用した燃料噴射弁31の詳細について述べる。第1参考例では、先行してリフトするアウターニードル1に遅れてインナーニードル8がリフトすると、先行してリフトするアウターニードル1が所定のリフト量に達し、後発してリフトするインナーニードル8を持上げる係止機構部を、第1の弁座16より上流側に形成させたが、第2参考例では、先行してリフトするアウターニードル101に遅れてインナーニードル108がリフトすると、先行してリフトするアウターニードル101が所定のリフト量に達し、後発してリフトするインナーニードル108を持上げる係止機構部を、第1の弁座116より下流側に形成させた例を示す。第1参考例とは係止機構部の位置・構成のみ異なり、他の構成、作動は同じなので説明を省略する。
【0047】
第2参考例で示す係止機構部周辺の構成を説明する。ノズルボディ102内にはアウターニードル101が摺動自在に収容され、燃料通路104、その下流にシート面105が設けられ、アウターニードル101の内側にインナーニードル108が摺動自在に収容されている。インナーニードル上端部109に噴射燃料圧力が加圧可能なように、アウターニードル101にはニードル内を左右に貫通するバイパス通路110を有する。更に、アウターニードル101にはインナーニードル108の円筒部112と摺動可能なガイド部113を備える。そしてインナーニードル108内を摺動可能なリフトピン115がインナーニードル108内を貫通し、アウターニードル101のバイパス通路110内上端部に支持されている。インナーニードル108の下端部121とリフトピン115の上端部120間寸法がインナー無効リフト量(HD0)を定める。
【0048】
アウターニードル101の先端には、上記シート面105と接触する着座部分が設けられ、このアウターニードル101の着座する部分がシート面105に着座することにより、シート面105に第1の弁座116を形成している。このように形成された第1の弁座116が燃料通路104と第1の噴孔106との連通を遮断している。
【0049】
インナーニードル108の先端には、上記シート面105と接触する着座部分が設けられ、このインナーニードル108の着座する部分がシート面105に着座することにより、シート面105に第2の弁座117を形成している。このように形成された第2の弁座117が第1の噴孔106と第2の噴孔107との連通を遮断している。
【0050】
第1の噴孔106は燃料通路104よりも燃料下流側に設けられ、第2の噴孔107は第1の噴孔106よりも燃料下流側に設けられている。第1の弁座116は燃料通路104と第1の噴孔106との間に設けられ、第2の弁座117は第1の噴孔106と第2の噴孔107との間に設けられている。第2の弁座117よりも燃料下流側には第2の噴孔107と連通するサック室103aが形成されており、インナーニードル108のリフト時、第2の噴孔107から初期噴射される燃料を一時的に蓄えている。
【0051】
インナーニードル108の下端部とリフトピン115の上端部120間寸法であるインナー無効リフト量(HD0)のリフト行程間は、アウターニードル101が第1の弁座116から離座しリフトし第1の噴孔106のみから噴射が行われ、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させることができる。
【0052】
ここから、更にアウターニードル101がリフトするとインナーニードル108の下端部とリフトピン115の上端部120が接触し、インナーニードル108を第2の弁座117から離座させる。このインナーニードル108は、僅かでもリフトすると高圧燃料がインナーニードル円錐面118全体に負荷するため、インナーニードル108は瞬時にリフトし、第2の噴孔107からも燃料を噴射する。従って、噴射中期の噴射率を増加できる。以上の構成により第2参考例でも第1参考例と同様の噴射形態が得られる。
【0053】
(第3参考例)
本発明の第3参考例による燃料噴射弁を図6に示す。図6は、本発明の第3参考例による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す部分断面図である。先ず、本発明の課題である先行および後発してリフトする両ニードルの強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応方法について説明する。アウターニードル301とインナーニードル308の2本のニードルを備える燃料噴射弁において、インナーニードル301が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、アウターニードル308をリフトさせる係止機構部をノズルボディ302内の内部の第1の弁座316より下流側に設ける構成とした。係止機構部はインナーニードル308に先端首端面333を設け、アウターニードル301の先端端面部334が係止する簡潔な構成とした。
【0054】
このように、係止機構部をノズルボディ302内に設ける構成により、後発してリフトするアウターニードル301をノズルボディ302内にコンパクトに構成することが可能となる。具体的には、例えばアウターニードル301の軸方向の長さを短く押さえて、L/Dを小さく設計できることによる強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能となる。更にアウターニードル308を小型軽量化できたことにより、アウターニードル308のリフトの作動応答性が向上する。
【0055】
以下、上述した係止機構部を採用した燃料噴射弁31の詳細について述べる。第1参考例では、先行してリフトするアウターニードルに遅れてインナーニードルがリフトすると、先行してリフトするアウターニードルが所定のリフト量に達し、後発してリフトするインナーニードルを持上げる係止機構部を、第1の弁座より上流側に形成させたが、第3参考例では、先行してリフトするインナーニードルに遅れてアウターニードルがリフトすると、先行してリフトするインナーニードルが所定のリフト量に達し、後発してリフトするアウターニードルを持上げる係止機構部を、第1の弁座316より下流側に形成させた例を示す。第1参考例とは先行してリフトするニードル、および係止機構部の位置・構成が異なる。他の構成、作動は同じなので説明を省略する。
【0056】
第3参考例で示すニードル、および係止機構部周辺の構成を説明する。ノズルボディ302内には、第1参考例の説明時に示した図3中のプレッシャピン19、制御ピストン21を上部に構成するアウターニードル1に代わって、インナーニードル308が摺動自在に収容され、摺動部下には油溜り303がある。油溜り303より下部において、アウターニードル301はノズルボディ302内を摺動自在に収容され、アウターニードル301の内側にインナーニードル308が摺動自在に収容されるようインナーニードル308の外径は細く変化し構成される。つまり、油溜り303にアウターニードル301の上端面352を位置し、ノズルボディ302とアウターニードル301の摺動下部にシート面305が構成される。
【0057】
油溜り303内の高圧燃料は、アウターニードル301の内径部とインナーニードル108の外形部の間に設けた燃料通路304を経由してアウターニードル301の下端部の蓄圧室337に蓄えられる。後発してリフトするアウターニードル301の上端面352は、油溜り303に位置しているので噴射燃料圧力がアウターニードル301の上端面352に作用し閉弁力として作用する。更に、閉弁力の補助としてアウターニードル301の摺動部径と同等の外径を持つ微力のスプリング350を付加してもよい。
【0058】
図6に示す燃料噴射弁には、スプリング350を付加した例を示す。スプリング350はインナーニードル308の首下端面351とアウターニードル301の上端面352間に当接される。アウターニードル301の先端端面部334とインナーニードル308の先端首端面333間寸法がインナー無効リフト量(HD0)を定める。
【0059】
ここで、インナーニードル308がリフトしアウターニードル301の先端端面部334とインナーニードル308の先端首端面333が当接すると、燃料通路304と第1の噴孔306、および第2の噴孔307への燃料供給路が閉塞されるのを防ぐため、アウターニードル301の先端端面部334に通路溝335を複数設けている。
【0060】
アウターニードル301の先端には、上記シート面305と接触する着座部分が設けられ、このアウターニードル301の着座する部分がシート面305に着座することにより、シート面305に第1の弁座316を形成している。このように形成された第1の弁座316が燃料通路304と第1の噴孔306との連通を遮断している。
【0061】
インナーニードル308の先端には、上記シート面305と接触する着座部分が設けられ、このインナーニードル308の着座する部分がシート面305に着座することにより、シート面305に第2の弁座317を形成している。このように形成された第2の弁座317が蓄圧室337と第2の噴孔307との連通を遮断している。
【0062】
第2の噴孔307は第1の噴孔306よりも燃料下流側に設けられている。第1の弁座316は蓄圧室337と第1の噴孔306との間に設けられ、第2の弁座317は蓄圧室337と第2の噴孔307との間に設けられている。第2の弁座317よりも燃料下流側には第2の噴孔307と連通するサック室103aが形成されており、インナーニードル308のリフト時、第2の噴孔307から初期噴射される燃料を一時的に蓄えている。
【0063】
アウターニードル301の先端端面部334とインナーニードル308の先端首端面333間寸法であるインナー無効リフト量(HD0)のリフト行程間は、インナーニードル308が第2の弁座317から離座しリフトし第2の噴孔307のみから噴射が行われ、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させることができる。
【0064】
ここから、更にインナーニードル308がリフトするとアウターニードル301の先端端面部334とインナーニードル308の先端首端面333が接触し、アウターニードル301を第1の弁座316から離座させる。このアウターニードル301は、僅かでもリフトすると高圧燃料がアウターニードル円錐面318全体に負荷するため、アウターニードル301は瞬時にリフトし、第1の噴孔306からも燃料を噴射する。従って、噴射中期の噴射率を増加できる。以上の構成により第3参考例でも第1参考例と同様の噴射形態が得られる。
【0065】
(実施形態)
本発明の一実施形態による燃料噴射弁を図7に示す。図7は、本発明の一実施形態による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す全体断面図である。先ず、本発明の課題である先行および後発してリフトする両ニードルの強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応方法について説明する。
【0066】
アウターニードル401とインナーニードル408の2本のニードルを備える燃料噴射弁において、インナーニードル401が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、アウターニードル408をリフトさせる係止機構部をノズルボディ402内の内部の第1の弁座416より上流側に設ける構成とした。係止機構部はインナーニードル408に先端首端面433を設け、アウターニードル401の奥端面434が係止する簡潔な構成とした。
【0067】
このように、係止機構部をノズルボディ402内に設ける構成により、後発してリフトするアウターニードル401をノズルボディ402内にコンパクトに構成することが可能となる。具体的には、例えばアウターニードル401の軸方向の長さを短く押さえて、L/Dを小さく設計できることによる強度上の信頼性向上、並びに燃料噴射弁の小型化への対応が可能となる。更にアウターニードル408を小型軽量化できたことにより、アウターニードル408のリフトの作動応答性が向上する。
【0068】
以下、上述した係止機構部を採用した燃料噴射弁31の詳細について述べる。第3参考例では、先行してリフトするインナーニードルに遅れてアウターニードルがリフトすると、先行してリフトするインナーニードルが所定のリフト量に達し、後発してリフトするアウターニードルを持上げる係止機構部を、第1の弁座より下流側に形成させたが、本実施形態では、先行してリフトするインナーニードルに遅れてアウターニードルがリフトすると、先行してリフトするインナーニードルが所定のリフト量に達し、後発してリフトするアウターニードルを持上げる係止機構部を、第1の弁座より上流側に形成させた例を示す。第3参考例とは係止機構部の位置・構成のみ異なり、他の構成、作動は同じなので説明を省略する。
【0069】
本実施形態で示す係止機構部周辺の構成を説明する。油溜り403内の高圧燃料は、アウターニードル401の内径部とインナーニードル408の外形部の間に設けた燃料通路404を経由してアウターニードル401の下端部の蓄圧室437に蓄えられる。後発してリフトするアウターニードル401の上端面452は、油溜り403に位置し、噴射燃料圧力がアウターニードル401の上端面452に作用し閉弁力として作用する。更に、閉弁力の補助としてアウターニードル401の摺動部径と同等の外径を持つ微力のスプリングを付加してもよい。図7に示す燃料噴射弁には、スプリングを付加しない例を示す。
【0070】
アウターニードル401の奥端面部434とインナーニードル408の先端首端面433間寸法がインナー無効リフト量(HD0)を定める。ここで、インナーニードル408がリフトしアウターニードル401の奥端面部434とインナーニードル408の先端首端面433が当接すると、燃料通路404と第1の噴孔406、および第2の噴孔407への燃料供給路が閉塞されるのを防ぐため、インナーニードル408の先端首端面433下部に通路溝435を複数設けている。
【0071】
ノズルボディ402とアウターニードル401の摺動下部にシート面405が構成され、アウターニードル401の先端には、シート面405と接触する着座部分が設けられ、このアウターニードル401の着座する部分がシート面405に着座することにより、シート面405に第1の弁座416を形成している。このように形成された第1の弁座416が蓄圧室437と第1の噴孔406との連通を遮断している。
【0072】
インナーニードル408の先端には、上記シート面405と接触する着座部分が設けられ、このインナーニードル408の着座する部分がシート面405に着座することにより、シート面405に第2の弁座417を形成している。このように形成された第2の弁座417が蓄圧室437と第2の噴孔407との連通を遮断している。
【0073】
尚、先行してリフトするニードルがインナーニードルで後発してリフトするニードルがアウターニードルの場合、図8に示す構成とする。図8にアウターニードル401が第1の弁座416に着座する状態を示す。図8に示すように、アウターニードル401の先端部には、切欠き部453が形成され、この切欠き部453の下流側、上流側の各々のエッジがシート部401a,401bを構成している。
【0074】
シート部401a,401bは、アウターニードル401が下降したとき、同時に第1の弁座416に着座するように構成されている。シート部401aの第1の弁座416への着座によって、第1の噴孔406よりも図中下側と第1の噴孔406との連通を遮断する。これにより、通路溝435および蓄圧室437を介して流れてくる燃料が、第1の噴孔406から流出することを防止する。一方、シート部401bの第1の弁座416への着座によって、第1の噴孔406よりも図中上側と第1の噴孔406との連通を遮断する。これにより、アウターニードル401の外周と、ノズルボディ402の内周との間から漏れてくる燃料が、第1の噴孔406から流出することを防止する。
【0075】
第2の弁座417よりも燃料下流側には第2の噴孔407と連通するサック室403aが形成されており、インナーニードル408のリフト時、第2の噴孔407から初期噴射される燃料を一時的に蓄えている。
【0076】
アウターニードル401の奥端面部434とインナーニードル408の先端首端面433間寸法であるインナー無効リフト量(HD0)のリフト行程間は、インナーニードル408が第2の弁座417から離座、リフトし第2の噴孔407のみから噴射が行われ、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させることができる。
【0077】
ここから、更にインナーニードル408がリフトするとアウターニードル401の奥端面部434とインナーニードル408の先端首端面433が接触し、アウターニードル401を第1の弁座416から離座させる。このアウターニードル401は、僅かでもリフトすると高圧燃料がアウターニードル円錐面418全体に負荷するため、アウターニードル401は瞬時にリフトし、第1の噴孔406からも燃料を噴射する。従って、噴射中期の噴射率を増加できる。以上の構成により本実施形態でも第3参考例と同様の噴射形態が得られる。
【0078】
(第4参考例)
本発明の第4参考例である燃料噴射弁を図9に示す。図9は、本発明の第4参考例による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す部分断面図であり、図5に示した燃料噴射弁のアウターニードル101、およびインナーニードル108からなる2つのニードルに対して、アッパーニードル701とアッパーニードル701の噴射側軸端部に配置するロワーニードル708の構成とし、アッパーニードル701が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、ロワーニードル708をリフトさせる係止機構部を備えた点が異なる。図5に示す第2参考例と実質的に同一構成部品に同一符号を付し、説明を省略する。なお、図9は、アッパーニードル701、およびロワーニードル708ともにリフトする前の状態を示す。
【0079】
以下、第4参考例で示すアッパーニードル701とロワーニードル708周辺の構成を説明する。ノズルボディ2内に摺動自在に収容され、シート面705に構成された第1の弁座716に着座することにより燃料通路704と第1の噴孔706との連通を遮断するアッパーニードル701と、シート面705に構成された第2の弁座717に着座することにより燃料通路704と第2の噴孔707との連通を遮断するロワーニードル708とを備える燃料噴射弁とした。そして、ロワーニードル708をアッパーニードル701の噴射側軸端部に配置させた。また、アッパーニードル701とロワーニードル708との間に設定されて、アッパーニードル701が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、ロワーニードル708をリフトさせる係止機構部とを備える構成とした。
【0080】
上述した係止機構部は、アッパーニードル701の軸方向に配設されるとともに、一端がアッパーニードル701の噴射側軸端部701aに拘持される軸部714を備えた。この軸部714は、アッパーニードル701の軸中心に穴部を設けて圧入される。そして、軸部714がロワーニードル708の軸方向に設けた穴部708aを摺動可能に貫通し、その貫通した軸部714の他端にロワーニードル708の噴射側軸端面721と係止する係止部715とを備えた。この係止部715は軸部714と一体形成され、組付け時においては、図9中下方よりロワーニードル708の穴部708aを通した後にアッパーニードル701の穴部に圧入される。
【0081】
上記した構成により、アッパーニードル701が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、係止部715の上端面720がロワーニードル708の噴射側軸端面721と係止して、ロワーニードル708をリフトさせるのである。そして、ロワーニードル708の噴射側軸端面721と係止部715の上端面720間寸法がインナー無効リフト量(HD0)を定めている。
【0082】
なお、係止機構部は上記した構成に限定されるものではなく、アッパーニードル701が先行してリフトし所定のリフト量に達すると、ロワーニードル708をリフトさせればよいのである。例えば上述した係止機構部のように軸部714がロワーニードル701を貫通するのではなく、ロワーニードルのアッパーニードル側端部を窪ませ、アッパーニードルにこの窪みに嵌まりかつ係止する形状の延接部を設け、両ニードル間を係止させる構成等が考えられる(図示せず)。
【0083】
また、アッパーニードル701の噴射側軸端部701aとロワーニードル708の上端面722との間に弾性部材としてのバネ(皿バネ構造)730を設けた。このバネ730は、燃料通路704よりの高圧燃料をロワーニードル708の上端面752に作用させてロワーニードル708を閉弁させる力に加えて、更にロワーニードル708への閉弁力を発生させ、ロワーニードル708の閉弁をより確実にさせている。よって、バネ730を装着しなくてもロワーニードル708は閉弁可能である。バネ730を装着しなければ、部品点数を削減しコスト低減に寄与する。ここで、バネ730を装着しない場合は、ロワーニードル708の材質を例えばゴム材により構成してロワーニードル708の第2の弁座717への着座性を高める事も有効である。
【0084】
このように、先行してリフトする第1のニードルに追従させてリフトさせる第2のニードルを、第1のニードルの内周、あるいは外周に配置するのではなく、第2のニードルを噴射側軸端部701aに配置する構成とした。つまり、ロワーニードル708をアッパーニードル701の噴射側軸端部701aに配置する構成としたので、ロワーニードル708を小型化することができて開弁応答性を向上させる。また、ロワーニードル708の軸方向に設けた穴部708aに軸部714を貫通させているので、ロワーニードル708の軸方向案内が可能となって、ロワーニードル708のリフトが安定する効果がある。
【0085】
また、図5に示す燃料噴射弁では、アウターニードル101、インナーニードル108、およびリフトピン115の3者間にて摺動する構成であるので、これら3者間の加工には同軸度を要するが、本例ではロワーニードル708とアッパーニードル701の両者の摺動部が無い構成であるため、低コストな加工となる。
【0086】
また更に、図5に示す燃料噴射弁では、アウターニードル101が着座している状態でバイパス通路110に燃料が供給されているので、アウターニードル101とインナーニードル108の摺動隙間を経由して第1の噴孔から燃料の漏れが危惧されるが、本例ではアッパーニードル701の着座状態において、燃料通路704よりの燃料を第1の弁座716にて遮断するので燃料漏れは起こらない構成である。
【0087】
次に、アッパーニードル701、およびロワーニードル708が順次リフトする状態を図10を用いて説明する。図10は、図9に示した燃料噴射弁のニードルリフト経過を説明する説明図である。図10(a)は、アッパーニードル701が<HDoだけリフトした状態を示す。このアッパーニードル701のリフトとともに係止部715とを備えた軸部714もリフトしするが、このリフト量は<HDoなので、ロワーニードル708は、第2の弁座717に着座したままの状態となって、第1の噴孔706からのみ噴射される。なお、このアッパーニードル701のリフトによって燃料通路704よりの燃料圧力がロワーニードル708の上端面752に作用し、バネ730の閉弁力とともにロワーニードル708への閉弁力を発生させている。
【0088】
そして、アッパーニードル701が>HDoリフトすると図10(b)の状態となる。このアッパーニードル701の>HDoリフトは、係止部715を備えた軸部714も同様にリフトさせ、係止部715の上端面720がロワーニードル708の噴射側軸端面721と係止して、ロワーニードル708をリフトさせる。これにより、アッパーニードル701、およびロワーニードル708ともにリフトするので、第1の噴孔706および第2の噴孔707からも噴射される。
【0089】
(他の例)
本発明に関連する他の例である燃料噴射弁を図11に示す。図11は、本発明に関連する他の例である燃料噴射弁を示す全体断面図である。第1参考例と実質的に同一構成部品に同一符号を付し、説明を省略する。図11に示す燃料噴射弁531は、第1参考例に示した燃料噴射弁31の先行してリフトするニードルを制御する制御手段を一段備える構成から、先行してリフトする一方のニードルを噴孔閉塞方向に付勢する第1と第2の制御手段を備える構成とした。一方のニードルが第1の制御手段によりリフトしたあと、一方のニードルを第2の制御手段によりリフト制御することにより、先行してリフトする一方のニードルは他方のニードルを係止機構部によりリフトさせる。
【0090】
以下、詳細について述べる。第1の制御手段として第1ピストン521と第1制御室522、および第2の制御手段として第2ピストン524と第2制御室525が構成され、第1制御室522および第2制御室525内の燃料圧力を制御することによりアウターニードル1を2段階に軸方向に往復動させている。
【0091】
アウターニードル1の反噴射側端部にはプレッシャピン19を介して第1ピストン521、第1制御室522、第2ピストン524、第2制御室525の順で形成しており、プレッシャピン19には噴孔閉塞方向に付勢する第1ばね20を備える。アウターニードル1の最大リフト量(HDmax)は、規制部材29下端とアウターニードル1の上端面1a間の軸方向寸法で決定される。第1ピストン521がプレッシャピン19を介してアウターニードル1に当接しノズルボデー2にシートしている時、第1ピストン521の上端部と第2ピストン524の下端部に挟まれた第1制御室522の軸方向の寸法HDxは、初動リフト量を形成している。アウターニードル1がリフトしてインナーニードル8がリフトされるまでの行程HDoは無効リフトとして設定する。初動リフト量(HDx)と無効リフト(HDo)の関係は、HDx<HDoになるよう調整する。
【0092】
第1の制御手段により第1制御室522の圧力を低下させると、アウターニードル1を着座させている付勢力が低下し、アウターニードル1が弁座17から離座する。つまり、アウターニードル1、プレッシャピン19、および第1ピストン521が図11中軸方向上方に上昇する。この時、第2制御室525は、高圧のままであるために、第1ピストン521と第2ピストン524との隙間HDxだけリフトし止る。この時、HDx<HDoに調整しているために、インナーニードル8は弁座17に着座したままであり、第2の噴孔7からは燃料は噴射されない。従って、低噴射率で微粒化した噴霧を噴射できる。
【0093】
第1および第2の制御手段により第1制御室522および第2制御室525の圧力を低下させると、アウターニードル1を着座させている付勢力が低下し、アウターニードル1が弁座17から離座する。つまり、アウターニードル1、プレッシャピン19、および第1ピストン521が図11中軸方向上方に上昇する。この時、第2制御室525も低圧であるために、第1ピストン521と第2ピストン524との隙間HDxよりもさらにリフトする。第2ピストン524上部にはノズル隙間HDmax−HDx以上の隙間を設けているために、ノズル隙間HDmaxで止る。この際、無効リフトHDoは、 HDx<HDo< HDmaxに調整されているために、リフトの途中でアウターニードル1がリフトピン15によってインナーニードル8をリフトさせて、第2噴孔からも燃料が噴射される。従って、高噴射率で微粒化した噴霧を噴射できる。
【0094】
また図示しないが、第1の制御手段のみを有する燃料噴射弁の構成において、第1の制御手段のみによるリフト制御であっても、アウターニードル1を無効リフトHDo分だけリフトするように制御することで第1の噴孔106からのみ噴射させる。これをプレリフトによる噴射とし、その後、更にアウターニードル1をフルリフトさせることで、第1の噴孔106および第2の噴孔107双方からの噴射を可能とする。また更に、このプレリフト(HDo)は、低噴射率、かつ微粒化噴霧が可能となることから、エンジンの運転領域によってはプレリフト(HDo)を複数回連続させて1燃焼分の噴射を行うようにリフト制御させれば、良好な燃焼が得られる噴射が実現する。
【0095】
次に、燃料噴射弁531内のアウターニードル1のリフト制御に係る燃料通路と燃料の流れについて説明する。高圧燃料は、燃料入口27へ導入され燃料溜り3に供給されるとともに第1制御室522および第2制御室525へ供給される。アウターニードル1のリフト制御は、第2制御室525の上部に設けたアウターバルブ527、およびアウターバルブ527内側に往復移動可能に収容されるインナーバルブ528、電磁コイル523により構成される電磁弁530により行われる。電磁弁530は、第1制御室522と高圧燃料が燃料タンク側へ排出される低圧通路との連通を開閉するアウターバルブ527と、第2制御室525と高圧燃料が燃料タンク側へ排出される低圧通路との連通を開閉するインナーバルブ528が配置される。
【0096】
ここで、電磁コイル523へ供給される電流値を2段階に通電制御することにより、インナーバルブ528、アウターバルブ527の開閉操作を各々別個に行う。先ず、第3ばね511の付勢力により第1制御室522と低圧通路との連通を閉じているアウターバルブ527に抗して、アウターバルブ527を開弁可能な電流を電磁コイル523へ通電する。この時、電磁コイル523により発生する励起吸引力を、インナーバルブ528よりアウターバルブ527が受けやすいバルブ形状および、第2ばねと第3ばねの付勢力の調整によりアウターバルブ527のみ開弁するよう構成される。これにより第1制御室522内の高圧燃料は、低圧通路へ排出され第1ピストン521がリフトしする。次いで、電磁コイル523へ供給される電流値をさらに高くすると、第2ばね510の付勢力により第2制御室525と低圧通路との連通を閉じているインナーバルブ528は開弁し、出口絞り526を経て第2制御室525内の高圧燃料は、低圧通路へ排出され第2ピストン524がリフトする。
【0097】
上述した燃料噴射弁531の構成例は、ノズル部に2本のニードルを有し、先行してリフトするニードルが所定のリフトをしたあと後発するリフトを持上げる機構を備え、各ニードルによって開口される噴孔を有するノズル部と、ニードルを付勢する付勢手段を2段に備え、一回の噴射期間中にアウターニードルのリフトを段階的に制御することができるニードル制御部とを組み合せた。
【0098】
これにより、上述した2本のニードルを有するノズル部の燃料の噴霧分布が拡大する効果および、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させることができる効果に加え、ニードルのリフトを一回の噴射期間中に段階的に制御するニードル制御部により、燃料噴射率の段階的な制御を任意に実現できる。
【0099】
この燃料噴射弁を用いれば、例えば、無負荷運転時および部分負荷運転時においては、アウターニードルのみ開弁し、全負荷等の高負荷時にはアウターニードルが開弁後、インナーニードルが開弁するようにする。あるいは、アウターニードルが開弁後インナーニードルが開弁する時期を調整することにより部分負荷時の各種エンジンの運転条件に最も適した噴霧形態が実現できる。
【0100】
このように、先行してリフトするニードルを付勢する付勢力が変化する複数の付勢手段を備えることにより、より最適にエンジンの運転状態により所望される噴射形態に燃料噴射率を適合可能となり、更にNOxや煤等のパティキュレートの発生が低減するとともに燃費を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1参考例による燃料噴射弁のノズル部を示す全体断面図である。
【図2】 本発明の第1参考例による燃料噴射弁のノズル部を示す部分断面図である。
【図3】 本発明の第1参考例による燃料噴射弁全体を示す模式的断面図である。
【図4】 本発明の第1参考例による燃料噴射弁を燃料供給システムに適用した一形態を示すシステム図である。
【図5】 本発明の第2参考例による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す部分断面図である。
【図6】 本発明の第3参考例による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す部分断面図である。
【図7】 本発明の一実施形態による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す全体断面図である。
【図8】 図7中のA部を示す部分拡大図である。
【図9】 本発明の第4参考例による燃料噴射弁のニードル部周辺を示す部分断面図である。
【図10】 図9に示した燃料噴射弁のニードルリフト経過を説明する説明図である。
【図11】 本発明に関連する他の例である燃料噴射弁を示す全体断面図である。
【図12】 従来例の燃料噴射弁を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1 アウターニードル
2 ノズルボディー
3 燃料溜り
6 第1の噴孔(アウターニードルにより開口操作)
7 第2の噴孔(インナーニードルにより開口操作)
8 インナーニードル
16 第1の弁座(アウターニードルのシート部)
17 第2の弁座(インナーニードルのシート部)
31 燃料噴射弁
701 アッパーニードル
701a (アッパーニードルの)噴射側軸端部
714 軸部
715 係止部
708 ロワーニードル
708a 穴部
721 (ロワーニードルの)噴射側軸端面
730 バネ(弾性部材)
Claims (2)
- 燃料供給ポンプから供給された高圧燃料を内燃機関の燃焼室内に間欠的に噴射する燃料噴射弁において、
軸方向に収容孔を設け、前記収容孔の周囲に前記収容孔に連通し前記燃料供給ポンプから供給された高圧燃料を供給される燃料溜まりと、前記燃料溜まりよりも燃料下流側に前記燃料溜まりと連通可能な第1の噴孔と、前記第1の噴孔よりも燃料下流側に前記燃料溜まりと連通可能な第2の噴孔と、前記燃料溜まりと前記第1の噴孔との間の前記収容孔を形成する内壁に設けた第1の弁座と、前記第1の噴孔と前記第2の噴孔との間の前記収容孔を形成する内壁に設けた第2の弁座とを有するノズルボディと、
前記収容孔に往復移動可能に収容され、前記第1の弁座に着座することにより前記燃料溜まりと前記第1の噴孔との連通を遮断するアウターニードルと、
前記アウターニードルの内側に同軸関係にて往復移動可能に収容され、前記第2の弁座に着座することにより前記燃料溜まりと前記第2の噴孔との連通を遮断するインナーニードルと、
前記アウターニードルと前記インナーニードルとの間に設定されて、前記両ニードルのうちのインナーニードルが先行してリフトし所定のリフト量に達すると、両ニードルのうちの前記アウターニードルをリフトさせる係止機構部とを備え、
前記アウターニードルの全長は前記インナーニードルより短く、
前記係止機構部は、前記燃料溜まりの燃料下流側且つ前記第1の弁座より上流側に設けられ、
前記第1の弁座は、前記第1の噴孔よりも燃料上流側と前記第1の噴孔よりも燃料下流側の2箇所に設けられることを特徴とする燃料噴射弁。 - 後発してリフトする前記アウターニードルは、前記燃料供給ポンプから前記燃料溜まりに供給された燃料の圧力、あるいは前記燃料の圧力および弾性部材の弾性力を用いて閉弁動作させる構成であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
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