一般に、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどの撮像装置を手で持って構えて撮影をした場合、撮影時の手ぶれによる撮像装置の振動が、撮像画像の画面単位での振動となって現われる。このような手ぶれによる撮像画像の振動を補正する方法の一つとして、撮像画像の画面単位の動きベクトルを検出し、この動きベクトルに基づいて、画像メモリに蓄えられている撮像画像データの読み出し位置をシフトして手ぶれ補正をする方法が知られている。
そして、撮像画像の画面単位の動きベクトルを、撮像画像情報自身から検出する方法として、2画面分の撮像画像間の相関を求めるブロックマッチングが知られている。このブロックマッチングを用いる方法は、ジャイロ(角速度)センサなどの機械的な部品が不要なので、撮像装置の小型、軽量化を実現することができるという点で有利である。
図42および図43は、ブロックマッチングの概要を図示したものである。また、図44には、その処理フローチャートの一般例を示す。
ブロックマッチングは、撮像装置部からの撮像画像について、注目画面である参照画面と、当該参照画面よりも1画面分前の撮像画面である元画面(ターゲット画面)との間の1画面分単位での動きベクトルを、所定の大きさの矩形領域のブロックについて、参照画面と元画面との相関を算出することにより算出する方法である。
なお、ここで画面とは、1フレームまたは1フィールドの画像データからなる画像を意味しているが、この明細書では、説明の便宜上、画面は1フレームからなるものとして、画面をフレームと称することとする。したがって、参照画面は参照フレーム、元画面は元フレームと称する。
例えば、参照フレームの画像データは、撮像装置部からの現フレームの画像データ、または現フレームの画像データがフレームメモリに格納されて1フレーム分遅延されたものとされる。元フレームの画像データは、参照フレームの画像データがフレームメモリに格納されてさらに遅延されたものとされる。
図42および図43は、従来のブロックマッチングの概要を説明するための図である。また、図44は、従来のブロックマッチング処理のフローチャートの一例である。
ブロックマッチングにおいては、図42に示すように、元フレーム(ターゲットフレーム)101の任意の所定の位置において、水平方向の複数画素および垂直方向の複数ライン分からなる所定の大きさの矩形領域からなるターゲットブロック103が設定される。
これに対して、参照フレーム102において、元フレームのターゲットブロック103の位置と同じ位置に、ターゲットブロックの射影イメージブロック104(図42の点線参照)を想定し、このターゲットブロックの射影イメージブロック104を中心としたサーチ範囲105(図42の一点鎖線参照)を設定すると共に、ターゲットブロック103と同じ大きさの参照ブロック106を考える。
そして、この参照ブロック106の位置を参照フレーム102内のサーチ範囲105内において移動させ、各移動位置の参照ブロック106に含まれる画像内容と、ターゲットブロック103の画像内容との相関を求め、最も相関が強いとして検出された参照ブロック106の位置を、元フレームのターゲットブロック103が、参照フレーム102において移動した位置として検出するようにする。そして、その検出した参照フレーム106の位置と、ターゲットブロックの位置との間の位置ずれ量を、方向成分を含む量としての動きベクトルとして検出するようにする。
この場合、参照ブロック106は、サーチ範囲105を、例えば水平方向および垂直方向に、1画素または複数画素単位で移動させるようにする。したがって、サーチ範囲105内には、複数個の参照ブロックが設定されることになる。
ここで、ターゲットブロック103と、サーチ範囲105内を移動する参照ブロック106との相関の強さを表す相関値は、基本的には両ブロック103と104の対応する画素値を用いて算出されるが、その算出方法は、自乗平均を用いる方法やその他種々の方法が提案されている。そのうち、動きベクトルを算出する際に一般的に用いられる相関値としては、例えば、ターゲットブロック103内の各画素の輝度値と、参照ブロック106内の対応する各画素の輝度値との差分の絶対値の、ブロック内の全画素についての総和(この差分の絶対値の総和を差分絶対値和と呼ぶ。以下、この差分絶対値和をSAD(Sum of Absolute Difference)と記載することとする)が用いられる。
相関値としてSAD値が用いられる場合には、SAD値が小さいほど相関が強いものとされる。したがって、サーチ範囲105内を移動する参照ブロック106のうち、SAD値が最小となる位置の参照ブロック106が最も相関が強い参照ブロックとして検出され、その検出された参照ブロック106のターゲットブロック103の位置に対する位置ずれ量が動きベクトルとして検出される。
ブロックマッチングでは、サーチ範囲105内に設定される複数個の参照ブロック106のそれぞれの、ターゲットブロック103の位置に対する位置ずれ量は、方向成分を含む量としての参照ベクトル107(図42参照)で表現される。各参照ブロック106の参照ベクトル107は、参照ブロック106の参照フレーム102上の位置に応じた値となるが、従来のブロックマッチングでは、相関値であるSAD値が最小値となる参照ブロック106の参照ベクトルを、動きベクトルとして検出するものである。
そこで、ブロックマッチングでは、一般に、図43に示すように、サーチ範囲105内において設定される複数個の参照ブロック106のそれぞれとターゲットブロック103との間におけるSAD値(以下、説明の簡単のため参照ブロックについてのSAD値という)を、それぞれの参照ブロック106の位置に応じた参照ベクトル107(以下、説明の簡単のため、参照ブロック106の位置に応じた参照ベクトル107を参照ブロックの参照ベクトルという)のそれぞれに対応させて、メモリに記憶しておき、そのメモリに記憶された全ての参照ブロック106についてのSAD値の中から、最小のSAD値の参照ブロック106を検出することで、動きベクトル110を検出するようにしている。
サーチ範囲105内に設定された複数個の参照ブロック106の位置に応じた参照ベクトル107のそれぞれに対応させて、それぞれの参照ブロック106についての相関値(この例では、SAD値)を記憶したものを相関値テーブルと呼ぶ。この例では、相関値として差分絶対値和であるSAD値を用いるので、この相関値テーブルは、差分絶対値和テーブル(以下SADテーブルという)となっている。
図43の相関値テーブル108が、これを示しており、この相関値テーブル108において、それぞれの参照ブロック106についての相関値(この例ではSAD値)を相関値テーブル要素109という。
なお、上述の説明において、ターゲットブロック103および参照ブロック106の位置とは、それらのブロックの任意の特定の位置、例えば中心位置を意味するものであり、参照ベクトル107は、参照フレーム102におけるターゲットブロック103の射影イメージブロック104の位置と、参照ブロック106の位置との間のずれ量(方向を含む)を示すものである。図42および図43の例では、ターゲットブロック103は、フレームの中心位置にあるとしている。
そして、各参照ブロック106に対応する参照ベクトル107は、参照フレーム102上において、ターゲットブロック103に対応する射影イメージブロック104の位置からの、各参照ブロック106の位置ずれとなっているので、参照ブロック106の位置が特定されると、その位置に対応して参照ベクトルの値も特定される。したがって、相関値テーブル108のメモリにおける参照ブロックの相関値テーブル要素のアドレスが特定されると、対応する参照ベクトルは特定されることになる。
以上説明した従来のブロックマッチングの処理を、図44のフローチャートを参照して説明すると、次のようになる。
先ず、サーチ範囲105内の1つの参照ブロックIiを指定するが、これは、当該参照ブロックIiに対応する参照ベクトルを指定することに等しい(ステップS1)。ここで、図44において、(vx,vy)は、ターゲットブロックのフレーム上の位置を基準位置(0,0)としたときに、指定された参照ベクトルにより示される位置を示し、vxは指定された参照ベクトルによる、基準位置からの水平方向のずれ量成分であり、また、vyは指定された参照ベクトルによる、基準位置からの垂直方向成分のずれ量成分である。
ここでは、ずれ量vx、vyは、画素を単位とした値とされ、例えばvx=+1は、基準位置(0,0)に対して、水平方向の右方向に1画素分ずれた位置を示し、また、vx=−1は、基準位置(0,0)に対して、水平方向の左方向に1画素分ずれた位置を示している。また、例えばvy=+1は、基準位置(0,0)に対して、垂直方向の下方向に1画素分ずれた位置を示し、また、vy=−1は、基準位置(0,0)に対して、垂直方向の上方向に1画素分ずれた位置を示している。
以上のように、(vx、vy)は、参照ベクトルで示される基準位置に対する位置(以下、簡単のため、参照ベクトルで示される位置という)を示しており、参照ベクトルのそれぞれに対応している。つまり、vxおよびvyを整数としたとき、(vx、vy)は参照ベクトルのそれぞれを表すことになる。したがって、以下の説明においては、(vx、vy)の位置を示す参照ベクトルを、参照ベクトル(vx、vy)と記載することがある。
ここで、サーチ範囲の中心位置をターゲットブロックに対応する射影イメージブロック104の位置、つまり前記基準位置(0,0)とし、サーチ範囲を、水平方向には±Rx、垂直方向には±Ryとしたとき、
−Rx≦vx≦+Rx、−Ry≦vy≦+Ry
とされるものである。
次に、ターゲットブロックIo内の1つの画素の座標(x,y)を指定する(ステップS2)。次に、ターゲットブロックIo内の指定された1つの座標(x,y)の画素値Io(x,y)と、参照ブロックIi内の対応する画素位置の画素値Ii(x+vx,y+vy)との差分の絶対値αを算出する(ステップS3)。すなわち、差分絶対値αは、
α=|Io(x,y)−Ii(x+vx,y+vy)| ・・・(式1)
として算出される。
そして、算出した差分絶対値αを、当該参照ブロックIiの参照ベクトル(vx,vy)が指し示すアドレス(相関値テーブル要素)に格納されている、それまでのSAD値に加算し、その加算であるSAD値を、当該アドレスに書き戻すようにする(ステップS4)。すなわち、参照ベクトル(vx,vy)に対応するSAD値を、SAD(vx,vy)と表すと、
SAD(vx,vy)=Σα=Σ|Io(x,y)−Ii(x+vx,y+vy)|
・・・(式2)
として算出し、当該参照ベクトル(vx,vy)が指し示すアドレスに書き込むようにする。
次に、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素について、上記の演算を行なったか否かを判別し(ステップS5)、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素については、未だ、演算は終了していないと判別したときには、ステップS2に戻り、ターゲットブロックIo内の次の座標(x,y)の画素位置を指定し、このステップS2以降の処理を繰り返す。
また、ステップS5で、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素について、上記の演算を行なったと判別したときには、当該参照ブロックについてのSAD値の算出が終了したと判別して、サーチ範囲内の全ての参照ブロック、すなわち、全ての参照ベクトル(vx,vy)についての上記の演算処理を完了したか否か判別する(ステップS6)。
ステップS6で、未だ、上記の演算処理を完了していない参照ベクトル(vx,vy)があると判別すると、ステップS1に戻り、上記の演算処理を完了していない次の参照ベクトル(vx,vy)を設定して、このステップS1以降の処理を繰り返す。
そして、ステップS6で、上記の演算処理を完了していない参照ベクトル(vx,vy)はサーチ範囲内になくなったと判別すると、相関値テーブルとしてのSADテーブルが完成したとして、当該完成したSADテーブルにおいて、最小値となっている相関値、すなわち、SAD値を検出する(ステップS7)。そして、当該最小値となっているSAD値のアドレスに対応する参照ベクトルを動きベクトルとして検出する(ステップS8)。ここで、SADの最小値をSAD(mx,my)と書き表すと、目的とする動きベクトルは、位置(mx,my)を示すベクトル(mx,my)として算出される。
以上で、1つのターゲットブロックに対するブロックマッチングによる動きベクトルの検出処理は、終了となる。
上述したブロックマッチング技術自体は、相当歴史の古い技術であり、この技術が、撮像装置のセンサレス手ぶれ補正技術の基盤技術として導入され始めたのは1980年代終盤であり、デジタル民生機器の黎明期以前の、かなり昔から利用されて来た。
以降、特許文献1(特許第3303312号公報)や特許文献2(特開平6−86149号公報)等に記載された発明等、様々な提案がなされながら、ブロックマッチングを用いたセンサレス手ぶれ補正技術は発展し、ビデオカメラにおいて一応の成功は収めたものの、昨今の市場においては、ジャイロセンサの低価格化、高性能化、小型化に伴い、ジャイロセンサを用いた手ぶれ補正によって、ほぼ完全にその立場を奪われているのが現状である。
このセンサレス手ぶれ補正衰退の最も大きな理由として挙げられるのは、ブロックマッチング法による動きベクトルのエラー検出精度の向上に難があるのに加え、先に挙げたジャイロセンサの利便性向上が際立った点である。
また、ジャイロセンサを用いた手ぶれ補正の弱点である、ジャイロセンサ自体の検出精度の甘さが、これまでの主要な応用先である動画撮影においては、問題にならなかった点も上記理由として挙げられる。つまり、動画撮影における手ぶれ補正では、センサレスの動きベクトル検出で希に発生する大きく外したエラーは問題になるが、ジャイロセンサ等のセンサが不得意なピクセル精度という高精度の動きベクトル検出は要求されないからである。
一方、ここ数年においては、デジタルスチルカメラの急速な普及と、それと機を同じくした急速な高画素化の流れが、新たな問題を生み始めている。すなわち、低照度(露光時間が長い)のときの静止画においても、手ぶれ補正が強く求められているものの、解がジャイロセンサ等のセンサを用いたものしか存在せず、先に挙げたジャイロセンサの弱点やその他の問題が露呈しつつある点である。
現在市場に出回っている民生機における、静止画用途の手ぶれ補正は、全て、遍くジャイロセンサもしくは加速度センサを使って手ぶれベクトルを計測し、それを機構系にフィードバックして、CCD(Charge Coupled Device)イメージャやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージャなどのイメージセンサに射影される像が、ぶれを起こさないように高速に制御する、というものである。
ここでいう機構系としては、レンズ、プリズム、イメージャ(もしくはイメージャと一体化したモジュール)が提案されており、それぞれ、レンズシフト、プリズムシフト、イメージャシフトと呼ばれている。
このような方法で手ぶれ補正がなされている以上、先に挙げたジャイロセンサ自体の精度誤差に加え、機構系へのフィードバック遅延、もしくはフィードバック遅延を回避するための予測誤差、そして、機構系の制御誤差も重畳され、センサを用いる手ぶれ補正では、とてもピクセル精度で補正をかけることは不可能である。
以上に挙げたように、現状のセンサを使用した手ぶれ補正には、原理的に、精度を追求できない、という大きな問題があるにも関わらず、市場で高評価を得ているのは、手ぶれを、補正できないまでも低減できるからである。
しかしながら、今後益々の高画素化が予想される中、ピクセルサイズが小さくなるに従って、センサを用いる手ぶれ補正の限界が、ピクセル精度と益々開いて行かざるを得ない、という事実に市場が気付くのも時間の問題である。
一方、ビデオカメラの動画手ぶれ補正において苦杯を舐めたセンサレス手ぶれ補正の場合、原理的に、ロール軸方向の回転成分を含んだピクセル精度の手ぶれベクトル検出が実現可能であり、また、センサやレンズシフト等の機構を削減出来るため、コスト的にも相当優位である。
しかし、従来のブロックマッチングに依存する技術の延長では、1画面分の画素数に比例してSADテーブルの規模が増加するため、現在の500万画素オーバーの静止画サイズの動きベクトル検出を、現実的な回路規模で実現するのは非常に困難である。
過去、各社様々な工夫を凝らしながら、NTSC(National Television System Committee)動画の高々17万画素の手ぶれベクトル検出の回路規模削減に苦慮していた背景がある上に、NTSC動画の場合、60fps(frame per second;フレーム/秒)のため手ぶれのサーチ範囲は狭くて済むが、静止画の場合、3fps程度が前提となり、手ぶれのサーチ範囲が極端に大きくなることも問題を困難にしている一因である。画素数と同じく、手ぶれのサーチ範囲にも比例してSADテーブルのテーブル要素数が増加するからである。
センサレス手ぶれ補正を静止画で実現する手法としては、特許文献3(特開平7−283999号公報)を始め、幾つか提案はされている。前記特許文献3は、手ぶれの発生しない程度の短い露光時間で何枚かの静止画を連写撮影し、その静止画間の手ぶれベクトルを求め、その手ぶれベクトルに従って、前記連射撮影した複数枚の静止画を平行移動させながら加算(もしくは平均化)して行くことで、最終的に手ぶれと低照度ノイズの無い高画質の静止画を得る、というアルゴリズムである。
実現できるレベルの現実的な提案としては、特許文献4(特開2005−38396公報)を挙げることができる。この特許文献4に示されたものは、画像を縮小変換したサイズで動きベクトルを求める手段と、同一のSADテーブルを複数のブロックで共有する手段から構成される。画像の縮小変換と、SADテーブルの複数ブロックでの共有化は、SADテーブルサイズの削減を実現するための、非常に良い手法であり、MPEG(Moving Picture Experts Group)画像圧縮方式における動きベクトル検出やシーンチェンジ検出等、他分野でも使われている。
しかし、この特許文献4のアルゴリズムの問題点として、画像の縮小変換と、その際のメモリ(この場合のメモリは例えばDRAM(Dynamic RAM(Random Access Memory))アクセスに、時間とメモリ容量を消費することと、SADテーブルを複数ブロックで時分割アクセスする手法のため、メモリアクセスが非常に増加し、この処理にも時間を要してしまうという課題がある。動画の手ぶれ補正においては、リアルタイム性と同時にシステム遅延時間の短縮が求められるため、この処理時間の問題が課題となってしまうのである。
また、元画像を縮小変換する際には、エイリアシング(折り返し歪み)や、低照度ノイズ除去のためのローパスフィルタを、縮小処理の前処理として実装することが必要である。しかし、縮小倍率に応じて、ローパスフィルタの特性が変化する上、特に、垂直方向のローパスフィルタの場合、多タップのデジタルフィルタとした場合に、多くのラインメモリと演算ロジックを必要としなければならず、回路規模増加の問題が生じる。
他方、ブロックマッチングを使用しないアルゴリズムも提案されている(例えば特許文献5(特開平6−86149号公報)、特許文献6(特開2004−343483公報)など)。これらは、2つのフレーム画像内それぞれで、何らかの特徴点を複数点検出し、それらの2つのフレーム間の対応付けを取ることで全体の手ぶれベクトル(グローバルベクトル)を求める手法である。もしくは、片方のフレームのみで特徴点を検出し、その特徴点の周囲に関してのみ、もう一方のフレームに対してブロックマッチングを施しても良い。
この特許文献5や特許文献6のアルゴリズムは、回路規模を削減するうえで非常に有効であり、理想的ではあるものの、現実には、2フレームに共通して存在する、画像全体の真に特徴のある特徴点を、どこまで効率的に数を絞って特定できるかに、その実効性が掛かっている。したがって、この特許文献5や特許文献6のアルゴリズムに比べると、民生機では森羅万象が撮像対象である限り、ロバスト性においてブロックマッチング手法に一日の長があると考えられる。
上記の先行技術文献は、次の通りである。
特許第3303312号公報
特開平6−86149号公報
特開平7−283999号公報
特開2005−38396公報
特開平6−86149号公報
特開2004−343483公報
以下、この発明による画像処理方法および画像処理装置の実施形態を、図を参照しながら説明する。
[この発明による画像処理方法の実施形態の概要]
この発明による画像処理方法の実施形態においても、上述したブロックマッチングを用いて、2フレーム間の動きベクトルを検出するのであるが、ターゲットブロックと参照ブロック間において求められる相関値を、参照ブロックの参照ベクトルに対応して記憶するのではなく、当該参照ベクトルを縮小し、その縮小した参照縮小ベクトルに対応する、当該参照縮小ベクトルの近傍の複数の参照ベクトルに分散加算して記憶するようにする。
これにより、従来の相関値テーブルに比較して、相関値テーブルのサイズを大幅に縮小するようにするものである。なお、以下に説明する例においては、相関値としては、前述したSAD値を用い、相関値テーブルとしてSADテーブルを求めるようにする。そのため、この実施形態では、前述したように、相関が強いときには、相関値であるSAD値が小さい値となる場合の例となっている。
図1〜図3は、実施形態の画像処理方法の概要を説明するための図である。図1は、従来の相関値テーブル(この例ではSADテーブル)TBLoと、実施形態の画像処理方法において生成される縮小相関値テーブル(この例では、縮小SADテーブル)TBLsとの関係を示すものである。
この実施形態においても、図42に示したように、従来と同様に参照フレームにおいて、元フレームに設定されたターゲットブロックの位置を中心としてサーチ範囲が設定される。そして、このサーチ範囲において、前述したような複数の参照ブロックが設定され、各参照ブロック内の画素とターゲットブロック内の対応する画素の相関値、この例では輝度値の差分の絶対値の総和、つまり、SAD値が求められる。
従来は、求められた相関値は、図1に示すように、対象となっている参照ブロックの参照ベクトルRVに対応するアドレスのテーブル要素tblとしてSADテーブルTBLoに書き込まれる。
したがって、従来のブロックマッチングでは、ターゲットブロックと参照ブロックとのフレーム画像上における位置ずれ量を表わす参照ベクトルRVと、相関値テーブルTBLoの各テーブル要素である参照ブロックの相関値とは、1対1に対応している。すなわち、従来の相関値テーブルTBLoでは、サーチ範囲で取り得る参照ベクトルRVと等しい数の相関値のテーブル要素数を備えるものとなっている。
これに対して、この実施形態におけるブロックマッチングでは、図1および図2(A)、(B)に示すように、対象となっている参照ブロックの参照ベクトルRVは、縮小率1/n(nは自然数)で縮小されて参照縮小ベクトルCVとされる。
ここで、以下の説明においては、説明の便宜上、水平方向縮小倍率と垂直方向の縮小倍率とを同じとしているが、水平方向縮小倍率と垂直方向の縮小倍率とは独立の異なる値でも良い。また、後で述べるが、水平方向縮小倍率と垂直方向の縮小倍率とを独立に任意の自然数分の1として設定できるようにしておく方が、柔軟性も高く好都合である。
この実施形態においても、前述の従来例で説明したのと同様に、サーチ範囲の中心とされるターゲットブロックの位置を基準位置(0,0)とし、参照ベクトルは、当該基準位置からの画素単位の水平方向および垂直方向のずれ量(vx,vy)(vx、vyは、整数)を指し示すものとされ、参照ベクトルRVのそれぞれは、参照ベクトル(vx,vy)で表される。
参照ベクトル(vx,vy)が、水平方向および垂直方向のそれぞれについて1/nに縮小された参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)で示される位置(vx/n,vy/n)は、必ずしも整数ではなく、小数成分が発生することがある。このため、この実施形態では、縮小前の元の参照ベクトルRVに対応して求められた相関値を、参照縮小ベクトルCVに最も近い1つの参照ベクトルに対応するテーブル要素として記憶してしまうと誤差が生じることになる。
そこで、この実施形態では、まず、参照縮小ベクトルCVで示される位置(vx/n,vy/n)の近傍の複数の参照ベクトル(近傍参照ベクトル)で示される複数の位置(テーブル要素)を検出する。そして、参照ベクトルRVの参照ブロックについて求められた相関値は、その検出した近傍の複数の参照ベクトルに対応する相関値に分散して加算するようにする。
この場合に、この実施形態では、参照縮小ベクトルCV(参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)で示される位置(vx/n,vy/n)に、小数成分が発生する場合、当該参照縮小ベクトルCVで示される位置の近傍の周囲の複数個の参照ベクトルで示される位置に対応するテーブル要素tblに書き込むべき成分として分散加算する値は、縮小前の元の参照ベクトルRVに対応して求められた相関値から、参照縮小ベクトルとその近傍の参照ベクトルとのそれぞれが示す位置の関係を用いて、前記近傍の参照ベクトルのそれぞれに対応して分散加算する相関値(分散加算相関値)を算出し、算出した分散加算相関値のそれぞれを、対応する参照ベクトルのテーブル要素成分として加算するようにする。
ここで、分散するだけでなく加算するというのは、参照縮小ベクトルの近傍の複数の参照ベクトルは、異なる複数の参照縮小ベクトルについて重複して検出されることになるので、1つの参照ベクトルについて、重複した相関値は加算するという意味である。
なお、参照縮小ベクトルCVが示す位置(vx/n,vy/n)が、参照ベクトルが示す位置に一致する場合、つまり、vx/nおよびvy/nの値が整数であるときには、周辺の複数の参照ベクトルを検出する必要はなく、当該位置(vx/n,vy/n)を示す1個の参照ベクトルに対応して、縮小前の元の参照ベクトルRVに対応して求められた相関値を記憶するようにするものである。
次に、具体例を挙げて、以上の処理を説明する。例えば、ターゲットブロックの位置を基準(0,0)としたときに、図2(A)に示すように、(−3,−5)の位置を示す参照ブロックRVを、水平方向および垂直方向に、1/n=1/4倍に縮小すると、その参照縮小ベクトルCVで示される位置は、図2(B)に示すように、(−0.75,−1.25)となる。
したがって、参照縮小ベクトルCVで示される位置は小数成分が発生し、参照ベクトルで示される位置とは一致しない。
そこで、この場合には、図3に示すように、当該参照縮小ベクトルCVが示す位置の近傍位置を示す複数個の近傍参照ベクトルが検出される。図3の例では、1つの参照縮小ベクトルCVに対して、4個の近傍参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4が検出される。
そして、前述したように、この実施形態では、参照ベクトルRVの参照ブロックについて求められた相関値は、これら4個の近傍参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4に対応する相関値として分散加算される。
この場合に、この実施形態では、4個の近傍参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4のそれぞれに分散加算する相関値は、参照縮小ベクトルCVで示される位置P0(図3において×印として示す)と、4個の近傍参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4のそれぞれで示される位置P1,P2,P3,P4(図3において○印として示す)との位置関係を用いて線形加重分散値として算出する。
図3の例の場合には、参照縮小ベクトルCVで示される位置P0は、周辺近傍の4個の参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4のそれぞれで示される位置P1,P2,P3,P4を、水平方向に1:3、垂直方向に3:1に内分する位置にある。
そこで、縮小前の元の参照ベクトルRVに対応して求められた相関値をSαとしたとき、周辺近傍の4個の参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4のそれぞれで示される位置P1,P2,P3,P4に対応する相関値テーブル要素に分散加算する相関値(この例ではSAD値)SADp1,SADp2,SADp3,SADp4のそれぞれは、参照縮小ベクトルCVで示される位置P0と、周辺近傍の4個の参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4のそれぞれで示される位置P1,P2,P3,P4との距離に応じた重み付けを施して、
SADp1=Sα×9/16
SADp2=Sα×3/16
SADp3=Sα×3/16
SADp4=Sα×1/16
となる。
そして、この実施形態では、求められた値SADp1,SADp2,SADp3,SADp4のそれぞれを、近傍の4個の参照ベクトルNV1,NV2,NV3,NV4のそれぞれで示される位置P1,P2,P3,P4に対応する相関値テーブル要素にそれぞれ加算する。
この実施形態では、以上の処理を、サーチ範囲内のすべての参照ブロックについて行なう。
以上のことから、この実施形態では、参照ベクトルRVを1/nに縮小する場合には、全ての参照ベクトルに1対1に対応する従来サイズの相関値テーブルTBLoに対して、水平方向に1/n、また、垂直方向に1/nに縮小した縮小相関値テーブルTBLsを用意して、この縮小相関値テーブルTBLsのテーブル要素として、参照縮小ベクトルCVの近傍の参照ベクトルに対応する相関値を求めるようにすれば良い(図1参照)。
したがって、この実施形態の場合には、縮小相関値テーブルTBLsのテーブル要素の数は、従来の相関値テーブルTBLoのテーブル要素数の1/n2となり、テーブルサイズを大幅に小さくすることが可能である。
なお、上述の実施形態の説明においては、参照縮小ベクトルCVの近傍の4個の参照ベクトルを検出し、当該4個の近傍参照ベクトルに対応する相関値テーブル要素に対して、対象の参照ブロック(参照ベクトルRV)について算出した相関値を線形加重分散加算するようにしたが、参照縮小ベクトルCVの近傍の複数の参照ベクトルの選び方およびその近傍参照ベクトルに対応する相関値テーブル要素に対する分散加算の方法は、上述の例に限られるものではない。
例えば、参照縮小ベクトルCVの近傍の9個もしくは16個の参照ベクトルを検出し、当該9個もしくは16個の近傍参照ベクトルに対応する相関値テーブル要素に対して、いわゆるキュービック(Cubic)補間による分散加算を行なうようにすれば、より精度は高くなる。しかし、リアルタイム性と演算回路の削減を重視すると、上述した近傍4個の参照ベクトルに対応するテーブル要素への線形加重分散加算が、より有効である。
この実施形態においても、参照ブロックをサーチ範囲内で遍く移動させ、全ての参照ブロックの相関値に対して相関値テーブル(この実施形態では縮小SADテーブル)への代入を行う点は、従来手法と同じである。
ただし、従来は、参照ベクトルと相関値テーブル要素のアドレスが1対1に対応していたため、相関値テーブルへは単なる代入で済んだが、この実施形態による手法では、参照ブロックについて算出した相関値を分散加算させるため、縮小相関値テーブルにおいて、参照ベクトルとテーブルアドレスは1対1ではない。したがって、この実施形態の手法の場合には、相関値のテーブルアドレスへの単なる代入ではなく、加算して代入する、いわゆる代入加算である必要がある。また、そのため、相関値テーブル(縮小SADテーブル)の各テーブル要素は、最初に初期化(0クリア)しておかなければならない。
ところで、従来のブロックマッチングでは、以上のようにして完成させた相関値テーブルにおいて、この実施形態では、相関が最も強いテーブル要素、すなわち、この例のSAD値を相関値として用いる場合には、相関値が最小値となるテーブル要素を探索し、その最小値となるテーブル要素のテーブルアドレスを、参照ベクトルに変換すれば、動きベクトルの検出を完了した。
これに対して、この実施形態による手法では、相関値テーブルは、参照ベクトルを縮小した参照縮小ベクトルに対応した縮小相関値テーブルであるため、当該縮小相関値テーブルにおける最小値のテーブル要素がそのまま正確な動きベクトルには対応していない。
もっとも、ある程度の誤差を許す装置の場合には、縮小相関値テーブルの最小値となるテーブル要素のテーブルアドレスを、参照ベクトルに変換したものを、さらに縮小率1/nの逆数倍、つまりn倍することで、動きベクトルを検出するようにすることもできる。
しかし、より正確な動きベクトルを検出するようにする場合には、以下に説明するように、縮小相関値テーブルのテーブル要素値に対して補間処理を施すことで、元のベクトル精度で、正確な動きベクトルを検出するようにする。
[より正確な動きベクトルを検出するための補間処理の第1の例]
より正確な動きベクトルを検出するための補間処理の第1の例は、縮小相関値テーブルにおける複数個の相関値テーブル要素値(この例ではSAD値)を、1つの2次曲面で近似する手法である。この手法は、前述した特許文献1に記載されている手法を縮小相関値テーブルに対して適用した手法である。
この実施形態では、SAD値を相関値として用いるものであるので、相関値が小さいほど相関が強い。このため、この実施形態では、縮小相関値テーブルにおいて、相関値(SAD値)が最小値となるテーブル要素(整数精度最小値テーブル要素(整数精度テーブルアドレス))と、この整数精度最小値テーブル要素を中心とする複数の整数精度テーブル要素とを求め、それらのテーブル要素の相関値を用いて、最小自乗法により相関値(SAD値)の2次曲面を決定し、この2次曲面の最小値となる相関値を検出し、当該検出した最小値となる相関値に対応する位置(参照フレーム上において、基準位置に対してずれた位置)を検出し、当該検出した位置を小数精度の最小値テーブルアドレス(縮小相関値テーブル(縮小SADテーブル)において相関値(SAD値)が最小値となるベクトル(最小値ベクトルという)に対応)とする。
この場合、一意の2次曲面を定めるためには、図4(A)または(B)に示すように、整数精度最小値テーブル要素tmと、当該テーブル要素tmをその両側から挟む位置の、当該テーブル要素tmの近傍の4個の整数精度テーブル要素t1,t2,t3,t4が最低限必要である。
そして、図5に示すように、参照フレームのサーチ範囲内の縮小相関値テーブルに対応する参照縮小ベクトルの範囲内において、ターゲットフレームの位置を基準位置(0,0)として、水平方向および垂直方向のずれ量(参照縮小ベクトルに対応)の軸vx/nおよび軸vy/nを考えると共に、これらの軸vx/nおよび軸vy/nに垂直な軸として、相関値の軸(相関値が小さいほど相関が強い)を考え、これら3軸からなる座標空間を想定する。
そして、例えば、整数精度最小値テーブル要素tmの相関値と、当該整数精度最小値テーブル要素tmを挟む2個のテーブル要素t1、t3の相関値とから、図5の座標空間において2次曲線を生成する。また、整数精度最小値テーブル要素tmの相関値と、当該最小値テーブル要素tmを挟む他の2個のテーブル要素t2、t4の相関値とから、図5の座標空間において、他の2次曲線を生成する。そして、これら2個の2次曲線を含む2次曲面201を、最小自乗法により求め、その2次曲面201を、図5に示すように、座標空間において生成する。
そして、生成されたSAD値の2次曲面201の最小値202を検出し、その最小値を取る相関値に対応する位置(vx/n,vy/n)(図5の位置203)を検出し、当該検出した位置(vx/n,vy/n)を、小数精度のテーブル要素(テーブルアドレス)として検出する。そして、検出した小数精度テーブル要素に対応するベクトル(最小値ベクトル)204を、図6に示すようにn倍して、元の大きさ精度の動きベクトル205を得る。
例えば、図7に示すように、参照ベクトルを1/4に縮小した場合における縮小相関値テーブルTBLsの、小数精度テーブル要素の最小値アドレスから求められる最小値ベクトル204が、(−0.777,−1.492)の場合に、これらを4倍した(−3.108,−5.968)が、動きベクトル205となる。この動きベクトル205は、元画像のスケールにおける動きベクトルを再現したものとなっている。
以上の説明は、整数精度最小値テーブル要素tmと、その近傍の4テーブル要素を用いた場合として説明したが、相関値の2次曲面を最小自乗法により求めるためには、より多くの複数近傍テーブル要素を用いたほうがよい。そこで、一般には、整数精度最小値テーブル要素tmを中心として、その周囲の水平方向×垂直方向=m×m個(mは3以上の整数)の矩形領域のテーブル要素を用いるようにする。
しかし、この複数の近傍テーブル要素の数は、多ければ良いというものではなく、広い範囲のテーブル要素を用いると、演算量の増加を招く上、画像パターンに依存するローカルミニマムの偽値を使用してしまう可能性も高まるので、適切な複数近傍テーブル要素の数からなる矩形領域のテーブル要素を用いるようにする。
適切な複数の近傍テーブル要素の数からなる矩形領域のテーブル要素の例として、この実施形態では、整数精度最小値テーブル要素tmを中心として、その周囲の水平方向×垂直方向=3×3個の矩形領域のテーブル要素を用いるようにする例と、整数精度最小値テーブル要素tmを中心として、その周囲の水平方向×垂直方向=4×4個の矩形領域のテーブル要素を用いるようにする例とについて説明する。
[3×3個の矩形領域のテーブル要素を用いる例]
図8に、整数精度最小値テーブル要素tmを中心として、その周囲の水平方向×垂直方向=3×3個の矩形領域(図8で塗りを付して示してある)のテーブル要素を用いるようにする例を示す。
この図8の例の場合には、図8(A)に示すように、整数精度最小値テーブル要素tmと、その近傍の8個の近傍テーブル要素の相関値(この例ではSAD値)を用いて、図8(B)に示すような2次曲面201を、最小自乗法により生成する。そして、生成された相関値の2次曲面201の最小値202を検出し、その最小値を取る相関値に対応する位置(vx/n,vy/n)(図8(B)の位置203)を検出し、当該検出した位置203を、小数精度の最小値テーブル要素位置(小数精度最小値テーブルアドレス)として検出する。
そして、検出した小数精度テーブル要素位置203に対応するベクトル(最小値ベクトル)204を、前述した図6に示すようにn倍して、元の大きさ精度の動きベクトル205を得る。
ここで、相関値の2次曲面201の最小値202に対応する位置203の算出方法は、次のようになる。すなわち、図9に示すように、整数精度最小値テーブル要素tmの位置を原点(0,0)とする(x,y)座標を考える。この場合、周辺の8個のテーブル要素の位置は、3個のx軸方向の位置、すなわち、x=−1、x=0、x=1と、3個のY軸方向の位置、すなわち、y=−1、y=0、y=1との繰り合わせで表され、(−1,−1)、(0,−1)、(1,−1)、(−1,0)、(0,1)、(−1,1)、(0,1)、(1,1)の8位置となる。
そして、図9のテーブルにおける各テーブル要素の相関値を、Sxyとする。したがって、例えば、整数精度最小値テーブル要素tm(位置(0,0))の相関値はS00と表され、また、右下の位置(1,1)のテーブル要素値の相関値はS11と表される。
すると、整数精度最小値テーブル要素tmの位置を原点(0,0)とする(x,y)座標における小数精度の位置(dx、dy)は、図10に示す(式A)および(式B)により、求めることができる。
図10の(式A)および(式B)において、
x=−1のとき、Kx=−1
x=0のとき、Kx=0
x=0のとき、Kx=1
となる。また、
y=−1のとき、Ky=−1
y=0のとき、Ky=0
y=0のとき、Ky=1
となる。
こうして求められた小数精度の位置(dx,dy)は、整数精度最小値テーブル要素tmの位置を原点(0,0)とする位置であるので、この小数精度の位置(dx,dy)と整数精度最小値テーブル要素tmの位置とから、求めるサーチ範囲の中心位置からの位置203を検出することができる。
[4×4個の矩形領域のテーブル要素を用いる例]
図11に、整数精度最小値テーブル要素tmをほぼ中心として、その周囲の水平方向×垂直方向=4×4個の矩形領域のテーブル要素(図11で塗りを付して示してある)を用いるようにする例を示す。
この場合に、整数精度最小値テーブル要素tmと、その近傍の8テーブル要素(3×3)や、その近傍の24テーブル要素(5×5)のように、前記mの値が奇数である場合には、整数精度最小値テーブル要素tmは、常に、使用する矩形領域の複数のテーブル要素の中心になるため、使用するテーブル範囲は単純に決定する。
これに対して、近傍の15テーブル要素(4×4)のように、mが偶数である場合には、整数精度最小値テーブル要素tmは、使用する矩形領域の複数のテーブル要素の中心位置とはならないので、若干の工夫が必要となる。
つまり、整数精度最小値テーブル要素tmから見て、水平方向に左右の隣接テーブル要素の相関値(この例ではSAD値)を比較し、小さい値となった側の方向の、当該方向の隣接テーブル要素に隣接するテーブル要素を近傍テーブル要素の4列目として採用する。同様に、垂直方向に上下の隣接テーブル要素の相関値を比較し、小さい値となった側の方向の、当該方向の隣接テーブル要素に隣接するテーブル要素を近傍テーブル要素の4行目として採用する。
図11の例では、整数精度最小値テーブル要素tmの水平方向に左右の隣接テーブル要素の相関値は、「177」と「173」であるので、相関値が小さい右隣の値「173」のテーブル要素のさらに右隣の列を第4列目として採用する。また、整数精度最小値テーブル要素tmの垂直方向に上下の隣接テーブル要素のSAD値は、「168」と「182」であるので、相関値が小さい上隣の値「168」のテーブル要素のさらに上隣の行を第4行目として採用する。
そして、図11の例の場合には、整数精度最小値テーブル要素tmと、その近傍の15個の近傍テーブル要素の相関値を用いて、2次曲面201を、最小自乗法により生成する。そして、生成された相関値の2次曲面201の最小値202を検出し、その最小値を取る相関値に対応する位置(vx/n,vy/n)(図11の位置203)を検出し、当該検出した位置203を、小数精度の最小値テーブル要素位置(小数精度最小値テーブルアドレス)として検出する。
そして、検出した小数精度テーブル要素位置203に対応するベクトル(最小値ベクトル)204を、前述した図6に示すようにn倍して、元の大きさ精度の動きベクトル205を得る。
ここで、この例の場合における相関値の2次曲面201の最小値202に対応する位置203の算出方法は、次のようになる。すなわち、図12に示すように、整数精度最小値テーブル要素tmの位置を原点(0,0)とする(x,y)座標を考える。
この例の場合には、16テーブル要素からなる矩形領域中における整数精度最小値テーブル要素tmの位置に応じて、図12(A),(B),(C),(D)のような4通りのテーブル要素配置を考える必要がある。
この場合、周辺の15個のテーブル要素の位置は、図12(A),(B),(C),(D)から分かるように、4個のx軸方向の位置、すなわち、x=−1、x=0、x=1、x=2またはx=−2と、4個のY軸方向の位置、すなわち、y=−1、y=0、y=1、y=2またはy=−2との繰り合わせで表される15位置となる。
そして、図12のテーブルにおける各テーブル要素の相関値を、Sxyとする。したがって、例えば、整数精度最小値テーブル要素tm(位置(0,0))の相関値はS00と表され、また、位置(1,1)のテーブル要素値の相関値はS11と表される。
すると、整数精度最小値テーブル要素tmおよびその周辺の16テーブル要素からなる矩形領域中の中心位置を原点(0,0)とする(x,y)座標における小数精度の位置(dx,dy)は、図13に示す(式C)および(式D)により、求めることができる。
ここで、図13の(式C)および(式D)において、KxおよびKyは、整数精度最小値テーブル要素tmおよびその周辺の16テーブル要素からなる矩形領域中の中心位置を原点(0,0)とする(Kx,Ky)座標(図14参照)を考えたときの、前記図12(A),(B),(C),(D)に示した4通りのテーブル要素配置に応じた値となる。
すなわち、図12(A)の場合には、図14に示すように、
x=−2のとき、Kx=−1.5
x=−1のとき、Kx=−0.5
x=0のとき、Kx=0.5
x=1のとき、Kx=1.5
となる。また、
y=−2のとき、Ky=−1.5
y=−1のとき、Ky=−0.5
y=0のとき、Ky=0.5
y=1のとき、Ky=1.5
となる。
また、図12(B)の場合には、図14に示すように、
x=−2のとき、Kx=−1.5
x=−1のとき、Kx=−0.5
x=0のとき、Kx=0.5
x=1のとき、Kx=1.5
となる。また、
y=−1のとき、Ky=−1.5
y=0のとき、Ky=−0.5
y=1のとき、Ky=0.5
y=2のとき、Ky=1.5
となる。
また、図12(C)の場合には、図14に示すように、
x=−1のとき、Kx=−1.5
x=0のとき、Kx=−0.5
x=1のとき、Kx=0.5
x=2のとき、Kx=1.5
となる。また、
y=−2のとき、Ky=−1.5
y=−1のとき、Ky=−0.5
y=0のとき、Ky=0.5
y=1のとき、Ky=1.5
となる。
また、図12(D)の場合には、図14に示すように、
x=−1のとき、Kx=−1.5
x=0のとき、Kx=−0.5
x=1のとき、Kx=0.5
x=2のとき、Kx=1.5
となる。また、
y=−1のとき、Ky=−1.5
y=0のとき、Ky=−0.5
y=1のとき、Ky=0.5
y=2のとき、Ky=1.5
となる。
また、図13の(式C)および(式D)におけるΔxおよびΔyは、(Kx,Ky)座標に対する図12(A),(B),(C),(D)の各テーブル要素配置における(x,y)座標のずれ量を表しており、
図12(A)の場合には、Δx=−0.5、Δy=−0.5、
図12(B)の場合には、Δx=−0.5、Δy=0.5、
図12(C)の場合には、Δx=0.5、Δy=−0.5、
図12(D)の場合には、Δx=0.5、Δy=0.5、
となる。
こうして求められた小数精度の位置(dx,dy)は、整数精度最小値テーブル要素tmの位置を原点(0,0)とする位置であるので、この小数精度の位置(dx,dy)と整数精度最小値テーブル要素tmの位置とから、求めるサーチ範囲の中心位置を基準とする位置203を検出することができる。
[より正確な動きベクトルを検出するための補間処理の第2の例]
より正確な動きベクトルを検出するための補間処理の第2の例は、縮小相関値テーブルにおける整数精度最小値テーブル要素を含む複数個の水平方向のテーブル要素の相関値(この例ではSAD値)を用いて水平方向の3次曲線を生成すると共に、整数精度最小値テーブル要素を含む複数個の垂直方向のテーブル要素の相関値(この例ではSAD値)を用いて垂直方向の3次曲線を生成し、それぞれの3次曲線の極小値となる位置(vx,vy)を検出して、検出した位置を小数精度の最小値アドレスとするものである。
図15は、この第2の例を説明するための図である。前述の第1の例と同様にして、整数精度最小値テーブル要素tmと、この整数精度最小値テーブル要素を中心とする複数の整数精度テーブル要素、図15の例では、4×4=16個のテーブル要素を求める(図15(A)で塗りを付した部分参照)。
次に、第1の例と同様にして、図15(B)に示すように、参照フレームのサーチ範囲内の縮小相関値テーブルに対応する参照縮小ベクトルの範囲内において、ターゲットフレームの位置を基準位置(0,0)として、水平方向および垂直方向のずれ量(参照縮小ベクトルに対応)の軸vx/nおよび軸vy/nを考えると共に、これらの軸vx/nおよび軸vy/nに垂直な軸として、相関値(SAD値)の軸を考え、これら3軸からなる座標空間を想定する。
次に、整数精度最小値テーブル要素tmの周囲の16個のテーブル要素のうち、整数精度最小値テーブル要素tmを含む4個の水平方向のテーブル要素の相関値(SAD値)を用いて、前記座標空間に水平方向の3次曲線206を生成する。この水平方向の3次曲線206の極小値に対応する水平方向の位置vx/nとして、小数精度最小値テーブル要素位置の水平方向位置を検出する。
次に、整数精度最小値テーブル要素tmの周囲の16個のテーブル要素のうち、整数精度最小値テーブル要素tmを含む4個の垂直方向のテーブル要素の相関値(SAD値)を用いて、前記座標空間に垂直方向の3次曲線207を生成する。この垂直方向の3次曲線207の極小値に対応する垂直方向の位置vy/nとして、小数精度最小値テーブル要素位置の垂直方向位置を検出する。
以上により求めた小数精度最小値テーブル要素位置の水平方向の位置と、垂直方向の位置から、小数精度最小値テーブル要素位置(小数精度最小値テーブルアドレス)208を検出する。そして、当該検出した小数精度テーブル要素位置208に対応するベクトル(最小値ベクトル)209を、前述した図6に示すようにn倍して、元の大きさ精度の動きベクトルを得る。
すなわち、第2の例は、第1の例で説明した方法により、水平方向、垂直方向のそれぞれの4個のテーブル要素を確定し、図15(B)に示すように、水平方向、垂直方向のそれぞれで、3次曲線を一意に定める手法である。
ここで、相関値の3次曲線206および209の最小値202に対応する位置208の算出方法は、次のようになる。すなわち、水平方向または垂直方向のいずれかの方向における3次曲線において、最小値の近傍の4点の相関値を、前記水平方向または垂直方向のいずれかの方向に沿った順番に、S0、S1、S2、S3としたとき、小数精度の最小値が、図16に示す3つの区間Ra,Rb,Rcのいずれにあるかにより、最小値を取る小数成分uを算出する式が異なる。
ここで、区間Raは相関値(SAD値)S0となる位置と相関値(SAD値)S1となる位置との間の区間、Rbは相関値(SAD値)S1となる位置と相関値(SAD値)S2となる位置との間の区間、Rcは相関値(SAD値)S2となる位置と相関値(SAD値)S3となる位置との間の区間である。
そして、小数精度の最小値が、図16に示す区間Raにあるときには、図17の(式E)により、整数精度の最小値の位置に対する最小値を取る位置までのずれの小数成分uが算出される。
また、同様に、小数精度の最小値が、図16に示す区間Rbにあるときには、図17の(式F)により、整数精度の最小値の位置に対する最小値を取る位置までのずれの小数成分uが算出される。
さらに、小数精度の最小値が、図16に示す区間Rcにあるときには、図17の(式G)により、整数精度の最小値の位置に対する最小値を取る位置までのずれの小数成分uが算出される。
そして、小数精度の最小値が、図16に示す3つの区間Ra,Rb,Rcのいずれにあるかの判別は、次のようにして行なう。
すなわち、図18は、その判別を説明するための図である。図18(A),(B),(C)に示すように、先ず、整数精度の相関値の最小値Sminと、2番目に小さい整数精度の相関値Sn2とを検出し、小数精度の最小値は、検出された整数精度の相関値の最小値Sminの位置と、2番目に小さい整数精度の相関値Sn2の位置との間の区間に存在するとして検出する。次に、整数精度の相関値の最小値Sminと、2番目に小さい整数精度の相関値Sn2とが、図16に示した相関値S0、S1、S2、S3のいずれの位置となっているかにより、検出した区間が区間Ra,Rb,Rcのいずれであるかの判別を行なう。
なお、図18(D)に示すように、整数精度の相関値の最小値Sminが、4個のテーブル要素値の端に位置する場合には、最小位置が推定できないとして、この実施形態では、エラーとして扱い、最小値位置の算出は行なわないようにする。もっとも、この図18(D)のような場合においても、最小値位置を算出するようにしてもよい。
以上のようにして、この実施形態によれば、1/n2にスケールダウンした小さいサイズの縮小相関値テーブルを用いて、元の画像スケールにおける動きベクトルを検出することができる。この場合に、1/n2にスケールダウンした小さいサイズの縮小相関値テーブルを用いているにも関わらず、従来とほぼ同様のベクトル検出結果が得られることを図19に示す。
図19の横軸は、水平方向または垂直方向の一方についての1次元方向の縮小倍率nであり、また、縦軸は、検出される動きベクトルについての誤差(ベクトル誤差)を示している。図19のベクトル誤差の数値は画素数で表されている。
図19において、曲線301は、縮小倍率に対するベクトル誤差の平均値である。また、曲線302は、縮小倍率に対するベクトル誤差の分散σの3倍値(3σ(99.7%))を示している。曲線303は、曲線302の近似曲線を示している。
図19は、1次元方向の縮小倍率nに対するベクトル誤差を示しているが、相関値テーブルは2次元のため、図19に示されるものの2乗の割合でテーブルサイズ(テーブル要素数)が削減されるのに対し、ベクトル誤差は、線形程度にしか増加しないことから、この実施形態による手法の有用性が分かる。
また、n=64(縮小率1/64)倍の縮小倍率でも、ベクトル誤差は小さく、全く異なる動きベクトルを検出出力とするような破綻は見られないことから、実質、1/4096に、相関値テーブルのサイズを削減可能であると言える。
また、前述したように、動画の手ぶれ補正においては、リアルタイム性とシステム遅延の削減が強く求められるのに対し、精度については、破綻した全く異なる動きベクトルが検出される場合を除き、ある程度のベクトル検出誤差に対して寛容である。したがって、破綻しないまま相関値テーブルのサイズを大きく削減することができる、この実施形態は有用性が高いと言える。
なお、実際の手ぶれ補正システムでは、参照フレーム102を複数の領域に分割し、それぞれの分割領域において動きベクトル205を検出するようにする。これは、フレーム内には動く被写体が含まれる可能性も高いため、例えば、図20のように参照フレーム102の1フレーム内において16個の動きベクトル205を検出し、過去のフレームにおけるそれらの動きベクトル205からの推移も加味しながら統計的に処理することで、1フレームについて1つのグローバルベクトル、即ち、フレームの手ぶれベクトルを確定するようにするためである。
この場合、図20に示すように、検出したい16個の動きベクトル205の基準位置PO1〜PO16のそれぞれを中心とするサーチ範囲SR1,SR2,・・・,SR16を定め、各サーチ範囲において、ターゲットブロックの射影イメージブロックIB1,IB2,・・・,IB16を想定する。
そして、この射影イメージブロックIB1,IB2,・・・,IB16と同じ大きさの参照ブロックを設定し、設定した参照ブロックを、各サーチ範囲SR1,SR2,・・・,SR16内を移動させて、上述と同様にして、縮小SADテーブルを生成し、各サーチ範囲SR1,SR2,・・・,SR16における動きベクトル205を検出するようにする。
以上説明した実施形態の画像処理方法は、従来手法として説明した特許文献4に記載された画像を縮小変換したサイズで動きベクトルを検出する手法に比べて、次に挙げる2つの点において、大きく異なるメリットを有するものである。
まず、第一に、この実施形態による手法は、特許文献4に記載された従来手法と異なり、画像を縮小変換するプロセスを全く必要としない。この実施形態による手法においては、参照ブロックについて算出した相関値(SAD値)を、相関値テーブル(縮小相関値テーブル)に代入加算する際に、同時に縮小倍率に相当するアドレス変換を行なうからである。
これにより、この実施形態による手法においては、特許文献4に記載された従来手法のような画像の縮小変換のためのロジックも、縮小した画像をメモリに格納する時間およびバンド幅の浪費も、縮小画像をメモリに貼る領域確保も必要ない、というメリットを有する。
特許文献4に記載された従来手法のもう1つ重要な問題点として、前述も使用にしたように、画像を縮小変換する際のエイリアシング(折り返し歪み)や、低照度ノイズ除去のためのローパスフィルタの存在の問題がある。すなわち、画像縮小する際には、適切なローパスフィルタを通してからリサンプリングを行なわなければならず、さもないと、不要なエイリアシングが発生し、その縮小画像を用いた動きベクトルの精度が著しく損なわれるからである。
縮小変換の際の理想的なローパスフィルタの特性としては、sinc関数に類似した関数であることが、理論的に証明されている。sinc関数自体は、sin(xπ)/(xπ)の形で表されるカットオフ周波数f/2の無限タップのFIR(Finite Impulse Response)フィルタであるが、縮小倍率1/nのときの理想的なカットオフ周波数f/(2n)のローパスフィルタとしては、sin(xπ/n)/(xπ/n)と表される。しかし、これもsinc関数の一形態として良い。
図21〜図23の上側には、それぞれ縮小倍率が1/2倍、1/4倍、1/8倍のときのsinc関数(ローパスフィルタの理想特性)の形状を示す。この図21〜図23から、縮小倍率が大きくなればなる程、関数がタップ軸方向に拡大して行くことが分かる。つまり、無限タップのsinc関数を主要な係数のみで近似する場合にも、FIRフィルタのタップ数を増加させなければならないと言える。
また、一般的に、より低い帯域のカットオフ周波数を実現するフィルタは、フィルタ形状よりもタップ数が、その性能に対して支配的になって行くことが知られている。
したがって、特許文献4に記載の従来手法の縮小画像を用いる動きベクトル演算手法の場合、画像の縮小倍率が大きくなればなる程、その相関値テーブル削減効果が大きいにも関わらず、画像生成する際の前処理用フィルタとしてのローパスフィルタは、縮小倍率が大きくなればなる程、コストが増加してしまう、という矛盾を併せ持つのである。
一般に、高次タップのFIRフィルタを実現する場合、演算ロジックのコストがタップ数の2乗に比例して増加するため、問題となるが、より大きい問題は、垂直フィルタ実現のためのラインメモリ数の増加である。近年のデジタルスチルカメラにおいては、画素数向上に伴うラインメモリのサイズ削減のため、いわゆる短冊処理を行なっているが、例え、1ライン当たりのサイズを削減したとしても、ラインメモリそのものの本数が増加することは、物理レイアウトエリアで換算されるトータルコストを著しく押し上げる。
以上、述べたように、特許文献4に記載の従来手法の画像縮小によるアプローチは、特に垂直ローパスフィルタの実現において、大きな壁が立ちはだかっていることが分かる。それに対し、この発明の手法は、全く異なる形で簡潔にこの問題を解決している。
図21〜図23の下側に、この発明による手法におけるローパスフィルタのイメージを示す。この発明による手法においては、画像縮小処理を伴っていないが、縮小相関値テーブルの生成演算過程におけるローパスフィルタのイメージを図示したものである。
図21〜図23の下側に示されるように、このローパスフィルタの特性は、sinc関数の主要係数部分を線形で近似した、シンプルなフィルタ特性ではあるものの、縮小倍率に連動してタップ数が増加していることが分かる。これは、先に述べた、カットオフ周波数が低くなる程、ローパスフィルタの性能はタップ数が支配的になる、という事実に好適である。つまり、実施形態の線形加重分散加算を行なう処理のような、この発明における相関値(SAD値)の分散加算を行なう処理そのものが、倍率連動の高性能ローパスフィルタを、シンプルな回路で実現していることと等価なのである。
このローパスフィルタに絡んで、他にもメリットがある。特許文献4記載の従来手法では、ローパスフィルタをかけた後、リサンプリングすることで画像を縮小するが、この時点で相当数の画像情報が失われる。つまり、ローパスフィルタの演算において、画像情報の輝度値の語長は大幅に丸められてメモリに格納され、殆どの画素情報の下位ビットは、縮小後の画像に影響を与えないのである。
一方、この発明による手法においては、全ての画素の輝度値の全ビット情報を、遍く平等に使用して相関値を演算し、その分散加算値を求めて縮小相関値テーブルに加算する。縮小相関値テーブルの各テーブル要素値の語長さえ増やせば、最終的な相関値の出力まで、一切の丸め誤差を含まない形で演算可能である。縮小相関値テーブルの面積はフレームメモリに比較して小さいため、縮小相関値テーブルの語長拡張は大きな問題にならない。その結果として、縮小相関値テーブル並びに動きベクトル検出を、高精度に実現できるのである。
[この発明による画像処理装置の実施形態]
次に、この発明による画像処理方法を用いた画像処理装置の実施形態として、撮像装置の場合を例にとって、図を参照しながら説明する。図24は、この発明の画像処理装置の実施形態としての撮像装置の一例のブロック図を示すものである。
図24に示すように、この実施形態の撮像装置は、システムバス2にCPU(Central Processing Unit)1が接続されると共に、システムバス2に、撮像信号処理系10や、ユーザ操作入力部3、画像メモリ部4、記録再生装置部5などが接続されて構成されている。なお、この明細書においては、CPU1は、種々のソフトウエア処理を行なうプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)やワークエリア用RAMなどを含むものとしている。
ユーザ操作入力部3を通じた撮像記録開始操作を受けて、図24の撮像装置は、後述するような撮像画像データの記録処理を行なう。また、ユーザ操作入力部3を通じた撮像記録画像の再生開始操作を受けて、図24の撮像装置は、記録再生装置部5の記録媒体に記録された撮像画像データの再生処理を行なう。
図24に示すように、撮像レンズ10Lを備えるカメラ光学系(図示は省略)を通じた被写体からの入射光は、撮像素子11に照射されて撮像される。この例では、撮像素子11は、CCD(Charge Coupled Device)イメージャで構成されている。なお、撮像素子12は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージャで構成してもよい。
この例の撮像装置においては、撮像記録開始操作がなされると、撮像素子11からは、タイミング信号発生部12からのタイミング信号によりサンプリングされることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色から構成されるベイヤー配列のRAW信号(生の信号)であるアナログ撮像信号が出力される。出力されたアナログ撮像信号は、前処理部13に供給され、欠陥補正やγ補正等の前処理が施され、データ変換部14に供給される。
データ変換部14は、これに入力されたアナログ撮像信号から、輝度信号成分Yと、色差信号成分Cb/Crとにより構成されるデジタル撮像信号(YCデータ)に変換し、そのデジタル撮像信号をシステムバスを介して、画像メモリ部4に供給する。
画像メモリ部4は、この図24の例においては、2個のフレームメモリ41,42からなり、データ変換部14からのデジタル撮像信号は、先ず、フレームメモリ41に格納される。そして、1フレーム経過すると、フレームメモリ41に記憶されているデジタル撮像信号が、フレームメモリ42に転送されると共に、フレームメモリ41には、データ変換部14からの新たなフレームのデジタル撮像信号が書き込まれる。したがって、フレームメモリ42には、フレームメモリ41に格納されているフレーム画像よりも1フレーム分前のフレーム画像が格納されている。
そして、手ぶれ動きベクトル検出部15は、システムバス2を介して、これら2個のフレームメモリ41およびフレームメモリ42をアクセスして、その格納データを読み出し、前述したような動きベクトル検出処理を実行する。この場合、フレームメモリ42に格納されているフレーム画像は、元フレームの画像とされ、また、フレームメモリ41に格納されているフレーム画像は、参照フレームの画像とされる。
そして、手ぶれ動きベクトル検出部15は、その検出結果である動きベクトルを、その後段の解像度変換部16に制御信号として伝達する。
解像度変換部16は、手ぶれ動きベクトル検出部15から受け取った動きベクトルにしたがって、フレームメモリ42に格納されている遅延フレームの画像データを切り出しながら、必要な解像度および画像サイズに変換する処理をする。このフレームメモリ42からの動きベクトルにしたがった切り出しにより、変換後の画像は、手ぶれが除去された画像となる。
この解像度変換部16からの手ぶれが除去された画像データは、NTSC(National Television System Committee)エンコーダ18によりNTSC方式の標準カラー映像信号に変換され、電子式ビューファインダーを構成するモニターディスプレイ6に供給され、撮影時の画像がその表示画面にモニター表示される。
このモニター表示と並行して、解像度変換部16からの手ぶれが除去された画像データはコーデック部17で記録変調などのコーディング処理された後、記録再生装置部5に供給されて、DVD(Digital Versatile Disc)などの光ディスクやハードディスクなどの記録媒体に記録される。
この記録再生装置部5の記録媒体に記録された撮像画像データは、ユーザ操作入力部3を通じた再生開始操作に応じて読み出され、コーデック部17に供給されて、再生デコードされる。そして、再生デコードされた画像データはNTSCエンコーダ18を通じてモニターディスプレイ6に供給され、再生画像がその表示画面に表示される。なお、図24では、図示を省略したが、NTSCエンコーダ18からの出力映像信号は、映像出力端子を通じて外部に導出することが可能とされている。
上述した手ぶれ動きベクトル検出部15は、ハードウエアにより構成することできるし、また、DSP(Digital Signal Processor)を用いて構成することもできる。さらには、CPU1によりソフトウエア処理とすることもできる。
[手ぶれ動きベクトル検出部15における処理動作]
<第1の例>
この手ぶれ動きベクトル検出部15における処理動作の第1の例の流れを、図25および図26のフローチャートを参照して、以下に説明する。
先ず、前述の図41に示したようなサーチ範囲105内の1つの参照ブロックIiに対応する参照ベクトル(vx、vy)を指定する(ステップS101)。前述したように、(vx,vy)は、ターゲットブロックのフレーム上の位置(サーチ範囲の中心位置である)を基準位置(0,0)としたときに、指定された参照ベクトルにより示される位置を示し、vxは指定された参照ベクトルによる、基準位置からの水平方向のずれ量成分であり、また、vyは指定された参照ベクトルによる、基準位置からの垂直方向成分のずれ量成分である。そして、前述の従来例で述べたのと同様に、ずれ量vx、vyは、画素を単位とした値とされている。
ここで、サーチ範囲の中心位置を前記基準位置(0,0)とし、サーチ範囲を、水平方向には±Rx、垂直方向には±Ryとしたとき、
−Rx≦vx≦+Rx、−Ry≦vy≦+Ry
とされるものである。
次に、ターゲットブロックIo内の1つの画素の座標(x,y)を指定する(ステップS102)。次に、ターゲットブロックIo内の指定された1つの座標(x,y)の画素値Io(x,y)と、参照ブロックIi内の対応する画素位置の画素値Ii(x+vx,y+vy)との差分絶対値αを、前述した(式1)に示したようにして算出する(ステップS103)。
そして、算出した差分絶対値αを、当該参照ブロックIiの参照ベクトル(vx,vy)が指し示すアドレス(テーブル要素)の、それまでのSAD値に加算し、その加算であるSAD値を、当該アドレスに書き戻すようにする(ステップS104)。すなわち、参照ベクトル(vx,vy)に対応するSAD値を、SAD(vx,vy)と表したとき、これを、前述した(式2)、すなわち、
SAD(vx,vy)=Σα=Σ|Io(x,y)−Ii(x+vx,y+vy)|
・・・(式2)
として算出し、当該参照ベクトル(vx,vy)が指し示すアドレスに書き込むようにする。
次に、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素について、上記のステップS102〜ステップS104の演算を行なったか否かを判別し(ステップS105)、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素については、未だ、その演算は終了していないと判別したときには、ステップS102に戻り、ターゲットブロックIo内の次の座標(x,y)の画素位置を指定し、このステップS102以降の処理を繰り返す。
以上のステップS101〜ステップS105までの処理は、図43に示したフローチャートのステップS1〜ステップS5と全く同様である。
この実施形態では、ステップS105で、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素について、上記の演算を行なったと判別したときには、縮小倍率を1/nとして、参照ベクトル(vx,vy)を1/nに縮小した参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)を算出する(ステップS106)。
次いで、参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)の近傍の複数の参照ベクトル、この例では、上述したように4個の近傍参照ベクトルを検知する(ステップS107)。そして、検知した4個の近傍参照ベクトルのそれぞれに対応するテーブル要素として分散加算すべき値を、前述したように、参照縮小ベクトルと近傍参照ベクトルとがそれぞれ示す位置の関係に基いて、ステップS104で求めたSAD値から、線形加重分散値として求める(ステップS108)。そして、求めた4個の線形加重分散値を、近傍参照ベクトルのそれぞれに対応する相関値テーブル要素値(SADテーブル要素値)に加算する(ステップS109)。
このステップS109が終了すると、注目中の参照ブロックについてのSAD値の算出が終了したと判別して、サーチ範囲内の全ての参照ブロック、すなわち、全ての参照ベクトル(vx,vy)についての上記のステップS101からステップS109までの演算処理を完了したか否か判別する(図26のステップS111)。
ステップS111で、未だ、上記の演算処理を完了していない参照ベクトル(vx,vy)があると判別すると、ステップS101に戻り、上記の演算処理を完了していない次の参照ベクトル(vx,vy)を設定して、このステップS101以降の処理を繰り返す。
そして、ステップS111で、上記の演算処理を完了していない参照ベクトル(vx,vy)はサーチ範囲内になくなったと判別すると、縮小SADテーブルが完成したとして、当該完成した縮小SADテーブルにおいて、最小値となっているSAD値を検出する(ステップS112)。
次に、当該最小値となっているテーブル要素アドレス(mx,my)のSAD値(最小値)と、その近傍の複数個、この例では、上述したように15個の近傍テーブル要素のSAD値を用いて2次曲面を生成し(ステップS113)、その2次曲面の最小値のSAD値が対応する小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する(ステップS114)。この最小値ベクトル(px,py)は、小数精度の最小テーブル要素アドレスに対応している。
そして、算出した小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)をn倍することにより、求めるべき動きベクトル(px×n,py×n)を算出する(ステップS115)。
以上で、1つのターゲットブロックに対する、この実施形態におけるブロックマッチングによる動きベクトルの検出処理は、終了となる。図20に示したような、1フレームについて分割した領域において、複数個の動きベクトルを検出する場合には、サーチ範囲および縮小倍率1/nを再設定して、上述の図25および図26に示した処理を、各分割領域について繰り返すものである。
なお、小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する方法としては、前述した水平方向および垂直方向の3次曲線を用いる方法を用いても良いことは言うまでもない。
<第2の例>
上述の第1の例においては、1つの参照ブロック(参照ベクトル)について、そのSAD値を求めた後、そのSAD値から、参照縮小ベクトルの近傍の複数参照ベクトルについての分散加算値を求め、分散加算処理を行なうようにした。すなわち、各SAD値は、参照ブロックとターゲットブロックとの間の相関値であるので、第1の例では、参照ブロックとターゲットブロックとの間の相関値を求め、当該求めたブロック間の相関値を、縮小相関値テーブルにおいて、分散加算するようにする。
これに対して、この第2の例においては、参照ブロック内の各画素と、ターゲットブロック内の対応する位置の画素との差分を、画素同士の相関値として検出し、その画素同士の相関値である差分値から、参照縮小ベクトルの近傍の複数参照ベクトルについての分散加算値(SAD値ではなく差分値)を求める。そして、求めた差分値を分散加算処理するようにする。この分散加算処理の結果、この第2の例によれば、1つの参照ブロック内のすべての画素についての差分演算を終了したときには、上述の第1の例と同様の縮小相関値テーブル(縮小SADテーブル)が生成されることになる。
図27および図28は、この第2の例による動きベクトル検出処理のフローチャートを示すものである。
図27のステップS121〜ステップS123までの処理は、図25のステップS101〜ステップS103までの処理と全く同様であるので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
この第2の例においては、ステップS123で、座標(x,y)の画素についての参照ブロックとターゲットブロック間での差分値αが算出すると、次には、縮小倍率を1/nとして、参照ベクトル(vx,vy)を1/nに縮小した参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)を算出する(ステップS124)。
次に、参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)の近傍の複数の参照ベクトル、この例では、上述したように4個の近傍参照ベクトルを検知する(ステップS125)。そして、検知した4個の近傍参照ベクトルのそれぞれに対応するテーブル要素として分散加算すべき差分値を、前述したように、ステップS123で求めた差分値αから、参照縮小ベクトルと近傍参照ベクトルとがそれぞれ示す位置の関係に基いて、線形加重分散値(差分値)として求める(ステップS126)。
そして、求めた4個の線形加重分散値を、近傍参照ベクトルのそれぞれに対応するテーブル要素値に加算する(ステップS127)。
このステップS127が終了したら、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素について、上記のステップS122〜ステップS127の演算を行なったか否かを判別し(ステップS128)、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素については、未だ、その演算は終了していないと判別したときには、ステップS122に戻り、ターゲットブロックIo内の次の座標(x,y)の画素位置を指定し、このステップS122以降の処理を繰り返す。
ステップS128で、ターゲットブロックIo内の全ての座標(x,y)の画素について、上記の演算を行なったと判別したときには、注目中の参照ブロックについてのSAD値の算出が終了したと判別して、サーチ範囲内の全ての参照ブロック、すなわち、全ての参照ベクトル(vx,vy)についての上記のステップS121からステップS128までの演算処理を完了したか否か判別する(図28のステップS131)。
ステップS131で、未だ、上記の演算処理を完了していない参照ベクトル(vx,vy)があると判別すると、ステップS121に戻り、上記の演算処理を完了していない次の参照ベクトル(vx,vy)を設定して、このステップS121以降の処理を繰り返す。
そして、ステップS121で、上記の演算処理を完了していない参照ベクトル(vx,vy)はサーチ範囲内になくなったと判別すると、縮小SADテーブルが完成したとして、当該完成した縮小SADテーブルにおいて、最小値となっているSAD値を検出する(ステップS132)。
次に、当該最小値となっているテーブル要素アドレス(mx,my)のSAD値(最小値)と、その近傍の複数個、この例では、上述したように15個の近傍テーブル要素のSAD値を用いて2次曲面を生成し(ステップS133)、その2次曲面の最小値のSAD値が対応する小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する(ステップS134)。この最小値ベクトル(px,py)は、小数精度の最小テーブル要素アドレスに対応している。
そして、算出した小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)をn倍することにより、求める動きベクトル(px×n,py×n)を算出する(ステップS135)。
以上で、1つのターゲットブロックに対する、この第2の例におけるブロックマッチングによる動きベクトルの検出処理は、終了となる。図20に示したような、1フレームについて分割した領域において、複数個の動きベクトルを検出する場合には、サーチ範囲および縮小倍率1/nを再設定して、上述の図27および図28に示した処理を、各分割領域について繰り返すものである。
なお、この第2の例においても、小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する方法としては、前述した水平方向および垂直方向の3次曲線を用いる方法を用いても良いことは言うまでもない。
<第3の例>
図19に示したように、この実施形態による動きベクトルの検出手法を用いた場合には、参照ベクトルの縮小倍率が1/64の場合でも、全く異なる動きベクトルを出力するような破綻は見られないことから、実質的に1/4096に、相関値テーブルの例としてのSADテーブルを削減可能である。
つまり、1/4096に削減した縮小相関値テーブル(縮小SADテーブル)を用意しておき、縮小倍率1/64で1回目の動きベクトルを検出する。次に、1回目で検出したその動きベクトルを中心にしてサーチ範囲を狭め、2回目の検出を、例えば縮小倍率1/8で行なうようにすればよい。すなわち、1回目と2回目とで縮小倍率を変えて、1回目のベクトル誤差範囲内に収まるように、2回目の縮小倍率を設定すれば、かなりの高精度で、動きベクトル検出が可能である。
この第3の例の場合における動きベクトル検出処理を、図29〜図32のフローチャートを参照しながら説明する。
この図29〜図32に示す第3の例は、基本的な動き検出処理として上述した第1の例を用いている。したがって、図29のステップS141〜ステップS149の処理ステップおよび図30のステップS151〜ステップS155までの処理ステップは、図25のステップS101〜ステップS109の処理ステップおよび図26のステップS111〜ステップS115までの処理ステップと全く同様である。
この第3の例においては、図30のステップS155で動きベクトルを算出したら、そこで処理を終了するのではなく、当該ステップS155で算出した動きベクトルは、1回目の動きベクトルとして、次のステップS156において、この1回目で算出した動きベクトルに基づき、同じ参照フレーム内で、サーチ範囲を絞り、また、参照ベクトルの縮小倍率を、1回目の縮小倍率1/naよりも小さい縮小倍率1/nb(ここで、na>nbである)に変更する。
すなわち、1回目の処理で、動きベクトルが算出されると、その算出された動きベクトルから、参照フレームと元フレームとの間で、相関のあるブロック範囲がおおよそ検出できる。そこで、その相関のあるブロック範囲を中心とした、絞ったサーチ範囲を設定することができる。そして、1回目よりも縮小倍率を小さくすることで、より誤差の少ない状態で、2回目の動きベクトルの算出が可能になると期待できる。
こうして、ステップS156で、絞ったサーチ範囲を設定し、新たな縮小倍率を設定したら、1回目と全く同様にして、2回目の動きベクトルの検出処理を、ステップS157〜ステップS158、図31のステップS161〜ステップS168、さらに、図32のステップS171〜ステップS174により実行する。これらのステップの処理は、図25のステップS101〜ステップS109の処理ステップおよび図26のステップS111〜ステップS115までの処理ステップと全く同様である。
こうして、最終的に、ステップS174において、2回目の動きベクトルとして、目的とする動きベクトルが得られる。
以上の例は、動きベクトルの検出方法として、前述した第1の例を用い、それを2段階、繰り返した場合であるが、サーチ範囲をさらに絞り、かつ、必要に応じて縮小倍率を変更しながら、2段階以上、繰り返すようにしても、勿論良い。
また、動きベクトルの検出方法としては、前述した第1の例の代わりに、前述した第2の例を用いることができることは言うまでもない。また、小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する方法としては、前述した水平方向および垂直方向の3次曲線を用いる方法を用いても良いことは前述の例と同様である。
[画像処理装置の第2の実施形態]
上述した画像処理装置の第1の実施形態としての撮像装置における手ぶれ動きベクトル検出部15においては、図24に示したように、画像メモリ部4は、2枚の画像、つまり元フレームの画像と、参照フレームの画像とが、両方共、フレームメモリに格納されていることを前提にしていた。このため、動きベクトルの検出タイミングは、1フレーム分遅延されることとなる。
これに対して、この第2の実施形態では、撮像素子11からの垂れ流し画像データを参照フレームとする構成として、ラスタスキャンのストリームデータに対して、リアルタイムでSAD値を演算することができるようにしている。
図33に、この第2の実施形態の場合における撮像装置の構成例のブロック図を示す。この図33から分かるように、撮像信号処理系10の構成ブロックおよびその他の構成ブロックは、図24に示した第1の実施形態と全く同様であるが、この第2の実施形態においては、図33に示すように、画像メモリ部4は1個のフレームメモリ43からなる。
この第2の実施形態では、元フレームがフレームメモリ43に格納されており、参照フレームは、データ変換部14からストリームで入力されて来るものとされる。手ぶれ動きベクトル検出部15は、第1の実施形態では、2個のフレームメモリ41,42に格納された2枚の画像データを用いて、ターゲットブロックに対する参照ブロックについての相関値の例としてのSAD値を求める処理をするようにした。これに対して、この第2の実施形態では、図33に示すように、データ変換部14からのストリーム画像データを参照フレームの画像データとすると共に、フレームメモリ43に格納されている画像データを元フレームの画像データとして、ターゲットブロックに対する参照ブロックについての相関値の例としてのSAD値を求めるようにする。
そして、解像度変換部16は、フレームメモリ43からの画像データの切り出しを、手ぶれ動きベクトル検出部15で検出された動きベクトルに基づいて行なうことで、手ぶれの無い画像データを出力するようにしている。その他の構成および動作は、第1の実施形態と同様である。
上述したように、この第2の実施形態では、データ変換部14からのストリーム画像データを参照フレームの画像データとする。このため、ある入力画素に対して、この画素を要素とする参照ブロックが、参照フレーム上に同時に複数存在することになる。図34は、そのことを説明するための図である。
すなわち、参照フレーム102上のサーチ範囲105における入力画素Dinは、例えば、参照ベクトル1071が対応する参照ブロック1061の左側に位置する画素であると共に、参照ベクトル1072が対応する参照ブロック1062の右上に位置する画素となっていることが、この図34から分かる。
したがって、入力画素Dinが参照ブロック1061に属するとした場合には、ターゲットブロック103の画素D1を読み出して、その差分を算出する必要がある。また、入力画素Dinが参照ブロック1062に属するとした場合には、ターゲットブロック103の画素D2を読み出して、その差分を算出する必要がある。
図34および後述の図35では簡単のため、2つの参照ブロックのみを図示しているが、実際上は、入力画素Dinを、その参照ブロック内の画素とする参照ブロックは多数となる。
この第2の実施形態の場合のSAD演算は、入力画素Dinの輝度値Yと、各々の参照ブロック内の入力画素Dinの位置に対応した、ターゲットブロック内の画素の輝度値Yとの差分絶対値を算出し、その算出した差分絶対値を、それぞれの参照ブロックに対応した参照ベクトルに従って、SADテーブルに加算してゆくようにして行なう。
例えば、入力画素Dinが参照ブロック1061に属するとした場合における、ターゲットブロック103の画素D1と入力画素Dinとの差分絶対値は、図35に示すように、相関値テーブル(SADテーブル)108の参照ベクトル1071が対応する相関値テーブル要素(SADテーブル要素)1092の相関値(SAD値)に加算して書き込むようにする。
また、入力画素Dinが参照ブロック1062に属するとした場合における、ターゲットブロック103の画素D2と入力画素Dinとの差分絶対値は、図35に示すように、SADテーブル108の参照ベクトル1072が対応するSADテーブル要素1092のSAD値に加算して書き込むようにする。
したがって、サーチ範囲内の全ての領域の入力画素が入力されて処理が終了したときには、SADテーブルが完成することになる。
図35の説明は、従来手法に、リアルタイムSAD算出処理を適用した場合である。この第2の実施形態においては、図35において、相関値テーブル(SADテーブル)108の参照ベクトル1071または1072が対応するSADテーブル要素1091または1092のSAD値として、算出した差分絶対値のそれぞれを、加算して書き込むのではなく、前述した第1の実施形態のように、参照ベクトル1071,1072を縮小倍率1/nで縮小した参照縮小ベクトルを算出し、その参照縮小ベクトルの近傍の複数の参照ベクトルに、前記算出した差分絶対値から、それぞれを分散加算するための分散加算値を求め、求めた分散加算値を、前記近傍の複数の参照ベクトルに対応するSAD値に加算するようにするものである。
SADテーブル(縮小SADテーブル)が完成した後の正確な動きベクトルを検出するための処理は、この第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態で述べた手法と全く同様にして、2次曲面や、水平方向および垂直方向の3次曲線を用いた手法を用いることができる。
この第2の実施形態における手ぶれ動きベクトル検出部15における動きベクトルの検出処理動作のフローチャートを図36および図37に示す。
先ず、手ぶれ動きベクトル検出部15では、入力画像のフレーム(参照フレーム)の任意の位置(x,y)の画素データDin(x,y)を受け取る(ステップS181)。次に、当該画素の位置(x,y)を含む複数の参照ブロックの一つに対応する参照ベクトル(vx,vy)を設定する(ステップS182)。
次に、設定された参照ベクトル(vx,vy)の参照ブロックIiの当該画素値Ii(x,y)と、これに対応するターゲットブロックIo内の画素値Io(x−vx,y−vy)との差分の絶対値αを算出する(ステップS183)。すなわち、差分絶対値αは、
α=|Io(x−vx,y−vy)−Ii(x,y)| ・・・(式3)
として算出される。
次に、縮小倍率を1/nとして、参照ベクトル(vx,vy)を1/nに縮小した参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)を算出する(ステップS184)。
次いで、参照縮小ベクトル(vx/n,vy/n)の近傍の複数の参照ベクトル、この例では、上述したように4個の近傍参照ベクトルを検知する(ステップS185)。そして、検知した4個の近傍参照ベクトルのそれぞれに対応するテーブル要素として分散加算すべき値(差分絶対値)を、前述したように、参照縮小ベクトルと近傍参照ベクトルとがそれぞれ示す位置の関係に基いて、ステップS183で求めた差分絶対値αから、線形加重分散値として求める(ステップS186)。そして、求めた4個の線形加重分散値を、近傍参照ベクトルのそれぞれに対応するSADテーブル要素値に加算する(ステップS187)。
次に、入力画素Din(x,y)を含む参照ブロックの全てについての上記ステップS182〜ステップS187の演算を行なったか否か判別し(ステップS188)、当該入力画素Din(x,y)を含む他の参照ブロックがあると判別したときには、ステップS182に戻り、当該入力画素Dinを含む他の参照ブロック(vx,vy)を設定し、このステップS182〜ステップS187の処理を繰り返す。
また、ステップS188で、入力画素Din(x,y)を含む参照ブロックの全てについての上記ステップS182〜ステップS187の演算を行なったと判別したときには、サーチ範囲内の全ての入力画素Dinについて、上記の演算ステップの処理を終了したか否か判別し(図36のステップS191)、終了していないと判別したときには、ステップS181に戻り、サーチ範囲内の次の入力画素Dinを取り込み、このステップS181以降の処理を繰り返す。
そして、ステップS191で、サーチ範囲内の全ての入力画素Dinについて、上記の演算ステップの処理を終了したと判別すると、縮小SADテーブルが完成したとして、当該完成した縮小SADテーブルにおいて、最小値となっているSAD値を検出する(ステップS192)。
次に、当該最小値となっているテーブル要素アドレス(mx,my)のSAD値(最小値)と、その近傍の複数個、この例では、上述したように15個の近傍テーブル要素のSAD値を用いて2次曲面を生成し(ステップS193)、その2次曲面の最小値のSAD値が対応する小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する(ステップS194)。この最小値ベクトル(px,py)は、小数精度の最小テーブル要素アドレスに対応している。
そして、算出した小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)をn倍することにより、求めるべき動きベクトル(px×n,py×n)を算出する(ステップS195)。
なお、この例においても、小数精度の位置を示す最小値ベクトル(px,py)を算出する方法としては、前述した水平方向および垂直方向の3次曲線を用いる方法を用いても良いことは前述の例と同様である。
また、前述の第1の実施形態の第3の例と同様にして、この第2の実施形態においても、サーチ範囲を絞りながら、かつ、必要に応じて縮小倍率を変更しながら、2段階以上、縮小SADテーブルを用いた動きベクトル検出処理を繰り返すようにしても、勿論良い。
この第2の実施形態のメリットは、フレームメモリを、第1の実施形態に比べて1枚分削減できることと、フレームメモリに入力画像を格納する時間を短縮できることである。メモリ削減の効果は言うまでもないが、処理時間の短縮も、近年、重要視されて来ている。特に動画を扱う場合、そのままシステム遅延の短縮に繋がるため、システム遅延が原因で生じる、実際の被写体とパネル表示画像の間に生じる違和感をなるべく無くすことは、ユーザへの訴求効果が高い。
[第3の実施形態]
以上の第1および第2の実施形態は、動画の手ぶれ補正システムを想定したものであり、その前提でここまでの議論を進めて来たが、この発明によるブロックマッチング手法は、静止画の手ぶれ補正システムにも容易に展開可能である。第3の実施形態は、この静止画の手ぶれ補正システムに、この発明を適用した場合である。
この第3の実施形態においては、第2の実施形態と同様に、入力画像フレームを参照フレームとして、この入力画像フレームと、フレームメモリ内の入力画像フレームを1フレーム遅延させた画像フレームとの間で動きベクトル検出を行なう。そして、この第3の実施形態における静止画についての手ぶれ補正は、連続的に撮影した複数枚の画像、例えば3fpsの画像を、手ぶれ補正を行いながら重ね合わせることにより行なう。
このように、第3の実施形態においては、撮影した静止画の手ぶれ補正を、連写した複数の画像について手ぶれ補正をかけながら重ね合わせて行くため、ピクセル精度(1画素精度)に近い精度が求められる。つまり、第3の実施形態においては、手ぶれ動きベクトルとしては、水平方向および垂直方向の平行移動成分と同時に、回転成分も検出する必要が生じる。
図38は、この第3の実施形態の場合の撮像装置の構成例を示すブロック図である。この図38の例は、図33に示した第2の実施形態において、手ぶれ動きベクトル検出部15と、解像度変換部16との間に回転加算部19を設けると共に、画像メモリ部4に、フレームメモリ43の他に、もう1つのフレームメモリ44を設け、このフレームメモリ44を、動きベクトルの回転成分の検出用およびフレーム画像の重ね合わせ用として用いるようにする。その他は、図33の構成と同様である。
手ぶれ動きベクトル検出部15は、前述の第2の実施形態で説明した動画の場合と同様にして、データ変換部14からの入力画素データを、参照フレームの画素データとすると共に、フレームメモリ43の格納データを元フレームのデータとして、動きベクトルの検出処理を行なう。この第3の実施形態においては、図20に示したように、1フレームについて、複数個の動きベクトルを検出する。
そして、この第3の実施形態においては、手ぶれ動きベクトル検出部15で検出された複数個の動きベクトルの情報は、回転加算部19に供給される。回転加算部19では、これら複数の動きベクトルを総合的に処理し、平行移動成分としての手ぶれベクトルと、回転角度を検出する。
そして、回転加算部19は、この検出した手ぶれベクトルと回転角度に従って、1フレーム遅延の後、フレームメモリ43に格納されている画像フレームを、切り出しと同時に回転させながら、フレームメモリ44の画像に加算もしくは平均化して行く。この過程を繰り返すことにより、フレームメモリ44には、手ぶれの無い、より高S/Nで、より高解像度の静止画像の画像フレーム120が生成される(図39参照)。
そして、解像度変換部16は、フレームメモリ44のフレーム画像から、所定の解像度および所定の画像サイズを切り出して、前述したように、記録撮像画像データとしてコーデック部17に供給すると共に、モニター画像データとしてNTSCエンコーダ18に供給する。
この第3の実施形態においても、手ぶれ動きベクトル検出部15においては、サーチ範囲を絞りながら、かつ、必要に応じて縮小倍率を変更しながら、2段階以上、縮小相関値テーブル(縮小SADテーブル)を用いた動きベクトル検出処理を繰り返すようにすることができる。この第3の実施形態の、静止画についての手ぶれ動きベクトル検出および手ぶれ補正処理においては、リアルタイム性の制約が少ないが、画素数が多く、高精度の動きベクトルの検出が必要であるので、複数段階の階層的な動きベクトル検出処理が非常に有効である。
なお、上述の第3の実施形態の例では、第2の実施形態における動きベクトルの検出方法を用いるようにしたが、第1の実施形態における動きベクトルの検出方法を用いるようにしても良い。
[第4の実施形態]
上述の第3の実施形態では、入力画像に対し、常に1フレーム前の画像との比較によって、手ぶれベクトルと回転角度を求める方式であったが、実際には、図39に示したように、1枚目を基準として、以降のフレームを足し合わせるため、動きベクトル検出も1枚目を基準にする方が誤差は小さくなる。第4の実施形態は、この点を考慮したものである。図40に、この第4の実施形態による撮像装置の構成例のブロック図を示す。
すなわち、この第4の実施形態においては、画像メモリ部4には、フレームメモリ43およびフレームメモリ44に加えて、フレームメモリ45を設ける。そして、データ変換部14からの画像データは、フレームメモリ43とフレームメモリ45とに書き込むようにする。
そして、この第4の実施形態においては、フレームメモリ45を、ターゲットとなる1枚目のフレーム(元フレーム=ターゲットフレーム)格納用として用いて、常に、この画像に対する入力画像の参照ベクトルを算出するシステムの構成を示す。この構成においても、フレームメモリ44に加算画像結果が格納される。その他は、第3の実施形態と同様に構成される。
なお、この第4の実施形態では、入力画像の1フレーム目を基準画像として、無限加算もしくは無限平均加算も可能なシステムを示したが、もしメモリ容量がふんだんに存在するか、記録再生装置部5への一時的な退避が許されるならば、予め加算対象の画像を全て保存しておき、それらをトーナメント式に加算、もしくは平均加算して行く方法を採用しても良い。
[第5の実施形態]
以上説明した第1〜第4の実施形態によるセンサレス手ぶれ補正と、現存技術である光学手ぶれ補正とを組み合わせることによって、より高い効果が得られる。
冒頭で説明したように、ジャイロセンサを用いる光学手ぶれ補正は、大まかな補正を得意としており、また、回転補正が難しいのに対し、ブロックマッチングを使用したセンサレス手ぶれ補正は、回転補正も含めた精度は高いが、サーチ範囲が広くなると、SADテーブルのコストが急上昇するか、この実施形態の手法を用いたとしても、複数段階の動き検出処理による場合には処理時間を要するからである。
したがって、光学手ぶれ補正で大まかに補正して、センサレベル手ぶれ補正のための動きベクトル検出用のサーチ範囲を狭め、そのサーチ範囲において、動きベクトルを検出して、センサレス手ぶれ補正をかけることにより、低コスト、高精度、高速の手ぶれ補正システムが実現できる。
[効果]
以上説明したように、上述の第1〜第5の実施形態のブロックマッチング手法を用いることにより、従来、動画のセンサレス手ぶれ補正システムで課題とされて来た、相関値テーブルの大幅な削減が可能となるばかりか、相関値テーブルの容量爆発のために、ほぼ不可能と思われていた、静止画のセンサレス手ぶれ補正も容易に実現できる。
また、上述の第1〜第5の実施形態のブロックマッチング手法を用いたセンサレス手ぶれ補正手法は、これまで提案されている、センサレス静止画手ぶれ補正技術に対しては、コスト、精度、処理時間、ロバスト性の、いずれにおいても優位に立つ。
現在市場に出回っている静止画の手ぶれ補正の全ては、ジャイロセンサとレンズシフト等の光学補正を組み合わせて用いたシステムであるが、誤差が大きく、満足のいく画質ではなかった。これに対して、この発明による手法により、センサや機構部分を無くした、低コストかつ高精度の手ぶれ補正が実現する。
[その他の変形例]
上述の実施形態の説明では、参照ベクトルに対する縮小倍率は水平方向と垂直方向とで同一としたが、水平方向と、垂直方向とで、縮小倍率を異ならせるようにしても良いことは前述した通りである。
また、上述の実施形態では、参照ブロックおよびターゲットブロック内の全ての画素についてSAD値を求めて、相関値とするようにしたが、例えばk個(kは自然数)おきの画素のみを用いてSAD値を求めて、相関値とするようにしても良い。
また、リアルタイム処理の動きベクトル検出システムでは、演算コストと処理時間削減を目的として、ターゲットブロック内の代表点のみを参照ブロック内でサーチする、相関値演算、例えばSAD演算がしばしば行われている。
すなわち、図41に示すように、ターゲットブロック103を、例えば横×縦=a×b個(a、bは1以上の整数)からなる複数画素毎に分割し、その分割単位である複数画素のうちの1点の画素を代表点TPとする。そして、相関値演算においては、ターゲットブロック103については、このようにして定めた複数個の代表点TPのみを使用する。
一方、参照ブロック106では全画素を、この例の相関値を求めるSAD値演算の対象とするもので、ターゲットブロック103の一つの代表点TPに対しては、一つの参照ブロック106において、代表点TPが設定される分割単位であるa×b個からなる複数画素の領域ARに含まれる全画素を使用する。
そして、ターゲットブロック103と、一つの参照ブロック106との間においては、ターゲットブロック102の各代表点TPの画素値と、参照ブロック106の、各代表点TPに対応するそれぞれの領域ARに含まれるa×b個からなる複数の画素のそれぞれの画素値との差分の合計が求められ、そして、求められた代表点TPについての差分の合計が、ターゲットブロック103のすべての代表点TPについて合計されることになる。これが、相関値テーブル(SADテーブル)の一つの要素値となる。
そして、ターゲットブロック103についてのサーチ範囲のすべての参照ブロックについて、上記と同様の代表点TPを用いた差分演算が行われて、相関値テーブル(SADテーブル)が生成されることになる。ただし、この例の場合には、サーチ範囲に設定する複数個の参照ブロックは、前述した分割単位であるa×b個からなる複数画素毎、あるいは当該複数画素の整数倍毎にずれたものとされる。
上述のようにターゲットブロックについて代表点を用いるようにする場合には、相関値としてのSAD値を算出する際のターゲットブロックについてのメモリアクセスは、参照ブロックの領域ARの複数画素毎に対して、一つの代表点TPの1回でよくなり、メモリアクセス数を大幅に少なくすることができる。
また、代表点TPのみを用いる場合には、ターゲットブロックのデータとしては、ブロック内の全画素のうちの代表点TPの画素データのみを記憶すればよいので、元フレーム(ターゲットフレーム)のターゲットブロックのデータを記憶するフレームメモリの容量を削減することができる。
また、フレームメモリとは別に、小規模な代表点メモリ(SRAM)をローカルで持ち、当該ローカルメモリに元フレーム(ターゲットフレーム)のターゲットブロックのデータを保持するようにすることにより、画像メモリ4(DRAM)の帯域削減を図っても良い。
ターゲットブロックについて代表点を用いる場合の処理に関する以上の説明は、図42〜図44を用いて説明した手法におけるものについてであるが、図34〜図37を用いて説明した第2の実施の形態における手法の場合にも適用できることは言うまでもない。
この第2の実施形態における手法において、ターゲットブロックについて代表点TPのみを用いる場合には、入力される参照フレームの画素(入力画素)ごとに、サーチ範囲の全範囲において、当該入力画素を含む領域AR(当該画素の位置は領域ARにおいて同じではない)を備えるすべての参照ブロックを検出し、その検出したすべての参照ブロックのそれぞれにおける領域ARに対応するターゲットブロックの代表点を判定する。
そして、その判定結果として得られる複数個の代表点の画素値を、元フレーム(ターゲットフレーム)の画像データを記憶するメモリからそれぞれ読み出して、その代表点の画素値と当該入力画素との差分をそれぞれ演算し、その演算結果を、相関値テーブルとしてのSADテーブルにおいて、対応する参照ブロック(参照ベクトル)の座標位置に累積するようにする。
この場合には、メモリアクセスは、ターゲットブロックの代表点のみを読み出すだけであるので、メモリアクセス数を大幅に削減することができるものである。
なお、代表点を用いる処理は、この実施形態では、上述した縮小相関値テーブル(縮小SADテーブル)を用いる場合に適用されるものであることは言うまでもない。
また、上述の実施形態では、相関値としての画素の差分値およびSAD値は、画素の輝度値Yのみを用いて演算するものとしたが、動きベクトル検出のために、輝度値Yだけでなく、色差成分Cb/Crを用いてもよい。また、データ変換部14で輝度値Yおよび色差成分Cb/Crに変換される前のRAWデータを対象として、動きベクトル検出処理を行ってもよい。
また、前述もしたが、手ぶれ動きベクトル検出部15は、ハードウエア処理による構成とする場合に限定されるものではなく、ソフトウエアで実現しても良い。
なお、上述の実施形態は、すべて撮像された画像情報についての動きベクトルを検出する場合について説明したが、この発明が適用される画像情報は、撮像画像に限らないことは言うまでもない。
また、冒頭でも述べたが、ターゲットブロックと参照ブロックとの相関値は、SAD値に限られるものではない。
また、上述の説明は、この発明を撮像装置からの撮像画像について、手ぶれベクトルを検出する場合に適用した例であったが、この発明は、撮像画像についての手ぶれベクトルに限らず、2画面間の動きベクトルの検出の場合のすべてに適用可能である。この場合に、ターゲットフレーム(ターゲット画面)と参照フレーム(参照画面)との時間的な関係は、いずれが先行するものであってもよい。すなわち、上述の例では、手ぶれベクトルの検出であったので、ターゲット画面が先行する場合であるが、例えば、一旦記録された画像情報については、参照画面が先行する場合の動きベクトルの検出にも、この発明は適用可能である。
101…元フレーム、102…参照フレーム、103…ターゲットブロック、105…サーチ範囲、106…参照ブロック、107…参照ベクトル、15…手ぶれ動きベクトル検出部、41〜45…フレームメモリ、TBLs…縮小SADテーブル、TBLo…従来のSADテーブル、RV…参照ベクトル、CV…参照縮小ベクトル、NV1〜NV4…近傍参照ベクトル