JP4302307B2 - アイドリングストップ機能を有する車両、および、車両に搭載した蓄電池の残存容量算出方法と装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などの車両に搭載されている蓄電池の残存容量を測定する方法と装置、および、そのような蓄電池の残存容量を測定する装置を搭載した車両に関する。
特に、本発明はアイドリングストップ機能を有する車両に搭載された蓄電池の残存容量、劣化状態などを測定する方法と装置、および、そのような蓄電池の残存容量、劣化状態を測定する装置を搭載したアイドリングストップ機能を有する車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両などに搭載される蓄電池の残存容量および劣化状態が知ることが望まれており、これまで、種々の方法が提案され、開発されている。
【0003】
その1例として、蓄電池を完全に放電させて残存容量を測定し、その容量から蓄電池の劣化状態を判定する原理的な方法が知られている。
しかしながら、この方法は、完全に蓄電池を放電させるので、使用中の蓄電池に用いることは難しく、しかも、放電に時間がかかり測定時間も長いことから、実用的な方法ではない。
特に、この方法は、自動車の走行中に、自動車に搭載した蓄電池の残存容量、劣化状態などを実時間で測定することには適さない。
【0004】
そこで、短時間に蓄電池の残存容量を測定する方法が種々開発されてきた。
【0005】
そのような方法として、まず、蓄電池の電解液の分極状態から蓄電池の残存容量を推定する方法について述べる。
特開平1−129177号公報に記載されている方法は、自動車に搭載された蓄電池の開放電圧の変化量によって蓄電池の分極の状態を把握し、所定の分極の状態において該蓄電池の内部インピーダンスを測定し、この内部インピーダンスを指標として蓄電池の状態を検査する方法である。しかしながら、車両走行時には、蓄電池の開放電圧の変化量による分極の状態把握が困難であるために、特開平1−129177号公報に記載された方法は、自動車用蓄電池の残存容量の検査方法としては適切でない。
【0006】
そこで、特開平10−319100号公報は、上記問題を克服する方法を開示している。特開平10−319100号公報に開示されている方法は、測定する蓄電池が鉛蓄電池である場合、車両走行中に分極の状態を把握する方法である。この方法は、自動車用蓄電池の状態を検査する方法として有用な方法であるが、分極状態を把握するためのデータベースを構築するため、多くの実験データが必要であり、特に、自動車用蓄電池の多様な劣化状態に対応することが困難である。
【0007】
近年、電解液が極めて少ないシール型鉛蓄電池が採用されつつあるが、そのような電解液が極めて少ない鉛蓄電池においては電解液の比重の測定が困難なので、上述した問題に加えて、電解液の比重を指標として蓄電池の残存容量を測定する方法は限界がある。このように、鉛蓄電池の電解液の比重を指標として蓄電池の残存容量を検査する方法は、種々の障害がある。
【0008】
蓄電池の短時間検査方法として開発された他の方法として、蓄電池から放電または充電される電流値を常時測定し、その電流測定値を積算して蓄電池の残存容量を求める方法(以下、電流積算法)が知られている。
【0009】
電流積算法の例として、たとえば、特開平9−171065号公報に開示された方法について述べる。特開平9−171065号公報に開示された方法は、電気自動車用蓄電池の残存容量を電流積算法で検査する方法であり、予め、特定の放電電流値での定電流放電における、端子電圧と残存容量のデータテーブルを用意しておき、自動車走行中に特定の放電電流値が一定時間継続したことを検知し、その時の蓄電池の端子電圧を測定し、測定した端子電圧を前記データテーブルに参照することで、蓄電池の残存容量を求め、電流積算法で求めた蓄電池の残存容量の値を補正するようにした方法である。この方法は、電気自動車に用いる蓄電池の残存容量の検査法としては有用な方法である。すなわち、電気自動車においては、その車両が常用する走行速度での放電電流値を、特定の放電電流値とすることで蓄電池の残存容量を求める機会が多くなるためである。
しかしながら、内燃機関を搭載した通常の自動車では、特定の放電電流値を適切に設定することが困難になる。即ち、通常の自動車においては、自動車走行中に、頻繁に一定時間継続するような特定の電流値が出現する機会が少なく、蓄電池の残存容量を求める機会が極めて少なくなる。
【0010】
さらにその他の電流積算法は、電流値の測定誤差により、積算値の誤差が次第に大きくなり、蓄電池の状態が正確に求めることができなくなるという問題点があった。
【0011】
そこで、電流積算法における残存容量の算出方法を修正する方法が種々提案されている。その例を下記に述べる。
【0012】
特開平4−95788号公報(特許第2,536,257号公報)は、鉛蓄電池の内部インピーダンスの測定結果を鉛蓄電池のインダクタンス成分L、電解液抵抗RΩ、電荷移動抵抗Rct、電気二重層容量Cd、ワールブルグインピーダンスW、ワールブルグ係数σからなる等価回路に当てはめて最適解をもとめ、L、RΩ、Rct、Cd、W、σの少なくとも一つを初期の値と比較して電池の寿命を判定する方法を開示している。
【0013】
特開平8−19103号公報(特許第2791751号公報)は、電気自動車用鉛蓄電池の残存容量を電流積算法で算出する時、蓄電池の満充電完了時及び走行中の一時停止時に内部インピーダンスの測定を行い、内部インピーダンスから導出する放電率によって、電流積算法で求めた蓄電池の残存容量の値を補正する方法を開示している。すなわち、特開平8−19103号公報に開示された方法は、電流積算法と内部インピーダンス測定法とを結合した方法である。
電流積算法は、たとえば、特開平9−171065号公報に開示された方法など各種の方法を適用できる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
特開平4−95788号公報に記載されている方法を、内燃機関を動作する自動車に搭載された鉛蓄電池の残存容量の測定および劣化状態の検査に用いた場合、エンジンの回転に伴って稼働している発電機(オルタネータ)の影響、並びに、自動車に搭載された電気装備の負荷変動の影響で鉛蓄電池の内部インピーダンスの正確な測定が困難になる。その結果、鉛蓄電池の残存容量の測定および劣化状態の検査が困難になる。
【0015】
特開平8−19103号公報に記載された方法は、電気自動車に搭載する蓄電池を前提にした方法であるため、内燃機関(エンジン)を搭載した自動車にはそのままでは適用できない。すなわち、エンジン駆動車では、エンジンの回転に伴って稼働している発電機(オルタネータ)がノイズを発生し、このノイズのために蓄電池の内部インピーダンスの測定が困難になる。
【0016】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記した課題を解決するために、本願発明者が鋭意検討を重ねた結果、以下のような発明に至った。
すなわち、本願発明者は、特開平8−19103号公報(特許第2791751号公報)、特開平4−95788号公報(特許第2536257号公報)に開示されている既存の優れた特徴を示す方法を、内燃機関(エンジン)で駆動し、さらに、アイドリングストップ機能を有する車両に搭載された蓄電池の残存容量を算出するための条件と、車両に搭載すべき装備を考察した。
【0017】
内燃機関を搭載した車両は、内燃機関の動作に伴い発電機(オルタネータ)が動作して、たとえば、特開平8−19103号公報に開示されている蓄電池の内部インピーダンスの測定に対してノイズとなる。そこで、まず、車両の一時停止時にアイドリングストップ機能として内燃機関を一時的に停止させた場合、それに伴いオルタネータが停止するので、その時、蓄電池の内部インピーダンスを測定することとした。
【0018】
次いで、高電圧負荷系統と低電圧負荷系統とを有し、そのために2種の電源を有する2電源システム車においては、主蓄電池から低電圧負荷系統用の電圧を発生させるためDCDCコンバータなどのスイッチング方式電圧変換手段を有しており、スイッチング方式電圧変換手段が高周波ノイズを発生させて、蓄電池の内部インピーダンスの測定を困難にする。そこで、蓄電池の内部インピーダンスを測定するため、スイッチング方式電圧変換手段を一時的に停止させることにした。
しかしながら、DCDCコンバータなどのスイッチング方式電圧変換手段を停止させると、高電圧負荷系統はもとより、低電圧負荷系統へも給電がなくなり、車両の電気装備が全て停止する。これでは蓄電池の内部インピーダンスの測定もできないし、内燃機関の再始動もできなくなる。そこで、スイッチング方式電圧変換手段の停止時、バックアップする補助蓄電池を追加装備することにした。
【0019】
なお、一時停止時などにおいて、ウインカーが点滅したり、ハザードランプが点滅する。そのような点滅は蓄電池の内部インピーダンスを測定するときにノイズとなるので、その影響を排除する接続にした。
【0020】
したがって、本発明の第1の観点によれば、内燃機関と、第1の給電線と、第2の給電線と、前記第1の給電線に接続された第1の電圧で動作する第1の負荷と、前記第2の給電線に接続され、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧で動作する、車両の一時停止中にも動作する負荷を有する第2の負荷と、前記第1の給電線に接続された前記第1の電圧の電力を充放電する第1の蓄電池と、前記第1の給電線に接続され、前記内燃機関を始動するスタータと、前記第1の給電線に接続され、前記内燃機関の動作に応じて動作するオルタネータと、入力が前記第1の給電線に接続され出力が前記第2の給電線に接続され、前記第1の電圧を前記第2の電圧に変換するスイッチング方式電圧変換手段と、前記第2の給電線に接続され、前記第2の電圧の電力を充放電する第2の蓄電池と、前記第2の給電線から給電されて動作し、車両の一時停止時に所定条件が満足したとき前記内燃機関の動作を停止し、車両の再始動時に前記スタータを駆動して前記内燃機関を再起動するアイドリングストップ処理手段と、前記第2の給電線から給電されて動作し、前記第1の蓄電池の状態を判定する第1の充電状態判定装置とを具備する車両であって、前記アイドリングストップ処理手段は、(a)前記第1の充電状態判定装置で検出した前記第1の蓄電池の残存容量が前記内燃機関の再始動のために充分であることを示している場合に前記内燃機関の動作を停止し、(b)前記内燃機関が停止している間、前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定している間、前記スイッチング方式電圧変換手段を停止させ、(c)前記第1の充電状態判定装置を起動し、前記第1の充電状態判定装置は、前記内燃機関の停止に伴い前記オルタネータが停止し、かつ、前記DCDCコンバータが停止しているとき、前記第1の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから前記第1の蓄電池の残存容量を算出する車両が提供される。
【0021】
好適には、前記アイドリングストップ処理手段は、前記車両の一時停止期間、前記内燃機関が停止するアイドリングストップの後、少なくとも、当該車両の再始動に必要な電池容量と、所定時間アイドリングストップしている間に必要とされる消費電池容量とを加算した電池容量が前記第1の蓄電池に残存容量として残っているとき、前記内燃機関を停止させる。
【0022】
また好適には、前記第1の充電状態判定装置は、前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定し、当該測定した内部インピーダンスから前記第1の蓄電池の放電率を算出し、当該算出した放電率から電流積算法に基づいて、前記第1の蓄電池の残存容量を算出する。
【0023】
さらに好適には、前記第2の給電線から給電されて動作し、前記第2の蓄電池の状態を判定する第2の充電状態判定装置をさらに有し、前記アイドリングストップ処理手段は、前記工程(b)において、前記第2の充電状態判定装置が前記第2の蓄電池に所定以上の残存容量があると判定したとき、前記スイッチング方式電圧変換手段を停止させる。
【0024】
本発明の第2の観点によれば、内燃機関と、第1の給電線と、第2の給電線と、前記第1の給電線に接続された第1の電圧で動作する第1の負荷と、前記第2の給電線に接続され前記第1の電圧より低い第2の電圧で動作し、車両の一時停止中にも動作する負荷を有する第2の負荷と、前記第1の給電線に接続され前記第1の電圧の電力を充放電する第1の蓄電池と、前記第1の給電線に接続されて前記内燃機関を始動するスタータと、前記第1の給電線に接続され前記内燃機関の動作に応じて動作するオルタネータと、入力が前記第1の給電線に接続され出力が前記第2の給電線に接続され、前記第1の電圧を前記第2の電圧に変換するスイッチング方式電圧変換手段と、前記第2の給電線に接続され前記第2の電圧の電力を充放電する第2の蓄電池と、アイドリングストップ処理・判定手段とを具備し、当該アイドリングストップ処理・判定手段は、
(a)前記第1の充電状態判定装置が検出した前記第1の蓄電池の残存容量が前記内燃機関の再始動のために充分であることを示している場合に前記内燃機関の動作を停止させ、(b)前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定している間、前記スイッチング方式電圧変換手段を停止させ、(c)前記内燃機関の停止に伴い前記オルタネータが停止し、かつ、前記スイッチング方式電圧変換手段が停止しているとき、前記第1の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、
車両が提供される。
【0025】
好適には、前記第1の蓄電池の残存容量の算出において、前記アイドリングストップ処理・判定手段は、前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから放電率を算出し、算出した放電率から電流積算法に基づいて、前記第1の蓄電池の残存容量を算出する。
【0026】
また、アイドリングストップ機能を有しない車両についても、上述したノイズの影響のない状況を準備することにより、車両に搭載された蓄電池の残存容量を正確に測定することができる。
すなわち、本発明の第3の観点によれば、内燃機関と、第1の給電線と、第2の給電線と、前記第1の給電線に接続され第1の電圧で動作する第1の負荷と、前記第2の給電線に接続され前記第1の電圧よりも低い第2の電圧で動作する、車両の一時停止中にも動作する負荷を有する第2の負荷と、前記第1の給電線に接続された第1の蓄電池と、前記第1の給電線に接続され前記内燃機関を始動するたスタータと、前記第1の給電線に接続され前記内燃機関の動作に応じて動作するオルタネータと、入力が前記第1の給電線に接続され出力が前記第2の給電線に接続され前記第1の電圧を前記第2の電圧に変換するスイッチング方式電圧変換手段と、前記第2の給電線から給電されて動作し前記第1の蓄電池の状態を判定する第1の充電状態判定装置とを具備し、前記第1の充電状態判定装置は、運転席の脇のドアが閉まった直後、前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから放電率を算出し、算出した放電率から電流積算法に基づいて、前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、蓄電池の残存容量算出装置が提供される。
【0027】
本発明の第4の観点によれば、内燃機関と、第1の給電線に接続された第1の負荷と、第1の給電線に接続され、前記第1の負荷よりも低い電圧で動作する車両の停止中にも動作可能な負荷を有する第2の負荷と、前記第1の給電線に接続された第1の蓄電池と、前記第1の給電線に接続されたスタータと、前記第1の給電線に接続され、前記内燃機関の動作に応じて動作するオルタネータと、入力が前記第1の給電線に接続され、出力が前記第2の給電線に接続された、前記第1の電圧を前記第2の電圧に変換するスイッチング方式電圧変換手段と、前記第2の給電線から給電されて動作し、前記第1の蓄電池の状態を判定する第1の充電状態判定装置とを具備する車両における蓄電池の残存容量算出方法であって、前記第1の充電状態判定装置は、運転席の脇のドアが閉まった直後、前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから放電率を算出し、算出した放電率から電流積算法に基づいて、前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、蓄電池の残存容量算出方法が提供される。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明のアイドリングストップ機能を有する車両と、その車両に搭載した蓄電池の残存容量測定方法とその装置について、実施の形態を述べる。
【0029】
第1実施の形態
図1は本発明の第1実施の形態としてのアイドリングストップ機能を有する自動車に搭載された装備の構成図である。
図1に図解した自動車には、第1の給電線としての高電圧電源ライン10と、本発明の第2の給電線としての低電圧電源ライン11と、スタータ1と、発電機(オルタネータ)2と、本発明の第1の蓄電池としての1例としての36V蓄電池3と、DCDCコンバータ(直流・直流変換器)5と、本発明の第1の負荷系統としての高電圧負荷系統7と、本発明の第2の負荷系統としての低電圧負荷系統8とが搭載されている。
【0030】
近年、図1に示すような高電圧負荷7用の36V蓄電池3と、低電圧負荷8用に36V蓄電池3の電圧を低電圧に変換するDCDCコンバータ5との2系統の電源を有するいわゆる2電源システム車の開発が行なわれている。
【0031】
図1に図解した自動車には、もちろん、内燃機関(エンジン)16と、アイドリングストップ処理を行うアイドリングストップ処理手段12が搭載されている。
【0032】
本発明の実施の形態として、自動車に、本発明の第2の蓄電池としての12V蓄電池6、36V蓄電池3の残存容量を測定するための第1の充電状態判定装置4と、12V蓄電池6の残存容量を測定する第2の充電状態判定装置14とを追加装備している。
【0033】
図1の配線状態を述べる。図1において実線は電源系統の配線を示しており、破線は制御信号の配線を示している。
高電圧電源ライン10には、スタータ1と、オルタネータ2と、36V蓄電池3と、DCDCコンバータ5の1次側と、高電圧負荷系統7とが接続されている。
低電圧電源ライン11には、DCDCコンバータ5の2次側と、12V蓄電池6と、充電状態判定装置4と、アイドリングストップ処理手段12と、第2の充電状態判定装置14と、低電圧負荷系統8とが接続されている。
【0034】
図1に図解した2電源システム車においては、負荷は2種類に分類される。
第1の負荷は高電圧(本発明の第1の電圧)、たとえば、42Vの高電圧系(高電圧電源ライン10)につながる高電圧負荷7であり、第2の負荷は低電圧(本発明の第2の電圧)、たとえば、14Vの低電圧系(低電圧電源ライン11)につながる低電圧負荷8である。
【0035】
自動車が、たとえば、交差点で信号待ちのためにアイドリングストップするとき動作する電気器具としてはウインカー、ブレーキランプ、その他走行に関係する各種パネルメータ、ラジオ等であり、通常、14V系につながる低電圧負荷8の一部に該当する。
充電状態判定装置4、アイドリングストップ処理装置12、第2の充電状態判定装置14も負荷としては低電圧負荷系統8に含まれるが、本発明の車両に搭載した蓄電池の残存容量測定装置の一部を構成する重要な部分であるので、低電圧負荷系統8とは別に図解している。
【0036】
14Vの低電圧系(低電圧電源ライン11)には、DCDCコンバータ5を介して42V系(高電圧電源ライン10)の電圧を低下させた電力が供給される他、12V蓄電池6から電力が供給されている。
通常は、DCDCコンバータ5からの電力で、充電状態判定装置4、アイドリングストップ処理手段12、第2の充電状態判定装置14を含む低電圧負荷系統8の負荷が駆動されるが、本実施の形態においては、12V蓄電池6を追加装備して後述するDCDCコンバータ5の停止時に12V蓄電池6からの電力で低電圧負荷系統8の負荷が駆動されるように構成してある。すなわち、本実施の形態においては、短時間であれば、DCDCコンバータ5が停止しても、12V蓄電池6からの電力供給のみで稼働することも可能であるように構成している。
【0037】
DCDCコンバータ5が動作しているときは、当然、低電圧負荷系統8の消費電力の余剰電力が12V蓄電池6に蓄電(充電)される。DCDCコンバータ5の停止は、詳細を後述するが、アイドリングストップなどの短時間であり、DCDCコンバータ5のバックアップ用として用いられる12V蓄電池6の電池容量は小さくてもよい。12V蓄電池6に特に制約はなく、通常の自動車用、二輪車用の蓄電池を用いることができる。
【0038】
自動車の一時停止時にエンジン16を停止し、再始動ときにエンジン16を再起動する、アイドリングストップ処理手段12によるアイドリングストップ処理において、エンジン16の停止により、オルタネータ2も停止し、さらに、DCDCコンバータ5が一時的に停止する場合があるが、本実施の形態において、自動車の走行中の一時停止時には、低電圧電源ライン11に接続されている電気装置、たとえば、充電状態判定装置4、アイドリングストップ処理手段12、第2の充電状態判定装置14、高電圧負荷系統7への給電は、12V蓄電池6によって維持されるように構成している。
【0039】
スタータ1は、36V蓄電池3の給電によりエンジン16を起動する。
オルタネータ2はエンジン16の動作に応じて発電する。オルタネータ2によって発電された電力が、高電圧負荷系統7の消費電力となる、また、オルタネータ2によって発電された電力が、DCDCコンバータ5において低電圧に変換されて、低電圧電源ライン11に接続されている電気装備、すなわち、図解の第1の充電状態判定装置4、アイドリングストップ処理装置12、第2の充電状態判定装置14および低電圧負荷系統8に給電される。これらの余剰電力が36V蓄電池3に充電される。
【0040】
2電源システム車において、環境汚染の防止および燃費の向上を目的として、自動車走行中の一時停車中にエンジンを停止する、いわゆるアイドリングストップ機能を搭載することが検討されている。アイドリングストップ処理装置12はその処理を行う。
【0041】
図1に例示した2電源システム車に、アイドリングストップ機能を行うアイドリングストップ処理装置12のアイドリングストップ条件について考察する。
自動車の走行中に一時停止するとき、あるいは、駐車するとき、一時的にエンジン16を停止し、再発進の際にはスタータ1を動作させてエンジンを始動する。アイドリング中にはスタータ1などの自動車装備に供給する電力を36V蓄電池3から供給する。そのため、アイドリングストップ機能の実施により、従来の自動車に比較して、36V蓄電池3の使用頻度が格段に高まることになる。
【0042】
アイドリングストップ機能を有する2電源システム車において、アイドリングストップした後、スタータ1を起動してエンジンを再始動可能か否かが問題となる。もし、スタータ1を起動してエンジンを再始動させるために充分な残存容量が36V蓄電池3に存在しない状態で一時停止のときにエンジン16を停止してしまったら、エンジン16を再始動できず自動車が交差点などで立ち往生してしまい、通行障害を起こしたり、交通事故を招く可能性がある。
このように、アイドリングストップ機能を有する自動車においては、再始動可能な電池容量がない状態でアイドリングストップしてはいけない。そこで、スタータ1を駆動する36V蓄電池3の残存容量(または充電状態)を判定する第1の充電状態判定装置4が必要になり、アイドリングストップ処理装置12は第1の充電状態判定装置4で判定した36V蓄電池3の残存容量などの状態を参照して実際にアイドリングストップを行うか否かを決定する。
【0043】
エンジン16の回転に伴って稼働しているオルタネータ2の動作に伴う脈動ノイズの影響で、上述したように、36V蓄電池3の内部インピーダンスを指標とする36V蓄電池3の残存容量の正確な測定は困難である。
【0044】
第1の条件
そこで、本願発明者は種々検討の結果、アイドリングストップ機能を有する自動車において、アイドリングストップ中にはエンジン16が停止し、エンジン16の停止に伴いノイズを発生するオルタネータ2も停止するので、エンジン16の停止中(オルタネータ2の停止中)に限って、内部インピーダンスを測定して、測定した内部インピーダンスを指標として36V蓄電池3の残存容量などの状態を測定することが可能であることを見いだした。
したがって、第1の充電状態判定装置4において36V蓄電池3の内部インピーダンスを正確に測定する第1の条件として、エンジン16、すなわち、オルタネータ2が停止している期間とする。
【0045】
第2の条件
しかしながら、オルタネータ2の停止によるノイズの影響を回避するだけでは、36V蓄電池3の内部インピーダンスを正確に測定できないことが判った。以下、その詳細について述べる。
交差点などで自動車が一時停止するとき、ウインカーが点滅し、ブレーキランプが点灯するし、道路の脇などで自動車を一時駐車させるときには、ハザードランプが点滅し、ブレーキランプが点灯する。たとえば、ウインカーは0.4秒間隔で点滅する。
このように、ウインカーの点滅、ハザードランプの点滅などは、1秒間以下の短時間のサイクルで行われている。
このような自動車負荷のオン・オフ動作は、DCDCコンバータ5にとって負荷変動となり、高電圧電源ライン10の電圧を変動させる。高電圧電源ライン10の電圧の変動は36V蓄電池3に端子電圧の変動となり、36V蓄電池3の内部インピーダンスを正確に測定することが困難であることが判った。
【0046】
たとえば、内部インピーダンスを指標として蓄電池の残存容量などを測定する方法を開示している特開平8−19103号公報(特許第2791751号公報)および、特開平4−95788号公報(特許第2536257号公報)に記載された方法では測定時間が数秒以上必要であるから、1秒間以下の短時間のサイクルでの電圧変動があると、36V蓄電池3の内部インピーダンスの正確な測定が困難になる。
【0047】
また、DCDCコンバータ5は、スイッチング素子を高速でオン・オフ動作させるから、高周波のノイズを発生するおそれがある。通常、DCDCコンバータ5自体かその周辺装置によって、ノイズの発生を抑制するか、発生したノイズが外部に漏れないような対策を講じている。しかしながら、ノイズの抑制が十分でない場合、あるいは、長期間の使用によりノイズの抑制が十分でなくなる場合がある。そのようなノイズによって、蓄電池の内部インピーダンスの測定を阻害する可能性がある。
【0048】
以上の観点から、36V蓄電池3の内部インピーダンスを正確に測定するためには、DCDCコンバータ5を停止させる必要がある。
本実施の形態においては、12V蓄電池6を設けているから、短時間であれば、DCDCコンバータ5を停止しても、オン・オフ動作するウインカー、ハザードランプなどを含む低電圧負荷系統8(もちろん、充電状態判定装置4、アイドリングストップ処理装置12、第2の充電状態判定装置14も含む)は、12V蓄電池6からの電力供給のみで動作できる。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、第1の充電状態判定装置4による36V蓄電池3の内部インピーダンスの測定のための第2の条件として、DCDCコンバータ5が停止しているときとした。
【0050】
すなわち、本実施の形態においては、オルタネータ2が停止し、さらに、DCDCコンバータ5が停止しているとき、第1の充電状態判定装置4による36V蓄電池3の内部インピーダンスの測定を行う。
このような条件下では、上述した電気器具などの自動車負荷のオン・オフ動作に伴う高電圧電源ライン10の電圧変動の影響を受けずに36V蓄電池3の内部インピーダンスの正確な測定が可能になる。
【0051】
DCDCコンバータ5の停止は、第1の充電状態判定装置4による36V蓄電池3の内部インピーダンスの測定時間、たとえば、数秒間、だけ行えばよい。したがって、第1の充電状態判定装置4において、36V蓄電池3の内部インピーダンスを測定した後は、DCDCコンバータ5を再起動させることができる。
通常、第1の充電状態判定装置4の測定時間程度は、12V蓄電池6による給電で低電圧負荷系統8は動作する。
【0052】
しかしながら、好ましくは、第1の充電状態判定装置4の測定時間の間、12V蓄電池6の残存容量で低電圧負荷系統8の給電が充分か否かを判断することが望ましい。
そこで、本実施の形態においては、12V蓄電池6の残存容量の概要を測定する第2の充電状態判定装置14を設けている。
第2の充電状態判定装置14は、ウインカー、ハザードランプなどが点滅している状態で12V蓄電池6の残存容量を測定するので、正確な残存容量の測定は困難である。しかしながら、12V蓄電池6の残存容量の概略が判れば、DCDCコンバータ5の停止の可否の判断には充分である。
【0053】
以上考察した結果に基づく、アイドリングストップ処理装置12、第1の充電状態判定装置4、および第2の充電状態判定装置14の詳細を下記に述べる。
【0054】
アイドリングストップ処理装置12の構成と動作
図2はアイドリングストップ処理装置12の動作の概要を示すフローチャートであり、図3はアイドリングストップ可能な蓄電池の残存容量を判断する基準を示すグラフである。
【0055】
以下、図2および図3を参照してアイドリングストップ処理装置12の動作を述べる。
【0056】
図2、ステップ1:アイドリングストップ処理装置12は、自動車の一時停止があったか否かを判断する。自動車の一時停止とは、たとえば、交差点などで自動車が信号待ちなどで一時的に停止する場合、たとえば、エンジン16は動作しているが、所定時間、速度が出ていない状態をいう。自動車の一時停止の判断としては、たとえば、36V蓄電池3から流れる電流が所定値以下、たとえば、2A以下になったときを一時停止とする。
アイドリングストップ処理装置12が一時停止を検出したとき下記の処理を行う。
【0057】
図2、ステップ2:アイドリングストップ処理装置12は、第1の充電状態判定装置4で算出した36V蓄電池3の残存容量を入力し、アイドリングストップ処理装置12内のメモリに記憶されている水準電池容量と比較して、アイドリングストップのためにエンジン16を停止できるか否かを判断する。
【0058】
アイドリングストップ処理装置12内のメモリには、事前に、たとえば、図3に示す水準のデータが記憶されている。
図3に図解した第1水準は、アイドリングストップした後、自動車の再始動に必要な電池容量であり、第2水準は、第1水準の電池容量に加えて特定時間アイドリングストップした際に自動車で必要とされる消費電池容量を加算した電池容量である。以下、第2水準の電池容量に所定の電池容量を加算した電池容量の第3水準、第3水準の電池容量に所定の電池容量を加算した電池容量の第4水準、第4水準の電池容量に所定の電池容量を加算した電池容量の第5水準が規定されている。
このような各種の水準は、事前に高電圧負荷系統7および低電圧負荷系統8の消費電力を測定しておき、アイドリングストップ処理装置12内のメモリに記憶されている。
【0059】
アイドリングストップ処理装置12は、通常、第1の充電状態判定装置4で算出した36V蓄電池3の残存容量が水準2以上ある場合、エンジン16を停止してもよいと決定する。
【0060】
図2、ステップ3:アイドリングストップ処理装置12は、エンジン16を停止させる。エンジン16の停止により、オルタネータ2も停止する。
その後、アイドリングストップ処理装置12は、第2の充電状態判定装置14を駆動して12V蓄電池6の残存容量を算出させる。第2の充電状態判定装置14の動作は後述する。
【0061】
図2、ステップ4:第2の充電状態判定装置14で12V蓄電池6の残存容量を算出したら、アイドリングストップ処理装置12は、12V蓄電池6の残存容量が第1の充電状態判定装置4における36V蓄電池3の残存容量の算出に要する時間の間、12V蓄電池6で低電圧負荷系統8の給電に耐えうるか否かを、アイドリングストップ処理装置12内のメモリに記憶してある水準データと比較して決定する。
【0062】
アイドリングストップ処理装置12内のメモリには、図3に図解した36V蓄電池3の水準データの他に、12V蓄電池6の水準データも記憶されている。12V蓄電池6の水準データも、基本的には、36V蓄電池3の水準データと同様である。
【0063】
図2、ステップ5:12V蓄電池6が第1の充電状態判定装置4が動作する間、DCDCコンバータ5を停止してもバックアップできるだけの残存容量を示しているとき、アイドリングストップ処理装置12は、DCDCコンバータ5を停止させる。DCDCコンバータ5の停止方法としては、たとえば、DCDCコンバータ5内部のスイッチング素子の動作を停止させる方法をとることができる。
その後、アイドリングストップ処理装置12は第1の充電状態判定装置4を起動して、36V蓄電池3の内部インピーダンスの測定および36V蓄電池3の残存容量などを算出させる。第1の充電状態判定装置4の動作の詳細は後述する。
【0064】
図2、ステップ6:アイドリングストップ処理装置12は自動車の一時停止が終了したら、スタータ1を起動してエンジン16を再始動させる。
なお、自動車の一時停止の終了の判定方法としては、36V蓄電池3から流れる電流が所定以上、たとえば、2A以上のとき、および/または、アクセルペダルが踏み込まれたときなどを条件として判定することができる。
【0065】
以上の例示においては、ステップ3からステップ6までの期間、エンジン16が停止したアイドリングストップ状態になり、その間、排気ガスの放出が少なくなる。
【0066】
上述した処理において、ステップ3において第2の充電状態判定装置14を起動して、ステップ4における12V蓄電池6の残存容量の判断は上述したように、必須ではない。すなわち、DCDCコンバータ5の停止時間は第1の充電状態判定装置4が36V蓄電池3の内部インピーダンスを測定する間の数秒であるから、通常は、12V蓄電池6で低電圧負荷系統8に給電できる時間であるからである。
【0067】
図2を参照してアイドリングストップ処理装置12の概略処理方法を述べたが、アイドリングストップ処理の詳細はこの例示に特定される訳ではない。
【0068】
充電状態判定装置4の第1実施の形態
図4は第1の充電状態判定装置4による36V蓄電池3の残存容量を算出するための構成図である。
図5は第1の充電状態判定装置4の動作を示すフローチャートである。
図4および図5に図解した第1の充電状態判定装置4の第1の実施の形態としての充電状態判定装置4は、特開平8−19103号公報(特許第2791751号公報)に開示された、電流積算方法と内部抵抗検出方法とを併用した処理を行う。
ただし、特開平8−19103号公報に記載されている方法は、上述したように、電気自動車に搭載された蓄電池の残存容量などを算出する方法として提案されているが、本実施の形態のように、内燃機関(エンジン)16を有する自動車でも、オルタネータ2を停止し、DCDCコンバータ5を停止した状態ではノイズの影響を排除して、電気自動車と同様に、正確に36V蓄電池3の残存容量を算出することができる。
【0069】
図4において、36V蓄電池3には、36V蓄電池3の電流を検出する電流計51、36V蓄電池3の端子電圧を検出する電圧計52、36V蓄電池3の温度を検出する温度計53、および、強制放電回路54が接続されている。充電状態判定装置4は、強制放電回路54を駆動し、電流計51、電圧計52、温度計53の検出信号を入力して36V蓄電池3の残存容量を算出する。
充電状態判定装置4には、マイクロコンピュータが内蔵されており、強制放電回路54を駆動し、電流計51、電圧計52、温度計53の検出信号を入力して信号処理する機能を有している。
【0070】
図5、ステップ11:充電状態判定装置4は、強制放電回路54を瞬時に数回作動させて、その都度、微分回路55を介して、電流計51、電圧計52の検出信号を読み取り、電圧降下と電流変化を算出する。
【0071】
図5、ステップ12:充電状態判定装置4は、算出した各々の電圧降下と電流変化から各々の内部抵抗を計算し、さらに平均内部抵抗値を算出する。
【0072】
図5、ステップ13:充電状態判定装置4は、36V蓄電池3の満充電完了時に事前に算出した内部抵抗値に対する上記計算した平均内部抵抗値の比率を算出する。それを内部抵抗率とする。
この内部抵抗率に対応する各測時点の放電率を事前に求めておいてデータテーブルを参照して決定する。
【0073】
図5、ステップ14:充電状態判定装置4は、求めた放電率を用いて公知の電流積算方法で、たとえば、特開平9−171065号公報による方法で、36V蓄電池3の残存容量を推定する。
【0074】
第1の充電状態判定装置4はアイドリングストップ処理装置12に条件判断により、オルタネータ2とDCDCコンバータ5とが停止している状態で行われるから、ノイズの影響を受けずに、内部抵抗の正確な測定が可能になる。
【0075】
第1の充電状態判定装置4のその他の実施の形態
第1の充電状態判定装置4としては、上述した特開平8−19103号公報(特許第2791751号公報)を適用したものの他に、種々の方法を適用することができる。
たとえば、据置用鉛蓄電池の寿命判定に適した、鉛蓄電池の内部インピーダンスを複数の異なる角周波数で測定する方法を提案している特開平4−95788号公報(特許第2536257号公報)に記載された方法を適用できる。本実施の形態は上述したように、ノイズとなるオルタネータ2およびDCDCコンバータ5が停止しているから、自動車に搭載された36V蓄電池3についても据置用蓄電池と同様の扱いで正確に36V蓄電池3の残存容量を算出することができる。
【0076】
第2の充電状態判定装置14
第2の充電状態判定装置14は上述したように、本発明にとって必須ではないが、DCDCコンバータ5の停止の可否を判定するために設けることができる。第2の充電状態判定装置14が動作するときは、上述したように、ウインカー、ハザードランプなどが点滅している場合が想定されるので、12V蓄電池6の残存容量の正確な測定は困難となる。
したがって、第2の充電状態判定装置14としては、比較的簡単な構成で、12V蓄電池6の残存容量の概略を測定することになる。そのような観点から、第2の充電状態判定装置14は、たとえば、特開平1−39068号公報に記載された方法など公知の方法を適用することができる。
【0077】
特開平1−39068号公報に記載された方法は、大電流放電中における互いに異なる値を示す複数の放電電流とその時の蓄電池の端子電圧を検出し、これら検出した値から内部抵抗と起電力を算出し、予め実験的に求めておいた内部抵抗値と起電力との関係を示す関数を用いて蓄電池の残存容量を算出する。
【0078】
この方法を適用した場合、電流計と、電圧計とを12V蓄電池6に接続し、第2の充電状態判定装置14はそれら電流計と電圧計の検出信号を入力して、上記演算を行う。このように特開平1−39068号公報に記載された方法を適用すると、第2の充電状態判定装置14の構成は非常に簡単である。
【0079】
以上のとおり、本発明の第1実施の形態によれば、走行する自動車に搭載された36V蓄電池3について、第1の充電状態判定装置4の動作条件を限定することにより、恰も、据置型の蓄電池の残存容量を算出するような条件で正確に蓄電池の残存容量を算出できる。
また本実施の形態によれば、36V蓄電池3の残存容量の算出方法は既存の方法、たとえば、特開平8−19103号公報、特開平4−95788号公報に記載された方法を適用できるので、実施が容易である。
【0080】
【実施例1】
以下、本発明の第1実施の形態についての実施例を図6を参照して説明する。実施例の条件を下記表1に示す。
【0081】
【表1】
表1
【0082】
本実験に使用した自動車は、通常のエンジン駆動の自動車であり、アイドリングストップ機能は有していない。そこで、アイドリングストップの状態を模擬するために、エンジンキーをオンの位置にして実験を行なった。
通常のエンジン駆動の自動車を実験に用いたので、図1に図解したスタータ1とオルタネータ2とが、12V蓄電池6に対応する1個の12V16Ahの鉛蓄電池に接続されている。しかし、エンジンは動いていないことから、実質的には、スタータ1とオルタネータ2とは12V16Ahの鉛蓄電池6の給電線から切り離されている。
図6において、36V蓄電池3が高電圧電源ライン10には接続されず、DCDCコンバータ5にのみ接続されている。さらに、高電圧負荷系統7と低電圧負荷系統8とを一体化して自動車負荷9として表している。
【0083】
通常のエンジン駆動の自動車において、自動車に搭載されていた鉛蓄電池を除去し、上記の12V16Ahの鉛蓄電池を4個(36V蓄電池3用に3個、12V蓄電池6用に1個)搭載し、バッテリー端子を通常の方法で接続した。12V蓄電池6に対応する鉛蓄電池の端子にDCDCコンバータ5の出力側端子を接続し、12V16Ahの鉛蓄電し3ヶを直列につないだ36V蓄電池3の高圧側端子にDCDCコンバータの入力側端子を接続した。
12V16Ahの鉛蓄電池3ヶを直列につないだ36V蓄電池3に、第1の充電状態判定装置4としての内部インピーダンス測定器を接続した。この第1の充電状態判定装置4としての内部インピーダンス測定器は、特開平4−95788号公報の方法を実施する装置である。
【0084】
なお、36V蓄電池3および12V蓄電池6としての鉛蓄電池は新品で、十分に充電(満充電)したものを使用した。
【0085】
使用した内部インピーダンス測定器から5Hz、20Hz、100Hzの交流を入力し、その応答波形から、内部インピーダンスの解析を行った。内部インピーダンス測定器には、入力波形、応答波形を保存することができるメモリを有している。
【0086】
初めに、DCDCコンバータ5を動作させた状態で、自動車のハザードをオンにし、自動車の四隅のハザードランプを点滅させた。この状態で内部インピーダンス測定器によって、36V蓄電池3に該当する電池群のインピーダンス測定を行なった。この状態では、ハザードランプの点滅が約0.4秒サイクルで起こるため、この電圧変動によりインピーダンス測定はできなかった。
【0087】
次に、DCDCコンバータ5を停止させた状態で、自動車のハザードをオンにし、自動車の四隅のハザードランプを点滅させた。この状態で内部インピーダンス測定器によって、36V蓄電池3に該当する電池群のインピーダンス測定を行なった。ハザードランプの点滅は約0.4秒サイクルで起こっていたが、内部インピーダンス測定器の応答波形を観測することができ、その波形を第1の応答波形としてメモリに保存した。
【0088】
さらに、DCDCコンバータ5と36V蓄電池3に該当する電池群をつなぐ配線を除去し、DCDCコンバータ5を切り離した時の36V蓄電池3に該当する電池群の内部インピーダンスの測定を行なった。この場合も、内部インピーダンスの応答波形を観測することができ、その波形をメモリに第2の応答波形として保存した。
【0089】
実験後、第1の応答波形と第2の応答波形との比較を行なったが、ほぼ同一の波形であることが確認できた。
また、得られて応答波形データについて、内部インピーダンス解析ソフトを用いて、特開平4−95788号公報に記載された方法に基づく、内部インピーダンスの解析を行い、さらに、内部インピーダンスの値から、電池群の残存容量の判定を行なった。その結果、第1の応答波形による解析結果と、第2応答波形による解析結果は、ほぼ同一の値となった。
【0090】
このように、オルタネータ2およびDCDCコンバータ5の影響を排除すると、36V蓄電池3の内部抵抗、ひいては、残存容量を正確に算出できた。
【0091】
第2実施の形態
図7を参照して本発明の第2実施の形態について述べる。
図7は本発明の第2実施の形態の蓄電池の残存容量算出装置の構成図である。
図7の蓄電池の残存容量算出装置は、アイドリングストップ機能を有しない車両における36V蓄電池3の残存容量を算出する装置の構成である。図1の構成と比較すると、アイドリングストップ処理装置12、12V蓄電池6、第2の充電状態判定装置14が排除され、運転席のドア開閉スイッチ21が第1の充電状態判定装置4に入力されている。その他の構成は図1に図解した構成と実質的に同じである。
【0092】
第2実施の形態は、アイドリングストップ処理とは無関係に、第1の充電状態判定装置4が運転者が着席する自動車のシートに最も近いドア開閉スイッチ21が閉じたことを検知し、その検知直後に、第1実施の形態において述べた36V蓄電池3の残存容量を行う。
【0093】
運転者が着席した直後は、まだスタータ1を起動して内燃機関(エンジン)16が動作していないから、オルタネータ2は動作していないし、DCDCコンバータ5も動作していない。この状態は、アイドリングストップ処理装置12で一時停止中にオルタネータ2の停止およびDCDCコンバータ5の停止を行って、第1の充電状態判定装置4を駆動した条件と実質的に同じである。
すなわち、このような状況では、稼働している自動車の装置が極めて少ないため、36V蓄電池3の内部インピーダンスの検査を行なう上で、極めて良好な環境である。そのため、特許第1554660号公報の方法を適用できる。
しかも、アイドリングストップとは無関係に一般的に、内部インピーダンスの測定によって、エンジンの始動前に36V蓄電池3の残存容量の測定を完了し、36V蓄電池3の状態を把握できる。
【0094】
上述した本発明の実施の形態は、蓄電池の内部インピーダンスを測定することを前提としており、電解液を測定しないので、電解液が少ない蓄電池などにも適用できる。
【0095】
本発明の実施の形態に際しては、上述した例示に限定されず、種々の変形態様をとることができる。
たとえば、第1の蓄電池としての蓄電池3の第1の電圧を36Vとして、第2の蓄電池としての蓄電池6の第2の電圧を12Vとした例を示したが、第1および第2の電圧の値はこれら例示に限定されるものではない。
同様に、高電圧負荷系統7および低電圧負荷系統8に属する付加は車両にとって任意に決めることができる。
さらに、図1に例示した、第1の充電状態判定装置4、アイドリングストップ処理装置12、および第2の充電状態判定装置14の装置は、1個に合体させてもよいし、第1の充電状態判定装置4とアイドリングストップ処理装置12とを合体させることもできる。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、アイドリングストップ機能を有する車両に搭載された蓄電池の残存容量などの状態を、オルタネータの動作、DCDCコンバータの動作、ウインカー、ハザードランプなど点滅状態などの影響を受けずに、正確に測定できる。
【0097】
また本発明によれば、車両の起動直前の蓄電池の残存容量などの状態を把握することができる。
【0098】
本発明の主蓄電池の残存容量などの状態把握は既存の方法を適用することができ、その実施も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第1実施の形態の車両に搭載した装置を図解した図である。
【図2】図2は図1に図解したアイドリングストップ処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は図2のアイドリングストップ処理装置で用いる蓄電池の残存容量を判断する基準を示す図表である。
【図4】図4は第1の充電状態判定装置の第1実施の形態の構成図てある。
【図5】図5は図4に図解した第1の充電状態判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は本発明の第1実施の形態の実施例を示す構成図である。
【図7】図7は本発明の第2実施の形態の車両に搭載した装置を図解した図である。
【符号の説明】
1・・スタータ
2・・発電機(オルタネータ)
3・・36V蓄電池
4・・充電状態判定装置
5・・DCDCコンバータ
6・・12V蓄電池
7・・高電圧負荷系統
8・・低電圧負荷系統
10・・高電圧電源ライン
11・・低電圧電源ライン
12・・アイドリングストップ処理装置
14・・第2の充電状態判定装置
16・・内燃機関(エンジン)
21・・ドア開閉スイッチ
51・・電流計
52・・電圧計
53・・温度計
54・・強制放電回路
55・・微分回路
Claims (7)
- 内燃機関と、
第1の給電線と、
第2の給電線と、
前記第1の給電線に接続された第1の電圧で動作する第1の負荷と、
前記第2の給電線に接続され、前記第1の電圧よりも低い第2の電圧で動作する、車両の一時停止中にも動作する負荷を有する第2の負荷と、
前記第1の給電線に接続された前記第1の電圧の電力を充放電する第1の蓄電池と、
前記第1の給電線に接続され、前記内燃機関を始動するスタータと、
前記第1の給電線に接続され、前記内燃機関の動作に応じて動作するオルタネータと、
入力が前記第1の給電線に接続され出力が前記第2の給電線に接続され、前記第1の電圧を前記第2の電圧に変換するスイッチング方式電圧変換手段と、
前記第2の給電線に接続され、前記第2の電圧の電力を充放電する第2の蓄電池と、
前記第2の給電線から給電されて動作し、車両の一時停止時に所定条件が満足したとき前記内燃機関の動作を停止し、車両の再始動時に前記スタータを駆動して前記内燃機関を再起動するアイドリングストップ処理手段と、
前記第2の給電線から給電されて動作し、前記第1の蓄電池の状態を判定する第1の充電状態判定装置と
を具備し、
前記アイドリングストップ処理手段は、
(a)前記第1の充電状態判定装置で検出した前記第1の蓄電池の残存容量が前記内燃機関の再始動のために充分であることを示している場合に前記内燃機関の動作を停止し、
(b)前記内燃機関が停止している間、前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定している間、前記スイッチング方式電圧変換手段を停止させ、
(c)前記第1の充電状態判定装置を起動し、
前記第1の充電状態判定装置は、前記内燃機関の停止に伴い前記オルタネータが停止し、かつ、前記スイッチング方式電圧変換手段が停止しているとき、前記第1の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、
車両。 - 前記スイッチング方式電圧変換手段はDCDCコンバータである、
請求項1記載の車両。 - 前記アイドリングストップ処理手段は、
前記車両の一時停止期間、前記内燃機関が停止するアイドリングストップの後、少なくとも、当該車両の再始動に必要な電池容量と、所定時間アイドリングストップしている間に必要とされる消費電池容量とを加算した電池容量が前記第1の蓄電池に残存容量として残っているとき、前記内燃機関を停止させる、
請求項1または2記載の車両。 - 前記第1の充電状態判定装置は、
前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定し、
当該測定した内部インピーダンスから前記第1の蓄電池の放電率を算出し、
当該算出した放電率から電流積算法に基づいて、前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、
請求項3記載の車両。 - 前記第2の給電線から給電されて動作し、前記第2の蓄電池の状態を判定する第2の充電状態判定装置をさらに有し、
前記アイドリングストップ処理手段は、前記工程(b)において、前記第2の充電状態判定装置が前記第2の蓄電池に所定以上の残存容量があると判定したとき、前記スイッチング方式電圧変換手段を停止させる、
請求項1〜4いずれか記載の車両。 - 内燃機関と、第1の給電線と、第2の給電線と、前記第1の給電線に接続された第1の電圧で動作する第1の負荷と、前記第2の給電線に接続され前記第1の電圧より低い第2の電圧で動作し、車両の一時停止中にも動作する負荷を有する第2の負荷と、前記第1の給電線に接続され前記第1の電圧の電力を充放電する第1の蓄電池と、前記第1の給電線に接続されて前記内燃機関を始動するスタータと、前記第1の給電線に接続され前記内燃機関の動作に応じて動作するオルタネータと、入力が前記第1の給電線に接続され出力が前記第2の給電線に接続され、前記第1の電圧を前記第2の電圧に変換するスイッチング方式電圧変換手段と、前記第2の給電線に接続され前記第2の電圧の電力を充放電する第2の蓄電池と、アイドリングストップ処理・判定手段とを具備し、
当該アイドリングストップ処理・判定手段は、
(a)前記第1の充電状態判定装置が検出した前記第1の蓄電池の残存容量が前記内燃機関の再始動のために充分であることを示している場合に前記内燃機関の動作を停止させ、
(b)前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定している間、前記スイッチング方式電圧変換手段を停止させ、
(c)前記内燃機関の停止に伴い前記オルタネータが停止し、かつ、前記スイッチング方式電圧変換手段が停止しているとき、前記第1の内部インピーダンスを測定し、測定した内部インピーダンスから前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、
車両。 - 前記第1の蓄電池の残存容量の算出において、前記アイドリングストップ処理・判定手段は、
前記第1の蓄電池の内部インピーダンスを測定し、
測定した内部インピーダンスから放電率を算出し、
算出した放電率から電流積算法に基づいて、前記第1の蓄電池の残存容量を算出する、
請求項6記載の車両。
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