JP4296662B2 - 光ヘッド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2つの波長光を光源とする光ディスクなどの光記録媒体用の記録装置や再生装置などに用いる光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CDやDVDなどの光ディスクおよび光磁気ディスクなどの光記録媒体の情報記録面上に情報を記録または情報記録面上の情報を再生するための光ヘッド装置が種々提案されている。このような光記録媒体の記録装置や再生装置などに搭載される光ヘッド装置では、光源である半導体レーザからの出射光が光記録媒体において反射されて戻り光となり、この戻り光はビームスプリッタなどによって光検出器である受光素子へ導かれる。このビームスプリッタとして、回折素子の一種であるホログラム素子を用いたものが近年実用化されている。ホログラム素子によって、光の進行方向を回折によって曲げて、半導体レーザの近くに配置した受光素子に導くことができるため、光ヘッド装置の小型化が可能となる。
【0003】
また、同一の光ヘッド装置で規格の異なる光記録媒体であるCDおよびDVDの光ディスクの情報を記録または再生可能にするため、CD/DVD互換型の光ヘッド装置が製品化されている。特に、光記録媒体層に波長依存性の高い媒質を用いるCD−Rなどの再生を前提とした場合、CD用に790nm波長帯の半導体レーザが、DVD用に650nm波長帯の半導体レーザがそれぞれ用いられている。
【0004】
図6はCD/DVD互換型の光ヘッド装置の構成例を示す側面図である。650nm波長帯のレーザ光を出力する半導体レーザ51Aおよび790nm波長帯のレーザ光を出力する半導体レーザ51Bからの出射光は、コリメートレンズ54Aおよび54Bにより平行光となり、色合成分離ダイクロイックプリズム58により光軸が同軸化され、光束制御素子の一種であるホログラムビームスプリッタなどの回折素子57を透過し、対物レンズ53によって光記録媒体であるCDやDVDなどの光ディスク55の上に集光される。
【0005】
光ディスク55からの反射光は、再び対物レンズ53を透過し、回折素子57により回折され、色合成分離ダイクロイックプリズム58によりそれぞれの波長帯の光に分離され、コリメートレンズ54Aおよび54Bにより集光されて光検出器56Aおよび56Bをそれぞれ構成する受光素子に到達する。受光素子では、受光した反射光を電気信号に変換して出力し、この出力信号はアンプで増幅され、さらに自動ゲイン補正回路で増幅利得の補正が行われて信号レベルが一定範囲に調整される。ホログラムビームスプリッタなどからなる回折素子57は、図6のように対物レンズ53に一体化して用いる場合と、半導体レーザと光検出器の近傍に配置し一体化したユニットとして用いる場合とがある。
【0006】
図6に示す従来の光ヘッド装置の例では、DVD系とCD系で光源と光検出器が分離された構成であるが、最近では、CD用の790nm波長帯の半導体レーザとDVD用の650nm波長帯の半導体レーザとを1チップ内に形成したモノリシック2波長レーザや、各波長帯のレーザチップを100〜300μm間隔で配置固定した2波長レーザが用いられつつある。このようなレーザ光源を用いることにより、発光点位置精度が高く安定した光ヘッド特性が得られるとともに、図6に示した色合成分離ダイクロイックプリズム58やコリメートレンズ54A,54Bなどの光学部品を省くことができるため、部品点数の削減により光ヘッド装置の小型化・軽量化が計られ、光学系の設計を簡略化できるなどの効果が期待できる。
【0007】
また、上記回折素子などの光束制御素子としては、ガラス基板の上面に等方性の光学材料からなる回折格子を形成した、偏光依存性のない回折特性を有する非偏光性ホログラムビームスプリッタが従来使われていたが、光束が往路および復路で回折されるため、10%以上の往復の光利用効率を得るのは困難であった。
【0008】
そこで、光利用効率を向上するために、光の偏光方向によって回折効率が変わる偏光性ホログラムビームスプリッタと1/4波長板とを光束制御素子として用いることが提案されている。この場合、往路の偏光方向と復路の偏光方向が1/4波長板により90°回転する直交偏光となるため、往路の偏光に対しては回折格子として作用せず復路の偏光のみに対して回折格子として作用する偏光依存性を有することにより、結果として非偏光性ホログラムビームスプリッタの理論往復効率である10%よりも高い光利用効率が得られる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような偏光性ホログラムビームスプリッタおよび1/4波長板からなる光束制御素子を、2波長レーザが光源として用いられた光ヘッド装置に適用した場合、以下のような問題点があった。
【0010】
すなわち、ピッチPの単一の回折格子からなるホログラムビームスプリッタに波長λの光が入射したときの±1次回折光の回折角θに対するsinθは波長λに比例し格子ピッチPに反比例する。したがって、波長λ1=650nmと波長λ2=790nmの2波長レーザからの光がホログラムビームスプリッタに入射した場合、2つの波長光の回折角が異なるため、同一の光検出器で回折光を受光するには受光面を大型化しなければならない。このため、ノイズ成分が増大し高いS/Nを確保できないとともに、良好な高周波数特性が得られにくいといった問題が生じる。また、迷光の影響を受けやすいといった欠点がある。
【0011】
一方、波長λ1と波長λ2の受光用に別々の受光素子を形成した場合、受光素子数が2倍必要となり装置規模が増大し、それに伴って信号処理回路も複雑になるといった問題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、2つの波長光を光源とし、これら2つの波長光を同一の光検出器で受光する構成として、使用波長の異なる光記録媒体の情報記録面上への情報の記録または再生が効率よく安定してでき、部品点数の少ない小型・軽量の光ヘッド装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、波長λ1および波長λ2(λ1<λ2)の2つの波長の光を出射する半導体レーザと、前記半導体レーザの出射光を光記録媒体に集光する対物レンズと、前記光記録媒体で反射された反射光を検出する光検出器と、前記半導体レーザからの出射光を平行光とするとともに前記光記録媒体からの反射光を集光する平行化レンズと、前記反射光を前記光検出器へ導くホログラムビームスプリッタと、前記対物レンズと前記ホログラムビームスプリッタの間の光路中に前記波長λ 1 に対する1/4波長板と、を少なくとも備える光ヘッド装置であって、前記ホログラムビームスプリッタは、断面形状がそれぞれ周期的な凹凸状である第1の回折格子と第2の回折格子とからなり、前記第1の回折格子は、光の偏光方向によって回折効率が変わる偏光性ホログラムであって、凹部と凸部との透過光の位相差が前記波長λ 2 の光に対して2πの整数倍かつ波長λ 1 の光に対して2πの非整数倍であり、前記波長λ 2 の光および前記半導体レーザから前記光記録媒体へ向かう前記波長λ 1 の光を透過し、かつ、前記光記録媒体で反射された波長λ 1 の光を回折し、前記第2の回折格子は、凹部と凸部との透過光の位相差が前記波長λ 1 の光に対して2πの整数倍かつ波長λ 2 の光に対して2πの非整数倍であり、前記平行化レンズの焦点距離および開口数をそれぞれf、NA、前記第2の回折格子の格子ピッチをPとするとき、前記平行化レンズと前記第2の回折格子との間隔が2×f×P×NA/λ 2 より長くなるように設定され、さらに前記ホログラムビームスプリッタにより回折された前記波長λ1および前記波長λ2の光は同一の前記光検出器に導かれることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
【0014】
また、前記波長λ 1 は650nmのDVD用の波長帯であり、前記波長λ 2 はCD用の790nmの波長帯である上記の光ヘッド装置を提供する。
【0015】
また、前記第1の回折格子と前記第2の回折格子は、前記半導体レーザと前記対物レンズとの間の光路中、かつ前記光検出器と前記対物レンズとの間の光路中に設置され、前記第1の回折格子は、前記1/4波長板と前記対物レンズと一体化されている上記の光ヘッド装置を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る光ヘッド装置の概略構成を示す側面図である。本実施形態の光ヘッド装置は、第1の波長λ1と第2の波長λ2との2つの波長の光を出射可能な半導体レーザ光源である2波長半導体レーザ(モノリシック2波長半導体レーザなど)1と、波長λ2の光を透過しかつ波長λ1の光を回折する第1の回折格子21と波長λ1の光を透過しかつ波長λ2の光を回折する第2の回折格子22とからなる波長選択性のホログラムビームスプリッタ2と、光記録媒体である光ディスク5上に光を集光する対物レンズ3と、2波長半導体レーザ1からの出射光を平行光とするとともに光ディスク5からの反射光を集光する平行化レンズ(コリメートレンズ)4と、光ディスク5からの反射光を受光し光量を検出する光検出器6と、第1の回折格子21と対物レンズ3との間に配設された1/4波長板7とを有して構成される。2波長半導体レーザ1は、DVD系の光記録媒体に対しては波長λ1=650nmの光を、CD系の光記録媒体に対しては波長λ2=790nmの光を光記録媒体に応じて切り換えて出射するよう構成されている。
【0018】
2波長半導体レーザ1から出射した波長λ1の光は、第2の回折格子22により回折されることなく通過し、平行化レンズ4により平行光となって第1の回折格子21を透過し、対物レンズ3により光ディスク5の情報記録面に集光される。情報記録面で反射された光は、再び対物レンズ3により平行光となって第1の回折格子21に入射する。このとき、第1の回折格子21によって回折された回折光のうち、+1次回折光が平行化レンズ4によって光検出器6の受光面に集光される。
【0019】
ここで用いられる第1の回折格子21は、後述する偏光性ホログラムであり、往路光路においてはレーザ光の偏光方位に対して回折を生じないが、復路光路においては対物レンズ3と偏光性ホログラムとの間に配置された1/4波長板7を2回通過することによって偏光方位が90°回転した偏光に対しては回折が生じる構成としている。なお、復路光路中においても、波長λ1のレーザ光は第2の回折格子22により回折されることなく通過し、光検出器6に到達する。
【0020】
一方、2波長半導体レーザ1から出射した波長λ2の光のうち、第2の回折格子22により回折されないで通過する0次回折光成分は、平行化レンズ4により平行光化されて第1の回折格子21を回折されることなく透過し、対物レンズ3により光ディスク5の情報記録面に集光される。情報記録面で反射された光は、再び対物レンズ3により平行光となって第1の回折格子21により回折されることなく通過し、平行化レンズ4によって平行光となって第2の回折格子22に入射する。このとき、第2の回折格子22によって回折された回折光のうち、+1次回折光が光検出器6の受光面に集光されるように第2の回折格子22が作製されている。
【0021】
ここで用いられる波長λ1の光を透過しかつ波長λ2の光を回折する第2の回折格子22は、後述するような入射光の偏光方向に依存しない非偏光性ホログラムである。
【0022】
また、偏光性ホログラムである第1の回折格子21は、1/4波長板7と共に対物レンズ3に一体化されて設けられており、図示されていないが公知技術のアクチュエータにより一体駆動される。このアクチュエータによって、集光ビームを情報記録面において所定の焦点(スポット径)で集光させるフォーカシング制御、および集光ビームを所定の情報記録トラックへ追従させるトラッキング制御が行われる。また、非偏光性ホログラムである第2の回折格子22は、半導体レーザ1と光検出器6とが一体化されたユニットの光入出射面に固定されて設けられる。
【0023】
ここで、図1の構成において、2波長用回折格子であるホログラムビームスプリッタ2の使用条件とその特性について説明する。
【0024】
DVD系の光記録媒体では、CD系に比べて高精度のフォーカシングおよびトラッキングが要求されるため、ホログラムビームスプリッタは対物レンズと一体駆動することが好ましい。しかし、対物レンズと一体駆動する非偏光性ホログラムビームスプリッタを用いた場合、波長λ1の光に関して、往路で回折された±1次の回折光が復路で直進(0次回折光)あるいは±2次で回折された成分は、光検出器6において信号光と同一受光面に集光される場合があるため、ノイズ成分となり信号再生ができない。
【0025】
これに対し、上記のように偏光性ホログラムを第1の回折格子21に用いれば、往路での発生する回折光はわずかであるため、このような問題は生じない。また、第2の回折格子22は、波長λ1の光をほとんど回折することなく透過するため、光利用効率の低下を招くことなく、また迷光となる回折光の生成も少ない。
【0026】
CD系の波長λ2に対しては、第1の回折格子21は波長λ2の光を回折することなく透過するため、光利用効率の低下は抑制され、迷光となる回折光の生成も少ない。一方、第2の回折格子22は、非偏光性ホログラムであるため、往路および復路で波長λ2の光を回折する。この結果、前述した往路および復路での多重回折に伴う迷光の問題が生じる。
【0027】
この回避策として、往路において第2の回折格子22による回折光が焦点距離fの平行化レンズ4の有効開口数NA内に到達しないような配置構成およびホログラム構造とすればよい。具体的には、第2の回折格子22の格子ピッチをPとすると、平行化レンズ4と第2の回折格子22との間隔を2×f×P×NA/λ2より長く、またPが0.5×λ2/NAより小さくなるように設定すればよい。
【0028】
また、第2の回折格子22も偏光性ホログラムとすることにより、波長λ1の場合と同様に往路での回折光はなくなり迷光の問題は解消する。特に、CD−Rなどの光書き込み可能な光記録媒体にも適用可能とした場合、高強度の書き込み光を必要とするため、光利用効率の高い偏光性ホログラムとするとすることが好ましい。
【0029】
また、CD系の光ディスクはDVD系の光ディスクに対してディスク厚が2倍であるため、樹脂成形体であるディスクの空間的な複屈折変動が残留しやすい。その結果、一方の偏光成分のみ回折する偏光性ホログラムとした場合、ディスクの空間的な複屈折変動に応じて信号光強度が変動しやすいため、安定した再生ができない場合がある。
【0030】
このような複屈折性を有する光ディスクへの対応として、CD系の波長λ2を回折する第2の回折格子22は、非偏光性ホログラムあるいは偏光依存性はあるが直交する偏光成分の両方を回折する部分偏光性ホログラムとすることが好ましい。
【0031】
本実施形態の構成では、2波長半導体レーザの各波長光に対して別々の波長選択性ホログラムビームスプリッタが用いられているため、2波長半導体レーザの発光点位置やホログラムビームスプリッタの配置関係の制約は軽減され、各波長選択性ホログラムビームスプリッタの格子ピッチを変えることにより、複数波長の光を同一受光素子に集光することが容易である。
【0032】
次に、本発明の光ヘッド装置に用いられる偏光性ホログラムの一例について、図2に示す断面構成図を用いて説明する。
【0033】
この例の偏光性ホログラム31は、透光性基板31A上に形成した断面矩形波状の複屈折性回折格子31Bに等方性充填材31Cを充填し、その上に透光性基板31Dを配置することにより、複屈折性回折格子31Bを透光性基板31A、31Dで挟んだ構成となっている。ここで、例えば、複屈折性回折格子31Bとして常光屈折率no =1.52、異常光屈折率ne =1.67の高分子液晶を用い、等方性充填材31Cとして屈折率ns =1.52の等方性媒質を用いる。
【0034】
この偏光性ホログラム31を図1における第1の回折格子21に適用する。この場合、2波長半導体レーザ1から出射したDVD系の波長λ1=650nmとCD系の波長λ2=790nmの出射光とが偏光性ホログラム31に入射することになる。ここで、各波長の偏光方位が複屈折性回折格子31Bの常光屈折率no に対応したS偏光となるように偏光性ホログラム31の方位が設定されている。
【0035】
したがって、偏光性ホログラム31に波長λ1および波長λ2のS偏光が入射した場合、図2(a)に示すように、均一屈折率材料である等方性充填材31Cの屈折率ns と複屈折材料である複屈折性回折格子31Bの常光屈折率no とが略等しいため、波長λ1および波長λ2いずれの光に対しても回折格子は生成されず、回折光はほとんど発生しない。
【0036】
また、光ディスク5と偏光性ホログラム31との間に波長λ1=650nmに対する1/4波長板7を配置することにより、波長λ1の光は1/4波長板7を往復するため、光ディスク5の情報記録面で反射された反射光は偏波面が90°回転したP偏光となって、再び偏光性ホログラム31に入射する。
【0037】
偏光性ホログラム31にP偏光が入射した場合、図2(b)に示すように、均一屈折率材料である等方性充填材31Cの屈折率ns と複屈折材料である複屈折性回折格子31Bの異常光屈折率ne とが異なるため、回折格子が形成される。回折格子形状に加工された複屈折性回折格子31Bの格子深さをd1とすると、波長λの入射光に対して生じる位相差φは2π(ne −ns )×d1/λとなる。
【0038】
ここで、複屈折性回折格子31Bの格子深さd1は、偏波面が90°回転した波長λ2=790nmのP偏光に対して回折が生じないように、(ne −ns )×d1が波長λ2の整数倍となるようにする。
【0039】
このように格子深さd1を設定することで、波長λ2の光ディスク反射光のうち、偏波面が変化しないS偏光成分は往路と同様に直進透過し、偏波面が90°回転した直交P偏光成分も偏光性ホログラム31による位相変化が2πの整数倍であるため回折されることなく直進透過する。
【0040】
したがって、波長λ2に対する位相差φ2が2πの整数倍となり、波長λ1に対する位相差φ1が2πの非整数倍となるように、格子深さd1を設定することにより、波長λ1のP偏光に対しては回折格子となり、波長λ2のS偏光およびP偏光に対しては回折格子として作用しない波長選択性の偏光性ホログラムが得られる。
【0041】
具体的には、(ne −ns )×d1がλ2の2倍となるように、すなわち、例えば格子深さd1を10.53μmとすることにより、波長λ1=650nmのみの光を35%以上の高い±1次回折効率で回折する波長選択性を有する偏光性ホログラム31が実現する。往路での回折光損失はわずかであるため、往復効率として高い光利用効率が達成される。
【0042】
このようにして、上記図1で説明したような構成の本実施形態の光ヘッド装置に用いられる2波長用偏光性ホログラムが得られる。なお、複屈折材料および加工プロセスについては、種々報告されている公知の技術を用いればよいため、ここでは説明を省略する。
【0043】
次に、本発明の光ヘッド装置に用いられる非偏光性ホログラムの一例について、図3に示す断面構成図を用いて説明する。
【0044】
この例の非偏光性ホログラム32は、屈折率nの均一屈折材料32Bが凹凸回折格子形状に加工されて透光性基板32A上に形成され、空気と界面をなした構成となっている。
【0045】
回折格子形状の段差をd2とすると、波長λの入射光に対して生じる位相差φは2π(n−1)×d2/λとなるため、波長λ1に対する位相差φ1が2πの整数倍となり、波長λ2に対する位相差φ2が2πの非整数倍となるように、段差d2を設定する。これより、波長λ2に対しては回折格子となり、波長λ1に対しては回折格子として作用しない波長選択性の非偏光性ホログラムが得られる。
【0046】
具体的には、(n−1)×d2がλ1、すなわち、例えば格子深さd2を1.3μmとすることにより、波長λ2=790nmのみに対して往路の0次透過率が略70%、復路の±1次回折効率が略11%で、往路と復路の総合効率として略8%の信号光を光検出器へ導くことのできる波長選択性を有する非偏光性ホログラム32が実現する。
【0047】
このようにして、上記図1で説明したような構成の本実施形態の光ヘッド装置に用いられる2波長用非偏光性ホログラムが得られる。なお、回折格子の加工プロセスについては、種々報告されている公知の技術を用いればよいため、ここでは説明を省略する。
【0048】
また、平行化レンズ4として開口数NA=0.07で焦点距離f=22mmのコリメートレンズを用いた場合は、コリメートレンズに入射する取り込み光角度の半分でθc =4.0°となる。このとき、往路と復路での信号光以外の波長λ2の多重回折光が光検出器に混入しないようにするためには、NA=0.07に相当する非偏光性ホログラム32の光通過領域にのみ格子を形成するとともに、往路での±1次回折光の回折角度をθc の2倍以上にすればよい。具体的には、非偏光性ホログラム32の格子ピッチP2を0.5×λ2/NA以下、すなわち、5.6μm以下とする。
【0049】
格子ピッチP2が約4.5μmの非偏光性ホログラム32を波長λ2の発光点に対し約4mmの間隔で配置すると、非偏光性ホログラム32による+1次回折光は発光点と約0.71mm離れた光検出器に集光される。このとき、信号光以外の迷光である回折光の入射はわずかであるため、ノイズ成分が軽減され、S/Nの高い記録再生が可能となる。
【0050】
ここで、偏光性ホログラム31による波長λ1=650nmの+1次回折光が同一の光検出器に集光するように、偏光性ホログラム31の格子ピッチP1が設定されている。具体的には、f×λ1/P1が約0.71mmとなるようにする。すなわち、P1=20μmとすればよい。
【0051】
このようにして得られた2波長用回折格子であるホログラムビームスプリッタ2を用いて光ヘッド装置を構成する。この光ヘッド装置では、2つの波長を出射する2波長半導体レーザ1と1つの光検出器6とを用いた部品点数の少ない小型な構成で、光利用効率の高いDVD系光ディスクの安定した記録再生が可能となるとともに、CD系で複屈折性が残留する光ディスクに対しても安定した記録再生が可能となる。
【0052】
なお、図2および図3においては、単純な2ステップ段差の凹凸回折格子形状のホログラムを例示したが、これに代えて、断面が階段状のマルチステップ格子形状や鋸歯波状のブレーズ格子形状とすることにより、特定の回折次数の回折効率を向上できるため、用途に応じて種々の設計および製作が可能である。
【0053】
[第2の実施形態]
図4は本発明の第2の実施形態に係る偏光性ホログラムの構成を示す側方断面図である。第2の実施形態では第1の実施形態における偏光性ホログラムの変形例を示す。
【0054】
第2の実施形態の偏光性ホログラム41は、第1の実施形態で示した断面矩形波状の複屈折性回折格子31Bの代わりに、図4に示す4段ステップの階段格子からなる複屈折性回折格子41Bを用いた構成となっている。この透光性基板41A上に形成した複屈折性回折格子41Bに等方性充填材41Cを充填し、その上に透光性基板41Dを配置して作製する。複屈折性回折格子41Bにおける各階段幅はピッチの等分配とする。
【0055】
ここで、複屈折性回折格子41Bの各階段の格子深さd1は、(ne −ns )×d1が波長λ2の整数倍となるようにすることで、第1の実施形態と同様に波長λ2のP偏光に対しては回折が起こらない条件とする。
【0056】
具体的には、(ne −ns )×d1がλ2となるように、すなわち、例えば各階段の格子深さを0、5.27μm、10.53μm、15.80μmの4段構造とすることにより、波長λ1=650nmの光のみを70%以上の高い+1次回折効率で回折する波長選択性を有する偏光性ホログラム41が実現する。
【0057】
この第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、波長λ1=650nmでの光利用効率が約2倍に向上するため、光検出系における信号強度が増大し、さらなるS/Nの改善が計れる。
【0058】
[第3の実施形態]
図5は本発明の第3の実施形態に係る光ヘッド装置の概略構成を示す側面図である。
【0059】
この第3の実施形態は、光ヘッド装置において、DVD系の波長λ1の光を回折する第1の回折格子21を第2の回折格子22の近傍に配設して一体的なホログラムビームスプリッタ12を構成した点が第1の実施形態と異なる。このホログラムビームスプリッタ12は、単一透光性基板の表裏面に第1の回折格子21と第2の回折格子22とが形成された構成であり、2波長半導体レーザ1および光検出器6と一体化されたユニット側に固定配置されている。図5において、図1に示した第1の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してここでは説明を省略する。
【0060】
図5の例では、第1の回折格子21を第1の実施形態と同様に偏光性ホログラムとした場合を示したため、1/4波長板7を設けているが、非偏光性ホログラムで形成した場合は1/4波長板を用いなくともよい。
【0061】
第3の実施形態では、第1の回折格子21の格子ピッチを、波長λ1の光ディスク5からの反射光が波長λ2と同一の受光素子に集光するように、第1の実施形態の格子ピッチに比べて狭ピッチ化している。
【0062】
また、波長λ2を回折する非偏光性ホログラムである第2の回折格子22を、図3に示した第1の実施形態における断面矩形波状の回折格子の代わりに、3段ステップの階段格子からなる非偏光性ホログラムを用いて形成する。回折格子における各階段幅はピッチの等分配とする。
【0063】
ここで、屈折率n=1.5の各階段の格子深さd2を、(n−1)×d2が波長λ1の整数倍となるようにすることで、波長λ1の光に対しては往路および復路で回折光が生じることなく直進透過する。
【0064】
具体的には、(n−1)d2がλ1、すなわち、例えば格子深さが0、1.3μm、2.6μmの3段構造とすることにより、波長λ2=790nmのみに対して往路の0次透過率が略39%で復路の±1次回折効率が略34%、往路と復路の総合効率として略13%の信号光を光検出器へ導くことのできる波長選択性の非偏光性ホログラム22が実現する。この場合、第1の実施形態の構成と比較して、波長λ2での光利用効率が約1.6倍に向上するため、光検出系における信号強度が増大し、さらなるS/Nの改善が計れる。
【0065】
なお、第1の回折格子21も非偏光性ホログラムとした場合は、第1の実施形態と同様に、往路および復路での多重回折光が迷光とならないようにするため、往路での回折光が平行化レンズ4の開口内に入射しないような構成仕様とする。このときは、光利用効率は低下するが、DVD系の光ディスクの残留複屈折に対してもさらに安定した記録再生が可能となる。
【0066】
以上のように、上記各実施形態によれば、2つの波長に対応した光ヘッド装置において、光源と光検出器の部分を単一の2波長半導体レーザおよび光検出器によって構成でき、部品点数の少ない小型・軽量の構成で、光利用効率の高い安定した記録再生が実現できる。この場合、使用波長の短いDVD系光ディスクと、ディスク厚が厚く残留複屈折のあるCD系光ディスクの両方に対して、安定した記録再生が可能となる。
【0067】
なお、上記実施形態では説明を省略したが、DVD系とCD系の光ディスクのように仕様の異なる複数種類の情報記録媒体を安定して記録再生するために、何れの光学系においても光学収差を低減した互換対物レンズや開口制御素子の利用などについては、種々の従来技術が適用できる。
【0068】
また、光ヘッド装置において、3ビーム法や差動プッシュプル法などのトラッキング方式を採用する場合にはサブビームを形成する回折格子が別途用いられるが、説明および図示は省略した。
【0069】
なお、本発明は、上述の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えうる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、2つの波長光を光源とし、これら2つの波長光を同一の光検出器で受光する構成として、使用波長の異なる光記録媒体の情報記録面上への情報の記録または再生が効率よく安定してできるとともに、部品点数の少ない小型・軽量の光ヘッド装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ヘッド装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光ヘッド装置の構成要素である波長選択性の偏光性ホログラムの側方断面図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る光ヘッド装置の構成要素である波長選択性の非偏光性ホログラムの側方断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る光ヘッド装置の構成要素である波長選択性の偏光性ホログラムの側方断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る光ヘッド装置の概略構成を示す側面図である。
【図6】従来の光ヘッド装置の概略構成例を示す側面図である。
【符号の説明】
1:2波長半導体レーザ
2,12:ホログラムビームスプリッタ
3:対物レンズ
4:平行化レンズ
5:光ディスク
6:光検出器
7:1/4波長板
21:第1の回折格子
22:第2の回折格子
31,41:偏光性ホログラム
31A,41A:透光性基板
31B,41B:複屈折性回折格子
31C,41C:等方性充填材
31D,41D:透光性基板
32:非偏光性ホログラム
32A:透光性基板
32B:均一屈折材料
Claims (3)
- 波長λ1および波長λ2(λ1<λ2)の2つの波長の光を出射する半導体レーザと、
前記半導体レーザの出射光を光記録媒体に集光する対物レンズと、
前記光記録媒体で反射された反射光を検出する光検出器と、
前記半導体レーザからの出射光を平行光とするとともに前記光記録媒体からの反射光を集光する平行化レンズと、
前記反射光を前記光検出器へ導くホログラムビームスプリッタと、
前記対物レンズと前記ホログラムビームスプリッタの間の光路中に前記波長λ 1 に対する1/4波長板と、を少なくとも備える光ヘッド装置であって、
前記ホログラムビームスプリッタは、断面形状がそれぞれ周期的な凹凸状である第1の回折格子と第2の回折格子とからなり、
前記第1の回折格子は、光の偏光方向によって回折効率が変わる偏光性ホログラムであって、凹部と凸部との透過光の位相差が前記波長λ 2 の光に対して2πの整数倍かつ波長λ 1 の光に対して2πの非整数倍であり、前記波長λ 2 の光および前記半導体レーザから前記光記録媒体へ向かう前記波長λ 1 の光を透過し、かつ、前記光記録媒体で反射された波長λ 1 の光を回折し、
前記第2の回折格子は、凹部と凸部との透過光の位相差が前記波長λ 1 の光に対して2πの整数倍かつ波長λ 2 の光に対して2πの非整数倍であり、
前記平行化レンズの焦点距離および開口数をそれぞれf、NA、前記第2の回折格子の格子ピッチをPとするとき、前記平行化レンズと前記第2の回折格子との間隔が2×f×P×NA/λ 2 より長くなるように設定され、
さらに前記ホログラムビームスプリッタにより回折された前記波長λ1および前記波長λ2の光は同一の前記光検出器に導かれることを特徴とする光ヘッド装置。 - 前記波長λ 1 は650nmのDVD用の波長帯であり、前記波長λ 2 はCD用の790nmの波長帯である請求項1に記載の光ヘッド装置。
- 前記第1の回折格子と前記第2の回折格子は、前記半導体レーザと前記対物レンズとの間の光路中、かつ前記光検出器と前記対物レンズとの間の光路中に設置され、
前記第1の回折格子は、前記1/4波長板と前記対物レンズと一体化されている請求項1または2に記載の光ヘッド装置。
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