JP4290777B2 - 歯科用硬化性材料およびそれを用いた人工歯材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は歯科用硬化性組成物、より詳しくは強靭性、耐摩耗性、透明性に優れ、口腔内での長期使用に対して優れた適合性及び物理特性を有し、特に成型加工性に優れた人工歯又は歯冠修復材の製作に有用な歯科用硬化性組成物に関する。更に上記硬化性組成物を用いた、特に成型加工性に優れた人工歯科材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より人工歯、歯冠修復レジンには材料特性、特に透明性、成型加工性、平均的物理特性、低価格により、メチルメタアクリレート(以下、「MMA」と略称する)、ポリメチルメタクリレート(以下、「PMMA」と略称する)に代表される(メタ)アクリレート系の材料が使用されてきた。しかし(メタ)アクリレート系は、機械的強度や耐摩耗性に劣るため、例えば義歯として使用した場合、咬耗及び歯ブラシ摩耗により材料が摩耗したり荒れたりする問題があった。また無機化合物からなる陶歯は硬さに優れているが非常に脆く口腔内で破折する問題があった。
【0003】
耐摩耗性、強度の改良する目的で、重合性単量体に無機化合物を充填した歯科用複合体がこれまで多く検討されいる。例えば、特開昭48−29294公報において不飽和ポリエステルやエチレン性不飽和モノマーに特定の粒子径(4.0〜40μm)を有する球状或いは無定形の無機酸化物(SiO2)を配合させた後、重合することにより耐摩耗性に優れた人工歯が得られている。しかし、これらに使用された無機化合物は粒子径が大きく、複合体の重合面は粗造であり、口腔内で使用した場合、汚れ、審美性の点で問題があった。また無機化合物の充填量をあげると耐摩耗性の改良は可能であったが靭性が減少し人工歯として破折しやすく使用が困難であった。また重合物は不透明で人工歯としての十分な色調再現が困難であった。また材料特性的に特に重合性多官能単量体を使用した場合は(メタ)アクリレート系の材料との接着が困難となり、成型加工性に劣っていた。加えて重合性多官能単量体と無機化合物との混練には高出力の動力を必要とし、多量生産に多くの問題を残している。
【0004】
また特開平7−291817号公報においては、平均粒子径が1〜100nmであるコロイダルシリカの存在下で特定のシラン化合物を加水分解或いは縮重合させて得られるシリカ系重合体をMMAに分散し、重合開始剤を配合した組成物を重合し、透明性、耐摩耗性に優れた硬化物が得られることを開示している。しかし、この方法においてもシリカ分散液にPMMAを混合し、膨潤した時にMMA中に均一分散したシリカが凝集する場合がある。その重合物は不透明で、脆さが発生するという問題が残っていた。また歯科用複合材料として、シリカ分散MMA20.0〜99.0重量%、重合体0.99〜80.0重量%及び重合開始剤または多官能(メタ)アクリレート0〜28.6重量%の配合では重合物の物理特性がMMAを主体とするために十分ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シラン化合物で処理された無機フィラーが微細な状態で均一分散し、それにより強靭性、耐摩耗性、透明性および成型加工性を備えた歯科用硬化性組成物および上記硬化性組成物を用いた強靭性、審美性、透明性に優れた人工歯を形成することのできる人工歯材料を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一次粒子の平均粒子径が1〜85nmであるコロイダルシリカが式(I)
YnSiX4-n (I)
〔式中、Yは炭化水素基またはビニル重合可能な反応性基、Xは加水分解性基を表し、nは1、2または3の数値を表す〕
で示される少なくとも1種のシラン化合物で処理して得られたシラン処理シリカが、ウレタン(メタ)アクリレートに均一分散しているシラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(a)を含んでなる歯科用硬化性組成物に関する。
上記均一分散体(a)は好ましくは本質的にウレタン(メタ)アクリレート29〜69重量%、より好ましくは45〜65重量%、コロイダルシリカ10〜70重量%、より好ましくは15〜45重量%およびシラン化合物が1〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%からなることが好ましい。
【0007】
更に、本発明は、均一分散体(a)を好ましくは34〜68重量%、より好ましくは40〜68重量%、重合性単量体(b)を好ましくは17〜51重量%、より好ましくは26〜51重量%およびポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体(c)を好ましくは15〜20重量%、より好ましくは17〜20重量%、更に重合開始剤(d)を好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.3〜1.5重量%含む上記の歯科用硬化性組成物に関する。
更にまた本発明は、上記いずれかに記載の歯科用硬化性組成物を成型加工した人工歯又は歯冠修復材料に関する。
【0008】
また本発明は、(A)(a)上記均一分散体、
(b)重合性単量体、
(c)上記ポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体、および(d)重合開始剤、
を含む琺瑯部;
(B)上記(b)、(c)、(d)、および
(e)上記ポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体(c)とウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物の1種又は2種以上、
を含む象牙部;および
(C)上記(b)、(c)および(d)を含む基底部、
から構成される三層構造人工歯材料に関する。
【0009】
即ち、本発明はシラン化合物で処理された無機フィラーが微細な状態で均一分散し、それにより強靭性、耐摩耗性、透明性および成型加工性を備えた琺瑯部、靱性に優れた重合体及びこの重合体に対して溶解性も膨潤性も示さないウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物を含む象牙部、およびこれらとの接着性に優れた基底部からなる人工歯材料に関する。
上記構造により、本発明の人工歯材料は耐衝撃性、審美性、成形加工性のともに優れた人工歯を提供することができる。
【0010】
象牙部を構成する均一混合物(e)は、ポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体(c)と水酸基含有(メタ)アクリレートの均質相溶液中で、イソシアネートを反応させて得られるものであってもよいし、上記重合体とイソシアネートの均質相溶液中で水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるものであってもよい。または重合体とイソシアネートの均質相溶液中で多価アルコール(水酸基数2〜4)を反応させ、次にその反応末端イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるものであってもよい。
これにより本来重合体(c)に対して溶解性も膨潤性も示さないウレタン(メタ)アクリレートが重合体または共重合体(c)と均一に混合している均一混合物(e)が形成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の硬化性組成物を重合させるには、50〜150℃の範囲が良く、この際、過酸化物触媒は重合性化合物の100重量部に対して0.1〜3重量部を添加するのが好ましい。また紫外線及び可視光線で重合させる場合には、促進剤及び光増感材を歯科用硬化性組成物100重量部に対して0.2〜3重量部添加するのが好ましい。更にこれらの条件に加えて50〜400kgf/cm2の加圧下で行うこともできる。
【0012】
本発明の硬化性組成物の特徴は、溶媒分散コロイダルシリカを用いることによって従来困難とされていた平均粒子径が0.1μmより小さい状態でシリカを分散させることが可能となり、且つそのような均一分散状態を保持してシリカをマトリックス樹脂中に分散させることが可能になった。その結果、その硬化物は凝集フィラーを含まず、強靭性 、耐摩耗性、透明性、成型加工性を兼ね備えた硬化物を提供することができる。
また本発明の硬化性組成物は、従来の無機フィラー分散体では得られなかったシリカの微細な分散状態が長期にわたって安定であるという特徴を有する。
【0013】
上記本発明の特徴は、シラン処理したコロイダルシリカを用いるとともに、シラン処理したコロイダルシリカを分散させた重合性マトリックスとしてウレタン(メタ)アクリレートを使用したことに負うものである。
【0014】
本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、一分子に少なくとも2個のアクロイル基及び/又はメタクリロ基並びに少なくとも2個のウレタン基を有する。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキソ−5,12−ジアザ−ヘキサデカン−1,16−ジオール−ジメタクリレート(以下、「UDMA」と略称する)、1,6ビス〔(2−フェノキシ−2'−アクリロキシ)イソプロピル−オキシ−カルボニルアミノ〕ヘキサン(以下、「UDA」と略称する)、1,1,1−トリ〔6〔(1−アクリロキシ−3−フェノキシ)イソプロピルオキシカルバニルアミノ〕−ヘキシルカルバモイロキシメチル〕プロパン(以下、「URO」と略称する)等が例示できる。また下記の構造式
【0015】
【化2】
【0016】
で示されるウレタン(メタ)アクリレートも好ましい。基本的にウレタン結合の主鎖骨格は脂肪族、芳香族、脂環族を含んでいてもよい。しかし好ましくは主鎖骨格に芳香族、脂環族を含まず側鎖に脂肪族、芳香族、脂環族を含むものが好ましい。これらは1種または2種以上を用いて使用できる。特に好ましい化合物はUDMA、UDA、UROである。
【0017】
本発明においてウレタン主鎖骨格とは2個のウレタン結合の間に挟まれた部分を、また側鎖とは2個のウレタン結合の間に挟まれないウレタン結合間の外側部分をいう。
【0018】
また、本発明においては硬化性組成物中にウレタン(メタ)アクリレートとともに、これと共重合可能な単量体及び/または多官能の重合性単量体を必要に応じて配合することもできる。このような重合性単量体としては一般に歯科材料として用いられる重合性単量体、例えば、エチレン性不飽和二重結合を1個含有する単官能性モノマー、MMA、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピルメタクリレート、パ−フルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、エチレン性二重結合を少なくとも2個含有する多官能性モノマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(以下、「EG」と略称する)、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、「TMPT」と略称する)、2,2−ビス〔4−メタクリロキシエトキシフェニル〕プロパンジ(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0019】
上記重合性単量体を配合する場合、ウレタン(メタ)アクリレート40〜80重量%に対して、重合性単量体中の単官能性モノマーは20〜50重量%または多官能性モノマーは.0〜20重量%の範囲で用いる。また硬化性組成物としてポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体と混合した場合、単官能性モノマー、例えばMMAが20重量%より少ないと、成型加工性が劣り50重量%以上になると特に物理特性が劣る。
【0020】
本発明において均一分散体(a)において使用されるコロイダルシリカは粒子径が1〜85nmのものが好ましい。このようなコロイダルシリカとして、各種の市販品が使用できる。このようなコロイダルシリカとして各種の市販品が使用でき、代表的なものとして「スノーテックス IPA−ST」(商品名;平均粒子径10〜15nm;日産化学工業株式会社製、以下「IPA−STと略称する)、「OSCAL−1432」(商品名;平均粒子径10〜20nm;触媒化成工業株式会社製)、「OSCAL−1632」(商品名;平均粒子径11nm;触媒化成工業株式会社製)を列挙できる(ここで平均粒径とは一次粒子の平均粒子径をいう)。コロイダルシリカの分散媒は特に限定されないが、通常、水、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、セロソルブ類、ジメチルアセトアミド等が使用される。特に好ましい分散媒は、アルコール類、セロソルブ類及び水である。
【0021】
上記で説明したコロイダルシリカは、一般式(I)
YnSiX4-n (I)
〔式中、Yは炭化水素基またはビニル重合可能な反応性基、Xは加水分解性基を表し、nは1、2または3の数値を表す〕
で表されるシラン化合物で処理されている。
ここで、炭化水素基とは炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基の炭化水素基またはこれらの混合物を表す。またビニル重合可能な反応性基とはビニル基、アクリル基、メタクリル基またはこれらの混合物を表す。
また加水分解性基とは 酸触媒中で脱離する性質を有するものであり、具体例としてアルコキシ基、メトキシアルコキシ基、アセトキシ基、フェニルオキシ基を挙げることができる。
【0022】
一般式(I)で表されるシラン化合物の例としては、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシエチルトリエトキシシラン、アセトキシエチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリス(アクリロキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メタクリロキシエトキシ)シラン、β−メタクリロキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−アクリロキシプロピルメトキシジメチルシラン、β−メタクリロキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0023】
また次の構造式で表わされるシラン化合物は、メチルトリエトキシシラン(I−1)、フェニルトリメトキシシラン(I−2)、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン(I−3)、ビニルトリメトキシシラン(I−4)、ビニルトリエトキシシラン(I−5)、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(I−6)も用いることができる。
【0024】
CH3Si(OC2H5)3 (I−1)
C6H5Si(OCH3)3 (I−2)
CH2=CHSi(OC2H4OCH3)3 (I−3)
CH2=CHSi(OCH3)3 (I−4)
CH2=CHSi(OC2H5)3 (I−5)
CH2=CCH3COOC3H6Si(OCH3)3 (I−6)
【0025】
これらシラン化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を混合してもよい。また1分子中にYがアルキル基とビニル重合可能な反応性基をともに含んでいてもよいし、Yがアルキル基のシラン化合物とYがビニル重合可能な反応性基であるシラン化合物とを併用してもよい。好ましくはYがアルキル基であるシラン化合物とYがビニル重合可能な反応性基であるシラン化合物とを併用するのが好ましい。更に好ましくはYがビニル重合可能な反応性基であるシラン化合物である。
【0026】
コロイダルシリカのシラン処理は酸触媒を用いてシラン化合物を加水分解をする。加水分解反応は、反応を均一に行うために溶媒を用いることができる。溶媒としては、反応物であるシランアルコキシドと水、触媒を相溶するものが望ましい。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、エチルセロソルブ等をあげることができる。特に好ましいのはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールである。溶媒中でコロイダルシリカと混合された状態にあるシラン化合物の加水分解の反応条件は、室温〜120℃程度の温度で30分〜24時間の条件下で、好ましくは溶媒の沸点程度で1〜10時間程度の条件下で行われる。
【0027】
構造式(I−1またはI−2)で表されるシラン化合物の配合量はコロイダルシリカ固形分65〜98重量%に対し、シラン化合物2〜35重量%が好ましく、コロイダルシリカ固形分70〜98重量%に対し、シラン化合物2〜30重量%がより好ましい。
【0028】
構造式(I−3、I−4、I−5またはI−6)で表されるシラン化合物の配合量はコロイダルシリカ固形分65〜98重量%に対し、シラン化合物2〜35重量%が好ましく、コロイダルシリカ固形分70〜98重量%に対し、シラン化合物2〜30重量%がより好ましい。
【0029】
構造式(I−1またはI−2)で表される化合物の1種以上と構造式(I−3、I−4、I−5またはI−6)で表されるシラン化合物の1種以上とを併用する場合には、コロイダルシリカ固形分65〜98重量%に対し、構造式(I−1またはI−2)で表されるシラン化合物は1〜34重量%が好ましく、構造式(I−3、I−4、I−5またはI−6)で表されるシラン化合物は1〜34重量%が好ましい。
【0030】
本発明のシラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(a)は以下のように調製することができる。
まず、コロイダルシリカを溶媒に分散させた分散液にシラン化合物および必要であれば水や触媒を混合し、前述した反応条件で反応させてコロイダルシリカ表面をシランで処理し、この反応液中にウレタン(メタ)アクリレートを混合する。均一分散を効果的に行うために、セパラブルフラスコ、三ッ口カバー、アブザッツ、水銀シール、撹拌棒、撹拌片、分液ロート、冷却器、止め金具からなる反応装置(有限会社 桐山製作所社製)を用いるのが好ましい。ついで、分散液中に存在するコロイダルシリカの分散媒、シラン化合物の加水分解反応組成物を除去する。分散媒と溶媒、その他の比較的揮発性の物質は系を減圧下に置いて除去するのが好ましい。より好ましくは、反応系にウレタン(メタ)アクリレートを分液ロートで滴下しながら揮発性溶媒を除去することである。こうして本発明の均一分散した歯科用硬化性組成物を調製することができる。
【0031】
本発明で、シラン処理シリカがウレタン(メタ)アクリレートに均一分散しているとは、シラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(a)の硬化前、硬化後の光線透過率が80%以上であることを言う。光線透過率の測定は「スペクトロフォトネータU−3200」(商品名;株式会社日立製作所製)を用いて750〜380nmの光について行った。
【0032】
本発明の歯科硬化性組成物は、シラン処理コロイダルシリカをウレタン(メタ)アクリレートに均一分散したシラン処理シリカウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(a)を主成分としてなるが、この均一分散体(a)34〜68重量%に対して、更にポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体(c)を15〜20重量%、MMAで代表される重合性単量体(b)を17〜42重量%または更に多官能性モノマーを0〜17重量%配合することによって、硬化物の弾性及び靭性を更に向上し、加えて高出力混練機の必要性をなくして成型加工性を飛躍的によくすることが可能となる。
【0033】
本発明の歯科用硬化性組成物は、これを適当な型に入れるなどして重合することにより人工歯、義歯材料または歯科修復材料として利用することができる。歯科用硬化性重合物を重合するに当たってはそれぞれの目的に適した重合形式に応じて重合開始剤を任意に選択される。歯科用硬化性組成物を重合させるには50〜150℃の範囲が良く、この際、重合開始剤には過酸化物が有効で、歯科用硬化性組成物100重量部に対して、0.1〜3.0重量部を添加する。具体的に過酸化物はラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス-t-ブチルパーオキシシクロノキサンが好ましい。紫外線及び可視光線で重合さす場合には、光重合開始剤、還元剤を歯科用硬化性組成物100重量部に対して0.2〜3.0重量部を添加する。具体的に、光重合開始剤はα−ジケトン化合物、ケタール系化合物、アントラキノン系化合物が有効であり、特にα−ジケトン化合物のカンフアーキノンが好ましい。還元剤としては第1級、第2級アミン又は第3級アミンが有効であり、特に第3級アミンのメタクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。またこれらの条件に加えて50〜400kgf/cm2の加圧下で行うこともできる。
【0034】
更に、本発明の歯科用硬化性材料においては、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で顔料、着色剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、蛍光剤等の添加剤を混合して用いることもできる。
【0035】
本発明の硬化性組成物の成分として使用する重合性単量体(b)は、具体的にエチレン性不飽和結合を1個含有する単官能性モノマー、例えばMMA、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「2−HEMA」と略称する)等、エチレン性不飽和結合を2個以上含有する多官能性モノマー、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(以下、「EG」と略称する)、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(以下、「TG」と略称する)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、「TMPT」と略称する)、ホスホニルクロリドと2−ヒドロキシエチルメタクリレートの反応組成物(以下、「PPZ」と略称する)、2、2−ビス〔4−メタクリロキシフェニル〕プロパンジ(メタ)アクリレート(以下、「D−2.6E」と略称する)、およびウレタン(メタ)アクリレートであるUDMA等がある。好ましくはMMA、2−HEMA、EG、TG、TMPT、D−2.6E、UDMAである。更に好ましくは、MMA、EG、TG、TMPTである。
【0036】
本発明の硬化性組成物および琺瑯部(A)の成分として本発明で用いられるポリアルキル(メタ)アクリレート重合体または共重合体(c)は上記単量体(b)により膨潤するものが選ばれ、PMMA、ポリエチルメタクリレート(以下「PEMA」と略称する)等のアルキル(メタ)アクリレート類の単独重合体或いは共重合体である。また重合体粒子の核が架橋ポリアルキル(メタ)アクリレートで且つシェルがPMMA、PEMA等の重合体の1種または2種以上の混合系もこれに含まれる。重合体(c)は平均分子量10万〜100万、好ましくは20万〜100万、平均粒子1〜100μm、好ましくは1〜75μmを有するものを使用することが適当である。
【0037】
三層構造の人工歯の中間層を構成する象牙部は、
上記(b)の単量体、(c)のポリアルキル(メタ)アクリレート重合体または共重合体、(d)の重合開始剤、および
(e)上記重合体(c)とウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物の1種又は2種以上、
を含んでなる。
単量体、重合体および重合開始剤は琺瑯部と同じものを使用してもよいし、別のものを使用してもよい。好ましくは単量体および重合体は同じものを使用する。
【0038】
上記のウレタン(メタ)アクリレートは、上記本発明の重合体ポリアルキル(メタ)アクリレート(c)に対して本来溶解性も膨潤性も示さない。このようなウレタン(メタ)アクリレートとポリアルキル(メタ)アクリレートとが均質に混合している硬化性組成物とは高い粘性の透明な混合液を形成し、混合液中にはポリアルキル(メタ)アクリレート粒子が肉眼的に観察されず、かつ原則的にポリアルキル(メタ)アクリレートが経日的に沈降しないことを意味する。
【0039】
本発明においてポリアルキル(メタ)アクリレート(c)に対して本来溶解性も膨潤性も示さないウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している硬化性組成物は、重合体ポリアルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の均質相溶液中でイソシアネート化合物を反応させるか、又は添加順序を逆にして重合体とイソシアネート化合物の均質相溶液中で水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる。
【0040】
得られる硬化性組成物はウレタン(メタ)アクリレートがポリアルキル(メタ)アクリレート(c)中に分子レベルで均質に混合している。かかる組成物は透明性が高くその硬化物は架橋密度の増加、層組織の微細化、層間接着力の増大等の特徴がある。
【0041】
ポリアルキル(メタ)アクリレートに対して本来溶解性も膨潤性も示さないウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物(e)に用いるポリアルキル(メタ)アクリレートは前記したように平均分子量が10万〜100万、平均粒子径が1〜100μmであり、好ましくはPMMAまたはPEMAである。ポリアルキル(メタ)アクリレートはPEMAとPMMAとの混合物または共重合体であってもよい。これらのポリアルキル(メタ)アクリレートは水酸基含有(メタ)アクリレートまたは脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート類のいずれにも溶解または膨潤可能である。即ち、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートは水酸基含有(メタ)アクリレート化合物またはジイソシアネート化合物と混合すると均質に膨潤または溶解し、高粘性の透明な混合液を形成することができる。
【0042】
ポリアルキル(メタ)アクリレート(c)に対して本来溶解性も膨潤性も示さないウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物(e)はより具体的には以下の手順で得ることができる。例えばフラスコに2-HEMA等の水酸基含有(メタ)アクリレートを入れ、窒素ガスを吹き込み、40〜50℃に加温し、50〜80rpmの速度で撹拌しながらポリアルキル(メタ)アクリレートを少量ずつ加え、完全に膨潤溶解させる。
【0043】
次に、ウレタン合成に一般的に使用される錫触媒を溶かし、溶解後フラスコ容器内を酸素ガスで置換し、このガスを吹き込みながらジイソシアネート化合物を2〜3時間かけて滴下する。通常、ジイソシアネートを僅かに過剰量使用する。滴下後、70±1℃に加温し目的物を得る。
【0044】
また、逆にフラスコに先にジイソシアネートを入れ、後から2-HEMA等の水酸基含有(メタ)アクリレートを加えても前記同様に製造することができる。
【0045】
ポリオールと過剰のジイソシアネートを反応させて得られる末端にイソシアネートを有するポリイソシアネートを使用しようとする場合は、重合体とイソシアネートの均質相溶液中で多価アルコール(水酸基数2〜4)を反応させ、次に生成したポリイソシアネートの末端イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて使用すればよい。
【0046】
尚、重合体の添加量は生成するUDMA等のイソシアネート化合物1モルに対して5gから47gが適当である。
【0047】
本発明に用いられる水酸基含有の(メタ)アクリレートは、2−HEMA、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルメタクリレート(以下、「2−HPPA」と略称する)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキプロピルアクリレート等が適切で、好ましくは2−HEMA、2−HPPA、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、更に好ましくは、2−HEMA、2−HPPAである。
【0048】
一方、ジイソシネート化合物としては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「TMDI」と略称する)、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HMDI」と略称する)、ビスフェノールAジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略称する)、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が適切で、好ましくはTMDI、HMDI、IPDIである。更に好ましくは、TMDI、HMDIである。
【0049】
またジイソシアネート化合物として、ポリオールと過剰のジイソシアネートを反応させた末端にイソシアネート基を有するポリイソシアネートも使用することができる。このようなポリオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン等であり、ジイソシアネートとしては上記のものが使用できる。
【0050】
琺瑯部、象牙部、基底部を重合するに当たっては、それぞれの目的に適した重合形式に応じて重合開始剤を任意に選択する。琺瑯部、象牙部、基底部を重合させるには30〜150℃の範囲が良い。この際、重合開始剤には過酸化物が有効で、(a)のシラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体、(b)の重合性単量体、および(e)のポリアルキル(メタ)アクリレート重合体または共重合体とウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物の合計量100重量部に対して、0.1〜3.0重量部を添加する。
【0051】
過酸化物はラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1-ビス-t-ブチルパーオキシシクロノキサンが好ましい。紫外線または可視光線により重合させる場合には、光重合開始剤および還元剤を上記100重量部に対して0.2〜3.0重量部を添加する。光重合開始剤はα−ジケトン化合物、ケタール系化合物、アントラキノン系化合物が有効であり、特にα−ジケトン化合物のカンフアーキノンが好ましい。還元剤としては第1級、第2級または第3級アミンが有効であり、特に第3級アミンであるメタクリル酸ジメチルアミノエチルが好ましい。またこれらの条件に加えて50〜4000kgf/cm2の加圧下で行うこともできる。
【0052】
琺瑯部、象牙部および基底部にはそれぞれ、上記(a)〜(e)の構成成分以外に必要に応じて重合促進剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、顔料、不透明化剤等の他の添加剤を加えてもよい。
【0053】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0054】
〔シラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体の調製〕
均一分散体−1
イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ(シリカ含量30重量%)、〔平均粒子径10〜15nm、粘度3〜20cps(20℃)、商品名「スノーテックス IPA−ST」(日産化学工業株式会社製)、以下、IPA−STと略称する〕600gにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン67.2g、0.01規定の塩酸水溶液18.0gを加え、70℃に昇温した。1時間後、反応溶液をろ過し、反応溶液面に析出したシリカを除去した。次にUDMA360.0gを加え、緩やかに撹拌しながら減圧下40℃で揮発成分を留去し、シラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(以下、「SM−1」と略称する)を得た。この組成物をフォトメーターで380nm〜780nmの透過率を測定した結果90%以上の透過率を示し、またこの組成物を重合後、同様に透過率を測定した結果89.0%であり、これによりコロイダルシリカが一次粒子の状態で均一に分散していることが確認できた。これをるつぼ中で焼成した後の灰分から算出した固形分(SiO2)は29.3重量%であった。
【0055】
均一分散体−2
IPA−ST600gにγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン33.6g、フェニルトリメトキシシラン33.6g、0.01規定の塩酸水溶液18.0gを加え、70℃に昇温した。1時間後、反応溶液をろ過し、反応溶液面に析出したシリカを除去した。次にUDMA360.0g加え、撹拌棒で緩やかに撹拌しながら減圧下40℃で揮発成分を留去し、シラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(以下、「SM−2」と略称する)を得た。この組成物をフォトメーターで380nm〜780nmの透過率を測定した結果90%以上の透過率を示し、またこの組成物を重合後、同様に透過率を測定した結果89.2%であり、これによりコロイダルシリカが一次粒子の状態で均一に分散していることが確認できた。これをるつぼで中で焼成した後の灰分から算出した固形分(SiO2)は29.0重量%であった。
【0056】
〔歯科用硬化性組成物の重合および応用例〕
実施例1、2
上記1、2で得られたシラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体SM−1またはSM−2にベンゾイルパーオキサイド(以下、「BPO」と略称する)0.6重量%を加え乳鉢で混合した。混合後デシケーター中で脱気し窒素ガスで置換した、この操作を3度繰り返した。金型に気泡が発生しないように充填し500〜1000Kgf/cm2の圧力下75℃5分間重合後5分間冷却この操作を二度繰り返し、次に125℃5分間続けて135℃10分間重合を行い、重合後100℃で8時間アニールした。物理特性は硬度、曲げ強度、透過率及び摩耗率を測定した。表1に結果を示した。
【0057】
実施例3〜11
SM−1またはSM−2と、MMA、EG、TMPTとを表1に示した割合で混合し、その混合物に対してBPO0.6〜1.0重量%を加え単量体組成物とした。次に単量体組成物と重合体ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量40万、平均粒径約20μm「以下、PMMA−1」と略称する)を表1に示した重量比で混合した。
【0058】
単量体組成物とPMMA−1の混合方法は、1)乳鉢混合2)容器混合3)ボールミル混合等の方法で可能であるが今回は、「実験用遊星型ボールミル P−5」(フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて行った。混合比率は、単量体組成物17gに重合体3g、混合条件は室温下、回転数100回/分、混合時間60分、玉石量4個(10mmφ)とした。
【0059】
PMMA−1と膨潤後金型中に20〜80kgf/cm2 で5分間予備圧後、100〜300kgf/cm2 の圧力下で、90℃、5分間重合後5分間冷却この操作を二度繰り返し、次に135℃10分間重合を行い、重合後100℃で8時間アニールし、硬度、曲げ特性(強度、エネルギー、弾性率)、透過率及び摩耗率を測定した。表1に結果を示した。
【0060】
実施例12、13
均一分散体SM−1またはSM−2の75.0重量%とMMAの20.0重量%の割合で混合し、その混合物にメタクリル酸ジメチルアミノエチル1.4重量%、カンファキノン0.7重量%を加え単量体組成物とした。次に単量体組成物80.0重量%とPMMA−1の20.0重量%を実施例3と同様な方法で混合した。
【0061】
膨潤後金型中に20〜80kgf/cm2で5分間予備圧後、上型を取り外し上部より60秒間可視光線を照射し光重合し、実施例3〜11と同様に評価した。結果を表1に示した。
【0062】
比較例 1
石英フィラー「アエロジルOX−50」(商品名;日本アエロジル株式会社製;平均粒子径40nm)30重量%とUDMA70重量%を乳鉢混合後脱泡し、シリカ分散体を得た。(以下、「UDM30A」と略称する。)得られた分散体は石英フィラーが凝集しているため分散性が不均質であった。このシリカ分散体をSM−1の替わりに用いる以外は実施例1〜11と同様にして組成物を製造硬化し、実施例1〜13と同様に評価した。硬化物は、乳白色で不透明であった。物理特性は、曲げ強度、曲げエネルギーが低く靭性に劣っていた。結果を表1に示した。
【0063】
比較例 2
石英フィラー「アエロジルOX−50」30重量%にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン11.2重量%を加えて乳鉢で混合した。混合後UDMA60重量%を加え、さらに乳鉢混合後、脱泡し、シリカ分散体を得た。(以下、「UDM30B」と略称する)得られた分散体は石英フィラーが凝集しているため分散性が不均質であった。このシリカ分散体をSM−1の替わりに用いる以外は実施例1〜11と同様にして組成物を製造硬化し、実施例1〜13と同様に評価した。硬化物は、乳白色で不透明であった。物理特性は、曲げ強度、曲げエネルギーが低く靭性に劣っていた。結果を表1に示した。
【0064】
比較例 3
石英フィラー「アエロジルOX−50」30重量%にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン5.6重量%とフェニルトリメトキシシラン5.6重量%を加えて乳鉢で混合した。混合後UDMA60重量%を加え、さらに乳鉢混合後、脱泡し、シリカ分散体を得た(以下、「UDM30C」と略称する。)得られた分散体は石英フィラーが凝集しているため分散性が不均質であった。このシリカ分散体をSM−1の替わりに用いる以外は実施例1〜13と同様にして組成物を製造硬化し、実施例1〜13と同様に評価した。硬化物は、乳白色で不透明であった。物理特性は曲げ強度、曲げエネルギーが低く靭性に劣っていた。結果を表1に示した。
【0065】
比較例 4
石英フィラー「アエロジルOX−50」30重量%にγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン11.2重量%を加え通常方法によりシラン処理を行いUDMA60重量%を加え、乳鉢混合後、脱泡し、シリカ分散体を得た(以下、「UDM30D」と略称する。)このシリカ分散体をSM−1の替わりに用いる以外は実施例1〜9と同様にして組成物を製造硬化し、実施例1〜9と同様に評価した。硬化物は、乳白色で不透明であった。結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例 5〜13
特開平7−291817公報で示された参考例1に記載された通りに調製したシリカ分散体(以下、「MMA50」と略称する)、EG、TMP、UDMAとを表2に示した割合で混合し、その混合物中にBPOを0.6重量%加え単量体組成物とした。次に単量体組成物と重合体ポリメチルメタクリレート「アクリコンAC」(商品名;三菱レイヨン株式会社製 、以下「PMMA−2」と略称する)或いは重合体ポリメチルメタクリレート(重量平均分子量100万、平均粒径約8μm、以下、「PMMA−3」と略称する)を表2に示した重量で混合した。
【0068】
シリカ分散溶液(MMA50)の調製方法
イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ「OSCAL−1432」(商品名;シリカ含量30重量%、平均粒子系15nm;触媒化成工業社製)200部にトリメチルメトキシシラン5.2部、0.01規定の塩酸水溶液5.0部を加え、50℃に昇温した。1時間後、メチルメタクリレートを加え、ロータリエバポレーターで減圧下40℃で揮発分を留去しながらMMAを揮発分の留去と同じ速度で加え、最後に溶媒をMMAで完全に置換し全量を120部と、濃縮してシリカ分散体(MMA50)を得た。
【0069】
PMMA−2が単量体で膨潤した後、組成物を金型中に20〜80kgf/cm2で5分間予備加圧後、100〜300kgf/cm2で、80℃5分間重合後5分間冷却この操作を二度繰り返し、次に同圧力で120℃10分間重合を行い、重合後100℃で8時間アニールし、硬度、曲げ特性、(強度、エネルギー)、透過率及び摩耗率を測定した。表2に結果を示した。
【0070】
比較例5〜13すべてにおいて、曲げ強度、曲げエネルギーが低く靭性に乏しく、硬化物は不透明であった。
【0071】
【表2】
【0072】
〔重合成型体の評価方法〕
以上の実施例および比較例において重合成型した硬化体の物性評価は以下の方法に従って行った。
硬度
「Hardness Tester DMH−2」(松沢精機株式会社製)を用い50℃水中保存24時間後のKnoop硬度を測定した。荷重25g。
【0073】
曲げ強度
「オートグラフAG5000B」(株式会社島津製作所製)を用い、試験体寸法が幅(2mm)、厚さ(2mm)及び長さ(25mm)の試料を作製し50℃の水中に24時間保存後の強度(最大曲げ強度)、エネルギー(破折エネルギー)を測定した。試験体数は5ヶ。測定条件は、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/minとした。
【0074】
透過率
「スペクトロフォトメーターU−3200」(株式会社日立製作所)を用い、780nm〜380nmの波長範囲で測定した。試験体寸法(直径40mm、厚さ3mm)。
【0075】
摩耗率
ハブラシ摩耗試験後の摩耗率を測定した。測定条件は、ハブラシ「ビトィーン」(商品名;サンスター株式会社製)、試験体寸法縦15mm、横20mm、厚さ2.5mm、試験体数4ヶ荷重185g、歯摩材(練り歯磨き「グリーンサンスター」)ハブラシ滑走回数3万回とした。
【0076】
〔人工歯としての評価〕
実施例14〜24
実施例3〜13の単量体組成物とPMMA−1との混合物99.9重量%に顔料0.1重量%を加え、「実験用遊星型ボールミル」を用いて混合して組成物を調製した。「PMMA−1」が単量体で膨潤後組成物を硬質レジン前歯「エンデュラアンテリオ」(商品名;株式会社松風製)のT5の中切歯金型で成型重合した。成型歯のバリ修正を行い人工歯を作製した。この人工歯を義歯床用レジン「床用レジン アーバン」(商品名;株式会社松風製)と結合させ、床との結合力及び人工歯の繰り返し衝撃強度試験を行った。結果を表3に示した。
【0077】
結合力試験は、JIS T6506レジン歯の7.5結合試験に規定された方法によって、義歯床用レジン材との結合力を測定した。結果を表3に示した。
【0078】
比較例14〜17
表1に示した比較例2〜5の単量体組成物とPMMA−1の混合物を用い、実施例14〜24と同様に人工歯を作製、実施例14〜24と同様に評価した。結果を表3に示した。
【0079】
【表3】
【0080】
〔人工歯の評価〕
結合力
JIS T6506レジン歯の7.5結合試験に規定された方法によって、義歯床用レジン材料との結合力を測定した。結果を表3に示した。
【0081】
繰り返し衝撃強度
人工歯の繰り返し衝撃強度試験は、JIS T6506レジン歯の7.5結合試験により作製した人工歯の舌面側の切端エナメル部を主軸に対して垂直に削除し、その中心部に高さ10mmの位置から径1mmのステンレス棒を繰り返し落下させ人工歯の衝撃強度を落下回数と落下荷重により評価した。その得点の計算方法を下記に示す。
第一回目の荷重と衝撃回数 (100g×1000回)
第二回目の荷重と衝撃回数 (150g×1000回)
第三回目の荷重と衝撃回数 (200g×1000回)
衝撃強度の計算は、各段階での衝撃回数を100で割った数値の総合計を得点とした。例えば最大衝撃強度は、100、150及び200gの荷重で各々1000回の繰り返し衝撃後人工歯が破折しなければ(1000/100+1000/100+1000/100=30点)となる。
【0082】
〔人工歯の成型加工性(成型性)の評価〕
実施例25〜27
実施例3、6、9、で得た混合物を硬質レジン歯「エンデュラ」(商品名;株式会社松風製)の前歯金型(T5中切歯型)を用いて成型試験を行った。成型方法は、エナメル部に混合物、デンティン、ベース両部にMMAとPMMAの混合物を用い三層成型とした。成型順序は、エナメル、デンティン、ベースの順とした。成型性の確認は、エナメル部成型の温度を変動さすことにより、エナメル部分のクラック、白濁、エナメル部とデンティン部間の接着性を試験した。成型性は非常に良好であった。成型条件及び結果を表4に示した。
【0083】
接着性試験は上記の人工歯の繰り返し衝撃試験によりエナメル/デンティン間の接着を確認した。同時に人工歯の繰り返し強度試験も行った。測定は50℃ 水中保存7日後に行った。
【0084】
比較例18〜21
比較例1〜4で得た混合物を用い、実施例25〜27と同様に人工歯を作製、実施例25〜27と同様に評価した。結果を表4に示した。
【0085】
【表4】
【0086】
〔歯冠修復材の評価〕
実施例 28
均一分散体SM−1またはSM−2の75.0重量%とMMAの25.0重量%の割合で混合し、その混合物に対してメタクリル酸ジメチルアミノエチル1.4重量%、カンファキノン0.7重量%を加え単量体組成物とした。次に混合した単量体組成物80.0重量%とPMMA−1の19.9重量%及び顔料の0.1重量%を実施例3と同様な混合機を用い混合した。
【0087】
PMMA−1を単量体組成物で膨潤後、組成物を硬質レジン歯、「エンデュラ」(株式会社松風製)の前歯金型(T5中切犬歯)に20〜80kgf/cm2で5〜10分間加圧した。加圧後上型を取り外し上部より120秒間可視光線を照射、シェルを作製した。作製したシェルは歯科の定法に従い支台に接着した。審美性、接着性とも良好であった。
【0088】
〔重合体ポリアルキル(メタ)アクリレート(c)とウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物の調製〕
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−1
撹拌羽根付きガラス製フラスコに2-HEMA260.3g(2モル)を入れ、窒素ガスを吹き込みながら40〜50℃に加温し、速度50〜80rpmで撹拌しながらPMMA5.2gを少量ずつ3〜5時間かけて添加し完全に膨潤溶解させた。得られた溶液にジブチルチンジラウレート110mgを添加した。添加後窒素ガスを止めフラスコ内を酸素で置換した。酸素ガスを流しながら、次にTMDI210.3g(1モル)を2時間かけて滴下した。滴下終了後70±1℃に加温し、イソシアネート基全てが反応するまで付加反応を続け硬化性組成物を得た(以下、「B−1」と略称する)。反応終了点は、イソシアネート当量滴定法により確認した。収率は98.6%であった。
【0089】
イソシアネート当量滴定法による反応終了点は次の方法により測定した。▲1▼試料3gを共栓付き三角フラスコに正しく測り取る。▲2▼これにジ-n-ブチルアミン溶液50mlを正しく加え15分間静置する。▲3▼次に試薬1級イソプロピルアルコール20mlを加えた後、ブロムクレゾールグリーン指示薬(ブロムクレゾールグリーン0.1gにN/10水酸化ナトリウム溶液1.5mlを加え、よくすりつぶして溶解し水を加えて全量を100mlとしたもの)3〜4滴を加えよく振り混ぜる。▲4▼次にN/2塩酸で滴定する。終点付近ではN/2塩酸を一滴ずつ加え、そのつど溶液を振り混ぜながら滴定を続け、青色又は青紫色が消えて少なくとも15秒間黄色が持続する点を終点とする。この試験には、同一条件で空試験を行う。イソシアネート当量は次式により算出する。
【0090】
【数1】
【0091】
但し、A:本試験のN/2塩酸標準液使用量(ml)
B:空試験のN/2塩酸標準液使用量(ml)
f:N/2塩酸標準液のフアクター
S:試料採取量(g)
【0092】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−2
PMMA量を9.4gとする以外は、B−1と同様にして硬化性組成物を得た(以下、「B−2」と略称する)。収率(99.5%)。
【0093】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−3
PMMAの代わりにPEMA5.2gを用いる以外は、B−1と同様にして硬化性組成物を得た(以下、「B−3」と略称する)。収率(99%)。
【0094】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−4
PEMAを9.4gを用いる以外は、B−3と同様にして硬化性組成物を得た(以下、「B−4」と略称する)。収率(98%)。
【0095】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−5
撹拌羽根付きガラス製フラスコにTMDI210.3g(1モル)を入れ、窒素ガスを吹き込みながら40〜50℃に加温し、速度50〜80rpmで撹拌しながらPEMA9.4gを少量ずつ3〜5時間かけて添加し完全に膨潤溶解した。得られた溶液にジブチルチンジラウレート110mgを添加した。添加後窒素ガスを止めフラスコ内を酸素で置換した。酸素ガスを流しながら、次に2−HEMA260.3g(2モル)を2時間かけて滴下した。滴下後70±1℃に加温し、イソシアネート基全てが反応するまで付加反応を続けた。反応終了点は、FT−IR、イソシアネート当量滴定法により確認しポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物を得た(以下、「B−5」と略称する)。収率(98.2%)。
【0096】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−6
PEMA47gとする以外は、B−5と同様にして組成物を得た(以下、「B−6」と略称する)。収率(98% )。
【0097】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−7
撹拌羽根付きガラス製フラスコにHMDI168.20g(1モル)を入れ、窒素ガスを吹き込みながら40〜50℃に加温し、速度50〜80rpmで撹拌しながらPEMA10gを少量ずつ3〜5時間かけて添加し完全に膨潤した。
得られた溶液にジブチルチンジラウレート110mgを添加した。添加後窒素ガスを止めフラスコ内を酸素で置換した。酸素ガスを流しながら、次に2−HFPA444.5g(2モル)を2時間かけて滴下した。滴下後50±1℃に加温し、イソシアネート基全てが反応するまで付加反応を続け1,6ビス〔(2-フェノキシ-2'-アクリロキシ)イソプロピル-オキシ-カルボニルアミノ〕ヘキサン(以下、「UDA」と略称する)を得た。反応終了点は、FT−IR、イソシアネート当量滴定法により確認しポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物を得た(以下、「B−7」と略称する)。
【0098】
ポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物−8
撹拌羽根付きガラス製フラスコにHMDI504.6g(3モル)を入れ、窒素ガスを吹き込みながら40〜50℃に加温し速度50〜80rpmで撹拌しながらPEMA9gを少量ずつ3〜5時間かけて添加し完全に膨潤させた。得られた溶液にジブチルチンジラウレート10mgを添加した。添加後窒素ガスを止めフラスコ内を酸素で置換した。酸素ガスを流しがら、次にトリメチロールプロパン(以下、「TMP」と略称する)。134.18g(1モル)を2時間かけて滴下した。滴下後50±1℃に加温し、HMDIの一方のイソシアネートとTMPの付加反応を行った。
【0099】
付加反応後、ジブチルチンジラウレート110mgを添加した。添加後2−HFPA666.75g(3モル)を2時間かけて滴下した。滴下後70±1℃に加温し、イソシアネート基全てが反応するまで付加反応を続け三官能のウレタンアクリレートオリゴマ1,1,1-トリ〔6〔(1-アクリロキシ-3-フェノキシ)イソプロピルオキシカルバニルアミノ〕-ヘキシルカルバモイロキシメチル〕プロパン(以下、「URO」と略称する)を得た。反応終了点は、FT−IR、イソシアネート当量滴定法により確認しポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物を得た(以下、「B−8」と略称する)。収率(98.5%)。
【0100】
B−1〜B−8のポリアルキル(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートとの均一混合物はFT−IR「FT−300」(商品名;株式会社堀場製作所製)を用いてそれぞれの特性吸収を測定し、また、GPCを用いて重合体の平均分子量と保持時間及びウレタンモノマーの分子量と保持時間を測定し、それぞれの組成物であることを確認した。
【0101】
〔琺瑯部の組成物例〕
実施例29〜30
上記で得られた(a)シラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体SM−1またはSM−2、b)単量体MMAおよびTMPT、d)ベンゾイルパーオキサイド(以下、「BPO」と略称する)とを表5に示した割合で混合した。また同時に微量の着色剤も添加した。混合後デシケーター中で脱気し窒素ガスで置換した。次にこの混合物とc)重合体ポリメチルメタクリレート(平均分子量100万、平均粒子径約8μm(以下、「PMMA−1」と略称する)を表5に示した重量比で混合した。
【0102】
【表5】
【0103】
混合物とPMMA−1の混合方法は、1)乳鉢混合2)容器混合3)ボールミル混合等の方法で可能であるが今回は、「実験用遊星型ボールミル P−5」(商品名;フリッチュ・ジャパン株式会社製)を用いて行った。混合比率は、混合物15gにPMMA−1を15g、混合条件は室温下、回転数100回/分、混合時間60分、玉石量4個(10mmφ)とした。
【0104】
〔象牙部の組成物例〕
実施例31〜40
(e)ポリアルキル(メタ)アクリレート重合体または共重合体(c)とウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物B1〜B10、(b)重合性単量体MMAおよびTMPT、(d)ベンゾイルパーオキサイド(以下、「BPO」と略称する)とを表6に示した割合で混合した。また同時に着色剤も添加した。混合後デシケーター中で脱気し窒素ガスで置換した。次に混合物と上記PMMA−1を表6に示した重量比で混合した。
混合物とPMMA−1の混合は、実施例29〜30と同様に行った。
【0105】
【表6】
【0106】
〔基底部の組成物例〕
(b)単量体MMA 4.875gおよびEG 0.125g、(d)BPO 0.025gおよびc)重合体ポリメチルメタクリレート10.0g(平均分子量80万、平均粒子径約40μm(以下、「PMMA−2」と略称する)を混合した。
【0107】
〔人工歯としての評価〕
実施例41〜60
実施例29〜30の琺瑯部組成物と実施例3〜12の象牙部組成物および上記基底部の組成物を用い人工歯を成型した。成型は、硬質レジン歯「エンデュラアンテリオ」(株式会社松風製)のC5中切歯金型で人工歯を作製した。第一成型は琺瑯部原料を750〜3000Kgf/cm2の圧力下60〜95℃で5分間重合後、5分間冷却、次に象牙組成物を750〜3000Kgf/cm2の圧力下60〜95℃で5分間重合後、5分間冷却、最後に基底部組成物を750〜3000Kgf/cm2の圧力下105〜125℃で5分間重合後、5分間冷却し金型より人工歯を取り出した。人工歯は透明性、審美性に優れていた。
【0108】
人工歯は、重合後100℃で8時間アニールした。この人工歯を義歯床用レジン「床用レジン アーバン」(株式会社松風製)と結合させ、床との結合力及び人工歯の繰り返し衝撃強度試験より人工歯の耐衝撃性を行った。
【0109】
〔人工歯の評価〕
前記の方法にしたがって得られた人工歯の結合力および繰り返し衝撃強度を評価し、結果を表7に示した。
【0110】
【表7】
【0111】
表7において、結合力-1は、50℃水中保存1日後に測定した、また結合力-2は50℃水中保存7日後に測定したデータであり、衝撃強度-1は50℃の水中保存1日後、衝撃強度-2はサーマルサイクル3000回後に測定したデータである。
実施例41〜60のすべての結果、衝撃強度の低下もなく、市販品と比較してその衝撃による強度が高いことを示した。
【0112】
【発明の効果】
以上述べた如きシラン処理シリカ-ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体を主成分とする構成からなる本発明の歯科用硬化性組成物からの硬化物は優れた透明性、靭性、加工性(成型性)、審美性及び耐摩耗性を有する。加えてポリアルキル(メタ)アクリレートおよび重合性単量体との併用により硬化物は優れた透明性、靭性、加工性(成型性)、審美性および耐摩耗性を有し、人工歯、歯冠修復材料、特に上記硬化性組成物を用いた三層構造人工歯材料に極めて有効である。
Claims (9)
- 一次粒子の平均粒子径が1〜85nmであるコロイダルシリカが
式(I)
Y n SiX 4−n (I)
〔式中、Yは炭化水素基またはビニル重合可能な反応性基、Xは加水分解性基を表し、nは1、2または3の数値を表す〕
で示される少なくとも1種のシラン化合物で処理して得られたシラン処理シリカが、ウレタン(メタ)アクリレートに一次粒子の状態で均一分散しているシラン処理シリカ−ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体(a)を34〜68重量%、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピルメタクリレート、パ−フルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス〔4−メタクリロキシエトキシフェニル〕プロパンジ(メタ)アクリレートから選ばれる重合性単量体(b)を17〜51重量%および
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体(c)を15〜20重量%、
(a)+(b)+(c)=100重量%となるように含み、
更に重合開始剤(d)を含む歯科用硬化性組成物。 - 均一分散体(a)がウレタン(メタ)アクリレート29〜69重量%、コロイダルシリカ10〜70重量%およびシラン化合物が1〜30重量%からなる請求項1記載の歯科用硬化性組成物。
- ウレタン(メタ)アクリレートが一分子に少なくとも2個のウレタン基並びに少なくとも2個のアクロイル基及び/又はメタクリロイル基を有することを特徴とする請求項1または2記載の歯科用硬化性組成物。
- 請求項1、2または3いずれかに記載の歯科用硬化性組成物を成型加工した人工歯又は歯冠修復材料。
- (A)(a)一次粒子の平均粒子径が1〜85nmであるコロイダルシリカが式(I)
YnSiX4−n (I)
〔式中、Yは炭化水素基またはビニル重合可能な反応性基、Xは加水分解性基を表し、nは1、2または3の数値を表す〕
で示される少なくとも1種のシラン化合物で処理して得られたシラン処理シリカが、ウレタン(メタ)アクリレートに一次粒子の状態で均一分散しているシラン処理シリカ−ウレタン(メタ)アクリレート均一分散体、(b)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルプロピルメタクリレート、パ−フルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス〔4−メタクリロキシエトキシフェニル〕プロパンジ(メタ)アクリレートから選ばれる重合性単量体、(c)ポリアルキル(メタ)アクリレート重合体または共重合体、(d)重合開始剤を、(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%となるように含む組成物を重合してなる琺瑯部;
(B)上記(b)、(c)、(d)、および(e)上記ポリアルキル(メタ)アクリレートの重合体または共重合体(c)とウレタン(メタ)アクリレートが均質に混合している均一混合物の1種又は2種以上、を含む組成物を重合してなる象牙部;および
(C)上記(b)、(c)および(d)を含む組成物を重合してなる基底部、から構成される三層構造人工歯材料。 - 象牙部を構成する均一混合物(e)が、重合体(c)と水酸基含有(メタ)アクリレートの均質相溶液中で、イソシアネートを反応させて得られる請求項5記載の人工歯材料。
- 象牙部を構成する均一混合物(e)が、重合体(c)とイソシアネートの均質相溶液中で水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる請求項5記載の人工歯材料。
- 象牙部を構成する均一混合物(e)が、重合体(c)とイソシアネートの均質相溶液中で多価アルコール(水酸基数2〜4)を反応させ、次にその反応末端イソシアネート基と水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる請求項5記載の人工歯材料。
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