JP4286355B2 - 複合材の成形方法および成形治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材成形における真空吸引により成形品のガス残留を防ぐことができる複合材の成形方法および成形治具に関し、詳しくは熱硬化型ポリイミド系樹脂を使用した複合材の成形方法および成形治具に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機用複合材の成形方法に真空バッグ成形方法が適用されている。この真空バッグ成形方法は、プリプレグを平滑面を有する成形治具上に積層し、積層したプリプレグを通気性シートおよび真空バッグフィルムで覆い、真空バッグフィルムの内部空間を成形治具に設けられた吸引口から真空吸引し、オートクレーブ内で加圧加熱硬化して所定形状の成形品を得る方法である。
【0003】
上記真空バッグ成形方法においては、プリプレグの積層時にプリプレグ間にガスが混入したり、成形中に発生したガスがプリプレグ中に残存するし、成形後に気泡として残留することになり、製品の強度等の品質が著しく劣化させることになる。
【0004】
プリプレグ中のガスの排出を効果的に行なう方法として、実開平3−129422号公報に、成形型の周囲に筒状体を配置し、真空吸引の際にガスを筒状体に入り込み易くし、プリプレグ中のガスの排出を行なう方法が開示されている。
【0005】
また、特開平2−162016号公報には、複合材の中央部から周辺部に向けて徐々に気泡を排除するようにし、プリプレグ中ガスの排出を行なう方法が開示されている。
【0006】
さらに、これらの技術手段に関連するものとして、多孔質通気性物質を用いた成形型(特開昭60−24905号公報参照)やバキューム吸着方式のワークホルダ(実開平6−71039号公報参照)が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の成形方法においては、ポリイミド系複合材の成形時における成形圧力は320℃で14kgf/cm2 程度であり、エポキシ系複合材の成形圧力(180℃で7〜8kgf/cm2 )より相当高く、硬化時にはガスが発生するので成形時には常に真空吸引が必要であるが、真空吸引の際に、大気圧もしくは成形圧力によって通気性シート等のガス通路が塞がり、複合材中のガスの排出が不充分となり、ガスが気泡として複合材成形品内部に残留するという問題がある。
【0008】
また、前記実開平3−129422号公報に開示されている技術手段は、このような場合でもガス通路を確保することはできるものの、吸引が成形品の外周部のみであるため、成形品の全体形状が大きくなると、成形品中央部からのガスの排出が必ずしも充分に行なわれないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した点を考慮してなされたもので、成形品が大きい場合であっても、複合材中のガスの排出を確実に行ない、ガスが成形品内に残留するのを防止し、高品質の複合材製品を容易に得ることができる複合材の成形方法および成形治具を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、成形型を交換するだけで各種形状の複合材製品を得ることができ、成形治具の共用化を図ることができるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の複合材の成形方法は、網目状に設けられた溝部と、これらの溝部に連通しつつこれらの溝部の周囲に設けられた閉じた溝とにより形成されている、相互に独立して設けられた少なくとも2つの真空吸引路をその表面に有する成形治具上に通気性シートを配置し、通気性シート上にプリプレグを積層し、成形治具の外周部にプリプレグを囲むようにシール材を配置し、これら全体を真空バッグフィルムで覆い、真空バッグフィルムの内部を真空吸引し、加圧加熱硬化処理して複合材製品を得るものであり、真空吸引を成形治具表面の真空吸引路を介して行なうことで、大気圧や成形圧力に影響されることなく吸引路を確保でき、成形品の下面全域から充分にガスを排出することが可能となり、気泡のない高品質の複合材製品を得ることができる。
【0012】
本発明の複合材の成形方法は、網目状に設けられた溝部と、これらの溝部に連通しつつこれらの溝部の周囲に設けられた閉じた溝とにより形成されている、相互に独立して設けられた少なくとも2つの真空吸引路をその表面に有する成形治具上に通気性を有する成形型を配置し、成形型上にプリプレグを積層し、成形治具の外周部にプリプレグを囲むようにシール材を配置し、これら全体を真空バッグフィルムで覆い、真空バッグフィルムの内部を真空吸引し、加圧加熱硬化処理して複合材製品を得るものであり、成形型の交換のみで各種形状の成形品を成形でき、成形治具は共用とすることが可能となる。
【0013】
本発明の成形治具は、表面に設けた交差する溝部と、これらの溝部に連通しつつこれらの溝部の周囲に設けられた閉じた溝とにより形成された、相互に独立して設けられた少なくとも2つの真空吸引路と、隣り合う溝部の間に形成された支持部と、真空吸引路に真空装置を接続するための口金とを有し、溝部の一点で真空引きした場合であっても、成形品の下面全域を均等に吸引することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1および図2は、本発明の第1の実施の形態に係る複合材の成形方法に用いる成形治具を示し、この成形治具1は、例えば平板状をなすスチールあるいはアルミニウム合金等の成形治具本体2を有する。この成形治具本体2の上面には2つの真空吸引路3が独立した2つの経路を形成するように設けられている。
【0016】
上記各真空吸引路3は、図2に示すように、升目状に配された凹み溝4により形成され、隣り合う凹み溝4の間に支持部5が形成されている。これら支持部5に後述するプリプレグ9が支持される。凹み溝4は、例えば幅が0.5〜2.0mm、深さが約2mm、ピッチが約25〜100mmである。各真空吸引路3には口金6が連結されている。口金6は吸引ホース7を介して図示しない真空装置に接続されている。
【0017】
本発明の第1の実施の形態に係る複合材の成形方法について説明する。
【0018】
まず、成形治具1を固定配置し、図1に示すように、この成形治具1の口金6を吸引ホース7を介して図示しない真空装置に接続する。
【0019】
つぎに、通気性シート8を、図1に示すように、成形治具1の上面に真空吸引路3上に位置するように配置する。この通気性シート8は、図5に示すように、通気性を有するガラスクロスで形成される外側シート8aと内側シート8bで構成されている。内側シート8bは、外側シート8aよりも織目が細かいガラスクロスで形成され離型処理が施されている。
【0020】
ついで、通気性シート8の上に炭素繊維またはガラス繊維に半硬化樹脂を含浸させたプリプレグ9を積層し、積層したプリプレグ9の上に、図5に示すように、通気性シート10を配置する。この通気性シート10は、通気性を有するガラスクロスで形成される外側シート10aと内側シート10bで構成されている。内側シート10bは、外側シート10aよりも織目が細かいガラスクロスで形成され離型処理が施されている。
【0021】
ついで、上記成形治具1の外周部に、図3および図4に示すように、両真空吸引路3,3を囲むようにリング状をなす例えばシリコーン系のシール材11が配置される。そして、ナイロンまたはポリイミド系の真空バッグフィルム12が、成形治具1の上面に設けられたシール材11に周辺部分をシールするように配置される。これにより、成形準備段階は終了する。
【0022】
つぎに、成形治具1をオートクレーブ内に配置し、図示しない真空装置を作動させて、各真空吸引路3を通して真空バッグフィルム12の内部空間を真空吸引し、その状態を保持したまま、加圧加熱硬化処理して複合材製品を得る。
【0023】
上記複合材の成形方法によれば、成形治具1に載置されたプリプレグ9は、その下面全域から真空吸引され、しかも、真空吸引路3が大気圧や成形圧力による影響を受けることがないので、プリプレグ9の積層時にプリプレグ9の間に残存するガスや成形中にプリプレグ9から発生するガスを成形中に成形治具1の下面から外部に排出することができる。
【0024】
上記複合材の成形方法は、従来の成形方法に比較して、複合材成形における真空吸引を不具合なく行なうことができ、成形治具1の表面形状を成形品の形状に合わせ加工することにより様々な部品形状に適用することができる。
【0025】
なお、上記第1の実施の形態においては、両方の真空吸引路3に亘るような大形成形品の成形について説明したが、一方の真空吸引路3のみでも足りるような小形の成形品を成形する場合には、図6に示すように、一方の真空吸引路3のみを用いて成形することができる。これにより、通気性シート8,10、シール材11および真空バッグフィルム12等を必要最少限の大きさとしてコストダウンを図ることができる。
【0026】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る複合材の成形方法に用いる成形治具を示すもので、この成形治具21は、上記成形治具1と同一構成の成形治具本体2と、成形治具本体2の上面に着脱可能に配置された成形型20とから構成されている。成形型20は、通気性を有するグラファイト製で成形品の成形モールド20aを有する。
【0027】
成形治具本体2の上面に設けた真空吸引路3は、図7に示すように、升目状に配された凹み溝4を有し、隣り合う凹み溝4の間に支持部5が形成されている。凹み溝4は、幅が0.5〜2.0mm、深さが約2mm、ピッチが約25〜100mmである。各真空吸引路3には口金6が連結されている。口金6は吸引ホース7を介して図示しない真空装置に接続されている。
【0028】
本発明の第2の実施の形態に係る複合材の成形方法について説明する。
【0029】
まず、成形治具21の上面に、図9に示すように、成形型20を配置し、成形型20の成形モールド20aの上面に多孔質性の離型フィルム22を介しプリプレグ9を積層する。
【0030】
ついで、上記成形治具21の外周部に、図8および図9に示すように、両真空吸引路3を囲むようにリング状をなすシール材11を配置し、その上に真空バッグフィルム12を配置する。
【0031】
ついで、図示しない真空装置を作動させて、各真空吸引路3を通して真空バッグフィルム12の内部空間を真空吸引し、その状態を保持したまま、プリプレグ積層体を加圧加熱硬化処理して複合材製品を得る。
【0032】
上記複合材の成形方法においては、成形型20を用いて成形するので、成形治具21に設けた真空吸引路3の升目を粗くしても成形品を充分に真空吸引することができ、成形型20を交換するだけで各種形状の成形品を成形できる。また、成形治具を共用することで成形治具の製作コストを低く抑えることができる。
【0033】
なお、第2の実施の形態においては、成形型20を通気性を有するグラファイトで形成する場合について説明したが、図10に示すように、スチールあるいはアルミニウム合金製のマンドレル31に通気性を確保するための直径1.0〜2.0mm、ピッチ約1インチの真空吸引孔32を穿設した成形型30を用いることもできる。
【0034】
両実施の形態においては、真空吸引路3を成形治具2の上面の2箇所に独立して設けた場合について説明したが、成形治具2の上面全域に単一の真空吸引路3を設けるようにしても、成形治具2の上面に3箇所以上に真空吸引路3を設けるようにしてもよい。真空吸引路3の構成も升目状に配した凹み溝4に限らず、渦巻き状とした溝であってもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、表面に真空吸引路を有する成形治具上に、通気性シートを介してプリプレグを積層したことで、吸引路が大気圧や成形圧力に影響されることなく確保でき、成形品の下面全域からガスを確実に外部に排出することができ、気泡のない高品質の複合材製品を成形することができる。
【0036】
また、本発明は、表面に真空吸引路を有する成形治具上に通気性を有する成形型を配置し、この成形型上にプリプレグを積層したことで、吸引路を大気圧や成形圧力に影響されることなく確保できるとともに、成形型を交換するだけで各種形状の成形品を成形することができ、成形治具の共用化を図ることができる。
【0037】
さらに、本発明は、真空吸引路を交差する溝部により形成し、隣り合う溝部の間に支持部を形成したことで、溝部の一点で真空引きした場合であっても、成形品の下面全域を均等に吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る複合材の成形方法に用いる成形治具にプリプレグを配置した状態を示す斜視図。
【図2】図1の成形治具の真空吸引路の構成を示す図。
【図3】図1の成形治具上を真空バッグフィルムで覆った状態を示す図。
【図4】図3の要部断面図。
【図5】通気性シートの構成を示す図。
【図6】一方の真空吸引路を用いて成形品を成形する状態を示す図3相当図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る複合材の成形方法に用いる成形治具にプリプレグを配置した状態を示す斜視図。
【図8】図7の成形治具上を真空バッグフィルムで覆った状態を示す図。
【図9】図8の要部断面図。
【図10】本発明の第2の実施の形態における異なる構造の成形型を示す斜視図。
【符号の説明】
1 成形治具
2 成形治具本体
3 真空吸引路
4 凹み溝
5 支持部
6 口金
7 吸引ホース
8,10 通気性シート
8a,10a 外側シート
8b,10b 内側シート
9 プリプレグ
11 シール材
12 真空バッグフィルム
20 成形型
20a 成形モールド
21 成形治具
22 離型フィルム
Claims (8)
- 網目状に設けられた溝部と、これらの溝部に連通しつつこれらの溝部の周囲に設けられた閉じた溝とにより形成されている、相互に独立して設けられた少なくとも2つの真空吸引路をその表面に有する成形治具上に通気性シートを配置し、
通気性シート上にプリプレグを積層し、
成形治具の外周部にプリプレグを囲むようにシール材を配置し、
これら全体を真空バッグフィルムで覆い、
真空バッグフィルムの内部を真空吸引し、加圧加熱硬化処理することを特徴とする複合材の成形方法。 - プリプレグと真空バッグフィルムとの間に通気性シートを介装することを特徴とする請求項1記載の複合材の成形方法。
- 網目状に設けられた溝部と、これらの溝部に連通しつつこれらの溝部の周囲に設けられた閉じた溝とにより形成されている、相互に独立して設けられた少なくとも2つの真空吸引路をその表面に有する成形治具上に通気性を有する成形型を配置し、
成形型上にプリプレグを積層し、
成形治具の外周部にプリプレグを囲むようにシール材を配置し、
これら全体を真空バッグフィルムで覆い、
真空バッグフィルムの内部を真空吸引し、
加圧加熱硬化処理することを特徴とする複合材の成形方法。 - 成形型とプリプレグとの間に通気性を有する離型フィルムを介装することを特徴とする請求項3記載の複合材の成形方法。
- 前記真空吸引路は、前記溝部または前記閉じた溝に連通している、前記真空吸引路に真空装置を接続するための口金を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の複合材の成形方法。
- 表面に設けた交差する溝部と、これらの溝部に連通しつつこれらの溝部の周囲に設けられた閉じた溝とにより形成された、相互に独立して設けられた少なくとも2つの真空吸引路と、
隣り合う溝部の間に形成された支持部と、
真空吸引路に真空装置を接続するための口金とを有することを特徴とする成形治具。 - 支持部は升目状をなしていることを特徴とする請求項6に記載の成形治具。
- 真空吸引路の上に通気性を有する成形型を配置したことを特徴とする請求項6または7に記載の成形治具。
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