JP4285283B2 - 質量分析装置 - Google Patents

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Description

本発明は質量分析装置に関し、特に、ガスクロマトグラフの検出器として使用するために好適な質量分析装置に関する。
質量分析装置は、ガスクロマトグラフ装置や液体クロマトグラフ装置と組み合わせて使用されることがよくある。例えばガスクロマトグラフ質量分析装置は、ガスクロマトグラフの検出器として質量分析装置を利用したものであり、複数の成分を含む試料をガスクロマトグラフに導入してカラムにより各成分を時間方向に分離し、その成分分離した試料ガスをインタフェイス部を介して質量分析装置に導入し、イオン化した後にそのイオンをm/z毎に分離して検出する。
ガスクロマトグラフ部では、キャリアガス(一般的にはヘリウムガス)の流れに乗せて試料ガスをカラムに流通させるため、インタフェイス部にはこうしたキャリアガスを除去するためのセパレータなどが設けられている(例えば特許文献1など参照)。しかしながら、もともとキャリアガスの量は試料ガスの量に比べて格段に多いため、除去しきれないキャリアガス分子が質量分析装置の初段のイオン化部に多量(他のガス成分に比較すれば多量)に流れ込む。キャリアガスとしてヘリウムガスが使用される場合、もともと不活性であるヘリウムは比較的イオン化されにくいものの、特に電子衝撃イオン化法でイオンの生成効率を上げるために電子の加速電圧を高くすると、ヘリウムであっても容易にイオン化してしまう。
こうして発生したヘリウムイオンによるイオン強度は試料成分によるイオン強度に比べて格段に大きいため、ヘリウムイオンとm/zが近い、軽い元素(例えばリチウム、ベリリウム、ホウ素など)を分析したい場合でも、こうしたイオンの強度信号はヘリウムイオンによる強度信号にマスクされてしまう。そのため、こうした軽い元素のイオンを検出することは従来困難であった。イオン化部において電子の加速電圧を下げることによりヘリウムのイオン化を抑えることは可能ではあるが、そうすると目的成分のイオン生成効率も低下し、分析感度が下がって微量成分の検出ができなくなる。
また、ヘリウムイオンに比べてm/zが十分に大きなイオンを分析する場合には、四重極質量フィルタ等の質量分離部によってこうした重いイオンとヘリウムイオンとを十分に分離することができるし、この重いイオンの強度信号がヘリウムの強度信号にマスクされてしまうということもない。しかしながら、上述したようにヘリウムイオンの量は格段に多いため、質量分離部をすり抜けてしまう比率がごく小さかったとしても検出器に到達するヘリウムイオンの量は試料イオンに比べても十分に大きく、このヘリウムイオンがバックグラウンドノイズとなって目的イオンの分析感度が低下するおそれがある。
従来、ヘリウムガス分子等の電荷を持たない中性粒子や分子をイオン光学系で除去することは行われている。例えば特許文献2に記載の質量分析装置では、イオンを後段へ輸送する脱溶媒パイプの出口側のイオン出射軸とその後段のスキマーのイオン入射軸とを意図的にずらし、脱溶媒パイプとスキマーとの間に配置したイオン光学系により形成する電場によって荷電粒子であるイオンは屈曲軌道をとってスキマーのオリフィスに導かれ、一方、電場の影響を受けない中性粒子や分子は直進させてスキマーを通過しないようにしている。しかしながら、ヘリウムガス分子がイオン化してしまった場合には、このような方法では除去することができない。
特開2002−228637号公報([0003]段及び図8) 特許3379485号公報([0025]段〜[0026]段及び図4)
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、ヘリウムイオンをイオン流路上のいずれかの位置において効率良く除去することで、ヘリウムイオンとm/zの近いイオンの分析を行えるようにするとともに、バックグラウンドノイズを低減させて分析感度や精度を向上させることができる質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、イオンを発生するとともに一定の加速電圧で該イオンを加速するイオン源と、該イオンをm/zに応じて分離する質量分離部と、該m/zに応じて分離されたイオンを検出する検出器とを具備する質量分析装置において、
a)前記イオン源と質量分離部との間、又は質量分離部と検出器との間に配置された、イオン光軸を挟んで対向して設けられた2つで1組の電極を含む偏向イオン光学系と、
b)該偏向イオン光学系の1組の両電極に互いに位相を反転させた交流電圧を少なくとも印加する電圧発生手段と、
を備え、前記交流電圧の周波数を所定周波数に設定することにより、前記偏向イオン光学系により形成される偏向電場において相対的に軽いイオンを大きく偏向させて除去する一方、相対的に重いイオンの偏向を抑制して後段へと輸送するようにしたことを特徴としている。
イオン源で発生した各種イオンが持つ運動エネルギーは各イオンのm/zには依存せず、イオンの速度はm/zの平方根に逆比例するため、m/zが小さなイオンほど大きな速度を持つことになる。そのため、本発明に係る質量分析装置において、偏向イオン光学系により形成される偏向電場には、m/zが小さなイオンは大きな速度で以て、m/zが相対的に大きなイオンは相対的に小さな速度で以て入射する。したがって、m/zが小さなイオンは偏向電場を短い時間で通過し、m/zが相対的に大きなイオンは偏向電場を通過するのに相対的に長い時間を要する。それ故に、m/zが小さなイオンにとっては偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧の波数(周期数)は少なく、逆にm/zが大きなイオンにとっては偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧の波数(周期数)は多い。
この交流電圧の半周期毎に、偏向電場内を通過しているイオンに作用する力の方向は反転(一方を正方向、他方を負方向と呼ぶ)する。そのため、イオンが偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧が1周期よりも小さく、好ましくは半周期以下であると、イオンには正方向又は負方向の一方向に偏向させようとする力が強く作用し、イオンは大きく軌道を曲げる。これに対し、イオンが偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧が1周期よりも大きく、好ましくは複数周期であると、偏向電場において正方向に作用する力と負方向に作用する力が交互に発生して全体として相殺され易くなり、イオンを偏向させる力は抑制されて軌道の曲がりは小さくなる。すなわち、偏向電場を形成するための交流電圧の周波数を適切に設定すれば、m/zの小さなイオンは偏向電場を通過する際に大きく軌道を曲げさせて除去することができ、一方、m/zの大きなイオンについては軌道の曲がりを抑制して良好に後段へと送るようにすることができる。
なお、上記のような偏向電極の作用によって基本的には任意のm/z以下のイオンを除去することが可能であるが、そもそも質量分離部はこうした質量分離の機能を有しているから、例えばイオンの量が多すぎて質量分離部では十分に除去できないような種類のイオンに対して本発明における偏向イオン光学系は有用である。具体的には、質量分析装置を検出器として利用するクロマトグラフ質量分析装置において、カラムの移動相として使用されるヘリウムに由来するヘリウムイオンを除去するのに特に有効である。
本発明に係る質量分析装置によれば、分析対象のイオンに殆ど影響を与えることなくヘリウムイオンのみを効率良く除去することができる。それによって、従来は分析することが困難であったヘリウムイオンにm/zが近いイオンの分析を、高感度・高精度で行うことが可能となる。また、ヘリウムイオンに由来するバックグラウンドノイズを軽減することができるので、全般的に分析感度や分析精度の向上を図ることができる。
以下、本発明の一実施例による質量分析装置を図面を参照して説明する。図1は本実施例の質量分析装置の要部の構成図である。
略密閉された真空容器1内は真空ポンプ11による排気によって真空状態に維持される。この真空容器1内には、イオン化室2、イオン光学系5、四重極質量フィルタ9、及びイオン検出器10がイオン光軸Cに沿って配設されている。イオン化室2及び四重極質量フィルタ9は本発明におけるイオン源及び質量分離部に相当する。イオン光学系5は基本的にイオンを加速したり収束したりする機能を有するが、本実施例では、イオン光学系5が本発明における偏向イオン光学系に相当する偏向電極6を含む。
この質量分析装置の前段には図示しないもののガスクロマトグラフが設けられており、ガスクロマトグラフのカラムから流出する試料ガスが適宜のインタフェイスを介して接続管4からイオン化室2内へと供給される。イオン化室2は電子衝撃法により試料分子をイオン化するものであり、フィラメント3で発生した熱電子が加速され、イオン化室2に導入された試料分子(又は原子)にこの熱電子が接触することによって該分子はイオン化される。発生した各種イオンはイオン化室2から引き出されてイオン光学系5を通って四重極質量フィルタ9の長軸方向の空間に導入される。四重極質量フィルタ9には図示しない電源から直流電圧と高周波電圧とを重畳した電圧が印加され、その印加電圧に応じた質量m/電荷zを有するイオンのみがその長軸方向の空間を通過し、イオン検出器10に到達して検出される。それ以外の不要なイオン種は四重極質量フィルタ9の長軸方向の空間を通り抜けることができず、途中で発散して消失する。
イオン化室2内には、分析対象である試料分子のほかに、ガスクロマトグラフのカラムの移動相であるヘリウムガス(キャリアガス)の分子も多量に流入しイオン化される。分析対象の試料イオンのm/zがヘリウムイオンよりも十分に大きいときには、ヘリウムイオンの多くは四重極質量フィルタ9で排除されるが、もともとヘリウムイオンの量は多いため、通過確率が小さくてもかなりの量が排除しきれずにイオン検出器10に到達する。これがバックグラウンドノイズの原因となり得る。また、m/zがヘリウムイオンに近いリチウム、ベリリウム、ホウ素などのイオンが分析対象である場合には、四重極質量フィルタ9でもヘリウムイオンの排除を十分に行うことが難しく、多量のヘリウムイオンがイオン検出器10に到達してしまい、これよりも信号強度が遙かに小さい分析対象のイオンの信号強度はマスクされてしまう。
そこで、本実施例の質量分析装置では、四重極質量フィルタ9の手前に配置された偏向電極6により形成する偏向電場60と、その後方に配置された中央に出射穴8を有する出口側電極7とによって、質量の軽いヘリウムイオンを除去するようにしている。
図2は偏向電極6をイオン光軸Cに直交する面内でみたときの図である。この偏向電極6は、略円筒形状の金属体をイオン光軸Cに平行に延伸する分割線で以て周方向に略4等分した形状を有する。イオン光軸Cを挟んで対向する2枚の電極61aと61b、62aと62bがそれぞれ1組となっており、偏向電圧発生部12は各組の対向する2枚の電極に極性が互いに反転した電圧を印加する。すなわち、一方の組の電極61aには+V1(t)、これに対向する電極61bには−V1(t)を印加し、他方の組の電極62aには+V2(t)、これに対向する電極62bには−V2(t)を印加する。
ここでV1(t)、V2(t)は、
V1(t)=V0+Va・sinωt
V2(t)=V0+Vb・sin(ωt+δ)
である。つまり、V1(t)、V2(t)は共通の直流電圧V0に、それぞれ振幅が異なり(同じである場合もある)同一周波数で位相がδだけ異なる交流電圧を重畳したものである。
上記偏向電場60によってヘリウムイオンを除去する動作原理について図3〜図5を用いて説明する。ここでは説明を簡単にするために図3に示すように1組の電極61a、61b間に極性が互いに反転した(位相が180°異なる)交流電圧のみが印加されることによって形成される偏向電場60を考える。
イオン源(イオン化室2)で発生した各種イオンを一定の加速電圧Vで加速した場合にイオンが持つ初期的な運動エネルギーは次式となる。
zeV=(1/2)・m・v2
ここで、zはイオンの電荷数、eは電子の電荷(電気素量)、mはイオンの質量、vはイオンの速度である。上式は、
eV=(1/2)・(m/z)・v2
と書き直すことができるから、m/zに依らずに運動エネルギーeVは同一であり、各イオンの速度vはm/zの平方根に逆比例する。つまり、m/zが小さなイオンほど大きな速度を持つことになる。
図3に示すようにイオン通過方向の偏向電場60の長さLは一定であるから、大きな速度を持って偏向電場60に入射する軽いイオンは短時間で偏向電場60を通過し、相対的に重いイオンは偏向電場60を通過するのにより長い時間を要する。ヘリウムは水素を除けば最も軽い元素であるから、ヘリウムイオンが偏向電場60を通過する時間t1とそれよりも重い分析対象の成分のイオンが偏向電場60を通過する時間t2との関係はt1<t2であって、m/z差が大きいほどt2はt1よりも格段に長くなる。一方、偏向電場60における交流電圧の周波数ωは一定であるから、各イオンが偏向電場60を通過する時間内に生じる交流電圧の波数は、軽いイオンでは少なく重いイオンでは多くなる。
図4は横軸を時間軸として或るイオンが偏向電場を通過する時間内に発生する交流電圧の波形を示した概念図であり、図5は横軸を実際の距離として或るイオンが偏向電場を通過する時間内に発生する交流電圧の波形を示した概念図である。ここでは一例として、ヘリウムイオンの通過時間t1内に生じる交流電圧の波数が図4(a)、図5(a)に示すように0.5周期分、ヘリウムイオンよりも重い分析対象であるイオンの通過時間t2内に生じる交流電圧の波数が図4(b)、図5(b)に示すように3.5周期分であるとする。この交流電圧の1周期の中で、前半の半周期(位相角0〜180°)には図3中に矢印で示すように上から下に向かう(これを正方向とする)力がイオンに作用し、後半の半周期(位相180〜360°)には逆に下から上に向かう(これを負方向とする)力がイオンに作用する。
したがって、図4(a)及び図5(a)の場合には、イオンには正方向の力しか作用しないことになり、ヘリウムイオンは偏向電場60を通過する際に大きく軌道を曲げられ、出射穴8に到達せずに出口側電極7に衝突する。一方、図4(b)及び図5(b)の場合には、イオンが偏向電場60を通過する際に正方向に偏向させる力と負方向に偏向させる力との両方が交互に作用する。この例の場合、正方向に偏向させる力が0.5周期分だけ長いものの、全体としてはイオンを両方向に振る力が相殺し合うため、イオンの軌道はイオン光軸Cから大きく外れることはなく、偏向電場60を出た後に出射穴8を通り抜け得る。このようにして、m/zの小さなヘリウムイオン(厳密にはヘリウムイオンを含めてそれよりもm/zの小さなイオン)を選択的に偏向電場60で大きく偏向させて取り除き、相対的にm/zの大きなイオンを出射穴8から後段へと送ることができる。
上記説明から分かるように、偏向電場60によるイオンの除去では、そのイオンが偏向電場60に滞在する時間内に交流電圧の波数がいくつあるのかが重要な要素である。実際にはイオンは運動エネルギーを持って飛行しているため、イオンの軌道は交流電場の変動に完全に追従するわけではない。したがって、全般的には、イオンが偏向電場60に滞在する時間内に交流電圧の波数が多いほどイオンの軌道の振れは小さくなり、出射穴8を通り抜ける確率が高くなる。原理的には、ヘリウムイオンが偏向電場60を通過する時間t1内に生じる交流電圧の波数が1よりも小さくなるようにし、且つ分析対象であるイオンが偏向電場60を通過する時間t2内に生じる交流電圧の波数が1よりも大きくなるように交流電圧の周波数を定めておけば、前者を除去し後者を通過させることが可能である。
しかしながら、時間t1内に生じる交流電圧の波数が1に近づくほどヘリウムイオンの除去効率は低下し、逆に時間t2内に生じる交流電圧の波数が1に近づくほど分析目的のイオンの通過効率は低下する。したがって、実用的には、時間t1内に生じる交流電圧の波数は0.8程度以下、好ましくは0.5以下に定めておく。そして、これに対して時間t2内に生じる交流電圧の波数が1よりも大きいイオンのうち、或る程度高い通過効率を以て出射穴8を通過し得る重いイオンを分析する。
また、偏向電極6のイオン光軸Cに沿った方向の長さLも或る程度以上必要である。何故なら、偏向電場60内でのヘリウムイオンの通過距離が短すぎると、仮にイオンを正方向又は負方向へ偏向させる力が作用したとしても軌道が十分に曲がらず、出射穴8に到達してしまって後段へと送られてしまうからである。
さて、上記説明では、図5(a)に示すようにヘリウムイオンが偏向電場60に突入する時点での交流電圧の位相角が0°であるとしているが、ヘリウムガス分子はイオン化室2内に連続的に流入して来るので、通常、ヘリウムイオンが偏向電場60に入って来る時点での交流電圧の位相角は様々である。そのため、例えば交流電圧の位相角が約90°であるときにヘリウムイオンが偏向電場60に入って来ると、そのイオンが偏向電場60を通過する時間t1内での交流電圧波形は図6に示すようになる。この場合、イオンを正方向に偏向させる力と負方向に偏向させる力とがほぼ相殺し合い、イオンの軌道は図5(a)の場合と異なりイオン光軸Cから大きくは外れず、出射穴8を通過する確率がかなり高くなる。
そこで、こうした問題を避けるために、先に図2に示したように、偏向電極を1組だけでなく2組設置し、各組の偏向電極に印加する電圧V1(t)、V2(t)の交流成分を同一周波数で位相がδだけ異なるものとしている。このとき位相ずれδは図7に示すように例えば1/4周期(位相角90°)とする。この2組の偏向電極61aと61b、62aと62bとによって、偏向電場60には互いに直交する方向に2種類の電場が形成されることになり、いずれの電場もイオンを偏向させるように作用し得る。
先に述べたように、図7においてV1(t)の位相角90°の時点(時刻ta)で偏向電場60にヘリウムイオンが入射してきた場合について考える。この場合、上述したように印加電圧V1(t)によって形成される電場ではイオンを正方向に偏向させる力と負方向に偏向させる力とがほぼ相殺し合ってしまい、イオンの軌道は大きく振れない。ところが、位相がずれている印加電圧V2(t)によって形成される電場では、イオンには正方向に偏向させる力のみが作用する。これによってイオンの軌道は大きく振れ、イオン光軸Cから大きく外れて出口側電極7に衝突する。すなわち、このように互いに位相の異なる2つ電場を偏向電場とすることによって、ヘリウムイオンが連続的に偏向電場60に入射して来ても、少なくともいずれか一方の電場によってヘリウムイオンを大きく振ることができるため、該イオンが出射穴8を通り抜けてしまうことを高い確率で防止できる。
なお、偏向電極6の形状は図2のような円筒形状に限るものではなく、図8に示すように、イオン光軸Cを挟んで対向する2組の電極を設置しさえすればよい。図8(a)は各組の偏向電極を平行平板で形成した例、図8(b)は各組の偏向電極を円柱状のロッド電極(又は中空の円筒電極)で形成した例、図8(c)は各組の偏向電極を角柱状のロッド電極(又は中空の角筒電極)で形成した例である。もちろん、これ以外にも様々な構成が考え得る。
また、上記説明から、ヘリウムイオンが偏向電場に入射するタイミングを限定することが可能であれば、具体的には、ヘリウムイオンが偏向電場を通過する時間内にイオンを正方向に偏向させる力と負方向に偏向させる力とが相殺されないようなタイミングに限ってヘリウムイオンを入射するのであれば、偏向電極は1組だけでもよいことが分かる。すなわち、例えば図9(a)又は(b)に示すような電極の構成とすることができる。
本願発明者は上記のような動作によるヘリウムイオンの除去の効果を確認するため、コンピュータシミュレーションによりイオンの軌道の計算を行った。その結果について図10〜図12により説明する。ここでは図2に示したような円筒型の2組の偏向電極を用いている。
図10は、偏向電極6に直流電圧のみを印加して、偏向電極6で囲まれる空間内に静電場を形成した場合のヘリウムイオンの軌道をシミュレーションしたものである。この状態ではヘリウムイオンはその殆ど全てが出射穴8を通過してしまうことが分かる。
図11は、上記説明のように、直流電圧に所定の交流電圧を重畳した電圧を偏向電極6に印加して、偏向電極6で囲まれる空間内に偏向電場を形成した場合のヘリウムイオンの軌道をシミュレーションしたものである。このときには殆どのヘリウムイオンが大きく軌道を曲げて出口側電極7に衝突する。したがって、出射穴8を通過して四重極質量フィルタ9に導入されるヘリウムイオンはごく僅かであり、非常に効果的にヘリウムイオンが除去されていることが分かる。
図12は、図11と同一の偏向電場の条件の下で、ヘリウムイオンよりも重いm/zが10であるイオンの軌道をシミュレーションしたものである。このときにはごく一部のイオンは出口側電極7に衝突するものの、殆どは偏向電場の存在にも拘わらず出射穴8に到達し、これを通過して四重極質量フィルタ9に導入される。つまり、ヘリウムイオンを除去しながらm/z10であるイオンの分析が可能である。
このように、上述した偏向電場を用いることによって、軽いヘリウムイオン(実際にはより軽い水素イオンも)を除去し、相対的に重い分析対象のイオンは偏向電場の影響を抑制して高い効率で通過させ質量分析に利用できるということが、シミュレーションの結果からも明らかになった。
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正及び追加を行っても本発明に包含されることは明らかである。例えば、上記実施例では四重極質量フィルタの手前に偏向電極を設けたが、四重極質量フィルタ等の質量分離器で分離された後のイオン流を上記のような偏向電場に通してヘリウムイオンを除去する構成としてもよい。また、質量分離器が四重極質量フィルタに限らないことも当然である。
本発明の一実施例による質量分析装置の要部の構成図。 本実施例の質量分析装置において偏向電極をイオン光軸に直交する面内でみたときの図。 偏向電場によってヘリウムイオンを除去する動作原理の説明図。 横軸を時間軸として或るイオンが偏向電場を通過する時間内に発生する交流電圧の波形を示した概念図。 横軸を実際の距離として或るイオンが偏向電場を通過する時間内に発生する交流電圧の波形を示した概念図。 図5(a)において偏向電場へのイオンの入射タイミングが異なる場合の交流電圧の波形を示した概念図。 2組の偏向電極への印加電圧V1(t)、V2(t)の位相関係を示す図。 2組の偏向電極を用いる場合の他の形態例を示す図。 1組のみの偏向電極を用いる場合の形態例を示す図。 偏向電極に直流電圧のみを印加して静電場を形成した場合のヘリウムイオンの軌道のシミュレーション結果を示す図。 直流電圧に所定の交流電圧を重畳した電圧を偏向電極に印加して偏向電場を形成した場合のヘリウムイオンの軌道のシミュレーション結果を示す図。 図11と同一の偏向電場の条件の下でのm/zが10のイオンの軌道のシミュレーション結果を示す図。
符号の説明
1…真空容器
2…イオン化室
3…フィラメント
4…接続管
5…イオン光学系
6、61a、61b、62a、62b…偏向電極
60…偏向電場
7…出口側電極
8…出射穴
9…四重極質量フィルタ
10…検出器
11…真空ポンプ
12…偏向電圧発生部

Claims (6)

  1. イオンを発生するとともに一定の加速電圧で該イオンを加速するイオン源と、該イオンをm/zに応じて分離する質量分離部と、該m/zに応じて分離されたイオンを検出する検出器とを具備する質量分析装置において、
    a)前記イオン源と質量分離部との間、又は質量分離部と検出器との間に配置された、イオン光軸を挟んで対向して設けられた2つで1組の電極を含む偏向イオン光学系と、
    b)該偏向イオン光学系の1組の両電極に互いに位相を反転させた交流電圧を少なくとも印加する電圧発生手段と、
    を備え、前記交流電圧の周波数を所定周波数に設定することにより、前記偏向イオン光学系により形成される偏向電場において相対的に軽いイオンを大きく偏向させて除去する一方、相対的に重いイオンの偏向を抑制して後段へと輸送するようにしたことを特徴とする質量分析装置。
  2. 除去対象である軽いイオンが偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧が1周期よりも小さく、除去対象でない重いイオンが偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧が1周期よりも大きくなるように、前記交流電圧の周波数を設定することを特徴とする請求項1に記載の質量分析装置。
  3. 除去対象である軽いイオンが偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧が半周期以下になるように、前記交流電圧の周波数を設定することを特徴とする請求項2に記載の質量分析装置。
  4. 除去対象でない重いイオンが偏向電場内を通過する時間内に生じる交流電圧が複数周期となるように、前記交流電圧の周波数を設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の質量分析装置。
  5. 前記偏向イオン光学系は少なくとも2組の電極を含み、各組の電極に、周波数が同一で位相をずらした交流電圧を印加するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の質量分析装置。
  6. 除去対象である軽いイオンがヘリウムイオンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の質量分析装置。
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